特許第6131370号(P6131370)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6131370合成ガス製造触媒用担体及びその製造方法、合成ガス製造触媒及びその製造方法、並びに合成ガスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6131370
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】合成ガス製造触媒用担体及びその製造方法、合成ガス製造触媒及びその製造方法、並びに合成ガスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/58 20060101AFI20170508BHJP
   B01J 32/00 20060101ALI20170508BHJP
   B01J 35/10 20060101ALI20170508BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20170508BHJP
   C01B 3/40 20060101ALI20170508BHJP
【FI】
   B01J23/58 M
   B01J32/00
   B01J35/10 301J
   B01J37/02 101Z
   C01B3/40
【請求項の数】18
【全頁数】39
(21)【出願番号】特願2016-116202(P2016-116202)
(22)【出願日】2016年6月10日
【審査請求日】2016年6月10日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003285
【氏名又は名称】千代田化工建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100096943
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100102808
【弁理士】
【氏名又は名称】高梨 憲通
(74)【代理人】
【識別番号】100128668
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 正巳
(74)【代理人】
【識別番号】100134393
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 克彦
(72)【発明者】
【氏名】八木 冬樹
(72)【発明者】
【氏名】南雲 篤郎
(72)【発明者】
【氏名】金井 隆一
【審査官】 佐藤 哲
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−022983(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/048083(WO,A1)
【文献】 特開2009−066520(JP,A)
【文献】 特開2008−279337(JP,A)
【文献】 特開平09−131533(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0207070(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 − 38/74
C01B 3/00 − 3/58
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタンを含有する軽質炭化水素と二酸化炭素とを含む原料ガスから、一酸化炭素と水素とを含む合成ガスを製造する際に使用される合成ガス製造触媒であって、
酸化マグネシウム粒子と該酸化マグネシウム粒子の表面に存在する酸化カルシウムとを含有し、該酸化カルシウムの含有量が、Ca換算で0.005質量%〜1.5質量%である担体に、ルテニウム及びロジウムの少なくとも一方の金属が担持されていることを特徴とする合成ガス製造触媒。
【請求項2】
前記酸化マグネシウム粒子の表面に、酸化カルシウムがCa換算で0.05mg−Ca/m−MgO〜150mg−Ca/m−MgO存在することを特徴とする請求項1に記載する合成ガス製造触媒。
【請求項3】
前記酸化カルシウムは、前記担体の表面から深さ10%以内に存在することを特徴とする請求項1又は2に記載する合成ガス製造触媒。
【請求項4】
前記酸化マグネシウム粒子が、その表面に、酸化カルシウムを含有する酸化カルシウム含有層を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載する合成ガス製造触媒。
【請求項5】
前記金属の担持量は、前記担体に対して、金属換算で200wtppm〜2000wtppmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載する合成ガス製造触媒。
【請求項6】
前記金属は、前記酸化マグネシウム粒子の表面において、酸化カルシウムの近傍に存在していることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載する合成ガス製造触媒。
【請求項7】
前記金属は、当該合成ガス製造触媒の表面から深さ10%以内に存在することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載する合成ガス製造触媒。
【請求項8】
比表面積が0.1m/g〜1.0m/gであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載する合成ガス製造触媒。
【請求項9】
前記酸化マグネシウム粒子が、その表面に、酸化カルシウムを含有する酸化カルシウム含有層、及び、前記金属を含有する金属含有層を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載する合成ガス製造触媒。
【請求項10】
前記酸化マグネシウム粒子の表面に、前記金属を含有する金属粒子が存在することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載する合成ガス製造触媒。
【請求項11】
メタンを含有する軽質炭化水素と二酸化炭素とを含む原料ガスから、一酸化炭素と水素とを含む合成ガスを製造する際に使用される合成ガス製造触媒の製造方法であって、
ルテニウム及びロジウムの少なくとも一方の金属の水溶液を用いて、酸化マグネシウム粒子と該酸化マグネシウム粒子の表面に存在する酸化カルシウムとを含有し、該酸化カルシウムの含有量が、Ca換算で0.005質量%〜1.5質量%である担体に前記金属を担持させることを特徴とする方法。
【請求項12】
前記酸化マグネシウム粒子の表面に、酸化カルシウムがCa換算で0.05mg−Ca/m−MgO〜150mg−Ca/m−MgO存在することを特徴とする請求項11に記載する方法。
【請求項13】
前記酸化カルシウムは、前記担体の表面から深さ10%以内に存在することを特徴とする請求項11又は12に記載する方法。
【請求項14】
前記酸化マグネシウム粒子が、その表面に、酸化カルシウムを含有する酸化カルシウム含有層を有することを特徴とする請求項11〜13のいずれか一項に記載する方法。
【請求項15】
前記金属の水溶液を前記担体に噴霧することにより前記金属を担持させることを特徴とする請求項11〜14のいずれか一項に記載する方法。
【請求項16】
請求項1〜10のいずれか一項に記載する合成ガス製造触媒の存在下で、メタンを含有する軽質炭化水素と二酸化炭素とを含む原料ガスから一酸化炭素と水素とを含む合成ガスを製造することを特徴とする合成ガスの製造方法。
【請求項17】
前記合成ガス製造触媒が充填された触媒層に、前記原料ガスを、該原料ガス中の二酸化炭素と軽質炭化水素の存在比CO/C(COは二酸化炭素分子のモル数、Cは軽質炭化水素由来の炭素原子のモル数を表す)が、0.2〜1.0の範囲内になるように流通させると共に、触媒層出口のガス温度を700〜900℃にし、触媒層出口のガス圧力を1.5MPaG〜3.0MPaGにし、ガス空間速度GHSVを500/時〜5000/時にすることを特徴とする請求項16に記載する方法。
【請求項18】
前記原料ガスは、さらにスチームを含むことを特徴とする請求項16又は17に記載する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成ガスを製造する際に使用される合成ガス製造触媒用担体及びその製造方法、合成ガス製造触媒及びその製造方法、並びに合成ガス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一酸化炭素と水素を主成分とする合成ガスは、ジメチルエーテル、メタノール、フィッシャー・トロプシュ油、酢酸、ジフェニルメタン・ジイソシアネート、メタクリル酸メチル等の原料として広く利用されている。このような合成ガスは、例えばメタンを含有する軽質炭化水素と二酸化炭素を触媒の存在下で反応させる二酸化炭素リフォーミングや、メタン等を含有する軽質炭化水素とスチーム(水蒸気)を触媒の存在下で反応させるスチームリフォーミング、或いはメタン等を含有する軽質炭化水素と二酸化炭素及びスチームを触媒の存在下で反応させる二酸化炭素/スチームリフォーミングで製造される。
【0003】
二酸化炭素リフォーミング或いは二酸化炭素/スチームリフォーミングは、原料である軽質炭化水素と生成物である一酸化炭素により炭素が析出する副反応が生じるという問題がある。炭素が触媒上に析出することによって触媒被毒が生じ、触媒活性が損なわれ反応率が低下してしまうため、長期間安定的に効率良く合成ガスを製造することは難しい。また、炭素析出はリフォーミング反応器の差圧上昇や閉塞の原因にもなる。
【0004】
炭素が析出するという問題に対して、例えば、アルカリ土類金属酸化物類の少なくとも1種以上の化合物と酸化アルミニウムからなる担体上にルテニウム化合物を担持させた二酸化炭素リフォーミング触媒(特許文献1参照)、第2族〜第4族の金属酸化物又はランタノイド金属酸化物からなる担体又はその金属酸化物を含有するアルミナの複合体からなる担体にロジウムを担持した二酸化炭素リフォーミング触媒(特許文献2参照)や、金属酸化物からなる担体にロジウム、ルテニウム、イリジウム、パラジウム及び白金の中から選ばれる少なくとも1種の触媒金属を担持させ、比表面積が25m/g以下、該担体金属酸化物中の金属イオンの電気陰性度が13.0以下、該触媒金属の担持量が金属換算量で担体金属酸化物に対して0.0005〜0.1モル%である合成ガス製造用触媒(特許文献3)が開示されている。
【0005】
しかしながら、さらに炭素析出が抑制され、長期間安定的に効率良く合成ガスを製造することができる触媒が望まれている。
【0006】
また、二酸化炭素/スチームリフォーミングでは、原料ガス中の二酸化炭素やスチームと炭化水素の存在比CO/C及びHO/Cによって、原料ガスに対する生成する合成ガスの比が変化する。二酸化炭素(CO)及びスチーム(HO)と炭素(C)の存在比(モル比)と、原料ガスと生成する合成ガスの比(体積比)の関係を図1に示す。原料ガス/生成する合成ガス(体積比)が小さくなるCO/C比及びHO/Cでリフォーミングを行うことが、合成効率の観点から望ましい。リフォーマー装置をコンパクトにでき、またランニングコスト(原料の量)を低減できる等のメリットが得られるためである。
【0007】
しかしながら、上記原料ガス/生成する合成ガスが小さくなるCO/C比及びHO/Cでは、触媒表面上に炭素析出が非常に生じやすいため、二酸化炭素/スチームリフォーミングを行い難かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−279003号公報
【特許文献2】特開平9−168740号公報
【特許文献3】特許3345782号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
これらの課題に鑑み、本発明は、合成ガスを製造する際に、炭素析出を抑制でき、長期間安定的に効率良く合成ガスを製造することができる合成ガス製造触媒用担体及びその製造方法、合成ガス製造触媒及びその製造方法、並びに、該合成ガス製造触媒を用いた合成ガス製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意研究の結果、酸化マグネシウム粒子と該酸化マグネシウム粒子の表面に存在する酸化カルシウムとを含有し、該酸化カルシウムの含有量が、Ca換算で0.005質量%〜1.5質量%である合成ガス製造触媒用担体を用いることにより、上記目的を達成できることを見出し、もって本発明を完成させた。
【0011】
かかる本発明の合成ガス製造触媒用担体は、メタンを含有する軽質炭化水素と二酸化炭素とを含む原料ガスから、一酸化炭素と水素とを含む合成ガスを製造する際に使用される合成ガス製造触媒用担体であって、酸化マグネシウム粒子と該酸化マグネシウム粒子の表面に存在する酸化カルシウムとを含有し、該酸化カルシウムの含有量が、Ca換算で0.005質量%〜1.5質量%であることを特徴とする。
【0012】
前記酸化マグネシウム粒子の表面に、酸化カルシウムがCa換算で0.05mg−Ca/m−MgO〜150mg−Ca/m−MgO存在することが好ましい。ここで「mg−Ca/m−MgO」という単位で表す量は、合成ガス製造触媒用担体を構成する酸化マグネシウム粒子の単位比表面積(1m)あたりのカルシウム存在量をmgで表したものであり、当該担体のカルシウム含有量(mg/g)を当該担体の比表面積(m/g)で除した値である。
【0013】
また、前記酸化カルシウムは、合成ガス製造触媒用担体の表面から深さ10%以内に存在することが好ましい。すなわち、前記酸化カルシウムは、好ましくは、合成ガス製造触媒用担体を構成する酸化マグネシウム粒子の表面からの深さが当該粒子の粒径の10%以内である領域に存在する。
【0014】
前記酸化マグネシウム粒子の表面が酸化カルシウム含有層を形成していることが好ましい。
【0015】
