(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6133071
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】発振回路及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
H03L 7/10 20060101AFI20170515BHJP
H03L 7/14 20060101ALI20170515BHJP
H03L 7/08 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
H03L7/10 110
H03L7/14 160
H03L7/08 102
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-22365(P2013-22365)
(22)【出願日】2013年2月7日
(65)【公開番号】特開2014-155004(P2014-155004A)
(43)【公開日】2014年8月25日
【審査請求日】2016年1月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 亮
(72)【発明者】
【氏名】吉川 徹
【審査官】
橋本 和志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−027981(JP,A)
【文献】
特開昭58−066422(JP,A)
【文献】
特開平07−030413(JP,A)
【文献】
特開2010−206720(JP,A)
【文献】
特開平02−104022(JP,A)
【文献】
特開平09−162726(JP,A)
【文献】
特開平01−135134(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03L1/00−9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
VCO駆動電圧を入力してそれに対応する周波数の発振信号を出力する電圧制御発振器と、
前記電圧制御発振器から出力される前記発振信号の周波数を1/Nに分周する分周器と、
一定の基準周波数の信号を出力する入力基準信号源と、
前記分周器から出力される信号の周波数と前記入力基準信号源から出力される信号の前記基準周波数とを入力して両者の差に対応する誤差信号パルスを出力する位相比較器と、
前記位相比較器から前記誤差信号パルスを入力して該誤差信号パルスの直流成分が加算されたVCO駆動電圧を出力するフィルタと、
前記フィルタから前記VCO駆動電圧を入力してA/D変換して出力するA/Dコンバータと、
前記A/DコンバータからA/D変換された前記VCO駆動電圧を入力する制御部と、
前記制御部からデジタル値の所定のVCO駆動電圧を入力してD/A変換して出力するD/Aコンバータと、
前記フィルタの出口側と前記D/Aコンバータの出口側のいずれか一方に接続されて前記電圧制御発振器に前記VCO駆動電圧を出力する第1スイッチと、
前記電圧制御発振器から外部に前記発振信号の出力をオン/オフする第2スイッチと、を備え、
前記制御部は、
前記第2スイッチをオフにする非動作時のときは、前記入力基準信号源を起動させるとともに前記第1スイッチを前記フィルタの出口側に切り替えてフィードバック制御を行わせたときの前記VCO駆動電圧を前記A/Dコンバータを介して入力し、
前記第2スイッチをオンにする動作時のときは、前記入力基準信号源を停止させるとともに前記第1スイッチを前記D/Aコンバータの出口側に切り替えて前記所定のVCO駆動電圧を前記D/Aコンバータを介して前記電圧制御発振器に入力し、
前記所定のVCO駆動電圧は、
前記制御部が前記A/Dコンバータから入力した前記VCO駆動電圧である
ことを特徴とする発振回路。
【請求項2】
前記電圧制御発振器の温度変動である外乱による前記発振信号の周波数の変動量に基づいて決定された繰り返し周期で、前記非動作時と前記動作時とが交互に行われる
ことを特徴とする請求項1に記載の発振回路。
【請求項3】
前記繰り返し周期は、その間の前記温度変動による前記発振信号の周波数の変動量が所定値以下となるように決定される
ことを特徴とする請求項2に記載の発振回路。
【請求項4】
前記電圧制御発振器の温度または該温度と相関のある別の温度を測定する温度センサと、
前記温度センサで測定されたセンサ温度に対応するVCO駆動電圧変動量のテーブルを保存するメモリと、をさらに備え、
前記非動作時に前記温度センサから取得した前記センサ温度とそのときの前記VCO駆動電圧をそれぞれ基準温度及び基準VCO駆動電圧として前記メモリに保存し、
