(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の重合性液晶組成物は上述のとおり、スメクチック相を示す重合性液晶化合物、特定のレベリング剤及び溶剤を含む。また、該レベリング剤は、ポリアクリレート化合物を主成分とするレベリング剤及びフッ素原子含有化合物を主成分とするレベリング剤からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、該レベリング剤の含有量は、重合性液晶化合物100質量部に対して、0.3質量部以上5質量部以下である。
【0012】
光学フィルムとは、光を透過し得るフィルムであって、光学的な機能を有するフィルムをいう。光学的な機能とは、吸収、反射、回折、散乱、屈折、複屈折などを意味する。光学フィルムの一種である位相差フィルムは、直線偏光を円偏光や楕円偏光に変換したり、逆に円偏光又は楕円偏光を直線偏光に変換したりするために用いられる。
また、光学フィルムの一種である偏光フィルムとは、偏光していない入射光を直交する2つの偏光成分に分解し、一方の偏光成分を透過させ、もう一方の偏光成分を吸収するために用いられる。透過する偏光成分の軸方向は透過軸、吸収する偏光成分の軸方向は吸収軸という。
【0013】
従来の重合性液晶組成物(例えば、特許文献1記載の重合性液晶組成物)では、該重合性液晶組成物を配向膜上に塗布した場合、該重合性液晶組成物に含まれる重合性液晶化合物を、スメクチック相を示す膜(液晶相が形成された膜)とした後、該重合性液晶化合物を重合させて光学フィルムを得た場合、液晶相が形成された膜中の重合性液晶化合物が膜厚方向に配向し易いため、例えば、二色比に優れる光学フィルムを得ることは困難であった。このため、2枚の配向膜を向かい合わせたセルを作製する必要があり、操作が煩雑であるとい問題があった。本発明の重合性液晶組成物によれば、液晶相が塗布によって形成された膜において、重合性液晶化合物が水平方向(膜面方向)に十分配向した膜とすることができるため、結果として二色比に優れる光学フィルム等を得ることができる。
【0014】
本発明の重合性液晶組成物は、重合性液晶化合物を含む。重合性液晶化合物とは、重合性基を有し、かつ液晶性を示す化合物である。重合性基は、重合性液晶化合物の重合反応に関与する基を意味する。
前記重合性液晶化合物は、スメクチック相を示す重合性液晶化合物であり、スメクチック相を示す温度と、等方相を示す温度との間の温度範囲内に、ネマチック相を示す温度を有する重合性液晶化合物であることが好ましい。重合性液晶化合物がこのような化合物であると、水平配向のスメクチック相を容易に得られる傾向がある。
【0015】
スメクチック相を示す温度と、等方相を示す温度との間の温度範囲内に、ネマチック相を示す温度を有するとは、スメクチック相を示す温度をTs(℃)、等方相を示す温度をTa(℃)、ネマチック相を示す温度をTn(℃)としたとき、式(T1)
Ts < Tn < Ta (T1)
の関係を満たすことをいう。
【0016】
スメクチック相としては、スメクチックA相、スメクチックB相、スメクチックD相、スメクチックE相、スメクチックF相、スメクチックG相、スメクチックH相、スメクチックI相、スメクチックJ相及びスメクチックK相、ならびに、これらから選ばれるスメクチック相が傾斜したものが挙げられる。中でも、スメクチックB相、スメクチックF相、スメクチックI相、傾斜したスメクチックF相及び傾斜したスメクチックI相が好ましく、スメクチックB相がより好ましい。重合性液晶化合物が示す液晶相(スメクチック相)がこれらの液晶相であると、配向秩序度の高い光学フィルムが得られる。
【0017】
重合性液晶化合物としては、例えば、式(1)で表される化合物(以下、「化合物(1)」という場合がある)が挙げられる。
U
1−V
1−W
1−X
1−Y
1−X
2−Y
2−X
3−W
2−V
2−U
2 (1)
[式(1)中、X
1、X
2及びX
3は、置換基を有していてもよいp−フェニレン基又は置換基を有していてもよいシクロヘキサン−1,4−ジイル基を表す。ただしX
1、X
2及びX
3のうち少なくとも1つは、置換基を有していてもよいp−フェニレン基を表す。
Y
1及びY
2は、互いに独立に、−CH
2CH
2−、−CH
2O−、−COO−、−OCOO−、単結合、−N=N−、−CR
a=CR
b−、−C≡C−又は−CR
a=N−を表す。を表す。
R
a及びR
bは、互いに独立に、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
U
1は、水素原子又は重合性基を表す。
U
2は、重合性基を表す。
W
1及びW
2は、互いに独立に、単結合、−O−、−S−、−COO−又は−OCOO−を表す。
V
1及びV
2は、互いに独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルカンジイル基を表し、該アルカンジイル基に含まれる−CH
2−は、−O−、−S−又は−NH−に置き換わっていてもよい。]
【0018】
X
1、X
2及びX
3は、互いに独立に、置換基を有していてもよいp−フェニレン基、又は置換基を有していてもよいシクロへキサン−1,4−ジイル基である。ただし、X
1、X
2及びX
3のうち少なくとも1つは、置換基を有していてもよい1,4−フェニレン基である。
X
1、X
2及びX
3のうち少なくとも2つは置換基を有していてもよいp−フェニレン基であることが好ましい。
前記p−フェニレン基は、無置換であることが好ましい。前記シクロへキサン−1,4−ジイル基は、トランス−シクロへキサン−1,4−ジイル基であることが好ましく、これらは無置換であることがより好ましい。
【0019】
p−フェニレン基が有していてもよい置換基としては、メチル基、エチル基、ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基;シアノ基;フルオロ基、クロロ基、ブロモ基等のハロゲノ基等が挙げられる。
シクロへキサン−1,4−ジイル基が有していてもよい置換基としては、メチル基、エチル基、ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基;シアノ基;フルオロ基、クロロ基、ブロモ基等のハロゲノ基等が挙げられる。シクロへキサン−1,4−ジイル基の−CH
2−は、−O−、−S−又は−NR−で置換されていてもよい。Rは、炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基である。
【0020】
Y
1及びY
2は、互いに独立に、−CH
2CH
2−、−CH
2O−、−COO−、−OCOO−、単結合、−N=N−、−CR
a=CR
b−、−C≡C−又は−CR
a=N−である。これらの基の結合位置は、いずれの向きでもよい。
R
a及びR
bは、互いに独立に、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基である。炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、ブチル基等が挙げられる。
Y
1は、−CH
2CH
2−、−COO−又は単結合であることが好ましい。
Y
2は、−CH
2CH
2−又は−CH
2O−であることが好ましい。
【0021】
U
1は、水素原子又は重合性基であり、好ましくは重合性基である。U
2は、重合性基である。U
1及びU
2は、ともに光重合性基であることが好ましい。ここで、光重合性基とは、光重合開始剤から発生した活性ラジカル、酸等によって重合に関与しうる基のことをいう。また、U
1及びU
2は、同じ種類の基であることが好ましい。
重合性基としては、ビニル基、ビニルオキシ基、1−クロロビニル基、イソプロペニル基、4−ビニルフェニル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、オキシラニル基、オキセタニル基等が挙げられる。中でも、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、オキシラニル基及びオキセタニル基が好ましく、アクリロイルオキシ基がより好ましい。
【0022】