本発明の合成ガス製造触媒用担体の製造方法は、メタンを含有する軽質炭化水素と二酸化炭素とを含む原料ガスから、一酸化炭素と水素とを含む合成ガスを製造する際に使用される合成ガス製造触媒用担体の製造方法であって、酸化カルシウムを含有する原料酸化マグネシウム粒子を1000℃以上で焼成して、原料酸化マグネシウム粒子を凝集させて酸化マグネシウム粒子を形成すると共に、該酸化マグネシウム粒子の表面に酸化カルシウムを析出させることにより、酸化マグネシウム粒子と該酸化マグネシウム粒子の表面に存在する酸化カルシウムとを含有し該酸化カルシウムの含有量がCa換算で0.005質量%〜1.5質量%である合成ガス製造触媒用担体を得ることを特徴とする。
【0016】
前記原料酸化マグネシウム粒子に対して炭素を1質量%〜5質量%の範囲内で添加した後に、焼成することが好ましい。
【0017】
前記合成ガス製造触媒用担体は、前記酸化マグネシウム粒子の表面に、酸化カルシウムがCa換算で0.05mg−Ca/m−MgO〜150mg−Ca/m−MgO存在することが好ましい。
【0018】
前記合成ガス製造触媒用担体は、前記酸化カルシウムが、合成ガス製造触媒用担体の表面から深さ10%以内に存在することが好ましい。
【0019】
本発明の合成ガス製造触媒は、上記合成ガス製造触媒用担体に、ルテニウム及びロジウムの少なくとも一方の金属が担持されていることを特徴とする。
【0020】
前記金属の担持量は、合成ガス製造触媒用担体に対して、金属換算で200質量ppm〜2000質量ppmであることが好ましい。
【0021】
また、前記金属は、前記酸化マグネシウム粒子の表面において、酸化カルシウムの近傍に存在していることが好ましい。
【0022】
また、前記金属は、合成ガス製造触媒の表面から深さ10%以内に存在することが好ましい。
【0023】
そして、合成ガス製造触媒の比表面積が0.1m/g〜1.0m/gであることが好ましい。
【0024】
前記酸化マグネシウム粒子は、その表面に、酸化カルシウムを含有する酸化カルシウム含有層、及び、前記金属を含有する金属含有層を有していてもよい。
【0025】
また、前記酸化マグネシウム粒子の表面に、前記金属を含有する金属粒子が存在していてもよい。
【0026】
本発明の合成ガス製造触媒の製造方法は、ルテニウム及びロジウムの少なくとも一方の金属の水溶液を用いて、上記合成ガス製造触媒用担体に前記金属を担持させることを特徴とする。
【0027】
前記金属の水溶液を前記合成ガス製造触媒用担体に噴霧することにより前記金属を担持させることが好ましい。
【0028】
本発明の合成ガスの製造方法は、上記合成ガス製造触媒の存在下で、メタンを含有する軽質炭化水素と二酸化炭素とを含む原料ガスから一酸化炭素と水素とを含む合成ガスを製造することを特徴とする。
【0029】
また、前記合成ガス製造触媒が充填された触媒層に、前記原料ガスを、該原料ガス中の二酸化炭素と軽質炭化水素の存在比CO/C(COは二酸化炭素分子のモル数、Cは軽質炭化水素由来の炭素原子のモル数を表す)が、0.4〜1.0の範囲内になるように流通させると共に、触媒層出口のガス温度を700〜900℃にし、触媒層出口のガス圧力を1.5MPaG〜3.0MPaGにし、ガス空間速度GHSVを500/時〜5000/時にすることが好ましい。
【0030】
前記原料ガスは、さらにスチームを含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0031】
本発明の合成ガス製造触媒用担体を用いた合成ガス製造触媒の存在下でリフォーミングを行うことにより、炭素析出を顕著に抑制することができ、長期間安定的に効率良く合成ガスを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】二酸化炭素/スチームリフォーミングにおける、二酸化炭素/スチームと炭素の存在比(モル比)と、原料ガスと生成する合成ガスの比(体積比)の関係を示す図である。
図2】本発明の合成ガス製造触媒用担体を構成する酸化マグネシウム粒子の断面形状の例を模式的に示す図である。
図3】本発明の合成ガス製造触媒用担体を構成する酸化マグネシウム粒子の表面に酸化カルシウムが存在する様子を模式的に示す図である。
図4】実施例1の合成ガス製造触媒用担体のEPMA分析結果である。
図5】実施例1の合成ガス製造触媒のEPMA分析結果である。
図6】実施例1の還元処理後の合成ガス製造触媒のEDXにより元素マッピングした結果である。
図7】比較例2の合成ガス製造触媒のEPMA分析結果である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の合成ガス製造触媒用担体は、メタンを含有する軽質炭化水素と二酸化炭素とを含む原料ガスから、一酸化炭素と水素とを含む合成ガスを製造する際に使用される触媒に用いる担体である。そして、本発明の合成ガス触媒用担体は、酸化マグネシウム粒子と該酸化マグネシウム粒子の表面に存在する酸化カルシウムとを含有し、該酸化カルシウムの含有量が、Ca換算で0.005質量%〜1.5質量%である。
【0034】
酸化マグネシウム粒子の形態は特に限定されず、粒子が個別に単独で存在するものや複数個の粒子が凝集したもの等が挙げられる。図2に、一例として酸化マグネシウム粒子の断面の模式図を示す。図2に示すように、酸化マグネシウム粒子の形状としては、複数個の粒子が凝集および溶融して形成された球状(a)、2つの原料酸化マグネシウム粒子が凝集する等して形成され、中央部51と中央部51より大きい径を有する両端部52で構成されるピーナッツ状(b)、3つの原料酸化マグネシウム粒子が凝集した形状(c)等が挙げられる。なお、酸化マグネシウム粒子である必要があり、酸化ジルコニウム(ZnO)や、アルミナ(Al)等のその他の金属酸化物では、本発明の効果を得ることはできない。
【0035】
酸化カルシウム(CaO)が酸化マグネシウム(MgO)粒子の表面に存在する形態は特に限定されない。例えば、酸化マグネシウム粒子の表面の全部または一部を、酸化カルシウムを含有する酸化カルシウム含有層が覆っていてもよい。なお、酸化マグネシウム粒子表面に形成された酸化カルシウム含有層は、酸化マグネシウムを含んでいてもよい。また、酸化カルシウムは、酸化マグネシウム粒子の表面に局所的に偏在する、具体的には例えば、酸化マグネシウム粒子の表面の凹部に酸化カルシウムが存在していてもよい。図3に、酸化マグネシウム粒子の表面にさまざまな形態で酸化カルシウムが存在する合成ガス製造触媒用担体の模式図を示す。図3に示すように、合成ガス製造触媒用担体10は、酸化マグネシウム粒子11の表面全体に酸化カルシウム含有層12が形成されたもの(a)や酸化マグネシウム粒子11の表面の一部に酸化カルシウム層13が形成されたもの(b)であってもよく、また、酸化マグネシウム粒子の表面の凹部等に局所的に存在していてもよい。
【0036】
本発明の合成ガス触媒用担体は、このように酸化マグネシウム粒子と該酸化マグネシウム粒子の表面に存在する酸化カルシウムとを含有する。そして、酸化マグネシウム粒子の表面に存在する酸化カルシウムの含有量は、Ca換算で0.005質量%〜1.5質量%、好ましくは0.3質量%〜1.4質量%である。このような構成にすることにより、二酸化炭素リフォーミングや、二酸化炭素リフォーミング/スチームリフォーミングを行う際の炭素析出を顕著に抑制することができ、長期間安定的に効率良く合成ガスを製造することができる。酸化マグネシウム粒子の表面に存在する酸化カルシウムのCa換算のCa含有量が0.005質量%よりも少ない場合、触媒表面に炭素析出が起り易くなり、酸化マグネシウム粒子の表面に存在する酸化カルシウムのCa換算のCa含有量が1.5質量%よりも多い場合には触媒活性が低下し、本発明の効果が得られない。
【0037】
このような酸化マグネシウム粒子の表面に存在する酸化カルシウムのCa換算の含有量は、以下の方法で求められる。すなわち、酸化マグネシウム粒子に存在するCa換算の全Ca量を、試料(合成ガス触媒用担体)を王水で溶解しICP発光分析装置で求めればよい。このとき、酸化マグネシウム粒子の表面に存在するCaの量をEPMA(電子プローブマイクロ分析)で分析し、Caが酸化マグネシウム粒子の内部に存在せず、Caのほぼ全量が酸化マグネシウム粒子の表面に存在することをEPMA分析で確認することで、上記ICP発光分析で定量したCa量を、酸化マグネシウム粒子の表面に存在する酸化カルシウムのCa換算の含有量として求めることができる。
【0038】
また、合成ガス製造触媒用担体は、酸化マグネシウム粒子の表面に、酸化カルシウムがCa換算で0.05mg−Ca/m−MgO〜150mg−Ca/m−MgO存在することが好ましい。酸化マグネシウム粒子表面の酸化カルシウムのCa換算量(mg−Ca/m−MgO)は、先に述べたように、酸化マグネシウム粒子1g当たりに存在する酸化カルシウムのCa換算の含有量(単位:mg/g)を、合成ガス製造触媒用担体の比表面積(単位:m/g)で除すことにより求められる。
【0039】
酸化カルシウムは、合成ガス製造触媒用担体10の表面から深さ10%以内に存在することが好ましい。「合成ガス製造触媒用担体の表面から深さ10%以内」とは、先に述べたように、合成ガス製造触媒用担体を構成する酸化マグネシウム粒子の表面からの深さが当該粒子の粒径の10%以内の領域をいうが、より詳しく述べれば、合成ガス製造触媒用担体を構成する酸化マグネシウム粒子の重心と該重心から最も遠い表面との距離を当該粒子の半径rとしたときに、当該粒子の表面から重心に向かってr/10の距離の位置までを意味する。
【0040】
合成ガス製造触媒用担体を構成する酸化マグネシウム粒子の大きさは、例えば最大径0.1〜10μmであるが、これに限られるものではない。また、酸化カルシウム含有層の厚さは例えば5〜70nmである。
【0041】
合成ガス製造触媒用担体の形状は、例えば、リング状、マルチホール状、タブレット状や、ペレット状である。
【0042】
上記本発明の合成ガス製造触媒用担体は、例えば、酸化カルシウムを含有する原料酸化マグネシウム粒子を1000℃以上で焼成して、原料酸化マグネシウム粒子を凝集させて酸化マグネシウム粒子を形成すると共に、該酸化マグネシウム粒子の表面に酸化カルシウムを析出させることにより製造することができる。
【0043】
この製造方法においては、酸化カルシウムを含有する原料酸化マグネシウム粒子を用いる。そして、この原料酸化マグネシウム粒子中に含まれる酸化カルシウム含有量は、0.005質量%〜1.5質量%、特には0.3質量%〜1.4質量%である。ここで、「酸化カルシウムを含有する原料酸化マグネシウム粒子」とは、原料として用いる原料酸化マグネシウム粒子が酸化カルシウムを0.005質量%〜1.5質量%の範囲内で内部に例えば均一に含むものである。したがって、従来通常用いられている市販の酸化マグネシウム等の純度の高い酸化マグネシウムは酸化カルシウム含有量が少ないため、本発明において原料酸化マグネシウム粒子として用いることはできない。
【0044】
このような酸化カルシウムを含有する原料酸化マグネシウム粒子を、必要に応じて所望の触媒用担体の形状、例えば、リング状、マルチホール状、タブレット状、ペレット状に成形する。
【0045】
成形する際に、炭素等の滑沢材を添加してもよい。例えば、原料酸化マグネシウム粒子に対して、炭素を1質量%〜5質量%の範囲内で添加することが好ましい。
【0046】
必要に応じて成形した酸化カルシウムを含有する原料酸化マグネシウム粒子を、1000℃以上で焼成して、原料酸化マグネシウム粒子を凝集させて酸化マグネシウム粒子を形成すると共に、該酸化マグネシウム粒子11の表面に酸化カルシウムを析出させることにより、本発明の合成ガス製造触媒用担体を製造することができる。
【0047】
原料酸化マグネシウム粒子を詳しくは後述する特定の条件で焼成すると、原料酸化マグネシウム粒子が凝集して酸化マグネシウム粒子を形成する。また、該特定の条件での焼成により原料酸化マグネシウム粒子の内部に存在する酸化カルシウムが表面に染み出す等して酸化カルシウムが酸化マグネシウム粒子の表面に析出し、酸化マグネシウム粒子表面に酸化カルシウムを含有する酸化カルシウム含有層を形成したり、酸化マグネシウム粒子表面の凹部等に局所的に存在する。
【0048】
原料酸化マグネシウム粒子に含まれる酸化カルシウム量が少ない場合は、表面に析出する酸化カルシウム量が不十分になり、本発明の炭素析出を顕著に抑制する効果は得られない。
【0049】
また、焼成温度は、1000℃以上である必要がある。焼成温度が低いと、原料酸化マグネシウム粒子の内部に存在する酸化カルシウムが酸化マグネシウム粒子の表面に析出せず、本発明の効果が得られない。焼成温度は、1400℃以下であることが好ましい。
【0050】
また、本発明の合成ガス製造触媒用担体は、上記以外の方法でも製造することができる。具体的には、高純度の酸化マグネシウム(例えばCaO含有量がCa換算で0.01質量%以下で純度99.9wt%以上のMgO)を、60〜80℃にて煮沸しながら攪拌してMg(OH)を得ると共に、同時にCa(OH)の水溶液を滴下し攪拌することによって、Ca添加型Mg(OH)粒子を得る。このようにして得られたCa添加型Mg(OH)粒子は、CaOを内部にほぼ均一に含む。そして、得られたCa添加型Mg(OH)粒子を、上記の製造方法と同様に、必要に応じて滑沢材の添加や成形をして1000℃以上好ましくは1400℃以下で焼成して、Ca添加型Mg(OH)粒子を凝集させて酸化マグネシウム粒子を形成すると共に、該酸化マグネシウム粒子の表面に酸化カルシウムを析出させることにより、本発明の合成ガス製造触媒用担体を製造することができる。
【0051】
なお、いずれの製造方法においても、基本的に酸化カルシウムを添加する操作は行わない。
【0052】