前記制御部は、前記動作時に前記温度センサから取得した前記センサ温度と前記基準温度とから前記VCO駆動電圧変動量のテーブルを用いて前記基準VCO駆動電圧を補正して前記所定のVCO駆動電圧として前記D/Aコンバータに出力することを特徴とする請求項1に記載の発振回路。
【請求項5】
前記基準温度をT0、前記基準VCO駆動電圧をVtune0、前記動作時に前記温度センサから取得した前記センサ温度をT、そのときのVCO駆動電圧をVtuneとし、前記VCO駆動電圧変動量のテーブルをf(T)で表すとき、次式
Vtune=Vtune0+f(T0)−f(T)
で算出されるVCO駆動電圧Vtuneを前記所定のVCO駆動電圧とする
ことを特徴とする請求項4に記載の発振回路。
【請求項6】
前記非動作時に前記基準温度及び前記基準VCO駆動電圧を前記メモリに保存したのちは、前記動作時のみを継続する
ことを特徴とする請求項4または5に記載の発振回路。
【請求項7】
VCO駆動電圧を入力してそれに対応する周波数の発振信号を出力する電圧制御発振器と、前記電圧制御発振器から出力される前記発振信号の周波数を1/Nに分周する分周器と、一定の基準周波数の信号を出力する入力基準信号源と、前記分周器から出力される信号の周波数と前記入力基準信号源から出力される信号の前記基準周波数とを入力して両者の差に対応する誤差信号パルスを出力する位相比較器と、前記位相比較器から前記誤差信号パルスを入力して該誤差信号パルスの直流成分が加算されたVCO駆動電圧を出力するフィルタと、前記フィルタから前記VCO駆動電圧を入力してA/D変換して出力するA/Dコンバータと、前記A/DコンバータからA/D変換された前記VCO駆動電圧を入力する制御部と、前記制御部からデジタル値の所定のVCO駆動電圧を入力してD/A変換して出力するD/Aコンバータと、前記フィルタの出口側と前記D/Aコンバータの出口側のいずれか一方に接続されて前記電圧制御発振器に前記VCO駆動電圧を出力する第1スイッチと、前記電圧制御発振器から外部に前記発振信号の出力をオン/オフする第2スイッチと、を備える発振回路の制御方法であって、
前記第2スイッチをオフにするステップと、前記入力基準信号源を起動させるステップと、前記第1スイッチを前記フィルタの出口側に切り替えるステップと、前記制御部が前記VCO駆動電圧を前記A/Dコンバータを介して入力するステップと、所定のVCO駆動電圧を前記制御部から前記D/Aコンバータに出力するステップと、を有する非動作時の処理と、
前記第1スイッチを前記D/Aコンバータの出力側に切り替えるステップと、前記入力基準信号源を停止させるステップと、前記第2スイッチをオンに切り替えるステップと、を有する動作時の処理と、を有し、
前記所定のVCO駆動電圧は、前記制御部が前記A/Dコンバータから入力した前記VCO駆動電圧であり、
前記非動作時の処理と前記動作時の処理とを所定の周期で交互に繰り返す
ことを特徴とする発振回路の制御方法。
【請求項8】
前記発振回路は、電圧制御発振器の温度または該温度と相関のある別の温度を測定する温度センサと、前記温度センサで測定されたセンサ温度に対応するVCO駆動電圧変動量のテーブルを保存するメモリと、をさらに備え、
前記非動作時の処理では、前記温度センサから前記センサ温度を取得するとともにそのときの前記VCO駆動電圧を前記ADCから入力してそれぞれを基準温度及び基準VCO駆動電圧として前記メモリに保存するステップをさらに有し、
前記動作時の処理では、前記温度センサから取得した前記センサ温度と前記基準温度とから前記VCO駆動電圧変動量のテーブルを用いて前記基準VCO駆動電圧を補正して前記所定のVCO駆動電圧を算出するステップと、前記所定のVCO駆動電圧を前記D/Aコンバータに出力するステップと、をさらに有する
ことを特徴とする請求項7に記載の発振回路の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発振信号の周波数を安定的に制御して出力する発振回路及びその制御方法に関し、特に内部回路からのノイズの影響を低減した発振回路及びその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
安定した周波数で発振信号を出力する発振回路として、従来よりPLL(Phase Locked Loop)回路が知られている。従来の一般的なPLL回路の一例を、第8図に示す。同図に示すPLL回路900は、電圧制御発振器(VCO)901、分周器902、位相比較器903、フィルタ904、及び入力基準信号源905を備える構成としている。さらに、
図8ではPLL回路900から出力される発振信号を増幅するための増幅器906も設けられている。
【0003】
