(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
<積層発電装置の実施形態1>
以下、本発明の実施の形態にかかる積層発電装置について説明する。
図1(a)に示すように、積層発電装置10は、発電体としてシート状の振動発電体1が複数積層されて構成される。複数層に設けられた振動発電体1および支持部材2は、密閉構造の容器15内に収容される。容器15内には、媒質16が充填されている。なお、特に示した場合を除き、
図1等においては、振動発電体の詳細な構造およびリード線等については図示を省略する。
【0023】
容器15は、積層された振動発電体1等を収容し、内部に媒質16が密閉されている。前記積層された振動発電体1では、隣接する振動発電体1の間に支持部材2を介在させることで、積層されるそれぞれの振動発電体1の間に空間が形成され、前記振動発電体1の間の空間は容器内に密閉される媒質16で満たされている。容器15に対して圧力や振動などの外力を与えることで、容器15の一部または全部を変形させることができる。この際、容器15の変形に伴い、容器15内の媒質16の圧力が変化し、積層されるそれぞれの振動発電体1の表面に対して前記媒質16の圧力変化を略全体(支持部材2が介在する部分を除く)にわたって略均一に伝達させることができる。したがって、振動発電体1の厚さ方向への圧力を変動させることができ、振動発電体1の厚さ方向への圧縮変形および伸長変形を発生させることができる。
【0024】
このような容器15の材質や形状は特に限定されないが、例えば、金属、プラスチック、ゴムのいずれか、またはこれらの組み合わせで構成することができる。また、容器15の形状としては、例えば、箱型の容器であってもよく、また、エアマット、エアベッド、ウォーターマット、ウォーターベッド等に利用される密閉容器等を適用することができる。
【0025】
容器15内に封入される媒質16は、特に限定されないが、流動性を有する気体や液体のいずれであっても良く、空気や水、油など、容器15の種類や使用態様等に応じて適宜選択される。例えば、エアマット、エアベッド等の場合には、通常空気となり、ウォーターマット、ウォーターベッド等の場合には水が用いられる。
【0026】
容器15の内面の一部には振動発電体1が設置される。さらに、この振動発電体1上に、支持部材2を介して、複数の振動発電体1が積層される。すなわち、振動発電体1同士の間には支持部材2が設けられ、振動発電体1同士は支持部材2を介して接合されることが好ましく、振動発電体1と支持部材2との接合方法としては、接着接合、粘着接合、吸着接合などを利用することができるが、特に限定されるものではない。なお、
図1(a)は、容器15の底面の一部に振動発電体1が直接接するように配置した実施形態を示すが、容器15の内面(例えば底面)と振動発電体1との間に支持部材2を介在させることで、容器15の内面と振動発電体1との間に空間を形成し、その空間に媒質16を満たすようにしてもよい。
【0027】
支持部材2は、積層されるそれぞれの振動発電体1同士の間に間隔を空けて配置される。すなわち、前記支持部材が介在されない振動発電体1同士の間に空間が形成される。振動発電体1の平面内における支持部材2の配置は、積層されるそれぞれの振動発電体1同士の間に形成される空間に容器15内の媒質16が満たされ、そのことによって前記媒質16の圧力変化が前記積層されるそれぞれの振動発電体1の表面に伝達できるようであれば特に限定されるものではなく、例えば、振動発電体1の平面内において、支持部材2を所定の間隔を空けて点在させる配置とすることができる。支持部材2は、積層されるそれぞれの振動発電体1の平面内において、略同一の位置に設けられることが好ましい。すなわち、正面視において、支持部材2は、積層方向に対して略整列配置されることが好ましい。このようにすることで、支持部材2の自重によって、振動発電体1が撓むことを防止することができる。
【0028】
支持部材2の材質は、特に限定されないが、比較的硬質な金属系材料、プラスチック系材料、ゴム系材料などを適用することができる。なお、積層発電装置10に比較的大きな外力が加えられるような環境で使用される場合には、支持部材2としては、ゴムなどに代表される弾性体であることが望ましい。弾性体としては、例えば、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、フッ素系ゴム、天然ゴムなどのゴムを使用することができる。
【0029】
図2(a)に示すように、振動発電体1は、主にエレクトレット誘電体3、電極5a、5b、接合部7等から構成される。エレクトレット誘電体3の両面には、エレクトレット誘電体3と対向するように、それぞれ電極5a、5bが配置される。また、エレクトレット誘電体3と電極5bとの間には接合部7が設けられる。接合部7は、エレクトレット誘電体3と電極5bとを接合するためのものである。すなわち、エレクトレット誘電体3と電極5bとは、接合部7を介して接合され、互いの間には、接合部7の厚さに応じた隙間(エアギャップ)が形成される。接合部7の材質は特に限定されないが、例えば絶縁性の接着剤で構成される。
【0030】
電極5aとエレクトレット誘電体3とは、略全面にわたって接合されている。電極5aとエレクトレット誘電体3とは、例えば熱融着や接着で接合される。但し、接着剤を用いる場合には、接着剤層をできるだけ薄くすることが望ましい。例えば、電極5a、5b間の距離やエレクトレット誘電体3の厚さに対し、十分薄くすることが望ましい。
【0031】
