(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0027】
<積層発電体の実施形態1>
以下、本発明の実施の形態にかかる積層発電体について説明する。
図1(a)に示すように、積層発電体10は、発電体として
図2(a)に示すシート状の振動発電体1を用い、複数の振動発電体1が積層されて構成される。
なお、特に示した場合を除き、
図1等においては、振動発電体の詳細な構造およびリード線等については図示を省略する。
【0028】
前記積層された振動発電体1同士の間には支持部材2が設けられ、振動発電体1同士は支持部材2を介して接合される。振動発電体1と支持部材2との接合方法としては、接着接合、粘着接合、吸着接合などを利用することができるが、特に限定されるものではない。支持部材2は、積層されるそれぞれの振動発電体1同士の間に間隔を空けて配置される。すなわち、前記支持部材2が介在されない振動発電体1同士の間に空間が形成される。支持部材2は、積層した各層の振動発電体1同士の間に形成された空間を通じて、振動発電体1の平面方向に流体を流すことが可能となるように配置される。また、支持部材2は、積層されるそれぞれの振動発電体1の平面内において、略同一の位置に設けられることが好ましい。すなわち、平面視において、支持部材2は、積層方向に略整列配置されることが好ましい。このようにすることで、支持部材2の自重によって、振動発電体1が撓むことを防止することができる。
【0029】
支持部材2の材質は、特に限定されないが、比較的硬質な金属系材料、プラスチック系材料、ゴム系材料などを適用することができる。なお、積層発電体10に比較的大きな外力が加えられるような環境で使用される場合には、支持部材2としては、ゴムなどに代表される弾性体であることが望ましい。弾性体としては、例えば、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、フッ素系ゴム、天然ゴムなどのゴムを使用することができる。
【0030】
図2(a)に示すように、振動発電体1は、主にエレクトレット誘電体3、電極5a、5b、接合部7等から構成される。エレクトレット誘電体3の両面には、エレクトレット誘電体3と対向するように、それぞれ電極5a、5bが配置される。また、エレクトレット誘電体3と電極5bとの間には接合部7が設けられる。接合部7は、エレクトレット誘電体3と電極5bとを接合するためのものである。すなわち、エレクトレット誘電体3と電極5bとは、接合部7を介して接合され、互いの間には、接合部7の厚さに応じた隙間(エアギャップ)が形成される。接合部7の材質は特に限定されないが、例えば絶縁性の接着剤で構成される。
【0031】
電極5aとエレクトレット誘電体3とは、略全面にわたって接合されている。電極5aとエレクトレット誘電体3とは、例えば熱融着や接着で接合される。但し、接着剤を用いる場合には、接着剤層をできるだけ薄くすることが望ましい。例えば、電極5a、5b間の距離やエレクトレット誘電体3の厚さに対し、十分薄くすることが望ましい。
【0032】
電極5a、5bは、導体層6と樹脂層8が積層された二層構造である。このような電極5a、5bは、樹脂シートと金属箔とを接着剤や熱溶着等によって接合したものであってもよく、樹脂シートの表面に金属蒸着や金属めっきを施したものであってもよい。いずれにせよ、シート(フィルム)状の樹脂上に導体層を形成できればよい。
【0033】
なお、導体層6を構成する導体としては、アルミニウム、錫、銅あるいはこれらの合金など適宜選択することができる。
また、樹脂層8を構成する樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド系の樹脂(例えばカプトン(登録商標))、フッ素系の樹脂(例えばフルオロエチレンプロピレンやポリテトラフルオロエチレン)などのプラスチック材料や、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、フッ素系ゴム、天然ゴムなどのゴム材料を用いることもできる。
【0034】
二層構造の電極5a、5bは、周囲との電気絶縁を確保し、防水性や防湿性を向上させることができる点で望ましい。また、電極5bにおいては、さらに、外力等に対する電極の追従性を向上させることができる点で望ましい。例えば、薄い導体のみでは、外力によって変形した後、元の形状への復元力が小さい。しかし、導体のみで剛性を高めようとすると、導体部の厚みを厚くする必要があるため重量増の問題がある。また、これにより、電極の動きが鈍くなる恐れがある。
【0035】
これに対し、本実施形態では、樹脂層8を設けることで、重量増による問題を抑制するとともに、外力に対する電極5bの追従性、すなわち剛性を高めることができる。なお、導体層6のみでも、例えば別途絶縁部材を介在させるなどの方法によって電気絶縁性等を確保できれば、導体層6のみで電極5a、5bを形成しても良い。
【0036】
エレクトレット誘電体3の材質としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニルなどの樹脂を用いることができる。また、使用条件に応じて、例えば高温特性に優れるポリイミド系の樹脂(例えばカプトン(登録商標))やフッ素系の樹脂(例えばフルオロエチレンプロピレンやポリテトラフルオロエチレン)を用いることができる。また、ゴム材料として、例えばニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、フッ素系ゴムなどを用いることができる。