VCO901は、VCO駆動電圧Vtune[V]が入力されると、VCO駆動電圧Vtuneに応じた周波数で発振して発振信号を出力する。VCO901は、VCO駆動電圧Vtuneが上昇すると発振周波数が低下する、といった特性を有している。また、入力基準信号源905は、一定の基準周波数の信号を生成して出力する。1/Nの分周器902を有することで、VCO901は入力基準信号源905の基準周波数のN倍の周波数を有する発振信号を出力する。以下に、
図8に示すPLL回路900の基本的な動作を説明する。
【0004】
VCO901が所定のVCO駆動電圧Vtuneを入力して所定の発振周波数で安定的に動作しているとき(ロック状態)、PLL回路900に何らかの外乱が加わって発振周波数が高くなったとする。PLL回路900に加えられる外乱として、例えば温度変動が考えられる。このとき、位相比較器902から発振周波数の上昇分に相当する誤差信号パルスが出力される。この誤差信号パルスをフィルタ903に入力して通過させると、誤差信号パルスの直流成分(直流電圧)が加算されたVCO駆動電圧Vtuneが出力される。VCO駆動電圧Vtuneが上昇することで、VCO901から出力される発振信号の周波数が低下して元の周波数に戻る。
【0005】
上記説明のように、PLL回路900は、出力信号である発振信号の周波数をフィードバックするクローズドループを有しており、それによるフィードバック制御によって所望の周波数で安定的に発振する発振信号を出力することが可能となっている。
【0006】
PLL回路の小型化が図られるとともに、PLL回路内部から放射されるノイズを抑制するのが難しくなってきており、出力される発振信号にノイズが重畳して受信側の回路に影響を及ぼすおそれが生じている。ノイズを放射する内部回路として、例えば
図8に示すPLL回路900では、入力基準信号源905や位相比較器903などがある。一例として
図9に示すように、PLL回路900から出力される発振信号が増幅器906で増幅されたのちアンテナ907から空中に放射される構成の装置では、入力基準信号源905や位相比較器903からのノイズが発振信号に重畳してアンテナ907から放射されてしまうおそれがある。
【0007】
発振回路の内部で発生するノイズをできるだけ外部に漏出させないようにするために、特許文献1では回路がシールドケースで覆われて遮蔽された構成を有している。また、特許文献2では、基準信号源(基準発振器)として高調波成分を含まない正弦波基準発振器が用いられており、これにより基準発振器の高調波信号が電圧制御発振器の電圧制御端子に印加されるのを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−148031号公報
【特許文献2】特開2002−246900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の構成では、回路がシールドケースで覆われるために、回路の寸法が物理的に大きくなってしまうといった問題がある。また、特許文献2に記載の回路では高調波成分を含まない正弦波基準発振器を用いているが、その構成が複雑になるといった問題に加えて、正弦波基準発振器以外からのノイズ(例えば位相比較器からのノイズ)の影響を低減することができないといった問題もある。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、簡単な構成で内部回路からのノイズの影響を低減することが可能な発振回路及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の発振回路の第1の態様は、VCO駆動電圧を入力してそれに対応する周波数の発振信号を出力する電圧制御発振器と、前記電圧制御発振器から出力される前記発振信号の周波数を1/Nに分周する分周器と、一定の基準周波数の信号を出力する入力基準信号源と、前記分周器から出力される信号の周波数と前記入力基準信号源から出力される信号の前記基準周波数とを入力して両者の差に対応する誤差信号パルスを出力する位相比較器と、前記位相比較器から前記誤差信号パルスを入力して該誤差信号パルスの直流成分が加算されたVCO駆動電圧を出力するフィルタと、前記フィルタから前記VCO駆動電圧を入力してA/D変換して出力するA/Dコンバータと、前記A/DコンバータからA/D変換された前記VCO駆動電圧を入力する制御部と、前記制御部からデジタル値の所定のVCO駆動電圧を入力してD/A変換して出力するD/Aコンバータと、前記フィルタの出口側と前記D/Aコンバータの出口側のいずれか一方に接続されて前記電圧制御発振器に前記VCO駆動電圧を出力する第1スイッチと、前記電圧制御発振器から外部に前記発振信号の出力をオン/オフする第2スイッチと、を備え、前記制御部は、前記第2スイッチをオフにする非動作時のときは、前記入力基準信号源を起動させるとともに前記第1スイッチを前記フィルタの出口側に切り替えてフィードバック制御を行わせたときの前記VCO駆動電圧を前記A/Dコンバータを介して入力し、前記第2スイッチをオンにする動作時のときは、前記入力基準信号源を停止させるとともに前記第1スイッチを前記D/Aコンバータの出口側に切り替えて前記所定のVCO駆動電圧を前記D/Aコンバータを介して前記電圧制御発振器に入力
