特許第6133025号(P6133025)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6133025
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】光集積素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/136 20060101AFI20170515BHJP
   G02B 6/122 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
   G02B6/136
   G02B6/122 311
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-178580(P2012-178580)
(22)【出願日】2012年8月10日
(65)【公開番号】特開2014-35540(P2014-35540A)
(43)【公開日】2014年2月24日
【審査請求日】2015年6月12日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田村 修一
(72)【発明者】
【氏名】清田 和明
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 英明
【審査官】 奥村 政人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−117058(JP,A)
【文献】 特開2006−323210(JP,A)
【文献】 特開2006−323137(JP,A)
【文献】 特開2002−232069(JP,A)
【文献】 特開2011−108829(JP,A)
【文献】 特開2010−091900(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/077641(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/12− 6/14
H01S 5/00− 5/50
H01L 21/302
H01L 21/3065
H01L 21/461
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、光を導波する第1メサ型光導波路を有する第1領域と、前記光を導波する第2メサ型光導波路を有する第2領域と、前記第1領域と前記第2領域とが光学的に接続する領域に形成され、前記光が通過する中間領域とを備え、前記第1メサ型光導波路と、前記第2メサ型光導波路とは、前記光の導波方向と交差する断面が互いに異なり、前記中間領域の前記断面と平行な断面は、前記第1メサ型光導波路の前記断面および前記第2メサ型光導波路の前記断面を包含し、前記中間領域は、導波路の幅が前記光の導波方向に対して直交する横方向の光を閉じ込めない幅を有する光集積素子の製造方法であって、
スラブ型光導波路を含む半導体積層体に、前記第1メサ型光導波路および前記第2メサ型光導波路のメサストライプを形成するためのマスクパターンを形成するメサストライプマスク形成工程と、
前記第2領域となる領域と前記中間領域となる領域とを覆う第1保護マスクを形成する第1保護マスク形成工程と、
前記第1領域となる領域をエッチングして、前記第1メサ型光導波路を形成する第1エッチング工程と、
前記第1保護マスクを除去した後、前記第1領域となる領域と前記中間領域となる領域とを覆う第2保護マスクを形成する第2保護マスク形成工程と、
前記第2領域となる領域をエッチングして、前記第2メサ型光導波路を形成する第2エッチング工程と、を含み、
前記中間領域となる領域の前記光の導波方向に沿った長さは、前記第1領域と前記第2領域との間で前記光を導波可能な長さであるとともに、前記光の導波方向に沿った前記第1保護マスクと前記第2保護マスクとの位置ずれを前記中間領域となる領域の長さの範囲内で吸収できる長さに設定される
ことを特徴とする光集積素子の製造方法。
【請求項2】
前記メサストライプマスク形成工程では、前記第1領域、前記第2領域、および前記中間領域に同時に前記マスクパターンを形成することを特徴とする請求項に記載の光集積素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光集積素子およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体基板上にさまざまな種類の光素子をモノリシックに集積化した光集積素子においては、各光素子はその機能に適した異なる種類の光導波路で形成されており、これらの異なる種類の光導波路が接続されることになる(特許文献1、非特許文献1及び2参照)。
【0003】
たとえば、ハイメサ型光導波路とローメサ型光導波路のように、メサ高さの異なる光導波路の先端同士が接続される構造を考えると、そのような導波路構造は、たとえば以下の方法にて製造される。第1の方法としては、まず、スラブ型光導波路に対して、第1の工程として所望のマスクパターンの形成とエッチングとを行って、所定の領域にローメサ型光導波路を作製する。つぎに、作製したローメサ型導波路をマスクで保護した後、第2の工程として、ローメサ型光導波路に隣接する領域に所望のマスクパターンの形成とエッチングとを行って、ハイメサ型光導波路を作製する。なお、第1の工程と第2の工程とは順番を入れ替えて行っても良い。
【0004】
また、別の方法としては、フォトリソグラフィ技術を適用してスラブ型光導波路に光導波路に相当するマスクパターンを形成する。つぎに、ハイメサ型光導波路およびローメサ型光導波路を形成する領域に対して、ローメサ型光導波路のメサ深さまでエッチングを行う。さらに、ローメサ型導波路として残す部分をマスクで保護した後、ハイメサ型光導波路を形成する領域に対して、ハイメサ型光導波路のメサ深さまでエッチングを行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−91900号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】T.Okamoto, et al., “Monolithic integration of a 10 Gb/s Mach-Zehnder Modulator and a Widely Tunable Laser based on a 2-Ring Loop-Filter”, 2010 International Conference on Indium Phosphide and Related Materials Conference Proceedings(IPRM2010) ThA1-3.
