特許第6133346号(P6133346)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6133346
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】電力ケーブル終端接続構造
(51)【国際特許分類】
   H02G 15/22 20060101AFI20170515BHJP
【FI】
   H02G15/22
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-65014(P2015-65014)
(22)【出願日】2015年3月26日
(65)【公開番号】特開2016-185043(P2016-185043A)
(43)【公開日】2016年10月20日
【審査請求日】2016年7月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】森 大樹
【審査官】 久保 正典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−013982(JP,A)
【文献】 特開昭62−071416(JP,A)
【文献】 特開2005−341767(JP,A)
【文献】 特開昭63−056116(JP,A)
【文献】 実開昭52−062497(JP,U)
【文献】 特開2009−164038(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 15/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
OFケーブルの端部が挿入される碍管と、
前記碍管の内部において、前記OFケーブルの外周に配置されるコンデンサコーンと、
前記OFケーブルの導体と接続され、前記碍管の外部に導出される引出棒と、
を具備し、
前記碍管の内部において、前記引出棒の外周には、放熱フィンが形成されることを特徴とする電力ケーブル終端接続構造。
【請求項2】
前記放熱フィンには、孔が形成されることを特徴とする請求項1記載の電力ケーブル終端接続構造。
【請求項3】
前記碍管の内部において、前記引出棒と前記OFケーブルとの接続部の外周に、シールドリングが設けられることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電力ケーブル終端接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力ケーブルの終端接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から利用されている油浸紙絶縁ケーブル(OFケーブル:Oil filled Cable)は、通電時の発熱による温度上昇が絶縁材料の絶縁性能を低下させるほど大きくなかった。また、OFケーブルの終端接続部においても、その温度上昇値は、十分に許容できる範囲内であった。
【0003】
しかしながら、最近の電力ケーブルは、その高電圧化に伴い、絶縁厚の増加を余儀なくされている。一方、施工性等の要請から、導体径はできる限り小さくすることが望まれている。したがって、電力ケーブルの径方向の熱抵抗値が大きくなるとともに、導体通電中に発生するジュール熱が大きいため、導体の温度がかなり上昇する。
【0004】
一方、絶縁材料であるクラフト紙、PPLP(Polypropylene Laminated Paper)および油の絶縁性能は、温度上昇に伴い低下する。このため、絶縁設計上、導体最大許容温度は90℃以下にする必要がある。特に、気中終端接続部においては、電力ケーブルよりも絶縁厚が厚く、碍管等も用いられるため、熱抵抗が大きく、導体温度が許容温度をはるかに超える恐れがある。
【0005】
このため、気中終端接続部の導体温度を抑える必要があり、いくつかの方法が提案されている。例えば、局部的な温度上昇の緩和のために、ヒートパイプ型の熱交換器を用いる方法がある。この場合、ヒートパイプを電力ケーブルに沿わせたり、気中終端接続部の導体油通路にヒートパイプを挿入する方法が採られる(特許文献1)。
【0006】
また、絶縁油を循環冷却する方法がある(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−33182号公報
【特許文献2】特開平8−223770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1のように、ヒートパイプを用いると、通常の気中終端接続部に比べてサイズが大きくなり、コストが増加する。また、気中終端接続部は屋外に設置されるため、塩害などの耐久性の問題がある。
【0009】
また、特許文献2の方法では、気中終端接続部の内部の構造を大幅に変更する必要があり、例えば5〜10℃程度の温度低下を目的とする場合には、大掛かりでありコストが増加する。
