(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記外筒部の外側には円周方向に連続した凸部が設けられ、前記凸部が設けられた前記外筒部の内側には、前記拡径部材により押圧される押圧部を有することを特徴とする請求項1記載の壁部貫通部材の壁への固定構造。
前記内筒部は、前記内筒部の軸に垂直な断面において円形であって、前記内筒部の先端の方が、前記内筒部の前記接続部と接続している部位よりも、前記円形の径が小さいことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の壁部貫通部材の壁への固定構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、シーリング剤を用いた湿式の壁部貫通構造は、作業者のスキルによって、止水性等のばらつきが大きく、十分な止水性を確保することが困難である。また、シーリング剤の乾燥には、24時間以上の時間を要するため、設置に時間を要するという問題がある。
【0007】
また、シーリング剤を用いない、特許文献1のような乾式の方法では、壁部貫通部材が壁部を挟み込むようにして固定され、壁面と壁部貫通部材との密着性を確保することは容易であるが、貫通部材と貫通孔内面との密着性を確保することは困難である。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、設置が容易で、かつ壁部貫通部材と貫通孔内面との密着性を確保することが可能な壁部貫通部材
の壁への固定構造等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するため、第1の発明は、弾性部材と、リング部材と、固定部材と、拡径部材からなる壁部貫通部材であって、前記弾性部材は、内筒部と、外筒部と、前記内筒部と前記外筒部とを接続する接続部と、
フランジ部と、を有し、
前記外筒部は、前記内筒部よりも大径であり、前記外筒部が前記内筒部の外側に配置され、前記外筒部と前記内筒部は、それぞれの一端側において前記接続部で接続され、前記外筒部の前記接続部とは反対側の端部に、前記フランジ部が設けられ、前記フランジ部は、前記外筒部から外方に突出するように円板状に設けられ、前記拡径部材と前記リング部材は前記内筒部と前記外筒部との間に設けられ、前記拡径部材は、前記リング部材の外周側に設けられ、前記リング部材を前記内筒部と前記外筒部の間で移動させる移動手段と、前記拡径部材を拡径する拡径手段を有
し、前記移動手段は、前記固定部材の第1のねじ部と前記リング部材の第2のねじ部からなり、前記固定部材の第1のねじ部を前記リング部材の第2のねじ部が締結しており、前記固定部材を回転させることで、前記リング部材が前記固定部材の回転軸に平行に前記弾性部材の前記フランジ部側に移動することができるもので、前記拡径手段は、前記リング部材と前記拡径部材からなり、前記拡径部材と前記リング部材の接触部を形成する前記拡径部材の内周面と前記リング部材の外周面にはそれぞれ、リング部材側テーパ部および拡径部材側テーパ部が前記リング部材の移動方向に対して相互に対向するように設けられ、前記リング部材の最大外径は、前記拡径部材側テーパ部の最大内径より大きく形成され、さらに、前記リング部材側テーパ部が、前記拡径部材側テーパ部へ挿入され、前記拡径部材側テーパ部に接触して押し込まれることで、前記拡径部材を径方向に押し広げることができるものであり、前記フランジ部を壁面側に押圧する押さえプレートを有し、前記固定部材は固定部材フランジ部を有しており、前記固定部材フランジ部で前記押さえプレートを押圧して前記弾性部材を固定し、前記フランジ部と前記外筒部の間には、前記外筒部の外径に対して水膨張部材の配置が可能な程度に外径が小さくなるように、周方向に溝が形成され、前記溝と前記フランジ部の背面側には、前記水膨張部材が貫通孔の内面と壁面を連続して被い相互に対向するように断面L字状に設けられるもので、前記固定部材を前記弾性部材の前記
フランジ部側から回転させることのみで壁部に固定することが可能なことを特徴とする壁部貫通部材の壁への固定構造である。
