【文献】
森本政仁,R=1mm90度曲げマルチモードファイバ2〜BPMシュミレーションによる曲げ損失の検討〜,電子情報通信学会技術研究報告,日本,社団法人電子情報通信学会,2008年 8月21日,Vol. 108, No. 193,pp. 115 - 119
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0026】
図1は、本発明の実施形態に係る光ファイバ内蔵コネクタの構成を概略的に示す図であり、(a)は斜視図、(b)は分解斜視図である。なお、
図1における各構成の長さ、幅あるいは厚さは、その一例を示すものであり、本発明の光ファイバ内蔵コネクタにおける各構成の長さ、幅あるいは厚みは、
図1のものに限られないものとする。
【0027】
図1(a)および(b)に示すように、光ファイバアレイ10は、複数の曲げ光ファイバ11が横方向に並べて配置されてなり、曲げ光ファイバ11は、直線部10a,10bの間に、直線部10a,10bと一体成形される曲げ角度90°の曲げ部10dを有している。曲げ部10dの光ファイバ外径は、直線部10a,10bの光ファイバ外径よりも小さい。なお、曲げ部10dの曲げ角度は90°には限定されず、たとえば85°以上150°以下であり、出入射される光の光軸に合わせて選択される。なおここで、曲げ部の曲げ角度は直線部10a,10bをそれぞれ延長させたときの両者のなす角度で定義される。曲げ光ファイバ11の本数は、特に限定されないが、例えば4本以上であり、ここでは12本である。
【0028】
曲げ光ファイバ11における曲げ部10dの曲げ半径は、たとえば5mm以下であり、好ましくは3mm以下である。曲げ半径は小さい方が小型化の観点からは好ましいが、小さくしすぎると破断しやすくなり、また光ファイバの伝送損失が増加する問題が生じるため、0.5mm以上が好ましい。
【0029】
また、1本の曲げ光ファイバ11内の曲げ部10dを長手方向に沿って10°ずつ複数の領域に分けたとき、当該複数の領域のうち両端の10°に相当する部分を除いた残りの領域における曲げ半径のばらつき(最大−最小)が0.3mm以下である。
【0030】
曲げ光ファイバ内蔵コネクタ1内での光ファイバの損失増加は、1.0dB以下であることが好ましく、0.8dB以下であることがさらに好ましい。
【0031】
また、光ファイバアレイ10において、複数の曲げ光ファイバ11の曲げ部10dにおける曲げ角度のばらつき、すなわち全ての曲げ光ファイバ11における複数の曲げ部10dの最大角度と最小角度の差は、2.0°以内であり、好ましくは1.0°以内である。
【0032】
また、光ファイバアレイ10を構成する複数の曲げ光ファイバ11が4本以上の場合、複数の曲げ光ファイバ11全体での曲げ部10dの強度は、後述する測定方法で1本当たり0.25N以上であればコネクタ組立において曲げ光ファイバが簡単には破断しない。さらに好ましくは0.625N以上とすることで、より一層破断を抑制できる。
【0033】
直線部10aは、被覆部12によってその全周が覆われている。光ファイバアレイ10を構成する曲げ光ファイバ11は、例えば石英系のファイバであり、その外径は80〜126μmである。光ファイバアレイ10において、ファイバ外径が80μmの場合にはたとえばピッチが125μm又は250μmであり、ファイバ外径が125μmの場合にはたとえばピッチが250μmである。なお、ピッチはこれに限定されず、隣り合うファイバ同士が接触しないように設定すればよい。
【0034】
曲げ光ファイバ内蔵コネクタ1は、
図2に示すように、曲げ部10dをそれぞれ有する複数の曲げ光ファイバ11を含む光ファイバアレイ10と、光ファイバアレイ10の一方の直線部10aを支持すると共にもう一方の直線部10bを支持するフェルール20と、フェルール20と協働して直線部10bの側面を支持する板部材30とを備えている。
【0035】