し、前記所定のVCO駆動電圧は、前記制御部が前記A/Dコンバータから入力した前記VCO駆動電圧であることを特徴とする。
【0012】
本発明の発振回路の他の態様は、
前記電圧制御発振器の温度変動である外乱による前記発振信号の周波数の変動量に基づいて決定された繰り返し周期で、前記非動作時と前記動作時とが交互に行われることを特徴とする。
【0013】
本発明の発振回路の他の態様は、
前記繰り返し周期は、その間の前記温度変動による前記発振信号の周波数の変動量が所定値以下となるように決定されることを特徴とする。
【0014】
本発明の発振回路の他の態様は、
前記電圧制御発振器の温度または該温度と相関のある別の温度を測定する温度センサと、前記温度センサで測定されたセンサ温度に対応するVCO駆動電圧変動量のテーブルを保存するメモリと、をさらに備え、前記非動作時に前記温度センサから取得した前記センサ温度とそのときの前記VCO駆動電圧をそれぞれ基準温度及び基準VCO駆動電圧として前記メモリに保存し、前記動作時は、前記温度センサから取得した前記センサ温度と前記基準温度とから前記VCO駆動電圧変動量のテーブルを用いて前記基準VCO駆動電圧を補正して前記所定のVCO駆動電圧として前記D/Aコンバータに出力することを特徴とする。
【0015】
本発明の発振回路の他の態様は、
前記基準温度をT0、前記基準VCO駆動電圧をVtune0、前記動作時に前記温度センサから取得した前記センサ温度をT、そのときのVCO駆動電圧をVtuneとし、前記VCO駆動電圧変動量のテーブルをf(T)で表すとき、次式
Vtune=Vtune0+f(T0)−f(T)
で算出されるVCO駆動電圧Vtuneを前記所定のVCO駆動電圧とすることを特徴とする。
【0016】
本発明の発振回路の他の態様は、
前記非動作時に前記基準温度及び前記基準VCO駆動電圧を前記メモリに保存したのちは、前記動作時のみを継続することを特徴とする。
【0017】
本発明の発振回路の
制御方法の第1の態様は、VCO駆動電圧を入力してそれに対応する周波数の発振信号を出力する電圧制御発振器と、前記電圧制御発振器から出力される前記発振信号の周波数を1/Nに分周する分周器と、一定の基準周波数の信号を出力する入力基準信号源と、前記分周器から出力される信号の周波数と前記入力基準信号源から出力される信号の前記基準周波数とを入力して両者の差に対応する誤差信号パルスを出力する位相比較器と、前記位相比較器から前記誤差信号パルスを入力して該誤差信号パルスの直流成分が加算されたVCO駆動電圧を出力するフィルタと、前記フィルタから前記VCO駆動電圧を入力してA/D変換して出力するA/Dコンバータと、前記A/DコンバータからA/D変換された前記VCO駆動電圧を入力する制御部と、前記制御部からデジタル値の所定のVCO駆動電圧を入力してD/A変換して出力するD/Aコンバータと、前記フィルタの出口側と前記D/Aコンバータの出口側のいずれか一方に接続されて前記電圧制御発振器に前記VCO駆動電圧を出力する第1スイッチと、前記電圧制御発振器から外部に前記発振信号の出力をオン/オフする第2スイッチと、を備える発振回路の制御方法であって、前記第2スイッチをオフにするステップと、前記入力基準信号源を起動させるステップと、前記第1スイッチを前記フィルタの出口側に切り替えるステップと、前記制御部が前記VCO駆動電圧を前記A/Dコンバータを介して入力するステップと、所定のVCO駆動電圧を前記制御部から前記D/Aコンバータに出力するステップと、を有する非動作時の処理と、前記第1スイッチを前記D/Aコンバータの出力側に切り替えるステップと、前記入力基準信号源を停止させるステップと、前記第2スイッチをオンに切り替えるステップと、を有する動作時の処理と、を有し、前記所定のVCO駆動電圧は、前記制御部が前記A/Dコンバータから入力した前記VCO駆動電圧であり、前記非動作時の処理と前記動作時の処理とを所定の周期で交互に繰り返すことを特徴とする。
【0018】
本発明の発振回路の制御方法の
他の態様は、