【非特許文献2】Steven C.Nicholes, et al., “INTEGRATION TECHNOLOGIES FOR AN 8x8 INP-BASED MONOLITHIC TUNABLE OPTICAL ROUTER WITH 400GB/S LINE RATE PER PORT”, 2010 International Conference on Indium Phosphide and Related Materials Conference Proceedings(IPRM2010) WeA3-1.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、異なる種類の光導波路が接続した構造を上述した方法で製造しようとすると、マスクパターンのパターニング精度や、プロセスでの形状精度が低い場合に、異なる種類の光導波路同士の接続部に断線や形状不良等が生じる場合があり、製造歩留まりが低下し、これによって生産性が低下する場合があるという問題がある。一方、このような断線や形状不良等を解決するために、マスクパターンのパターニング精度や、プロセスでの形状精度等が高い装置や技術を適用した場合には、高価な装置や高度な技術が必要となるので、高コスト化や生産性の低下を招くおそれがある。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、低コストで生産性高く製造できる光集積素子およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る光集積素子は、基板上に、光を導波する第1メサ型光導波路を有する第1領域と、前記光を導波する第2メサ型光導波路を有する第2領域と、前記第1領域と前記第2領域とが光学的に接続する領域に形成され、前記光が通過する中間領域と、を備え、前記第1メサ型光導波路と、前記第2メサ型光導波路とは、前記光の導波方向と交差する断面が互いに異なり、前記中間領域の前記断面と平行な断面は、前記第1メサ型光導波路の前記断面および前記第2メサ型光導波路の前記各断面を包含することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る光集積素子は、上記発明において、前記第1メサ型光導波路と、前記第2メサ型光導波路とは、メサの高さ方向の光閉じ込め態様が互いに異なることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る光集積素子は、上記発明において、前記第1メサ型光導波路と、前記第2メサ型光導波路とは、メサの高さが互いに異なることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る光集積素子は、上記発明において、前記第1メサ型光導波路と、前記第2メサ型光導波路とは、メサの幅が互いに異なることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る光集積素子は、上記発明において、前記中間領域は、スラブ型光導波路であることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る光集積素子は、上記発明において、前記中間領域は、当該中間領域を通過する前記光の一部を前記第1メサ型光導波路および前記第2メサ型光導波路の少なくとも一方における前記光の導波方向とは異なる方向に反射する反射部を、前記第1メサ型光導波路および前記第2メサ型光導波路と重ならない領域に有することを特徴とする。
【0015】
本発明に係る光集積素子の製造方法は、基板上に、光を導波する第1メサ型光導波路を有する第1領域と、前記光を導波する第2メサ型光導波路を有する第2領域と、前記第1領域と前記第2領域とが光学的に接続する領域に形成され、前記光が通過する中間領域とを備え、前記第1メサ型光導波路と、前記第2メサ型光導波路とは、前記光の導波方向と交差する断面が互いに異なり、前記中間領域の前記断面と平行な断面は、前記第1メサ型光導波路の前記断面および前記第2メサ型光導波路の前記各断面を包含する光集積素子の製造方法であって、スラブ型光導波路を含む半導体積層体に、前記第1メサ型光導波路および前記第2メサ型光導波路のメサストライプを形成するためのマスクパターンを形成するメサストライプマスク形成工程と、前記第2領域となる領域と前記中間領域となる領域とを覆う第1保護マスクを形成する第1保護マスク形成工程と、前記第1領域となる領域をエッチングして、前記第1メサ型光導波路を形成する第1エッチング工程と、前記第1保護マスクを除去した後、前記第1領域となる領域と前記中間領域となる領域とを覆う第2保護マスクを形成する第2保護マスク形成工程と、前記第2領域となる領域をエッチングして、前記第2メサ型光導波路を形成する第2エッチング工程と、を含むことを特徴とする。