電極5a、5bは、導体層6と樹脂層8が積層された二層構造である。このような電極5a、5bは、樹脂シートと金属箔とを接着剤や熱溶着等によって接合したものであってもよく、樹脂シートの表面に金属蒸着や金属めっきを施したものであってもよい。いずれにせよ、シート(フィルム)状の樹脂上に導体層を形成できればよい。
【0032】
なお、導体層6を構成する導体としては、アルミニウム、錫、銅あるいはこれらの合金など適宜選択することができる。
また、樹脂層8を構成する樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド系の樹脂(例えばカプトン(登録商標))、フッ素系の樹脂(例えばフルオロエチレンプロピレンやポリテトラフルオロエチレン)などのプラスチック材料や、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、フッ素系ゴム、天然ゴムなどのゴム材料を用いることもできる。
【0033】
二層構造の電極5a、5bは、周囲との電気絶縁を確保し、防水性や防湿性を向上させることができる点で望ましい。また、電極5bにおいては、さらに、外力等に対する電極の追従性を向上させることができる点で望ましい。例えば、薄い導体のみでは、外力によって変形した後、元の形状への復元力が小さい。しかし、導体のみで剛性を高めようとすると、導体部の厚みを厚くする必要があるため重量増の問題がある。また、これにより、電極の動きが鈍くなる恐れがある。
【0034】
これに対し、本実施形態では、樹脂層8を設けることで、重量増による問題を抑制するとともに、外力に対する電極5bの追従性、すなわち剛性を高めることができる。なお、導体層6のみでも、例えば別途絶縁部材を介在させるなどの方法によって電気絶縁性等を確保できれば、導体層6のみで電極5a、5bを形成しても良い。
【0035】
エレクトレット誘電体3の材質としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニルなどの樹脂を用いることができる。また、使用条件に応じて、例えば高温特性に優れるポリイミド系の樹脂(例えばカプトン(登録商標))やフッ素系の樹脂(例えばフルオロエチレンプロピレンやポリテトラフルオロエチレン)を用いることができる。また、ゴム材料として、例えばニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、フッ素系ゴムなどを用いることができる。
【0036】
図3(a)に示すように、エレクトレット誘電体3の両面は、互いに逆の極性の電荷で帯電している。なお、エレクトレット誘電体3の片面にのみ、いずれか一方の極性の電荷が帯電していてもよく、あるいはエレクトレット誘電体3の両面にいずれか一方の極性の電荷が帯電していてもよく、エレクトレット誘電体3の両表面間(表面と裏面)での電位差(表面電位差)がある状態であればよい。このようなエレクトレット誘電体3は、例えば絶縁性を有する樹脂シートや樹脂フィルム等の表面に、コロナ放電によって帯電処理を施すことで形成することができる。
【0037】
エレクトレット誘電体3の表面と裏面との電位差の設定は、電極5a、5bとエレクトレット誘電体3との間のエアギャップ長(または接合部7の厚み)に依存する。すなわち、当該電位差は、当該エアギャップでの空気放電による電位差低下が少なくなるように設定されることが望ましい。
【0038】
振動発電体1におけるエレクトレット誘電体3と電極5a、5bは、いずれも可撓性を有する。例えば、エレクトレット誘電体3は、上述した樹脂等で構成される。したがって、振動発電体1は、全体として可撓性を有し、様々な形態の設置場所に適した変形が可能である。
【0039】
図2(a)に示すように、接合部7以外の部位において、エレクトレット誘電体3と電極5bとの間には非接合部9が形成される。すなわち、非接合部9においては、エレクトレット誘電体3と電極5bの少なくとも一方が変形することで、互いの距離が容易に変化する。例えば、電極5bの変形によって、電極5bを、エレクトレット誘電体3の表面と接触させることもできる。
【0040】
なお、
図3(b)に示すように、多孔質材からなるエレクトレット誘電体3aを用いることもできる。内部に微細な空孔4が存在する多孔質材の両面に電圧を付与すると、空孔4内において容易にコロナ放電が生じる。このコロナ放電によって空孔壁面および空孔壁面近傍にも帯電したエレクトレット誘電体3aを容易に製造できる。なお、エレクトレット誘電体3aの空孔壁面および空孔壁面近傍の帯電状態は、
図3(b)に示すように、電圧印加方向(この場合にはエレクトレット誘電体3aの厚さ方向)に正電荷と負電荷に帯電した領域が形成される状態となっていると考えられる。また、エレクトレット誘電体3aの内部に空孔4が存在すると、エレクトレット誘電体3a全体として変形が容易となる。したがって、電極5a、5bだけでなく、エレクトレット誘電体3a自体をもより小さな外力で容易に変形させることができる。このため、電極5bとエレクトレット誘電体3aとの間のギャップ長だけでなく、エレクトレット誘電体3aの厚さも変化し易くなる。したがって、電極5a、5b間の距離が変化し易くなるとともに、その変化量も大きくなるため、双方の電極に静電誘導される電荷量も多くなり、発電効率が向上する。
【0041】
多孔質性のエレクトレット誘電体3aの材質としては、絶縁体であって、エレクトレット誘電体3と同様の材料を多孔質化した多孔質プラスチックまたは多孔質ゴムや、シート状繊維体を用いることができる。なお、多孔質プラスチックには、発泡プラスチックも含まれる。また、多孔質ゴムには、発泡ゴムも含まれる。シート状繊維体としては、不織布やフェルトを用いることができる。中でも不織布は空気清浄機やマスク等においてエレクトレットフィルターとして利用されており、良好なエレクトレットの特性を有する。なお、以下の説明では、空孔4のないエレクトレット誘電体3を用いた例について示す。