【0012】
前記外筒部の外側には円周方向に連続した凸部が設けられ、前記凸部が設けられた外筒部の内側には、前記拡径部材により押圧される押圧部を有してもよい。
【0013】
前記内筒部は、前記内筒部の軸に垂直な断面において円形であって、前記内筒部の先端の方が、前回内筒部の前記接続部と接続している部位よりも、前記円形の径が小さくてもよい。
【0015】
第1の発明によれば、リング部材を拡径部材に押し込むことで拡径部材が押し広げられ、拡径部材によって弾性部材の貫通孔密着部を外方に押し広げることができる。すなわち拡径手段によって、拡径部材が押し広げられ、拡径部材によって弾性部材の貫通孔密着部を外方に押し広げることができる。このため、貫通孔の内面に弾性部材を密着させることができる。この結果、貫通孔と弾性部材との隙間から水が浸入することを防止することができる。
【0016】
また、リング部材を拡径部材側に移動させる移動手段を設けることで、リング部材を容易に拡径部材に押し込むことができる。特に、移動手段が、固定部材とリング部材に設けられたねじ部であれば、固定部材とリング部材のねじ部同士を螺合させて、固定部材を回転させることで、容易にリング部材をねじ部の軸方向へ移動させることができる。すなわち、固定部材の回転によって、拡径部材を拡径させて、弾性部材の貫通孔密着部を貫通孔の内面に密着させることができる。
さらに、弾性体と壁面との間に、水膨張部材を配置することで、弾性部材と貫通孔との間に水が浸入した場合であっても、水が、屋内側まで浸入することを防止することができる。
【0017】
また、外筒部の外周面に、円周方向に連続する凸部を形成することで、凸部が貫通孔の内面につぶれるように押圧されるので、外周面全体が貫通孔内面に当接する場合と比べて、凸部に応力を集中させることができる。さらに前記凸部の外径を貫通孔の内径よりも大きくすることができる。このように凸部の外径を貫通孔の内径よりも大きくすると、弾性部材が縮径されて貫通孔に押し込まれるため、前記凸部が弾性部材自身の復元力で貫通孔内面に押圧され、凸部における押圧力を高め、確実に止水性を高めることができる。
【0018】
また、内筒部が、先端に行くにつれて内径が縮径するため、大径側を屋外側とし、小径側を屋内側として配置した際に、長尺体と長尺体保持部との間の止水性を確保することができる。
【0023】
第2の発明は、第1の発明にかかる壁部貫通部材の壁への固定構造の施工方法であって、前記弾性部材を、前記弾性部材の前記フランジ部側が貫通孔壁面に対向するように、前記弾性部材の前記接続部を貫通孔に向けて貫通孔に挿入して、前記固定部材を
弾性部材のフランジ部側から回転させて、前記リング部材を移動させ、前記リング部材を前記拡径部材に押し込
むことで、前記リング部材側テーパ部で前記拡径部材側テーパ部を押圧し、前記拡径部材を拡径することで、
前記外筒部の内面を前記拡径部材によって押圧し、前記外筒部の外側に円周方向に連続して設けられた凸部と前記外筒部の貫通孔密着部を除く部分に設けられた水膨張部材とを前記貫通孔
の内面に押圧し、
前記凸部と前記水膨張部材を前記貫通孔の内面に押圧して密着させることで、前記貫通孔
の内面と前記弾性部材
と前記貫通孔の内面の水膨張部材とを固定
して、さらに、前記固定部材フランジ部で前記押さえプレートを押圧することで、前記弾性部材の前記フランジ部と、前記弾性部材の前記フランジ部と壁部の内面の間の水膨張部材とを押圧する際に、前記弾性部材の前記貫通孔への挿入と、前記固定部材の回転による壁部貫通部材の固定と止水を、壁部に対して前記弾性部材の前記フランジ部側の壁部の一方の側からのみで施工作業を行なうことが可能な壁部貫通部材の
壁への固定構造の施工方法である。
【0024】
第