【0010】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、導体の温度上昇を抑えることが可能であり、従来の施工方法と変わりがなく、外観も従来の気中終端接続部と同じである電力ケーブル終端接続構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した目的を達成するため、本発明は、OFケーブルの端部が挿入される碍管と、前記碍管の内部において、前記OFケーブルの外周に配置されるコンデンサコーンと、前記OFケーブルの導体と接続され、前記碍管の外部に導出される引出棒と、を具備し、前記碍管の内部において、前記引出棒の外周には、放熱フィンが形成されることを特徴とする電力ケーブル終端接続構造である。
【0012】
前記放熱フィンには、孔が形成されてもよい。
【0013】
前記碍管の内部において、前記引出棒と前記OFケーブルとの接続部の外周に、シールドリングが設けられてもよい。
【0014】
本発明によれば、従来のように、OFケーブルと引出棒とが碍管の端部近傍で接続されるのではなく、コンデンサコーンの端部近傍で接続される。このため、碍管の内部において、OFケーブルの導体よりも径の大きな引出棒を用いることができ、碍管内部で発生するジュール熱を低減することができる。また、碍管の内部において、引出棒の外周に放熱フィンが設けられるため、引出棒および導体からの熱を碍管内の油に放熱させることができる。したがって、終端接続部における温度上昇を抑制することができる。
【0015】
また、放熱フィンに孔を形成することで、碍管内部において、油が対流しやすくなり、冷却効果を増大することができる。
【0016】
また、引出棒とOFケーブルの接続部の外周に、シールドリングを設けることで、高圧電極の電界を緩和することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、導体の温度上昇を抑えることが可能であり、従来の施工方法と変わりがなく、外観も従来の気中終端接続部と同じである電力ケーブル終端接続構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】電力ケーブル終端接続構造1を示す断面図。
図2】(a)は図1のA−A線断面図、(b)は他の実施形態を示す断面図。
図3】電力ケーブル終端接続構造1aを示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<実施形態1>
以下、本発明の実施形態について説明する。図1は、電力ケーブルの長手方向に対する電力ケーブル終端接続構造1の断面図である。電力ケーブル終端接続構造1は、主に、電力ケーブル3、絶縁層7、引出棒13、絶縁油17、放熱フィン19、碍管21等から構成される。
【0020】
電力ケーブル3は、導体9を有するOFケーブルであり、図示を省略する油通路を有し、導体9の外周に絶縁紙などが複数層に巻き付けられて絶縁層7が形成され、さらに、図示を省略する遮蔽層、防食層などで被覆されたものである。
【0021】
電力ケーブル3の端部は、碍管21に挿通される。碍管21は、外周に複数のひだを有する。碍管21の内部には、絶縁油17が封入される。碍管21の内部において、電力ケーブル3の先端近傍には、コンデンサコーン11が設けられる。コンデンサコーン11の端部近傍から突出する電力ケーブル3は、絶縁層7が剥離されて、内部の導体9が露出する。
【0022】
導体9の先端には、引出棒13が接続される。例えば、引出棒13の端部に導体9を挿入して、圧縮ダイスで圧縮することで導体9と引出棒13とが接続される。また、コンデンサコーン11と引出棒13との間において、絶縁層7の外周には、図示を省略したアルミ箔が設けられる。アルミ箔によって、コンデンサコーン11と引出棒13とを導通させることができる。
【0023】
なお、引出棒13は、例えば、銅製であり、導体9よりも太いことが望ましい。引出棒13の断面積を、導体9の断面積よりも大きくすることで、引出棒13に通電した際に発生するジュール熱を抑制することができる。
【0024】
碍管21の内部において、引出棒13の外周には、複数枚の放熱フィン19が所定の間隔で接合される。放熱フィン19は、引出棒13のヒートシンクとして機能する。放熱フィン19は、引出棒13と同一の材質であることが望ましい。このようにすることで、熱膨張差による接合部の破損等を抑制することができる。
【0025】
図2(a)は、図1のA−A線断面図であって、電力ケーブル3の長手方向に対する電力ケーブル終端接続構造1の断面図である。放熱フィン19は、図示したように、引出棒13の外周面から、引出棒13の長手方向に垂直な方向に突出する。なお、放熱フィン19の平面形状は、図示した様な円形に限られず、碍管21の形状等に応じて適宜設計される。なお、放熱フィン19の外縁と碍管21の内面との間には隙間が形成され、絶縁油17が対流可能である。
【0026】
以上、本実施の形態によれば、引出棒13をコンデンサコーン11の端部近傍で電力ケーブル3と接続することで、碍管21の内部において、引出棒13の長さを十分確保することができる。したがって、引出棒13に放熱フィン19を接合することができる。このため、引出棒13から放熱フィン19によって効率よく熱を絶縁油17に拡散させ、引出棒13およびこれと接続される導体9の温度上昇を抑制することができる。
【0027】
