(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明に係る誘導検出型ロータリエンコーダの一実施の形態について説明する。
【0010】
[第1の実施の形態]
先ず、
図1を参照して、第1の実施の形態に係る誘導検出型ロータリエンコーダ4を搭載したマイクロメータヘッド1の全体構成について説明する。
図1は、第1の実施の形態に係るマイクロメータヘッド1を示す断面図である。
【0011】
マイクロメータヘッド1は、本体2、本体2から延びるスピンドル3、スピンドル3を中心に設けられた誘導検出型ロータリエンコーダ4を有する。また、マイクロメータヘッド1は、送受信制御部6、演算処理部7、及び表示部8を有する。送受信制御部6は、誘導検出型ロータリエンコーダ4との間の送受信を制御する。演算処理部7は、送受信制御部6(誘導検出型ロータリエンコーダ4)からの信号に基づき演算処理を実行する。表示部8は、演算処理部7による演算結果を表示する。
【0012】
本体2は、略円筒状に形成され、内部に収納空間21,22を備えている。収納空間21、22は、中仕切り板23で仕切られている。この略円筒状の本体2のスピンドル先端側(図中、左側)の壁および中仕切り板23には、それぞれスピンドル3が貫通する貫通孔24,25が形成され、本体2の基端側(図中、右側)の端部には、雌ねじ26が形成されている。これらの貫通孔24,25および雌ねじ26は、同軸上に配置されている。
【0013】
スピンドル3は、略円柱状に形成され、先端部に被測定物(不図示)との接触面31を有し、基端部につまみ部32を有する。このつまみ部32は、スピンドル3を外部から回転操作するためのものである。そして、スピンドル3は、本体2の貫通孔24,25に挿通され、本体2から両端が突出した状態となっている。また、スピンドル3の外周には送りねじ33が形成され、本体2の雌ねじ26に螺合されている。このようにして、つまみ部32が回転されると、送りねじ33と雌ねじ26との螺合によって、スピンドル3が貫通孔24,25に沿って進退するようになっている。送りねじ33は、例えば、0.5mmピッチで40回転分形成され、スピンドル3を20mm進退させることができる。また、スピンドル3の略中央部には、軸方向に沿って直線状のキー溝34が形成されている。
【0014】
続いて、
図1〜
図3を参照して、誘導検出型ロータリエンコーダ4を構成する第1のロータ42、第2のロータ51の構成について説明する。
図2は、誘導検出型ロータリエンコーダ4を構成する第1のロータ42、第2のロータ51の斜視図である。
図3は、誘導検出型ロータリエンコーダ4の分解斜視図である。誘導検出型ロータリエンコーダ4は、
図1に示すように、第1のロータリエンコーダ40と、第2のロータリエンコーダ50とから構成され、本体2の収納空間22に収納されている。
【0015】
第1のロータリエンコーダ40は、ステータ41と、第1のロータ42と、第1の回転円筒43とを備えている。
【0016】
ステータ41は、円板の中央にスピンドル3が挿通される挿通孔44を有し、中仕切り板23に固定されている。具体的には、ステータ41は、中仕切り板23の貫通孔25周りに形成された縁部材27に外嵌されている。
【0017】
第1のロータ42は、円板の中央にスピンドル3が挿通される挿通孔45を有し、ステータ41と所定寸法だけ離れた位置に、ステータ41に軸方向に対向して配置されている。
【0018】
第1の回転円筒43は、当該第1の回転円筒43にスピンドル3が挿通された状態で、ステータ41よりもスピンドル3の先端側に配設され、第1のロータ42をスピンドル3の軸周りに回転可能に支持している。すなわち、第1の回転円筒43のステータ41側の端部には、スピンドル3の外周に沿ってロータ支持部46が形成され、このロータ支持部46の外周に第1のロータ42が外嵌されている。
【0019】
また、第1の回転円筒43は、外周から中心に向かって螺入されたねじ状のキー47を備えている。このキー47の先端は、第1の回転円筒43の内周から突出し、スピンドル3の外周のキー溝34と係合している。すなわち、スピンドル3が回転すると、スピンドル3のキー溝34にキー47が係合していることから、第1の回転円筒43はスピンドル3と同期して回転するようになっている。
【0020】
また、第1の回転円筒43の外周には、第1の歯車48が形成されている。この歯車48は、第1の回転円筒43においてスピンドル3の先端側の端部に設けられ、回転円筒43の他の部分の外周よりも大きい外径寸法を有している。第1の歯車48の歯数は、例えば、40枚に設定されている。
【0021】
第2のロータリエンコーダ50は、前述のステータ41と、第2のロータ51と、第2の回転円筒(保持体)52と、中継歯車53とを備えている。
【0022】
ステータ41は、第1のロータリエンコーダ40のステータ41であり、ロータリエンコーダ40、50に共通する部品となっている。
【0023】
第2のロータ51は、円板の中央に第1のロータ42を配置可能な孔54を有し、当該第1のロータ42の外周に、それを取り囲むように配置されている。また、第2のロータ51は、第1のロータ42と同様に、ステータ41と所定寸法だけ離れた位置に、ステータ41に軸方向に対向して配置されている。このように、各ロータ42,51のステータ41と対向する面同士が略同一平面を形成している。