ここで、原料酸化マグネシウム粒子、Ca添加型Mg(OH)粒子やその成形体を焼成する条件、具体的には、上記原料酸化マグネシウム粒子やCa添加型Mg(OH)粒子の酸化カルシウム含有量や焼成温度に加えて、焼成雰囲気、焼成時間、滑沢材等の添加剤の種類及び添加量、焼成する成形体の大きさや形状等によって、原料酸化マグネシウム粒子やCa添加型Mg(OH)粒子の凝集、酸化マグネシウム粒子表面への酸化カルシウムの析出の有無や、時期及び程度が変化する。したがって、酸化マグネシウム粒子やCa添加型Mg(OH)粒子を凝集させて酸化マグネシウム粒子を形成すると共に該酸化マグネシウム粒子の表面に酸化カルシウムを析出させて酸化カルシウム含有層を形成するためには、これら焼成条件のバランスを調整する必要がある。
【0053】
本発明の合成ガス製造触媒は、上記本発明の合成ガス製造触媒用担体に、ルテニウム(Ru)及びロジウム(Rh)の少なくとも一方の金属が担持されたものである。本発明の合成ガス製造触媒においては、担持させる金属は、RuやRhである必要がある。Ni、Ir、Os等その他の金属を担持させても、本発明の効果を得ることはできない。
【0054】
RuやRhの担持量は、合成ガス製造触媒用担体に対して、金属換算で200質量ppm〜2000質量ppmであることが好ましい。Ru及びRhの両方を担持させた場合は、Ru及びRhそれぞれの換算値の合計が200質量ppm〜2000質量ppmであることが好ましい。RuやRhの担持量は、ICP発光分析装置で求めることが出来る。具体的には触媒を試料を王水で溶解したのち、所定の測定波長を照射し定量することが出来る。
【0055】
合成ガス製造触媒の比表面積は、0.1m/g〜1.0m/gであることが好ましい。なお、本発明において、「比表面積」とは、窒素ガスの吸着量からBET吸着等温式を利用して算出したBET比表面積であり、例えば、比表面積測定装置(製品名「AUTOSORB−1」、ユアサアイオニクス(株)社製)を使用し、液体窒素を用いて多点法によって測定される値である。
【0056】
合成ガス製造触媒に担持されるRu及びRhは、合成ガス製造触媒の表面から深さ10%以内に存在することが好ましい。「合成ガス製造触媒の表面から深さ10%以内」とは、上に述べた合成ガス製造触媒用担体の場合と同様に、合成ガス製造触媒の重心と該重心から最も遠い該合成ガス製造触媒の表面との距離を合成ガス製造触媒の半径rとした時に、合成ガス触媒の表面から、重心に向かってr/10の距離の位置までを意味する。
【0057】
合成ガス製造触媒用担体に担持されるRuやRhの形態は特に限定されない。RuやRhは、酸化マグネシウム粒子の表面において、酸化カルシウムの近傍に存在していることが好ましい。酸化カルシウム層と同様に、酸化マグネシウム粒子の表面の全部または一部を、Ru及びRhの少なくとも一方の金属を含有する金属含有層が覆っていてもよい。また、RuやRhを含有する金属粒子が、酸化マグネシウム粒子の表面に存在していてもよい。さらに、RuやRhは、酸化マグネシウム粒子の表面において、局所的に偏在していてもよく、具体的には例えば、酸化マグネシウム粒子の表面の凹部にRuやRhが存在していてもよい。このような、層状や粒子状等のRuやRuを、酸化カルシウム層の少なくとも一部が覆っていてもよく、また、層状や粒子状等のRuやRhと層状や粒子状等の酸化カルシウムが隣り合っていてもよい。例えば、金属含有層が、酸化カルシウム層の上や下に形成されていてもよく、また、金属層と酸化カルシウム層が隣り合っていてもよい。
【0058】
合成ガス製造触媒を構成する酸化マグネシウム粒子の大きさは、例えば最大径0.1〜10μmである。酸化カルシウム含有層の厚さは、例えば5〜70nmである。金属含有層の厚さは、例えば5〜70nmである。
【0059】
合成ガス製造触媒用担体にRu及びRhの少なくとも一方の金属を担持させる方法としては、Ru及びRhの少なくとも一方の金属の水溶液を用い、この水溶液を合成ガス触媒用担体に噴霧する方法が挙げられる。Ru及びRhの少なくとも一方の金属の水溶液は、RuやRhの硝酸塩、塩化物等の無機酸塩や、酢酸塩等の有機酸塩などの金属原料を、水に溶解させることで得られる。噴霧する水溶液の量は、例えば合成ガス製造触媒用担体の吸水量の1.0〜1.3質量倍の量とすることが好ましい。なお、合成ガス製造触媒用担体の吸水量は、Incipient-wetness法で求めることが出来る。すなわち合成ガス製造触媒用担体に純水をマイクロピペット或いはビュレットでごく少量ずつ滴下し、触媒表面が湿ってくるまでの滴下量を測定する。
【0060】
また、合成ガス製造触媒用担体を水中に分散させた分散液に、担持させる金属の塩又はその水溶液を添加し混合する含浸法で、担持させてもよい。
【0061】
RuやRhを担持させた合成ガス製造触媒用担体を、乾燥および焼成することにより、合成ガス製造触媒が得られる。乾燥や焼成の条件は特に限定されないが、例えば、乾燥温度は50〜150℃、乾燥時間は1〜3時間、焼成温度は300〜500℃、焼成時間は1〜5時間である。
【0062】
上記合成ガス製造触媒、すなわち合成ガス製造触媒用担体にRu又はRhを担持させ乾燥および焼成した後の合成ガス製造触媒用担体を、350℃以上で窒素に対する水素のモル比(水素/窒素)が1〜10の割合で水素及び窒素に接触させる、又は、350℃以上で水蒸気に対する水素のモル比(水素/水蒸気)が1〜10の割合で水素及び水蒸気に接触させてもよい。これにより、還元処理(脱塩素)され、活性化された合成ガス製造触媒が得られる。350℃以上で、窒素に対する水素のモル比(水素/窒素)が1〜10の割合で、水素及び窒素に接触させることにより、合成ガス製造触媒を活性化することができる。
【0063】
本発明の合成ガスの製造方法は、上記合成ガス製造触媒の存在下で、メタンを含有する軽質炭化水素と二酸化炭素とを含む原料ガスから、一酸化炭素と水素とを含む合成ガスを製造するものである。本発明の合成ガス製造触媒は、炭素析出量を顕著に抑制することができる。したがって、長期間安定的に効率良く二酸化炭素リフォーミングや二酸化炭素/スチームリフォーミングを行うことができる。例えば、700時間以上二酸化炭素リフォーミングや二酸化炭素/スチームリフォーミングを行っても、初期の合成効率を維持できる。
【0064】
軽質炭化水素としては、メタン、エタン等の炭素数1〜6の炭化水素が挙げられる。例えばメタンを主成分とする天然ガスを用いることができる。
【0065】
メタンを含有する軽質炭化水素と二酸化炭素を含む原料ガスから一酸化炭素と水素を含む合成ガスを製造する反応(二酸化炭素リフォーミング)は、例えば下記式(1)で表される。下記式(1)は、軽質炭化水素としてメタンを用いた例である。
CH+CO→2H+2CO (1)
【0066】
二酸化炭素リフォーミングは、固定床方式、流動床方式、懸濁床方式、移動床方式等の各種触媒方式で行うことができる。例えば、メタンを含有する軽質炭化水素及び二酸化炭素を含有する原料ガスを、加熱炉中に設置され、触媒が充填された触媒層を有する反応器に通すことにより、水素と一酸化炭素を含む合成ガスを製造することができる。
【0067】
反応条件は特に限定されないが、例えば触媒層出口のガス温度は700〜900℃、触媒層出口のガス圧力は1.5MPaG〜3.0MPaG、ガス空間速度GHSVは500/時〜5000/時であることが好ましい。
【0068】
原料ガスを、該原料ガス中の二酸化炭素とメタンを含有する軽質炭化水素の存在比CO/C(COは二酸化炭素分子のモル数、Cは炭化水素由来の炭素原子のモル数を表す)が、0.4〜1.0の範囲内になるように流通させることが好ましい。このCO/Cの範囲内で反応させることにより、原料ガス/生成する合成ガス(体積比)が小さくなり、非常に効率良く合成ガスを製造することができる。従来は、このCO/Cの範囲内で反応させると炭素析出量が多いという問題があった。しかしながら、本発明の合成ガス製造触媒は、炭素析出量を顕著に抑制することができるため、上記CO/Cの範囲内で反応させても炭素析出が少なく、長期間安定的に効率良く二酸化炭素リフォーミングを行うことができる。
【0069】
また、メタンを含有する軽質炭化水素と二酸化炭素に加えてスチーム(水蒸気)を含有する原料ガスを用いてもよい。すなわち、二酸化炭素/スチームリフォーミングとしてもよい。これにより、二酸化炭素リフォーミング及びスチームリフォーミングの両方の反応により、合成ガスを製造することができる。スチームリフォーミングは、例えば下記式(2)で表される。下記式(2)は、軽質炭化水素としてメタンを用いた例である。二酸化炭素リフォーミングとスチームリフォーミングとでは、得られる合成ガスのHとCOの比率が異なるため、二酸化炭素とスチームの比率を調整することにより、所望の比率のHとCOを含有する合成ガスを得ることができる。メタンを含有する軽質炭化水素と二酸化炭素とスチームを含有する原料ガスを用いる場合は、原料ガス中のスチームと軽質炭化水素との存在比HO/C(HOはスチームのモル数、Cは炭化水素由来の炭素原子のモル数を表す)が、0.1〜3.0の範囲内になるように流通させることが好ましい。
CH+HO→3H+CO (2)
【0070】
なお、上記活性化をしていない合成ガス製造触媒を用いる場合は、該合成ガス製造触媒を、350℃以上で窒素に対する水素のモル比(水素/窒素)が1〜10の割合で水素及び窒素に接触させる、又は、350℃以上でスチームに対する水素のモル比(水素/スチーム)が1〜10の割合で水素及びスチームに接触させた後に、該合成ガス製造触媒を原料ガスに接触させればよい。
【実施例】
【0071】
以下に、本発明の更なる理解のために実施例を用いて説明するが、実施例はなんら本発明を限定するものではない。
【0072】
<実施例1>
内部に酸化カルシウム(CaO)をCa換算で0.3wt%含有し純度98.7wt%の酸化マグネシウム(MgO)の粉末(原料酸化マグネシウム粒子)に、滑択材としてMgO粉末に対して3.0wt%のカーボンを混合し、直径1/4インチの円筒状のペレットを形成した。形成したペレットを空気中で1180℃で3h(時間)焼成し、触媒担体を得た。
【0073】
得られた触媒担体をICP発光分析(以下単に「ICP」とも記載する)で分析したところ、該触媒担体は、CaOをCa換算で0.3wt%含有していた。なお、EPMA分析結果から、触媒担体の内部にCaが存在せず、CaはMgO粒子表面のみに存在していることが確認された。また、得られた触媒担体を構成するMgO粒子は原料酸化マグネシウム粒子よりも顕著に大きかった。したがって、原料MgO粒子が凝集してMgO粒子を形成し、且つ、原料MgO粒子が含有するCaOがMgO粒子表面に析出したと言える。触媒担体の断面のEPMA分析結果を図4に示す。また、得られた触媒担体のEPMA分析による各元素のmol%換算の定量結果を表1に示す。なお、分析点P1〜P10は、図4の矢印で示した箇所である。
【0074】
得られた触媒担体は、図4に示されるように、球状やピーナッツ状の粒子であった。そして、各触媒担体粒子は、MgO粒子の表面の一部が、CaOを含有する層(CaO含有層)で被覆され、また、MgO粒子表面の凹部(くぼみ)にCaOが存在していた。また、これらCaOは触媒担体の表面から深さ10%以内に存在していた。MgO粒子表面の酸化カルシウムのCa換算量(mg−Ca/m−MgO)(以下「MgO粒子表面のCaOの存在量」とも記載する)を求めたところ、Ca換算で30mg−Ca/m−MgOであった。また、図4および表1に示すように、ピーナッツ状粒子の中央部(分析点P1及びP9)は、Caをごく微量しか含まず、ほとんどのCaは両端部(分析点P2〜P8及びP10)に含まれていた。
【0075】
【表1】
【0076】
次に、得られた触媒担体に、0.5wt%のRuを含む硝酸ニトロシルルテニウム水溶液を、触媒担体1.0gに対し0.15cc(触媒担体の吸水量の1.0倍)噴霧し、Ruを担持した触媒担体を得た。
【0077】
次に、得られたRuを担持した触媒担体を空気中においてオーブンで120℃で2.5時間乾燥した後、空気中において電気炉で400℃で2.0時間焼成し、触媒を得た。
【0078】
得られた触媒は、Ruを触媒に対し750wtppmの割合で含有するもので、そのBET比表面積は0.10m/gであった。また、得られた触媒を、触媒担体と同様に、EPMA分析を行った。触媒のEPMA分析結果を図5に示す。また、得られた触媒のEPMA分析による各元素のmol%換算の定量結果を表2に示す。なお、分析点P1〜P11は、図5の矢印で示した箇所である。
【0079】
図5に示すように、得られた触媒は、触媒粒子の表面にRuが担持されていた。そして、Ruは触媒表面から深さ10%以内に存在していた。また、RuとCaの位置が重複するため、該Ruの近傍にCaOが存在していると言える。なお、触媒担体中に含まれるRu及びCaOは、全てMgO粒子表面に存在していた。
【0080】
また、図5及び表2に示すように、ピーナッツ状粒子の中央部(分析点P3及びP10)は、Caをごく微量しか含まず、ほとんどのCaは両端部(分析点P1〜P2、P4〜P9及びP11)に含まれていた。
【0081】
【表2】
【0082】
<反応例1>
実施例1で調製した触媒50ccを反応器の触媒層に充填してメタンのCOリフォーミング試験を実施した。なお、該反応器は、触媒層の上から原料ガスを導入し、触媒層に導入された原料ガスは下降して触媒層を通過する構成である。
【0083】
具体的には、まず、予めH及びHOをモル比(H/HO=1/0)である混合ガスを500℃で1時間触媒層を流通させて触媒と接触させることにより、還元処理(触媒の活性化)を行った。その後、CH:CO:HO(モル比)=1:2.5:1.5の原料ガスを、触媒層出口のガス圧力1471kPaG,触媒層出口のガス温度850℃,メタン基準のGHSV=2,500/時の条件で処理した。
【0084】
この結果、反応開始から5時間経過後のCH転化率は92.5%(実験条件下でのCHの平衡転化率=92.5%)であり、また反応開始から1500時間経過後のCHの転化率は、92.5%であった。また、1500時間経過後に、触媒を上下方向に4等分割して抜き出ししたところ、触媒上にカーボンが析出しており、カーボン/触媒は、上部から順にそれぞれ0.20wt%(Top)、0.15wt%(Md1)、0.10wt%(Md2)、0.10wt%(Btm)であった。なお、CHの転化率は、下記式で定義される。
CH転化率(%)=(A−B)/A×100