フェルール20には、直線部10aの軸方向に沿って溝21が形成されており、溝21の内部に被覆部12が収容される。具体的には、溝21は浅溝部22及び深溝部23を有しており、浅溝部22で直線部10aを支持すると共に、深溝部23で直線部10bを支持する。深溝部23の側面には、複数の溝23aが設けられており、複数の溝23aは、曲げ光ファイバ11を一本ずつ収容することが可能な寸法で形成されている。また、溝23aは、曲げ光ファイバの直線部10bの端部を支持することが可能となっている。
【0036】
板部材30は、深溝部23の上記側面よりも外側に配置される。板部材30の側面30aは、光ファイバアレイ10の直線部10bを支持し、これにより光ファイバアレイ10が長手方向に位置決めされる。このように、溝23a及び板部材30は、複数の曲げ光ファイバ11の端部10cを位置決めする複数の位置決め機構を構成している。また、曲げ部10dの外周には不図示の樹脂が充填された樹脂部が設けられている。
【0037】
上記構成の光ファイバ内蔵コネクタ1は、例えば、
図3に示すように、送信側回路40(Tx)において、回路基板41の主面41aと平行な発光面42aを有するVCSEL42上に取り付けられる。VCSELF42は、回路基板41内の電気配線43を介してIC44に電気的に接続されている。このとき、VCSEL42からの出射光は、レンズアレイ45介して直線部10bの端部10cに入力される。端部10cに入力された光は、直線部10b、曲げ部10dを通って直線部10aに伝送され、直線部10aから受信側回路50(Rx)の光ファイバ内蔵コネクタ1に入力される。受信側回路50では、VCSEL42からの出射光が、同コネクタの直線部10a、曲げ部10d、直線部10c、端部10cを通って回路基板51上のフォトダイオード52に入力される。そして、フォトダイオード52の入力光に応じた電気信号が、回路基板51内の電気配線53を介してIC54に入力される。
【0038】
図4は、本発明の実施形態に係る光ファイバ内蔵コネクタ1の変形例を概略的に示す図であり、(a)は斜視図、(b)は分解斜視図である。
同図(a)及び(b)に示すように、光ファイバ内蔵コネクタ60は、曲げ部10dをそれぞれ有する複数の曲げ光ファイバを含む光ファイバアレイ10と、複数の曲げ光ファイバ11の端部10cを配列させる複数の位置決め機構61を有するフェルール62と、曲げ部10dの外周に充填された樹脂部63とを備える。フェルール61は、一体成型された断面略L字型の部材である。このフェルール61には、直線部10aの軸方向に沿って溝部64が形成されており(
図2(b))、溝部64の内部に被覆部12が収容される。
【0039】
また、フェルール62には、溝部64と連通するように形成された溝部65が設けられており、溝部65に曲げ部10dが収容される。溝部65は傾斜した底面65aを有し、底面65の端部には複数の溝65bが設けられている。複数の溝65bは、曲げ光ファイバ11を一本ずつ収容することが可能な寸法で形成されている。また、フェルール62には、複数の溝65bに対応する複数の貫通孔66が形成されており、複数の貫通孔66に曲げ光ファイバ11の直線部10bが挿入される。複数の溝65b及び複数の貫通孔66は位置決め機構61を構成している。これにより、曲げ光ファイバ11の直線部10bが、端部10cが外部に露出する状態でフェルール62に支持され、また、位置決め機構61により、複数の曲げ光ファイバ11がフェルール62内で位置決めされる。
【0040】
光ファイバ内蔵コネクタ60の寸法は、例えば厚さ3.5mm、幅3.7mm、長さ6.0mmである。また、光ファイバ内蔵コネクタ60では、例えば曲げ半径R=2.5mmで曲げファイバ11が曲げられており、曲げ角度は例えば98°である。曲げ部10dの曲げ角度は、85°以上150°以下であり、好ましくは90°以上105°以下である。これにより、曲げ光ファイバの低背化することができ、光ファイバ内蔵コネクタ1の小型を実現することができる。
【0041】
曲げ光ファイバ11は、例えば次のような工程を経て製造される。先ず、
