【0017】
(濃縮トマト)
本願発明の味噌様発酵調味料の製造方法において、使用する濃縮トマトは生又は加熱したトマトを破砕して搾汁し、又は裏ごしし、皮、種子等を除去した後濃縮したものをいう。濃縮トマトの原料トマトに特に制限はなく、品種や産地の限定無く広く使用することができる。また同一の品種を原料とする場合であっても異なる品種を原料とするものが配合された場合であっても、いずれも使用することができる。
濃縮トマトの濃縮方法は特に限定されず、蒸発濃縮法、凍結乾燥濃縮法、逆浸透濃縮法が挙げることができる。
本願発明の味噌様発酵調味料の製造方法において、濃縮トマトの水分量は60〜75質量%であり、好ましくは63〜71質量%である。濃縮トマトの水分量が75質量%より多いと、発酵不良となる為不適である。
本願発明の味噌様発酵調味料の製造方法において、濃縮トマトの添加量は蒸煮大豆(乾燥質量)100重量部に対して5〜105重量部であり、好ましくは蒸煮大豆(乾燥質量)100重量部に対して10〜100重量部である。濃縮トマトの添加量が蒸煮大豆(乾燥質量)100重量部に対して5質量部未満であるとトマトを添加する効果が得られない為不適である。
【0018】
(小麦ふすま)
本願明細書において小麦ふすまとは小麦粒の表皮部分であり、小麦粉を製粉する際に、小麦粉と胚芽を分離した残余として得ることができる。本願発明の味噌様発酵調味料の製造方法において、使用する小麦ふすまとしては加熱粉砕又は粉砕加熱により加工されているものであれば特に限定されない。
加熱粉砕又は粉砕加熱の方法は特に限定されず、加熱工程及び粉砕工程の回数やその前後を問わない。
加熱工程は常圧下又は加圧下のいずれで行っても良く、例えばオーブンなどの加熱装置、蒸し器、オートクレーブなどの加圧蒸気処理装置、二軸エクストルーダーなどの攪拌式の蒸練器等によって行うことができる。加熱条件は、加熱処理のある条件であれば特に制限されない。加熱温度は100〜200℃が好ましく、110〜150℃がより好ましい。加熱時間は加熱温度や方法に依存して変化するが、2時間以内が好ましく、より好ましくは1時間以内である。例えば、オーブンで110〜150℃、10〜30分間加熱乾燥する。
粉砕工程は公知のいかなる方法で行ってもよく、ブレンダーミキサー等の通常の粉砕機を用いて粉砕することができる。また小麦ふすまに水を加え、挽臼式粉砕機を用いて粉砕することにより挽臼式粉砕機の使用により生じた摩擦熱により加熱と粉砕を同時に行うこともできる。
本願発明の味噌様発酵調味料の製造方法において、食感への影響を低減する観点から粉砕加熱又は加熱粉砕した小麦ふすまをさらに1mm以下の開口篩で篩抜けたものを添加することが好ましく、0.5mm以下の開口篩で篩抜けたものを添加することがさらに好ましい。
本願発明の味噌様発酵調味料の製造方法において、小麦ふすまは蒸煮大豆(乾燥質量)100重量部に対して1〜10重量部の割合で添加することが好ましく、蒸煮大豆(乾燥質量)100重量部に対して1〜5重量部の割合で添加することがさらに好ましい。小麦ふすまの添加量が蒸煮大豆(乾燥質量)100重量部に対して1重量部未満であると添加の効果が得られず、10重量部を超えると口の中に皮が残るなど食感への影響の程度が許容できず不適である。
【実施例】
【0020】
以下本発明を具体的に説明する為に実施例を示すが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
[原材料]
実施例及び比較例において原材料として以下のものを使用した。
(蒸煮大豆)
乾燥した大豆1kg(水分14.3%)を水洗後、16時間、水に浸漬させた後、圧力鍋で20分間煮熱した。煮熟後、水切した後の質量は2.2kgであった。
プレート網目4.8mmのミートチョッパーですり潰したものを蒸煮大豆とした。
【0021】
(米麹、麦麹)
米麹:精米した蒸米に種麹を植え付け、製麹したものを使用した(水分25%)。
麦麹:オオムギを精麦し、蒸し後、冷却し、種麹を植え付け、製麹したものを使用した(水分25%)。
(食塩)
市販の並塩を使用した。
(種味噌)
発酵熟成を安定化させるために、アルコール添加や加熱殺菌していない新鮮な天然醸造の味噌(水分46%)を総量の約1%程度添加した。
【0022】
(濃縮トマト)
トマトをすりつぶし、ろ過したものを、水分を63〜71%まで濃縮し、加熱殺菌後、包装したトマトペーストを使用した。実施例で使用した水分64%の濃縮トマトは、Bx37、pH4.2であった。また水分70%の濃縮トマトは、Bx30、pH4.3であった。