2の発明によれば、壁部の一方の側からのみで施工作業を行うことができる。また、固定部材を回転させるのみで、拡径部材を拡径させて、弾性部材を貫通孔内面に押し付けて、止水性を確保することができるため、施工作業性が良好である。さらに、本発明によれば、壁部と壁部貫通孔の止水部材との固定に際して、壁を両側から挟み込んで固定しないので、固定部材を挿入可能な壁の厚みを確保できれば、様々な厚さの壁に適用することが可能である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、設置が容易で、かつ壁部貫通部材と貫通孔内面との密着性を確保することが可能な壁部貫通部材
の壁への固定構造等を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明にかかる
壁部貫通部材の壁への固定構造に用いる壁部貫通部材について説明する。
図1は壁部貫通部材1を示す分解斜視図である。壁部貫通部材1は、主に、水膨張部材3、弾性部材5、リング部材7、拡径部材9、押さえプレート11、固定部材13等から構成される。
【0028】
図2は、弾性部材5の断面を示す図である。弾性部材5は、外筒部である貫通孔密着部19、内筒部である長尺体保持部21、貫通孔密着部19と長尺体保持部21とを接続する接続部、フランジ部15等からなる。弾性部材5は、シリコーンゴムやEPDMゴムなどの弾性材料によって形成される。したがって、弾性部材5は、全体として柔軟性を有する。
【0029】
貫通孔密着部19は、貫通孔の内面に密着する円筒状の部位である。貫通孔密着部19の外周面には、円周方向に連続する凸部17が設けられる。すなわち、貫通孔密着部19は、凸部17において、周囲よりも外径が大きくなる。凸部17の高さは、1mm程度であればよい。
【0030】
長尺体保持部21は、貫通孔密着部19と接続部を介して一体で形成される。長尺体保持部21は、貫通孔密着部19の内部に形成され、貫通孔密着部19よりも小径の筒状部である。貫通孔密着部19と長尺体保持部21は、一端側(図中左側であって、この部位を接続部とする)で接続される。すなわち、貫通孔密着部19の一端側を中心方向に向けて折り返して接続部とし、さらに接続部の他端側(図中右側)に向かって折り返すことで、長尺体保持部21が形成される。
【0031】
長尺体保持部21は、内部に配線や配管などの長尺体(貫通挿通部材)が挿通される部位である。長尺体保持部21は、先端(図中右側であって、貫通孔密着部19と連結される側とは逆側)に向かうにつれて、内径が縮径される。すなわち、長尺体保持部21は、長尺体保持部21の軸に垂直な断面において円形であって、長尺体保持部21の先端の方が、長尺体保持部21の接続部側よりも、円形の径が小さい。したがって、長尺体保持部21は、先端に向けて縮径するテーパ形状となる。
【0032】
貫通孔密着部19の先端方向(図中右側であって、長尺体保持部21と連結される側であって接続部とは逆側)には、フランジ部15が設けられる。フランジ部15は、貫通孔密着部19の外径に対して、さらに外方に突出するように設けられる円板状の部位である。なお、長尺体保持部21の先端位置は、フランジ部15の位置からさらに突出する。
【0033】
フランジ部15と貫通孔密着部19の間には、貫通孔密着部19の外径に対してやや外径が小さくなるように、周方向に溝が形成される。当該溝とフランジ部15の背面側には、水膨張部材3が設けられる。水膨張部材3は、水分を含むと膨張する部材である。なお、水膨張部材3は、必ずしも必要ではなく、必要に応じて用いればよい。
【0034】
貫通孔密着部19の内部側には、拡径部材収容部39が設けられる。拡径部材収容部39は、後述する拡径部材9が収容される部位であり、凸部17が形成される位置の内面側に形成される。拡径部材収容部39は、周囲に対して、内径が拡径される部位である。
【0035】
拡径部材収容部39の近傍には、リング部材収容部37が設けられる。リング部材収容部37は、後述するリング部材7が収容される部位であり、拡径部材収容部39に対して軸方向に隣り合うように配置される。リング部材収容部37の内面には、部分的に回り止め35が形成される。回り止め35は、リング部材7がリング部材収容部37内で回転しないように、リング部材7と嵌合する部位であり、リング部材収容部37の内面に形成された突起状の部位である。リング部材7のリング部材収容部37への収容状態については後述する。
