特許第6130799号(P6130799)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱日立パワーシステムズ株式会社の特許一覧 ▶ 出光興産株式会社の特許一覧

特許6130799タービン油とタービン組付け油及び該組付け油の製造方法
<>
  • 特許6130799-タービン油とタービン組付け油及び該組付け油の製造方法 図000005
  • 特許6130799-タービン油とタービン組付け油及び該組付け油の製造方法 図000006
  • 特許6130799-タービン油とタービン組付け油及び該組付け油の製造方法 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6130799
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】タービン油とタービン組付け油及び該組付け油の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C10M 171/02 20060101AFI20170508BHJP
   C10N 20/00 20060101ALN20170508BHJP
   C10N 20/02 20060101ALN20170508BHJP
   C10N 30/02 20060101ALN20170508BHJP
   C10N 40/12 20060101ALN20170508BHJP
【FI】
   C10M171/02
   C10N20:00 C
   C10N20:02
   C10N30:02
   C10N40:12
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-38231(P2014-38231)
(22)【出願日】2014年2月28日
(65)【公開番号】特開2015-160924(P2015-160924A)
(43)【公開日】2015年9月7日
【審査請求日】2016年4月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】矢野 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】松岡 三治
(72)【発明者】
【氏名】篠田 実男
【審査官】 牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−259985(JP,A)
【文献】 特開平10−287892(JP,A)
【文献】 特開2005−154760(JP,A)
【文献】 特開2011−006763(JP,A)
【文献】 特開2013−249461(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M 101/00〜177/00
C10N 10/00〜 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービン稼働時にタービン軸の軸受部分に供給されるタービン油と、タービン軸を軸受に組み付ける際に、下側軸受面上に塗布して、タービン軸を支持するタービン組付け油とにおいて、
前記タービン組付け油は、前記タービン油の動粘度より高く、40℃の動粘度が3000〜6000cStであり、且つ15℃における密度が、前記タービン油の密度範囲である0.81〜0.87g/cmの範囲であることを特徴とするタービン油とタービン組付け油。
【請求項2】
前記タービン組付け油の15℃における密度範囲は、0.83〜0.87g/cmであることを特徴とする請求項1に記載のタービン油とタービン組付け油。
【請求項3】
タービン軸を軸受に組み付ける際に、下側軸受面上に塗布して、タービン軸を支持するタービン組付け油の製造方法において、
15℃における密度が0.81〜0.87g/cmであり、40℃における動粘度が1000〜3100cStを有する基油を用意し、
該基油に対して粘度指数向上剤を添加して混合し、15℃における密度を0.83〜0.87g/cmの範囲とし、40℃における動粘度を増大させて3000〜6000cStにすることを特徴とするタービン組付け油の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービン油とタービン軸を軸受に組み付ける際に必要なタービン組付け油及び該組付け油の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービン若しくはガスタービンのタービン軸は、隣接して設けられる他のタービンのタービン軸や、発電機の回転軸や、回転機械の回転軸と、ロータカップリングを介して接続される。