A:原料ガス中のCHモル数
B:生成物(触媒層から排出されるガス)中のCHモル数
【0085】
また、反応例1記載の還元処理条件で処理した触媒(原料ガス通気前の触媒)のS−TEM分析を行った。EDXにより元素マッピングした結果を図6に示す。図6において、上段の左側から順にCa、Mg、Ru、下段はTEM写真である。
【0086】
この結果、粒子状のRuが触媒表面に存在していることが確認された。また、図6に示すように、RuはCa近傍に存在していることが確認された。
【0087】
<実施例2>
内部にCaOをCa換算で0.3wt%含有し純度98.7wt%以上のMgOの粉末に滑択材としてMgO粉末に対して3.0wt%のカーボンを混合し、直径1/4インチの円筒状のペレットを形成した。形成したペレットを空気中で1180℃で3時間焼成し、触媒担体を得た。
【0088】
得られた触媒担体を、実施例1と同様に、ICPで分析したところ、該触媒担体はCaOをCa換算で0.3wt%含有していた。なお、EPMA分析結果から、触媒担体の内部にCaが存在せず、CaはMgO粒子表面のみに存在していることが確認された。また、得られた触媒担体を構成するMgO粒子は原料酸化マグネシウム粒子よりも顕著に大きかった。したがって、原料MgO粒子が凝集してMgO粒子を形成し、且つ、原料MgO粒子が含有するCaOがMgO粒子表面に析出したと言える。また、得られた触媒担体は、実施例1と同様に、粒子状であり、MgO粒子の表面の一部が、CaOを含有する層で被覆され、また、MgO粒子表面の凹部にCaOが存在していた。また、これらCaOは触媒担体の表面から深さ10%以内に存在していた。そして、MgO粒子表面のCaOの存在量を求めたところ、Ca換算で30mg−Ca/m−MgOであった。また、ピーナッツ状粒子の中央部はCaをごく微量しか含まず、ほとんどのCaは両端部に含まれていた。
【0089】
次に、得られた触媒担体に、0.55wt%のRuを含む塩化ルテニウム水和物(RuCl)水溶液を、触媒担体1.0gに対し0.17cc(触媒担体の吸水量の1.1倍)にて噴霧し、Ruを担持した触媒担体を得た。
【0090】
次に、得られたRuを担持した触媒担体を空気中においてオーブンで120℃で2.5時間乾燥した後、空気中において電気炉で400℃で2.0時間焼成し、触媒を得た。
【0091】
得られた触媒は、Ruを触媒に対し900wtppmの割合で含有するもので、そのBET比表面積は0.10m/gであった。また、得られた触媒を、実施例1と同様にEPMA分析したところ、触媒粒子の表面にRuが担持されていた。そして、Ruは触媒表面から深さ10%以内に存在していた。また、該Ruの近傍にCaOが存在していた。
【0092】
<反応例2>
実施例2で調製した触媒50ccを実施例1で用いたものと同様の反応器に充填してメタンのCOリフォーミング試験を実施した。
【0093】
具体的には、まず、触媒は、予めH及びHOをモル比(H/HO=1/3)である混合ガスを500℃で1時間触媒層を流通させて触媒と接触させることにより、還元処理を行った。その後、CH:CO:HO(モル比)=1:1:0の原料ガスを、触媒層出口のガス圧力1960kPaG,触媒層出口のガス温度850℃,メタン基準のGHSV=2,500/時の条件で処理した。
【0094】
この結果、反応開始から5時間経過後のCH転化率は54.8%(実験条件下でのCHの平衡転化率=54.8%)であり、また反応開始から300時間経過後のCHの転化率は、54.8%、1100時間経過後のCHの転化率は、53.1%であった。また1100時間経過後に、実施例1と同様に4分割して抜き出しした触媒上のカーボン量は、上部から順にそれぞれ0.25wt%、0.10wt%、0.10wt%、0.04wt%であった。また、実施例1と同様に、反応例2記載の前処理条件で処理した触媒を分析したところ、粒子状のRuが触媒表面に存在していることが確認された。
【0095】
<実施例3>
内部にCaOをCa換算で0.3wt%含有し純度98.7wt%以上のMgOの粉末に滑択材としてMgO粉末に対して3.0wt%のカーボンを混合し、直径1/4インチの円筒状のペレットを形成した。形成したペレットを空気中で1180℃で3時間焼成し、触媒担体を得た。
【0096】
得られた触媒担体を、実施例1と同様に、ICPで分析したところ、該触媒担体はCaOをCa換算で0.3wt%含有していた。なお、EPMA分析結果から、触媒担体の内部にCaが存在せず、CaはMgO粒子表面のみに存在していることが確認された。また、得られた触媒担体を構成するMgO粒子は原料酸化マグネシウム粒子よりも顕著に大きかった。したがって、原料MgO粒子が凝集してMgO粒子を形成し、且つ、原料MgO粒子が含有するCaOがMgO粒子表面に析出したと言える。また、得られた触媒担体は、実施例1と同様に、粒子状であり、MgO粒子の表面の一部が、CaOを含有する層で被覆され、また、MgO粒子表面の凹部にCaOが存在していた。また、これらCaOは触媒担体の表面から深さ10%以内に存在していた。そして、MgO粒子表面のCaOの存在量を求めたところ、Ca換算で30mg−Ca/m−MgOであった。また、ピーナッツ状粒子の中央部はCaをごく微量しか含まず、ほとんどのCaは両端部に含まれていた。
【0097】
次に、得られた触媒担体に、0.17wt%のRuを含む硝酸ルテニウム水溶液を、触媒担体1.0gに対し0.18cc(触媒担体の吸水量の1.2倍)にて噴霧し、Ruを担持した触媒担体を得た。
【0098】
次に、得られたRuを担持した触媒担体を空気中においてオーブンで120℃で2.5時間乾燥した後、空気中において電気炉で400℃で2.0時間焼成し、触媒を得た。
【0099】
得られた触媒は、Ruを触媒に対し300wtppmの割合で含有するもので、そのBET比表面積は0.10m/gであった。また、得られた触媒を、実施例1と同様にEPMA分析したところ、触媒粒子の表面にRuが担持されていた。そして、Ruは触媒表面から深さ10%以内に存在していた。また、該Ruの近傍にCaOが存在していた。
【0100】
<反応例3>
実施例3で調製した触媒50ccを実施例1で用いたものと同様の反応器に充填してメタンのHO/COリフォーミング試験を実施した。
【0101】
具体的にはまず、触媒は、予めH及びHOをモル比(H/HO=1/6)である混合ガスを500℃で1時間触媒層を流通させて触媒と接触させることにより、還元処理を行った。その後、CH:CO:HO(モル比)=1:3:0.3の原料ガスを、触媒層出口のガス圧力1471kPaG,触媒層出口のガス温度900℃,メタン基準のGHSV=2,500/時の条件で処理した。
【0102】
この結果、反応開始から5時間経過後のCH転化率は97.0%(実験条件下でのCHの平衡転化率=97.0%)であり、また反応開始から15,000時間経過後のCHの転化率は、97.0%であった。また15,000時間経過後に、実施例1と同様に4分割して抜き出しした触媒上のカーボン量は上部から順にそれぞれ0.20wt%、0.05wt%、0.03wt%、0.02wt%であった。また、実施例1と同様に、反応例3記載の前処理条件で処理した触媒を分析したところ、粒子状のRuが触媒表面に存在していることが確認された。
【0103】
<実施例4>
内部にCaOをCa換算で0.3wt%含有し純度98.7wt%以上のMgOの粉末に滑択材としてMgO粉末に対して3.0wt%のカーボンを混合し、直径1/4インチの円筒状のペレットを形成した。形成したペレットを空気中で1150℃で3時間焼成し、触媒担体を得た。
【0104】
得られた触媒担体を、実施例1と同様に、ICPで分析したところ、該触媒担体はCaOをCa換算で0.3wt%含有していた。なお、EPMA分析結果から、触媒担体の内部にCaが存在せず、CaはMgO粒子表面のみに存在していることが確認された。また、得られた触媒担体を構成するMgO粒子は原料酸化マグネシウム粒子よりも顕著に大きかった。したがって、原料MgO粒子が凝集してMgO粒子を形成し、且つ、原料MgO粒子が含有するCaOがMgO粒子表面に析出したと言える。また、得られた触媒担体は、実施例1と同様に、粒子状であり、MgO粒子の表面の一部が、CaOを含有する層で被覆され、また、MgO粒子表面の凹部にCaOが存在していた。また、これらCaOは触媒担体の表面から深さ10%以内に存在していた。そして、MgO粒子表面のCaOの存在量を求めたところ、Ca換算で25mg−Ca/m−MgOであった。また、ピーナッツ状粒子の中央部はCaをごく微量しか含まず、ほとんどのCaは両端部に含まれていた。
【0105】
次に、得られた触媒担体に、0.3wt%のRhを含む酢酸ロジウム(Rh(CHCOO))水溶液を、触媒担体1.0gに対し0.15cc(触媒担体の吸水量の1.0倍)にて噴霧し、Rhを担持した触媒担体を得た。
【0106】
次に、得られたRhを担持した触媒担体を空気中においてオーブンで120℃で2.5時間乾燥した後、空気中において電気炉で650℃で2.0時間焼成し、触媒を得た。
【0107】
得られた触媒は、Rhを触媒に対し450wtppmの割合で含有するもので、そのBET比表面積は0.12m/gであった。また、得られた触媒を、実施例1と同様にEPMA分析したところ、触媒粒子の表面にRhが担持されていた。そして、Rhは触媒表面から深さ10%以内に存在していた。また、該Rhの近傍にCaOが存在していた。
【0108】
<反応例4>
実施例4で調製した触媒50ccを実施例1で用いたものと同様の反応器に充填してメタンのHO/COリフォーミング試験を実施した。
【0109】
具体的には、まず、触媒は、予めH及びHOをモル比(H/HO=1/0)である混合ガスを500℃で1時間触媒層を流通させて触媒と接触させることにより、還元処理を行った。その後、CH:CO:HO(モル比)=1:1:0の原料ガスを、触媒層出口のガス圧力1960kPaG,触媒層出口のガス温度850℃,メタン基準のGHSV=2,500/時の条件で処理した。
【0110】
この結果、反応開始から5時間経過後のCH転化率は54.8%(実験条件下でのCHの平衡転化率=54.8%)であり、また反応開始から300時間経過後のCHの転化率は、54.8%、800時間経過後のCHの転化率は、52.3%であった。また800時間経過後に、実施例1と同様に4分割して抜き出しした触媒上のカーボン量は、上部から順にそれぞれ0.15wt%、0.10wt%、0.05wt%、0.03wt%であった。また、実施例1と同様に、反応例4記載の前処理条件で処理した触媒を分析したところ、粒子状のRhが触媒表面に存在していることが確認された。
【0111】
<実施例5>
内部にCaOをCa換算で0.3wt%含有し純度98.7wt%以上のMgOの粉末に滑択材としてMgO粉末に対して3.0wt%のカーボンを混合し、直径1/4インチの円筒状のペレットを形成した。形成したペレットを空気中で1200℃で3時間焼成し、触媒担体を得た。
【0112】
得られた触媒担体を、実施例1と同様に、ICPで分析したところ、該触媒担体はCaOをCa換算で0.3wt%含有していた。なお、EPMA分析結果から、触媒担体の内部にCaが存在せず、CaはMgO粒子表面のみに存在していることが確認された。また、得られた触媒担体を構成するMgO粒子は原料酸化マグネシウム粒子よりも顕著に大きかった。したがって、原料MgO粒子が凝集してMgO粒子を形成し、且つ、原料MgO粒子が含有するCaOがMgO粒子表面に析出したと言える。また、得られた触媒担体は、実施例1と同様に、粒子状であり、MgO粒子の表面の一部が、CaOを含有する層で被覆され、また、MgO粒子表面の凹部にCaOが存在していた。また、これらCaOは触媒担体の表面から深さ10%以内に存在していた。そして、MgO粒子表面のCaOの存在量を求めたところ、Ca換算で37.5mg−Ca/m−MgOであった。また、ピーナッツ状粒子の中央部はCaをごく微量しか含まず、ほとんどのCaは両端部に含まれていた。
【0113】
次に、得られた触媒担体に、0.85wt%のRuを含む硝酸ニトロシルルテニウム水溶液を0.13g(触媒担体の吸水量の1.0倍)にて噴霧し、Ruを担持した触媒担体を得た。
【0114】
次に、得られたRuを担持した触媒担体を空気中においてオーブンで120℃で2.5時間乾燥した後、空気中において電気炉で400℃で2.0時間焼成し、触媒を得た。
【0115】
得られた触媒は、Ruを触媒に対し1100wtppmの割合で含有するもので、そのBET比表面積は0.08m/gであった。また、得られた触媒を、実施例1と同様にEPMA分析したところ、触媒粒子の表面にRuが担持されていた。そして、Ruは触媒表面から深さ10%以内に存在していた。また、該Ruの近傍にCaOが存在していた。
【0116】
<反応例5>
実施例5で調製した触媒50ccを実施例1で用いたものと同様の反応器に充填してメタンのCOリフォーミング試験を実施した。
【0117】
具体的には、まず、触媒は、予めH及びHOをモル比(H/HO=1/3)である混合ガスを500℃で1時間触媒層を流通させて触媒と接触させることにより、還元処理を行った。その後、CH:CO:HO(モル比)=1:1:0の原料ガスを、触媒層出口のガス圧力1960kPaG,触媒層出口のガス温度880℃,メタン基準のGHSV=2,500/時の条件で処理した。
【0118】
この結果、反応開始から5時間経過後のCH転化率は54.8%(実験条件下でのCHの平衡転化率=54.8%)であり、また反応開始から300時間経過後のCHの転化率は、54.8%、700時間経過後のCHの転化率は、53.5%であった。また700時間経過後に、実施例1と同様に4分割して抜き出しした触媒上のカーボン量は、上部から順にそれぞれ0.15wt%、0.04wt%、0.03wt%、0.01wt%であった。また、実施例1と同様に、反応例5記載の前処理条件で処理した触媒を分析したところ、粒子状のRuが触媒表面に存在していることが確認された。
【0119】
<実施例6>
