(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポンプ制御部は、前記第2の流量領域では、前記モータに流れる電流が一定に維持されるように前記インバータを制御することを特徴とする請求項1または2に記載のポンプ装置。
前記ポンプ制御部は、前記第2の流量領域では、前記モータに供給される電力が一定に維持されるように前記インバータを制御することを特徴とする請求項1または2に記載のポンプ装置。
前記ポンプ制御部は、前記第2の流量領域では、前記モータの回転速度が一定に維持されるように前記インバータを制御することを特徴とする請求項1または2に記載のポンプ装置。
前記ポンプ制御部は、前記第2の流量領域において前記ポンプの吐出圧力が所定の上限に達したときは、前記モータの回転速度を低下させることを特徴とする請求項5に記載のポンプ装置。
【背景技術】
【0002】
従来から商用電源から供給される交流電圧を所望の周波数の交流電圧に変換するインバータが広く知られている。このようなインバータは、ポンプを駆動するモータの省エネルギー運転を実現するために広く使用されている。ポンプ装置では、ポンプを駆動するモータにインバータが接続されており、当該インバータは、例えば、ポンプの吐出圧力が所定の圧力で一定になるようにモータの回転速度を変化させる。これにより、モータおよびこれに連結されたポンプが加減速され、ポンプの吐出圧力は予め設定された適切な値に保たれるので、省エネルギー運転が実現される。
【0003】
しかしながら、このような吐出圧力一定制御は、比較的安定した一定圧力を要求される給水用途(例えば、住宅設備用など)には適しているが、小流量でさらに高い圧力を要求されるような用途(例えば、散水用など)には適していない。
【0004】
そのため、特許文献1では、上述した吐出圧一定制御モードとは異なり、ポンプの電源が投入された後、モータの回転速度を電流一定制御に従って決定し、ポンプを運転するポンプ装置が提案されている。この電流一定制御モードでは、ポンプの吐出流量に拘わらず、ポンプに流れる電流が一定となるようにインバータが制御される。このような電流一定制御モードでポンプを運転すると、小流量で高い吐出圧力を実現することができる。
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示される電流一定制御モードにおいては、小水量の領域のみならず、高い吐出圧力が必要でない流量の多い領域においても吐出圧力を高くすることになる。このため、電流一定制御モードが選択された場合ではポンプ装置における電力が無駄に消費されていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述した従来の問題点に鑑みてなされたもので、小流量で高吐出圧力を達成しながらも、省エネルギーを実現することができるポンプ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するための本発明の一態様は、液体を移送するポンプと、前記ポンプを駆動するモータと、前記モータに可変周波数の交流電力を供給して前記ポンプを可変速運転するインバータと、第1の制御モードおよび第2の制御モードのうち予め選択された一方の制御モードに従って前記インバータを制御することで前記ポンプの運転を制御するポンプ制御部と、を備え、前記第1の制御モードは、流量0から第1の流量までの第1の流量領域で前記ポンプの吐出圧力を所定の圧力に保つ圧力一定制御モードであり、前記第2の制御モードは、流量0から、前記第1の流量よりも低い第2の流量までの第2の流量領域においては、前記ポンプを前記所定の圧力よりも高い吐出圧力で運転させ、前記第2の流量から前記第1の流量までの第3の流量領域においては、前記ポンプの吐出圧力を前記所定の圧力に保つ圧力ブースト制御モードであることを特徴とするポンプ装置である。
【0009】