【0037】
図3(a)に示すように、エレクトレット誘電体3の両面は、互いに逆の極性の電荷で帯電している。なお、エレクトレット誘電体3の片面にのみ、いずれか一方の極性の電荷が帯電していてもよく、あるいはエレクトレット誘電体3の両面にいずれか一方の極性の電荷が帯電していてもよく、エレクトレット誘電体3の両表面間(表面と裏面)での電位差(表面電位差)がある状態であればよい。このようなエレクトレット誘電体3は、例えば絶縁性を有する樹脂シートや樹脂フィルム等の表面に、コロナ放電によって帯電処理を施すことで形成することができる。
【0038】
エレクトレット誘電体3の表面と裏面との電位差の設定は、電極5a、5bとエレクトレット誘電体3との間のエアギャップ長(または接合部7の厚み)に依存する。すなわち、当該電位差は、当該エアギャップでの空気放電による電位差低下が少なくなるように設定されることが望ましい。
【0039】
振動発電体1におけるエレクトレット誘電体3と電極5a、5bとは、いずれも可撓性を有する。例えば、エレクトレット誘電体3は、上述した樹脂等で構成される。したがって、振動発電体1は、全体として可撓性を有し、様々な形態の設置場所に適した変形が可能である。
【0040】
図2(a)に示すように、接合部7以外の部位において、エレクトレット誘電体3と電極5bとの間には非接合部9が形成される。すなわち、非接合部9においては、エレクトレット誘電体3と電極5bの少なくとも一方が変形することで、互いの距離が容易に変化する。例えば、電極5bの変形によって、電極5bを、エレクトレット誘電体3の表面と接触させることもできる。
【0041】
なお、
図3(b)に示すように、多孔質材からなるエレクトレット誘電体3aを用いることもできる。内部に微細な空孔4が存在する多孔質材の両面に電圧を印加すると、空孔4内において容易にコロナ放電が生じる。このコロナ放電によって空孔壁面および空孔壁面近傍にも帯電したエレクトレット誘電体3aを容易に製造できる。なお、エレクトレット誘電体3aの空孔壁面および空孔壁面近傍の帯電状態は、
図3(b)に示すように、電圧印加方向(この場合にはエレクトレット誘電体3aの厚さ方向)に正電荷と負電荷に帯電した領域が形成される状態となっていると考えられる。また、エレクトレット誘電体3aの内部に空孔4が存在すると、エレクトレット誘電体3a全体として変形が容易となる。したがって、電極5a、5bとエレクトレット誘電体3とのギャップ長だけでなく、エレクトレット誘電体3a自体をもより小さな外力で容易に変形させることができる。このため、電極5bとエレクトレット誘電体3aとの間のギャップ長だけでなく、エレクトレット誘電体3aの厚さも変化し易くなる。したがって、電極5a、5b間の距離が変化し易くなるとともに、その変化量も大きくなるため、双方の電極に静電誘導される電荷量も多くなり、発電効率が向上する。
【0042】
多孔質性のエレクトレット誘電体3aの材質としては、絶縁体であって、エレクトレット誘電体3と同様の材料を多孔質化した多孔質プラスチックまたは多孔質ゴムや、シート状繊維体を用いることができる。なお、多孔質プラスチックには、発泡プラスチックも含まれる。また、多孔質ゴムには、発泡ゴムも含まれる。シート状繊維体としては、不織布やフェルトを用いることができる。中でも不織布は空気清浄機やマスク等においてエレクトレットフィルターとして利用されており、良好なエレクトレットの特性を有する。なお、以下の説明では、空孔4のないエレクトレット誘電体3を用いた例について示す。
【0043】
振動発電体1の電極5bとエレクトレット誘電体3との間に形成される隙間(エアギャップ)は、振動発電体1の外部に対して密封されることが望ましい。例えば、
図4(a)に示すように、振動発電体1の外周部は、シール部材13によって覆われてシールされる。シール部材13は、接着剤等によって電極5a、5b等に接着される。
【0044】
この場合、シール部材13としては、例えば、水密性(防水性または防湿性)または気密性の高い材料を選択することが好ましい。このようにすることで、流体である媒質16が、電極5bとエレクトレット誘電体3との間に設けた隙間(エアギャップ)に浸入することを防止することができる。また、流体である媒質16が水である場合であっては、電極5a、5bが腐食することを防止することができる。更には、エレクトレット誘電体3の表裏面の電位差が水分の存在によって低下することを防止することができる。
【0045】
また、別途シール部材13を用いなくても、
図4(b)に示す振動発電体1bのように、電極5a、5bを構成する樹脂層8を、導体層6の外周からはみ出すように形成し、はみ出した上下の樹脂層8同士を接合させて、シール部13aを形成しても良い。はみ出した上下の樹脂層8同士の接合方法は、流体である媒質16の浸入を防止できる方法であれば特に限定されるものではないが、例えば、接着剤による接合方法や、加熱融着による接合方法を採用することができる。このように、振動発電体1の電極5bとエレクトレット誘電体3との間に形成される隙間(エアギャップ)への媒質16の浸入を防止できるシール方法であれば、そのシール方法は図示した例には限られず、どのような形態でも良い。