内部にCaOをCa換算で0.3wt%含有し純度98.7wt%以上のMgOの粉末に滑択材としてMgO粉末に対して3.0wt%のカーボンを混合し、直径1/4インチの円筒状のペレットを形成した。形成したペレットを空気中で1130℃で3時間焼成し、触媒担体を得た。
【0120】
得られた触媒担体を、実施例1と同様に、ICPで分析したところ、該触媒担体はCaOをCa換算で0.3wt%含有していた。なお、EPMA分析結果から、触媒担体の内部にCaが存在せず、CaはMgO粒子表面のみに存在していることが確認された。また、得られた触媒担体を構成するMgO粒子は原料酸化マグネシウム粒子よりも顕著に大きかった。したがって、原料MgO粒子が凝集してMgO粒子を形成し、且つ、原料MgO粒子が含有するCaOがMgO粒子表面に析出したと言える。また、得られた触媒担体は、実施例1と同様に、粒子状であり、MgO粒子の表面の一部が、CaOを含有する層で被覆され、また、MgO粒子表面の凹部にCaOが存在していた。また、これらCaOは触媒担体の表面から深さ10%以内に存在していた。そして、MgO粒子表面のCaOの存在量を求めたところ、Ca換算で20mg−Ca/m−MgOであった。また、ピーナッツ状粒子の中央部はCaをごく微量しか含まず、ほとんどのCaは両端部に含まれていた。
【0121】
次に、得られた触媒担体に、0.6wt%のRuを含む硝酸ルテニウム水溶液を0.18g(触媒担体の吸水量の1.2倍)にて噴霧しRuを担持した触媒担体を得た。
【0122】
次に、得られたRuを担持した触媒担体を空気中においてオーブンで120℃で2.5時間乾燥した後、空気中において電気炉で400℃で2.0時間焼成し、触媒を得た。
【0123】
得られた触媒は、Ruを触媒に対し780wtppmの割合で含有するもので、BET比表面積は0.15m/gであった。また、得られた触媒を、実施例1と同様にEPMA分析したところ、触媒粒子の表面にRuが担持されていた。そして、Ruは触媒表面から深さ10%以内に存在していた。また、該Ruの近傍にCaOが存在していた。
【0124】
<反応例6>
実施例6で調製した触媒50ccを実施例1で用いたものと同様の反応器に充填してメタンのHO/COリフォーミング試験を実施した。
【0125】
具体的には、まず、触媒は、予めH及びHOをモル比(H/HO=1/2)である混合ガスを500℃で1時間触媒層を流通させて触媒と接触させることにより、還元処理を行った。その後、CH:CO:HO(モル比)=1:0.4:1の原料ガスを、触媒層出口のガス圧力1960kPaG,触媒層出口のガス温度880℃,メタン基準のGHSV=2,500/時の条件で処理した。
【0126】
この結果、反応開始から5時間経過後のCH転化率は66.7%(実験条件下でのCHの平衡転化率=66.7%)であり、また反応開始から13000時間経過後のCHの転化率は、66.7%であった。また13000時間経過後に、実施例1と同様に4分割して抜き出しした触媒上のカーボン量は上部からそれぞれ0.11wt%、0.05wt%、0.03wt%、0.01wt%であった。また、実施例1と同様に、反応例6記載の前処理条件で処理した触媒を分析したところ、粒子状のRuが触媒表面に存在していることが確認された。
【0127】
<実施例7>
CaO含有量がCa換算で0.001wt%以下で純度99.9wt%以上のMgOの粉末を80℃にて煮沸攪拌しMg(OH)とする際に、同時にCa(OH)水溶液を滴下攪拌することでCa添加型Mg(OH)粒子を得た。この添加体に滑択材として3.0wt%のカーボンを混合し、直径1/4インチの円筒状のペレットを形成した。形成したペレットを更に空気中で1180℃で3時間焼成し、触媒担体を得た。
【0128】
得られた触媒担体を、実施例1と同様に、ICPで分析したところ、該触媒担体はCaOをCa換算で0.5wt%含有していた。なお、EPMA分析結果から、触媒担体の内部にCaが存在せず、CaはMgO粒子表面のみに存在していることが確認された。また、得られた触媒担体を構成するMgO粒子はCa添加型Mg(OH)粒子よりも顕著に大きかった。したがって、Ca添加型Mg(OH)粒子が凝集してMgO粒子を形成し、且つ、Ca添加型Mg(OH)粒子が含有するCaOがMgO粒子表面に析出したと言える。また、得られた触媒担体は、実施例1と同様に、粒子状であり、MgO粒子の表面の一部が、CaOを含有する層で被覆され、また、MgO粒子表面の凹部にCaOが存在していた。また、これらCaOは触媒担体の表面から深さ10%以内に存在していた。そして、MgO粒子表面のCaOの存在量を求めたところ、Ca換算で50mg−Ca/m−MgOであった。また、ピーナッツ状粒子の中央部はCaをごく微量しか含まず、ほとんどのCaは両端部に含まれていた。
【0129】
次に、得られた触媒担体に、0.8wt%のRuを含む硝酸ルテニウム水溶液を、触媒担体1.0gに対し0.15cc(触媒担体の吸水量の1.0倍)にて噴霧しRuを担持した触媒担体を得た。
【0130】
次に、得られたRuを担持した触媒担体を空気中においてオーブンで120℃で2.5時間乾燥した後、空気中において電気炉で400℃で2.0時間焼成し、触媒を得た。
【0131】
得られた触媒は、Ruを触媒に対し1000wtppmの割合で含有するもので、BET比表面積は0.10m/gであった。また、得られた触媒を、実施例1と同様にEPMA分析したところ、触媒粒子の表面にRuが担持されていた。そして、Ruは触媒表面から深さ10%以内に存在していた。また、該Ruの近傍にCaOが存在していた。
【0132】
<反応例7>
実施例6で調製した触媒50ccを実施例1で用いたものと同様の反応器に充填してメタンのHO/COリフォーミング試験を実施した。
【0133】
具体的には、まず、触媒は、予めH及びHOをモル比(H/HO=1/1)である混合ガスを500℃で1時間触媒層を流通させて触媒と接触させることにより、還元処理を行った。その後、CH:CO:HO(モル比)=1:0.4:1の原料ガスを、触媒層出口のガス圧力1960kPaG,触媒層出口のガス温度880℃,メタン基準のGHSV=2,500/時の条件で処理した。
【0134】
この結果、反応開始から5時間経過後のCH転化率は66.7%(実験条件下でのCHの平衡転化率=66.7%)であり、また反応開始から13000時間経過後のCHの転化率は、66.7%であった。また13000時間経過後に、実施例1と同様に4分割して抜き出しした触媒上のカーボン量は上部からそれぞれ0.15wt%、0.08wt%、0.05wt%、0.01wt%であった。また、実施例1と同様に、反応例7記載の前処理条件で処理した触媒を分析したところ、粒子状のRuが触媒表面に存在していることが確認された。
【0135】
<実施例8>
CaO含有量がCa換算で0.01wt%以下で純度99.9wt%以上のMgOの粉末を100℃にて煮沸攪拌しMg(OH)とする際に、同時にCa(OH)水溶液を滴下攪拌することでCa添加型Mg(OH)粒子を得た。この添加体に滑択材として3.0wt%のカーボンを混合し、直径1/4インチのペレットを形成した。形成したペレットを更に空気中で1180℃で3時間焼成し、触媒担体を得た。
【0136】
得られた触媒担体を、実施例1と同様に、ICPで分析したところ、該該触媒担体はCaOをCa換算で1.4wt%含有していた。なお、EPMA分析結果から、触媒担体の内部にCaが存在せず、CaはMgO粒子表面のみに存在していることが確認された。また、得られた触媒担体を構成するMgO粒子はCa添加型Mg(OH)粒子よりも顕著に大きかった。したがって、Ca添加型Mg(OH)粒子が凝集してMgO粒子を形成し、且つ、Ca添加型Mg(OH)粒子が含有するCaOがMgO粒子表面に析出したと言える。また、得られた触媒担体は、実施例1と同様に、粒子状であり、MgO粒子の表面の一部が、CaOを含有する層で被覆され、また、MgO粒子表面の凹部にCaOが存在していた。また、これらCaOは触媒担体の表面から深さ10%以内に存在していた。そして、MgO粒子表面のCaOの存在量を求めたところ、Ca換算で140mg−Ca/m−MgOであった。また、ピーナッツ状粒子の中央部はCaをごく微量しか含まず、ほとんどのCaは両端部に含まれていた。
【0137】
次に、得られた触媒担体に、0.7wt%のRuを含む硝酸ルテニウム水溶液を、触媒担体1.0gに対し0.15cc(触媒担体の吸水量の1.0倍)にて噴霧しRuを担持した触媒担体を得た。
【0138】
次に、得られたRuを担持した触媒担体を空気中においてオーブンで120℃で2.5時間乾燥した後、空気中において電気炉で400℃で2.0時間焼成し、触媒を得た。
得られた触媒は、Ruを触媒に対し910wtppmの割合で含有するもので、BET比表面積は0.10m/gであった。また、得られた触媒を、実施例1と同様にEPMA分析したところ、触媒粒子の表面にRuが担持されていた。そして、Ruは触媒表面から深さ10%以内に存在していた。また、該Ruの近傍にCaOが存在していた。
【0139】
<反応例8>
実施例8で調製した触媒50ccを実施例1で用いたものと同様の反応器に充填してメタンのHO/COリフォーミング試験を実施した。
【0140】
具体的には、まず、触媒は、予めH及びHOをモル比(H/HO=1/1)である混合ガスを500℃で1時間触媒層を流通させて触媒と接触させることにより、還元処理を行った。その後、CH:CO:HO(モル比)=1:0.4:1の原料ガスを、触媒層出口のガス圧力1960kPaG,触媒層出口のガス温度880℃,メタン基準のGHSV=2,500/時の条件で処理した。
【0141】
この結果、反応開始から5時間経過後のCH転化率は66.7%(実験条件下でのCHの平衡転化率=66.7%)であり、また反応開始から9000時間経過後のCHの転化率は、66.7%であった。また9000時間経過後に、実施例1と同様に4分割して抜き出しした触媒上のカーボン量は上部からそれぞれ0.21wt%、0.15wt%、0.08wt%、0.01wt%であった。また、実施例1と同様に、反応例8記載の前処理条件で処理した触媒を分析したところ、粒子状のRuが触媒表面に存在していることが確認された。
【0142】
<実施例9>
内部にCaOをCa換算で0.3wt%含有し純度98.7wt%以上のMgOの粉末に滑択材としてMgO粉末に対して3.0wt%のカーボンを混合し、直径1/4インチの円筒状のペレットを形成した。形成したペレットを空気中で1150℃で3時間焼成し、触媒担体を得た。
【0143】
得られた触媒担体を、実施例1と同様に、ICPで分析したところ、該触媒担体はCaOをCa換算で0.3wt%のCaを含有していた。なお、EPMA分析結果から、触媒担体の内部にCaが存在せず、CaはMgO粒子表面のみに存在していることが確認された。また、得られた触媒担体を構成するMgO粒子は原料酸化マグネシウム粒子よりも顕著に大きかった。したがって、原料MgO粒子が凝集してMgO粒子を形成し、且つ、原料MgO粒子が含有するCaOがMgO粒子表面に析出したと言える。また、得られた触媒担体は、実施例1と同様に、粒子状であり、MgO粒子の表面の一部が、CaOを含有する層で被覆され、また、MgO粒子表面の凹部にCaOが存在していた。また、これらCaOは触媒担体の表面から深さ10%以内に存在していた。そして、MgO粒子表面のCaOの存在量を求めたところ、Ca換算で25mg−Ca/m−MgOであった。また、ピーナッツ状粒子の中央部はCaをごく微量しか含まず、ほとんどのCaは両端部に含まれていた。
【0144】
次に、得られた触媒担体に0.81wt%のRhを含む酢酸ロジウム水溶液を、触媒担体1.0gに対し0.17cc(触媒担体の吸水量の1.1倍)にて噴霧しRhを担持した触媒担体を得た。
【0145】
次に、得られたRhを担持した触媒担体を空気中においてオーブンで120℃で2.5時間乾燥した後、空気中において電気炉で650℃で2.0時間焼成し、触媒を得た。
【0146】
得られた触媒は、Rhを触媒に対し1350pmの割合で含有するもので、そのBET比表面積は0.12m/gであった。また、得られた触媒を、実施例1と同様にEPMA分析したところ、触媒粒子の表面にRhが担持されていた。そして、Rhは触媒表面から深さ10%以内に存在していた。また、該Rhの近傍にCaOが存在していた。
【0147】
<反応例9>
実施例9で調製した触媒50ccを実施例1で用いたものと同様の反応器に充填してメタンのHO/COリフォーミング試験を実施した。
【0148】
具体的には、まず、触媒は、予めH及びHOをモル比(H/HO=1/0)である混合ガスを500℃で1時間触媒層を流通させて触媒と接触させることにより、還元処理を行った。その後、CH:CO:HO(モル比)=1:0.4:1の原料ガスを、圧力1960kPaG,温度880℃,メタン基準のGHSV=2,500/時の条件で処理した。
【0149】
この結果、反応開始から5時間経過後のCH転化率は66.7%(実験条件下でのCHの平衡転化率=66.7%)であり、また反応開始から8000時間経過後のCHの転化率は、66.7%であった。また8000時間経過後に、実施例1と同様に4分割して抜き出しした触媒上のカーボン量は上部から順にそれぞれ0.15wt%、0.07wt%、0.05wt%、0.01wt%であった。また、実施例1と同様に、反応例9記載の前処理条件で処理した触媒を分析したところ、粒子状のRhが触媒表面に存在していることが確認された。
【0150】
<実施例10>
CaO含有量がCa換算で0.001wt%以下で純度99.9wt%以上のMgOの粉末を100℃にて煮沸攪拌しMg(OH)とする際に、同時にCa(OH)水溶液を滴下攪拌することでCa添加型Mg(OH)粒子を得た。この添加体に滑択材として3.0wt%のカーボンを混合し、直径1/4インチのペレットを形成した。形成したペレットを更に空気中で1180℃で3時間焼成し、触媒担体を得た。
【0151】