【0024】
第2の回転円筒52は、第1の回転円筒43(第1の歯車48を除く部分)が内部に挿通された状態で、当該第1の回転円筒43に支持されている。この第2の回転円筒52のステータ41側の端部に、第2のロータ51が貼付されている。このようにして、第2のロータ51がスピンドル3の軸周りに回転可能に支持されている。すなわち、第1のロータ42、第2のロータ51は、それぞれ内側と外側に配置されて2重円筒構造を構成している。
【0025】
また、第2の回転円筒52の外周には、第2の歯車55が形成されている。この歯車55は、第2の回転円筒52においてスピンドル3の先端側の端部に設けられ、第1の回転円筒43の歯車48と略同じ外径寸法を有している。第2の歯車55の歯数は、例えば、41枚に設定され、第1の歯車48の歯数より1枚だけ大きくなっている。
【0026】
中継歯車53は、本体2に回転可能に支持され、第1の歯車48と第2の歯車55との両方に噛合した状態で配置されている。すなわち、中継歯車53は、第1の歯車48に噛合する第1の中継歯車53Aと、第2の歯車55に噛合する第2の中継歯車53Bと、これらの中継歯車53A,53Bを同一軸上に軸支する軸部53Cとを有して構成されている。中継歯車53A,53Bの各歯数は同数に設定され、例えば12枚となっている。ここで、一対の歯車となる第1の歯車48および第1の中継歯車53Aの各モジュールは一致しており、他の一対の歯車となる第2の歯車55および第2の中継歯車53Bの各モジュールも一致しており、これによって、第1の回転円筒43が回転すると、中継歯車53を介して、第2の回転円筒52が円滑に回転できるようになっている。
【0027】
この際、歯車48と歯車55との歯数の違いによって、各ロータ42,51は、異なる速さで回転する。例えば、本実施の形態のように歯車48の歯数を40枚として、歯車55の歯数を41枚とした場合には、スピンドル3が進退移動範囲内で40回転する間に、第1のロータ42は40回転し、第2のロータ51は39回転する。
【0028】
また、第1のロータリエンコーダ40および第2のロータリエンコーダ50は、それぞれのロータ42、51の一回転以内の絶対角度を検出可能となっている。すなわち、ステータ41は、第1のロータ42の一回転あたり一周期の変化を示す位相信号を出力する。そして、第1のロータ42はスピンドル3と同期して回転するので、第1のロータ42に関する位相信号は、スピンドル3の一回転によって本発明の第1の周期の変化を示す。例えば、スピンドル3が40回転する間に40周期の変化を示す。
【0029】
ステータ41は、第2のロータ51についても一回転あたり一周期の変化を示す位相信号を出力する。そして、第2のロータ51はスピンドル3が40回転する間に39回転するので、第2のロータ51に関する位相信号は、スピンドル3の40回転によって39周期の変化を示す。
【0030】
次に、
図4を参照して、ステータ41、第1のロータ42及び第2のロータ51の構成について説明する。
図4は、ステータ41、第1のロータ42及び第2のロータ51の断面図である。
【0031】
ステータ41は、
図4に示すように、積層された絶縁層411A〜411Dを有する。ステータ41は、絶縁層411Aのロータ42,51側の表面に第1〜第3の送信巻線412a〜412cを有する。第1〜第3の送信巻線412a〜412cは挿通孔44を中心として環状に形成されている。
【0032】
また、ステータ41は、ロータ42,51側の絶縁層411Aに第1の受信巻線413aを有し、中間の絶縁層411Cに第2の受信巻線413bを有する。また、ステータ41は、絶縁層411Aに第3の受信巻線413cを有し、絶縁層411Cに第4の受信巻線413dを有する。第1、第3の受信巻線413a、413cの一部は、絶縁層411Aのロータ42,51側の表面に形成され、第1、第3の受信巻線413a、413cの残りの部分は絶縁層411Bのロータ42,51側の表面に形成され、両者は絶縁層411Aを貫通するスルーホール又はビアによって相互に接続されている。第2、第4の受信巻線413b、413dの一部は絶縁層411Cのロータ42,51側の表面に形成され、第2、第4の受信巻線413b、413dの残りの部分は絶縁層411Dのロータ42,51側の表面に形成され、両者は絶縁層411Cを貫通するスルーホール又はビアによって相互に接続されている。
【0033】
第1〜第4の受信巻線413a〜413dは挿通孔44を中心として環状に形成されている。第1、第2の受信巻線413a、413bは、同等の径を有し、絶縁層411Bを介して積層方向に互いに重なる位置に積層されている。第3、第4の受信巻線413c、413dは、第1、第2の受信巻線413a、413bよりもステータ41の外周側に設けられる。第3、第4の受信巻線413c、413dは、同等の径を有し、絶縁層411Bを介して積層方向に互いに重なる位置に積層されている。
【0034】
一方、第1のロータ42は、