【0042】
振動発電体1の電極5bとエレクトレット誘電体3との間に形成される隙間(エアギャップ)は、振動発電体1の外部に対して密封されることが望ましい。例えば、
図4(a)に示すように、振動発電体1の外周部は、シール部材13によって覆われてシールされる。シール部材13は、接着剤等によって電極5a、5b等に接着される。
【0043】
この場合、シール部材13としては、例えば、水密性(防水性または防湿性)または気密性の高い材料を選択することが好ましい。このようにすることで、容器15内の媒質16が、電極5bとエレクトレット誘電体3との間に設けた隙間(エアギャップ)に浸入することを防止することができる。また、媒質16が水である場合にあっては、電極5a、5bが腐食することを防止することができる。更には、エレクトレット誘電体3の表裏面の電位差が水分の存在によって低下することを防止することができる。
【0044】
また、別途シール部材13を用いなくても、
図4(b)に示す振動発電体1bのように、電極5a、5bを構成する樹脂層8を、導体層6の外周からはみ出すように形成し、はみ出した上下の樹脂層8同士を接合させて、シール部13aを形成しても良い。はみ出した上下の樹脂層8同士の接合方法は、媒質16の浸入を防止できる方法であれば特に限定されるものではないが、例えば、接着剤による接合方法や、加熱融着による接合方法を採用することができる。このように、振動発電体1の電極5bとエレクトレット誘電体3との間に形成される隙間(エアギャップ)への媒質16の浸入を防止できるシール方法であれば、そのシール方法は図示した例には限られず、どのような形態でも良い。
【0045】
次に、振動発電体1の発電機構について説明する。
図5は
図2(a)のA部拡大図である。
図5(a)に示すように、例えば定常状態(外力が付与されていない状態。以下同様。)では、電極5bとエレクトレット誘電体3との間には、非接合部9において接合部7の厚みに応じたエアギャップ長Bが形成される。この状態から、
図5(b)に示すように、外力Cが振動発電体1の厚さ方向に付与されると、電極5b(およびエレクトレット誘電体3)が変形する。この際、エアギャップ長Bが短くなる方向へ変化し、電極5bとエレクトレット誘電体3とが接触部11で接触する場合もある。
【0046】
すなわち、接触部11に対応する位置においては、電極5bとエレクトレット誘電体3の厚さ方向の距離(エアギャップ長B)が0になるまで変化できる。この距離変化に応じて、電極5a、5bの双方に電荷が静電誘導されて発電する。なお、
図5(b)の状態から
図5(a)の状態に戻る際にも、同様に電極5bとエレクトレット誘電体3との間の距離変化(エアギャップ長Bが長くなる方向へ変化)に応じた静電誘導による発電が行われる。なお、電極5bとエレクトレット誘電体3との距離変化に伴う発電出力電圧は、電極5bとエレクトレット誘電体3とが変形によって接触する直前および剥離した直後が最も高くなる。
【0047】
このように、この実施形態で用いた振動発電体1は、電極5bとエレクトレット誘電体3とを厚さ方向に相対的に変位させて、その双方の距離に相当するエアギャップ長Bを変化させることで効率よく発電をさせることができる。
【0048】
ここで、接合部7の材質にもよるが、外力による非接合部9のエアギャップ長Bの変化と比較して、接合部7における電極5bとエレクトレット誘電体3との距離の変化は小さい。このように、接合部7の部位では、電極5bとエレクトレット誘電体3との距離が変化しにくいため、発電には寄与しにくい。したがって、接合部7は、できるだけ小さくし、かつ振動発電体1に占める接合部7の総面積をできるだけ小さくすることが望ましい。また、互いに隣接する接合部7間の距離は、非接合部9のエアギャップ長Bを保持することができる程度の距離にすることが望ましい。
【0049】
なお、接合部7は、エレクトレット誘電体3の表面において、例えば、ドット状、ストライプ状、格子状などの繰り返しパターンで配置される。
【0050】
なお、接合部7は、接着剤に代えて、電極5bとエレクトレット誘電体3とを部分的に直接熱融着により接合してもよい。この場合、接合部以外の部位が、非接合部9となる。この場合であっても、非接合部9では、電極5bとエレクトレット誘電体3との間に、微小な隙間が形成される。なお、非接合部9において、電極5bとエレクトレット誘電体3とが部分的に接触していても良い。また、接合部7には、接着剤に代えて、他の部材を介して電極5bとエレクトレット誘電体3とを接合しても良い。
【0051】
図1(a)に示すように、積層発電装置10では、複数の振動発電体1が支持部材2を介して接合されて積層され、振動発電体1、1間には空間が形成される。前記振動発電体1、1間に形成される空間には、容器15内に密閉された媒質16が満たされている。したがって、容器15に外力が付与されて容器15が変形し、例えば容器15内の媒質16が圧縮されて媒質16の圧力が増加すると、
図1(b)に示すように、媒質16の圧力変化が積層されるそれぞれの振動発電体1の表面に伝達され、それぞれの振動発電体1に付与される圧力(図中矢印G)が増加する。なお、容器15の下面に外力が付与された場合には、媒質16の圧力変化だけでなく、付与された外力によって生じる容器15の下面の変形や振動が、容器15の下面と接触する振動発電体1に付与される場合もある。