【0046】
次に、振動発電体1の発電機構について説明する。
図5は
図2(a)のA部拡大図である。
図5(a)に示すように、例えば定常状態(外力が付与されていない状態。以下同様。)では、電極5bとエレクトレット誘電体3との間には、非接合部9において接合部7の厚みに応じたエアギャップ長Bが形成される。この状態から、
図5(b)に示すように、外力Cが振動発電体1の厚さ方向に付与されると、電極5b(およびエレクトレット誘電体3)が変形する。この際、エアギャップ長Bが短くなる方向へ変化し、電極5bとエレクトレット誘電体3とが接触部11で接触する場合もある。
【0047】
すなわち、接触部11に対応する位置においては、電極5bとエレクトレット誘電体3の厚さ方向の距離(エアギャップ長B)が0になるまで変化できる。この距離変化に応じて、電極5a、5bの双方に電荷が静電誘導されて発電する。なお、
図5(b)の状態から
図5(a)の状態に戻る際にも、同様に電極5bとエレクトレット誘電体3との間の距離変化(ギャップ長Bが長くなる方向への変化)に応じた静電誘導による発電が行われる。なお、電極5bとエレクトレット誘電体3との距離変化に伴う発電出力電圧は、電極5bとエレクトレット誘電体3とが変形によって接触する直前および剥離した直後が最も高くなる。
【0048】
このように、この実施形態で用いた振動発電体1は、電極5bとエレクトレット誘電体3とを厚さ方向に相対的に変位させて、その双方の距離に相当するエアギャップ長Bを変化させることで効率よく発電をさせることができる。
【0049】
ここで、接合部7の材質にもよるが、外力による非接合部9のエアギャップ長Bの変化と比較して、接合部7における電極5bとエレクトレット誘電体3との距離の変化は小さい。このように、接合部7の部位では、電極5bとエレクトレット誘電体3との距離が変化しにくいため、発電には寄与しにくい。したがって、接合部7は、できるだけ小さくし、かつ振動発電体1に占める接合部7の総面積をできるだけ小さくすることが望ましい。また、互いに隣接する接合部7間の距離は、非接合部9のエアギャップ長Bを保持することができる程度の距離にすることが望ましい。
【0050】
なお、接合部7は、エレクトレット誘電体3の表面において、例えば、ドット状、ストライプ状、格子状などの繰り返しパターンで配置される。
【0051】
なお、接合部7は、接着剤に代えて、電極5bとエレクトレット誘電体3とを部分的に直接熱融着により接合してもよい。この場合、接合部以外の部位が、非接合部9となる。この場合であっても、非接合部9では、電極5bとエレクトレット誘電体3との間に、微小な隙間が形成される。なお、非接合部9において、電極5bとエレクトレット誘電体3とが部分的に接触していても良い。また、接合部7には、接着剤に代えて、他の部材を介して電極5bとエレクトレット誘電体3とを接合しても良い。
【0052】
図1(a)に示すように、積層発電体10では、複数の振動発電体1がそれぞれ支持部材2を介して接合されて積層される。このような積層発電体10を流体である媒質16の流れ(図中矢印E)の中に配置すると、
図1(b)に示すように、積層される振動発電体1同士の空間(隙間)を、各振動発電体1の平面方向に略平行に流体(媒質16)が流れる(図中矢印F)。このように流体(媒質16)が各層の振動発電体1同士の間の空間を流れると、流体(媒質16)の流れの中に渦流(カルマン渦)が発生する。この渦流によって各層の振動発電体1の表面に力を作用させることができる。したがって、渦流による振動発電体1の厚さ方向の力の作用によって、または渦流による力の作用で支持部材2を支点とした振動発電体1の繰り返しの撓み変形を生じさせることによって(図中G)、振動発電体1の非接合部9(エアギャップ)における電極5bとエレクトレット誘電体3との接触および剥離を繰り返させる(エアギャップ長を繰り返し変化させる)ことができる(
図5参照)。したがって、積層発電体10は、効率よく発電を行うことができる。また、積層発電体10は、流体(媒質16)の流れによる渦流の発生が要因で発電するだけでなく、流体(媒質16)の流れが直接的に振動発電体1に当ることによって、振動発電体1の厚さ方向への力が作用することでも発電することができる。
【0053】
この際、支持部材2の厚さ(積層される振動発電体1同士の間隔)、形状、配置などを適切に設定することで、流体(媒質16)の流れによる渦流の発生を制御することができる。また、積層される振動発電体1間や、積層発電体10の外周部あるいはその近傍に、渦流を効果的に発生させるための渦流発生部材を配置しても良い。このように、流体(媒質16)の流れに対して、渦流の発生を制御することで、振動発電体1を効果的に振動、変形させることができる。したがって、積層発電体10の発電効率の向上を図ることができる。
【0054】
また、
図1(c)に示す積層発電体10aのように、流体(媒質16)の流れの下流側に位置する支持部材2を無くしても良い。すなわち、流体(媒質16)の流れの下流側に位置する積層発電体10aの端部側は、各層の振動発電体1が自由端となるようにしてもよい。このようにすると、流体(媒質16)の流れ(図中矢印F)によって、吹き流しや旗のように、各層の振動発電体1の端部を大きく変形させることができる。したがって、振動発電体1における電極5bとエレクトレット誘電体3との間のエアギャップ長が変化して(