【0016】
本発明に係る光集積素子の製造方法は、上記発明において、前記メサストライプマスク形成工程では、前記第1領域、前記第2領域、および前記光中間領域に同時に前記マスクパターンを形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、低コストで生産性高く製造できる光集積素子を実現できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、実施の形態1に係る光集積素子の模式的な斜視図である。
図2図2は、図1に示す光集積素子の上面図である。
図3図3は、図1に示す光集積素子の側面図である。
図4図4は、光集積素子の製造方法の一例を説明する図である。
図5図5は、光集積素子の製造方法の一例を説明する図である。
図6図6は、光集積素子の製造方法の一例を説明する図である。
図7図7は、変形例1を示す模式的な上面図である。
図8図8は、変形例2〜5を示す模式的な上面図である。
図9図9は、実施の形態2に係る光集積素子の模式的な側面図である。
図10図10は、実施の形態3に係る光集積素子の模式的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、図面を参照して本発明に係る光集積素子およびその製造方法の実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、各図面において、同一または対応する要素には適宜同一の符号を付している。さらに、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係などは、現実のものとは異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0020】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る光集積素子の模式的な斜視図である。図2は、図1に示す光集積素子の上面図である。図3は、図1に示す光集積素子の側面図である。図1図3に示すように、この光集積素子100は、基板101上に、第1領域10と、第2領域20と、中間領域30とを備えている。
【0021】
第1領域10、第2領域20、および中間領域30は、それぞれ、基板101上に積層された下部クラッド層102、コア層103、上部クラッド層104、エッチストップ層105、およびスペーサ層106で構成されている。
【0022】
第1領域10は、コア層103において光L1を導波する第1メサ型光導波路M1を有する。第1メサ型光導波路M1は、スペーサ層106の表面からのメサの深さが、コア層103よりも浅い、いわゆるローメサ型の光導波路である。このメサの深さとは、後述する第1メサ型光導波路M1のメサの高さに対応するものであってメサの基部からメサの頂部までの高さである。
【0023】
第2領域20は、コア層103において光L1を導波する第2メサ型光導波路M2を有する。第2メサ型光導波路M2は、スペーサ層106の表面からのメサの深さが、コア層103よりも深い、いわゆるハイメサ型の光導波路である。このメサの深さとは、後述する第2メサ型光導波路M2のメサの高さに対応するものである。
【0024】
すなわち、第1メサ型光導波路M1と、第2メサ型光導波路M2とは、メサの高さH1、H2(図3参照)が互いに異なることによって、メサの高さ方向の光閉じ込め態様が互いに異なる。
【0025】
また、第1メサ型光導波路M1と、第2メサ型光導波路M2とは、メサの幅W1、W2(図2参照)が互いに異なる。
【0026】
メサの高さH1、H2やメサの幅W1、W2は、第1メサ型光導波路M1と、第2メサ型光導波路M2とに要求される光導波の特性に応じて設定される。
【0027】
中間領域30は、第1領域10と第2領域20とが光学的に接続する(すなわち第1メサ型光導波路M1と、第2メサ型光導波路M2とが光学的に接続する)領域である第1領域10と第2領域20との間に形成される。光L1は第1領域10から中間領域30を通過して第2領域20へと入力する。なお、中間領域30では、第1領域10や第2領域20のような横方向の閉じ込め態様がなされることなく、伝搬する。
【0028】
ここで、図1に示すように、第1メサ型光導波路M1の光L1の導波方向と直角に交差する断面S1と、第2メサ型光導波路M2の光L1の導波方向と直角に交差する断面S2と、中間領域30の、断面S1、S2と平行な断面S3とを規定する。すると、断面S1と断面S2とでは、互いに断面が異なる。ここで、断面が異なるとは、断面積、断面構造、または光の閉じ込め態様等が異なることを意味する。光の閉じ込め態様等が異なるとは、たとえば光閉じ込め係数や実効屈折率等が異なることを意味する。
