(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
筒状の容器状に構成されたガスホルダ本体と、上記ガスホルダ本体の内部に収容され、上記ガスホルダ本体との間のガスシール状態を維持しつつ昇降可能とされた昇降部材と、を備え、
上記昇降部材の昇降にともない、上記ガスホルダ本体および上記昇降部材によって区画されたガス収容部に収容されるガスの量が変化する、ガスホルダであって、
上記昇降部材に支持され、かつ液体を収容する液体収容部と、上記液体収容部内の上記液体の液面高さを測定するための液面測定手段と、上記ガス収容部の内圧を測定する内圧測定手段と、上記ガスホルダ本体に設けられ、上記液体収容部に対して液体を出し入れするための液体導出入部と、を備えており、
上記液体収容部内の液体の量を増減させることが可能に構成されており、
上記液体導出入部は、上記ガスホルダ本体の頂部もしくは側壁上部に設けられた液体導出口および液体導入口と、一端が上記液体導出口および上記液体導入口にそれぞれつながり、他端が上記液体収容部内の上記液体に浸かる液体導出ノズルおよび液体導入ノズルと、を含み、
上記液体収容部からの上記液体の導出は、上記液体導出口と、上記ガスホルダ本体の外部において上記液体を貯蔵する液体貯蔵タンクと、の間をつなぐ液体導出路を介して行い、
上記液体収容部への上記液体の導入は、上記液体導入口と上記液体貯蔵タンクとの間をつなぐ液体導入路を介して行う、ガスホルダ。
上記追加の液体収容部は、上記ガスホルダ本体の周方向に間隔を隔てて設けられる複数の液体収容容器と、これら液体収容容器の隣接するものどうしの下部を連通させる連通路と、を含む、請求項4ないし7のいずれかに記載のガスホルダ。
【背景技術】
【0002】
製鉄所から排出されるコークス炉ガスなどの可燃性ガスは、燃料として利用されている。この可燃性ガスの需要変動に対応するために、製鉄所から排出された可燃性ガスは、例えば可変容量式のガスホルダに一旦貯蔵される。このような可変容量式のガスホルダは、製鉄所のコークス炉ガスなどの貯蔵の他に、畜産廃棄物、し尿処理汚泥などから発生するバイオガスを貯蔵し、或いは、排出されたアルゴンやヘリウムなどの有用な工業用ガスを回収するのに際し、バッファタンクとして使用するといった用途が見込まれている。
【0003】
可変容量式のガスホルダは、一般に、密閉構造を有する円筒容器状のガスホルダ本体の内部に昇降可能な蓋状のピストンが設けられた構造のものが多く使用されている(例えば、特許文献1を参照)。また、ダイヤフラム(可撓性膜材)を袋状にして、そのダイヤフラムを膨らませたり萎めたりすることでガスの容量を可変させているガスホルダが知られている(例えば、特許文献2,3を参照)。
【0004】
特許文献1には、ガスホルダ本体、ピストン、およびピストンとガスホルダ本体との間をシールするダイヤフラム、を備えて構成されたガスホルダが開示されている。特許文献1では、特にピストンを2重構造とすることによってガス収容量を増大する工夫がなされている。しかしながら、ピストンの荷重は一定であり、機械的にガスホルダ本体をピストンで蓋をした構造でしかないので、内圧を変えることはできない。
【0005】
特許文献2には、スレート製、金属製などの貯槽構造物の中に、可撓性膜材で平坦形状の底膜と、円筒状の側膜と、ドーム状形状の屋根膜とを一体形状の袋体に形成し、上記屋根膜上面に、環状の重錘バランサを載置し、これにバランスワイヤを介して貯槽構造物の外側に垂下するカウンターウエイトを設けることによりガス貯蔵量の変化に対応して操業圧力を確保できるようになっている。しかしながら、側膜は完全な円筒状ではなく外側に膨らんだ形状をしており、また可撓性膜材を使用しているためにガス圧によって更に側膜の膨らみがおこる。さらに、内圧力は、全て重錘バランサを支えているわけではなく、側膜が外側に向かう張力として一部が費やされる。したがって、重錘バランサだけがガス圧力と拮抗しているわけではなく、袋体にかかる力は錘の重量を用いて相対的に大きくしたり小さくしたりすることはできるものの、内圧を常に一定に調整できるようにはなっていない。また、錘の重量は人為的に調整できるが、内圧を自在にきめ細かく可変することはできない。
【0006】
特許文献3には、強化プラスチック材、金属材などからなる剛構造のボックスの中に、可撓性膜材からなる袋体で形成されたガスの出し入れ可能なガス貯蔵バッグを収納する構造を有するガスホルダが開示されており、当該貯蔵バッグの上面に環状の重錘バランサを載置し、これにバランスワイヤをボックスの外側に垂下するカウンターウエイトを設けることによりガス貯蔵量の変化に対応して操業圧力を確保できるようになっている。しかしながら、カウンターウエイトの錘の重量を変えることによって、操業圧力の変更や調整を簡単にすることはできるが、ガス貯蔵バッグの形状が円筒状横型である。このため、特許文献3の
図6(c)から明らかなように、錘の重量が下部方向に押さえる断面積が、上下部で小さく中央部で最も大きくなる構造になっている。したがって、単位断面積あたりの荷重は常に変化することになり、ガス貯蔵バッグにかかる力は錘の重量を用いて相対的に大きくしたり小さくしたりすることはできるものの、内圧を常に一定に調整できるようにはなっていない。また、錘の重量は人為的に調整できるが、内圧を自在にきめ細かく可変することはできない。
【0007】