V
1及びV
2は、互いに独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルカンジイル基であり、該アルカンジイル基に含まれる−CH
2−は、−O−、−S−又は−NH−に置き換わっていてもよい。
炭素数1〜20のアルカンジイル基としては、メチレン基、エチレン基、プロパン−1,3−ジイル基、ブタン−1,3−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基、ヘプタン−1,7−ジイル基、オクタン−1,8−ジイル基、デカン−1,10−ジイル基、テトラデカン−1,14−ジイル基及びイコサン−1,20−ジイル基等が挙げられ、好ましくは炭素数2〜12のアルカンジイル基であり、より好ましくは炭素数6〜12のアルカンジイル基である。
該アルカンジイル基が有していてもよい置換基としては、シアノ基;フルオロ基、クロロ基、ブロモ基等のハロゲノ基等が挙げられる。
アルカンジイル基としては、無置換のアルカンジイル基であることが好ましく、無置換の直鎖状アルカンジイル基であることがより好ましい。
【0023】
W
1及びW
2は、互いに独立に、単結合、−O−、−S−、−COO−又は−OCOO−をであり、好ましくは単結合又は−O−である。
【0024】
化合物(1)としては、式(1−1)〜式(1−21)で表される化合物等が挙げられる。式中、シクロヘキサン−1,4−ジイル基は、トランス体であることが好ましい。
【0029】
本発明の重合性液晶組成物における化合物(1)の含有量は、組成物の固形分に対して、70〜99.9質量%の範囲が好ましく、90〜99.9質量%の範囲がより好ましい。上記範囲内であれば、化合物の配向性が高くなる傾向がある。ここで、固形分とは、組成物から溶剤を除いた成分の合計量のことをいう。化合物(1)は、単独で用いても、複数種を併用してもよい。
【0030】
本発明の重合性液晶組成物は、レベリング剤を含む。レベリング剤とは、重合性液晶組成物の流動性を調整し、塗布した膜を平坦にする機能を有するものであり、界面活性剤等が挙げられる。本発明の重合性液晶組成物に含まれるレベリング剤は、ポリアクリレート化合物を主成分とするレベリング剤及びフッ素原子含有化合物を主成分とするレベリング剤からなる群から選ばれる少なくとも1種である。かかるレベリング剤を含有させることにより、本発明の重合性液晶組成物は、上述の液晶相が形成された膜を得たとき、当該膜中で重合性液晶化合物が水平方向に配向することを本発明者は見出した。かかる効果の発現は、従来の重合性液晶組成物からは容易に想起し得ないものであり、本発明者の独自の知見に基づくものである。
【0031】
ポリアクリレート化合物を主成分とするレベリング剤としては、BYK−350,BYK−352,BYK−353,BYK−354,BYK−355,BYK−358N,BYK−361N,BYK−380,BYK−381,BYK−392(いずれも商品名:BYK Chemie社製)等が挙げられる。
【0032】
フッ素原子含有化合物を主成分とするレベリング剤としては、メガファック(商品名)R−08、同R−30、同R−90、同F−410、同F−411、同F−443、同F−445、同F−470、同F−471、同F−477、同F−479、同F−482、同F−483(以上、いずれもDIC(株)製)、サーフロン(商品名)S−381、同S−382、同S−383、同S−393、同SC−101、同SC−105、KH−40、SA−100(以上、全てAGCセイミケミカル(株)製)、商品名E1830、同E5844((株)ダイキンファインケミカル研究所製)、エフトップ(商品名)EF301、同EF303、同EF351、同EF352(以上、全て三菱マテリアル電子化成(株)製)等が挙げられる。
【0033】
本発明の重合性液晶組成物におけるレベリング剤の含有量は、重合性液晶化合物100質量部に対して、0.3質量部以上5質量部以下であり、好ましくは0.5質量部以上3質量部以下である。本発明の重合性液晶組成物は、特定のレベリング剤を、通常よりも多量に含むことにより、水平方向に配向したスメクチック相が形成された光学フィルムの製造を可能にする。レベリング剤の含有量が上記の範囲内であると、重合性液晶組成物に含まれる重合性液晶化合物を水平配向させることが容易であり、かつ得られる光学フィルムが平滑になる傾向がある。レベリング剤の含有量が5質量部を超えると、得られる光学フィルムにムラが生じやすい。これらレベリング剤は2種類以上を併用して使用してもよい。2種類以上のレベリング剤を併用した場合、その合計含有量が前記の範囲であればよい。
【0034】
本発明の重合性液晶組成物は、二色性色素を含んでいてもよい。本発明の重合性液晶組成物が、重合性液晶化合物、二色性色素、レベリング剤及び溶剤を含む組成物であると、得られる光学フィルムは偏光フィルムとしての機能を有する。二色性色素とは、分子の長軸方向における吸光度と、短軸方向における吸光度とが異なる性質を有する色素のことをいう。
【0035】
二色性色素としては、特に制限されず、染料であっても顔料であってもよい。二色性色素としては、300〜700nmに極大吸収波長を有することが好ましい。二色性色素としては、例えば、アクリジン色素、オキサジン色素、シアニン色素、ナフタレン色素、アゾ色素又はアントラキノン色素等が挙げられる。二色性色素は単独で使用しても複数の二色性色素を組み合せて使用してもよい。
【0036】
二色性色素としては、アゾ色素が好ましい。アゾ色素としては、モノアゾ色素、ビスアゾ色素、トリスアゾ色素、テトラキスアゾ色素及びスチルベンアゾ色素等が挙げられ、好ましくはビスアゾ色素及びトリスアゾ色素である。
【0037】
以下、本発明の重合液晶組成物に用いることができる二色性色素について具体例を示す。
アゾ色素としては、例えば、式(2)で表される化合物が挙げられる。
A
1(−N=N−A
2)
p−N=N−A
3 (2)
[式(2)中、A
1及びA
3は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいナフチル基又は置換基を有していてもよい1価の複素環基を表す。A
2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいp−フェニレン基、置換基を有していてもよいナフタレン−1,4−ジイル基又は置換基を有していてもよい2価の複素環基を表す。pは1〜4の整数を表す。pが2以上の整数である場合、複数のA
2は互いに同一でも異なっていてもよい。]
【0038】
1価の複素環基としては、キノリン環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、チエノチアゾール環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環等の複素環から1個の水素原子を除いた基が挙げられる。また、2価の複素環基としては、上記の複素環から2個の水素原子を除いた基が挙げられる。
【0039】
A
1及びA
3におけるフェニル基、ナフチル基及び1価の複素環基、並びにA
2におけるp−フェニレン基、ナフタレン−1,4−ジイル基及び2価の複素環基が有していてもよい置換基としては、メチル基、エチル基、ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等の炭素数1〜4のアルコキシ基;トリフルオロメチル基等の炭素数1〜4のフッ化アルキル基;シアノ基;ニトロ基;フルオロ基、クロロ基、ブロモ基等のハロゲノ基;アミノ基;ジエチルアミノ基、ピロリジノ基等の炭素数1〜4のアルキル基で置換されたアミノ基(アミノ基に置換された2つのアルキル基が互いに結合して炭素数2〜8のアルカンジイル基を形成していてもよい)が挙げられる。
【0040】
アゾ色素としては、下記式(2−1)〜式(2−6)でそれぞれ表される化合物が好ましい。式(2−1)〜式(2−6)中、B
1〜B
20は、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、炭素数1〜4のアルキル基で置換されたアミノ基(アミノ基に置換された2つのアルキル基が互いに結合して炭素数2〜8のアルカンジイル基を形成していてもよい)、クロロ基又はトリフルオロメチル基を表す。n1〜n4はそれぞれ独立に、0〜3の整数を表す。n1が2以上の整数である場合、複数のB