【0029】
断面S3は、断面S1と断面S2との両方を包含している。この光集積素子100では、第1メサ型光導波路M1と第2メサ型光導波路M2との互いに断面が異なる断面S1、S2を包含する断面S3を有する中間領域30が存在するため、製造時に、マスクのパターニング精度や、プロセスでの形状精度等が比較的低くても、第1メサ型光導波路M1と第2メサ型光導波路M2との断線等が生じにくいものとなっている。そのため、この光集積素子100は、製造歩留まりが高く、低コストで生産性が高いものである。
【0030】
なお、このような構成の光集積素子100は、ハイメサ型光導波路で構成される、曲がり光導波路、マッハツェンダー干渉計を構成するパッシブ光導波路、あるいはリング共振器を構成するパッシブ光導波路と、レーザ光をガイドするローメサ型のパッシブ光導波路とを接続した構造を有する光集積素子等にも適用することができる。
【0031】
また、たとえば光L1の波長が1.55μm帯の光の場合、基板101、下部クラッド層102は、たとえばn−InPからなり、上部クラッド層104、スペーサ層106は、たとえばp−InPからなる。コア層103は、屈折率がInPよりも高くなるように、たとえば組成が1.4Qになるように調整されたInGaAsPからなる。なお、1.4Qとは、バンドギャップ波長が1.4μmという意味である。これによってコア層103はパッシブなコア層となる。
【0032】
また、エッチストップ層105は、製造時に使用するエッチング剤がスペーサ層106を選択的にエッチングでき、エッチストップ層105を殆どエッチングしないような半導体材料からなる。したがって、エッチストップ層105はたとえばInGaAsPからなる。ただし、これらの半導体材料は例示であり、本実施の形態1を限定するものではない。
【0033】
(製造方法)
つぎに、光集積素子100の製造方法の一例について説明する。図4図6は、光集積素子の製造方法の一例を説明する図である。
【0034】
はじめに、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)などの結晶成長法により、基板101上に、下部クラッド層102、コア層103、上部クラッド層104、エッチストップ層105、およびスペーサ層106を成長する。これによって、スラブ型光導波路を含む半導体積層体が形成される。
【0035】
つぎに、メサストライプマスク形成工程として、フォトリソグラフィとエッチングとにより、図4に示すように、半導体積層体の最表層であるスペーサ層106上に、第1メサ型光導波路M1および第2メサ型光導波路M2のメサストライプを形成するためのマスクパターンMA1を形成する。マスクパターンMA1はたとえばSiNからなるものである。なお、図4において、符号11は光集積素子100の第1領域10となる領域であり、符号21は第2領域20となる領域であり、符号31は中間領域30となる領域である。
【0036】
なお、マスクパターンMA1は、領域11、21、31において同時に形成しても良いし、領域毎に別々に形成してもよい。ただし、マスクパターンMA1を領域11、21、31において同時に形成すれば、第1メサ型光導波路M1と第2メサ型光導波路M2との光軸を一致させることがいっそう容易である。また、マスクパターンMA1は領域31には必ずしも形成しなくてもよい。また、図4では領域31には領域21と同じ幅でマスクパターンMA1を形成しているが、領域11と同じ幅で形成してもよい。
【0037】
つぎに、第1保護マスク形成工程として、領域21と領域31とを覆う第1保護マスクMA2を形成する。さらに、第1エッチング工程として、露出している領域11を、マスクパターンMA1をエッチングマスクとしてエッチングして、第1メサ型光導波路M1を形成する(図5参照)。このときエッチングはエッチストップ層105で停止する。第1保護マスクMA2はたとえばSiOからなる。エッチングとしてはウエットエッチングやドライエッチングを適宜選択して使用できる。
【0038】
第1保護マスクMA2を除去した後、第2保護マスク形成工程として、領域11と領域31とを覆う第2保護マスクMA3を形成する。さらに、第2エッチング工程として、露出している領域21を、マスクパターンMA1をエッチングマスクとしてエッチングして、第2メサ型光導波路M2を形成する(図6参照)。このとき、第2メサ型光導波路M2とともに中間領域30が形成される。エッチングとしてはウエットエッチングやドライエッチングを適宜選択して使用できる。第2保護マスクMA3はたとえばSiOからなる。なお、図5では基板101が露出する深さまでエッチングを行っているが、第2メサ型光導波路M2がハイメサ構造となるエッチング深さであれば特に限定されない。その後、第2保護マスクMA3を除去し、公知の所定の後処理を行う。たとえば、全面にパッシベーション膜を形成してもよい。これによって、光集積素子100が完成する。