図5に示すように、被覆部71を除去して露出させた光ファイバ70’の一部を、略円筒状のヒータ72の外周面72aに押し当て、次いで、ヒータ加熱により、光ファイバ70をヒータ72の外形に沿って略90°に曲げる(曲げ工程)。このとき、曲げ部分は、長手方向に沿って連続曲線となる形状を有している。その後、曲げ光ファイバ70を常温まで冷却する(冷却工程)。この加熱工程および冷却工程により、曲げ部73を有する曲げ光ファイバ70が形成される(
図6(a))。
【0042】
曲げ工程直後、曲げ部73の顕微鏡写真を観察すると、ヒータ72に接触した光ファイバ70の曲げ部73における内側面73aには、該曲げ光ファイバの径方向に沿って線状の微小傷(欠陥)が複数形成されている(
図6(b))。ヒータ72の断面形状は、丸型や楕円型などの形状をとり得るが、いずれの形状でも、曲げ光ファイバ70とヒータ72が接触する限り、曲げ光ファイバ70とヒータ72の接触面に微小傷が発生する。微小傷の長さは、例えば1μm〜10μmである。このような微小傷は、曲げ光ファイバのへき壊の起点となり、小さい衝撃や、引っ張り及び曲げ応力により、容易に破断するため、光ファイバの強度が著しく低下する。
【0043】
そこで、このような微小傷を除去するために、曲げ光ファイバ70の曲げ部73における内側面73aを加熱して、該内側面の微小傷を除去する(除去工程)。微小傷の除去方法の一例としては、曲げ部73における内側面73aすなわち内周面を、非接触式の熱源で加熱する方法がある。曲げ光ファイバ70の内側面73aが非接触式の熱源で加熱されることにより、規定の温度以上に加熱された曲げ光ファイバ70の内側面73aが融解し、内側面73aに生じた微小傷は殆ど消失する(
図6(c))。この結果、へき壊の起点がなくなり、光ファイバの強度を増大させることが可能となる。
【0044】
このとき、曲げ光ファイバ70の加熱部分、すなわち曲げ部73の断面形状は、円形ではなくなり、内側面73aが融解することにより多少えぐられるため、曲げ部の内側面と外側面を結ぶ方向が短軸、該短軸と垂直な方向が長軸である略楕円形となる。このように曲げ部73の断面形状が変形することで、より一層曲げに対する強度が増すことになる。
【0045】
なお、このとき長軸の寸法は元の光ファイバ径とほぼ同じであるが、短軸の寸法は元の光ファイバ径よりも1μm〜2μm程度小さくなっている。光ファイバ径の減少の度合いが小さすぎると曲げに対する強度を改善する効果が得られないため、元の光ファイバ径よりも0.5μm以上小さくなっていることが好ましい。ただし、減少の度合いが大きすぎると引張強度が弱くなり、ファイバの取り扱いが困難となるため、短軸の長さが70μm以上であることが好ましい。
【0046】
非接触式の熱源としては、アーク放電、レーザ光、ガスバーナなどが挙げられる。曲げ光ファイバ70のコア部の組成(例えば、屈折率分布など)を高熱により変化させないためには、アーク放電やレーザ光による熱源を利用することが好ましい。また、ガスバーナは、簡便な装置であり、曲げ光ファイバ70を安価で加熱できる点でメリットがある。
【0047】
アーク放電やレーザ照射による熱付与は、加熱空間の温度分布や付与時間を精度良く制御することに適しており、微小傷が生じた内側面73a或いはその近傍にのみ高熱を付与することが可能である。これにより、ファイバの特性を損なうこと無く欠陥を除去することができ、曲げ光ファイバの強度を増大することができる。
【0048】
非接触式の熱源としてアーク放電を使用する場合、具体的には、
図7に示すように、横方向に並べて配置された複数の曲げ光ファイバ70(
図7の例では8本)の両側側方に一対の電極80,80を設置する。そして、アーク放電領域81が、曲げ部73における内側面73aの曲率中心側に位置するように一対の電極80,80を配置し、該一対の電極間で放電を行う。
【0049】
また、曲げ光ファイバの心数が多い場合(例えば、8本以上)には、
図8に示すように、非接触式の熱源としてレーザ光Lを使用するのが好ましい。レーザ光Lは、光源90から連続的に光を出射するCWレーザ(Continuous wave laser)が好ましい。また、レーザ光Lとしては、例えば、CO