本発明の好ましい態様は、前記第1の制御モードまたは前記第2の制御モードのうちのいずれか一方を選択するための切替スイッチをさらに備えたことを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記ポンプ制御部は、前記第2の流量領域では、前記モータに流れる電流が一定に維持されるように前記インバータを制御することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記ポンプ制御部は、前記第2の流量領域では、前記モータに供給される電力が一定に維持されるように前記インバータを制御することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記ポンプ制御部は、前記第2の流量領域では、前記モータの回転速度が一定に維持されるように前記インバータを制御することを特徴とする。
【0010】
本発明の好ましい態様は、前記ポンプ制御部は、前記第2の流量領域において前記ポンプの吐出圧力が所定の上限に達したときは、前記モータの回転速度を低下させることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記ポンプ、前記モータ、および前記インバータのうちの少なくとも1つの温度を測定する少なくとも1つの温度計をさらに備え、前記ポンプ制御部は、前記第2の流量領域において前記温度の測定値が所定の上限に達したときは、前記モータの回転速度を低下させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、インバータの制御モードは、吐出圧力を一定に保つ圧力一定制御モードである第1の制御モードと、第1の制御モードでの吐出圧力よりも高い吐出圧力でポンプを運転させる圧力ブースト制御モードである第2の制御モードとの間で切替可能に構成される。第2の制御モードでは、流量0から第2流量までの第2の流量領域において第1の制御モードでの吐出圧力よりも高い吐出圧力でポンプを運転させ、これにより、小流量での高吐出圧力を達成することができる。第2の流量から第1の流量までの第3の流量領域においては、ポンプの吐出圧力は所定の圧力に保たれる。この第3の流量領域においては、高吐出圧力でポンプを運転しないので、消費電力を低減することができる。すなわち、全ての流量領域で高吐出圧力を実現する従来のポンプ装置に比べて、本発明では、流量の比較的多い第3の流量領域においては高吐出圧力の運転を実施しないので、消費電力を削減することができる結果、省エネルギーが達成される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るポンプ装置の構成を示した概略図である。
図1に示されるように、ポンプ装置は、液体を加圧するポンプ1と、ポンプ1を駆動するモータ2と、モータ2に可変周波数の交流電力を供給してポンプ1を可変速運転するインバータ3と、インバータ3を制御することでポンプ1の運転を制御するポンプ制御部15と、を備える。インバータ3には商用電源16が接続されており、当該商用電源16から供給される交流電力はインバータ3によって所望の周波数を持つ交流電力に変換されてモータ2に供給される。
【0014】
ポンプ1は、例えばカスケードポンプである。カスケードポンプは、外周に放射状の多数の溝を持った円盤状の羽根車をケーシング中で回転させることにより、ケーシングの内面に沿って渦を発生させ、当該渦の作用により液体を繰り返し加圧させて移送するポンプである。カスケードポンプは、比較的小流量で高吐出圧力を必要とする用途に適している。また、カスケードポンプは、同じ回転速度で運転する場合、小流量であるほど、消費電流が多くなるという特性を有する。
【0015】
ポンプ1の吸込口には吸込配管10が接続され、ポンプ1の吐出口には吐出配管11が接続されている。吸込配管10には、水の逆流を防止するチェッキ弁(逆止弁)5と、ポンプ1に流れる水の流量の低下を検出するフロースイッチ6とが配置されている。吐出配管11には、ポンプ1の吐出圧力を計測する圧力センサ7が配置されている。図示した例では、吸込配管10にチェッキ弁5とフロースイッチ6とを配置しているが、チェッキ弁5とフロースイッチ6とを吐出配管11に配置してもよい。フロースイッチ6によって検出された流量低下信号と、圧力センサ7によって取得された吐出圧力の測定値は、ポンプ制御部15に送られるようになっている。
【0016】
ポンプ制御部15には、後述する第1の制御モードと第2の制御モードとを切り替えるための切替スイッチ18が接続される。本実施形態では、切替スイッチ18は手動で操作されるが、自動で操作されてもよい。切替スイッチ18を操作することで、インバータ制御モードを圧力一定制御モードである第1の制御モードと、圧力ブースト制御モードである第2の制御モードとの間で切り替えることができる。