【0003】
図2に示すように、タービン軸1と、隣り合わせて設けられる他のタービン軸2とをロータカップリング3を介して接続するようになっている場合、タービンの組み付けの際に、夫々の回転軸1、2の中心を調整して芯出しを行ってからロータカップリング3の固定ボルト4を締め付けて連結する。
【0004】
この芯出しの際には、タービン軸1を支持する上下2分割の軸受(例えば、ホワイトメタル、銅合金、樹脂等)5は、上下2分割の上半側を組み付けない状態で下半側5aの軸受面上に支持してタービン軸1の芯出をするために、作業者によってタービン軸1を数回転、空転させることが行われている。
この空転作業の際に、下半側5aの軸受面7上に組付け油9を塗布することで、タービン軸1を回転させ易くするとともに、回転の際にタービン軸1と下半側5aの軸受面7との焼き付きを防止している。従って、組付け油は稼働時に軸受に供給されるタービン油に比べて動粘度が高いものが用いられている。
また、隣の他のタービン軸2においても同様に、軸受11の軸受面13上に組み付け油9を塗布して芯出しが行われる。
【0005】
そして、ロータカップリング3によって両軸を締結し、タービンが設置された後には、組付け油9を塗布した状態のまま、上半側5bの軸受が組付けられて、タービン油がタービン油の循環経路を通って軸受面7に充填される。例えば、図2の符号15で示す循環油供給部に図示しない供給配管を通って軸受面7に供給されるようになっている。
そのタービン油の充填に伴い、組付け油9はその役目を終え、除去されることなく(軸受が組み立てられているので除去は難しい)タービン油と混合されて分散して、タービン油の循環経路を通ってタービン油の油タンクに戻り、さらに循環する。
【0006】
一方、タービン組付け油のような工業用潤滑油の組成物に関する発明として、特開2004−250504号が挙げられる。この特許文献1には、油圧作動油、工作機械油、歯車油、圧縮機油、タービン油、軸受油、グリース等の安全性の面と、潤滑油の実用性能の両面から、熱酸化安定性、潤滑性、耐水性、ろ過特性に優れた潤滑油組成部について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−250504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述のよう、組付け油は、タービン油の充填に伴いその役目を終え、除去されることなくタービン油と混合されて分散する。このため、組付け油として、例えば、STP社の商品名「STPオイルトリートメント」(エンジンオイル強化剤)を使用した場合には、タービン油の劣化に伴って、STPオイルトリートメントに含まれている清浄分散剤としての過塩基性カルシウムスルホネート(CaCO3を含む)や、酸化防止剤としてのアルキルジチオりん酸亜鉛(ZnDTP)が劣化し、該劣化変質物質が、タービン軸受のホワイトメタル面に堆積し、堆積物による断熱作用によって軸受温度が上昇するおそれを有している。
【0009】
また、タービン油そのもの、またはタービン油と同等の動粘度を有した潤滑油を、この組付け油として使用した場合には、動粘度が不足してしまい、組付け油の機能、すなわちタービン軸を作業者が空転できる程度に保持でき難く、組付け油としては不適当である。
【0010】
さらに、組付け油としての動粘度を確保する必要があるが、密度レベルがタービン油に比べて大きすぎると、タービン油の循環系を構成するオイルタンク内や、循環経路の配管におけるオイル滞留箇所において、沈降して底部に堆積する問題が生じる。その結果、循環経路における流通損失が増大して、適切な潤滑機能および冷却機能が得られない恐れも有している。
【0011】
前記特許文献1には、このような、組付け油としての機能、つまり作業者が、タービンを下半側の軸受面上に支持して空転可能な低摩擦性を確保でき動粘度を有しつつ、沈降の問題や、劣化変質物質の堆積(デポジット)の問題を解消できる組付け油の組成については、開示されていない。
【0012】
そこで、本発明は、前述の課題に鑑みて、タービン軸を軸受に組み付ける際に、下側軸受面上に塗布して、タービン軸を支持するタービン組付け油において、タービンを空転可能な低摩擦性を確保できる動粘度を有しつつ、タービン油との密度差による油タンク内等での沈降の問題や、劣化変質物質の堆積の問題を解消できるタービン油とタービン組付け油及び該組付け油の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、第1の発明は、タービン稼働時にタービン軸の軸受部分に供給されるタービン油と、タービン軸を軸受に組み付ける際に、下側軸受面上に塗布して、タービン軸を支持するタービン組付け油とにおいて、