2レーザ、YAGレーザ、ファイバレーザなどが挙げられ、好ましくはCO
2レーザである。
【0050】
微小傷を除去するためには、上述のように光ファイバの微小傷が生じている部分を加熱し溶融させる必要がある。そのため、レーザ光を照射することにより、発熱することが好ましく、この観点からCO
2レーザが好ましい。
【0051】
レーザ光Lにより微小傷を除去した後、曲げ部73の内側面73aの顕微鏡画像を観察すると、
図6(c)に示すように内側面73aが梨地状になっている。これにより、へき壊の起点となる微小傷が除去され、光ファイバの強度が増大する。
また、このとき、曲げ角度が所望の角度になるように調整しながら加熱を行う。たとえば、曲げ光ファイバ70を所定の角度に固定する固定治具に設置した状態で、当該曲げ光ファイバを加熱する。これにより、曲げ光ファイバ70の角度が補正され、所望の角度に近づけられるとともに、曲げ角度のばらつきをより一層小さくする(1.0°以内)ことができる。
【0052】
アーク放電やレーザ照射による上記加熱工程では、曲げ部73における内側面73aに対して微小傷を除去するのに必要な熱を供給しつつ、曲げ光ファイバ70内のコア部の屈折率が変化しないように、加熱条件を決める必要がある。曲げ光ファイバ内のコア部まで加熱され、コアの成分が拡散して屈折率が変化すると、伝送特性が劣化する場合があるからである。
【0053】
アーク放電やレーザ照射は、熱源及び光ファイバのいずれか、又は双方を移動させながら行ってもよい。すなわち、レーザ光と光ファイバの両方を相対的に移動させながら行ってもよい。
【0054】
また、レーザ照射においては、各ファイバの曲げ部73における内側面73aをファイバの長手方向になぞるようにレーザ光と光ファイバとを相対的に移動させ、ファイバ1本ずつを順次加熱してもよい。このように曲げ部を加熱することで、ファイバごとに微小傷を確実に溶融できる。
【0055】
また、
図8(b)に示すように、シリンドリカルレンズ91等を用いて、レーザ光Lを光ファイバの径方向に略平行な線状に集光させてもよい。線状のレーザ光を用いることでスポット状のレーザに比べ、広範囲を加熱することができ、より短時間で微小傷を溶融させることができる。
【0056】
また、微小傷の除去方法の別の一例としては、
図10に示すように、曲げ部73における内側面73aの少なくとも一部をケミカルエッチングしてもよい。ケミカルエッチングの方法としては、例えば、容器92内に、石英系材料を腐食可能な薬品を含有する溶液93を入れ、溶液93に曲げ部73を所定時間浸漬し、曲げ部73の内側面73aを溶かすことで、当該内側面に形成された微小傷を除去することができる。溶液92の種類としては、例えば、フッ酸が挙げられる。ケミカルエッチングにより微小傷を除去する場合も、内側面73aのみが腐食によって溶け、コア部まで侵食しないため、コア成分の遷移による、伝送特性の劣化を防止することができる。
【0057】
また、仮に、痕跡が残ったとしても、先鋭部のない、略長円形状に丸められた凹凸が多少残る程度の状態であり、これらはへき壊の起点となる微小傷ではない(
図9)。この結果、へき壊の起点がなくなり、曲げ光ファイバの強度を増大させることが可能となる。
【0058】
このときケミカルエッチングにより曲げ部のファイバ外径が1μm〜2μm程度小さくなる。ファイバ径が小さくなると、引張強度が若干低下するものの、曲げに対する強度(曲げ強度)が増大する。これにより、より一層曲げに対する強度が増すことになる。
なお、光ファイバ径の減少の度合いが小さすぎると曲げに対する強度を改善する効果が得られないため、元の光ファイバ径よりも0.5μm以上小さくなっていることが好ましい。ただし、減少の度合いが大きすぎると引張強度が弱くなり、ファイバの取り扱いが困難となるため、光ファイバ径が70μm以上であることが好ましい。
【0059】
(曲げ部の曲げ半径の測定)