2は、互いに同一でも異なっていてもよく、同様にn2〜n4が2以上の整数である場合、複数のB
6、B
9及びB
14は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0043】
前記アントラキノン色素としては、式(2−7)で表される化合物が好ましい。
【0045】
[式(2−7)中、R
1〜R
8は、それぞれ独立に、水素原子、−R
x、アミノ基、−NHR
x、−NR
x2、−SR
x又はハロゲン原子を表す。R
xは、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数6〜12のアリール基を表す。]
【0046】
前記アクリジン色素としては、式(2−8)で表される化合物が好ましい。
【0048】
[式(2−7)中、R
9〜R
15は、それぞれ独立に、水素原子、−R
x、アミノ基、−NHR
x、−NR
x2、−SR
x又はハロゲン原子を表す。R
xは、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数6〜12のアリール基を表す。]
【0049】
前記オキサゾン色素としては、式(2−9)で表される化合物が好ましい。
【0051】
[式(2−9)中、R
9〜R
15は、それぞれ独立に、水素原子、−R
x、アミノ基、−NHR
x、−NR
x2、−SR
x又はハロゲン原子を表す。R
xは、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数6〜12のアリール基を表す。]
【0052】
以上の式(2−7)、式(2−8)及び式(2−9)において、
R
xにおける炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。
R
xにおける炭素数6〜12のアリール基としては、フェニル基、トルイル基、キシリル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0053】
前記シアニン色素としては、式(2−10)で表される化合物及び式(2−11)で表される化合物が好ましい。
【0055】
[式(2−10)中、D
1及びD
2は、それぞれ独立に、式(2−10a)〜式(2−10d)で表される基を表す。
n5は1〜3の整数を表す。]
【0057】
[式(2−11)中、D
3及びD
4は、それぞれ独立に、式(2−11a)〜式(2−11h)で表される基を表す。
n6は1〜3の整数を表す。]
【0058】
本発明の重合性液晶組成物が二色性色素を含む場合、その含有量は、重合性液晶化合物100質量部に対して50質量部以下が好ましく、0.1質量部以上20質量部以下がより好ましく、0.1質量部以上10質量部以下がさらに好ましい。上記範囲内であれば、重合性液晶化合物の配向を乱すことなく、重合することができる。二色性色素の含有量が50質量部を超えると、重合性液晶化合物の配向を乱すおそれがあるため、好ましくない。
【0059】
本発明の重合性液晶組成物は、溶剤を含む。溶剤としては、重合性液晶組成物に含まれる溶剤以外の成分、例えば重合性液晶化合物を溶解し得る溶剤が好ましい。また、重合性液晶組成物の重合反応に不活性な溶剤であることが好ましい。
溶剤としては、メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル及びプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン又はプロピレングリコールメチルエーテルアセテート及び乳酸エチルなどのエステル溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン及びメチルイソブチルケトンなどのケトン溶剤;ペンタン、ヘキサン及びヘプタンなどの脂肪族炭化水素溶剤;トルエン及びキシレンなどの芳香族炭化水素溶剤、アセトニトリルなどのニトリル溶剤;テトラヒドロフラン及びジメトキシエタンなどのエーテル溶剤;クロロホルム及びクロロベンゼンなどの塩素含有溶剤;などが挙げられる。これら溶剤は、単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
本発明の重合性液晶組成物における溶剤の含有量は、該重合性液晶組成物全量に対して50〜98質量%が好ましい。言い換えると、本発明の重合性液晶組成物における固形分は、2〜50質量%が好ましい。固形分が2質量%以上であると、得られる光学フィルムの膜厚が薄くなりすぎず、結果として該光学フィルムは、偏光子に必要な二色性が得られる。また、固形分が50質量%以下であると、本発明の重合性液晶組成物の粘度が低いことから、後述する光学フィルムの製造において塗布膜の膜厚にムラが生じにくくなる傾向がある。なお、固形分とは、重合性液晶組成物から溶剤を除いた量のことをいう。
【0061】
本発明の重合性液晶組成物は、重合開始剤を含んでいてもよい。重合開始剤は、重合性液晶化合物の重合を開始する化合物であり、光及び/又は熱の作用により活性ラジカルや酸を発生する。中でも、光の作用により活性ラジカル又は酸を発生する重合開始剤(すなわち光重合開始剤)であることが好ましく、光照射によりラジカルを発生する光重合開始剤がより好ましい。
【0062】
光重合開始剤としては、例えばベンゾイン化合物、ベンゾフェノン化合物、アルキルフェノン化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物、トリアジン化合物、ヨードニウム塩及びスルホニウム塩等が挙げられる。
【0063】
ベンゾイン化合物としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等が挙げられる。
ベンゾフェノン化合物としては、例えば、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’−テトラ(tert−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン等が挙げられる。
【0064】
アルキルフェノン化合物としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2−メチル−2−モルホリノ−1−(4−メチルチオフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1,2−ジフェニル−2,2−ジメトキシエタン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕プロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−〔4−(1−メチルビニル)フェニル〕プロパン−1−オンのオリゴマー等が挙げられる。
【0065】
アシルホスフィンオキサイド化合物としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド等が挙げられる。
トリアジン化合物としては、例えば、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(4−メトキシナフチル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(4−メトキシスチリル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−〔2−(5−メチルフラン−2−イル)エテニル〕−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−〔2−(フラン−2−イル)エテニル〕−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−〔2−(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)エテニル〕−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−〔2−(3,4−ジメトキシフェニル)エテニル〕−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