前記タービン組付け油は、前記タービン油の動粘度より高く、40℃の動粘度が3000〜6000cStであり、且つ15℃における密度が、前記タービン油の密度範囲である0.81〜0.87g/cmの範囲であることを特徴とする。
【0014】
かかる発明によれば、組付け油の動粘度はタービン油より高く、40℃の動粘度が3000〜6000cSt(図1のQ範囲参照)に設定されることによって、従来から組付け油として使用していたSTPオイルトリートメントが有している動粘度と同等の動粘度は確保されるため、タービンを下半側の軸受面上に保持して空転する際のすべり抵抗を低減でき、組み付け油としての機能は得られる。
なお、3000cSt以下になるとタービンを支持して空転を容易にする組付け油としての機能が低下するとともに、6000cSt以上になる動粘度が高くなり作業者による空転作業が重くなり作業しにくくなる問題がある。
【0015】
また、該組付け油の15℃における密度が前記タービン油と同等であるので、組付け油が、タービン組付け後に稼働を開始して、タービン油の循環経路内に流されて油タンクにも戻っても、密度差によるタンク内やその循環油の経路内での沈降は生じ難く、その結果、循環経路における流路抵抗の増大による潤滑機能の弊害が抑えられる。
【0016】
しかも、本発明の組付け油には、従来使用していたSTPオイルトリートメントに含まれている清浄分散剤としての過塩基性カルシウムスルホネート(CaCO3を含む)や、酸化防止剤としてのアルキルジチオりん酸亜鉛(ZnDTP)を含まれないため、劣化変質物質が、タービン軸受のホワイトメタル面に堆積する問題も生じないため、堆積物による断熱作用によって軸受温度が上昇するおそれも解消される。
【0017】
実施形態においては、前記組付け油の密度は、具体的には、0.83〜0.87g/cm図1のP範囲参照)であるとよい。この範囲の密度であれば、市販されているタービン油や従来使用しているタービン油とほぼ同等の範囲であるため、タービン油の循環経路およびタンク内において組み付け油が沈降して堆積する問題も生じ難い。
【0018】
また、本発明の第2の発明は、タービン軸を軸受に組み付ける際に、下側軸受面上に塗布して、タービン軸を支持するタービン組付け油の製造方法において、
15℃における密度が0.81〜0.87g/cmであり、40℃における動粘度が1000〜3100cStを有する基油を用意し、該基油に対して粘度指数向上剤を添加して混合し、15℃における密度を0.83〜0.87g/cmの範囲とし、40℃における動粘度を増大させて3000〜6000cStにすることを特徴とする。
【0019】
かかる発明によれば、既存の基油に対して粘度指数向上剤を添加混合して所定の密度及び動粘度の範囲、即ち、密度を0.83〜0.87g/cmの範囲に維持しつつ動粘度を増大させて3000〜6000cStにするだけでよいため、簡単に、タービンを下半側の軸受面上に保持して空転する際のすべり抵抗を低減し、さらに沈降を防ぐことができる組付け油を製造することができる。
【0020】
さらに、粘度指数向上剤を添加して製造するため、この粘度指数向上剤は、一般に、ポリアルキルメタクリレートやポリイソブチレンが含まれるため、前述のSTPオイルトリートメントに含まれている清浄分散剤としての可塩基性カルシウムスルホネート(CaCO3を含む)や、酸化防止剤としてのアルキルジチオりん酸亜鉛(ZnDTP)による劣化変質物質の堆積も生じない。
【0021】
【0022】
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、タービン軸を軸受に組み付ける際に、下側軸受面上に塗布して、タービン軸を支持するタービン組付け油において、タービンを空転可能な低摩擦性を確保できる動粘度を有しつつ、タービン油との密度差による油タンク内等での沈降の問題や、劣化変質物質の堆積の問題を解消できるタービン組付け油及び該組付け油の製造方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】動粘度と密度との関係を示し、各種タービン油、従来組付け油、実施例1、2のタービン組付け油の場合における関係を示す。
図2】タービンの組付け時に、タービン組付け油が塗布される箇所を説明するためのカップリング、及び軸受周りの構成を示す説明図である。
図3】従来の組み付け油と、実施例1、2におけるタービン油との沈降速度比の関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下の実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0026】