1本の曲げ光ファイバ11をアーク放電を用いて90°曲げて、該光ファイバ内の曲げ部半径のばらつきを測定した。また、1本の光ファイバをヒータに押し当てて90°曲げ、該光ファイバ内の曲げ部半径のばらつきを測定した。
具体的には、
図11(a)に示すように、曲げ部10dにおける10°〜80°の範囲を10°ずつに区切って領域1A〜7Aに分け、それぞれの領域における曲げ半径を測定した。曲げ半径の目標値は、放電曲げ、ヒーター曲げのいずれも1mmとした。結果を表1及び
図11(b)に示す。
【0061】
表1に示すように、ヒーター加工では、領域1Aから領域7Aまでほぼ均一な曲げ半径が得られており、領域1A〜7Aにおける曲げ半径のばらつき(最大−最小)が0.3mm以下の範囲内である0.14mmであった。一方、アーク放電では、部分的に曲げ半径が大きい部分があり(例えば、領域6A)、ばらつきが生じた。また、ヒーター加工では断面略丸型のヒータ形状に沿ってファイバが曲げられるため、均一かつ所望の曲げ半径が容易かつ安定して得られるが、アーク放電では加熱条件のみで曲げ半径が決定させるため、ある程度のばらつきが生じる。よって均一かつ所望の曲げ半径を安定して得るには、ヒーター加工が好ましいことが分かる。
【0062】
(曲げ部の曲げ角度の測定)
8本の曲げ光ファイバ11が横方向に並べて配置されてなる光ファイバアレイを用い、光ファイバアレイを23個作成した。各光ファイバの曲げ部の角度の目標値は98°とした。
まず、光ファイバ70’を断面略丸型のヒータ72に押し当てて、当該光ファイバをヒータ72の外形に沿って曲げ、これにより光ファイバに曲げ部73を形成した。曲げ半径は2.5mmとした。
【0063】
そして、各光ファイバアレイにおける8本の光ファイバの中から、最大角度と最小角度のものを選択してその角度差(°)を求め、また、光ファイバアレイを構成する8本の光ファイバの曲げ角度の平均値を求めた。角度差の測定では、通常、8本のファイバ(1ch〜8ch)の両端に位置する2本の光ファイバが最大角度(=1ch)と最小角度(=8ch)を有するため、本測定では両端の光ファイバ(1chと8ch)の角度(°)を測定し、それらの差を求めた。結果を表2に示す。
【0065】
表2に示すように、レーザー処理前では、各光ファイバアレイにおける8本の光ファイバの曲げ部における最大角度と最小角度の差(1chと8chの角度差)は、最大でも、2.0°以下の範囲内である1.56°であり(No.17)、全ての光ファイバアレイ(No.1〜No.23)における角度差の平均値は0.62°であった。また、全ての光ファイバにおける曲げ部の角度は、94.91°〜101.59°の範囲内となった。
【0066】
次に曲げ部73における内側面73aを固定治具に固定し、CO
2レーザで加熱して、内側面73aの微小傷を除去した。レーザー処理後の測定結果を表2に示す。微小傷除去した場合、8本の光ファイバの曲げ部における最大角度と最小角度の差は、最大でも、1.0°以下の範囲内である0.78°(No.7)であり、全ての光ファイバアレイにおける角度差の平均値は0.27°であった。また、全ての光ファイバにおける曲げ部の角度は、98°±1.5°の範囲内となった。
【0067】
よって、レーザー処理を施すことにより、光ファイバにおける曲げ部の角度のばらつきが小さく、また、複数の光ファイバの位置精度が高い光ファイバアレイを作製することができた。
【0068】
(曲げ部の強度測定)
8本の曲げ光ファイバ11が横方向に並べて配置されてなる光ファイバアレイの中央にR=1mm、曲げ角度90°の曲げ部が形成されたサンプルを用意し、強度の測定を行った。
サンプルは、断面略丸型のヒータ72に押し当てて、当該光ファイバをヒータ72の外形に沿って曲げて形成したものであり、光ファイバアレイの中央部に位置する間隔10mmの部分の被覆が除去されており、それ以外の部分は、ガラス光ファイバの外周に被覆が形成されている。曲げ光ファイバの直線部の外径は約125μm(124〜126μm)であり、レーザを用いて傷を除去した曲げ光ファイバの曲げ部の断面形状は、円形から内側面が1.5μm削られた略楕円形状であり、フッ酸を用いて傷を除去した曲げ光ファイバの外径は、直径で直線部よりも1.5μm細くなっている。