得られた触媒担体を、実施例1と同様に、ICPで分析したところ、該該触媒担体はCaOをCa換算で0.01wt%含有していた。なお、EPMA分析結果から、触媒担体の内部にCaが存在せず、CaはMgO粒子表面のみに存在していることが確認された。また、得られた触媒担体を構成するMgO粒子はCa添加型Mg(OH)粒子よりも顕著に大きかった。したがって、Ca添加型Mg(OH)粒子が凝集してMgO粒子を形成し、且つ、Ca添加型Mg(OH)粒子が含有するCaOがMgO粒子表面に析出したと言える。また、得られた触媒担体は、実施例1と同様に、粒子状であり、MgO粒子の表面の一部が、CaOを含有する層で被覆され、また、MgO粒子表面の凹部にCaOが存在していた。また、これらCaOは触媒担体の表面から深さ10%以内に存在していた。そして、MgO粒子表面のCaOの存在量を求めたところ、Ca換算で1mg−Ca/m−MgOであった。また、ピーナッツ状粒子の中央部はCaをごく微量しか含まず、ほとんどのCaは両端部に含まれていた。
【0152】
次に、得られた触媒担体に、0.6wt%のRuを含む硝酸ルテニウム水溶液を、触媒担体1.0gに対し0.15cc(触媒担体の吸水量の1.0倍)にて噴霧しRuを担持した触媒担体を得た。
【0153】
次に、得られたRuを担持した触媒担体を空気中においてオーブンで120℃で2.5時間乾燥した後、空気中において電気炉で400℃で2.0時間焼成し、触媒を得た。
【0154】
得られた触媒は、Ruを触媒に対し780wtppmの割合で含有するもので、BET比表面積は0.10m/gであった。また、得られた触媒を、実施例1と同様にEPMA分析したところ、触媒粒子の表面にRuが担持されていた。そして、Ruは触媒表面から深さ10%以内に存在していた。また、該Ruの近傍にCaOが存在していた。
【0155】
<反応例10>
実施例8で調製した触媒50ccを実施例1で用いたものと同様の反応器に充填してメタンのHO/COリフォーミング試験を実施した。
【0156】
具体的には、まず、触媒は、予めH及びHOをモル比(H/HO=1/1)である混合ガスを500℃で1時間触媒層を流通させて触媒と接触させることにより、還元処理を行った。その後、CH:CO:HO(モル比)=1:0.4:1の原料ガスを、触媒層出口のガス圧力1960kPaG,触媒層出口のガス温度880℃,メタン基準のGHSV=2,500/時の条件で処理した。
【0157】
この結果、反応開始から5時間経過後のCH転化率は66.7%(実験条件下でのCHの平衡転化率=66.7%)であり、また反応開始から5000時間経過後のCHの転化率は、66.7%であった。また5000時間経過後に、実施例1と同様に4分割して抜き出しした触媒上のカーボン量は上部からそれぞれ0.28wt%、0.17wt%、0.09wt%、0.01wt%であった。また、実施例1と同様に、反応例10記載の前処理条件で処理した触媒を分析したところ、粒子状のRuが触媒表面に存在していることが確認された。
【0158】
<比較例1>
内部にCaOをCa換算で0.3wt%含有し純度98.7wt%以上のMgOの粉末に滑択材としてMgO粉末に対して3.0wt%のカーボンを混合し、直径1/4インチの円筒状のペレットを形成した。形成したペレットを空気中で1100℃で3時間焼成し、触媒担体を得た。
【0159】
得られた触媒担体を、実施例1と同様に、ICPで分析したところ、該触媒担体はCaOをCa換算で0.3wt%含有していた。なお、EPMA分析結果から、触媒担体の内部にCaが存在せず、CaはMgO粒子表面のみに存在していることが確認された。また、得られた触媒担体を構成するMgO粒子は原料酸化マグネシウム粒子よりも顕著に大きかった。したがって、原料MgO粒子が凝集してMgO粒子を形成し、且つ、原料MgO粒子が含有するCaOがMgO粒子表面に析出したと言える。また、得られた触媒担体は、実施例1と同様に、粒子状であり、MgO粒子の表面の一部が、CaOを含有する層で被覆され、また、MgO粒子表面の凹部にCaOが存在していた。また、これらCaOは触媒担体の表面から深さ10%以内に存在していた。そして、MgO粒子表面のCaOの存在量を求めたところ、Ca換算で15mg−Ca/m−MgOであった。また、ピーナッツ状粒子の中央部はCaをごく微量しか含まず、ほとんどのCaは両端部に含まれていた。
【0160】
次に、得られた触媒担体に、8.0wt%のNiを含む硝酸ニッケル水和物水溶液を、触媒担体1.0gに対し0.15cc(触媒担体の吸水量の1.0倍)にて噴霧し、Niを担持した触媒担体を得た。
【0161】
次に、得られたNiを担持した触媒担体を空気中においてオーブンで120℃で2.5時間乾燥した後、空気中において電気炉で650℃で2.0時間焼成し、触媒を得た。
【0162】
得られた触媒は、Niを触媒に対し10000wtppmの割合で含有するもので、そのBET比表面積は0.20m/gであった。また、得られた触媒を、実施例1と同様にEPMA分析したところ、触媒粒子の表面にNiが担持されていた。そして、触媒表面から深さ10%以内にCaとNiが存在していた。
【0163】
<比較反応例1>
比較例1で調製した触媒50ccを実施例1で用いたものと同様の反応器に充填してメタンのCOリフォーミング試験を実施した。
【0164】
具体的には、まず、触媒は、予めH及びHOをモル比(H/HO=1/1)である混合ガスを500℃で1時間触媒層を流通させて触媒と接触させることにより、還元処理を行った。その後、CH:CO:HO(モル比)=1:1:0の原料ガスを、触媒層出口のガス圧力1960kPaG,触媒層出口のガス温度880℃,メタン基準のGHSV=2,500/時の条件で処理した。
【0165】
この結果、反応開始から5時間経過後のCH転化率は15.3%(実験条件下でのCHの平衡転化率=54.8%)であった。また5時間経過後に、実施例1と同様に4分割して抜き出しした触媒上のカーボン量は上部から順にそれぞれ3.1wt%、2.3wt%、3.3wt%、2.8wt%であった。また、実施例1と同様に、比較反応例1記載の前処理条件で処理した触媒を分析したところ、Niの大粒子が触媒表面に存在していることが確認された。
【0166】
<比較例2>
内部にCaOをCa換算で0.3wt%含有し純度98.7wt%以上のMgOの粉末に滑択材としてMgO粉末に対して3.0wt%のカーボンを混合し、直径1/4インチの円筒状のペレットを形成した。形成したペレットを空気中で600℃で3時間焼成し、触媒担体を得た。
【0167】
得られた触媒担体を、実施例1と同様に、ICPで分析したところ、該触媒担体はCaOをCa換算で0.3wt%含有していた。触媒担体の断面のEPMA分析結果を図7に示す。得られた触媒担体は、図7に示すように、粒子状であり、CaOはMgO粒子内部に均一に分布しており、MgO粒子表面への析出は確認されず、CaOはMgO表面に存在しなかった。
【0168】
次に、得られた触媒担体に、3.9wt%のRhを含む酢酸ロジウム水溶液を、触媒担体1.0gに対し0.39cc(触媒担体の吸水量の1.1倍)にて噴霧し、Rhを担持した触媒担体を得た。
【0169】
次に、得られたRhを担持した触媒担体を空気中においてオーブンで120℃で2.5時間乾燥した後、空気中において電気炉で950℃で2.0時間焼成し、触媒を得た。
【0170】
得られた触媒は、Rhを触媒に対し15000pmの割合で含有するもので、そのBET比表面積は32.0m/gであった。また、得られた触媒を、実施例1と同様にEPMA分析したところ、触媒粒子の表面にRhが担持されていた。そして、Rhは触媒表面から深さ10%以内に存在していた。そして、CaはMgO粒子内部に均一に分布しており、表面への析出は確認されず、表面にCaO含有層は存在しなかった。なお、Rh近傍にCaは存在していなかった。
【0171】
<比較反応例2>
比較例2で調製した触媒50ccを実施例1で用いたものと同様の反応器に充填してメタンのCOリフォーミング試験を実施した。
【0172】
具体的にはまず、触媒は、予めH及びHOをモル比(H/HO=1/3)である混合ガスを500℃で1時間触媒層を流通させて触媒と接触させることにより、還元処理を行った。その後、CH:CO:HO(モル比)=1:1:0の原料ガスを、触媒層出口のガス圧力1960kPaG,触媒層出口のガス温度880℃,メタン基準のGHSV=2,500/時の条件で処理した。反応開始から5時間経過後のCH転化率は54.8%(実験条件下でのCHの平衡転化率=54.8%)、30時間経過後のCH転化率は47.3%であった。また30時間経過後に、実施例1と同様に4分割して抜き出しした触媒上のカーボン量は上部から順にそれぞれ3.2wt%、2.3wt%、2.2wt%、2.1wt%であった。また、実施例1と同様に、比較反応例2記載の前処理条件で処理した触媒を分析したところ、Rhの粒子が触媒表面に存在していることが確認された。
【0173】
<比較例3>
内部にCaOをCa換算で0.3wt%含有し純度98.7wt%のMgOの粉末に滑択材としてMgO粉末に対して3.0wt%のカーボンを混合し、直径1/4インチの円筒状のペレットを形成した。形成したペレットを空気中で1100℃で3時間焼成し、触媒担体を得た。
【0174】
得られた触媒担体を、実施例1と同様に、ICPで分析したところ、該触媒担体はCaOをCa換算で0.3wt%含有していた。なお、EPMA分析結果から、触媒担体の内部にCaが存在せず、CaはMgO粒子表面のみに存在していることが確認された。また、得られた触媒担体を構成するMgO粒子は原料酸化マグネシウム粒子よりも顕著に大きかった。したがって、原料MgO粒子が凝集してMgO粒子を形成し、且つ、原料MgO粒子が含有するCaOがMgO粒子表面に析出したと言える。また、得られた触媒担体は、実施例1と同様に、粒子状であり、MgO粒子の表面の一部が、CaOを含有する層で被覆され、また、MgO粒子表面の凹部にCaOが存在していた。また、これらCaOは触媒担体の表面から深さ10%以内に存在していた。そして、MgO粒子表面のCaOの存在量を求めたところ、Ca換算で15mg−Ca/m−MgOであった。また、ピーナッツ状粒子の中央部はCaをごく微量しか含まず、ほとんどのCaは両端部に含まれていた。
【0175】
次に、得られた触媒担体に、2.7wt%のIrを含む塩化イリジウム水溶液を、触媒担体1.0gに対し0.15cc(触媒担体の吸水量の1.0倍)にて噴霧し、Irを担持した触媒担体を得た。
【0176】
次に、得られたIrを担持した触媒担体を空気中においてオーブンで120℃で2.5時間乾燥した後、空気中において電気炉で650℃で2.0時間焼成し、触媒を得た。
【0177】
得られた触媒は、Irを触媒に対し3500wtppmの割合で含有するもので、そのBET比表面積は0.20m/gであった。また、得られた触媒を、実施例1と同様にEPMA分析したところ、触媒粒子の表面にIrが担持されていた。そして、触媒表面から深さ10%以内にCaとIrが存在していた。
【0178】
<比較反応例3>
比較例3で調製した触媒50ccを実施例1で用いたものと同様の反応器に充填してメタンのCOリフォーミング試験を実施した。
【0179】
具体的には、まず、触媒は、予めH及びHOをモル比(H/HO=1/1)である混合ガスを500℃で1時間触媒層を流通させて触媒と接触させることにより、還元処理を行った後、CH:CO:HO(モル比)=1:1:0の原料ガスを、触媒層出口のガス圧力1960kPaG,触媒層出口のガス温度880℃,メタン基準のGHSV=2,500/時の条件で処理した。反応開始から5時間経過後のCH転化率は45.3%(実験条件下でのCHの平衡転化率=54.8%)、50時間経過後のCH転化率は38.2%であった。また50時間経過後に、実施例1と同様に4分割して抜き出しした触媒上のカーボン量は上部から順にそれぞれ0.8wt%、0.5wt%、0.3wt%、0.4wt%であった。また、実施例1と同様に、比較反応例3記載の前処理条件で処理した触媒を分析したところ、Irの粒子が触媒表面に存在していることが確認された。
【0180】
<比較例4>
内部にCaOをCa換算で0.3wt%含有し純度98.7wt%以上のMgOの粉末に滑択材としてMgO粉末に対して3.0wt%のカーボンを混合し、直径1/4インチの円筒状のペレットを形成した。形成したペレットを空気中で1100℃で3時間焼成し、触媒担体を得た。
【0181】
得られた触媒担体を、実施例1と同様に、ICPで分析したところ、該触媒担体はCaOをCa換算で0.3wt%含有していた。なお、EPMA分析結果から、触媒担体の内部にCaが存在せず、CaはMgO粒子表面のみに存在していることが確認された。また、得られた触媒担体を構成するMgO粒子は原料酸化マグネシウム粒子よりも顕著に大きかった。したがって、原料MgO粒子が凝集してMgO粒子を形成し、且つ、原料MgO粒子が含有するCaOがMgO粒子表面に析出したと言える。また、得られた触媒担体は、実施例1と同様に、粒子状であり、MgO粒子の表面の一部が、CaOを含有する層で被覆され、また、MgO粒子表面の凹部にCaOが存在していた。また、これらCaOは触媒担体の表面から深さ10%以内に存在していた。そして、MgO粒子表面のCaOの存在量を求めたところ、Ca換算で15mg−Ca/m−MgOであった。また、ピーナッツ状粒子の中央部はCaをごく微量しか含まず、ほとんどのCaは両端部に含まれていた。
【0182】
次に、得られた触媒担体に、1.6wt%のOsを含む酸化オスミウム水溶液を、触媒担体1.0gに対し0.15cc(触媒担体の吸水量の1.0倍質量)にて噴霧し、Osを担持した触媒担体を得た。
【0183】
次に、得られたIrを担持した触媒担体を空気中においてオーブンで120℃で2.5時間乾燥した後、空気中において電気炉で650℃で2.0時間焼成し、触媒を得た。
【0184】
得られた触媒は、Osを触媒に対し3500wtppmの割合で含有するもので、そのBET比表面積は0.20m/gであった。また、得られた触媒を、実施例1と同様にEPMA分析したところ、触媒粒子の表面にOsが担持されていた。そして、触媒表面から深さ10%以内にaとOsが存在していた。
【0185】
<比較反応例4>
比較例4で調製した触媒50ccを実施例1で用いたものと同様の反応器に充填してメタンのCOリフォーミング試験を実施した。
【0186】
