【実施例】
【0026】
以下、実施例及び比較例に基づいてさらに本発明を詳細に説明する。
[各種溶液の調製]
<保護膜形成用の溶液1>
陽イオン性界面活性剤である塩化セチルピリジニウム(CPC)が1mmol/L及びアンモニアが10mmol/Lの濃度となるように、各成分を純水に溶解して、保護膜形成用の溶液を調製した。この溶液のpHは約10.5である。
<保護膜形成用の溶液2>
カチオンポリマーであるポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(PDACまたはPDADMAC;和光純薬工業社製コロイド滴定用標準液、分子量6万〜11万)が1meq/L及びアンモニアが10mmol/Lの濃度となるように、各成分を純水に溶解して、保護膜形成用の溶液を調製した。この溶液のpHは約10.5である。
<保護膜形成用の溶液3>
カチオンポリマーであるポリエチレンイミン(PEI;日本触媒社製エポミンSP−006(分子量約600))が1meq/Lの濃度になるように純水に溶解して、保護膜形成用の溶液3を調製した。この溶液のpHは約10.5である。
<保護膜形成用の溶液4>
カチオンポリマーであるポリエチレンイミン(PEI;日本触媒社製エポミンSP−200(分子量約10000))が1meq/Lの濃度になるように純水に溶解して、保護膜形成用の溶液を調製した。この溶液のpHは約10.5である。
【0027】
(実施例1)
表面研磨をした、縦50mm×横50mm×厚さ0.7mmの無アルカリボロシリケートガラス製のガラス板を、上記保護膜形成用の溶液1中に10秒間浸漬して引き上げた後、表面の溶液をエアブローで乾燥するディップコート法により、ガラス板の表面に保護膜を形成し、保護膜付きのガラス製品とした。
【0028】
(実施例2)
表面研磨をした、縦50mm×横50mm×厚さ0.7mmの無アルカリボロシリケートガラス製のガラス板を、上記保護膜形成用の溶液2中に10秒間浸漬して引き上げた後、表面の溶液をエアブローで乾燥するディップコート法により、ガラス板の表面に保護膜を形成し、保護膜付きのガラス製品とした。
【0029】
(実施例3)
表面研磨をした、縦50mm×横50mm×厚さ0.7mmの無アルカリボロシリケートガラス製のガラス板を、上記保護膜形成用の溶液3中に10秒間浸漬して引き上げた後、表面の溶液をエアブローで乾燥するディップコート法により、ガラス板の表面に保護膜を形成し、保護膜付きのガラス製品とした。
【0030】
(実施例4)
表面研磨をした、縦50mm×横50mm×厚さ0.7mmの無アルカリボロシリケートガラス製のガラス板を、上記保護膜形成用の溶液4中に10秒間浸漬して引き上げた後、表面の溶液をエアブローで乾燥するディップコート法により、ガラス板の表面に保護膜を形成し、保護膜付きのガラス製品とした。
【0031】
(比較例1)
表面研磨をした、縦50mm×横50mm×厚さ0.7mmの無アルカリボロシリケートガラス製のガラス板を、純水で洗浄した。このガラス板は、表面が研磨後の状態であり、保護膜等は設けられていない。
【0032】
(比較例2)
表面研磨をした、縦50mm×横50mm×厚さ0.7mmの無アルカリボロシリケートガラス製のガラス板を、陰イオン性界面活性剤であるジオクチルスルホサクシネートナトリウムが1mmol/Lの濃度となるように、純水に溶解した陰イオン性界面活性剤溶液中に10秒間浸漬して引き上げた後、表面の溶液をエアブローで乾燥するディップコート法により、ガラス板の表面に陰イオン性界面活性剤の膜を形成した。
【0033】
(試験例1)
実施例及び比較例のガラス製品の表面に、製紙添加用TiO
2微粒子顔料をまぶした合紙に押し付けてTiO
2微粒子を転写させた。このガラス製品を、約25℃の空気を30秒間吹き付けるエアブローを行い、その後、25℃の純水中で100kHzでの超音波洗浄を30秒間行い、さらに、市販のアルカリ性洗剤原液(パーカーコーポレーション社製、商品名:PK−LCG211)を100倍希釈したアルカリ洗浄液中で28kHzでの超音波洗浄を30秒間行った。エアブロー後、純水洗浄後、アルカリ洗剤洗浄後、のそれぞれの処理後のガラス製品の表面を、蛍光X線法でTiO
2微粒子の残留状況をモニターし、その結果を
図2に示した。エアブロー後と比較したアルカリ洗浄後のTiO
2微粒子の除去率は、実施例1が59%、実施例2が48%、実施例3が55%、実施例4が50%、比較例1が35%、比較例2が34%であった。
【0034】
この結果から、実施例1が最も汚染の防止効果が高く、実施例3がその次に高かった。比較例1及び2ではTiO
2微粒子の残留量が多く、汚染の防止効果が低かった。比較例2の陰イオン性界面活性剤を用いた場合には、エアブローによる乾燥工程で、陰イオン性界面活性剤はガラス製品の表面と相互作用がないため水が除去されるのと同時にそのほとんどが除去されてしまい、保護膜を設けなかった比較例1と同等の結果になったものと推測される。
【0035】
(試験例2)
シリコーン油(ポリジメチルシロキサン:分子量約4200)を100μg/mlになるようにアセトンに溶解し、その溶液を合紙に含浸させ乾燥して4μg/cm
2の付着量に調製する。このシリコーン油含浸合紙を実施例および比較例のガラス製品と交互に挟み、全体をばねクリップで挟んで試料束とした。これを、50℃、湿度80%の雰囲気下で20時間保ち、シリコーン油をガラス製品の表面に転写させる。市販のアルカリ性洗剤原液(パーカーコーポレーション社製、商品名:PK−LCG211)を100倍希釈したアルカリ洗浄液中で28kHzでの超音波洗浄を30秒間行い、さらに同じアルカリ洗浄液でポリビニルアルコール製スポンジを用いて手スクラブで3分間、約200回こすり洗いを行った。転写直後、超音波洗浄後、手スクラブ後に接触角を測定し、その結果を
図3に示した。接触角はシリコーン油の付着量を定量的に表すものではないが、大小関係は定性的に付着量を評価できる。転写直後と比較した手スクラブ後の接触角の変化率は、実施例1が39%、実施例2が68%、実施例3が35%、実施例4が31%、比較例1が91%、比較例2が89%であった。
[接触角]
測定対象のガラス基板の表面に純水を1滴滴下し、その表面の水滴を基板側面から撮像したデータに基づいて、5点の測定結果を平均して各基板における純水との接触角を算出した。
【0036】
この結果から、実施例4が最も汚染の防止効果が高く、実施例3がその次に高かった。比較例1及び2ではシリコーン油の残留量が多く、汚染の防止効果が低かった。比較例2の陰イオン性界面活性剤を用いた場合には、エアブローによる乾燥工程で、陰イオン性界面活性剤はガラス製品の表面と相互作用がないことから、水が除去されるのと同時にそのほとんどが除去されてしまったと考えられる。そのため、保護膜を設けなかった比較例1と同等の結果になったものと推測される。