図4に示すように、積層された絶縁層421A及び421Bを有する。第1のロータ42は、絶縁層421Aのステータ41側の表面に第1の磁束結合体422aを有し、絶縁層421Bのステータ41側の表面に第2の磁束結合体422bを有する。第1の磁束結合体422a、及び第2の磁束結合体422bは挿通孔45を中心として環状に形成されている。第1、第2の磁束結合体422a、422bは、同等の径を有し、絶縁層421Aを介して積層方向に互いに重なる位置に積層されている。
【0035】
第2のロータ51は、
図4に示すように、積層された絶縁層511A及び511Bを有する。第2のロータ51は、絶縁層511Aのステータ41側の表面に第3の磁束結合体512aを有し、絶縁層511Bのステータ41側の表面に第4の磁束結合体512bを有する。第3の磁束結合体512a、及び第4の磁束結合体512bは孔54を中心として環状に形成されている。第3、第4の磁束結合体512a、512bは、同等の径を有し、絶縁層511Aを介して積層方向に互いに重なる位置に積層されている。
【0036】
第1〜第3の送信巻線412a〜412cは、電流方向が周期的に変化する送信電流を時分割で流し、これにより発生する磁界を第1〜第4の磁束結合体422a、422b、512a、512bに与える。
【0037】
第1、第2の磁束結合体422a、422bは、第1、第2の送信巻線412a、412bに流れる送信電流により生じた磁界に基づく誘導電流を発生させる。第3、第4の磁束結合体512a、512bは、第2、第3の送信巻線412b、412cに流れる送信電流により生じた磁界に基づく誘導電流を発生させる。
【0038】
第1の受信巻線413aは、第2の送信巻線412bと第1の磁束結合体422aとの磁束結合により第1の磁束結合体422aに誘導電流が生じた場合に、これに基づく磁束結合により生じた誘導電圧を検出する。第2の受信巻線413bは、第1の送信巻線412aと第2の磁束結合体422bとの磁束結合により第2の磁束結合体422bに誘導電流が生じた場合に、これに基づく磁束結合により生じた誘導電圧を検出する。
【0039】
第3の受信巻線413cは、第3の送信巻線412cと第3の磁束結合体512aとの磁束結合により第3の磁束結合体512aに誘導電流が生じた場合に、これに基づく磁束結合により生じた誘導電圧を検出する。第4の受信巻線413dは、第2の送信巻線412bと第4の磁束結合体512bとの磁束結合により第4の磁束結合体512bに誘導電流が生じた場合に、これに基づく磁束結合により生じた誘導電圧を検出する。
【0040】
図4において、第1の受信巻線413aは、第1の磁束結合体422aと対向する。また、第2の受信巻線413bと第2の磁束結合体422bとの間には、第1の受信巻線413a及び第1の磁束結合体422aが配置される。この配置によって、第1の受信巻線413aで受信する信号強度を高くすることができる。第1の受信巻線413aの受信信号が測定精度に影響を与える場合、この配置は好ましい。
【0041】
同様に、
図4において、第3の受信巻線413cは、第3の磁束結合体512aと対向する。また、第4の受信巻線413dと第4の磁束結合体512bとの間には、第3の受信巻線413c及び第3の磁束結合体512aが配置される。この配置によって、第3の受信巻線413cで受信する信号強度を高くすることができる。第3の受信巻線413cの受信信号が測定精度に影響を与える場合、この配置は好ましい。
【0042】
次に、第1〜第3の送信巻線421a〜412c、第1〜第4の受信巻線413a〜413d、第1〜第4の磁束結合体422a、422b、512a、512bの平面的形状について説明する。
【0043】
図5は第1〜第3の送信巻線412a〜412c及び第1、第3の受信巻線413a、413cを示す平面図である。第1〜第3の送信巻線412a〜412cは、
図5に示すように、スピンドル3に対して同軸的に形成され、略円形の電流経路を持つ。第2の送信巻線412bは第1の送信巻線412aの外周側に形成され、第3の送信巻線412cは第2の送信巻線412bの外周側に形成される。
【0044】
第1、第3の受信巻線413a、413cは、
図5に示すように、スピンドル3に対して同軸的に環状に形成される。第1の受信巻線413aは、第1の送信巻線412aの外周側であり、且つ第2の送信巻線412bの内周側である位置に設けられる。第3の受信巻線413cは、第2の送信巻線412bの外周側であり、且つ第3の送信巻線412cの内周側である位置に設けられる。すなわち、第3の受信巻線413cは、第1の受信巻線413aの外周に設けられる。第1、第3の受信巻線413a、413cは、各々、回転方向に位相を異ならせた3つの受信巻線413aa〜413ac、413ca〜413ccにて構成される。受信巻線413aa〜413ac、413ca〜413ccは、それぞれ交差部が短絡しないように互いに交差する部分が絶縁層411Aを介して上下に配列され、相互がスルーホール又はビアホールにて接続されることにより各々絶縁分離されて配置される。
【0045】
次に、
図6を参照して、受信巻線413aa、413caの形状について説明する。
図6は受信巻線413aa、413caを示す平面図である。
【0046】
受信巻線413aaは、
図6に示すように、ロータ42,51の回転方向にピッチλ1をもって周期的に変化するループ状(菱型状)の形状を有する。受信巻線413aaにおいて、