前記発振回路は、電圧制御発振器の温度または該温度と相関のある別の温度を測定する温度センサと、前記温度センサで測定されたセンサ温度に対応するVCO駆動電圧変動量のテーブルを保存するメモリと、をさらに備え、前記非動作時の処理では、前記温度センサから前記センサ温度を取得するとともにそのときの前記VCO駆動電圧を前記ADCから入力してそれぞれを基準温度及び基準VCO駆動電圧として前記メモリに保存するステップをさらに有し、前記動作時の処理では、前記温度センサから取得した前記センサ温度と前記基準温度とから前記VCO駆動電圧変動量のテーブルを用いて前記基準VCO駆動電圧を補正して前記所定のVCO駆動電圧を算出するステップと、前記所定のVCO駆動電圧を前記D/Aコンバータに出力するステップと、をさらに有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、簡単な構成で内部回路からのノイズの影響を低減することが可能な発振回路及びその制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る発振回路の構成(非動作時)を示すブロック図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る発振回路の構成(動作時)を示すブロック図である。
【
図3】第1実施形態に係る発振回路の制御方法を示すフローチャートである。
【
図4】本発明の第2実施形態に係る発振回路の構成(非動作時)を示すブロック図である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係る発振回路の構成(動作時)を示すブロック図である。
【
図6】VCO駆動電圧変動量f(T)のテーブルの一例を示すグラフである。
【
図7】第1実施形態に係る発振回路の制御方法を示すフローチャートである。
【
図8】従来の一般的なPLL回路の構成例を示すブロック図である。
【
図9】従来のPLL回路から出力される発振信号を空中に放射するように構成された装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の好ましい実施の形態における発振回路及びその制御方法について、図面を参照して詳細に説明する。同一機能を有する各構成部については、図示及び説明簡略化のため、同一符号を付して示す。
【0024】
(第1実施形態)
本発明の第1の実施の形態に係る発振回路及びその制御方法を、
図1を用いて以下に説明する。
図1は、本実施形態の発振回路100の構成を示すブロック図である。本実施形態の発振回路100は、電圧制御発振器(VCO)101、1/N分周器102、位相比較器103、フィルタ104、及び入力基準信号源105を備えてPLL回路相当部110を構成しており、さらにVCO101から出力される発振信号を増幅するための増幅器106が設けられている。これに加えて、本実施形態の発振回路100では、制御部111、A/Dコンバータ(ADC)112、D/Aコンバータ(DAC)113、及び第1スイッチ114と第2スイッチ115が追加されて構成されている。
【0025】
第1実施形態では、発振回路100が、発振信号を外部に出力している状態(以下では、この状態を発振回路100の動作時という。)と、発振信号を外部に出力していない状態(以下では、この状態を非動作時という。)とを交互に繰り返すように制御される。一例として、発振回路100がレーダの送信信号の生成に用いられた場合、レーダから送信信号が放射されるときに発振回路100が動作時の状態となる。そして、送信信号の放射後は、つぎの送信信号を放射する周期に達するまでの間、発振回路100は非動作時の状態となる。レーダでは、発振回路100が非動作時の間に、送信信号が対象物で反射された反射波を受信して対象物の位置等を測定する。
【0026】
ADC112は、VCO101に印加されるVCO駆動電圧Vtune[V]を入力してデジタル信号に変換し、これを制御部111に入力する。またDAC113は、制御部111からデジタル信号を入力し、これをアナログ信号に変換して出力する。制御部111は、発振回路100を動作時の状態と非動作時の状態とに交互に切り替える制御を行っている。第1スイッチ114は、VCO101の電圧制御端子をフィルタ104の出力側またはDAC113の出力側のいずれか一方に接続する。さらに、第2スイッチ115は、VCO101から出力される発振信号が増幅器106に入力されるのをオン/オフする。
【0027】
制御部111は、非動作時のときは、入力基準信号源105を起動して作動状態にするとともに、第1スイッチ114をフィルタ104の出力側に接続し、第2スイッチ115をオフにする。
図1は、発振回路100が発振信号を外部に出力しない非動作時の状態を示している。第1スイッチ114がフィルタ104の出力側に接続されることで、PLL回路相当部110はクローズドループを形成している。これにより、PLL回路相当部110は、所望の周波数(入力基準信号源105の基準周波数のN倍の周波数)を有する発振信号をVCO101で生成する。