【0017】
図2は、
図1に示すインバータ3の構成を示した概略図である。
図2に示されるように、インバータ3は、ポンプ制御部15から送られるポンプ1の目標回転速度とポンプ1の実際の回転速度との差分を最小とするためのPWM信号を生成するインバータ制御部20と、インバータ制御部20からのPWM信号に基づいて交流電圧を生成し、この交流電圧をモータ2に印加するインバータ回路21を有している。インバータ回路21は、コンバータ部21Aと、直流電圧平滑回路21Bと、インバータ部21Cと、ゲートドライバ21Dとを備えている。
【0018】
コンバータ部21Aは、商用電源16から供給される3相の交流電圧を直流電圧に変換するために、ダイオードなどにより構成される整流回路を有する。直流電圧平滑回路21Bは、コンデンサを備えており、コンバータ部21Aにより変換された直流電圧を平滑化する。インバータ部21Cは、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)などのスイッチング素子、およびスイッチング素子に並列に接続されるダイオードを複数有しており、直流電圧平滑回路21Bによって平滑化された直流電圧から3相の交流電圧を生成するように構成されている。ゲートドライバ21Dは、インバータ制御部20からのPWM信号に基づいて、インバータ部21Cの各スイッチング素子を開閉するためのゲートドライブ信号を生成する。
【0019】
インバータ制御部20には、インバータ回路21の二次側に配置された電圧検出器24と、電流検出器25とが接続されている。電圧検出器24および電流検出器25で得られた電圧および電流の測定値はインバータ制御部20に入力される。インバータ制御部20は、フィードバックされた電流の測定値からモータ2(およびポンプ1)の実際の回転速度を推定し、この推定された回転速度と目標回転速度との差分を最小とするためのPWM信号を生成する。
【0020】
インバータ制御部20は、電圧検出器24および電流検出器25で得られた電圧および電流の測定値から電力を計算する電力演算部30を有している。電力演算部30の代わりに、電力検出器をインバータ回路21の二次側に配置してもよい。電力演算部30はインバータ3とは別に設けられてもよい。
【0021】
ポンプ制御部15は、インバータ3のインバータ制御部20に接続されている。ポンプ制御部15には、上述したように、流量低下信号および吐出圧力の測定値が入力されるようになっている。ポンプ制御部15は、第1の制御モードおよび第2の制御モードから予め選択されたいずれか一方の制御モードに従って、インバータ3を介してポンプ1の運転を制御する。
【0022】
図3は、第1の制御モードの場合の圧力−流量線図と、第2の制御モードの場合で、第2の流量領域において電流一定制御を行ったときの圧力−流量線図とを示す図である。
図3において、横軸はポンプ1の吐出流量を表し、縦軸はポンプ1の吐出圧力を表している。第2の制御モードの圧力−流量線図は、第1の制御モードの圧力−流量線図よりも太線で描かれている。また、
図3には、第2の制御モードにおける流量変化に伴う、ポンプ1(モータ2)の回転速度、モータ2に供給される電流および電力の変化も併せて記載されている。
【0023】
第1の制御モードの場合、流量0から第1の流量Q1までの第1の流量領域R1で、ポンプ1の吐出圧力が所定の圧力P1で一定に保たれるように、ポンプ制御部15は、インバータ3に指令を発して、ポンプ1の運転を制御する。第1の流量Q1は、ポンプ1の性能に依存して定まる値であり、吐出圧力一定制御の条件下でポンプ1の吐出流量を上げていった場合に、吐出圧力が下がり始める時の流量である。すなわち、第1の流量Q1は、ポンプ1が所定の吐出圧力P1を確保できる流量の上限である。
【0024】
切替スイッチ18を操作して第2の制御モードを選択した場合、ポンプ制御部15は第2の制御モードに従ってインバータ3を制御する。第2の制御モードは、低流量領域で圧力を上げる圧力ブースト制御モードである。