【0036】
なお、弾性部材5は、図示した形状に限定されない。例えば、水膨張部材3を用いない場合には、図示したような溝やフランジ部15が無くてもよい。また、貫通孔内面との密着性を十分に確保できれば、凸部17は、必ずしも必要ではない。また、凸部17を複数周に形成してもよい。また、長尺体保持部21は、挿通される配線や配管との止水性を確保できれば、必ずしもテーパ形状を有しなくてもよい。
【0037】
次に、リング部材7について説明する。
図1に示すように、リング部材7は、リング状の部材であって、例えば金属製である。リング部材7の内面側には第2ねじ部である雌ねじ部25が設けられる。雌ねじ部25は、後述する固定部材13と螺合する部位である。リング部材7の外周部には、部分的に切欠き23が設けられる。切欠き23は、前述したリング部材収容部37の回り止め35と嵌合する。すなわち、切欠き23は、回り止め35に対応した位置に設けられる。
【0038】
リング部材7は、一方の側から、他方の側に向かって外径が徐々に小さくなるように、リング部材側テーパ部27が設けられる。リング部材側テーパ部27は、後述する拡径部材側テーパ部31と接触する部位である。
【0039】
図3は、拡径部材9を示す拡大斜視図である。拡径部材9は、板状の素材を、プレス加工等によって屈曲して形成される。拡径部材9の中心側の一部を円状に打ち抜きリング状の中心部34を形成し、中心部34の外周には略コの字形に折り曲げられた屈曲部30を形成する。屈曲部30には径方向の外方に向けて放射状に複数のスリット29が形成される。スリット29で区分されたそれぞれの部位が折曲げられる。
【0040】
より詳細には、スリット29で区分された各部を、径方向に対して所定の角度(径方向に対して90°未満)で折り曲げて拡径部材側テーパ部31が形成される。拡径部材側テーパ部31の端部は、さらに径方向に向けて折り曲げられ、外周端において、拡径部材側テーパ部31の形成側とは逆側に、径方向に対して略垂直に折曲げて、押圧面41が形成される。すなわち、拡径部材9は、中心から径方向に向けて形成された複数の板ばねが、周方向に併設された形状となる。
【0041】
拡径部材側テーパ部31は、リング部材7のリング部材側テーパ部27と接触する部位である。また、リング部材7の最大外径は、拡径部材側テーパ部31の最大内径(拡径部材側テーパ部31の最外周部の内径)よりも大きい。したがって、リング部材側テーパ部27の先端(最小径部)が、拡径部材側テーパ部31側から挿入された際、リング部材7が完全に拡径部材9内に収まる前に、テーパ部同士が接触する。テーパ部同士が接触した状態で、リング部材7をさらに拡径部材9に押し込むことで、拡径部材9の押圧面41(板ばね部)が径方向に押し広げられる。
【0042】
なお、拡径部材側テーパ部31は、平面状(任意の断面形状が略直線状)に形成され、押圧面41は、周方向の円形状に沿って、円弧状の面に形成される。すなわち、拡径部材側テーパ部31の内外両側の折り曲げ部は直線状であり、押圧面41を構成する折り曲げ部は円弧状となる。拡径部材側テーパ部31を平面状にすることで、拡径部材側テーパ部31の変形が容易となる。このため、拡径が容易となる。一方、押圧面を円弧状の面とすることで、押圧面41が内側に倒れ込むような変形が抑制される。
【0043】
なお、本実施形態では、リング部材7と拡径部材9の両者に、それぞれテーパ部を形成したが、いずれか一方に形成されれば、上記の機能を果たすことができる。例えば、リング部材7にのみリング部材側テーパ部27を形成し、拡径部材側テーパ部31を押圧面41と略平行に、径方向に対して略垂直に曲げてもよい。すなわち、拡径部材9とリング部材7の接触部を形成する拡径部材9の内周面またはリング部材7の外周面のいずれかの少なくとも一部に、リング部材7の移動方向に対して、直径の異なる部分を形成すればよい。いずれの場合でも、リング部材側テーパ部27との接触面は、平面状であることが望ましい。
【0044】
次に、固定部材13について説明する。
図4は、固定部材13の斜視図であり、