図5参照)、より大きな発電出力を得ることができる。
【0055】
なお、流体(媒質16)としては、特に限定されないが、気体または液体であればよい。例えば、積層発電体10を大気中に配置して、風(空気)の流れを利用して発電しても良く、水中に配置して、水の流れを利用して発電することもできる。
【0056】
より具体的には、積層発電体10を風のある場所へ設置(例えば、屋外、空調ダクト内、排気ダクト内、トンネル内などへの設置や、自転車、バイク、自動車、鉄道車両などへの設置)したり、水流のある場所(例えば、海流のある場所への設置、河川、湖への設置、工業用水、農業用水、下水、水道水、排水などの配管などへの設置)へ設置することができる。このように、積層発電体10は、風力、水力、波力、潮力などの自然エネルギーを利用して、発電することができる。また、積層発電体10は、流体(媒質16)の流れ以外の要因でも発電することができる。例えば、積層発電体10を設置した箇所が振動する場合には、その振動が支持部材2や流体(媒質16)を介して積層したそれぞれの振動発電体1に伝達されることによっても発電できる。また、積層した各層の振動発電体1間に満たされる流体(媒質16)の圧力変化が生じる場合には、流体(媒質16)の圧力変化が各層の振動発電体1の表面に伝達されることによっても発電できる。
【0057】
なお、振動発電体1が外力により変形し、電極5bとエレクトレット誘電体3とが接触および剥離を繰り返すと、その際に、電極5bとエレクトレット誘電体3との間で、空気放電が生じることが考えられる。このような空気放電が生じると、エレクトレット誘電体3の表面と裏面との電位差が低下することが考えられる。したがって、使用するにつれて発電が行われなくなるのではないかという懸念もあった。しかし、発明者らは、このような接触と剥離とが繰り返えされても、“エレクトレット誘電体3の表面と裏面との電位差が低下することによって、直ちに発電が行われなくなる現象”は生じないことを見出した。したがって、積層発電体10を構成する振動発電体1は、外力によって、電極5bとエレクトレット誘電体3とが接触および剥離を繰り返すように変形させることが望ましい。
【0058】
また、本発明では、
図2(b)に示すように、エレクトレット誘電体3と、電極5a、5bの両方の間に接合部7が設けられた振動発電体1aを用いることもできる。振動発電体1aは、振動発電体1と略同様の構成であるが、電極5aとエレクトレット誘電体3との間にも、部分的な接合部7と非接合部9とが設けられる。
【0059】
ここで、
図2(a)に示す振動発電体1は、一方の電極5aがエレクトレット誘電体3と全面にわたって接合されているため、電極5bとエレクトレット誘電体3との距離変化でのみ発電が行われる。しかし、
図2(b)に示すように、電極5a、5bの両方とエレクトレット誘電体3との間に非接合部9、9(エアギャップ)を形成し、両方のエアギャップの距離変化により発電を行う振動発電体1aにおいては、エレクトレット誘電体3と電極5aとの間のエアギャップと、エレクトレット誘電体3と電極5bとの間のエアギャップの両方の距離変化の方向(減少する方向あるいは増加する方向)とタイミング(位相)が一致しないと、電極5a、5b間に生じる発電出力電圧が互いに打ち消しあってしまう恐れがある。
【0060】
したがって、
図2(b)に示した振動発電体1aの全体で効率良く発電を行うためには、電極5a、5bとエレクトレット誘電体3との距離変化の方向(減少する方向あるいは増加する方向)とタイミング(位相)を振動発電体1aの各部で一致させることが望ましい。例えば、電極5a、5bとエレクトレット誘電体3とが接触および剥離を繰り返す場合には、この接触および剥離のタイミングを振動発電体1aの各部で一致させることが望ましい。
【0061】
また、振動発電体1aでのエレクトレット誘電体3の表裏で電極5a、5bとエレクトレット誘電体3との距離変化の方向とタイミングを一致させるために、エレクトレット誘電体3の表裏における接合部7の平面配置を一致させることが望ましい。
【0062】
これに対し、
図2(a)の振動発電体1では、電極5bとエレクトレット誘電体3との距離変化のみによって発電されるため、
図2(b)の振動発電体1aのように電極5a、5bのそれぞれとエレクトレット誘電体3との双方の距離変化の方向とタイミング(位相)を一致させる必要がない。また、接合部7の厚み分だけ、全厚を薄くすることができる。このように、構造を簡易にできることによるコスト減や、薄肉化が可能である点などを考慮すれば、発電量は若干下がるものの、振動発電体1を用いることが望ましい。
【0063】
このように、使用条件等に応じて、振動発電体1、1aは適宜選択することが得できる。なお、以下の説明では、振動発電体1を用いた例について説明するが、振動発電体1aを用いることもできる。
【0064】
以上説明したように、積層発電体10は、複数の振動発電体1同士が支持部材2を介して積層されて構成される。したがって、振動発電体1の間に隙間が形成され、各層の振動発電体1の間に流体(媒質16)を流すことができ、積層された全ての振動発電体1に厚さ方向への力を付与することができる。この結果、積層された全ての振動発電体1において、電極5bとエレクトレット誘電体3との間の距離(エアギャップ長)の変化を生じさせることができ、したがって、全ての振動発電体1で発電が行われるので、この積層発電体10からは高い発電出力を得ることができる。