可変容量式(ピストン式)のガスホルダは、内圧がその貯蔵ガス量に応じて常に変化する固定式ガスホルダとは異なり、内圧を常に一定に保ちながらガスを出し入れできることが特徴であり、そこに利便性がある。しかしながら、特許文献1のように、ガスホルダ本体内の圧力はピストンの荷重が一旦決まると固定されてしまう。また、特許文献2,3のように、袋体にかかる荷重を重錘バランサでホルダ外部から手動で調整しても、段階的にしか調整できず、連続的にきめ細かく調整することはできなかった。したがって、ガスホルダ本体内の圧力を変化させてガスホルダ本体内へのガス貯蔵速度やガスホルダ本体内からのガス排出速度を随時速めたり遅くしたりする調節もできなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような事情の下で考え出されたものであって、貯蔵ガス量が変化しても内圧を一定に保つことができ、また、その圧力を必要に応じて自在にきめ細かく変えるのに適したガスホルダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によって提供されるガスホルダは、筒状の容器状に構成されたガスホルダ本体と、上記ガスホルダ本体の内部に収容され、上記ガスホルダ本体との間のガスシール状態を維持しつつ昇降可能とされた昇降部材と、を備え、上記昇降部材の昇降にともない、上記ガスホルダ本体および上記昇降部材によって区画されたガス収容部に収容されるガスの量が変化する、ガスホルダであって、上記昇降部材に支持され、かつ液体を収容する液体収容部を備えており、上記液体収容部内の液体の量を増減させることが可能に構成されている。
【0011】
好ましくは、上記液体収容部内の上記液体の液面高さを測定するための液面測定手段と、上記ガス収容部の内圧を測定する内圧測定手段と、上記ガスホルダ本体に設けられ、上記液体収容部に対して液体を導出入するための液体導出入部と、を備える。
【0012】
好ましくは、上記液体導出入部は、上記ガスホルダ本体の頂部もしくは側壁上部に設けられた液体導出入口と、一端が液体導出入口につながり、他端が上記液体収容部内の上記液体に浸かる液体導出入ノズルと、を含み、上記液体収容部に対する上記液体の導出入は、上記ガスホルダ本体の外部において上記液体収容部よりも下位に位置し、かつ液体導出入路を介して上記液体導出入口に通じており、液体の導出入を切り換えるための液体導出入切換手段によって行う。
【0013】
好ましくは、上記液体導出入部は、上記ガスホルダ本体の頂部もしくは側壁上部に設けられた液体導出口および液体導入口と、一端が上記液体導出口および上記液体導入口にそれぞれつながり、他端が上記液体収容部内の上記液体に浸かる液体導出ノズルおよび液体導入ノズルと、を含み、上記液体収容部からの上記液体の導出は、上記液体導出口と、上記ガスホルダ本体の外部において上記液体を貯蔵する液体貯蔵タンクと、の間をつなぐ液体導出路を介して行い、上記液体収容部への上記液体の導入は、上記液体導入口と上記液体貯蔵タンクとの間をつなぐ液体導入路を介して行う。
【0014】
好ましくは、上記液体貯蔵タンクは、上記ガスホルダ本体よりも上位に位置し、上記液体導入路には、開状態と閉状態とに切換え可能な自動弁が設けられており、上記液体収容部には、上記液体導出ノズルを通じて上記液体を上記液体貯蔵タンクに送るための液中ポンプが設けられている。
【0015】
好ましくは、上記液面測定手段は、上記ガスホルダ本体の頂部に設けられた液面計と、上記液体収容部の高さ位置を測定する位置測定機構とを含んで構成される。
【0016】
好ましくは、上記液面測定手段は、上記液体収容部に支持された液面計を含んで構成される。
【0017】
好ましくは、上記液面計は、超音波式液面計、静電容量式液面計、電波式液面計、またはフロート式液面計のいずれかである。
【0018】
好ましくは、上記液面測定手段は、上記液体貯蔵タンク内の上記液体の液面高さを検出する液面計を含んで構成される。
【0019】
好ましくは、上記内圧測定手段によって測定された上記ガス収容部の内圧に基づき、当該ガス収容部の内圧を低くする場合には上記液面測定手段により上記液面高さを測定しながら上記液体収容部から上記液体を導出し、上記ガス収容部の内圧を高くする場合には上記液面測定手段により上記液面高さを測定しながら上記液体収容部に上記液体を導入するように構成される。
【0020】
好ましくは、上記ガスホルダ本体の外部に位置し、液体を収容するための追加の液体収容部と、中間部が上記ガスホルダ本体に支持されることにより上記中間部において折り返され、一端が上記追加の液体収容部につながり、かつ他端が上記液体収容部につながる、接続部材と、を備え、上記追加の液体収容部内の液体の量を増減させることが可能に構成されている。
【0021】
好ましくは、上記追加の液体収容部に対して液体を出し入れするための追加の液体導出入部を備える。
【0022】
好ましくは、上記追加の液体導出入部は、上記追加の液体収容部に接続され、可撓性を有する追加の液体導出入路を含む。
【0023】
好ましくは、上記ガスホルダ本体には回転自在な回転部材が設けられており、上記接続部材の上記中間部は上記回転部材に支持されている。
【0024】
好ましくは、上記追加の液体収容部は、上記ガスホルダ本体の周方向に間隔を隔てて設けられる複数の液体収容容器と、これら液体収容容器の隣接するものどうしの下部を連通させる連通路と、を含む。
【0025】
好ましくは、上記ガスホルダ本体は、円筒容器状とされており、上記昇降部材は、上下に延びる円筒状部と、当該円筒状部の下端を塞ぐ底部と、を有し、上記ガスホルダ本体に固定されたダイヤフラムによって構成されており、上記液体収容部は、上記円筒状部の内側に配置され、上記ダイヤフラムに支持される円筒容器状のピストンによって構成される。
【0026】
好ましくは、上記ダイヤフラムは、上記ガス収容部に収容されるガスが接する第1のダイヤフラム部材と、上記第1のダイヤフラム部材と隙間を介して重なる第2のダイヤフラム部材と、を含み、上記第1および第2ダイヤフラム部材間の隙間のガスを検出する検出手段を更に備える。
【0027】
好ましくは、上記第1のダイヤフラム部材は、上記第2のダイヤフラム部材よりも耐溶剤性に優れる。
【0028】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0031】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るガスホルダを示している。
図1に示すように、本実施形態のガスホルダは、ガスホルダ本体1と、ダイヤフラム2と、ピストン3とを備えて構成されている。
【0032】
ガスホルダ本体1は、下部本体11および上部本体12を有し、これらが一体に組み合わされることにより、円筒容器状をなしている。下部本体11は、円盤状の底壁111と、底壁111の外周縁から上向きに延びる円筒状の側壁112とを有する。側壁112の上端部の外周には円環状の第1フランジ113が一体的に設けられている。下部本体11の下端寄りの適所には、ガス導入口11Aおよびガス排出口11Bが設けられている。詳細は後述するが、下部本体11の適所にはまた、圧力計600が取り付けられている。