具体的には、まず、触媒は、予めH及びHOをモル比(H/HO=1/6)である混合ガスを500℃で1時間触媒層を流通させて触媒と接触させることにより、還元処理を行った。その後、CH:CO:HO(モル比)=1:1:0の原料ガスを、触媒層出口のガス圧力1960kPaG,触媒層出口のガス温度880℃,メタン基準のGHSV=2,500/時の条件で処理した。
【0187】
この結果、反応開始から5時間経過後のCH転化率は6.3%(実験条件下でのCHの平衡転化率=54.8%)、20時間経過後のCH転化率は3.5%であった。また20時間経過後に、実施例1と同様に4分割して抜き出しした触媒上のカーボン量は上部から順にそれぞれ28.7wt%、12.3wt%、8.5wt%、7.8wt%であった。また、実施例1と同様に、比較反応例4記載の前処理条件で処理した触媒を分析したところ、Osの粒子が触媒表面に存在していることが確認された。
【0188】
<比較例5>
CaO含有量がCa換算で0.01wt%以下である市販のシリカアルミナ成型体を空気中で950℃で3時間焼成し、触媒担体を得た。
【0189】
得られた触媒担体を、実施例1と同様に、ICPで分析したところ、該触媒担体のCaO含有量はCa換算で0.01wt%以下であった。また、得られた触媒担体ではCaは表面に存在していなかった。
【0190】
次に、得られた触媒担体に、0.48wt%のRuを含む硝酸ルテニウム水溶液を、触媒担体1.0gに対し0.58cc(触媒担体の吸水量の1.2倍)にて噴霧し、Ruを担持した触媒担体シリカアルミナを得た。
【0191】
次に、得られたRuを担持した触媒担体を空気中においてオーブンで120℃で2.5時間乾燥した後、空気中において電気炉で950℃で2.0時間焼成し、触媒を得た。
【0192】
得られた触媒は、Ruを触媒に対し850wtppmの割合で含有するもので、そのBET比表面積は24.0m/gであった。また、得られた触媒を、実施例1と同様にEPMA分析したところ、Ru近傍にCaは存在していなかった。
【0193】
<比較反応例5>
比較例5で調製した触媒50ccを実施例1で用いたものと同様の反応器に充填してメタンのCOリフォーミング試験を実施した。
【0194】
具体的には、まず、触媒は、予めH及びHOをモル比(H/HO=1/0)である混合ガスを500℃で1時間触媒層を流通させて触媒と接触させることにより、還元処理を行った。その後、CH:CO:HO(モル比)=1:1:0の原料ガスを、触媒層出口のガス圧力1960kPaG,触媒層出口のガス温度880℃,メタン基準のGHSV=2,500/時の条件で処理した。反応開始から5時間経過後のCH転化率は35.3%(実験条件下でのCHの平衡転化率=54.8%)、20時間経過後のCH転化率は28.2%であった。また20時間経過後に、実施例1と同様に4分割して抜き出しした触媒上のカーボン量は上部から順にそれぞれ1.8wt%、1.3wt%、0.8wt%、0.5wt%であった。また、実施例1と同様に、比較反応例5記載の前処理条件で処理した触媒を分析したところ、Ruの粒子が触媒表面に存在していることが確認された。
【0195】
<比較例6>
CaO含有量がCa換算で0.01wt%以下である市販のZnO成型体を空気中で950℃で3時間焼成し、触媒担体を得た。
【0196】
得られた触媒担体を、実施例1と同様に、ICPで分析したところ、該触媒担体のCaO含有量はCa換算で0.01wt%以下であった。また、得られた触媒担体ではCaは表面に存在していなかった。
【0197】
次に、得られた触媒担体に、0.37wt%のRhを含む酢酸ロジウム水溶液を、触媒担体1.0gに対し0.37cc(触媒担体の吸水量の1.0倍)にて噴霧しRhを担持した触媒担体ZnOを得た。得られたRhを担持した触媒担体を測定したところ、BET比表面積は1.5m/gであった。また、得られたRhを担持した触媒担体について、実施例1と同様にEPMA分析したところ、Caは表面に偏在していなかった。
【0198】
次に、得られたRhを担持した触媒担体ZnOを空気中においてオーブンで120℃で2.5時間乾燥した後、空気中において電気炉で950℃で2.0時間焼成し、触媒を得た。
【0199】
得られた触媒は、Rhを触媒に対し900wtppmの割合で含有するもので、そのBET比表面積は1.50m/gであった。また、得られた触媒を、実施例1と同様にEPMA分析したところ、Rh近傍にCaは存在していなかった。
【0200】
<比較反応例6>
比較例6で調製した触媒50ccを実施例1で用いたものと同様の反応器に充填してメタンのCOリフォーミング試験を実施した。
【0201】
具体的にはまず、触媒は、予めH及びHOをモル比(H/HO=1/2)である混合ガスを500℃で1時間触媒層を流通させて触媒と接触させることにより、還元処理を行った。その後、CH:CO:HO(モル比=1:1:0)の原料ガスを、触媒層出口のガス圧力1960kPaG,触媒層出口のガス温度880℃,メタン基準のGHSV=2,500/時の条件で処理した。反応開始から5時間経過後のCH転化率は15.8%(実験条件下でのCHの平衡転化率=54.8%)、40時間経過後のCH転化率は10.2%であった。また40時間経過後に、実施例1と同様に4分割して抜き出しした触媒上のカーボン量は上部から順にそれぞれ5.5wt%、5.1wt%、3.2wt%、2.1wt%であった。また、実施例1と同様に、分析したところ、Rhの粒子が触媒表面に存在していることが確認された。
【0202】
<比較例7>
市販のCaO成型体を空気中で950℃で3時間焼成し、触媒担体を得た。
得られた触媒担体について、実施例1と同様にICP分析した。得られた触媒担体は、担体自体の構成成分がCaOであった。
【0203】
次に、得られた触媒担体に、0.3wt%のRuを含む酢酸ロジウム水溶液を、触媒担体1.0gに対し0.25cc(触媒担体の吸水量の1.1倍)にて噴霧し、Rhを担持した触媒担体を得た。
【0204】
次に、得られたRhを担持した触媒担体を空気中においてオーブンで120℃で2.5時間乾燥した後、空気中において電気炉で950℃で2.0時間焼成し、触媒を得た。
【0205】
得られた触媒は、Rhを触媒に対し780wtppmの割合で含有するもので、そのBET比表面積は8.90m/gであった。また、得られた触媒を、実施例1と同様にEPMA分析したところ、担体CaO表面上にRhが担持されていた。
【0206】
<比較反応例7>
比較例7で調製した触媒50ccを実施例1で用いたものと同様の反応器に充填してメタンのCOリフォーミング試験を実施した。
【0207】
具体的には、まず、触媒は、予めH及びHOをモル比(H/HO=1/5)である混合ガスを500℃で1時間触媒層を流通させて触媒と接触させることにより、還元処理を行った。その後、CH:CO:HO(モル比)=1:1:0の原料ガスを、触媒層出口のガス圧力1960kPaG,触媒層出口のガス温度880℃,メタン基準のGHSV=2,500/時の条件で処理した。反応開始から5時間経過後のCH転化率は25.3%(実験条件下でのCHの平衡転化率=54.8%)、70時間経過後のCH転化率は18.2%であった。また70時間経過後に、実施例1と同様に4分割して抜き出しした触媒上のカーボン量は上部から順にそれぞれ17.4wt%、10.3wt%、5.1wt%、4.7wt%であった。また、実施例1と同様に、比較反応例7記載の前処理条件で処理した触媒を分析したところ、粒子状のRhが触媒表面に存在していることが確認された。
【0208】
<比較例8>
CaO含有量がCa換算で0.01wt%以下である市販のZrO成型体を空気中で950℃で3時間焼成し、触媒担体を得た。
【0209】
得られた触媒担体を、実施例1と同様に、ICPで分析したところ、該触媒担体のCaO含有量はCa換算で0.01wt%以下であった。得られた触媒担体は、担体成分自体の構成成分がCaOである。
【0210】
次に、得られた触媒担体に、0.28wt%のRhを含む酢酸ロジウム水溶液を、触媒担体1.0gに対し0.22cc(触媒担体の吸水量の1.2倍質量)にて噴霧し、Rhを担持した触媒担体を得た。
【0211】
次に、得られたRhを担持した触媒担体を空気中においてオーブンで120℃で2.5時間乾燥した後、空気中において電気炉で950℃で2.0時間焼成し、触媒を得た。
【0212】
得られた触媒は、Rhを触媒に対し900wtppmの割合で含有するもので、そのBET比表面積は4.20m/gであった。また、得られた触媒を、実施例1と同様にEPMA分析したところ、粒子状のRuが触媒表面に存在していることが確認された。
【0213】
<比較反応例8>
比較例8で調製した触媒50ccを実施例1で用いたものと同様の反応器に充填してメタンのCOリフォーミング試験を実施した。
【0214】
具体的にはまず、触媒は、予めH及びHOをモル比(H/HO=1/3)である混合ガスを500℃で1時間触媒層を流通させて触媒と接触させることにより、還元処理を行った後、CH:CO:HO(モル比)=1:1:0の原料ガスを、触媒層出口のガス圧力1960kPaG,触媒層出口のガス温度880℃,メタン基準のGHSV=2,500/時の条件で処理した。反応開始から5時間経過後のCH転化率は37.8%(実験条件下でのCHの平衡転化率=54.8%)、10時間経過後のCH転化率は30.2%であった。また10時間経過後に、実施例1と同様に4分割して抜き出しした触媒上のカーボン量は上部からそれぞれ順に1.5wt%、2.3wt%、3.2wt%、3.2wt%であった。また、実施例1と同様に、比較反応例8記載の前処理条件で処理した分析したところ、Rhの粒子が触媒表面に存在していることが確認された。
【0215】
<比較例9>
CaO含有量がCa換算で0.01wt%以下である市販のAl成型体を空気中で950℃で3時間焼成し、触媒担体を得た。
【0216】
得られた触媒担体を、実施例1と同様に、ICPで分析したところ、該触媒担体のCaO含有量はCa換算で0.01wt%以下であった。また、得られた触媒担体ではCaは表面に存在していなかった。
【0217】
次に、得られた触媒に、0.16wt%のRhを含む酢酸ロジウム水溶液を、触媒担体1.0gに対し0.75cc(触媒担体の吸水量の1.0倍)にて噴霧し、Rhを担持した触媒担体を得た。
【0218】
次に、得られたRhを担持した触媒担体を空気中においてオーブンで120℃で2.5時間乾燥した後、空気中において電気炉で950℃で2.0時間焼成し、触媒を得た。
【0219】
得られた触媒は、Rhを触媒に対し1200wtppmの割合で含有するもので、そのBET比表面積は110.0m/gであった。また、得られた触媒を、実施例1と同様にEPMA分析したところ、Rh近傍に選択的にCaは存在していなかった。
【0220】
<比較反応例9>
比較例9で調製した触媒50ccを実施例1で用いたものと同様の反応器に充填してメタンのCOリフォーミング試験を実施した。
【0221】
具体的にはまず、触媒は、予めH及びHOをモル比(H/HO=1/1)である混合ガスを500℃で1時間触媒層を流通させて触媒と接触させることにより、還元処理を行った。その後、CH:CO:HO(モル比)=1:1:0の原料ガスを、触媒層出口のガス圧力1960kPaG,触媒層出口のガス温度880℃,メタン基準のGHSV=2,500/時の条件で処理した。反応開始から5時間経過後のCH転化率は54.8%(実験条件下でのCHの平衡転化率=54.8%)、50時間経過後のCH転化率は51.2%であった。また50時間経過後に、実施例1と同様に4分割して抜き出しした触媒上のカーボン量は上部から順にそれぞれ16.1wt%、10.3wt%、5.2wt%、4.8wt%であった。また、実施例1と同様に、分析したところ、Ruの粒子が触媒表面に存在していることが確認された。
【0222】
<比較例10>
CaO含有量がCa換算で0.001wt%以下である純度99.9wt%以上のMgOの粉末にMgO粉末に対して滑択材として3.0wt%のカーボンを混合し、直径1/4インチの円筒状のペレットを形成した。形成したペレットを空気中で1100℃で3時間焼成し、触媒担体を得た。
【0223】
得られた触媒担体を、実施例1と同様に、ICPで分析したところ、該触媒担体のCaO含有量はCa換算で0.001wt%以下であり、そのBET比表面積は0.2m/gであった。また、表面へのCaOの析出は確認されず、CaOは触媒担体表面に存在しなかった。
【0224】
次に、得られた触媒担体に、0.73wt%のRhを含む酢酸Rh水溶液を担体1.0gに対し0.18cc(触媒担体の吸水量の1.2倍質量)にて噴霧し、Rhを担持した触媒担体を得た。
【0225】
次に、得られたRhを担持した触媒担体を空気中においてオーブンで120℃で2.5時間乾燥した後、空気中において電気炉で950℃で2.0時間焼成し、触媒を得た。
【0226】
得られた触媒は、Rhを触媒に対し1300wtppmの割合で含有するもので、そのBET比表面積は0.20m/gであった。また、得られた触媒を、実施例1と同様にEPMAにて分析したところ、Rh近傍にCaは存在していなかった。
【0227】
<比較反応例10>
比較例10で調製した触媒50ccを実施例1で用いたものと同様の反応器に充填してメタンのCOリフォーミング試験を実施した。
【0228】
具体的にはまず、触媒は、予めH及びHOをモル比(H/HO=1/3)である混合ガスを500℃で1時間触媒層を流通させて触媒と接触させることにより、還元処理を行った後、CH:CO:HO(モル比)=1:1:0の原料ガスを、触媒層出口のガス圧力1960kPaG,触媒層出口のガス温度880℃,メタン基準のGHSV=2,500/時の条件で処理した。
【0229】
この結果、反応開始から5時間経過後のCH転化率は54.8%(実験条件下でのCHの平衡転化率=54.8%)、70時間経過後のCH転化率は52.3%であった。また70時間経過後に、実施例1と同様に4分割して抜き出しした触媒上のカーボン量は上部から順にそれぞれ6.5wt%、3.5wt%、3.2wt%、2.4wt%であった。また、実施例1と同様に、分析したところ、Rhの粒子が触媒表面に存在していることが確認された。