図3に示されるように、第2の制御モードでは、ポンプ制御部15は、流量0から、第1の流量Q1よりも低い第2の流量Q2までの第2の流量領域R2において、ポンプ1を所定の圧力P1よりも高い吐出圧力で運転させる一方で、第2の流量Q2から第1の流量Q1までの第3の流量領域R3においては、ポンプ1の吐出圧力を所定の圧力P1に保つようにインバータ3を制御する。
【0025】
図3に示される例では、第2の流量領域R2においてポンプ1の吐出圧力を所定の圧力P1よりも高くするために、ポンプ制御部15は、第2の流量領域R2においてモータ2に流れる電流が一定となるようにインバータ3を制御する。モータ2に流れる電流を一定に保つようにインバータ3を制御すると、ポンプ1の流量が小さくなればなるほどポンプ1の吐出圧力が高くなっていく。したがって、小流量領域である第2の流量領域R2において高吐出圧を実現することができる。
【0026】
次に、本発明の省エネルギー化について
図4および
図5を用いて説明する。
図4は、従来の電流一定制御を行ったときの圧力−流量線図を示す図である。
図5は、
図3に示す本発明の第2の制御モードに従ってインバータ3を制御したときの消費電力グラフと、
図4に示す従来の電流一定制御を行ったときの消費電力グラフを示す図である。
【0027】
図4に示されるように、従来の電流一定制御モードでは、流量0から第1の流量Q1までの第1の領域R1で電流が一定になるようにインバータ3が制御される。すなわち、従来の制御方法では、本発明の第3の流量領域R3のように圧力一定制御を行う流量領域が存在していない。
【0028】
本発明の第2の制御モードでは、第3の流量領域R3が設けられており、当該第3の流量領域R3においては、ポンプ1の吐出圧力を所定の圧力P1に保つ圧力一定制御が行われる。この第3の流量領域R3では、高吐出圧力での運転は行われないので、
図5に示されるように、消費電力を低減することができる。
図5に示されるハッチングを付した領域は、本発明によって削減することができる電力量である。本発明の第2の制御モードでは、第3流量領域R3においては吐出圧力一定制御が行われ、第2の流量領域R2においてのみ高吐出圧力の運転(すなわち圧力ブースト運転)が実施される。したがって、全ての流量領域で高吐出圧力を実行する従来のポンプ装置に比べて、本発明のポンプ装置は消費電力を削減することができる。その結果、省エネルギー運転を達成することができる。
【0029】
図6は、第1の制御モードの場合の圧力−流量線図と、第2の制御モードの場合で、第2の流量領域R2において電力一定制御を行ったときの圧力−流量線図とを示す図である。
図6に示される第2の制御モードでは、第2の流量領域R2においてポンプ1の吐出圧力を所定の圧力P1よりも高くするために、ポンプ制御部15は、第2の流量領域R2においてモータ2に供給される電力(=電流×電圧)が一定となるようにインバータ3を制御する。モータ2に供給される電力を一定に保つようにインバータ3を制御すると、ポンプ1の流量が小さくなればなるほどポンプ1の吐出圧力が高くなっていく。したがって、小流量領域での高吐出圧を実現することができる。さらに、
図6に示す例においても、
図5に示すグラフと同じように、従来の電流一定制御モードに比べて、本発明の第2の制御モードでの消費電力を低減させることができる。
【0030】
図7は、第1の制御モードの場合の圧力−流量線図と、第2の制御モードの場合で、第2の流量領域R2において回転速度一定制御を行ったときの圧力−流量線図とを示す図である。
図7に示される第2の制御モードでは、第2の流量領域R2においてポンプ1の吐出圧力を所定の圧力P1よりも高くするために、ポンプ制御部15は、第2の流量領域R2においてモータ2の回転速度(すなわちポンプ1の回転速度)が一定となるようにインバータ3を制御する。モータ2の回転速度を一定に保つようにインバータ3を制御すると、ポンプ1の流量が小さくなればなるほどポンプ1の吐出圧力が高くなっていく。したがって、小流量領域での高吐出圧を実現することができる。さらに、
図7に示す例においても、
図5に示すグラフと同じように、従来の電流一定制御モードに比べて、本発明の第2の制御モードでの消費電力を低減させることができる。
【0031】
上述したように、第2の流量領域R2においてはモータ2に供給される電流、電力、またはモータ2の回転速度を一定に保つことで、小流量領域でのポンプ1の吐出圧力を増加させている。この場合、ポンプ1の吐出圧力が高くなりすぎ、配管中を圧送される液体が漏れ出したり、圧力センサ7などのポンプ装置における構成部品を損傷することもある。