【0052】
振動発電体1の厚さ方向の圧力の変化によって、前述したように、電極5bとエレクトレット誘電体3との距離(エアギャップ長)を変化させることができる。すなわち、非接合部9における電極5bとエレクトレット誘電体3との間のエアギャップ長が変化することで(
図5参照)、発電出力を得ることができる。
【0053】
なお、積層されるそれぞれの振動発電体1の間に空間を設けた状態で振動発電体1同士を接合させるための支持部材2は、各層の振動発電体1同士の空間に容器15内に密閉される媒質16が回り込むように配置される。このため、振動発電体1を直接積層させた場合と比較して、支持部材2を介在させて振動発電体1を積層させた場合には、各層の振動発電体1の略全面(支持部材2で接合される部分を除く)に略均等な力を付与することができるため、発電出力を向上させることができる。なお、前述したように、振動発電体1の外周はシールされているため、媒質16が電極5bとエレクトレット誘電体3との間の隙間(エアギャップ)に浸入することがない。したがって、媒質16の圧力変化によって、電極5bとエレクトレット誘電体3との間のエアギャップ長を変化させることができる。
【0054】
なお、容器15へ付与される外力が除荷されると、容器15内の媒質16の圧力が定常状態に戻る。この際にも、
図5に示したように、各層の振動発電体1の形状も定常状態の形状に戻るため、それぞれの振動発電体1の非接合部9において、電極5bとエレクトレット誘電体3との距離が変化する。
このように、この積層発電装置10は、容器15に加わる外力の変化により容器15内の媒質16の圧力変化を生じさせ、その媒質16の圧力変化を各層の振動発電体1に伝達させて各層の振動発電体1を変形させることで、発電を効率よく行うことができる。
【0055】
なお、振動発電体1が外力により変形し、電極5bとエレクトレット誘電体3とが接触および剥離を繰り返すと、その際に、電極5bとエレクトレット誘電体3との間で、空気放電が生じることが考えられる。このような空気放電が生じると、エレクトレット誘電体3の表面と裏面との電位差が低下することが考えられる。したがって、使用するにつれて発電が行われなくなる恐れがある。しかし、発明者らは、このような接触と剥離とが繰り返えされても、“エレクトレット誘電体3の表面と裏面との電位差が低下することによって、直ちに発電が行われなくなる現象”は生じないことを見出した。したがって、積層発電装置10を構成する振動発電体1は、外力によって、電極5bとエレクトレット誘電体3とが接触および剥離を繰り返すように変形させることが望ましい。
【0056】
また、本発明では、
図2(b)に示すように、エレクトレット誘電体3と、電極5a、5bの両方の間に接合部7が設けられた振動発電体1aを用いることもできる。振動発電体1aは、振動発電体1と略同様の構成であるが、電極5aとエレクトレット誘電体3との間にも、部分的な接合部7と非接合部9とが設けられる。
【0057】
ここで、
図2(a)に示す振動発電体1は、一方の電極5aがエレクトレット誘電体3と全面にわたって接合されているため、電極5bとエレクトレット誘電体3との距離変化でのみ発電が行われる。しかし、
図2(b)に示すように、電極5a、5bの両方とエレクトレット誘電体3との間に非接合部9、9(エアギャップ)を形成し、両方のエアギャップの距離変化により発電を行う振動発電体1aにおいては、エレクトレット誘電体3と電極5aとの間のエアギャップと、エレクトレット誘電体3と電極5bとの間のエアギャップの両方の距離変化の方向(減少する方向あるいは増加する方向)とタイミング(位相)が一致しないと、電極5a、5b間に生じる発電出力電圧が互いに打ち消しあってしまう恐れがある。
【0058】
したがって、
図2(b)の振動発電体1aの全体で効率良く発電を行うためには、電極5a、5bとエレクトレット誘電体3との距離変化の方向(減少する方向あるいは増加する方向)とタイミング(位相)を振動発電体1aの各部で一致させることが望ましい。例えば、電極5a、5bとエレクトレット誘電体3とが接触および剥離を繰り返す場合には、この接触および剥離のタイミングを振動発電体1aの各部で一致させることが望ましい。
【0059】
また、振動発電体1aでのエレクトレット誘電体3の表裏で電極5a、5bとエレクトレット誘電体3との距離変化の方向とタイミングを一致させるために、エレクトレット誘電体3の表裏における接合部7の平面配置を一致させることが望ましい。
【0060】
なお、本発明では、容器15内の媒質16の圧力変化が、振動発電体1aの両面の略全体(支持部材2が接合される部分は除く)にわたって略均一かつ略同時に付与される。このため、容器15内の媒質16の圧力変化が生じた際に、振動発電体1aの表裏の電極5a、5bへ媒質16を介して付与されるそれぞれの圧力変化は、互いに方向およびタイミングが略一致する。したがって、概ね、電極5a、5bとエレクトレット誘電体3との接触および剥離のタイミングを振動発電体1aの各部で一致させることができる。
【0061】
一方、
図2(a)の振動発電体1では、電極5bとエレクトレット誘電体3との距離変化のみによって発電されるため、
図2(b)の振動発電体1aのように電極5a、5bのそれぞれとエレクトレット誘電体3との双方の距離変化の方向とタイミング(位相)を一致させる必要がない。また、接合部7の厚み分だけ、全厚を薄くすることができる。このように、構造を簡易にできることによるコスト減や、薄肉化が可能である点などを考慮すれば、発電量は若干下がるものの、振動発電体1を用いることが望ましい。
【0062】