【0065】
また、積層発電体10に振動を印加した場合にも、支持部材2や流体(媒質16)を介して積層した各層の振動発電体1に振動が伝達される。したがって、各振動発電体1が振動し、支持部材2を支点にして支持部材2と接合する振動発電体1以外の振動発電体1の部位が撓み変形し、この撓み変形によって、発電が行われる。すなわち、支持部材2と接合される以外の振動発電体1の部位で、振動発電体1が撓むと、電極5bとエレクトレット誘電体3との間の距離変化(エアギャップ長の変化)が生じて発電が行われる。
このように、積層発電体10は、振動発電体1同士の間の流体(媒質16)から加わる外力や、積層発電体10自体の振動によって、発電出力を得ることができる。
【0066】
<積層発電体の実施形態2>
次に、他の実施の形態について説明する。なお、以下の説明において、積層発電体10と同様の機能を奏する構成については
図1等と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0067】
図6に示す積層発電体10bは、略円形をした複数の振動発電体1がそれぞれ支持部材2を介在させて積層される。すなわち、積層発電体10bの形状は略円柱状である。前記積層発電体10bは、略円柱状の形状をした筐体15a内に収容される。支持部材2は、各振動発電体1の縁部近傍に、周方向に略等間隔で配置され、支持部材2が介在しない各層の振動発電体1間には空間が形成される。また、支持部材2は、各振動発電体1の平面位置に対して略一致するように配置される。すなわち、各層の支持部材2が積層発電体10bの積層方向に略整列配置される。このような支持部材2の配置とすることで、積層発電体10bのいずれの側面からでも、各層の振動発電体1同士の間の空間に、振動発電体1の平面方向に略平行に流体(媒質16)を流すことが可能となる。また、支持部材2の自重によって、各層の振動発電体1が撓むことを防止することができる。なお、支持部材2の配置としては、上述のような各振動発電体1の縁部近傍にのみ配置されることには限定されず、各振動発電体1の中心側にも配置されていてもよい。その場合には、略円形をした振動発電体1の中心から支持部材2が配置される位置までの距離を半径とした円周の周方向に対して、略等間隔で支持部材2が配置されることが好ましい。
【0068】
筐体15aの側面の全周には、例えば格子状の孔(図示省略)が設けられる。したがって、筐体15aの側面に対して、その外側の一方から流体(媒質16)が流れ込むと、筐体15aの側面に設けられた格子状の孔を流体(媒質16)が通過して筐体15aの内部に流れ込む(図中矢印H)。同様に、筐体15aに流れ込んだ流体(媒質16)は、他方の筐体15aの側面に設けられた格子状の孔を通過して筐体15aの外側へ流れ出る(図中矢印H)。なお、風力を利用する場合には流体(媒質16)は空気となり、水力を利用する場合には、流体(媒質16)は水を主成分とする液体となり、波力や潮流を利用する場合には、流体(媒質16)は海水となる。
【0069】
筐体15aは円柱状であるため、筐体15aの側面に対して垂直な流れであれば、流体(媒質16)の流れる方向は問わず、いずれの方向からの流体(媒質16)の流れも、筐体15aを通過させることができる。前述したように、積層発電体10bの側面に対して、垂直な流れであれば、流体(媒質16)の流れる方向は問わず、いずれの方向からの流体(媒質16)の流れも、各層の振動発電体1間の空間を振動発電体1の平面方向に略平行に通過させることができる。この際、流体(媒質16)の流れによって、振動発電体1同士の間に渦流(カルマン渦)が発生し、この渦流によって各層の振動発電体1を振動・変形させることができる。したがって、各層の振動発電体1を効率良く発電させることができる。また、本実施形態のような構成とすることで、流体(媒質16)の流れる方向が変化するような場合であっても、風車の回転機構等を用いることなく、筐体15a内部に設置された略円柱状の積層発電体10bの側面に流体(媒質16)を流れ込ませて発電を行うことができる。したがって、複雑な機械機構を設けることなく、簡易な構造で信頼性及び発電効率の高い積層発電体を実現することができる。
【0070】
なお、筐体15aに振動が印加された場合にも、筐体15aや支持部材2、流体(媒質16)を介して積層発電体10b内の各層の振動発電体1に振動が伝達される。したがって、各層の振動発電体1が振動、変形を受けることによって発電が行われる。
【0071】
このように、積層発電体10bによっても、積層発電体10と同様に、発電出力を得ることができる。特に、積層発電体10bは、その側面に向かういずれの方向からの流体(媒質16)の流れに対しても、効率良く流体(媒質16)の流れを各層の振動発電体1同士の間の空間に導入することができるため、それによる各層の振動発電体1の振動・変形によって、効率よく発電出力を得ることができる。
【0072】
<積層発電体の実施形態3>