【0032】
このような過度の圧力上昇を回避するために、第2の流量領域R2において吐出圧力に上限を設けてもよい。より具体的には、ポンプ1の吐出圧力が所定の上限に達したとき、ポンプ制御部15はモータ2の回転速度を低下させるように、インバータ2に指令を発する。
図8は、このような吐出圧力の上限を第2の流量領域R2に設けた例を示す圧力−流量線図である。
図8では、第2の流量領域R2の一部において回転速度一定制御を行っている。
【0033】
図8に示されるように、第2の流量領域R2における流量が低下してポンプ1の吐出圧力が所定の上限ULに達すると、ポンプ制御部15はモータ2の回転速度(すなわちポンプ1の回転速度)を低下させるようにインバータ3に指令を出す。ポンプ1の吐出圧力は、
図1に示す圧力センサ7によって測定される。このように、ポンプ1の吐出圧力が所定の上限ULを超えないようにインバータ3が制御されるので、吐出圧力の過度の上昇を防止することができる。
【0034】
ポンプ1、モータ2、およびインバータ3のうちの少なくとも1つの温度を測定する少なくとも1つの温度計を設け、温度の測定値が所定の上限に達したときは、モータ2の回転速度を低下させるようにインバータ3を制御してもよい。
図2に示される実施形態では、ポンプ1、モータ2、およびインバータ3には、これらの温度を測定する温度計26,27,28がそれぞれ取り付けられている。これら温度計26,27,28によって取得された温度の測定値は、ポンプ制御部15に送られる。温度計26,27,28は、図示されるようにポンプ1、モータ2、およびインバータ3の全てに取り付けられていてもよいし、いずれか1つ、あるいはいずれか2つに取り付けられていてもよい。
【0035】
第2の制御モードでモータ2の電流、電力、または回転速度を一定に保つと、流量が低下してきたときに、ポンプ1、モータ2、またはインバータ3が過負荷になって過熱されてしまうことがある。そのため、ポンプ制御部15は、温度計26,27,28から得られたポンプ1、モータ2、およびインバータ3の温度の測定値に基づいて、これらポンプ1、モータ2、およびインバータ3の過負荷を監視する。具体的には、温度計26,27,28によって得られた温度の測定値のいずれか1つが対応する上限に達した場合は、ポンプ制御部15はインバータ3に指令を発してモータ2の回転速度を低下させる。温度の上限は、温度計26,27,28に対応して複数設けられる。
【0036】
図9は、このような温度の上限を第2の流量領域R2に設けた例を示す圧力−流量線図である。
図9では、第2の流量領域R2において回転速度一定制御を行っている。
図9に示されるように、第2の流量領域R2における流量が低下してポンプ1、モータ2、およびインバータ3の温度の測定値のいずれか1つが対応する所定の上限に達すると、ポンプ制御部15はモータ2の回転速度(すなわちポンプ1の回転速度)を低下させるようにインバータ3に指令を出す。このように、温度の測定値が所定の上限を超えないようにインバータ3が制御されるので、ポンプ1、モータ2、およびインバータ3が過負荷により損傷することを防止することができる。
【0037】
さらに、ポンプ1としてカスケードポンプが採用された場合、本発明の制御モードを用いれば、第1の流量Q1でのモータ2やインバータ3の過負荷や、締切運転付近でのポンプ1、モータ2、およびインバータ3の過熱を防止することができる。以下、この利点について説明する。
【0038】
吐出圧力一定制御のみを用いて小流量領域での高吐出圧力を実現するためには、全流量領域において、設定圧力を上げる必要がある。しかしながら、この場合、第1の流量Q1において、運転点がモータ2とインバータ3の許容運転領域を超えてしまい、モータ2およびインバータ3が過負荷となる。特に、第1の流量Q1から流量がやや低下した流量領域では、モータ2の回転速度の低下に伴ってモータ2の回転軸に直結された冷却ファンの回転速度が低下する。このため、運転点が許容運転領域を超えた状態であるにもかかわらず、モータ2およびインバータ3の冷却効果が低下して、モータ2およびインバータ3が過熱されてしまう。カスケードポンプは、同じ回転速度で運転する場合、小流量であればあるほど、消費電流が多くなるという特性を有するため、ポンプ1としてカスケードポンプが採用されている場合にはモータ2およびインバータ3が過負荷となりやすい。運転点がモータ2とインバータ3の許容運転領域を超えないようにするためには、より容量が大きなモータおよびインバータを使用すればよいが、ポンプ装置のコスト増大やサイズ増大に繋がってしまう。