【0039】
上述したように、第1保護マスクMA2および第2保護マスクMA3のいずれも、中間領域30となる領域31を覆うようにしているので、第1保護マスクMA2および第2保護マスクMA3を形成する際の位置ずれが中間領域30となる領域31によって吸収される。その結果、保護マスクのパターニング精度や、プロセスでの形状精度等が比較的低くても、このような簡易かつ低コストで実現できる工程で、第1メサ型光導波路M1と第2メサ型光導波路M2との間での光導波路の断線や形状不良の発生が防止され、生産性が高くなる。
【0040】
なお、中間領域30となる領域31の光の伝搬方向の長さは、使用する装置のパターニング精度やプロセスでの形状制御の精度等に応じて、位置ずれを吸収できる程度の光の伝搬方向の長さに適宜設定することができる。領域31または中間領域30の光の伝搬方向の長さは例として2μm〜10μm程度である。なお、中間領域30では、光L1は幅方向では第1領域10や第2領域20のような横方向の閉じ込め態様がなされることなく伝搬するが、中間領域30の厚さが10μm程度以下であれば、中間領域30における光損失は十分小さいものとなる。
【0041】
また、上記製造方法では、はじめに第1メサ型光導波路M1を形成し、つぎに第2メサ型光導波路M2を形成しているが、形成の順番を逆にしても良い。
【0042】
(変形例1)
図7は、メサ型光導波路と中間領域との関係の変形例1を示す模式的な上面図である。図7では、第1メサ型光導波路M1Aと第2メサ型光導波路M2Aとに対して、中間領域30Aが傾斜している。ここで、第1メサ型光導波路M1Aと第2メサ型光導波路M2Aとを導波する光L2が、中間領域30Aを通過する際には、光のフィールドが閉じ込めの無い幅方向に広がる。その結果、中間領域30Aの側面である面30A1は、中間領域30Aを通過する光L2の一部を光L2の導波方向とは異なる方向に反射する反射部として機能する。光が第2メサ型光導波路M2Aから第1メサ型光導波路M1Aへ導波する場合も同様である。なお、面30A1は第1メサ型光導波路M1Aおよび第2メサ型光導波路M2Aと重ならない領域に形成されるものである。ここで、「第1メサ型光導波路M1Aおよび第2メサ型光導波路M2Aと重ならない領域」、とは、中間領域30Aのうち第1メサ型光導波路M1Aおよび第2メサ型光導波路M2Aのメサとは交差しない領域を意味する。面30A1で反射された光Rは第1メサ型光導波路M1Aおよび第2メサ型光導波路M2Aにほとんど結合しないので、第1メサ型光導波路M1Aおよび第2メサ型光導波路M2Aに反射光が入力して導波することが抑制または防止される。
【0043】
(変形例2〜5)
図8は、メサ型光導波路と中間領域との関係の変形例2〜5を示す模式的な上面図である。図8(a)〜(d)では、第1メサ型光導波路M1Bと第2メサ型光導波路M2Bとは、対向する領域においてメサ幅が徐々に拡大するフレア部M1b、M2bをそれぞれ有している。このように、第1メサ型光導波路および第2メサ型光導波路の少なくとも一方が、対向する領域においてフレア部を有していても良い。
【0044】
また、図8(a)に示す中間領域30Bは、第1メサ型光導波路M1Bと第2メサ型光導波路M2Bとに対して傾斜するとともに、第1メサ型光導波路M1Bを挟んで紙面上側と下側で同一直線上にある。ただし、中間領域30Bは第1メサ型光導波路M1Bを挟んで紙面上側と下側で同一直線上に無くてもよい。
【0045】
また、図8(b)に示す中間領域30Cは、第1メサ型光導波路M1Bと第2メサ型光導波路M2Bとに対して傾斜するとともに、第2メサ型光導波路M2Bを挟んで紙面上側と下側との両方が、第2メサ型光導波路M1B側に向けて傾斜した形状を有している。これによって中間領域30CはV字形状を成している。ここで、中間領域30Cが第1メサ型光導波路M1Bまたは第2メサ型光導波路M2Bと接続する付け根の位置は、第1メサ型光導波路M1Bまたは第2メサ型光導波路M2Bを挟んで紙面上側と下側とで、図8(b)のように紙面左右方向にずれていても良いし、一致していても良い。
【0046】
また、図8(c)に示す中間領域30Dは、第1メサ型光導波路M1Bと第2メサ型光導波路M2Bとから離れるにしたがって厚さが増加する形状を有している。
【0047】
また、図8(d)に示す中間領域30Eは、略直線状であるとともに、第1メサ型光導波路M1Bと第2メサ型光導波路M2Bとに対して略直交している。
【0048】
変形例1と同様に、各中間領域30B〜30Dの側面である面30B1〜30D1は、中間領域30B〜30Dを通過する光の一部を、その光の導波方向とは異なる方向に反射する反射部として機能している。