【0066】
光重合開始剤としては、イルガキュア(Irgacure)907、イルガキュア184、イルガキュア651、イルガキュア819、イルガキュア250、イルガキュア369(以上、全てチバ・ジャパン(株)製)、セイクオールBZ、セイクオールZ、セイクオールBEE(以上、全て精工化学(株)製)、カヤキュアー(kayacure)BP100(日本化薬(株)製)、カヤキュアーUVI−6992(ダウ社製)、アデカオプトマーSP−152又はアデカオプトマーSP−170(以上、全て(株)ADEKA製)、TAZ−A、TAZ−PP(以上、日本シイベルヘグナー社製)及びTAZ−104(三和ケミカル社製)等、市販の光重合開始剤も用いることができる。
【0067】
熱重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;過酸化水素、過硫酸塩、過酸化ベンゾイル等の過酸化物等が挙げられる。
【0068】
重合開始剤の含有量は、重合性液晶化合物100質量部に対して、0.1〜30質量部が好ましく、0.5〜10質量部がより好ましく、0.5〜8質量部がさらに好ましい。
上記範囲内であれば、重合性液晶化合物を、その配向を乱すことなく重合させることができる。
【0069】
重合開始剤として光重合開始剤を用いる場合、光増感剤を併用してもよい。光増感剤としては、例えば、キサントン及びチオキサントン等のキサントン化合物(例えば、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン等);アントラセン及びアルコキシ基含有アントラセン(例えば、ジブトキシアントラセン等)等のアントラセン化合物;フェノチアジン;ルブレン等が挙げられる。
【0070】
光増感剤を用いることにより、重合性液晶化合物の重合を高感度化することができる。
光増感剤を用いる場合、その使用量は、重合性液晶化合物100質量部に対して、0.1〜30質量部が好ましく、0.5〜10質量部がより好ましく、0.5〜8質量部がさらに好ましい。
【0071】
本発明の重合性液晶組成物は、重合禁止剤を含んでいてもよい。本発明の重合性液晶組成物が重合禁止剤を含むことにより、重合性液晶化合物の重合を制御することができ、本発明の重合性液晶組成物の安定性を向上させることができる。
【0072】
重合禁止剤としては、例えばハイドロキノン、アルコキシ基含有ハイドロキノン、アルコキシ基含有カテコール(例えばブチルカテコール等)、ピロガロール、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシラジカル等のラジカル補足剤、チオフェノール類、β−ナフチルアミン類、およびβ−ナフトール類等が挙げられる。
本発明の重合性液晶組成物が重合禁止剤を含む場合、その含有量は、重合性液晶化合物100質量部に対して、0.1〜30質量部が好ましく、0.5〜10質量部がより好ましく、0.5〜8質量部がさらに好ましい。上記範囲内であれば、重合性液晶化合物の配向を乱すことなく重合を制御することができる。
【0073】
本発明の光学フィルムは、本発明の重合性液晶組成物に含まれる重合性液晶化合物を重合させることにより得られる。
【0074】
本発明の光学フィルムは、以下の(1)〜(3)を含む製造方法により得られる。
(1)本発明の重合性液晶組成物を基板上に塗布して塗布膜を得る工程
(2)(1)で得られた塗布膜を、液晶相が形成された膜に転換する工程
(3)(2)で得られた液晶相が形成させた膜に含まれる重合性液晶化合物を重合させ、光学フィルムを得る工程
【0075】
基板上への塗布方法としては、例えば押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコート法、リバースグラビアコート法、CAPコート法、ダイコート法、ディップコート法、バーコート法及びスピンコート法等が挙げられる。
【0076】
上記基板としては、例えばガラス、プラスチックシート、プラスチックフィルム又は透光性フィルムを挙げることができる。なお上記透光性フィルムとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系ポリマーなどのポリオレフィンからなるポリオレフィンフィルム;ポリビニルアルコールフィルム;ポリエチレンテレフタレートフィルム;ポリメタクリル酸エステルフィルム;ポリアクリル酸エステルフィルム;セルロースエステルフィルム;ポリエチレンナフタレートフィルム;ポリカーボネートフィルム;ポリスルフォンフィルム;ポリエーテルスルホンフィルム;ポリエーテルケトンフィルム;ポリフェニレンスルフィドフィルム及びポリフェニレンオキシドフィルム等が挙げられる。
基板を用いて、光学フィルムを製造すれば、得られた光学フィルムを運搬したり、保管したりする際に破れなどなく、容易に取り扱うことができる。
【0077】
本発明の光学フィルムの製造方法において、基板には、配向膜が形成されていることが好ましい。その場合、本発明の重合性液晶組成物は配向膜上に塗布することとなる。配向膜は、本発明の重合性液晶組成物の塗布等により溶解しない溶剤耐性を有することが好ましい。また、溶剤の除去や液晶の配向のための加熱処理における耐熱性を有することが好ましい。さらに、ラビングによる摩擦等による剥がれ等が生じない配向膜であることが好ましい。かかる配向膜としては、配向性ポリマーからなることが好ましい。
【0078】
上記配向性ポリマーとしては、例えば分子内にアミド結合を有するポリアミドやゼラチン類、分子内にイミド結合を有するポリイミド及びその加水分解物であるポリアミック酸、ポリビニルアルコール、アルキル変性ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリオキサゾール、ポリエチレンイミン、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸又はポリアクリル酸エステル類等のポリマーを挙げることができる。これらの中でも、ポリビニルアルコールが好ましい。配向膜を形成するこれらの配向性ポリマーは、単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。また、該配向性ポリマーは、例示した配向性ポリマーを構成する構造単位を複数種有する共重合体であってもよい。これらの配向性ポリマーは、脱水や脱アミンなどによる重縮合や、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等の連鎖重合、配位重合や開環重合等で容易に得ることができる。
【0079】
配向性ポリマーは、溶剤に溶解した配向性ポリマー組成物(配向性ポリマーを含む溶液)として、基板上に塗布することにより、該基板上に配向膜を形成することができる。該配向性ポリマー組成物に用いる溶剤は、特に制限はないが、具体的には、水;メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ及びプロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート及び乳酸エチルなどのエステル溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン及びメチルイソブチルケトン等のケトン溶剤;ペンタン、ヘキサン及びヘプタン等の脂肪族炭化水素溶剤;トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素溶剤、アセトニトリル等のニトリル溶媒;テトラヒドロフラン及びはジメトキシエタン等のエーテル溶媒;クロロホルム及びクロロベンゼン等の塩素置換炭化水素溶媒;等が挙げられる。これら有機溶剤は、単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0080】
また配向膜を形成するための配向性ポリマー組成物として、市販の配向膜材料をそのまま使用してもよい。市販の配向膜材料としては、サンエバー(登録商標、日産化学工業(株)製)及びオプトマー(登録商標、JSR(株)製)等が挙げられる。