図6に示す例では、菱型状の対PA1は10個(N1)設けられる。なお、受信巻線413ab、413acも受信巻線413aaと同様の形状を有する。
【0047】
受信巻線413caは、
図6に示すように、ロータ42,51の回転方向にピッチλ3をもって周期的に変化するループ状(菱型状)の形状を有する。受信巻線413caにおいて、
図6に示す例では、菱型状の対PA3は10個(N3)設けられる。なお、受信巻線413cb、413ccも受信巻線413caと同様の形状を有する。
【0048】
次に、
図7を参照して、第2、第4の受信巻線413b、413dの形状について説明する。
図7は第2、第4の受信巻線413b、413dを示す平面図である。
【0049】
第2、第4の受信巻線413b、413dは、
図7に示すように、スピンドル3に対して同軸的に環状に形成される。第2の受信巻線413bは、第1の受信巻線413aと積層方向に重なるように形成される。第4の受信巻線413dは、第3の受信巻線413bの外周側に位置し、第3の受信巻線413cと積層方向に重なるように形成される。第2、第4の受信巻線413b、413dは、各々、回転方向に位相を異ならせた3つの受信巻線413ba〜413bc、413da〜413dcにて構成される。受信巻線413ba〜413bc、413da〜413dcは、それぞれ交差部が短絡しないように互いに交差する部分が絶縁層411Cを介して上下に配列され、相互がスルーホール又はビアホールにて接続されることにより各々絶縁分離されて配置される。
【0050】
次に、
図8を参照して、受信巻線413ba、413daの形状について説明する。
図8は受信巻線413ba、413daを示す平面図である。
【0051】
受信巻線413baは、
図8に示すように、ロータ42,51の回転方向にピッチλ1と異なるピッチλ2(λ2≠λ1)をもって周期的に変化するループ状(菱型状)の形状を有する。受信巻線413baにおいて、
図8に示す例では、菱型状の対PA2は9個(N2)設けられる。本実施の形態において、ピッチλ1はピッチλ2よりも短い(λ1<λ2)。なお、受信巻線413bb、413bcも受信巻線413baと同様の形状を有する。
【0052】
受信巻線413daは、
図8に示すように、ロータ42,51の回転方向にピッチλ3と異なるピッチλ4(λ4≠λ3)をもって周期的に変化するループ状(菱型状)の形状を有する。受信巻線413daにおいて、
図8に示す例では、菱型状の対PA4は9個(N4)設けられる。本実施の形態において、ピッチλ3はピッチλ4よりも短い(λ3<λ4)。なお、受信巻線413db、413dcも受信巻線413daと同様の形状を有する。
【0053】
次に、
図9Aを参照して、第1の磁束結合体422aの形状について説明する。
図9Aは第1の磁束結合体422aを示す平面図である。第1の磁束結合体422aは、
図9Aに示すように、スピンドル3に対して同軸的に形成され、第1の受信巻線413aと空隙を介して重なるように形成される。第1の磁束結合体422aは、第1の受信巻線413aと同じピッチλ1をもってロータ42,51の回転方向に周期的に変化する連続した歯車状の配線部分と、この歯車状の配線部分に内接する円形状の配線部分とが重なった形状の配線を有する。より具体的に、第1の磁束結合体422aは、スピンドル3に近づく方向に窪む凹部422aaと、スピンドル3から離れる方向に突出する凸部422abとを交互に構成する。また、第1の磁束結合体422aは、複数の凹部422aaを連結する円環状の連結部422acを有する。即ち、複数の凹部422aa及び凸部422abは歯車状の電流経路を形成し、複数の凹部422aa及び連結部422acは円環状の電流経路を形成する。
図9Aに示す例では、凹部422aa、凸部422ab及び連結部422acの組合せPA5は10個(N1)設けられる。
【0054】
次に、
図9Bを参照して、第3の磁束結合体512aの形状について説明する。
図9Bは第3の磁束結合体512aを示す平面図である。第3の磁束結合体512aは、
図9Bに示すように、スピンドル3に対して同軸的に形成され、第3の受信巻線413cと空隙を介して重なるように形成される。第3の磁束結合体512aは、第3の受信巻線413cと同じピッチλ3をもってロータ42,51の回転方向に周期的に変化する連続した歯車状の配線部分と、この歯車状の配線部分に内接する円形状の配線部分とが重なった形状の配線を有する。より具体的に、第3の磁束結合体512aは、スピンドル3に近づく方向に窪む凹部512aaと、スピンドル3から離れる方向に突出する凸部512abとを交互に構成する。また、第3の磁束結合体512aは、複数の凹部512aaを連結する円環状の連結部512acを有する。即ち、複数の凹部512aa及び凸部512abは歯車状の電流経路を形成し、複数の凹部512aa及び連結部512acは円環状の電流経路を形成する。
図9Bに示す例では、凹部512aa、凸部512ab及び連結部512acの組合せPA6は10個(N3)設けられる。
【0055】
次に、
図10Aを参照して、第2の磁束結合体422bの形状について説明する。
図10Aは第2の磁束結合体422bを示す平面図である。第2の磁束結合体422bは、