【0028】
図1に示すように発振回路100が非動作時の状態にあるとき、制御部111はADC112を介してVCO101に入力されるVCO駆動電圧Vtuneを入力する。すなわち、制御部111は、PLL回路相当部110においてVCO101が所望の周波数の発振信号を生成するようにフィードバック制御されているときのVCO駆動電圧Vtuneを入力して保持する。
【0029】
つぎに、発振回路100を非動作時の状態から動作時の状態に切り替えるとき、制御部111は入力基準信号源105を停止するとともに、第1スイッチ114をDAC113の出力側に切り替え、さらに第2スイッチ115をオンにする。このときの発振回路の状態を
図2に示す。
図2は、発振回路100が発振信号を外部に出力する動作時の状態を示すブロック図である。動作時の状態では、第1スイッチ114がフィルタ104の出力側からDAC113の出力側に切り替えられることで、PLL回路相当部110がオープンループとなる。その結果、PLL回路相当部110によるフィードバック制御は行われなくなる。
【0030】
制御部111は、動作時の状態に切り替えると同時に、非動作時にADC112から入力したVCO駆動電圧Vtuneの最新値をDAC113に出力する。あるいは、非動作時にADC112から入力したVCO駆動電圧VtuneをDAC113に常時出力するようにしてもよい。DAC113は、制御部111から入力したデジタル値のVCO駆動電圧Vtuneをアナログ値に変換して出力し、これが第1スイッチ114を経由してVCO101に入力される。これにより、直前の非動作時と同様に、VCO101が所望の周波数を有する発振信号を生成する。そして、第2スイッチ115がオンにされることで、VCO101で生成された発振信号が増幅器106で増幅されて外部に出力される。
【0031】
図2に示す発振回路100が動作時の状態では、入力基準信号源105が停止されてPLL回路相当部110が作動しない状態にある。その結果、入力基準信号源105や位相比較器103からノイズが発生することはなく、VCO101からノイズの影響を受けない発振信号を出力することが可能となる。
【0032】
本実施形態の発振回路100によれば、VCO101が所望の周波数の発振信号を生成するときのVCO駆動電圧Vtuneを非動作時にフィードバック制御により求め、動作時には直前の非動作時のVCO駆動電圧VtuneをVCO101に入力することで、所望の周波数を有する発振信号を生成することが可能となる。また、動作時には入力基準信号源105を停止してPLL回路相当部110を作動させないようにすることで、入力基準信号源105等からのノイズの影響を受けない発振信号を出力することが可能となる。
【0033】
ところで、VCO駆動電圧Vtuneを一定値に保持してPLL回路相当部110をオープンループにしたままVCO101で発振信号の生成を継続していると、外乱により発振信号の周波数が所望の周波数から変動するおそれがある。そのような外乱として、例えばVCO101の温度変動がある。VCO101は温度変動の影響を受けやすく、温度変化に伴って出力する発振信号の周波数が変化する。
【0034】
そこで、フィードバック制御により所望の周波数の発振信号を出力するVCO駆動電圧Vtuneが得られる非動作時の状態と、直前の非動作時に得られたVCO駆動電圧Vtuneを入力して発振信号を生成しこれを外部に出力する動作時の状態と、を繰り返し行うのがよい。これにより、温度変動等の外乱の影響を低減して所望の周波数の発振信号を出力することが可能となる。非動作時の状態と動作時の状態との繰り返し周期は、外乱による発振信号の周波数の変動量に基づいて決定するのがよく、例えば温度変動よりも速い周期とするのが好ましい。
【0035】
本実施形態の発振回路100の制御方法を、
図3を用いて以下に説明する。
図3は、本実施形態の発振回路100の制御方法を示すフローチャートである。発振回路100の制御として、まずステップS1において第2スイッチをオフにする。これにより、発振回路100は発振信号の出力を停止して非動作時の状態となる。つぎのステップS2で入力基準信号源105を起動させ、ステップS3で第1スイッチ114をフィルタ104の出口側に切り替える。
【0036】
上記ステップS2、3の処理により、PLL回路相当部110がクローズドループを形成して発振周波数のフィードバック制御が行われ、VCO101で生成される発振信号の周波数が所望の周波数に一致するVCO駆動電圧VtuneがVCO101に入力される。制御部111は、このときのVCO駆動電圧VtuneをADC112を介して入力する(ステップS4)。さらに、入力したVCO駆動電圧VtuneをDAC113に出力する(ステップS5)。あるいは、発振回路100が起動時に切り替えられるときに、VCO駆動電圧VtuneをDAC113に出力するようにしてもよい。