【0049】
このように、変形例1〜4では、反射部は、第1メサ型光導波路および第2メサ型光導波路の両方における光の導波方向とは異なる方向に反射光を反射するように構成されている。なお、変形例2〜5の中間領域30B〜30Eの構成は、いずれも変形例1の中間領域30Aと置き換えても良い。
【0050】
(実施の形態2)
図9は、本発明の実施の形態2に係る光集積素子の模式的な側面図である。この光集積素子200は、基板101上に、第1領域210と、第2領域220と、中間領域230とを備えている。基板101上の積層構造は図1図3に示す光集積素子100と同様である。
【0051】
第1領域210は、コア層103において光L3を導波する第1メサ型光導波路M21を有する。第1メサ型光導波路M21はローメサ型の光導波路である。
【0052】
第2領域220は、コア層103において光L3を導波する第2メサ型光導波路M22を有する。第2メサ型光導波路M22はハイメサ型の光導波路である。
【0053】
中間領域230は、第1領域210と第2領域220とが光学的に接続する領域である第1領域210と第2領域220との間に形成される。光L3は第1領域210から中間領域230を通過して第2領域220へと入力する。中間領域230では、光L3は高さ方向では閉じ込められるが、幅方向では第1領域210や第2領域220のような横方向の閉じ込め態様がなされることなく、伝搬する。
【0054】
光集積素子100と同様に、第1メサ型光導波路M21の光L3の導波方向と交差する断面と、第2メサ型光導波路M22の光L3の導波方向と交差する断面と、中間領域230の、上記各断面と平行な断面とを規定すると、第1メサ型光導波路M21の断面と第2メサ型光導波路M22の断面とでは、互いに断面が異なる。また、中間領域230の断面は、上記各断面の両方を包含している。そのため、この光集積素子200は、光集積素子100と同様に、製造時に、マスクのパターニング精度や、プロセスでの形状精度等が比較的低くても、第1メサ型光導波路M21と第2メサ型光導波路M22との断線が生じにくいものとなっている。そのため、この光集積素子200は、製造歩留まりが高く、低コストで生産性が高いものである。
【0055】
さらに、この光集積素子200では、側面側(すなわちメサ型光導波路の幅方向)から見たときの中間領域230の側面201、202が、光L3の導波方向に対して傾斜している。その結果、光L3が側面201で反射して発生した反射光が第1メサ型光導波路M21に入力して導波することが抑制または防止される。同様に、光が第2メサ型光導波路M22から第1メサ型光導波路M21へと導波する場合にも、その光が側面202で反射して発生した反射光が第2メサ型光導波路M22に入力して導波することが抑制または防止される。
【0056】
(実施の形態3)
図10は、実施の形態3に係る光集積素子の模式的な側面図である。この光集積素子300は、基板101上に、第1領域310と、第2領域320と、中間領域330とを備えている。
【0057】
第2領域320は、図3に示す光集積素子100の第2領域20において、上部クラッド層104、エッチストップ層105、およびスペーサ層106を、上部クラッド層304に置き換えた構成を有する。第2領域320は、コア層103において光L4を導波する第2メサ型光導波路M32を有する。第2メサ型光導波路M32はハイメサ型の光導波路である。光L4の波長が1.55μm帯の光の場合、上部クラッド層104はたとえばp−InPからなる。
【0058】
一方、第1領域310は、図3に示す光集積素子100の第1領域10において、コア層103、上部クラッド層104、エッチストップ層105、およびスペーサ層106を、活性コア層303、上部クラッド層304、エッチストップ層305、スペーサ層306、コンタクト層307、上部電極308に置き換えた構成を有する。
【0059】
たとえば光L4の波長が1.55μm帯の光の場合、活性コア層303、上部クラッド層304、エッチストップ層305、スペーサ層306、コンタクト層307は、たとえば、それぞれ、InGaAsP、p−InP、InGaAsP、p−InP、InGaAsPからなる。上部電極308はたとえばAuZnからなる。活性コア層303はたとえば単一または多重量子井戸構造を有する。また、活性コア層303は分離閉じ込めヘテロ構造(SCH:Separate Confinement Heterostructure)を有していてもよい。
【0060】
第1領域310は、活性コア層303において光L4を導波する第1メサ型光導波路M31を有する。第1メサ型光導波路M31はローメサ型の光導波路である。
【0061】
また、基板101の裏面には下部電極309が形成されている。下部電極309はたとえばAuGeNi/Auからなる。