図10Aに示すように、スピンドル3に対して同軸的に形成され、第1の磁束結合体422aと絶縁層421Aを介して積層方向に重なるように形成される。第2の磁束結合体422bは、ピッチλ2をもってロータ42,51の回転方向に周期的に変化する連続した歯車状の配線部分と、この歯車状の配線部分に外接する円形状の配線部分とが重なった形状の配線を有する。より具体的に、第2の磁束結合体422bは、スピンドル3に近づく方向に窪む凹部422baと、スピンドル3から離れる方向に突出する凸部422bbとを交互に構成する。また、第2の磁束結合体422bは、複数の凸部422bbを連結する円環連結部422bcを有する。即ち、複数の凸部422bb及び連結部422bcは円環状の電流経路を形成し、複数の凹部422ba及び凸部422bbは歯車状の電流経路を形成する。
図10Aに示す例では、凹部422ba、凸部422bb及び連結部422bcの組合せPA7は9個(N2)設けられる。
【0056】
次に、
図10Bを参照して、第4の磁束結合体512bの形状について説明する。
図10Bは第4の磁束結合体512bを示す平面図である。第4の磁束結合体512bは、
図10Bに示すように、スピンドル3に対して同軸的に形成され、第3の磁束結合体512aと絶縁層511Aを介して積層方向に重なるように形成される。第4の磁束結合体512bは、ピッチλ4をもってロータ42,51の回転方向に周期的に変化する連続した歯車状の配線部分と、この歯車状の配線部分に外接する円形状の配線部分とが重なった形状の配線を有する。より具体的に、第4の磁束結合体512bは、スピンドル3に近づく方向に窪む凹部512baと、スピンドル3から離れる方向に突出する凸部512bbとを交互に構成する。また、第4の磁束結合体512bは、複数の凸部512bbを連結する円環連結部512bcを有する。即ち、複数の凸部512bb及び連結部512bcは円環状の電流経路を形成し、複数の凹部512ba及び凸部512bbは歯車状の電流経路を形成する。
図10Bに示す例では、凹部512ba、凸部512bb及び連結部512bcの組合せPA8は9個(N4)設けられる。
【0057】
以上
図3〜
図10Bに示した構成により、第1の受信巻線413a及び第1の磁束結合体422aは、ピッチλ1をもってロータ42の回転方向に周期的に変化する形状を有する第1トラックを形成する。この第1トラックは、ロータ42の1回転で10回(N1)の周期的変化を生成する。第2の受信巻線413b及び第2の磁束結合体422bは、ピッチλ1と異なるピッチλ2をもってロータ42の回転方向に周期的に変化する形状を有する第2トラックを形成する。この第2トラックは、ロータ42の1回転で9回(N2)の周期的変化を生成する。本実施の形態においては第1トラックのピッチλ1が第2トラックのピッチλ2よりも短く、且つ、第2トラックの第2の受信巻線413bと第2の磁束結合体422b間の距離よりも、第1トラックの第1の受信巻線413aと第1の磁束結合体422a間の距離が短い。これにより、ピッチλ1による第1トラックの信号強度が第2トラックの信号強度よりも高くなるので、高い測定精度が得られる。
【0058】
また、第3の受信巻線413c及び第3の磁束結合体512aは、ピッチλ3をもってロータ51の回転方向に周期的に変化する形状を有する第3トラックを形成する。この第3トラックは、ロータ51の1回転で10回(N3)の周期的変化を生成する。第4の受信巻線413d及び第4の磁束結合体512bは、ピッチλ3と異なるピッチλ4をもってロータ51の回転方向に周期的に変化する形状を有する第4トラックを形成する。この第4トラックは、ロータ51の1回転で9回(N4)の周期的変化を生成する。本実施の形態においては第3トラックのピッチλ3が第4トラックのピッチλ4よりも短く、且つ、第4トラックの第4の受信巻線413dと第4の磁束結合体512b間の距離よりも、第3トラックの第3の受信巻線413cと第3の磁束結合体512a間の距離が短い。これにより、ピッチλ3による第3トラックの信号強度が第4トラックの信号強度よりも高くなるので、高い測定精度が得られる。
【0059】
図11は、第1〜第3の送信巻線412a〜412cに電流を供給する電流供給手段を示している。第1〜第3の送信巻線412a〜412cは、それぞれ一端が接地され、他端がスイッチS1を介して交流電源Vに接続される。測定時においては、電流方向が周期的に変化する送信電流をスイッチS1の切り替えによって第1〜第3の送信巻線412a〜412cに供給する。具体的に、第2の送信巻線412bのみに送信電流を供給し、その後に第1及び第3の送信巻線412a、412cのみに送信電流を同時に供給する。これら工程を繰り返し行う。
【0060】
次に、
図12A、
図12B及び
図13を参照して、第1〜第4の受信巻線413a〜413dにて得られる信号について説明する。上述の通り、第1〜第3の送信巻線412a〜412cは、電流方向が周期的に変化する送信電流を時分割で流す。
【0061】
まず、
図12Aを参照して、第2の送信巻線412bに電流を流す場合について説明する。第2の送信巻線412bに時計回りに電流が流れると、各電流経路には右ねじ方向に磁界が発生するので、この磁界が第1〜第4の磁束結合体422a,422b,512a,512bと結合して第1〜第4の磁束結合体422a,422b,512a,512bには反時計回りに電流が流れる。