【0069】
そして、(a)微小傷の除去を行っていないもの、(b)レーザを用いて傷を除去したもの、及び(c)フッ酸を用いて傷を除去したものを、それぞれ10個ずつ用意した。
強度測定では、強度試験機(エー・アンド・デイ社製、装置名「TENSIRON」)を使用し、測定条件を、把持位置を曲げ部から40mm、所期チャック間距離700mm、引っ張り速度50mm/min、ロードセル5kg(〜50N)とした。
【0070】
具体的には、光ファイバアレイの両端を700mmの距離で対向して設けられた把持具でそれぞれ把持し、光ファイバアレイの一方の把持部からもう一方の把持部までの長さが700mmになるようにセットした。
【0071】
そして、把持部の一方を固定した状態でもう一方を50mm/minの速度で上昇させ、曲げ部を拡張方向へ荷重して当該曲げ部で全心が破断したときの荷重を測定した。破断荷重の目標値は、2N(0.25N×8本)とした。なお本実施例では、引張強度だけでなく曲げ強度のパラメータを含めた測定を行った。
【0072】
この結果、微小傷の除去を行っていないものは平均して0.03Nで破断した。一方、レーザを用いて傷を除去したものは平均して7.4Nで破断し、フッ酸を用いて傷を除去したものは2.1Nで破断した。ファイバ1本当たりに換算すると、レーザを用いて傷を除去したものは平均して0.625N以上の範囲内である0.925Nであり、フッ酸を用いて傷を除去したものは平均して0.25以上の範囲内である0.2625Nであった。
【0073】
よってレーザあるいはフッ酸を用いて曲げ部の微小傷を除去することにより、強度が充分に確保され、かつ光ファイバの曲げ部の角度が所望の角度であり、曲げ部の角度のばらつきが小さい曲げ光ファイバを得ることができた。
【0074】
上述したように、本実施形態によれば、光ファイバ70’を断面略丸型のヒータ72に押し当てて、当該光ファイバをヒータ72の外形に沿って曲げ、これにより光ファイバに曲げ部73を形成するため、均一かつ所望の曲げ半径が容易かつ安定して得られる。
また、その後、曲げ部73における内側面73aの微小傷を除去するため、応力集中の原因となる微小傷が除去され、機械的強度を向上することができる。
【0075】
また、微小傷を除去する際に曲げ部73を加熱する形態においては、曲げ部73全体を加熱せず、曲げ部73の一部、つまりヒータ72との接触によって生じた微小傷が位置する内側面73aを加熱するため、曲げ工程時の良好な形状を除去工程後も維持、改善することができ、精度の高い曲げ形状を得ることができる。また、曲げ部73全体を加熱しないことから、光信号の実質的な伝送路となる曲げ光ファイバ70のコア部が熱影響を受け難く、微小傷除去後であっても良好な光学伝播特性を実現することができる。
【0076】
また、光ファイバを所望の角度に曲げることができるとともに、光ファイバアレイ10内の複数の光ファイバ11の曲げ角度のばらつきを小さくする(2.0°以内)ことができる。さらには、曲げ部73を加熱して微小傷を除去した場合は、さらに曲げ角度が補正され、曲げ角度のばらつきをより一層小さくする(1.0°以内)ことができる。
【0077】
また、上記のような曲げ光ファイバを内蔵したコネクタを組み立てる際、曲げ光ファイバを他の部材と当接させるか或いは他の部材に挿入する必要があるところ、曲げ光ファイバ11の内側面に微小傷が存在しないため、曲げ光ファイバ11の押し込みによって該曲げ光ファイバに生じる内部応力に耐えることができ、曲げ光ファイバ11の破断を防止することができる。このため、容易な組み立てを実現できると共に、良好な光学伝播特性を有する光ファイバ内蔵コネクタ1を提供することが可能となる。
【0078】
以上、本実施形態に係る曲げ光ファイバの製造方法及び該光ファイバ内蔵コネクタについて述べたが、本発明は記述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。