【0230】
<比較例11>
CaO含有量がCa換算で0.001wt%以下である純度99.9wt%以上のMgOの粉末に滑択材としてMgO粉末に対して3.0wt%のカーボンを混合し、直径1/4インチの円筒状のペレットを形成した。形成したペレットを空気中で1100℃で3時間焼成し、触媒担体を得た。
【0231】
得られた触媒担体を、実施例1と同様に、ICPで分析したところ、該触媒担体のCaO含有量はCa換算で0.001wt%以下であった。また、得られた触媒担体は、表面へのCaOの析出は確認されず、CaOは触媒担体表面に存在しなかった。
【0232】
次に、得られた触媒担体に、0.87wt%のRhを含む酢酸ロジウム水溶液を担体1.0gに対し0.15cc(触媒担体の吸水量の1.0倍)にて噴霧し、Rhを担持した触媒担体を得た。
【0233】
次に、得られたRhを担持した触媒担体を空気中においてオーブンで120℃で2.5時間乾燥した後、更に、0.5wt%のPtを含む塩化白金酸水溶液を担体1.0gに対し0.15cc(触媒担体の吸水量の1.0倍)にて噴霧し、Rh及びPtを担持した触媒担体を得た。
【0234】
得られたRh及びPtを担持した触媒担体を空気中において電気炉で950℃で2.0時間焼成し、触媒を得た。
【0235】
得られた触媒は、Rhを触媒に対し1300wtppm、Ptを触媒に対して750wtppmの割合で含有するもので、そのBET比表面積は0.20m/gであった。また、得られた触媒を、実施例1と同様にEPMAにて分析したところ、Rh及びPt近傍にCaは存在していなかった。
【0236】
<比較反応例11>
比較例11で調製した触媒50ccを実施例1で用いたものと同様の反応器に充填してメタンのCOリフォーミング試験を実施した。
【0237】
具体的にはまず、触媒は、予めH及びHOをモル比(H/HO=1/3)である混合ガスを500℃で1時間触媒層を流通させて触媒と接触させることにより、還元処理を行った。その後、CH:CO:HO(モル比)=1:1:0の原料ガスを、触媒層出口のガス圧力1960kPaG,触媒層出口のガス温度880℃,メタン基準のGHSV=2,500/時の条件で処理した。反応開始から5時間経過後のCH転化率は54.8%(実験条件下でのCHの平衡転化率=54.8%)、15時間経過後のCH転化率は54.8%であった。また15時間経過後に、実施例1と同様に4分割して抜き出しした触媒上のカーボン量は上部から順にそれぞれ1.6wt%、2.3wt%、3.2wt%、2.7wt%であった。また、実施例1と同様に、比較反応例11記載の前処理条件で処理した触媒を分析したところ、Rhの粒子が触媒表面に存在していることが確認された。
【0238】
<比較例12>
CaO含有量がCa換算で0.001wt%以下で純度99.9wt%以上のMgOの粉末に滑択材としてMgO粉末に対して3.0wt%のカーボンを混合し、直径1/4インチの円筒状のペレットを形成した。形成したペレットに5.1wt%のLaを含む硝酸ランタン水溶液を噴霧しLaを担持させ、更に空気中で1100℃で3時間焼成し、触媒担体を得た。
【0239】
得られた触媒担体を、実施例1と同様に、ICPで分析したところ、該触媒担体のLa含有量は1.5wt%であり、CaO含有量はCa換算で0.001wt%以下であった。また、得られた触媒担体は、表面へのCaOの析出は確認されず、CaOは触媒担体表面に存在していなかった。
【0240】
次に、得られた触媒担体に、0.67wt%のRhを含む酢酸ロジウム水溶液を担体1.0gに対し0.20cc(触媒担体の吸水量の1.3倍)にて噴霧し、Rhを担持した触媒担体を得た。
【0241】
次に、得られたRhを担持した触媒担体を空気中においてオーブンで120℃で2.5時間乾燥した後、更に、空気中において電気炉で950℃で2.0時間焼成し、触媒を得た。
【0242】
得られた触媒は、Rhを触媒に対し1300wtppmの割合で含有するもので、そのBET比表面積は0.20m/gであった。また、得られた触媒を、実施例1と同様にEPMA分析したところ、Rh近傍にCa及びLaは存在していなかった。
【0243】
<比較反応例12>
比較例12で調製した触媒50ccを実施例1で用いたものと同様の反応器に充填してメタンのCOリフォーミング試験を実施した。
【0244】
具体的にはまず、触媒は、予めH及びHOをモル比(H/HO=1/0)である混合ガスを500℃で1時間触媒層を流通させて触媒と接触させることにより、還元処理を行った後、CH:CO:HO(モル比)=1:1:0の原料ガスを、触媒層出口のガス圧力1960kPaG,触媒層出口のガス温度880℃,メタン基準のGHSV=2,500/時の条件で処理した。反応開始から5時間経過後のCH転化率は54.8%(実験条件下でのCHの平衡転化率=54.8%)、50時間経過後のCH転化率は54.8%であった。また50時間経過後に、実施例1と同様に4分割して抜き出しした触媒上のカーボン量は上部から順にそれぞれ7.2wt%、5.1wt%、2.1wt%、1.2wt%であった。また、実施例1と同様に、比較反応例12記載の前処理条件で処理した触媒を分析したところ、Rhの粒子が触媒表面に存在していることが確認された。
【0245】
<比較例13>
CaO含有量がCa換算で0.001wt%以下で純度99.9wt%以上のMgOの粉末を100℃に煮沸攪拌しMg(OH)とする際に、Ca(OH)水溶液滴下しながら攪拌しCa添加型Mg(OH)粒子を得た。この添加体に滑択材として3.0wt%のカーボンを混合し、直径1/4インチの円筒状のペレットを形成した。形成したペレットを更に空気中で1180℃で3時間焼成し、触媒担体を得た。
【0246】
得られた触媒担体を、実施例1と同様に、ICPで分析したところ、該触媒担体のCaO含有量は1.8wt%であった。なお、EPMA分析結果から、触媒担体の内部にCaが存在せず、CaはMgO粒子表面のみに存在していることが確認された。また、得られた触媒担体を構成するMgO粒子はCa添加型Mg(OH)粒子よりも顕著に大きかった。したがって、Ca添加型Mg(OH)粒子が凝集してMgO粒子を形成し、且つ、Ca添加型Mg(OH)粒子が含有するCaOがMgO粒子表面に析出したと言える。また、得られた触媒担体は、実施例1と同様に、粒子状であり、MgO粒子の表面の一部が、CaOを含有する層で被覆され、また、MgO粒子表面の凹部にCaOが存在していた。また、これらCaOは触媒担体の表面から深さ10%以内に存在していた。そして、MgO粒子表面のCaOの存在量を求めたところ、Ca換算で180mg−Ca/m−MgOであった。また、ピーナッツ状粒子の中央部はCaをごく微量しか含まず、ほとんどのCaは両端部に含まれていた。
【0247】
次に、得られた触媒担体に、0.87wt%のRhを含む酢酸ロジウム水溶液を、触媒担体1.0gに対し0.15cc(触媒担体の吸水量の1.0倍)にて噴霧し、Rhを担持した触媒担体を得た。
【0248】
次に、得られたRhを担持した触媒担体を空気中においてオーブンで120℃で2.5時間乾燥した後、更に、空気中において電気炉で950℃で2.0時間焼成し、触媒を得た。
【0249】
得られた触媒は、Rhを触媒に対し1300wtppmの割合で含有するもので、そのBET比表面積は0.10m/gであった。また、得られた触媒を、実施例1と同様にEPMA分析したところ、触媒粒子の表面にRhが担持されていた。そして、Rhは触媒表面から深さ10%以内に存在していた。また、該Rhの近傍にCaOが存在していた。そして、MgO粒子表面のCaOの存在量を求めたところ、Ca換算で180mg−Ca/m−MgOであった。触媒担体中に含まれるRu及びCaOは、全てMgO粒子表面に存在していた。また、ピーナッツ状粒子の中央部はCaをごく微量しか含まず、ほとんどのCaは両端部に含まれていた。
【0250】
<比較反応例13>
比較例13で調製した触媒50ccを実施例1で用いたものと同様の反応器に充填してメタンのCOリフォーミング試験を実施した。
【0251】
具体的にはまず、触媒は、予めH及びHOをモル比(H/HO=1/0)である混合ガスを500℃で1時間触媒層を流通させて触媒と接触させることにより、還元処理を行った後、CH:CO:HO(モル比)=1:1:0の原料ガスを、触媒層出口のガス圧力1960kPaG,触媒層出口のガス温度880℃,メタン基準のGHSV=2,500/時の条件で処理した。反応開始から5時間経過後のCH転化率は53.9%(実験条件下でのCHの平衡転化率=54.8%)、50時間経過後のCH転化率は53.1%であった。また50時間経過後に、実施例1と同様に4分割して抜き出しした触媒上のカーボン量は上部から順にそれぞれ0.6wt%、0.4wt%、0.1wt%、0.05wt%であった。また、比較反応例13記載の前処理条件で処理した触媒を分析したところ、粒子状のRhが触媒表面に存在していることが確認された。
【0252】
<比較例14>
CaO含有量がCa換算で0.001wt%以下で純度99.9wt%以上のMgOの粉末を100℃にて煮沸攪拌しMg(OH)とする際に、同時にCa(OH)水溶液を滴下攪拌することでCa添加型Mg(OH)粒子を得た。この添加体に滑択材として3.0wt%のカーボンを混合し、直径1/4インチのペレットを形成した。形成したペレットを更に空気中で1060℃で3時間焼成し、触媒担体を得た。
【0253】
得られた触媒担体を、実施例1と同様に、ICPで分析したところ、該該触媒担体はCaOをCa換算で0.001wt%含有していた。なお、EPMA分析結果から、触媒担体の内部にCaが存在せず、CaはMgO粒子表面のみに存在していることが確認された。また、得られた触媒担体を構成するMgO粒子はCa添加型Mg(OH)粒子よりも顕著に大きかった。したがって、Ca添加型Mg(OH)粒子が凝集してMgO粒子を形成し、且つ、Ca添加型Mg(OH)粒子が含有するCaOがMgO粒子表面に析出したと言える。また、得られた触媒担体は、実施例1と同様に、粒子状であり、MgO粒子の表面の一部が、CaOを含有する層で被覆され、また、MgO粒子表面の凹部にCaOが存在していた。また、これらCaOは触媒担体の表面から深さ10%以内に存在していた。そして、MgO粒子表面のCaOの存在量を求めたところ、Ca換算で0.02mg−Ca/m−MgOであった。また、ピーナッツ状粒子の中央部はCaをごく微量しか含まず、ほとんどのCaは両端部に含まれていた。
【0254】
次に、得られた触媒担体に、0.7wt%のRuを含む硝酸ルテニウム水溶液を、触媒担体1.0gに対し0.15cc(触媒担体の吸水量の1.0倍)にて噴霧しRuを担持した触媒担体を得た。
【0255】
次に、得られたRuを担持した触媒担体を空気中においてオーブンで120℃で2.5時間乾燥した後、空気中において電気炉で400℃で2.0時間焼成し、触媒を得た。
【0256】
得られた触媒は、Ruを触媒に対し910wtppmの割合で含有するもので、BET比表面積は0.50m/gであった。また、得られた触媒を、実施例1と同様にEPMA分析したところ、触媒粒子の表面にRuが担持されていた。そして、Ruは触媒表面から深さ10%以内に存在していた。また、該Ruの近傍にCaOが存在していた。
【0257】
<比較反応例14>
比較例14で調製した触媒50ccを実施例1で用いたものと同様の反応器に充填してメタンのCOリフォーミング試験を実施した。
【0258】
具体的にはまず、触媒は、予めH及びHOをモル比(H/HO=1/0)である混合ガスを500℃で1時間触媒層を流通させて触媒と接触させることにより、還元処理を行った後、CH:CO:HO(モル比)=1:1:0の原料ガスを、触媒層出口のガス圧力1960kPaG,触媒層出口のガス温度880℃,メタン基準のGHSV=2,500/時の条件で処理した。反応開始から5時間経過後のCH転化率は53.9%(実験条件下でのCHの平衡転化率=54.8%)、50時間経過後のCH転化率は53.3%であった。また50時間経過後に、実施例1と同様に4分割して抜き出しした触媒上のカーボン量は上部から順にそれぞれ0.5wt%、0.5wt%、0.1wt%、0.05wt%であった。また、比較反応例14記載の前処理条件で処理した触媒を分析したところ、粒子状のRuが触媒表面に存在していることが確認された。
【0259】
実施例1〜10及び比較例1〜14の製造条件、得られた担体及び触媒の性状を表3に示し、反応例1〜10及び比較反応例1〜14の条件及び結果を表4に示す。
【0260】
表3及び表4に示すように、本発明の実施例1〜10の触媒を用いたCOリフォーム反応では、カーボンの析出量が顕著に低かった。そして、長時間通気しても、メタン転化率が維持されており、長期間安定的に効率良く合成ガスを製造していた。
【0261】
一方、Rh及びRuを担持させていない比較例1、3、4、焼成温度が低くCaOがMgO粒子表面に析出しなかった比較例2、担体がMgOを含有しない比較例5〜9、含有するCaO量が本発明の範囲外の比較例10〜14は、カーボンの析出量が多く、短時間でカーボンが析出した。また、比較例1及び3〜8は、CH転化率も実施例と比べて低かった。
【0262】
【表3】
【0263】
【表4】
【符号の説明】
【0264】
10 合成ガス製造触媒用担体
11 酸化マグネシウム粒子
12、13 酸化カルシウム含有層
【要約】      (修正有)
【課題】二酸化炭素リフォーミングにより合成ガスを製造する際に、炭素析出を抑制でき、長期間安定的に効率良く合成ガスを製造することができる合成ガス製造触媒用担体を提供する。
【解決手段】メタンを含有する軽質炭化水素と二酸化炭素とを含む原料ガスから、一酸化炭素と水素を含む合成ガスを製造する際に使用される合成ガス製造触媒用担体であって、酸化マグネシウム粒子と該酸化マグネシウム粒子の表面に存在する酸化カルシウムとを含有し、該酸化カルシウムの含有量が、Ca換算で0.005質量%〜1.5質量%である合成ガス製造触媒用担体。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7