【0033】
上部本体12は、ドーム状の天井壁121(本発明でいう頂部)と、天井壁121の周縁から下向きに延びる円筒状の側壁122とを有する。側壁122の下端部の外周には円環状の第2フランジ123が一体的に設けられている。詳細は後述するが、天井壁121には、液体導出入口121aおよびケーブル用孔121bが設けられている。なお、液体導出入口121aおよびケーブル用孔121bを設ける位置としては、天井壁121に限定されるものではなく、例えば、天井壁121の近くにスペースがあれば上部本体12の側壁122の上部に設けてもよい。また、天井壁121の形状としては、上記したドーム状に限定されるものではなく、コーン状(円錐状)や平板状などの他の形状を採用してもよい。
【0034】
第1フランジ113と第2フランジ123とは、これらの間に後述するダイヤフラム2の鍔部21を挟んだ状態にて、ボルト13によって接合される。これにより、下部本体11と上部本体12とは、相互に密封状態にて固定されている。なお、本実施形態では、側壁112の内径と側壁122の内径とが同一の設計寸法とされており、第1フランジ113,第2フランジ123が接合された状態において側壁112の内周面と側壁122の内周面とは上下方向において同一面状となっている。
【0035】
ダイヤフラム2は、鍔部21と、円筒状部22と、底部23とを有し、一連のシート状に形成されている。ダイヤフラム2は、ゴム布を用いて構成されている。鍔部21は、第1フランジ113,第2フランジ123に挟まれる部分であり、円環状とされている。本実施形態では、鍔部21の幅は第1および第2フランジ113,123の幅よりも大とされている。
【0036】
円筒状部22は、鍔部21の内周縁につながって延びている。本実施形態では、円筒状部22は、ピストン3を囲むように上方に延びており、その先端寄りの部位が外側に折り返されて、鍔部21に向かって下方に延びている。円筒状部22の内径寸法は、例えば約1000mmである。
【0037】
底部23は、円筒状部22の下端を塞いでいる。底部23の上面には、先端が上方を向く丸棒状の突起24が設けられている。本実施形態では、例えば4つの突起24が設けられており、所定のピッチ円に沿って等間隔に配置されている。
【0038】
上記構成により、一連のシート状に形成されたダイヤフラム2については、鍔部21がガスホルダ本体1の第1および第2フランジ113,123間に密封状態で挟まれている。このようなことから理解されるように、ダイヤフラム2は、ガスホルダ本体1との間でガスシール状態を維持したまま昇降可能とされており、本発明でいう昇降部材に相当する。
【0039】
ピストン3は、ダイヤフラム2の円筒状部22の内側に配置され、ダイヤフラム2に支持されている。ピストン3は、上下方向に延びる円筒状のピストン筒部31と、ピストン筒部31の下端内側を塞ぐピストン底部32とを有し、円筒容器状とされている。ピストン筒部31は、ダイヤフラム2の円筒状部22に囲まれている。ピストン3は、本発明でいう液体収容部に相当し、ピストン3の内部には液体340が収容されている。ピストン3の材質としては、例えば金属製あるいは樹脂製を採用することができるが、内部に液体340を収容し荷重調整されるため、強度のあるFRP(ガラス繊維強化プラスチック)を使用することが好ましい。また、ピストン3内に収容される液体340としては、例えば水を挙げることができるが、これに限定されない。液体340の比重を大きくするために食塩水や硫酸ソーダ溶液などの塩類溶液、或いはシリコン油などの不活性な油類を用いてもよく、安全上許容されるのであれば液体340の種類は限定されない。
【0040】
ピストン底部32には、4つの孔部32aが形成されている。本実施形態では、これら孔部32aは、ピストン底部32の厚み方向に貫通状に形成されており、ダイヤフラム2に設けられた突起24に対応するように、突起24が配置されたピッチ円と同一のピッチ円に沿って等間隔に位置している。このような構成により、ピストン3がダイヤフラム2に支持された状態においては、ピストン底部32の孔部32aには突起24が各々嵌入しており、ピストン底部32はダイヤフラム2の底部23に重ね合わされている。これにより、ダイヤフラム2に対してピストン3が適切に位置決めされる。また、図示説明は省略するが、ピストン底部32とダイヤフラム2の底部23との間には適宜のシール手段が施されており、ピストン3内部の液体340がピストン底部32とダイヤフラム2の底部23との間から漏洩することはない。
【0041】
ピストン筒部31の上端近傍には、取付具311を介してガイドローラ312が設けられている。ガイドローラ312は少なくとも3つ設けられており、これらガイドローラ312は、ピストン筒部31における周方向の異なる位置に配されている。ガイドローラ312は、好ましくは、ピストン筒部31の周方向において一定間隔を隔てて配される。各ガイドローラ312は、上部本体12の側壁122の内周面に接触するとともに水平軸周りに回転自在とされている。ピストン筒部31の外径寸法は、例えば約1000mmである。ピストン筒部31の外周面と上部本体12の内周面との間の隙間は、例えば50〜200mmとされ、好ましくは100〜150mmとされる。詳細は後述するが、ダイヤフラム2およびこのダイヤフラム2に支持されたピストン3は、ガイドローラ312によって略一定姿勢を維持しながら、上下動する。
【0042】
ピストン筒部31の取付具311の下部には、支持部材400が取り付けられている。支持部材400は、例えば多孔板もしくはアングル部材からなり、ピストン3に収容された液体340よりも上位において、略水平方向(当該液体の液面と略平行な方向)に延びている。
【0043】