このように、使用条件等に応じて、振動発電体1、1aは適宜選択することができる。なお、以下の説明では、振動発電体1を用いた例について説明するが、振動発電体1aを用いることもできる。
【0063】
なお、積層発電装置10によって得られた発電出力を容器15の外部に取り出す場合には、例えば、各振動発電体1に接続されたリード線を通すための貫通穴を容器15に設ければよい。貫通穴には、リード線を挿通した後に気密性または水密性のシール処理を施せばよい。また、容器15に、気密性・水密性を有する端子を設けて、前記端子にリード線を接続しても良い。
【0064】
以上説明したように、積層発電装置10を構成する振動発電体1は、接合部7によって、電極5bとエレクトレット誘電体3との間に、所定のエアギャップ長を保持しているため、外力による電極5bとエレクトレット誘電体3の変形代(電極5bとエレクトレット誘電体3との距離が変化するような厚み方向の変形代)を確保することができる。また、接合部7の厚みおよび支持部材2の厚みを適正化することで、積層発電装置10を構成する容器15へ付与される外力または振動に対して、積層される各層の振動発電体1での電極5bとエレクトレット誘電体3との接触および剥離を繰り返させることもできる。このため、高い発電出力を得ることができる
【0065】
また、積層発電装置10では、複数の振動発電体1が、振動発電体1同士の間に空間を形成するように支持部材2を介して積層される。したがって、容器15内において、振動発電体1同士の間に形成される空間に媒質16を満たすことができる。このため、容器15に外力が付与された際に、媒質16を介して全ての振動発電体1に、厚さ方向に略均等な力を加えることができる。このため、高い発電出力を得ることができる。
【0066】
また、振動する物体等に容器15が設置されるなどして容器15自体が振動する場合には、容器15から各支持部材2を介して、各振動発電体1を振動させることができる。振動発電体1が振動すると、支持部材2を支点にして、支持部材2と接合する部位以外の振動発電体1の部位が、撓み変形する。このような、振動発電体1の撓み変形によって、非接合部9において電極5bとエレクトレット誘電体3との接触および剥離を繰り返させることもできる。すなわち、積層発電装置10は、容器15に加わる外力または振動による容器15の変形や、容器15自体の振動によって、発電出力を得ることができる。
【0067】
<積層発電装置の実施形態2>
次に、他の実施の形態について説明する。なお、以下の説明において、積層発電装置10と同様の機能を奏する構成については
図1等と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0068】
図6に示す積層発電装置10aには、容器15にピストン機構が設けられている。すなわち、容器15の一部に、外部に開口するシリンダ25が形成され、このシリンダ25に可動部23が挿入されている。可動部23の外周には、シリンダ25の内周との間をシールするシール部材27が設けられる。シール部材27は例えばゴム製のOリングである。可動部23の上部には振動板29が設けられる。なお、振動板29を用いずに直接可動部23に外力が付与されても良い。
【0069】
可動部23は、シリンダ25内を上下に摺動可能である。したがって、振動板29に対して上下方向に外力が付与されると、これに伴って可動部23がシリンダ25内で上下に摺動する。可動部23の上下動によって、容器15内の媒質16の圧力が変化する。この結果、振動発電体1の厚さ方向に加わる力(圧力)が変化するため、振動発電体1の電極5bとエレクトレット誘電体3とのエアギャップ長が変化して(
図5参照)発電出力を得ることができる。
【0070】
なお、ピストン機構部のサイズや材質、構造は、図示した例には限られない。容器15のサイズ、想定される外力、媒質16に対して付与したい圧力等を考慮して、可動部23の断面積やシリンダ25の内径等が設定される。また、ピストン機構部における可動部23の動作によって、効率良く媒質16に対する圧力変動を付与するためには、容器15、可動部23、シリンダ25等には高い剛性が必要である。したがって、要求される剛性を確保するために、適した材質を選択する。なお、このような材質としては、例えば、金属やプラスチック材を選択することができ、適切な厚みで設計される。
【0071】
また、媒質16は、前述した通り、特に限定されないが、シール部材27によってシールがしやすく、ピストン機構部における摩耗や、可動部23の動作に対して効率良く圧力変動するものが望ましい。例えば、体積圧縮率が低く、適度な粘性と潤滑性を有する絶縁性のオイルを用いることが望ましい。
【0072】
また、容器15の底面に振動発電体1を配置するのではなく、可動部23の先端側に設けても良く、容器15内に設けられた他の構造物等に設けても良い。また、ピストン構造部は、容器15の上方ではなく、側面や底面など、いずれの方向に設けても良く、また、複数個所に設けても良い。
【0073】
このように、積層発電装置10aによっても、積層発電装置10と同様に、容器15に加わる外力によって、発電出力を得ることができる。なお、容器15全体が振動する場合であっても、容器15や支持部材2等を介して振動発電体1を振動させることができるため、振動発電体1を発電させることができる。
【0074】
<積層発電装置の実施形態3>
図7に示す積層発電装置10bは、タイヤ・ホイール組立体を容器15として用いたものである。すなわち、タイヤ15aとホイール18で囲まれた密閉空間の内部に複数の振動発電体1で構成される積層体が配置されたものである。タイヤ15aとしては、図示したような自動車用のタイヤであっても良く、自転車やバイクのタイヤであっても良い。