図5は断面図である。固定部材13は例えば硬質樹脂製である。固定部材13は、中央に孔が形成された略筒状の形状である。固定部材13の孔は、弾性部材5の長尺体保持部21が挿通される部位である。
【0045】
固定部材13の端部には、第1のねじ部である雄ねじ部33が形成される。雄ねじ部33は、リング部材7の第2のねじ部である雌ねじ部25と螺合する。固定部材13の外周部には、フランジ部45が形成される。
【0046】
フランジ部45の前面(第1のねじ部である雄ねじ部33とは逆側の面)には、六角部43が設けられる。六角部43は、孔の周囲に形成され、工具等によって、固定部材13を回転させる部位である。すなわち、六角部43は、工具で把持する把持部である。なお、六角部43に代えて、矩形や他の多角形など、工具によって回転させることができれば、円形を除き、その形状は問わない。
【0047】
フランジ部45は、押さえプレート11を介して、弾性部材5のフランジ部15を押圧する部位である。押さえプレート11は、中央に孔を有する円板状の部材であり、外周部に折曲げ部が形成される。押さえプレート11は、例えば金属製である。押さえプレート11は、弾性部材5のフランジ部15の全体を押圧可能なサイズで形成される。また、折曲げ部の長さは、フランジ部15と水膨張部材3の厚みの和よりもやや短いものとする。
【0048】
次に、壁部貫通部材1を用いた壁部貫通部材
の壁への固定構造について説明する。
図6は、壁部貫通部材
の壁への固定構造50を示す図である。壁部貫通部材
の壁への固定構造50は、壁部51に形成された貫通孔53に、壁部貫通部材1が固定されて形成される。なお、図中左側が屋外側であり、右側が屋内側である。
【0049】
貫通孔53には、屋内側から弾性部材5が挿入される。弾性部材5の貫通孔密着部19の外面は、貫通孔53の内面に密着する。また、弾性部材5の貫通孔密着部19を除く外周面(フランジ部15と貫通孔密着部19との間)と、貫通孔53の内面との間には、水膨張部材3が設けられる。同様に、フランジ部15と貫通孔53の周囲(壁部51の内面)との間には、水膨張部材3が設けられる。
【0050】
フランジ部15の前面からは押さえプレート11が設けられ、押さえプレート11が固定部材13のフランジ部45によって押圧される。すなわち、押さえプレート11によって、フランジ部15および水膨張部材3が壁部51の内面に押圧される。したがって、水膨張部材3が壁部51に密着する。押さえプレート11をフランジ部15により押圧するには、固定部材13の雄ねじ部33をリング部材7の雌ねじ部25に対して回転させ、固定部材13をリング部材7の側に軸方向に移動させることで行うことができる。
【0051】
弾性部材5のリング部材収容部37には、リング部材7が収容される。また、拡径部材収容部39には、拡径部材9が収容される。リング部材7の雌ねじ部25と固定部材13の雄ねじ部33とは締結される。すなわち、リング部材7は、固定部材13側に移動して締めこまれた状態となる。
【0052】
リング部材側テーパ部27と拡径部材側テーパ部31とは接触する。また、リング部材7は、固定部材13側に移動しているため、リング部材7が拡径部材9に押し込まれた状態となる。拡径部材9の内周部にリング部材7が押し込まれることで、拡径部材9が押し広げられる。すなわち、拡径部材9の押圧面41が拡径されて、貫通孔密着部19の内面側を押圧する。このため、貫通孔密着部19が貫通孔53の内面に押圧されて密着する。なお、貫通孔密着部19が貫通孔53内面に押し付けられることで、凸部17が弾性的につぶれて、貫通孔53内面に強く押し付けられる。
【0053】
このように、拡径部材9の拡径によって、貫通孔密着部19の外面を貫通孔53の内面に密着させるため、弾性部材5を貫通孔53に挿入したのみの場合と比較して、貫通孔密着部19の貫通孔53の内面への押圧力を高めることができる。また、拡径部材9の拡径は、リング部材7の軸方向への移動によって行うため、作業性も良好である。
【0054】