本実施形態において、支持部材400には、液体導出入配管421a、ホース421b、および液面計500が取り付けられている。液体導出入配管421aは、ピストン3内の液体340をガスホルダ本体1の外部に導出し、あるいはガスホルダ本体1外部からピストン3内に液体340を導入するための通路である。液体導出入配管421aは、鉛直方向にピストン底部32付近まで延びており、ピストン3内の液体340に浸かっている。ホース421bは、一端が液体導出入配管421aに連通するとともに、他端が天井壁121の液体導出入口121aに通じており、ゴム製または樹脂製などの可撓性材料からなる。これにより、ピストン3が上下動すると、その動作に応じてホース421bは伸縮する。
【0044】
液体導出入口121aは、天井壁121に貫通状に設けられており、液体導出入口121aには、ガスホルダ本体1の外部に延びる液体導出入外部配管421cが接続されている。液体導出入外部配管421cは、下方に延びており、ガスホルダ本体1の下端付近の低位置まで通じている。液体導出入外部配管421cにおいて、ガスホルダ本体1の下端付近の低位置には、弁421dが設けられている。上記したように、液体導出入配管421aは、ピストン3内の液体340に浸かっており、この液体導出入配管421a、ホース421b、および液体導出入外部配管421cの内部は液封された状態にある。そして、弁421dは、ピストン3内の液体340の液面よりも常に低い位置にあるので、弁421dを開くと、サイフォンの原理により、落差を利用してピストン3内の液体340が液体導出入配管421a、ホース421b、および液体導出入外部配管421cを通じて外部に導出され、ピストン3内の液体340の量は減少する。一方、ピストン3内に液体340を導入する場合には、例えば液体導出入外部配管421cに通じる図外の水道配管により水道水を供給する。そうすると、水道水の水圧により、液体導出入外部配管421c、ホース421b、および液体導出入配管421aを通じて液体340がピストン3内に導入され、ピストン3内の液体340の量は増加する。なお、弁421dを閉じておくと、ピストン3内の液体340の量は変化しない。また、上記の液体導出入配管421aおよびホース421bは、本発明でいう液体導出入ノズルを担う。
【0045】
液面計500は、ピストン3内の液体340の液面高さを測定するために使用されるものである。液面計500としては、例えば超音波式センサ、静電容量式センサ、電波(マイクロ波)式センサが好適に用いられ、その他にも機械式として浮き子を利用したフロート式を用いてもよい。
図1においては、液面計500がマイクロ波式センサである場合を例示しており、アンテナ510から液体340の液面に向けて発信される発信波と、液面で反射されてアンテナ510で受信される受信波との関係により液面計500から液面までの距離が測定され、当該距離に基づいて液面高さが求められる。液面計500には、伸縮自在なキャブタイヤケーブル500aの一端が接続されている。キャブタイヤケーブル500aの他端は、天井壁121のケーブル用孔121bを貫通している。キャブタイヤケーブル500aは、液面計500によって測定された液面高さについての信号をガスホルダ本体1の外部に引き出すためのものであり、ピストン3が上下に動くとそれに合わせて上下に伸縮する。
【0046】
キャブタイヤケーブル500aの端部は、ガスホルダ本体1の外部において固定ケーブル500bの一端に接続されており、固定ケーブル500bの他端は、指示計500cにつながれている。かかる構成により、液面計500によって測定された液面高さを指示計500cによって読み取ることができる。
【0047】
圧力計600は、下部本体11の側壁112に取り付けられている。圧力計600は、ガスホルダ本体1およびダイヤフラム2によって区画されたガス収容部14(本実施形態では、ガスホルダ本体1内においてガス導入口11Aおよびガス排出口11Bに通じる領域)の内部圧力(内圧)を測定するためのものであり、本発明でいう内圧測定手段に相当する。この圧力計600については、目視で使用するのであればダイヤフラム式圧力計を用いてもよいが、ピストン3への液体340の出し入れを自動化するのであれば電気信号を発することができる電気式圧力計を用いるのが好ましい。
【0048】
本実施形態のガスホルダの使用時には、ガス導入口11Aを介してガスが導入されつつガス排出口11Bを通じてガスが排出される。ここで、ガス導入量がガス排出量を上回ると、ガスホルダ本体1内においてダイヤフラム2によって仕切られた下側領域(ガス収容部14)の内部圧力(内圧)が上昇しようとする。そうすると、ピストン3と液体340および取付具311や支持部材400などピストン3に積載されている各部品の総重量に抗して、ダイヤフラム2およびこのダイヤフラム2に囲まれたピストン3が押し上げられ、ガスが蓄えられる。ダイヤフラム2については、上昇にともない、円筒状部22における内側部分がその上端から順次外側に折り返されて反転していく。
図1においては、ピストン3が上昇した状態を仮想線で示している。一方、ガス排出量がガス導入量を上回ると、ピストン3が下降し、元の位置に戻る。このように、ガスホルダの使用時には、ガス量の変化によってピストン3がガスホルダ本体1内において上下動する。
【0049】
本実施形態のガスホルダにおいて、ピストン3に収容された液体340の荷重がガス収容部14の内圧(以下、ガスホルダ内圧という)に与える影響について説明する。例えばピストン筒部31の外径寸法が1000mmで、ピストン筒部31の外周面と下部本体11および上部本体12の内周面との間の間隙を100mmとして、液体340が収容されていない空状態におけるガスホルダ内圧を10kPaとなるようにピストン3の総重量を決める。ピストン3の下部面の直径に、ピストン筒部31と下部本体11および上部本体12の内周面との平均間隙寸法を加算すると、A=(100+10)cmとなる。Aはガス内圧によってピストン3を上部に押し上げようと働く力がかかる円形の面の直径に相当する。この面にP
1=10kPa=0.1kgf/cm
2の力が加わるとして計算するとπ/4×(100+10)
2×0.1=949.9kg重の力が加わっていることになる。なお、上記のAについての式において上記平均隙間寸法を加えているのは、ピストン筒部31と下部本体11および上部本体12の内周面との間においてダイヤフラム2が折れ曲がっているため、当該ダイヤフラム2の折れ曲がり部分でのガス内圧によって押し上げる力が垂直方向成分以外に分散していることによる。