【0062】
第1の磁束結合体422aにおいては、
図12Aに示すように主に凸部422abに誘起される電流が大勢になる。従って、第1の磁束結合体422aにおいて誘起される電流は主として凹部422aa及び凸部422abから形成される歯車状の電流経路を流れる。これにより、第1の磁束結合体422aの凹部422aaには、
図12Aの紙面の表面から裏面へ、凸部422abには紙面の裏面から表面へ進む磁界が発生し、これらの磁界がピッチλ1の周期的磁気パターンを形成する。これらの磁界を第1の受信巻線413aで受信する。
【0063】
また、第2の磁束結合体422bにおいては、
図12Aに示すように凸部422bb及び連結部422bcにおいて電流が誘起され、主に円環状の電流経路に電流が流れる。凹部422ba及び凸部422bbからなる歯車状の電流経路に流れる電流は、円環状の電流経路に流れる電流の10分の1程度の値となる。従って、第2の磁束結合体422bにおいて発生するピッチλ2の磁気パターンを形成する磁界は、第1の磁束結合体422aにおいて発生するピッチλ1の磁気パターンを形成する磁界と比較して極めて小さい。また、第1の磁束結合体422aは、1周の長さがピッチλ1×10であるのに対し、第2の磁束結合体422bは、1周の長さがピッチλ2×9であるから、第1の受信巻線413aに結合される磁界の影響は、
図13に示す通り、1周分のトータルでは第2の磁束結合体422bからの磁界の影響が相殺される。即ち、異なるピッチλ1、λ2によって、第1の受信巻線413aでは第2の磁束結合体422bに起因する誘導電圧は打消し合うため、その信号は検出されない。第1の受信巻線413aでは第2の磁束結合体422bからのクロストークを抑制することができる。
【0064】
第3の磁束結合体512aにおいては、
図12Aに示すように凹部512aa及び連結部512acにおいて電流が誘起され、電流は主に円環状の電流経路を流れる。従って、上述の場合と同様に第3の磁束結合体512aからはほぼ磁界が発生せず、また、若干の磁界が第4の受信巻線512bに電流を誘起した場合であっても第3の磁束結合体512aと第4の受信巻線413dとの位相の違いによってその電流は打ち消しあい、検出される事は無い。
【0065】
一方、第4の磁束結合体512bにおいては凹部512baに誘起される電流が大勢になる。このため、電流は主に凹部512ba及び凸部512bbから形成される歯車状の電流経路を流れる。これにより、第4の磁束結合体512bの凹部512baには、
図12Aの紙面の表面から裏面へ、凸部512bbには紙面の裏面から表面へ進む磁界が発生し、これらの磁界がピッチλ4の周期的磁気パターンを形成する。これらの磁界を第4の受信巻線413dで受信する。
【0066】
次に、
図12Bを参照して、第1及び第3の送信巻線412a,412cに電流を流す場合について説明する。第1及び第3の送信巻線412a,412cに時計回りに電流が流れると、第2の送信巻線412bに電流を流した場合と同様に第1〜第4の磁束結合体422a,422b,512a,512bに反時計回りに電流が流れる。
【0067】
第1の磁束結合体422aにおいては、
図12Bに示すように凹部422aa及び連結部422acにおいて電流が誘起され、電流は主に円環状の電流経路を流れる。従って、上述の場合と同様に第1の磁束結合体422aからはピッチλ1の磁界がほぼ発生せず、また、若干のピッチλ1の磁界が第2の受信巻線413bに電流を誘起した場合であっても第1の磁束結合体422aと第2の受信巻線413bとのピッチの違いによって第2の受信巻線413bでは第1の磁束結合体422aに起因する誘導電圧は打消し合うため、検出される事は無い。
【0068】
一方、第2の磁束結合体422bにおいては、
図12Bに示すように凹部422baに誘起される電流が大勢になる。このため、電流は主に凹部422ba及び凸部422bbから形成される歯車状の電流経路を流れる。これにより、第2の磁束結合体422bの凹部422baには、
図12Bの紙面の表面から裏面へ、凸部422bbには紙面の裏面から表面へ進む磁界が発生し、これらの磁界がピッチλ2の周期的磁気パターンを形成する。これらの磁界を第2の受信巻線413bで受信する。
【0069】
第3の磁束結合体512aにおいては、
図12Bに示すように凸部512abに誘起される電流が大勢になる。このため、電流は主に凹部512aa及び凸部512abから形成される歯車状の電流経路を流れる。これにより、第3の磁束結合体512aの凹部512aaには、
図12Bの紙面の表面から裏面へ、凸部512abには紙面の裏面から表面へ進む磁界が発生し、これらの磁界がピッチλ3の周期的磁気パターンを形成する。これらの磁界を第3の受信巻線413cで受信する。
【0070】
一方、第4の磁束結合体512bにおいては、