なお、比較例で使用した非濃縮トマトは水分93%、pH4.2であった。
【0023】
(ふすま加工品1)
天板に厚さ1mm程度に小麦ふすま(日本製粉(株)製造の精良ふすま)を拡げ、140℃のオーブンで30分焼成し冷却後にブレンダーミキサーで粉砕して加熱粉砕品を得た。得られた加熱粉砕品を1.00mmの開口篩で篩抜けたものをふすま加工品1とした。
【0024】
(ふすま加工品2)
小麦ふすま(日本製粉(株)製造の精良ふすま)100部に対し水30部を加え、挽臼式粉砕機において回転数1500rpm で、1分間に1.5kgの処理量で処理し、繊維状物を得た。得られた繊維状物をベルト式乾燥機にて、110℃で約15分間加熱乾燥し、乾燥品を得た。これをさらに、10メッシュ篩をもつ振動篩を通すことによって顆粒状の加工品を得た。この顆粒状の加工品を通常の粉砕機で粉砕して得られた粉末状の加工品を、0.50mmの開口篩で篩抜けたものをふすま加工品2とした。
【0025】
(ふすま加工品3)
小麦ふすま(日本製粉(株)製造の精良ふすま)4kgを、クエン酸9.2gを含む酸溶液4リットルを用いて加湿し、室温で5時間放置した後、熱風乾燥器において90℃で24時間乾燥し、乾燥品を得た。得られた乾燥品を二軸エクストルーダーを用いて、バレル温度130℃、圧力6kg/cm
2 で、乾燥品に対して1重量%のクエン酸及び10重量%のブドウ糖を添加して加圧・加熱処理した。得られた加圧・加熱処理品を通常の粉砕機で粉砕して得られた粉末状の加工品を、1.00mmの開口篩で篩抜けたものをふすま加工品3とした
【0026】
[味噌用食品の製造]
(実施例1〜5)
表2に記載した配合で蒸煮大豆、麹、塩を予備混合したものに、種味噌、濃縮トマト、水を加え混合した。これを消毒したプラスチック容器に詰め込み、表面をラップで被い、蓋をして25℃前後で3ヶ月、熟成発酵した。
(実施例6〜9)
表2に記載した配合で蒸煮大豆、麹、塩、ふすま加工品を予備混合したものに、種味噌、濃縮トマト、水を加え混合した。これを消毒したプラスチック容器に詰め込み、表面をラップで被い、蓋をして25℃前後で3ヶ月、熟成発酵した。
(比較例1:トマトを含まない通常の味噌)
表3に記載した配合で蒸煮大豆、麹、塩を予備混合したものに、種味噌、水を加え混合した。これを消毒したプラスチック容器に詰め込み、表面をラップで被い、蓋をして25℃前後で3ヶ月、熟成発酵した。
(比較例2〜4)
表3に記載した配合で蒸煮大豆、麹、塩を予備混合したものに、種味噌、トマト又は濃縮トマト、水を加え混合した。これを消毒したプラスチック容器に詰め込み、表面をラップで被い、蓋をして25℃前後で3ヶ月、熟成発酵した。
【0027】
[官能試験]
得られた各味噌用食品について、官能試験を行った。
具体的には、前記製造試験で得られた各味噌用食品108gを、鍋にて加熱しただし汁1200ccに加えて味噌汁を作成し、表1に示す評価基準により、外観、粘度、風味、舌触りについてそれぞれトマトを含まない通常の味噌(比較例1、評点:外観2点、粘度5点、風味2点、舌触り5点)を対照として、10名の熟練のパネラーで評価し平均点を求めた。
得られた結果を下記表2及び表3に示す。
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【0030】
【表3】
【0031】
水分量60〜75質量%の濃縮トマトを蒸煮大豆(乾燥質量)100重量部に対して5〜105重量部の割合で添加した実施例1〜5では、外観、風味及び舌触りにおいて、トマトを添加しない比較例1と比較して一般的な味噌臭さが弱まり、改善効果を得られた。特に外観及び風味が大きく改善された。発酵によりトマトの臭みがなくなり、洋風料理に適した発酵調味料になった。
濃縮トマトを添加した実施例1〜5では、比較例1と比べて粘度の評点が下がったが、比較例2〜4と比べて粘度及び風味が大きく改善された。
比較例1は一般的な味噌であり、特筆するべき特徴はなかった。これに対し、非濃縮トマトを使用した比較例2、3は発酵風味が乏しく、比較例3は水分が多く、粘性がなく不適であり、また濃縮トマトの添加量が蒸煮大豆(乾燥質量)100重量部に対して105重量部を超える比較例4はトマトの臭みが強すぎて不適であった。
その点、濃縮トマトにさらに加工ふすまを添加した実施例6〜9では実施例1〜5と比較して粘度の評点が改善された。
しかしながら加工ふすまを添加することにより舌触りの評点が下がり、特に蒸煮大豆(乾燥質量)100重量部に対して5重量部を超える加工ふすまを添加した実施例9では、口の中に皮が残り異物感があると評価するものが出た。