【0050】
ここに、ピストン3内に液体340としての水を高さ300mm収容した場合を考える。ピストン筒部31の板厚みtを3mmとするとピストン筒部31の内径寸法φは1000−3×2=994mmとなる。水の重量は水の密度を1.0g/cm
3としてπ/4×99.4
2×30×1/1000=232.7kg重となる。したがってガスホルダ内圧Pについての式、π/4×(100+10)
2×P=949.9+232.7=1182.6が成り立ち、P=0.1245kgf/cm
2が得られる。したがって、ピストン3内に水を入れたことによって、ガスホルダ内圧は2.45kPa上昇することになる(P−P
1=0.0245kgf/cm
2)。
【0051】
以上の説明から理解されるように、本実施形態のガスホルダにおいて、ピストン3内の液体340の量を増減することができる。そして、ガスホルダ内にガスを導入したい場合には、ピストン3内の液体340を外部に導出してピストン3全体(ピストン3の重量および内部の液体340の重量の合計、以下同じ)を軽くすると、ガスホルダ内圧が比較的低圧になる。これにより、ピストン3が上昇し、ガスホルダ内にガスが導入される。一方、ガスホルダからガスを排出したい場合には、ピストン3内に液体340を導入してピストン3全体を重くすると、ガスホルダ内圧が比較的高圧になる。これにより、ピストン3が下降し、ガスホルダからガスが排出される。このような操作により、ガスホルダにおけるガスの吸入排気を、送風機を使わずにスムーズにできるようになる。
【0052】
本実施形態においては、ピストン3全体の重量を調整するための媒体として液体340を用いている。このため、必要に応じてピストン3内から液体340を導出し、またはピストン3内に液体を導入することにより、ガスホルダの内圧調整を自在にきめ細かく行うことができる。
【0053】
ガスホルダ内圧(ガス収容部14の内圧)は、圧力計600よって測定することができる。また、ピストン3内の液体340の液面高さは、液面計500によって測定することができる。これにより、ガスホルダ内圧を低くする場合には、圧力計600によって測定されたガスホルダ内圧に基づき、液面計500によりピストン3内の液体340の液面高さを測定しながら、目的とするガス圧力に見合う液面高さとなるまで、ピストン3内から液体340を導出する。一方、ガスホルダ内圧を高くする場合には、圧力計600によって測定されたガスホルダ内圧に基づき、液面計500によりピストン3内の液体340の液面高さを測定しながら、目的とするガス圧力に見合う液面高さとなるまで、ピストン3内に液体340を導入する。このような構成は、ガスホルダの内圧調整を自在にきめ細かく行うのに適している。
【0054】
ピストン3に対する液体の出し入れは、弁421dの開閉状態を切り換えることにより、液体導出入配管421a、ホース421b、液体導出入口121a、液体導出入外部配管421cを通じて行うことができる。上述したように、液体導出入配管421aはピストン3内の液体340に浸かっており、この液体導出入配管421a、ホース421b、および液体導出入外部配管421cの内部は液封された状態にある。また、弁421dはピストン3内の液体340の液面よりも常に低い位置にあるので、弁421dを開くことにより、動力源を使うことなく落差を利用してピストン3内の液体340を外部に導出することができる。なお、弁421dを閉じておくと、ピストン3内の液体340の量は変化しないので、ガスホルダ内圧を一定に保つことが可能である。
【0055】
ピストン3(ピストン筒部31)には、上部本体12の側壁122の内周面に周方向の異なる位置にて接触しつつ水平軸周りに回転自在なガイドローラ312が設けられている。これにより、ピストン3が上下動する際には、ガイドローラ312は、側壁122の内面に接触する状態を維持しつつ上下方向に転がりながら移動する。したがって、ピストン3はガイドローラ312を介してガスホルダ本体1(上部本体12)に支えられており、上下動にともなってピストン3が傾くのを防止することができる。その結果、ピストン3は略一定姿勢を維持しながら上下動することとなるので、液面計500による液面高さの測定値についても、より正確な値が得られる。
【0056】
また、このようにガイドローラ312を設けた構成において、ピストン筒部31の外周面と上部本体12の内周面との間の隙間は、50〜200mmと比較的狭くされている。このように上記隙間を狭くすれば、ピストン3の傾きを抑制するうえで好ましく、また、ガスホルダの小型化を図るのに適している。
【0057】
図2は、本発明の第2の実施形態に係るガスホルダを示している。本実施形態のガスホルダにおいて、ガスホルダ本体1にはピストン3の高さ位置を外部から測定するレベル計550が取り付けられている。レベル計550にはワイヤ550aの一端が接続されており、当該ワイヤ550aはガスホルダ本体1の外部において保護管550cの内部に通されている。ワイヤ550aは、ガスホルダ本体1の天井壁121を貫通してガスホルダ本体1内部に引き込まれ、他端がピストン3の取付具311に接続されている。
【0058】
また、本実施形態において、液面計500は、ガスホルダ本体1の天井壁121に取り付けられている。本実施形態によれば、ピストン3内の液体340の液面高さは、液面計500による測定値とレベル計550によって測定されたピストン3の高さ位置とを組み合わせることによって、測定することができる。このような構成によれば、天井壁121に取り付けられた液面計500については、ガスホルダ本体1の外部から直接取り外しができるようになる。なお、レベル計550は、ピストン3の高さ位置を測定するために一般に設けられるものであるが、他の実施形態に係る図面においては、発明の課題とは関係ないので、その記載を省略した。
【0059】
図3は、本発明の第3の実施形態に係るガスホルダを示している。本実施形態のガスホルダにおいては、ピストン3に対して出し入れされる液体340は、ガスホルダ本体1の外部において液体340を貯蔵する液体貯蔵タンク750との間で循環するように構成されている。本実施形態において、液体貯蔵タンク750は、ガスホルダ本体1よりも上位に設置されている。