図12Bに示すように凸部512bb及び連結部512bcにおいて電流が誘起され、電流は主に円環状の電流経路を流れる。従って、上述の場合と同様に第4の磁束結合体512bからはピッチλ4の磁界がほぼ発生せず、また、若干のピッチλ4の磁界が第3の受信巻線413cに電流を誘起した場合であっても第3の磁束結合体512aと第4の受信巻線512bとのピッチの違いによって第4の受信巻線512bでは第3の磁束結合体512aに起因する誘導電圧は打消し合うため、検出される事は無い。
【0071】
以上より、
図13に示すように、ステータ41に対するロータ42,51の位置に応じて変化する受信信号が第1〜第4の受信巻線413a〜413dから得られる。第1及び第2の受信巻線413a,413bで得られる受信信号は、ロータ42が1回転する間に1周分ずれているので、それら2つの受信信号から1回転における絶対位置を検出することができる。同様に、第3及び第4の受信巻線413c,413dで得られる受信信号は、ロータ51が1回転する間に1周分ずれているので、それら2つの受信信号から1回転における絶対位置を検出することができる。なお、
図13は1相分の信号しか図示していないが、実際には、120°ずつずれた3相の受信信号が得られる。
【0072】
以上、本実施の形態によれば、第1、第2の受信巻線413a、413bをスピンドル3の長手方向に絶縁層を介して重ねることができ、同様に、第3、第4の受信巻線413c、413dをスピンドル3の長手方向に絶縁層を介して重ねることができる。また、第1、第2の磁束結合体422a、422bも絶縁層を介してスピンドル3の長手方向に重ねることができ、同様に、第3、第4の磁束結合体512a、512bも絶縁層を介してスピンドル3の長手方向に重ねることができる。したがって、エンコーダの外径を小さくすることができ、クロストークの発生を抑制できる。更に、3つの送信巻線412a〜412cによって4つのトラックを駆動できるので、誘導検出型ロータリエンコーダの構成を更に単純化できる。
【0073】
次に、
図14を参照して、送受信制御部6および演算処理部7の構成について詳細に説明する。
図14は、送受信制御部6および演算処理部7の構成を示すブロック図である。
【0074】
先ず、送受信制御部6について説明する。送受信制御部6は、送信制御部60、第1の受信制御部64、及び第2の受信制御部66を有する。
【0075】
送信制御部60は、第1及び第2のロータリエンコーダ40、50に対する信号の送信を制御する。送信制御部60は、ステータ41に第1及び第2のロータ42、51用(第1〜第3の送信巻線412a〜412c用)の所定の交流信号を送信する。
【0076】
第1の受信制御部64は、ステータ41(第1の受信巻線413a、及び第2の受信巻線413b)から第1のロータ42の位相信号を受信する。ここで、位相信号は、第1の磁束結合体422aに基づく信号と、第2の磁束結合体422bに基づく信号との位相差を示す信号である。
【0077】
第2の受信制御部66は、ステータ41(第3の受信巻線413c、及び第4の受信巻線413d)から第2のロータ51の位相信号を受信する。ここで、位相信号は、第3の磁束結合体512aに基づく信号と、第4の磁束結合体512bに基づく信号との位相差を示す信号である。第1の受信制御部64および第2の受信制御部66は、ステータ41から受信した各ロータ42,51の位相信号を演算処理部7に出力する。
【0078】
次に、演算処理部7について説明する。演算処理部7は、回転角算出部71、回転位相算出部72、及びスピンドル位置算出部73を備える。回転角算出部71は、第1のロータ42および第2のロータ51の回転角θ1,θ2をそれぞれ算出する。回転位相算出部72は、回転角算出部71にて算出された各ロータ42,51の回転角θ1,θ2に基づいてスピンドル3の回転位相を算出する。スピンドル位置算出部73は、回転位相算出部72にて算出されたスピンドル3の回転位相に基づいてスピンドル3の絶対位置を算出する。
【0079】
回転角算出部71は、第1の回転角算出部74、及び第2の回転角算出部75を備える。第1の回転角算出部74は、第1の受信制御部64からの位相信号に基づいて第1のロータ42の回転角θ1を算出する。第2の回転角算出部75は、第2の受信制御部66からの位相信号に基づいて第2のロータ51の回転角θ2を算出する。
【0080】
第1の回転角算出部74は、第1の受信制御部64からの位相信号に基づいて第1のロータ42の回転角θ1を一回転内の絶対角度(0°<θ1<360°)として算出する。ここで、第1の受信制御部64からの位相信号は、第1のロータ42の一回転内においては、同一の位相を生じない。第1の回転角算出部74には、第1のロータ42の回転角θ1と位相信号とが一対一の関係で設定記憶されている。これにより、第1の受信制御部64から出力される位相信号に応じて、第1のロータ42の回転角θ1が一義的に決まり、第1のロータ42の一回転以内の絶対角度が算出される。
【0081】
また、第2の回転角算出部75は、第1の回転角算出部74と同様に、第2の受信制御部66からの位相信号に基づいて第2のロータ51の回転角θ2を一回転内の絶対角度として算出する。
【0082】
回転位相算出部72は、差分算出部76、及び総回転位相算出部77を備える。差分算出部76は、回転角算出部71で算出された各ロータ42,51の回転角θ1,θ2の差分θ3を算出する。総回転位相算出部77は、差分θ3に基づいてスピンドル3の総回転位相を算出する。