【0037】
つぎに、発振回路100の動作時の制御方法について説明する。ステップS6において、第1スイッチ114をDAC113の出力側に切り替える。これにより、PLL回路相当部110はクローズドループからオープンループに切り替えられる。そして、VCO101はDAC113からVCO駆動電圧Vtuneを入力して発振信号を生成する。つぎのステップS7では、ノイズを発生させる入力基準信号源105を停止させ、ステップS8で第2スイッチ114をオンに切り替える。これにより、ノイズの影響を低減させた所望の周波数の発振信号がVCO101から外部に出力される。
【0038】
ステップS9では、VCO101から外部に出力される発振信号を用いた測定等が行われる。必要な発振信号の出力を完了すると、発振回路100は再びステップS1に戻ってPLL回路相当部110におけるクローズドループによるVCO101の制御が行われる。以下、同様にして発振回路100の動作時と非動作時が繰り返し行われる。
【0039】
本実施形態の発振回路100によれば、動作時には入力基準信号源105を停止してPLL回路相当部110を作動させないことから、ノイズの影響を低減させた発振信号を出力することが可能となる。これにより、EMC(Electro-Magnetic Compatibility)対策を実現でき、電波法規制をクリアすることが可能となる。また、動作時の消費電力の低減や発熱の低減を図ることができる。本実施形態の発振回路100を用いたレーダでは測定精度を向上することができ、映像・音響機器では音質・画質を向上することができる。
【0040】
(第2実施形態)
本発明の第2の実施の形態に係る発振回路及びその制御方法を、
図4、5を用いて以下に説明する。
図4、5は、本実施形態の発振回路200の構成を示すブロック図であり、
図4は発振回路200が非動作時のときの状態を示し、
図5は発振回路200が動作時のときの状態を示している。本実施形態の発振回路200は、第1実施形態の発振回路100にさらに温度センサ201とメモリ202を追加した構成を有している。
【0041】
温度センサ201は、VCO101の温度またはそれと相関のある別の温度を測定するものであり、サーミスタや熱電対等を用いることができる。また、VCO101等の温度を直接測定する温度センサに限らず、例えば制御部111に温度センサが内蔵されているときはこれを用いてもよい。以下では、いずれかの温度センサで測定された温度をセンサ温度Tとする。
【0042】
第1実施形態の発振回路100では、VCO101の温度変動の影響を低減させるために、PLL回路相当部110をオープンループにした動作時の状態とクローズドループにした非動作時の状態とを繰り返し行う必要があった。これに対し本実施形態では、VCO101の温度変動の影響を、取得したセンサ温度Tを用いてその変動分に対応するVCO駆動電圧Vtuneを調整するように構成している。
【0043】
温度変動分に対応するVCO駆動電圧Vtuneの調整量を算出するために、本実施形態では、センサ温度Tに対応するVCO駆動電圧変動量f(T)のテーブルを事前に作成し、これをメモリ202に保存しておく。メモリ202は、VCO駆動電圧変動量f(T)のテーブルを保存するための記憶装置であり、EEPROMやFLASHROM等の不揮発性メモリを用いるのがよい。
【0044】
VCO駆動電圧変動量f(T)のテーブルの一例を
図6に示す。
図6は、横軸をセンサ温度Tとし、縦軸にVCO駆動電圧変動量f(T)を示している。同図に示すようなセンサ温度Tに対応するVCO駆動電圧変動量f(T)を事前に求め、これをテーブルにしてメモリ202に保存しておく。あるいは、VCO駆動電圧変動量f(T)をセンサ温度Tの関数として最適化したものをメモリ202に保存しておき、これを読み出して測定したセンサ温度Tを代入することでVCO駆動電圧変動量f(T)を算出するようにしてもよい。
【0045】
本実施形態の発振回路200の動作を、
図4、5を用いて説明する。まず、
図4に示す発振回路200の非動作時では、第2スイッチ115をオフにして発振信号が外部に出力されないようにする。また、第1スイッチ114をフィルタ104の出力側に接続してPLL回路相当部110をクローズドループの状態にする。そして、入力基準信号源105を起動することにより、VCO101から所望の周波数の発振信号が出力されるようにフィードバック制御によりVCO駆動電圧Vtuneが演算される。制御部111は、非動作時のVCO駆動電圧VtuneをADC112から入力するとともに、温度センサ201からセンサ温度Tを入力する。
【0046】
つぎに、