【0062】
中間領域330は、図3に示す光集積素子100の中間領域30において、上部クラッド層104、エッチストップ層105、およびスペーサ層106を、上部クラッド層304に置き換えた構成を有する。中間領域330は、第1領域310と第2領域320とが光学的に接続する領域である第1領域310と第2領域320との間に形成される。光L4は第1領域310から中間領域330を通過して第2領域320へと入力する。中間領域330では、光L4は高さ方向では閉じ込められるが、第1領域310や第2領域320のような横方向の閉じ込め態様がなされることなく、伝搬する。
【0063】
実施の形態1に係る光集積素子100では、第1メサ型光導波路M1と第2メサ型光導波路M2とが同様なパッシブのコア層103を有しているが、本実施の形態3に係る光集積素子300のように、第1メサ型光導波路および第2メサ型光導波路のどちらか一方のコア層が活性コア層でもよい。
【0064】
なお、このような構成の光集積素子300は、ハイメサ型光導波路で構成される、曲がり光導波路、マッハツェンダー干渉計を構成するパッシブ光導波路、あるいはリング共振器を構成するパッシブ光導波路と、活性コア層を有し、ローメサ型光導波路で構成される半導体レーザとを接続した構造を有する光集積素子に適用される。
【0065】
この光集積素子300の半導体積層構造は、たとえば以下のように形成することができる。すなわち、まず基板101上に、下部クラッド層102、コア層103、上部クラッド層304を順次積層する。つぎに、第1領域310においてコア層103および上部クラッド層304をエッチング等で除去する。その後、除去した部分に、活性コア層303、上部クラッド層304、エッチストップ層305、スペーサ層306、およびコンタクト層307を順次バットジョイント成長する。
【0066】
また、この光集積素子300では、第2領域320と中間領域330とを同様の半導体積層構造としているが、中間領域330を第1領域310と同様の、バットジョイント成長等により形成される半導体積層構造としてもよい。
【0067】
なお、上記実施の形態では、第1メサ型光導波路がローメサ型であり、第2メサ型光導波路がハイメサ型であるが、本発明はこれに限定されない。第1メサ型光導波路および第2メサ型光導波路のメサ型の組み合わせは任意である。すなわち、第1メサ型光導波路はローメサ型でもハイメサ型でもよく、第2メサ型光導波路もローメサ型でもハイメサ型でもよい。したがって、第1メサ型光導波路および第2メサ型光導波路がいずれもローメサ型またはハイメサ型でもよい。
【0068】
また、たとえば第1メサ型光導波路および第2メサ型光導波路がいずれもローメサ型である場合に、たとえば導波路構造を形成するための半導体材料が、第1メサ型光導波路と第2メサ型光導波路とで異なる場合がある。この場合、第1メサ型光導波路と第2メサ型光導波路とで、光閉じ込め係数や実効屈折率等が異なるために、メサの高さ方向の光閉じ込め態様が互いに異なる場合があるが、本発明はそのような場合にも適用できる。
【0069】
また、第1メサ型光導波路または第2メサ型光導波路は、ハイメサの両側が埋め込み半導体層で埋め込まれた埋め込みメサ型の構造でもよい。
【0070】
また、第1メサ型光導波路および第2メサ型光導波路のパッシブ/アクティブの組み合わせも任意である。すなわち、第1メサ型光導波路はアクティブ光導波路でもパッシブ光導波路でもよく、第2メサ型光導波路もアクティブ光導波路でもパッシブ光導波路でもよい。したがって、第1メサ型光導波路および第2メサ型光導波路がいずれもアクティブ光導波路でもよい。
【0071】
また、上記実施の形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0072】
10、210、310 第1領域
11、21、31 領域
20、220、320 第2領域
30、30A、30B、30C、30D、30E、230、330 中間領域
30A1、30B1、30C1、30D1、30E1 面
100、200、300 光集積素子
101 基板
102 下部クラッド層
103 コア層
104、304 上部クラッド層
105、305 エッチストップ層
106、306 スペーサ層
201、202 側面
303 活性コア層
307 コンタクト層
308 上部電極
309 下部電極
H1、H2 高さ
L1、L2、L3、L4、R 光
M1、M1A、M1B、M21、M31 第1メサ型光導波路
M2、M2A、M2B、M22、M32 第2メサ型光導波路
M1b、M2b フレア部
MA1 マスクパターン
MA2、MA3 保護マスク
S1、S2、S3 断面
W1、W2 幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10