【0081】
上記基材上に配向膜を形成する方法としては、例えば上記基材上に、上記配向性ポリマー組成物や市販の配向膜材料を塗布し、その後、アニールすることにより、上記基材上に配向膜を形成することができる。このようにして得られる配向膜の厚さは、例えば10nm〜10000nmであり、好ましくは10nm〜1000nmである。
【0082】
上記配向膜に対して配向規制力を付与するために、必要に応じてラビングもしくは偏光UV照射を行うことが好ましい。配向規制力を付与することにより重合性液晶化合物を所望の方向に配向させることができる。
【0083】
配向膜をラビングする方法としては、例えばラビング布が巻きつけられ、回転しているラビングロールを準備し、基材上に配向膜が形成されたものをステージに載せて、回転しているラビングロールに向けて搬送することで、回転しているラビングロールと、配向膜とを接触させる方法が挙げられる。また、配向膜に偏光(好ましくは、偏光UV)を照射することによっても、当該配向膜に対して配向規制力を付与することもある。ラビング又は偏光UV照射を行う時に、マスキングを行えば、配向方向が異なる複数の領域(パターン)を形成することもできる。
【0084】
基板上又は基板に形成された配向膜上に、本発明の重合性液晶組成物を塗布して得られた塗布膜について、その成膜性の点で、塗布膜中に含まれる溶剤等の揮発性成分を乾燥することが好ましい。乾燥方法としては、例えば自然乾燥法、通風乾燥法、減圧乾燥法等が挙げられる。乾燥温度としては、0〜250℃が好ましく、50〜220℃がより好ましい。また乾燥時間としては、10秒間〜60分間が好ましく、30秒間〜30分間がより好ましい。
【0085】
上記塗布膜を、液晶相が形成された膜に転換するためには、当該塗布膜に含まれる重合性液晶化合物が液晶相を示す温度まで該塗布膜を加熱すればよい。該液晶相は、重合性液晶化合物の作用により、スメクチック相とすることが好ましい。
【0086】
塗布膜に含まれる重合性液晶化合物がスメクチック相を示す(重合性液晶化合物をスメクチック相に配向させる)ためには、当該塗布膜を加熱した後に冷却すればよい。その際、該重合性液晶化合物が、上述の式(T1)の関係を満たすものである場合、まず、該重合性液晶化合物がネマチック相を示す温度(Tn、なお、このTnを「ネマチック相転移温度」という場合がある)以上に塗布膜を加熱し、次いで該重合性液晶化合物がスメクチック相を示す温度(Ts)まで冷却することにより、液晶相が形成させた膜を得ることがより好ましい。
本発明の重合性液晶組成物が2種以上の重合性液晶化合物を含む場合は、該重合性液晶化合物を重合性液晶組成物に含まれる含有量比で調整した混合物をまず準備し、この混合物について、液晶相を示す温度を測定しておくことで、2種以上の重合性液晶化合物を含む本発明の重合性液晶組成物から光学フィルムを製造する際の温度条件を決めることができる。
【0087】
このようにしてネマチック相を経由することにより、本発明の重合性液晶組成物に含まれるレベリング剤がより流動しやすくなり、水平配向した膜をより容易に得ることができる。重合性液晶化合物がネマチック相を示すための加熱温度としては、ネマチック相転移点以上、ネマチック相転移点より100度高い温度以下の範囲が好ましく、ネマチック相転移点以上、ネマチック相転移点より50度高い温度以下の範囲がより好ましい。なお、ネマチック相を示すまで塗布膜を加熱する操作と、該塗布膜から揮発性成分を除去する乾燥操作とは、同時に行ってもよい。
【0088】
次に、液晶相を形成させた膜に含まれる重合性液晶化合物を重合させることにより、光学フィルムを得ることができる。該重合性液晶化合物を重合することにより、耐久性を有する光学フィルムが得られる。重合方法は、重合性液晶化合物が有する重合性基の種類に応じて選択すればよい。該重合性基が光重合性基であれば光重合法により、熱重合性基であれば熱重合法により重合することができる。本発明の光学フィルムの製造方法においては、光重合法が好ましい。光重合法であると、必ずしも高温に加熱する必要がないため、耐熱性の低い基板を使用することができる。光重合法は、液晶相を形成させた膜に可視光、紫外光又はレーザー光を照射することにより行う。取り扱いやすい点で、紫外光が好ましい。光照射は、膜に液晶相を形成させた状態で行う。上記のように液晶相を示す温度で、光照射してもよい。この際、マスキングや現像を行うことなどによって光学フィルムをパターニングすることもできる。
【0089】
基板上に形成された光学フィルムは、膜に含まれる重合性液晶化合物を重合後、基板から剥離してもよい。また、基板を剥離する工程に加えて、配向膜を剥離する工程をさらに含んでいてもよい。これにより、単層の本発明の光学フィルムを得ることができる。本発明の光学フィルムの膜厚は、0.3〜20μmであることが好ましく、0.5〜10μmであることがより好ましく、0.5〜5μmであることがさらに好ましい。膜厚が上記の範囲内であると、スメクチック相に水平配向した光学フィルムを容易に得ることができる。
【0090】
本発明の光学フィルムは、二色性色素を含む場合、二色比に優れた偏光フィルムとして有用である。また、二色性色素を含まない場合、コントラストに優れた位相差フィルムとして有用である。
【0091】
上記のように得られた本発明の光学フィルムは、さまざまな表示装置に用いることができる。表示装置とは、表示素子を有する装置であり、発光源として発光素子または発光装置を含む。表示装置としては、例えば、液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、無機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、電子放出表示装置(例えば電場放出表示装置(FED)、表面電界放出表示装置(SED))、電子ペーパー(電子インクや電気泳動素子を用いた表示装置、プラズマ表示装置、投射型表示装置(例えばグレーティングライトバルブ(GLV)表示装置、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)を有する表示装置)、圧電セラミックディスプレイ等が挙げられる。液晶表示装置としては透過型液晶表示装置、半透過型液晶表示装置、反射型液晶表示装置、直視型液晶表示装置、投写型液晶表示装置等が挙げられる。上記の表示装置は、2次元画像を表示する表示装置であってもよいし、3次元画像を表示する立体表示装置であってもよい。
【0092】
図1は、本発明の液晶表示装置10を表す概略図である。液晶層17を2枚の基板14a及び基板14bで挟んでいる。
【0093】
基板14aの液晶層17側には、カラーフィルタ15が配置されている。カラーフィルタ15が、液晶層17をはさんで画素電極22に対向する位置に配置され、ブラックマトリクス20が画素電極間の境界に対向する位置に配置されている。透明電極16がカラーフィルタ15及びブラックマトリクス20を覆うように液晶層17側に配置されている。
カラーフィルタ15と透明電極16との間にオーバーコート層を有していてもよい。
基板14bの液晶層17側には、薄膜トランジスタ21と画素電極22とが規則正しく配置されている。画素電極22は、液晶層17をはさんでカラーフィルタ15に対向する位置に配置されている。薄膜トランジスタ21と画素電極22との間には、接続孔(図示せず)を有する層間絶縁膜18が配置されている。
【0094】
基板14a及び基板14bとしては、ガラス基板及びプラスチック基板が挙げられる。
これらの基板上に形成されるカラーフィルタ15や薄膜トランジスタ21を製造する際、高温に加熱する工程が必要である場合は、ガラス基板が好ましい。
【0095】
薄膜トランジスタ21としては、石英基板上に形成する高温ポリシリコントランジスタ、ガラス基板上に形成する低温ポリシリコントランジスタ、ガラス基板またはプラスチック基板上に形成するアモルファスシリコントランジスタが挙げられる。液晶表示装置の小型化のため、ドライバICが基板14b上に形成されていてもよい。
【0096】
透明電極16と、画素電極22との間には、液晶層17が配置されている。液晶層17には、基板14a及び基板14b間の距離を一定に保つために、スペーサ23が配置されている。