なお、通常、最も高温となるのは、コンデンサコーン11直下の導体9および図示を省略した油通路の油であり、碍管21内の絶縁油17は、対流等によって外気温に近い温度に保たれる。したがって、導体9からの熱を引出棒13に伝導させて、絶縁油17に放熱することで、効率よく導体9等の温度を低減することができる。
【0028】
また、引出棒13を導体9よりも太くすることで、碍管21内における、引出棒13からの発熱量を抑えることができる。このため、効率よく、電力ケーブル終端接続構造1の温度上昇を抑えることができる。
【0029】
また、電力ケーブル終端接続構造1は、従来の電力ケーブル終端接続構造と比較して、外部に特殊な構成を配置したり、特殊な油通路を形成するなどの必要がない。さらに、電力ケーブル終端接続構造1の外観も、従来の電力ケーブル終端接続構造と同じであり、従来の施工方法と変わりなく施工を行うことができる。
【0030】
<実施形態2>
次に、第2の実施の形態を説明する。図2(b)は、第2の実施の形態にかかる電力ケーブル終端接続構造の断面図であり、図2(a)に対応する図である。なお、以下の説明において、図1図2(a)と同一の機能を奏する構成については、図1図2(a)と同一の符号を付し重複する説明を省略する。
【0031】
図2(b)に示す例では、放熱フィン19に孔23が形成される。すなわち、孔23は、引出棒13の長手方向に向けて貫通する。なお、孔23は、複数枚の放熱フィン19に対して、一直線上に並ぶように配置してもよく、位置が互いにずれるように配置してもよい。
【0032】
図に示す例では、引出棒13を中心として、周方向に等間隔で複数個形成される。なお、孔23の配置および大きさは、図示した例には限られない。
【0033】
このように、孔23を形成することで、孔23が絶縁油17の流路となる。このため、絶縁油17の対流が促進され、放熱フィン19と絶縁油17との熱交換効率を高めることができる。
【0034】
第2の実施の形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、孔23によって、より効率よく引出棒13の熱を拡散させることができる。また、孔23によって、重量を低減することができる。
【0035】
<実施形態3>
次に、第3の実施の形態を説明する。図3は、第3の実施の形態にかかる電力ケーブル終端接続構造1aの断面図である。電力ケーブル終端接続構造1aは、電力ケーブル終端接続構造1とほぼ同様の構成であるが、シールドリング27が設けられる点で異なる。
【0036】
電力ケーブル3の導体9と引出棒13との接続部15の外周には、座床層25が形成される。座床層25は、例えば、絶縁紙が巻き付けられて形成され、接続部15の外周の凹凸をならし、所定の外径に形成される。
【0037】
座床層25の外周には、シールドリング27が設けられる。シールドリング27は、高圧極となる接続部近傍の電界を緩和するものである。シールドリング27は、環状の部材であり、シールドリング27の内径に合わせて、前述した座床層25が形成される。なお、シールドリング27は、導体であって、例えばアルミニウム製である。
【0038】
シールドリング27は、例えば図示したように、シールドリング27の長さ方向の中心が、接続部15における引出棒13の外周に位置するように配置される。なお、シールドリング27の位置は、図示した例よりも、電力ケーブル3側(図中下側)にずらしてもよい。いずれにしても、接続部15の外周にシールドリング27が配置されていればよい。
【0039】
第3の実施の形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、シールドリング27によって、高圧極の電界を緩和することができる。
【実施例】
【0040】
図1に示す電力ケーブル終端接続構造について、評価した。
【0041】
(実施例1)
電力ケーブルとしては、導体断面積が3200mmであり、絶縁体の厚さが20.5mmのOFケーブルとした。また、コンデンサコーンの補強絶縁体の外径を251mmとし、碍管長を8mとした。また、碍管内部において、電力ケーブルの導体と引出棒とを接続し、引出棒の外周に、引出棒と銅素材の銅製の放熱フィンを20枚接合した。
【0042】
(比較例1)
実施例1に対し、放熱フィンを設けない以外は、実施例1と同一の条件とした。
【0043】
実施例1と比較例1のそれぞれの電力ケーブル終端接続構造に対して、直流3000Aの電流を流した際の熱解析を行った。結果を表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
表に示すように、放熱フィンを設けた電力ケーブル終端接続構造は、導体の最大温度を低下させることができ、90℃以下とすることができた。一方、放熱フィンを設けない電力ケーブル終端接続構造では、導体最大温度が90℃を超えた。
【0046】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0047】
1、1a………電力ケーブル終端接続構造
3………電力ケーブル
7………絶縁層
9………導体
11………コンデンサコーン
13………引出棒
15………接続部
17………絶縁油
19………放熱フィン
21………碍管
23………孔
25………座床層
27………シールドリング
図1
図2
図3