図2は、本発明のタービン組付け油が適用される、タービンの組み付け状態を示す説明図であり、図2より、タービン軸1と、隣の合わせて設けられた他のタービン軸2とをロータカップリング3を介して接続するようになっている場合、タービンの組み付けの際に、夫々の回転軸1、2の中心を調整して芯出しを行ってからロータカップリング3の固定ボルト4を締め付けて連結する。
【0027】
この芯出しの際には、タービン軸1を支持する上下2分割の軸受(ホワイトメタル)5は、上下2分割の上半側を組み付けない状態で下半側5aの軸受面上に支持してタービン軸1の芯出をするために、作業者によってタービン軸1を数回転、空転させることが行われている。
この空転作業の際に、下半側5aの軸受面7上に組付け油9を塗布することで、タービン軸1を回転させ易くするとともに、回転の際にタービン軸1と下半側5aの軸受面7との焼き付きを防止している。従って、組付け油は稼働時に軸受に供給されるタービン油に比べて動粘度が高いものが用いられている。
また、隣の他のタービン軸2においても同様に、軸受11の軸受面13上に組み付け油9を塗布して芯出しが行われる。
【0028】
そして、ロータカップリング3によって両軸を締結し、タービンが設置された後には、組付け油9を塗布した状態のまま、上半側5bの軸受が組付けられて、タービン油がタービン油の循環経路を通って軸受面7に充填される。例えば、図2の符号15で示す循環油供給部に図示しない供給配管を通って軸受面7に供給されるようになっている。
そのタービン油の充填に伴い、組付け油9はその役目を終え、除去されることなく(軸受が組み立てられているので除去は難しい)タービン油と混合されて分散して、タービン油の循環経路を通ってタービン油の油タンクに回収されて循環するようになっている。
以上の説明は、背景技術として既に説明した内容と同様である。
次に、このタービン組付け油について説明する。
【0029】
(第1実施例)
第1実施例の組付け油は、表1に示すように、基油としては、エクソンモービル社の「エクソンスペクトラシンウルトラ300」を用い、該基油に対して、粘度指数向上剤として三洋化成工業社の「アクルーブ702」を用い、該粘度指数向上剤を添加して調整したものである。
【0030】
すなわち、組付け油を製造するには、表1のように「エクソンスペクトラシンウルトラ300」に三洋化成工業社の「アクルーブ702」を添加して混合し、その混合の際には、三洋化成工業社の「アクルーブ702」を1〜35重量%混合するだけの簡単な手法によって、製造することができる。
【0031】
粘度指数向上剤の添加量が35重量%の割合を超えると、密度も増大し、0.87を超えるため、35%以下が適切である。図1に示すように、0.875を超えると、従来の組付け油1、2の密度に近づき、沈降が生じやすくなり沈降防止効果が薄れるため、密度は、0.875より小さく0.87以下と設定し、「アクルーブ702」を1〜35重量%混合することが好ましい。
なお、基油の「エクソンスペクトラシンウルトラ300」は、表1に示すように15℃の密度が0.852で、40℃の動粘度が3100cStの特性を有している。
【0032】
【表1】
【0033】
表1の密度と動粘度との関係を図1に示す。
図1において、実施例1の値を×印で示す(図1のC部)。この図1において、本実施形態の基油は、(基油1)として示したものであり、タービン油3は一般量販店で市販されているタービン油を確認したものである。また、さらに、従来の組付け油に対しては、従来組付け油1〜3(図1のB部)として示している。
【0034】
図1より、実施例1の密度と動粘度の範囲(1〜35重量%混合)は、従来組み付け油1、2(図1参照)としての粘度3400〜4000(cSt、40℃)の範囲にほぼ位置するとともに、市販タービン油並みの密度(0.83〜0.87g/cm3)(図1のA部)の範囲を有することが確認された。
【0035】
これによって、実施例1のタービン組付け油は、タービン軸を支持するタービン組付け油において、タービンを空転可能な低摩擦性を確保できる動粘度を有しつつ、タービン油との密度差による油タンク内等での沈降の問題を解消できる。
【0036】
なお、基油として、エクソンスペクトラシンウルトラ300を用いた説明をしたが、他に、市販されているSKルブリカンツ社の「SK YUBASE」や「SK PHAZOL」、エクソンモービル社の「エクソンスペクトラシン」、「エクソンスペクトラシンプラス」、JX日鉱日石エネルギーの「JXスーパーオイルMシリーズ」、「JXスーパーオイルNシリーズ」、出光興産の「ダイアナフレシア」等の中で、15℃における密度が0.81〜0.87g/cmのものを、潤滑油基油として用いてもよい。