図7に示す積層発電体10cは回転体であるホイール18に取り付けられている。すなわち、複数の振動発電体1で構成される積層発電体10cを、タイヤ15bとホイール18とで構成された筐体内に設置している。タイヤ15bとホイール18とで構成される筐体内は、流体である媒質16で満たされている。タイヤ15bとしては、図示したような自動車用のタイヤであっても良く、自転車やバイクのタイヤであっても良い。
【0073】
積層発電体10cは、ホイール18の外周面に配置されており、ホイール18の外周方向に沿って振動発電体1と支持部材2とが積層されている。
図7(a)に示すように、振動発電体1は、ホイール18の外周方向に沿って湾曲して積層され、支持部材2は、ホイール18の外周方向に沿って所定の間隔で配置される。積層されるそれぞれの振動発電体1同士の間には支持部材2が介在されることによって空間が形成され、その空間には流体である媒質16が満たされている。また、
図7(b)に示すように、支持部材2は、ホイール18の幅方向においては、振動発電体1の両端部近傍に設けられる。ここで支持部材2の配置は、
図7に示す配置に限定されず、振動発電体1同士の間に形成した空間に流体である媒質16の流れが生じ得る配置であればよい。なお、流体である媒質16は、一般的には空気であるが、窒素ガスでもよい。また、
図7に示す積層発電体10cでは、複数の振動発電体1を積層した構成で積層発電体10cを構成しているが、本発明の積層発電体10cは複数の振動発電体1を用いて積層するという構成に限定されるものではない。例えば、1枚の帯状の振動発電体1をホイール18の外周にロール状に複数回巻きつけて積層し、その積層された振動発電体1の層間に支持部材2を介在させることによって、振動発電体1の層間に空間を形成し、その空間に媒質16を満たすこともできる。このように振動発電体1の層間に形成された空間でも、流体である媒質16の流れを形成することができる。
【0074】
ホイール18が回転すると(図中矢印J)、タイヤ15bとホイール18とで構成された筐体内には、タイヤ15bやホイール18の回転運動に対して相対的に回転方向の変化とは逆向きの媒質16の流れ(気流)が発生する。特にホイール18の回転速度が変化する際に、媒質16の大きな流れ(気流)が発生しやすい。したがって、積層された振動発電体1同士の間の空間に媒質16の流れが生じる。この媒質16の流れによって、振動発電体1同士の間に渦流(カルマン渦)を発生させ、この渦流によって各層の振動発電体1の表面に力を作用させることができる。したがって、渦流による振動発電体1の厚さ方向の力の作用によって、または渦流による力の作用で支持部材2を支点とした振動発電体1の繰り返しの撓み変形を生じさせることによって、振動発電体1の非接合部9(エアギッャプ)における電極5bとエレクトレット誘電体3との接触および剥離を繰り返させて(エアギャップ長を繰り返し変化させて)、効率よく発電を行うことができる。この際、支持部材2の厚さ(振動発電体1同士の間隔)、形状、配置などを適切に設定して、媒質16による渦流の発生を制御することで、振動発電体1を効果的に振動、変形させ、発電効率の向上を図ることができる。
【0075】
また、ホイール18およびタイヤ15bが回転すると(図中矢印J)、路面と接触する部分では、タイヤ15bが大きな変形を受ける。したがって、タイヤ15bおよびホイール18とで構成される筐体内(密閉筐体内)の媒質16の圧力が変動する。したがって、この媒質16の圧力変動によっても、各振動発電体1に付与される力(圧力)が変化して、発電することができる。
【0076】
また、自動車の走行中には、タイヤ15bおよびホイール18において、それら自体の回転に伴う振動や、路面状況に応じた振動が発生する。したがって、自動車の走行中でのタイヤ15bとホイール18とで構成される筐体自体の回転に付随した振動が、支持部材2などを介して積層される各層の振動発電体1に伝達されることによっても発電を行うことができる。例えば、振動発電体1に振動が伝達されると、支持部材2を支点として、支持部材2と接合する部位以外の振動発電体1の部位が撓み変形をすることによって、非接合部9において電極5bとエレクトレット誘電体3との接触および剥離を繰り返させて発電を得ることができる。
なお、この実施形態では、ホイール18にタイヤ15bを取り付けたが、タイヤ15bを設けずに、積層発電体10cを外部に露出させた状態でも、積層発電体10cの振動発電体1同士の間の空間に媒質16の流れが形成され、発電を行うことができる。
【0077】
<発電システムの実施形態1>
次に、前述した積層発電体を用いた発電システムの構成について説明する。なお、以下の例では、振動発電体1を用いた積層発電体10を適用した例を示すが、他の積層発電体を用いてもよい。なお、以下の図において、支持部材2および振動発電体1の詳細な構造については図示を省略する。
【0078】
図8に示す発電システム20は、積層発電体10を構成する複数の振動発電体1のそれぞれについて、同一の方向に外力を受けた際に、正極性となる電極同士および負極性となる電極同士が、それぞれ電気的に接続される。このようにして構成された電気回路は、一つの整流回路17に接続される。整流回路17は、例えば4つのダイオードを組み合わせた全波整流回路が用いるのが好ましいが、1つのダイオードによる半波整流回路を用いることもできる。ダイオードとしては、順方向の抵抗が小さく、逆方向の抵抗が大きく、かつ、時間応答速度が速く、ロスの少ないものが望ましい。整流回路17は、振動発電体1からの出力電圧である交流電圧を直流電圧に変換する。