【0075】
ホイール18の外周面側には、振動発電体1と支持部材2とが積層されて配置される。
図7(a)に示すように、振動発電体1は、ホイール18の外周方向に沿って湾曲して積層され、支持部材2は、ホイール18の外周方向に沿って所定の間隔で配置される。積層されるそれぞれの振動発電体1同士の間には支持部材2が介在されることによって空間が形成され、その空間には媒質16が満たされる。また、
図7(b)に示すように、支持部材2は、タイヤ15aの幅方向においては、振動発電体1の両端部近傍に設けられる。なお、媒質16は、一般的には空気であるが、窒素ガスでもよい。また、
図7に示す積層発電装置10bでは、複数の振動発電体1を積層した構成で積層発電装置10を構成しているが、本発明の積層発電装置10は複数の振動発電体1を用いて積層するという構成に限定されるものではない。例えば、1つの帯状の振動発電体1をホイール18の外周にロール状に複数回巻きつけることによって積層する構成としてもよい。この場合にも、ホイール18の外周に複数回巻きつけることによって積層される振動発電体1の層間に支持部材2を介在させることによって、振動発電体1の層間に空間を形成し、その空間に媒質16を満たすことができる。
【0076】
タイヤ15aが回転すると(図中矢印J)、路面と接触する部分では、タイヤ15aが大きな変形を受ける。したがって、タイヤ15aおよびホイール18とで囲まれた密閉容器内の媒質16は、前述した容器15の場合と同様に、外力による圧力変動を受ける。したがって、この媒質16の圧力変動によって、各振動発電体1に付与される力(圧力)が変化して、効率よく発電することができる。
【0077】
また、自動車の走行中には、タイヤ15a自体の回転による振動や、路面状況に応じた振動が発生する。したがって、自動車の走行中でのタイヤ15aとホイール18の回転に付随した振動が、支持部材2などを介して振動発電体1に伝達されることによっても発電が行われる。例えば、振動発電体1に振動が伝達されると、支持部材2を支点として、支持部材2と接合する部位以外の振動発電体1の部位が撓み変形をすることによって、非接合部9において電極5bとエレクトレット誘電体3との接触および剥離を繰り返させて発電を得ることができる。
【0078】
また、タイヤ15aの回転に伴い、タイヤ15aとホイール18とで囲まれた密閉空間内には、タイヤ15aやホイール18の回転運動に対して相対的に回転方向とは逆向きの媒質16の流れ(気流)が発生する。特にタイヤ15aの回転速度が変化する際に、媒質16の大きな流れ(気流)が発生しやすい。したがって、積層された振動発電体1同士の間に気流が発生する。この気流によって、振動発電体1同士の間に渦流(カルマン渦)を発生させ、この渦流によって振動発電体1を振動・変形させて、発電を行うこともできる。
【0079】
<発電システムの実施形態1>
次に、前述した積層発電装置を用いた発電システムの構成について説明する。なお、以下の例では、振動発電体1を用いた積層発電装置10を適用した例を示すが、他の積層発電装置を用いてもよい。なお、以下の図において、支持部材2および振動発電体1の詳細な構造については図示を省略する。
【0080】
図8に示す発電システム20は、積層発電装置10を構成する複数の振動発電体1のそれぞれについて、同一の方向に外力を受けた際に、正極性となる電極同士および負極性となる電極同士が、それぞれ電気的に接続される。このようにして構成された電気回路は、一つの整流回路17に接続される。整流回路17は、例えば4つのダイオードを組み合わせた全波整流回路が用いるのが好ましいが、1つのダイオードによる半波整流回路を用いることもできる。ダイオードとしては、順方向の抵抗が小さく、逆方向の抵抗が大きく、かつ、時間応答速度が速く、ロスの少ないものが望ましい。整流回路17は、振動発電体1からの出力電圧である交流電圧を直流電圧に変換する。
【0081】
整流回路17は、蓄電回路19と接続される。蓄電回路19は、コンデンサや充電可能なバッテリーなどの蓄電部とスイッチなどから構成される。蓄電回路19は整流回路17で整流された出力電圧を蓄電する。なお、コンデンサあるいはバッテリーは、充電状態での漏れ電流が小さく、充電ロスの小さなものが望ましい。
【0082】
ここで、それぞれの振動発電体1の電極に誘起される電荷の極性は、外力または振動によって与えられた振動発電体の変形状態や変形方向(圧縮方向や伸長方向)で決まる。したがって、振動発電体1の発電出力電圧は交流電圧となる。この際、積層発電装置10に与えられる外力または振動に対して、それぞれの振動発電体1の発電出力の極性と位相とが概ね一致する場合には、発電システム20のように、各振動発電体1の電極同士を発電出力の極性を揃えて並列に接続することができる。
【0083】
このようにすることで、各振動発電体1が極性を合わせるようにして並列に接続された回路に1つの整流回路17を接続することができる。したがって、整流回路17の数を減らして、発電システム20の構成を簡略化できるとともに、整流損失を低減させることができる。
【0084】
<発電システムの実施形態2>
次に、他の実施の形態について説明する。なお、以下の説明において、発電システム20と同様の機能を奏する構成については
図8と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0085】