【0037】
(第2実施例)
第2実施例のタービン組付け油は、図1、表2に示すように、基油(基油2)としてエクソンモービルケミカル社の「エクソンスペクトラシンウルトラ150」を用い、これに対して、粘度指数向上剤として三洋化成工業社の「アクルーブ702」を用いて添加して調整したものである。
タービン組付け油の製造方法は第1実施例と同様であり、「エクソンスペクトラシンウルトラ150」に三洋化成工業社の「アクルーブ702」を添加して混合することで製造する。三洋化成工業社の「アクルーブ702」は、一定範囲(例えば40〜45重量%)混合するだけの簡単な手法によって製造できる。
なお、「エクソンスペクトラシンウルトラ150」は、表1に示すように15℃の密度が0.850で、40℃の動粘度が1500cStの特性を有している。
【0038】
【表2】
【0039】
表2の密度と動粘度との関係を図1に示す。
図1において、実施例2の+印で示す密度と動粘度の範囲(40〜45重量%混合)は、従来組み付け油1、2(図1参照)としての粘度3000〜4000(cSt、40℃)の範囲にほぼ位置するとともに、市販タービン油並みの密度(0.83〜0.87g/cm3)を有することが確認された(小数点以下3桁目は四捨五入して判断)。
実施例1と同様に、タービン軸を支持するタービン組付け油において、タービンを空転可能な低摩擦性を確保できる動粘度を有しつつ、タービン油との密度差による油タンク内等での沈降の問題を解消できる。
【0040】
以上の第1実施例、及び第2実施例の組付け油は、組み付け油としての粘度は、3000〜6000(cSt、40℃)の範囲(図1のQ範囲参照)であることが好ましく、より好ましくは、3400〜4000(cSt、40℃)の範囲であり、及び密度は、市販タービン油並みの密度(0.83〜0.87g/cm3)の範囲(図1のP範囲参照)を実現できることが確認できた。
【0041】
なお、3000cSt以下になるとタービンを支持して空転を容易にする組付け油としての機能が低下するとともに、6000cSt以上になる動粘度が高くなり作業者による空転作業が重くなり作業しにくくなる問題があるため、タービン組付け油の動粘度としては、3000〜6000(cSt、40℃)の範囲が適当である。
【0042】
また、実施例1、2において、組付け油の密度を市販タービン油と同等とすることで、組付け油の沈降を防止することを説明したが、この沈降速度については、ストークスの式(下記式(1))に従うため、タービン油と組付け油との密度差に比例するといえる。
例えば、小さい粒子が液体中を沈降する際の終端速度を示すと次のようになる。
【0043】
Vs=Dp(ρp−ρf)g/18μ (1)
但し、Vs:終端速度、Dp:粒子径、ρp:粒子の密度、ρf:流体の密度、g:重力加速度、μ:流体の粘度
【0044】
従って、この沈降速度が密度差に比例するという関係を用いて、例えば、タービン油と、従来油(図1の従来組付け油1)と、第1実施例と、第2実施例との沈降速度比を算出して比較したものを、表3、及び図3に示す。
従来油を1とした場合において、第1実施例のタービン組付け油では0.12に、第2実施形態のタービン組付け油では0.34に低減していることが確認できた。
従来の組付け油に対して、沈降速度が低下して油タンク内でのタービン組付け油の沈降現象が生じ難くなっていることが確認できた。
【0045】
【表3】
【0046】
なお、実施例1、2において、基油にエクソンスペクトラシンウルトラ150、300に対して、粘度指数向上剤として三洋化成工業社の「アクルーブ702」を添加した例を説明したが、粘度指数向上剤としてはこれに限らず、他のものを使用してもよく、目標とする密度と動粘度とを有したタービン組付け油を得ることができればよい。
粘度指数向上剤は、ポリマーの溶解度上昇のため全体としての粘度低下を少なくするものであり、代表的には、ポリアルキルメタクリレート、ポリイソブチレン等が挙げられる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明によれば、タービン軸を軸受に組み付ける際に、下側軸受面上に塗布して、タービン軸を支持するタービン組付け油において、タービンを空転可能な低摩擦性を確保できる動粘度を有しつつ、タービン油との密度差による油タンク内等での沈降の問題や、劣化変質物質の堆積の問題を解消できるので、タービン組付け油への適用に有効である。
【符号の説明】
【0048】
1、2 タービン軸
3 ロータカップリング
5、11 軸受
5a 下半側
5b 上半側
7、13 軸受面
9 タービン組付け油
15 循環油供給部
図1
図2
図3