【0060】
ガスホルダ本体1の天井壁121には、液体導入口121cおよび液体導出口121dが設けられている。支持部材400には、液体導入配管422a、ホース422b、液体導出配管423a、およびホース423bが取り付けられている。液体導入配管422aは、ガスホルダ本体1外部からピストン3内に液体340を導入するための通路である。液体導出配管423aは、ピストン3内の液体340をガスホルダ本体1の外部に導出するための通路である。液体導入配管422aは、鉛直方向にピストン底部32付近まで延びており、ピストン3内の液体340に浸かっている。液体導出配管423aは、ピストン3内の液体340に浸かっており、その先端部は液中ポンプ700に接続されている。ホース422b(ホース423b)は、一端が液体導入配管422a(液体導出配管423a)に連通するとともに、他端が天井壁121の液体導入口121c(液体導出口121d)に通じており、ゴム製または樹脂製などの可撓性材料からなる。これにより、ピストン3が上下動すると、その動作に応じてホース422b(ホース423b)は伸縮する。本実施形態において、液体導入配管422a、ホース422b、および液体導入外部配管422f、ならびに液体導出配管423a、ホース423b、および液体導出外部配管423cの内部は、液封された状態にある。なお、液体導入口121cおよび液体導出口121dを設ける位置としては、天井壁121に限定されるものではなく、例えば、天井壁121の近くにスペースがあれば上部本体12の側壁122の上部に設けてもよい。
【0061】
液体導入口121cおよび液体導出口121dは、天井壁121に貫通状に設けられており、液体導入口121cおよび液体導出口121dには、ガスホルダ本体1の外部に延びる液体導入外部配管422fおよび液体導出外部配管423cが接続されている。液体導入外部配管422fの端部は、液体貯蔵タンク750の底壁部に接続されている。液体導入外部配管422fには、開状態と閉状態とに切り換え可能な自動弁422eが設けられている。液体導出外部配管423cの端部は、液体貯蔵タンク750の側壁部に接続されている。
【0062】
液中ポンプ700には、伸縮自在なキャブタイヤケーブル700aの一端が接続されている。キャブタイヤケーブル700aの他端は、天井壁121のケーブル用孔121bを貫通している。キャブタイヤケーブル700aは、液中ポンプ700に動力源である電力を供給するためのものであり、ピストン3が上下に動くとそれに合わせて上下に伸縮する。キャブタイヤケーブル700aの端部は、ガスホルダ本体1の外部において固定ケーブル700bの一端に接続されている。
【0063】
本実施形態において、液体貯蔵タンク750には当該液体貯蔵タンク750内の液体340の液面高さを検出する液面計800が取り付けられている。本実施形態では、液面計800によって液体貯蔵タンク750の液面高さを検出することにより、ピストン3内に収容された液体340の量(液面高さ)を間接的に測ることができる。
【0064】
本実施形態では、ピストン3内の液体340の量(液面高さ)の調節は、ガスホルダ本体1内の圧力を測定する圧力計600からの信号により行うことができる。例えば、圧力計600からの信号に基づき、液面計800によりピストン3内の液体340の液面高さを測定しながら、自動弁422eおよび液中ポンプ700の動作を制御する。ガスホルダ本体1内の圧力を下げたい場合には、液中ポンプ700を動かして液体貯蔵タンク750内の液面を上げる(換言するとピストン3から液体340を外部に導出する)ように調節する。一方、ガスホルダ本体1内の圧力を上げたい場合には、自動弁422eを開けることによって、液体貯蔵タンク750内の液体340を、落差を利用して、液体導入外部配管422f、ホース422b、液体導入配管422aを通じてピストン3内に導入する。
【0065】
図4は、本発明の第4の実施形態に係るガスホルダを示している。本実施形態のガスホルダにおいては、上記第3の実施形態と同様に、ピストン3に対して出し入れされる液体340は、ガスホルダ本体1の外部において液体340を貯蔵する液体貯蔵タンク750との間で循環するように構成されている。ただし、本実施形態において、液体貯蔵タンク750は、ガスホルダ本体1と同じ高さ位置に設置されている。
【0066】
上記第3の実施形態では、ピストン3内に液体340を導入する際には、液体導入外部配管422fを通じて落差を利用して行うことができ、自動弁422eの開閉状態を切り換えることにより制御することができた。一方、本実施形態では、液体導入外部配管422fにはガスホルダ本体1側に液体340を圧送するための液体ポンプ425が設けられており、ピストン3内への液体340の導入は、液体ポンプ425を駆動させることにより行う。
【0067】
本実施形態においても、上記第3の実施形態と同様に、液体貯蔵タンク750には当該液体貯蔵タンク750内の液体340の液面高さを検出する液面計800が取り付けられている。本実施形態では、液面計800によって液体貯蔵タンク750の液面高さを検出することにより、ピストン3内に収容された液体340の量(液面高さ)を間接的に測ることができる。
【0068】
本実施形態においても、ピストン3内の液体340の量(液面高さ)の調節は、ガスホルダ本体1内の圧力を測定する圧力計600からの信号により行うことができる。例えば、圧力計600からの信号に基づき、液面計800によりピストン3内の液体340の液面高さを測定しながら、液中ポンプ700および液体ポンプ425の動作を制御する。ガスホルダ本体1内の圧力を下げたい場合には、液中ポンプ700を動かして液体貯蔵タンク750内の液面を上げる(換言するとピストン3から液体340を外部に導出する)ように調節する。一方、ガスホルダ本体1内の圧力を上げたい場合には、液体ポンプ425を動かして液体貯蔵タンク750内の液体340を、液体導入外部配管422f、ホース422b、液体導入配管422aを通じてピストン3内に導入する。
【0069】