基板14a及び基板14bに形成された層のうち液晶層17と接触する面には、液晶を所望の方向へ配向させるための配向膜が各々配置されていてもよい。
各部材は、基板14a、カラーフィルタ15及びブラックマトリクス20、透明電極16、液晶層17、画素電極22、層間絶縁膜18及び薄膜トランジスタ21、並びに基板14bの順番で積層されている。
【0097】
このような液晶層17を挟んだ基板14a及び基板14bの外側には、光学フィルムとして、偏光フィルム(例えば直線偏光子)12a及び12b、位相差フィルム(例えば1/4波長板や光学補償フィルム)13a及び13bが、この順番で積層されている。該偏光フィルム12a及び12b、並びに該位相差フィルム13a及び13bからなる群から選ばれる少なくとも1種が、本発明の光学フィルムである。本発明の光学フィルムを配置することで、入射光を直線偏光や円偏光に変換する機能や、液晶による位相のズレを光学的に補償する機能を液晶表示装置10に付与することができる。尚、位相差フィルム13a及び13bは、液晶表示装置の構造や、液晶層17に含まれる液晶化合物の種類によっては、配置されていなくてもよい。偏光フィルム12aの外側に、外光の反射を防ぐための反射防止膜11が配置されている。本発明の光学フィルムによれば、表示装置の薄型化が達成できる。
偏光フィルム12a及び12b、並びに該位相差フィルム13a及び13bからなる群から選ばれる少なくとも1種として、本発明の光学フィルム、配向膜及び前記光学フィルムを製造する際に用いた基板が積層された積層体を用いてもよい。
【0098】
偏光フィルム12bの外側には、発光源であるバックライトユニット19が配置されている。バックライトユニット19は、光源、導光体、反射板、拡散シートおよび視野角調整シートを含む。光源としては、エレクトロルミネッセンス、冷陰極管、熱陰極管、発光ダイオード(LED)、レーザー光源、水銀ランプ等が挙げられる。光源の特性に合わせて本発明の偏光子を選択すればよい。
【0099】
本発明の液晶表示装置10が透過型液晶表示装置である場合、バックライトユニット19中の光源から発せられた白色光は導光体に入射し、反射板によって進路を変えられて拡散シートで拡散されている。拡散光は視野角調整シートによって所望の指向性を持つように調整されたのちにバックライトユニット19から偏光フィルム12bに入射する。
【0100】
無偏光である入射光のうち、ある一方の直線偏光のみが液晶パネルの偏光フィルム12bを透過する。この直線偏光は位相差フィルム13bによって円偏光に変換され、基板14b、画素電極22等を順次透過して液晶層17に到る。
【0101】
ここで画素電極22と対向する透明電極16との間の電位差の有無により、液晶層17に含まれる液晶分子の配向状態が変化して、液晶表示装置10から出射される光の輝度が制御される。液晶層17が、位相差フィルム13bによって変換された円偏光がそのまま透過させる配向状態である場合、その円偏光は液晶層17、透明電極16を透過し、ある特定の波長範囲の光がカラーフィルタ15を透過して位相差フィルム13aに到り、さらに偏光フィルム12a及び反射防止膜11を通過すると、液晶表示装置は、カラーフィルタで決まる色を最も明るく表示する。
【0102】
逆に、液晶層17が、位相差フィルム13bによって変換された円偏光を変換して透過させる配向状態である場合、液晶層17、透明電極16及びカラーフィルタ15を透過した光は、位相差フィルム13aと偏光子12aとに吸収される。このことにより、この画素は黒を表示する。これら2つの状態の中間の配向状態では、液晶表示装置10から出射される光の輝度も上記両者の中間となるため、この画素は中間色を表示する。
【0103】
本発明の液晶表示装置10が半透過型液晶表示装置の場合、画素電極22は透明な材料で形成された透過部と、光を反射する材料で形成された反射部を有し、透過部では、前述の透過型液晶表示装置と同様にして画像が表示される。一方反射部では、外光が反射防止膜11の方向から液晶表示装置に入射し、偏光フィルム12aと位相差フィルム13aとを透過した円偏光が液晶層17を通過し、画素電極22によって反射されて表示に利用される。
【0104】
図2は、光学フィルムを基板の内部(液晶17側)に配置した液晶表示装置24を表す概略図である。液晶表示装置24では、各部材は、反射防止膜11、基板14a、偏光フィルム12a、位相差フィルム13a、カラーフィルタ15及びブラックマトリクス20、透明電極16、液晶層17、画素電極22、層間絶縁膜18及び薄膜トランジスタ21、位相差フィルム13b、偏光フィルム12b、基板14b、バックライトユニット19の順番で積層されている。該偏光フィルム12a及び12b、並びに該位相差フィルム13a及び13bからなる群から選ばれる少なくとも1種が、本発明の光学フィルムである。前記積層体を用いてもよい。本発明の光学フィルムを配置することで、入射光を直線偏光や円偏光にする機能や液晶による位相のズレを光学的に補償する機能を液晶表示装置24に付与することができる。尚、位相差フィルム13a及び13bは、液晶表示装置の構造や、液晶層17に含まれる液晶化合物の種類によっては、配置されていなくてもよい。
【0105】
図3は、本発明のEL表示装置30を表す概略図である。EL表示装置30は、画素電極35が形成された基板33上に、発光源である有機機能層36、及びカソード電極37が積層されたものである。基板33を挟んで有機機能層36と反対側に、位相差フィルム32及び偏光フィルム31が配置されている。位相差フィルム32及び偏光フィルム31からなる群から選ばれる少なくとも1種が、本発明の光学フィルムである。画素電極35にプラスの電圧、カソード電極37にマイナスの電圧を加え、画素電極35及びカソード電極37間に直流電流を印加することにより、有機機能層36が発光する。発光源である有機機能層36は、電子輸送層、発光層、正孔輸送層などからなる。有機機能層36から出射した光は、画素電極35、層間絶縁膜34、基板33、位相差フィルム32及び偏光フィルム31を通過する。有機機能層36を有する有機EL表示装置について説明するが、無機機能層を有する無機EL表示装置にも適用してもよい。
【0106】
本発明のEL表示装置30を製造するには、まず、基板33上に薄膜トランジスタ40を所望の形状に形成する。そして層間絶縁膜34を成膜し、次いで画素電極35をスパッタ法で成膜し、パターニングする。その後、有機機能層36を積層する。
【0107】
基板33としては、サファイアガラス基板、石英ガラス基板、ソーダガラス基板、アルミナなどのセラミック基板、銅などの金属基板、プラスチック基板等が挙げられる。基板上に熱伝導性膜を形成してもよい。熱伝導性膜としては、ダイヤモンド薄膜(DLCなど)が挙げられる。画素電極35を反射型とする場合は、基板33とは反対方向へ光が出射する。したがって、透明材料だけでなく、ステンレスなどの非透過材料を用いることができる。基板は単一で形成されていてもよく、複数の基板を接着剤で貼り合わせて積層基板として形成されていていてもよい。これらの基板は、板に限定するものではなく、フィルムでもよい。
【0108】
薄膜トランジスタ40としては、通常の多結晶シリコントランジスタを用いればよい。
薄膜トランジスタ40は、画素電極35の端部に設けられ、その大きさは10〜30μm程度である。なお、画素電極35の大きさは20μm×20μm〜300μm×300μm程度である。
【0109】
基板33上には、薄膜トランジスタ40の配線電極が設けられている。配線電極は抵抗が低く、画素電極35と電気的に接続して抵抗値を低く抑える機能があり、一般的にはその配線電極は、Al、Alおよび遷移金属(ただしTiを除く)、Tiまたは窒化チタン(TiN)のいずれか1種または2種以上を含有するものが使われる。
【0110】
薄膜トランジスタ40と画素電極35との間には層間絶縁膜34が設けられる。層間絶縁膜34は、SiO
2等の酸化ケイ素、窒化ケイ素などの無機系材料をスパッタや真空蒸着で成膜したもの、SOG(スピン・オン・グラス)で形成した酸化ケイ素層、フォトレジスト、ポリイミド、アクリル樹脂などの樹脂系材料の塗膜など、絶縁性を有するものであればいずれであってもよい。
【0111】