図9に示す発電システム20aは、積層発電装置10を構成する複数の振動発電体1に対して、それぞれ整流回路17が接続される。また、それぞれの整流回路17の出力電圧の極性が揃うように、各整流回路17同士が接続される。さらに、各整流回路17が接続された回路に、蓄電回路19が接続される。
【0086】
前述したように、積層発電装置10に与えられる外力等に対して、それぞれの振動発電体1の発電出力の極性と位相とが概ね一致する場合には、発電システム20のように、各振動発電体1の電極同士を発電出力の極性を揃えて並列に接続することができる。しかし、積層発電装置10に与えられる外力等に対して、各振動発電体1の発電出力の極性や位相が一致しない場合に発電システム20のような回路を構成すると、各振動発電体1の発電出力が互いに打ち消し合い、積層発電装置全体の発電出力を著しく低下させる。
【0087】
このような場合には、発電システム20aのように、各振動発電体1に対してそれぞれ整流回路17を接続して直流電圧に変換し、直流電圧変換後の極性を合わせるように各整流回路17を並列に接続することで、上述したような発電出力の打ち消し合いを防止することができる。
【0088】
<発電システムの実施形態3>
図10(a)に示す発電システム20bは、第1の蓄電回路である蓄電回路19aと、第2の蓄電回路である蓄電回路19bとを用い、蓄電回路19a、19bの間に直流電圧コンバータ21が接続される。
【0089】
蓄電回路19aは、整流回路17で直流となった直流電圧を蓄電する。直流電圧コンバータ21は、蓄電回路19aに蓄電された直流電圧を、所定の直流電圧に変換する。このようにして所定の電圧となった直流電圧を、蓄電回路19bで蓄電する。
【0090】
通常、積層発電装置10によって発電された発電出力は、他の外部回路を駆動するために用いられる。したがって、外部回路を駆動するために必要な電圧に変換する必要がある。発電システム20bでは、接続される外部回路の駆動電圧に変換した後、蓄電回路19bに蓄電されるため、蓄電回路19bによって外部回路を駆動することができる。
【0091】
なお、このような回路としては、
図10(b)に示した発電システム20cのように、それぞれの振動発電体1に整流回路17を接続したものにも適用可能である。この場合には、各整流回路17の出力電圧の極性を揃えるように並列に接続して、蓄電回路19aに接続すればよい。
【0092】
<本発明の積層発電装置の用途等>
本発明の積層発電装置は、例えば、道路面の下や橋梁、高速道路等に設置される防音壁、鉄道のレールや枕木部などの車両等が通行することで振動する対象物等へ設置することができる。この際、得られた電力によって、振動対象物の周囲の状態(温度、湿度、明るさ、振動加速度、歪、変位、風速、車両の通行速度や重量など)を感知し、計測するセンサを駆動させることができる。また、センサで得られた情報を有線または無線によって送信する情報収集システムや監視システムの電源として使用することができる。
【0093】
また、得られる電力が大きい場合には、道路等の照明や信号機の補助電源や、スマートグリッド構想での分散電源の一つとして使用することもできる。また、道路等において、車両や人が通行した際の振動によって発電させ、これによって車両や人が通過したという情報と周囲の明るさを感知させてもよい。この場合、周囲が暗い場合にのみ、貯蔵していた電力を利用して車両や人の前方の照明や、案内板、誘導灯等を点灯させることもできる。
【0094】
また、本発明の積層発電装置は、それ自体が振動等の外力変化を検知するセンサとして用いることもできる。例えば、敷地や通路などに積層発電装置を設置し、不審人物が侵入した際の振動で発電させ、不審人物侵入情報を送信するセキュリティシステムに使用することもできる。
【0095】
また、本発明は、車両や航空機、人、動物などのそれ自体が振動する移動体に適用することもできる。例えば、自動車の車体やサスペンションなどに積層発電装置を設置し、発電した電力で、各種センサを駆動させることもできる。また、得られる電力が大きい場合には、自動車の二次電池への補助充電用の電源としても使用できる。同様に、鉄道車両の車体、車両内部、車輪、ダンパー部、サスペンションなどに適用し、各種センサを駆動させて車両各部の健全性を監視するシステム用の電源、車内照明、非常灯、広告用表示パネル等の(補助)電源として使用することもできる。
【0096】
また、車両等の座席に積層発電装置を設置し、人が着座した際または着座中の振動によって発電させ、人の着座を検知し、運転席や操縦席に情報を知らせるシステムのセンサおよび電源として使用することもできる。
【0097】
また、ビルや工場、住宅等の建築構造物あるいは建築構造物に内包される構造物に本発明の積層発電装置を適用することもできる。例えば、上述の建築構造物は、地面の振動、風の影響、内部の人の移動、内部に設置された機械装置(例えば、モータなどの回転機や工場内の生産設備、エレベータやエスカレータなどの昇降機、空調ファンなど)が作動する際の振動等を受けて、それ自体が振動する。したがって、このような振動を受けやすい部位に積層発電装置を設置して発電させ、非常用電源や各種センサや通信用電源等の駆動電源として使用することもできる。
【0098】
また、本発明の積層発電装置を、パソコンや携帯電話、リモコンなどの携帯用電子機器や、タッチパネルやキーボード、プッシュボタンなどの入力装置にも適用することができる。例えば、パソコンや携帯電話などの携帯用電子機器の筐体に積層発電装置を設置し、それらの機器の運搬時や使用時の振動によって発電させ、二次電池への補助充電用電源等に用いることもできる。また、入力装置の振動によって発電させ、入力情報を親局等に送信するシステムの電源としても使用することができる。