図5は、本発明の第5の実施形態に係るガスホルダを示している。本実施形態のガスホルダにおいては、基本的な構成は
図1に示した上記第1の実施形態と同様であるが、バランサを備える点において上記第1の実施形態と大きく異なる。また、本実施形態では、ダイヤフラム2の構成が上記実施形態と異なる。
【0070】
図5に示すように、バランサ9は、ガスホルダ本体1の外部に設けられており、金属製或いは樹脂製の容器状とされており、内部に液体を収容可能である。
【0071】
バランサ9には、ワイヤ950の一端がつながっており、当該ワイヤ950の他端は、取付具311を介してピストン3につながっている。ガスホルダ本体1の上部には、水平軸周りに回転自在なプーリ124(回転部材)が設けられており、ワイヤ950はその中間部がプーリ124に掛け回されて当該プーリ124に支持されている。このように、ワイヤ950の両端にバランサ9およびピストン3が吊り下げられている。これにより、ピストン3が上下方向に移動すると、そのピストン3の移動にともなってバランサ9が上下方向に移動する。
【0072】
図6に示すように、バランサ9はガスホルダ本体1の周方向に間隔を隔てて複数(本実施形態では4つ)設けられている。
図6を参照すると理解できるように、例えば各バランサ9においてガスホルダ本体1と対向する外側面には、断面T字状のガイド部材910が設けられている。ガスホルダ本体1(上部本体12)の外側面には、ガイド部材910を上下に案内するためのガイド溝125が上下方向に沿って設けられている。これにより、各バランサ9は、横揺れすることなく上下に移動可能となっている。詳細は後述するが、複数のバランサ9については、隣接するものどうしの下部が連通路940を介して連通している。なお、
図6においては、バランサ9の取付状態を説明するのに必要な要素のみを示しており、他の要素については省略している。
【0073】
図5に示すように、バランサ9(図中左側のバランサ9)には、液体導入口920および液体導出口930が設けられている。本実施形態では、液体導入口920はバランサ9の側壁上部に設けられ、液体導出口930はバランサ9の底壁に設けられている。液体導入口920には液体導入路921が接続されており、液体導出口930には液体導出路931が接続されている。液体導入路921には例えば図外の水道配管により水道水を供給可能であり、水道水の水圧により液体導入路921を介してバランサ9内に液体を補給可能である。また、液体導入路921には弁922が設けられており、当該弁922を開くとバランサ9に液体が補給され、弁922を閉じるとバランサ9への液体の補給は停止する。液体導出路931には弁932が設けられるとともに、液体導出路931の端部は開放している。弁932を開くとバランサ9内の液体は液体導出路931を介して外部に排出される。かかる構成によれば、弁922,932の開閉状態を切り換えることにより、バランサ9に対する液体の出し入れを行うことができ、バランサ9内の液体の量を増減させることができる。また、上述したようにバランサ9間が連通路940によって連通しているため、バランサ9に補給される液体はすべてのバランサ9に均等に行き渡り、すべてのバランサ9内の液体の液面高さは同一となる。
【0074】
本実施形態において、液体導入路921および液体導出路931は、例えば可撓性を有するホースを含んで構成される。これにより、バランサ9が上下に移動する際、液体導入路921および液体導出路931はバランサ9の動きに追従する。
【0075】
図7に示すように、ダイヤフラム2は、シート状の2枚のダイヤフラム部材201,202を備えている。ダイヤフラム部材201は相対的に下方に位置しており、ガス収容部14に収容されるガスに接する。ダイヤフラム部材202は、ダイヤフラム部材201との間に隙間203を介して当該ダイヤフラム部材201に重なっている。ダイヤフラム部材201,202の双方の外周部(鍔部)は、ガスホルダ本体1の第1および第2フランジ113,123間において重なり合った状態でボルト13を締めることにより密着させられる。これにより、ダイヤフラム部材201,202の間の隙間は密封状態にある。
【0076】
ダイヤフラム部材202は、上記した第1の実施形態におけるダイヤフラム2と実質的に同一の材料からなり、例えばゴム布を用いて構成される。このダイヤフラム部材202上にピストン3が配置される。ダイヤフラム部材201は、例えばダイヤフラム部材202よりも耐溶剤性に優れた樹脂シートからなる。そのような樹脂シートの材料としては、例えばデュポン社のカルレッツ(登録商標)等を挙げることができる。
【0077】
ダイヤフラム部材202には、外周部の近傍においてガス検出用ライン204が接続されている。ガス検出用ライン204は、ガスホルダ本体1(上部本体12)の側壁122に形成された孔126を通じてガスホルダ本体1の外部に延びている。ガス検出用ライン204は、ガス収容部14に収容されるガス成分を検知するためのガス検出センサ(図示略)に接続されている。なお、このようなガス検出用ライン204を含むガス検出手段は、必要に応じてガスホルダ本体1の周囲の2〜6箇所に設けられる。
【0078】
本実施形態のガスホルダにおいては、上記実施形態のようにピストン3内の液体340の量を増減することができるのに加え、バランサ9内の液体の量をも増減することができる。例えば、ピストン3内の液体340を減らしてピストン3全体を軽くするとともに、ピストン3の重量に見合う程度の液体をバランサ9内に溜める。ここで、ダイヤフラム2に作用するピストン3全体による実質的な重量については、ワイヤ950の一端に吊り下げられたバランサ9全体(バランサ9の重量および内部の液体の重量の合計、以下同じ)の重量がワイヤ950の他端に吊り下げられたピストン3全体の重量から差し引かれることになる。したがって、ピストン3全体とバランサ9全体の重量差を小さくすると、ガスホルダ内圧(ガス収容部14の圧力)は、1kPa以下程度の低い圧力にまで設定することができる。
【0079】
本実施形態においては、バランサ9内の液体の量を増減することにより、バランサ9全体の重量をきめ細かく調整することができる。このため、ガスホルダのガス圧をより低い圧力に正確に設定することができる。したがって、本実施形態のガスホルダは、例えば局所排気や空調設備などにおけるより低い圧力のガスについても用いることができ、多種類のガスに適用することができる。