この状態で、長尺体保持部21に、配線や配管などの長尺体55が挿通される。長尺体保持部21内面と長尺体55とが密着するため、長尺体55と長尺体保持部21との間からの水の浸入も防止することができる。特に、長尺体保持部21は、先端に向けてテーパ形状であるため、長尺体55との密着性を確保し、外部からの水の浸入を確実に防止することができる。
【0055】
次に、壁部貫通部材固定構造の施工方法について説明する。
図7(a)は、弾性部材5とリング部材7の正面図である。前述した様に、弾性部材5のリング部材収容部37には、周方向に所定の間隔で回り止め35が設けられる。回り止め35は、リング部材収容部37の外周部から中心方向に突出した突起状の部位である。
【0056】
リング部材7の外周部には、回り止め35に対応した位置に、周方向に所定の間隔で切欠き23が形成される。リング部材7は、リング部材収容部37の回り止め35が、リング部材7の切欠き23に嵌るように、リング部材収容部37に収容される(図中矢印A)。
【0057】
図7(b)は、リング部材7がリング部材収容部37に収容された状態を示す図である。このようにすることで、リング部材7がリング部材収容部37の中で回転することを防止することができる。なお、リング部材7は、リング部材側テーパ部27が正面側(図面手前側)に来るようにリング部材収容部37に収容される。
【0058】
この状態で、さらに、拡径部材9を拡径部材収容部39に収容する。なお、拡径部材9は、拡径部材側テーパ部31が、リング部材側テーパ部27と対向するように、拡径部材収容部39に収容される。
【0059】
次に、
図8に示すように、屋内側から、弾性部材5等を貫通孔53に挿入する(図中矢印B)。この際、弾性部材5の所定の位置には、水膨張部材3が配置される。すなわち、弾性部材5のフランジ部15の背面側および、貫通孔密着部19以外の弾性部材5の外周面(溝)に、水膨張部材3が配置される。
【0060】
図9は、弾性部材5等が貫通孔53に配置された状態を示す図である。貫通孔密着部19に形成された凸部17における外径は、貫通孔53の内径よりも大きい。したがって、貫通孔53に弾性部材5を挿入すると、凸部17が潰れるように弾性変形する。なお、凸部17が潰れることで、その内面側(拡径部材収容部39やリング部材収容部37)が内側に変形する。このため、例えば、リング部材収容部37の内面がリング部材7の外周面に密着し、リング部材7のがたつきなどを抑えることができる。
【0061】
さらに、押さえプレート11が弾性部材5のフランジ部15を覆うように取り付けられる(図中矢印C)。また、固定部材13が押さえプレート11の孔に挿入される(図中矢印D)。押さえプレート11および固定部材13は、いずれも屋内側から取り付けることができる。なお、押さえプレート11は、あらかじめ弾性部材5または固定部材13に取り付けた状態で、弾性部材5または固定部材13と同時に設置することもできる。
【0062】
図10は、押さえプレート11および固定部材13を取り付けた状態を示す図である。この状態から、固定部材13を回転させると(図中矢印E)、固定部材13の先端に形成された雄ねじ部33がリング部材7の雌ねじ部25に螺合する。したがって、固定部材13を、弾性部材5に対して締めこむことができる(図中矢印F)。この際、リング部材7は、切欠き23と回り止め35との嵌合によって、弾性部材5内において回転することがない。したがって、確実に固定部材13がリング部材7に締結される。
【0063】
図11は、固定部材13が、弾性部材5の奥まで締めこまれた状態を示す図である。固定部材13が、弾性部材5の奥まで締めこまれると、固定部材13のフランジ部45が押さえプレート11に接触する。
【0064】
図12は、さらに固定部材13を回転させた状態を示す図である。固定部材13が、弾性部材5の奥まで締めこまれた状態で、固定部材13をさらに回転させると、固定部材13は、それ以上、弾性部材5の奥に締めこまれず、リング部材7が、固定部材13側に移動する。すなわち、雌ねじ部25と雄ねじ部33との螺合によって、リング部材7が、軸方向へ移動する(図中矢印G)。このように、リング部材7の雌ねじ部25と固定部材13の雄ねじ部33が、リング部材7を移動させる移動機構として機能する。