【0039】
本発明の第2の制御モードによれば、第2の流量Q2から第1の流量Q1までの第3の流量領域R3においては、ポンプ1の吐出圧力は所定の圧力P1に保たれる。したがって、第1の流量Q1付近での運転点は、モータ2やインバータ3の許容運転領域内であり、過負荷および過熱の問題が生じない。
【0040】
図4に示されるような従来の電流一定制御モードでは、上記した第1の流量Q1付近でのモータ2やインバータ3の過負荷の問題は生じない。これは、電流がモータ2およびインバータ3の許容運転領域内で一定に制御されるからである。しかしながら、モータ2に流れる電流を一定に保持したまま、第1の流量Q1からポンプ1の吐出流量を低下させると、上述したようにモータ2の回転速度が低下して、モータ2の回転軸に直結された冷却ファンの回転速度も低下してしまう。その結果、モータ2およびインバータ3の冷却効果が低下する。特に、締切運転付近では、冷却ファンの回転速度が最小となるため、モータ2やインバータ3の過熱が懸念される。また、締切運転付近では、ポンプ1によって移送される液体量が少ないので、ポンプ1と液体との間での熱交換される熱量も減少してしまう。その結果、ポンプ1にも過熱の問題が生じることがある。
【0041】
本発明の第2の制御モードによれば、電流、電力、または回転速度を一定に制御するのは、第2の流量領域R2だけである。したがって、本発明の第2の制御モードが選択された場合の締切運転付近での電流や電力を、流量0から第1の流量Q1までの全領域で電流を一定に制御する従来の電流一定制御モードの電流や電力に比べて小さくすることもできる。
図10は、
図3に示されるような電流一定制御を行う第2の制御モードおいて、吐出流量0の締切運転時の吐出圧力が
図3に示される例よりも下がるように、第2の流量領域R2における電流値を
図3に示した電流値よりも下げて制御した場合の消費電力グラフである。
図10に示されるように、この第2の制御モードでは、従来の電流一定制御を行う
図4の場合と比べて、締切運転時の吐出圧力が低くなっており、消費電力は、第2の流量領域R2において、
図5の場合と比べて低下している。
【0042】
第2の制御モードにおいてモータ2に供給される電力、またはモータ2の回転速度を一定に制御する場合においても、吐出流量0の締め切り運転時の吐出圧力をさらに下げるように第2の流量領域R2における電力または回転速度を下げるように制御することが可能である。この場合も、
図10に示されるような吐出圧力と吐出流量との関係を構築するこが可能であり、電流を下げる場合と同様に消費電力を低くすることができる。その結果、モータ2やインバータ3の過熱の問題を回避しやすくなる。特に、第2の制御モードにおいて回転速度一定制御が行われる場合は、冷却ファンの回転速度も一定に保たれるので、モータ2やインバータ3の過熱を防止することができる。さらに、上述した温度計26,27,28を用いた温度上限を設けておくと、ポンプ1、モータ2、およびインバータ3の過熱を回避することができる。
【0043】
インバータ制御モードを、圧力一定制御モードである第1の制御モードにするか、または電流、電力、もしくは回転速度を一定に制御する第2の制御モードにするかの選択は、切替スイッチ18をポンプ1の運転が停止中またはポンプの運転中に操作して行うことができる。ポンプ1の運転中に切替スイッチ18が操作されて、インバータ制御モードが第1(又は第2)の制御モードから第2(又は第1)の制御モードに切替られるとき、ポンプ1の吐出流量が第2の流量領域R2内にあると、吐出圧力が急激に変動するおそれがある。この急激な圧力変動を抑えるために、モータ2の回転速度の単位時間あたりの変化量が制限される、モータの加速時間又は減速時間を、切替スイッチ18が操作されてから所定時間の間だけ設けてもよい。
【0044】
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。