【0080】
複数のバランサ9ついて隣接するものどうしの下部が連通路940を介して連通しているため、バランサ9に補給される液体はすべてのバランサ9に均等に行き渡る。このような構成によれば、ガスホルダ本体1の周方向において、バランサ9による重量がほぼ均一にピストン3に作用することとなる。その結果、ダイヤフラム2に作用するピストン全体3による実質的な重量もほぼ均一となる。
【0081】
また、本実施柄形態のガスホルダでは、ダイヤフラム2は隙間203を介して重なるダイヤフラム部材201,202を含み、当該隙間203のガスを検出することができるように構成されている。このような構成によれば、例えばガス収容部14に接するダイヤフラム部材201の劣化、破損等により、ガス収容部14のガスが部材201,202間にリークすると、当該隙間203のガスは、ガス検出用ライン204を介してガス検出センサに導かれ、検出される。したがって、ガスホルダ内(ガス収容部14)のガスが外部に流出することを未然に防止することができる。かかる構成は、例えば大気への放出が制限されるガスを取り扱ううえで有用である。
【0082】
さらに、ダイヤフラム部材201は、耐溶剤性に優れた材料からなる。このため、ガスホルダに収容されるガスが例えば有機溶剤系ガスであっても、当該溶剤系ガスによるダイヤフラム部材201の腐食を効果的に抑制することができる。
【0083】
図8は、本発明の第6の実施形態に係るガスホルダを示している。本実施形態のガスホルダにおいては、基本的な構成は
図3に示した上記第3の実施形態と同様であるが、バランサを備える点において上記第3の実施形態と大きく異なる。
【0084】
本実施形態のバランサ9は、上記第5の実施形態におけるバランサ9とほぼ同様の構成を有するのでその説明を省略する。本実施形態では、液体導入口920はバランサ9の天井壁に設けられ、液体導出口930はバランサ9の側壁上部に設けられている。
【0085】
液体導入口920には液体導入路921の一端が接続されている。液体導入路921の他端は液体導入外部配管422fの適所に分岐状に接続されている。液体導入路921には自動弁924が設けられており、当該自動弁924を開くと液体貯蔵タンク750内の液体340は、落差により液体導入外部配管422f、液体導入路921を介してバランサ9内に導入される。自動弁924を閉じるとバランサ9への液体340の導入は停止する。
【0086】
液体導出口930には液体導出路931の一端が接続されている。液体導出路931の他端は液体貯蔵タンク750の側壁部に接続されている。図示説明は省略するが、バランサ9の内部には液中ポンプが設置されており、当該液中ポンプが作動するとバランサ9内の液体が液体導出口930を介して液体導出路931に送られるように構成されている。
【0087】
本実施形態においては、バランサ9内の液体の量を増減することにより、バランサ9全体の重量をきめ細かく調整することができる。このため、ガスホルダのガス圧をより低い圧力に正確に設定することができる。
【0088】
本実施形態では、バランサ9内の液体の量の調節は、ガスホルダ本体1内の圧力を測定する圧力計600からの信号により行うことができる。例えば、圧力計600からの信号に基づき、自動弁924の動作を制御する。ガスホルダ本体1内の圧力をより低い圧力に下げたい場合には、液中ポンプ700を動かしてピストン3内の液体340を導出するとともに、自動弁924を開けることによって、液体貯蔵タンク750内の液体340を、落差を利用して、液体導入外部配管422f、液体導入路921を通じてバランサ9内に導入する。
【0089】
以上、本発明の具体的な実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の思想から逸脱しない範囲内で種々な変更が可能である。本発明に係るガスホルダの各部の具体的な構成については、上記実施形態に限定されない。
【0090】
上記実施形態においては、ダイヤフラム2を備える構成を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、ダイヤフラムを具備しないピストン式のガスホルダに適用することもできる。
図9は、ピストン式のガスホルダの一例を示す。
図9に示されたガスホルダは、昇降部材としてのピストン200と、ピストン200上に設けられた容器体300(液体収容部)とを備える。ガスホルダ本体1は、概略円筒容器状とされている。ピストン200の外周部には、取付具210を介してガイドローラ220が設けられている。また、取付具210の外周部には、潤滑油ケース230が取り付けられており、この潤滑油ケース230の外周にシール材240が装着されている。潤滑油ケース230には、潤滑油231が収容されており、この潤滑油231がシール材240の表面部に供給されるようになっている。シール材240は、ガスホルダ本体1の側壁102の内周面に圧接している。かかる構成により、ピストン200は、ガスホルダ本体1との間のガスシール状態を維持しつつ昇降可能とされている。
図9においては、ピストン200が上昇した状態を仮想線で示している。容器体300の内部には液体340が収容されている。詳細な図示説明は省略するが、容器体300に収容される液体340の量を増減させることが可能に構成されている。容器体300内の液体340の量を増減させるための構成としては、上述した実施形態と同様の構成を適宜採用することができる。
【0091】
さらに、
図9に示されるダイヤフラムを具備しない構成において、ガスホルダ本体1の外部にバランサ(追加の液体収容部)を設けてもよい。バランサを設ける場合、図示説明は省略するが、
図5等を参照した上述したように、ワイヤ(接続部材)の両端にバランサおよび容器体300が吊り下げられる。バランサは内部に液体を収容可能であり、収容される液体の量を増減させることが可能に構成されている。バランサ内の液体の量を増減させるための構成としては、上述した実施形態と同様の構成を適宜採用することができる。