図5に示す発振回路200の動作時に移行すると、制御部111は非動作時から動作時に移行する直前のVCO駆動電圧Vtune及びセンサ温度を、それぞれ基準VCO駆動電圧Vtune0及び基準温度T0として保持する。そして、制御部111は基準VCO駆動電圧Vtune0をDAC113に出力する。第1スイッチ114がDAC113の出力側に切り替えられると、DAC113から出力されるアナログ値の基準VCO駆動電圧Vtune0がVCO101に入力される。
【0047】
発振回路200が動作時に移行した直後は、センサ温度Tは直前の非動作時の基準温度T0からほとんど変化していないことから、基準VCO駆動電圧Vtune0を入力したVCO101は所望の周波数の発振信号を出力する。入力基準信号源105が停止され、第2スイッチがオンに切り替えられると、VCO101から所望の周波数の発振信号が外部に出力される。
【0048】
発振回路200が動作時の状態に移行したのちは、制御部111は温度センサ201からセンサ温度Tを逐次入力し、VCO駆動電圧変動量f(T)のテーブルを用いて次式によりVCO駆動電圧Vtuneを算出する。
VCO駆動電圧Vtune=VCO駆動電圧Vtune0+f(T0)−f(T) (1)
【0049】
制御部111は、上記式(1)で算出したVCO駆動電圧VtuneをDAC113に出力し、これをVCO駆動電圧VtuneとしてDAC113からVCO101に入力させる。本実施形態では、センサ温度がT0からTに変動したことに対応するVCO駆動電圧Vtuneの変動分を、[f(T0)−f(T)]で補償するようにしている。その結果、式(1)で算出されたVCO駆動電圧VtuneをVCO101に入力することにより、VCO101から所望の周波数を有する発振信号を出力させることができる。
【0050】
第1実施形態の発振回路100では、VCO101の温度変動の影響を低減させるために、PLL回路相当部110をオープンループにした動作時とクローズドループにした非動作時とを交互に繰り返すことで、VCO101から出力される発振信号の周波数が温度変化によって変動しないようにしていた。これに対し本実施形態の発振回路200では、最初のPLL回路相当部110のクローズドループ時に、制御部111が基準VCO駆動電圧Vtune0及び基準温度T0を取得することで、それ以降はPLL回路相当部110をオープンループにして用いることができる。従って、本実施形態の発振回路200は、発振信号を間欠的でなく常時出力させるシステムに用いることができる。
【0051】
本実施形態の発振回路200の制御方法を、
図7を用いて以下に説明する。
図7は、本実施形態の発振回路200の制御方法を示すフローチャートである。
図7に示すステップS1〜S9の処理は、第1実施形態の発振回路100の制御方法と同じである。
【0052】
本実施形態では、ステップS6で第1スイッチ114をDAC113側に切り替える直前において、ステップS11で温度センサ201からセンサ温度Tを入力するとともに、そのときのVCO駆動電圧VtuneをADC112から入力し、それぞれを基準温度T0及び基準VCO駆動電圧Vtune0として保存する。また、VCO駆動電圧変動量f(T)のテーブルを用いて基準温度T0におけるVCO駆動電圧変動量(T0)を算出して保存する。
【0053】
発振回路200を非動作時から動作時に切替後、ステップS12において温度センサ201からセンサ温度Tを入力するとともに、VCO駆動電圧変動量f(T)のテーブルを用いてセンサ温度TでのVCO駆動電圧変動量f(T)を算出する。ステップS13では、式(1)を用いて基準VCO駆動電圧Vtune0に対し温度変動による変動量を補正したVCO駆動電圧Vtuneを算出する。
【0054】
ステップS14では、温度変動に対する補正が行われたVCO駆動電圧VtuneをDAC113に出力してアナログ信号に変換し、これをVCO駆動電圧VtuneとしてVCO101に入力する。これにより、VCO101から所望の周波数の発振信号が出力される。
【0055】
なお、本実施の形態における記述は、本発明に係る発振回路及びその制御方法の一例を示すものであり、これに限定されるものではない。本実施の形態における発振回路及びその制御方法の細部構成及び詳細な動作などに関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0056】
100、200 発振回路
101 電圧制御発振器
102 分周器
103 位相比較器
104 フィルタ
105 入力基準信号源
106 増幅器
110 PLL回路相当部
111 制御部
112 A/Dコンバータ
113 D/Aコンバータ
114 第1スイッチ
115 第2スイッチ
201 温度センサ
202 メモリ