層間絶縁膜34上に、リブ41を形成する。リブ41は、画素電極35の周辺部(隣接画素間)に配置されている。リブ41の材料としては、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂などが挙げられる。リブ41の厚みは、好ましくは1.0μm以上3.5μmであり、より好ましくは1.5μm以上2.5μm以下である。
【0112】
次に、透明電極である画素電極35と、発光源である有機機能層36と、カソード電極37とからなるEL素子について説明する。有機機能層36は、それぞれ少なくとも1層のホール輸送層および発光層を有し、例えば、電子注入輸送層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層を順次有する。
【0113】
画素電極35としては、例えば、ITO(錫ドープ酸化インジウム)、IZO(亜鉛ドープ酸化インジウム)、IGZO、ZnO、SnO
2、In
2O
3等が挙げられるが、特にITO、IZOが好ましい。画素電極35の厚さは、ホール注入を十分行える一定以上の厚さを有すれば良く、10〜500nm程度とすることが好ましい。
画素電極35は、蒸着法(好ましくはスパッタ法)により形成することができる。スパッタガスとしては、特に制限するものではなく、Ar、He、Ne、Kr、Xe等の不活性ガス、あるいはこれらの混合ガスを用いればよい。
【0114】
カソード電極37の構成材料としては例えば、K、Li、Na、Mg、La、Ce、Ca、Sr、Ba、Al、Ag、In、Sn、Zn、Zr等の金属元素単体、または安定性を向上させるためにそれらを含む2成分、3成分の合金系を用いることが好ましい。合金系としては、例えばAg・Mg(Ag:1〜20at%)、Al・Li(Li:0.3〜14at%)、In・Mg(Mg:50〜80at%)、Al・Ca(Ca:5〜20at%)等が好ましい。
カソード電極37は、蒸着法、スパッタ法等により形成される。カソード電極37の厚さは、0.1nm以上、好ましくは1〜500nm以上であることが好ましい。
【0115】
正孔注入層は、画素電極35からの正孔の注入を容易にする機能を有し、正孔輸送層は、正孔を輸送する機能および電子を妨げる機能を有し、電荷注入層、電荷輸送層とも称される。
発光層の厚さ、正孔注入層と正孔輸送層とを併せた厚さおよび電子注入輸送層の厚さは特に限定されず、形成方法によっても異なるが、5〜100nm程度とすることが好ましい。正孔注入層・正孔輸送層には、各種有機化合物を用いることができる。正孔注入輸送層、発光層および電子注入輸送層の形成には、均質な薄膜が形成できることから真空蒸着法を用いることが好ましい。
【0116】
発光源である有機機能層36としては、1重項励起子からの発光(蛍光)を利用するもの、3重項励起子からの発光(燐光)を利用するもの、1重項励起子からの発光(蛍光)を利用するものと3重項励起子からの発光(燐光)を利用するものとを含むもの、有機物によって形成されたもの、無機物によって形成されたもの、有機物によって形成されたものと無機物によって形成されたものとを含むもの、高分子の材料、低分子の材料、高分子の材料と低分子の材料とを含むものなどを用いることができる。ただし、これに限定されず、EL素子として様々なものを用いたEL表示装置を用いることができる。
【0117】
カソード電極37と封止フタ39との空間には乾燥剤38を配置する。これは、有機機能層36は湿度に弱いためである。乾燥剤38により水分を吸収し有機機能層36の劣化を防止する。
【0118】
EL表示装置30の光入射面あるいは光出射面に形成する偏光フィルム31は、直線偏光に変換する偏光フィルムに限定されるものではなく、楕円偏光に変換する偏光フィルムであってもよい。偏光フィルム31は、本発明の光学フィルムのみでもよいし、本発明の光学フィルム以外の偏光フィルムや位相差フィルムをはり合わせて用いてもよい。
【0119】
図4は、本発明のEL表示装置44を表す概略図である。EL表示装置44は、薄膜封止膜42を用いた封止構造を有し、アレイ基板の反対面からも出射光を得ることができる。
薄膜封止膜42としては電解コンデンサのフィルムにDLC(ダイヤモンドライクカーボン)を蒸着したDLC膜を用いることが好ましい。DLC膜は水分浸透性が極めて悪く防湿性能が高い。また、DLC膜などをカソード電極37の表面に直接蒸着して形成してもよい。また、樹脂薄膜と金属薄膜とを多層に積層して、薄膜封止膜42を形成してもよい。
【0120】
図6は、本発明の投射型液晶表示装置を示す概略図である。
本発明の偏光フィルム142及び偏光フィルム143は、例えば、投射型液晶表示装置(プロジェクター)に用いられる。
発光源である光源(例えば、高圧水銀ランプ)111から出射された光線束は、まずは第1のレンズアレイ112、第2のレンズアレイ113、偏光変換素子114、重畳レンズ115を通過することにより、反光線束断面での輝度の均一化と偏光化が行われる。
【0121】
具体的には光源111から出射された光線束は、微小なレンズ112aがマトリクス状に形成された第1のレンズアレイ112によって多数の微小な光線束に分割される。第2のレンズアレイ113及び重畳レンズ115は、分割された光線束のそれぞれが、照明対象である3つの液晶パネル140R,140G,140Bの全体を照射するように備えられており、このため、各液晶パネル入射側表面は全体がほぼ均一な照度となる。
【0122】
偏光変換素子114は、偏光ビームスプリッタアレイにより構成され、第2のレンズアレイ113と重畳レンズ115との間に配置される。これにより光源からのランダム偏光をあらかじめ特定の偏光方向を有する偏光に変換し、後述する入射側偏光子での光量損失を低減して、画面の輝度を向上させる役割を果たしている。
【0123】
上記のように輝度均一化および偏光化された光は、反射ミラー122を経由してRGBの3原色に分離するためのダイクロイックミラー121,123,132により順次、レッドチャンネル、グリーンチャンネル、ブルーチャンネルに分離され、それぞれ液晶パネル140R,140G,140Bに入射する。
【0124】
液晶パネル140R,140G,140Bには、その入射側には本発明の偏光子フィルム142が配置され、出射側には本発明の偏光子フィルム143がそれぞれ配置されている。
【0125】
RGB各光路に配置される偏光フィルム142及び偏光フィルム143は、それぞれの吸収軸が直交するように配置されている。各光路に配置される各液晶パネル140R,140G,140Bは、画像信号により各画素ごとに制御された偏光状態を光量に変換する機能を有する。
【0126】
本発明の光学フィルムは、対応するチャンネルに適した二色性色素の種類を選択することで、ブルーチャンネル、グリーンチャンネル、レッドチャンネルのどの光路においても耐久性の優れた偏光フィルムとして有用である。
【0127】
液晶パネル140R,140G,140Bの画像データに応じて、画素毎に異なる透過率で入射光を透過させることによって作成された光学像は、クロスダイクロイックプリズム150により合成され、投写レンズ170によって、スクリーン180に拡大投写される。
【0128】
電子ペーパーとしては、光学異方性と染料分子配向のような分子により表示されるもの、電気泳動、粒子移動、粒子回転、相変化のような粒子により表示されるもの、フィルムの一端が移動することにより表示されるもの、分子の発色/相変化により表示されるもの、分子の光吸収により表示されるもの、電子とホールが結合して自発光により表示されるものなどが挙げられる。より具体的には、マイクロカプセル型電気泳動、水平移動型電気泳動、垂直移動型電気泳動、球状ツイストボール、磁気ツイストボール、円柱ツイストボール方式、帯電トナー、電子粉流体、磁気泳動型、磁気感熱式、エレクトロウェッテイング、光散乱(透明/白濁変化)、コレステリック液晶/光導電層、コレステリック液晶、双安定性ネマチック液晶、強誘電性液晶、2色性色素・液晶分散型、可動フィルム、ロイコ染料による発消色、フォトクロミック、エレクトロクロミック、エレクトロデポジション、フレキシブル有機ELなどが挙げられる。電子ペーパーは、テキストや画像を個人的に利用するものだけでなく、広告表示(サイネージ)等に利用されるものであってもよい。本発明の光学フィルムによれば、電子ペーパーの厚みを薄くすることができる。