【0079】
整流回路17は、蓄電回路19と接続される。蓄電回路19は、コンデンサや充電可能なバッテリーなどの蓄電部とスイッチから構成される。蓄電回路19は整流回路17で整流された出力電圧を蓄電する。なお、コンデンサあるいはバッテリーは、充電状態での漏れ電流が小さく、充電ロスの小さなものが望ましい。
【0080】
ここで、それぞれの振動発電体1の電極に誘起される電荷の極性は、外力または振動によって与えられた振動発電体の変形状態や変形方向(圧縮方向や伸長方向)で決まる。したがって、振動発電体1の発電出力電圧は交流電圧となる。この際、積層発電体10に与えられる外力または振動に対して、それぞれの振動発電体1の発電出力の極性と位相とが概ね一致する場合には、発電システム20のように、各振動発電体1の電極同士を発電出力の極性を揃えて並列に接続することができる。
【0081】
このようにすることで、各振動発電体1が極性を合わせるようにして並列に接続された回路に1つの整流回路17を接続することができる。したがって、整流回路17の数を減らして、発電システム20の構成を簡略化できるとともに、整流損失を低減させることができる。
【0082】
<発電システムの実施形態2>
次に、他の実施の形態について説明する。なお、以下の説明において、発電システム20と同様の機能を奏する構成については
図8と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0083】
図9に示す発電システム20aは、積層発電体10を構成する複数の振動発電体1に対して、それぞれ整流回路17が接続される。また、それぞれの整流回路17の出力電圧の極性が揃うように、各整流回路17同士が接続される。さらに、各整流回路17が接続された回路に、蓄電回路19が接続される。
【0084】
前述したように、積層発電体10に与えられる外力等に対して、それぞれの振動発電体1の発電出力の極性と位相とが概ね一致する場合には、発電システム20のように、各振動発電体1の電極同士を発電出力の極性を揃えて並列に接続することができる。しかし、積層発電体10に与えられる外力等に対して、各振動発電体1の発電出力の極性や位相が一致しない場合に発電システム20のように回路を構成すると、各振動発電体1の発電出力が互いに打ち消し合い、積層発電体全体の発電出力を著しく低下させる。
【0085】
このような場合には、発電システム20aのように、各振動発電体1に対してそれぞれ整流回路17を接続して直流電圧に変換し、直流電圧変換後の極性を合わせるように各整流回路17を並列に接続することで、上述したような発電出力の打ち消し合いを防止することができる。
【0086】
<発電システムの実施形態3>
図10(a)に示す発電システム20bは、第1の蓄電回路である蓄電回路19aと、第2の蓄電回路である蓄電回路19bとを用い、蓄電回路19a、19bの間に直流電圧コンバータ21が接続される。
【0087】
蓄電回路19aは、整流回路17で直流となった直流電圧を蓄電する。直流電圧コンバータ21は、蓄電回路19aに蓄電された直流電圧を、所定の直流電圧に変換する。このようにして所定の電圧となった直流電圧を、蓄電回路19bで蓄電する。
【0088】
通常、積層発電体10によって発電された発電出力は、他の外部回路を駆動するために用いられる。したがって、外部回路を駆動するために必要な電圧に変換する必要がある。発電システム20bでは、接続される外部回路の駆動電圧に変換した後、蓄電回路19bに蓄電されるため、蓄電回路19bによって外部回路を駆動することができる。
【0089】
なお、このような回路としては、
図10(b)に示した発電システム20cのように、それぞれの振動発電体1に整流回路17を接続したものにも適用可能である。この場合には、各整流回路17の出力電圧の極性を揃えるように並列に接続して、蓄電回路19aに接続すればよい。
【0090】
<本発明の積層発電体の用途等>
本発明の積層発電体は、例えば、屋外の常時強風が得られる場所や空調ダクト内、排気ダクト内、トンネル内などの風が得られる場所や、移動(走行、運動)することによって風が得られる自転車、バイク、自動車、鉄道車両等の移動体やその他の運動、移動する物体や、電柱、信号機、道路標識、ガードレールなどの風が得られる場所へ、本発明の積層発電体を適用することができる。そのような風(空気の流れ)の得られる場所へ本発明の積層発電体を設置することで、前述の実施形態で説明したように、積層発電体を構成する積層された各層の発電体間(振動発電体1間)に空気を流す(風を通す)ことによって発電を行うことができる。そこで得られた積層発電体からの電力によって、周囲の状態を感知、計測するセンサを駆動させることができる。また、センサで得られた情報を送信する情報収集システムや監視システムの電源として使用することができる。また、道路上、道路脇、トンネル内や工事現場などに位置表示や注意喚起等を含む情報伝達の目的で設置される発光標識の電源として用いることもできる。また、本発明の積層発電体は、上述で得られた発電を電気信号としたセンサとしても利用することができる。例えば、風量、風向、風速などを計測するセンサとして利用することができる。
【0091】