【0065】
リング部材7の軸方向への移動によって、リング部材7が拡径部材9に押し込まれる。従って、リング部材側テーパ部27と拡径部材側テーパ部31とが接触し、リング部材7によって、拡径部材9が押し広げられる(図中矢印H)。拡径部材9が拡径すると、外周面の押圧面41が、貫通孔密着部19の内面を押圧する(図中矢印I)。したがって、貫通孔密着部19が貫通孔53の内面に押し付けられて密着する。
【0066】
なお、拡径部材9は、拡径部材収容部39に挿入された状態では、軸方向(リング部材7の移動方向)へ移動することがない。したがって、リング部材7が拡径部材9に完全に押し込まれると、リング部材7は、それ以上、拡径部材9に押し込まれず、また、拡径部材9が移動することもない。このため、リング部材7によって、固定部材13が完全に固定されて、弾性部材5から抜けることがなく、また、固定部材13のフランジ部45によって、押さえプレート11を押圧することができる。
【0067】
また、リング部材7の雌ねじ部25が、ある程度まで固定部材13の雄ねじ部33と螺合すれば、リング部材7と拡径部材9との接触によって、リング部材7の回転が抑制される。このため、回り止め35は、固定部材13との螺合初期のリング部材7の回転が抑制されればよい。
【0068】
以上によって、壁部貫通部材1が貫通孔53に完全に固定される。また、貫通孔密着部19が貫通孔53の内面に密着するため、止水性を確保することができる。
【0069】
本実施の形態によれば、壁部51の一方の側からのみで作業を行うことができ、シーリング剤等を用いないため、施工作業性が良好である。また、固定部材13を回転させることで、リング部材7を軸方向へ移動させ、拡径部材9を押し広げることができ、拡径部材9によって貫通孔密着部19を径方向の外方へ押し付けるため、容易に止水性を確保することができる。
【0070】
また、固定部材13には、六角部43が形成されるため、例えば、六角部43の対向する直線部を把持するなどして、固定部材13を容易に回転させることができる。この際、リング部材7が弾性部材5内で回転しないように、回り止め35が形成されるため、確実に、固定部材13とリング部材7とを締結することができる。
【0071】
また、凸部17によって、貫通孔密着部19が確実に貫通孔53の内面に押し付けられて密着するため、止水性を高めることができる。
【0072】
また、水膨張部材3が用いられるため、貫通孔密着部19と貫通孔53との間から、水が浸入した場合であっても、それ以上の水の浸入を防止することができる。また、さらに、フランジ部15が、押さえプレート11によって押さえつけられるため、壁部51の表面への水の浸入を防止することができる。
【0073】
長尺体保持部21が先端に行くにつれて縮径するテーパ形状であるため、長尺体55と長尺体保持部21とを密着させて、外部からの水の浸入を防止することができる。
【0074】
本発明によれば、拡径部材による弾性部材の拡径による壁部貫通孔の止水と、固定部材により押さえプレートを押圧して、水膨張部材を壁面に押圧する壁面の止水との両方を行うことができる。また、本発明の壁貫通部材の壁部貫通孔への取り付けに際して、固定ボルトや固定用のピンなどの固定用部材を用いずに取り付けることができる。その上、本発明の壁部貫通孔の止水部材を用いれば、壁部と壁部貫通孔の止水部材との固定に際して、壁を両側から挟み込む構造でないことから、固定部材を挿入可能な程度の壁の厚みを確保できれば、壁部の一方の側からのみみの作業が可能で、さらに様々な厚さの壁に適用することができる。
【0075】
以上添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0076】
例えば、前述の実施形態では、リング部材7の移動機構として、雌ねじ部25と雄ねじ部33とが螺合する例を示したが、リング部材7を軸方向へ移動させることができれば、移動機構は、図示した例には限られない。また、移動機構を用いずに、リング部材7を直接、拡径部材9に押し込むようにしてもよい。