【0099】
また、例えば、屋外の常時強風が得られる場所や空調ダクト内、排気ダクト内、トンネル内などの風が得られる場所や、自転車、バイク、自動車、鉄道車両などによる風が得られる場所や、電柱、信号機、道路標識、ガードレールなどの風が得られる場所へ、本発明の積層発電装置を適用することもできる。この場合には、積層発電装置に直接風を当てることによって積層発電装置に外力、振動を作用させて発電させてもよいし、積層発電装置の設置対象物が風を受けて振動し、その際の設置対象物の振動を積層発電装置に付与する構造として発電を得てもよい。そこで得られた積層発電装置からの電力によって、周囲の状態を感知、計測するセンサを駆動させることができる。また、センサで得られた情報を送信する情報収集システムや監視システムの電源として使用することができる。また、道路上、道路脇、トンネル内や工事現場などに位置表示や注意喚起等を含む情報伝達の目的で設置される発光標識の電源として用いることもできる。
【0100】
また、例えば、河川、工業用水、農業用水、下水、水道水などの水流のある場所や、排水管内、配水管内などに本発明の積層発電装置を設置することもできる。この場合には、積層発電装置に直接水流を当てることによって積層発電装置に外力、振動を作用させて発電させてもよいし、積層発電装置の設置対象物が水流を受けて振動し、その際の設置対象物の振動を積層発電装置に付与する構造として発電を得てもよい。そこで得られた積層発電装置からの電力によって、水や配管の温度、流量、配管の振動加速度、水流周囲の温度、湿度、明るさ、風速などの気象情報などを感知、計測するセンサを駆動させることができる。また、センサで得られた情報を送信する情報収集システムや監視システムの電源として使用することができる。
【0101】
また、例えば、防波堤や海岸、岸壁、ブイ、船舶等の波力を受ける場所や、潮力や海流が大きな海底部や海中部などに本発明の積層発電装置を適用することもできる。この場合には、積層発電装置に直接波力を作用させることによって積層発電装置に外力、振動を付与して発電させてもよいし、積層発電装置の設置対象物が波力を受けて振動し、その際の設置対象物の振動を積層発電装置に付与する構造として発電を得てもよい。そこで得られた積層発電装置からの電力によって、海水温、海流の流速や方向、波高さ、海上や海岸周辺の温度、湿度、明るさ、風速などの気象情報などを感知、計測するセンサを駆動させることができる。また、センサで得られた情報を送信する情報収集システムや監視システムの電源として使用することができる。さらに、養殖場などで利用する電源やブイや灯台などに搭載される発光標識等の電源として適用することもできる。
【0102】
また、野営活動や、停電時等の電力を得にくい環境や状態に対する非常用電源としても適用することができる。
【0103】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0104】
例えば、前述の積層発電装置には、発電体としてエレクトレット誘電体3を用いた振動発電体1を用いた例を説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、外力を受けて発電するものであれば、前述の振動発電体1ではなく、圧電素子等を発電体として用いることもできる。一般的な圧電素子としては、例えば、チタン酸バリウム、ジルコニア(ZrO
2)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、ランタンドープチタン酸ジルコン酸鉛(PLZT)、チタン酸ストロンチウム、チタン酸鉛、チタン酸ビスマス、チタン酸ビスマスバリウムなどといった圧電性セラミックスや、ニオブ酸リチウム(LiNbO
3)、リチウムタンタレート(LiTaO
3)、石英などの圧電性単結晶や、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)に代表される高分子系の圧電フィルムまたは圧電シートなどを発電体として適用することができる。
【0105】
また、前述した各実施形態で示したそれぞれの積層発電装置は、複数の振動発電体を積層して容器15に収容したものであったが、本発明はこれに限られない。例えば、
図11(a)に示すように、1枚の振動発電体1を交互に折り畳んで積層し、これを容器15内に収容して積層発電装置12を構成することもできる。積層発電装置12は、折り返された各層の振動発電体1の間に、部分的に支持部材2が設けられ、支持部材2と各層の振動発電体1が接合される。また、容器15内および各層の振動発電体1同士の間の空間には、媒質16が充填される。
【0106】
また、
図11(b)に示した積層発電装置12aのように、1枚の振動発電体1を芯材14に複数周巻付けることで振動発電体1を積層し、これを容器15内に収容して積層発電装置12aを構成することもできる。この場合にも、複数周巻き付けて積層される振動発電体1の層間に支持部材2を部分的に介在させることによって、振動発電体1の層間に空間を形成することができる。したがって、容器15内および各層の振動発電体1同士の間の空間に媒質16を充填させることができる。また、
図11(b)は、芯材14を用いた実施形態であるが、芯材14を用いずに空芯とし、空芯部に媒質16が満たされていてもよい。このように、1枚の振動発電体1を複数層に積層した積層発電装置12、12aによっても、前述した他の積層発電装置と同様の効果を得ることができる。なお、積層発電装置12、12aの積層数(折り畳み回数や、巻付け回数)は、図示した例に限られず、適宜設計することができる。