また、例えば、河川、工業用水、農業用水、下水、水道水などの水流のある場所や、排水管内、配水管内などに本発明の積層発電体を設置することもできる。そのような水流の得られる場所へ本発明の積層発電体を設置することで、前述の実施形態で説明したように、積層発電体を構成する積層された各層の発電体間(振動発電体1間)に水を流すことによって発電を行うことができる。そこで得られた積層発電体からの電力によって、水や配管の温度、流量、配管の振動加速度、水流周囲の温度、湿度、明るさ、風速などの気象情報などを感知、計測するセンサを駆動させることができる。また、センサで得られた情報を送信する情報収集システムや監視システムの電源として使用することができる。また、本発明の積層発電体は、上述で得られた発電を電気信号としたセンサとしても利用することができる。例えば、水量や水の流速、水位などを計測するセンサとして利用することができる。
【0092】
また、例えば、防波堤や海岸、岸壁、ブイ、船舶等の波力を受ける場所や、潮力や海流(潮流)が大きな海底部や海中部などに本発明の積層発電体を適用することもできる。そのような波力や海流(海水の流れ)の得られる場所へ本発明の積層発電体を設置することで、前述の実施形態で説明したように、積層発電体を構成する積層された各層の発電体間(振動発電体1間)に海水を流すことによって発電を行うことができる。そこで得られた積層発電体からの電力によって、海水温、海流の流速や方向、波高さ、海上や海岸周辺の温度、湿度、明るさ、風速などの気象情報などを感知、計測するセンサを駆動させることができる。また、センサで得られた情報を送信する情報収集システムや監視システムの電源として使用することができる。さらに、養殖場などで利用する電源やブイや灯台などに搭載される発光標識等の電源として適用することもできる。また、本発明の積層発電体は、上述で得られた発電を電気信号としたセンサとしても利用することができる。例えば、海流の速度、潮位、波高などを計測するセンサとして利用することができる。
【0093】
また、野営活動や、停電時等の電力を得にくい環境や状態に対する非常用電源としても適用することができる。
【0094】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0095】
例えば、前述の積層発電体には、発電体としてエレクトレット誘電体3を用いた振動発電体1を用いた例を説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、外力を受けて発電するものであれば、前述の振動発電体1ではなく、圧電素子等を発電体として用いることもできる。一般的な圧電素子としては、例えば、チタン酸バリウム、ジルコニア(ZrO
2)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、ランタンドープチタン酸ジルコン酸鉛(PLZT)、チタン酸ストロンチウム、チタン酸鉛、チタン酸ビスマス、チタン酸ビスマスバリウムなどといった圧電性セラミックスや、ニオブ酸リチウム(LiNbO
3)、リチウムタンタレート(LiTaO
3)、石英などの圧電性単結晶や、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)に代表される高分子系の圧電フィルムまたは圧電シートなどを発電体として適用することができる。
【0096】
例えば、前述した各実施形態で示したそれぞれの積層発電体は、複数の振動発電体を積層したものであったが、本発明はこれに限られない。例えば、
図11(a)に示すように、1枚の帯状の振動発電体1を交互に折り畳んで積層発電体12を構成することもできる。積層発電体12は、折り返された各層の振動発電体1の間に、支持部材2が設けられ、支持部材2と各層の振動発電体1が接合される。支持部材2は、積層されるそれぞれの振動発電体1同士の間に間隔を空けて配置される。すなわち、支持部材2が配置されない部位では、振動発電体1同士の間に空間が形成される。この場合には、積層発電体12を構成する帯状の振動発電体1の幅方向に対して、積層される振動発電体1同士の間の空間に媒質16(流体)を流すことができる。すなわち、
図11(a)の例では、紙面に直交する方向に媒質16(流体)を流すことができ、積層発電体12の発電を行うことができる。
【0097】
また、
図11(b)に示した積層発電体12aのように、1枚の帯状の振動発電体1を芯材14に複数周巻付けることで振動発電体1を積層してもよい。この場合にも、複数周巻き付けて積層される振動発電体1の層間に支持部材2を部分的に介在させることによって、振動発電体1の層間に空間を形成することができる。この場合にも、積層発電体12aを構成する帯状の振動発電体1の幅方向に対して、積層される振動発電体1同士の間の空間に媒質16(流体)を流すことができる。すなわち、
図11(b)の例では、紙面に直交する方向に媒質16(流体)を流すことができ、積層発電体12aの発電を行うことができる。また、
図11(b)は、芯材14を用いた実施形態であるが、芯材14を用いずに空芯とし、空芯部にも媒質16(流体)を流すようにしてもよい。このように、1枚の振動発電体1を複数層に積層した積層発電体12、12aによっても、前述した他の積層発電体と同様の効果を得ることができる。なお、積層発電体12、12aの積層数(折り畳み回数や、巻付け回数)は、図示した例に限られず、適宜設計することができる。