【0129】
立体表示装置としては、例えばマイクロポール方式のように交互に異なる位相差フィルムを配列させる方法が提案(特開2002−185983号公報)されているが、本発明の光学フィルムを偏光フィルムとして用いると、印刷、インクジェット、フォトリソグラフィー等によりパターニングが容易であるため、表示装置の製造工程を短くすることができ、かつ位相差フィルムが不要となる。
【実施例】
【0130】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。例中の「%」及び「部」は、特記ない限り、質量%及び質量部である。
【0131】
実施例において、下記の重合性液晶化合物を用いた。
化合物(1−6)(下記式(1−6)で表される化合物)
化合物(1−6)は、Lub et al. Recl.Trav.Chim.Pays−Bas,115, 321−328(1996)記載の方法で合成した。
【0132】
〔相転移温度の測定〕
配向膜を形成したガラス基板上で化合物を加熱しながら、偏光顕微鏡(BX−51、オリンパス社製)によるテクスチャー観察によって相転移温度を確認した。式(1−6)で表される化合物は、昇温時において、95℃で結晶相からスメクチックA相を呈し、111℃でネマチック相に相転移し、113℃で等方性液体相へ相転移した。降温時において、112℃でネマチック相に相転移し、110℃でスメクチックA相に相転移し、94℃でスメクチックB相へ相転移したことを確認した。
【0133】
化合物(1−7)(下記式(1−7)で表される化合物)
化合物(1−7)は、Lub et al. Recl.Trav.Chim.Pays−Bas,115, 321−328(1996)記載の方法で合成した。
【0134】
〔相転移温度の測定〕
偏光顕微鏡によるテクスチャー観察によって相転移温度を確認した。式(1−7)で表される化合物は、昇温時において、81℃で結晶相からスメクチックA相を呈し、121℃でネマチック相に転移し、137℃で等方性液体相へ相転移した。降温時において、133℃でネマチック相に相転移し118℃でスメクチックA相に相転移し、78℃でスメクチックB相へ相転移したことを確認した。
【0135】
実施例1
〔重合性液晶組成物の調整〕
下記の成分を混合し、80℃で1時間攪拌することで、重合性液晶組成物を得た。
重合性液晶化合物;化合物(1−6) 100部
二色性色素;アゾ色素(NKX2029;林原生物化学研究所製) 2部
重合開始剤;2−ジメチルアミノ−2−ベンジル−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン(イルガキュア369;BASFジャパン社製) 6部
重合開始助剤;イソプロピルチオキサントン(日本シーベルヘグナー社製) 2部
レベリング剤;ポリアクリレート化合物(BYK−361N;BYK−Chemie社製) 1.2部
溶剤;シクロペンタノン 250部
【0136】
〔光学フィルムの作製〕
ガラス基板上に、ポリビニルアルコール(ポリビニルアルコール1000完全ケン化型、和光純薬工業株式会社製)の2質量%水溶液をスピンコート法により塗布し、乾燥後、厚さ89nmの配向膜を形成した。続いて、得られた配向膜の表面にラビング処理を施した。ラビング処理は、半自動ラビング装置(商品名:LQ−008型、常陽工学株式会社製)を用いて、布(商品名:YA−20−RW、吉川化工株式会社製)によって、押し込み量0.15mm、回転数500rpm、16.7mm/sの条件で行った。
ラビング後の配向膜上に、重合性液晶組成物をスピンコート法により塗布し、120℃のホットプレート上で3分間加熱乾燥した後、速やかに70℃(降温時にスメクチック相を示す温度)まで冷却して乾燥後塗膜を得た。UV照射装置(SPOT CURE SP−7;ウシオ電機株式会社製)を用いて、露光量2400mJ/cm
2(365nm基準)の紫外線を乾燥後塗膜に照射することにより、ガラス基板上に作製された光学フィルムを得た。
【0137】
〔二色比の測定〕
極大吸収波長における透過軸方向の吸光度(A
1)及び吸収軸方向の吸光度(A
2)を、島津製作所製紫外可視分光光度計UV−3150に偏光子付フォルダーをセットした装置を用いてダブルビーム法で測定した。該フォルダーは、リファレンス側は光量を50%カットするメッシュを設置した。測定された透過軸方向の吸光度(A
1)及び吸収軸方向の吸光度(A
2)の値から、比(A
2/A
1)を算出し、二色比とした。結果を表2に示す。二色比が高いほど、偏光フィルムとして有用であるといえる。
【0138】
〔膜厚測定〕
得られた光学フィルムについて、レーザー顕微鏡(LEXT3000、オリンパス社製)を用いて膜厚を測定した。結果を表2に示す。
【0139】
〔ヘイズの測定〕
得られた光学フィルムについて、ヘイズメーター(HZ−2;スガ試験機(株)製)を用いてヘイズ値を測定した。結果を表2に示す。
【0140】
〔液晶相の観察〕
得られた光学フィルムが示している液晶相について、偏光顕微鏡(BX−51、オリンパス社製)を用いて観察した。観察は、透過軸が直交する2枚の偏光子の間に、得られた偏光フィルムの遅相軸が前記透過軸に対して45°の方向になるように配置して行った。
水平配向モノドメインを形成していることが認められた場合、表2に○と記した。結果を表2に示す。
【0141】
〔ムラの観察〕
得られた光学フィルムについて、ヨウ素−PVA偏光板(SRW842A;住友化学(株)製)と吸収軸が直交するように配置し、直下型バックライト上で目視観察した。相分離状のムラが観察されなかった場合、表2に○と記した。結果を表2に示す。
【0142】
実施例2〜15、参考例1及び2
重合性液晶化合物の種類、レべリング剤の種類及び量について、表1に示すように代える以外は、実施例1と同様にして重合性液晶組成物を得た。
【0143】
【表1】
【0144】
表1中に示すレベリング剤は、以下のものを使用した。
ポリアクリレート化合物(BYK−361N;BYK−Chemie社製)
ポリアクリレート化合物(BYK−352;BYK−Chemie社製)
ポリアクリレート化合物(BYK−354;BYK−Chemie社製)
ポリアクリレート化合物(BYK−381;BYK−Chemie社製)
ポリアクリレート化合物(BYK−392;BYK−Chemie社製)
フッ素含有オリゴマー(メガファックF471;DIC(株)製)
フッ素含有オリゴマー(メガファックF477;DIC(株)製)
【0145】
上記で得られた実施例2〜15、参考例1及び2の重合性液晶組成物について、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表2に示す。
【0146】
【表2】
【0147】
実施例16
〔重合性液晶組成物の調整〕
下記の成分を混合し、80℃で1時間攪拌することで、重合性液晶組成物を得た。
重合性液晶化合物;化合物(1−6) 100部
重合開始剤;2−ジメチルアミノ−2−ベンジル−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン(イルガキュア369;BASFジャパン社製) 6部
重合開始助剤;2−イソプロピルチオキサントン(日本シーベルヘグナー社製)2部
レベリング剤;ポリアクリレート化合物(BYK−361N;BYK−Chemie社製) 1.2部
溶剤;シクロペンタノン 250部
【0148】
〔光学フィルムの作製〕
実施例1と同様にして光学フィルムを得た。
【0149】
〔液晶相の観察〕
得られた光学フィルムについて、実施例1と同様にして液晶相の観察を行ったところ、水平配向モノドメインを形成していることが認められた。
【0150】
〔膜厚の測定〕
得られた光学フィルムについて、実施例1と同様にして膜厚を測定したところ、1.8μmであった。
【0151】
〔位相差値の測定〕
得られた光学フィルムについて、波長587.7nmにおける正面位相差値を、複屈折測定装置(KOBRA−WR、王子計測機器社製)を用いて測定したところ、257nmであった。尚、基材に使用したガラス基板には、複屈折性が無いため、ガラス基板付きフィルムを測定機で計測することにより、ガラス基板上に作製した光学フィルムの正面位相差値を得ることができる。