【0083】
総回転位相算出部77には、差分θ3とスピンドル3の総回転位相とが一対一の関係で設定記憶されている。すなわち、スピンドル3が進退移動範囲内で40回転する間に各ロータ42,51の回転角θ1,θ2の差が1回転となるように設定されているので、差分θ3が0°〜360°の範囲内で算出され、この差分θ3に応じてスピンドル3の総回転位相θTが一義的に算出される。
【0084】
スピンドル位置算出部73には、スピンドル3の一回転当たりの移動ピッチ(0.5mm)が予め設定記憶されている。そして、スピンドル位置算出部73において、移動ピッチ(0.5mm)と総回転位相θTとが乗算されることにより、スピンドル3の総移動量、すなわち、スピンドル3の絶対位置が算出される。表示部8は、例えば、デジタル表示によってスピンドル3の絶対位置を表示する。
【0085】
次に、本実施の形態の機械的動作について説明する。つまみ部32によってスピンドル3を回転させると、本体2の雌ねじ26とスピンドル3の送りねじ33との螺合によりスピンドル3が軸方向に進退される。スピンドル3が回転すると、スピンドル3のキー溝34に係合したキー47によって第1の回転円筒43がスピンドル3とともに回転する。
【0086】
第1の回転円筒43が回転すると、第1の回転円筒43とともに第1のロータ42が回転する。第1のロータ42の回転がステータ41によって検出されて第1の受信制御部64に送られる。続いて、第1の回転角算出部74において第1のロータ42の一回転以内の回転角θ1が算出される。
【0087】
ここで、第1のロータ42はスピンドル3と同期して回転するので、第1のロータ42の一回転内の回転角θ1とは、スピンドル3の一回転内の回転角を示している。
【0088】
また、第1の回転円筒43が回転すると、第1の回転円筒43の歯車48に噛み合った中継歯車53の第1の中継歯車53Aが回転する。さらに、中継歯車53の第2の中継歯車53Bに噛み合った第2の回転円筒52の歯車55が回転し、第2の回転円筒52とともに第2のロータ51が回転する。第2のロータ51の一回転以内の位相信号がステータ41によって検出されて第2の受信制御部66に送られる。続いて、第2の回転角算出部75において第2のロータ51の一回転以内の回転角θ2が算出される。
【0089】
続いて、回転位相算出部72において、各ロータ42,51の回転角θ1,θ2の差分θ3が算出され、この差分θ3に基づいてスピンドル3の総回転位相θTが算出される。最後に、スピンドル位置算出部73において、総回転位相θTとスピンドル3の送りピッチ(0.5mm)とに基づいてスピンドル3の絶対位置が算出され、表示部8に表示される。
【0090】
[第2の実施の形態]
次に、
図15を参照して、第2の実施の形態に係る誘導検出型ロータリエンコーダ4aを搭載したマイクロメータヘッド1aの全体構成について説明する。
図15は、第2の実施の形態に係るマイクロメータヘッド1aを示す断面図である。なお、第2の実施の形態において、第1の実施の形態と同様の構成については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0091】
マイクロメータヘッド1aは、
図15に示すように、第1の実施の形態と異なるスピンドル3a、及びスピンドル3aを中心に設けられた誘導検出型ロータリエンコーダ4aを有する。なお、マイクロメータヘッド1aは、その他、第1の実施の形態と同様の構成を有する。
【0092】
スピンドル3aは、第1の実施の形態と同様に、略円柱状に形成され、先端側の端部に被測定物(不図示)との接触面31を有し、基端側の端部につまみ部32を有する。
【0093】
スピンドル3aの中央部には、第1の実施の形態と異なり、リード角が異なる2本のキー溝34a、34bが設けられている。第1のキー溝34aは、スピンドル3aの軸と平行に直線状に設けられている。第2のキー溝34bは、スピンドル3aに対して螺旋状に設けられている。第1のキー溝34aと第2のキー溝34bとの始点および終点の位置は、スピンドル3aの軸方向において略一致している。すなわち、第1のキー溝34aと第2のキー溝34bとは、スピンドル3aの軸方向において略同じ範囲に形成されている。
【0094】
なお、スピンドル3aが進退する際に、キー溝34a、34bは、スピンドル3aと共に本体2の外部に出ることになるが、スピンドル3aが最大限に前進した場合でもキー溝34a、34bが外部に露出しないように外側フレーム11が設けられている。
【0095】
続いて、誘導検出型ロータリエンコーダ4aについて説明する。
図16は、誘導検出型ロータリエンコーダ4aの分解斜視図である。誘導検出型ロータリエンコーダ4aは、
図16に示すように、第1のロータリエンコーダ40aと、第2のロータリエンコーダ50aとから構成され、本体2の収納空間22内に配設されている。
【0096】
第1のロータリエンコーダ40aは、ステータ41a、及びキー溝34aに係合するキー47aを有しスピンドル3aを中心にして回転可能に設けられた第1のロータ42aを有する。
【0097】
ステータ41aは、スピンドル3aが挿通された状態で収納空間22の前端側内壁28に固定されている。
【0098】
第1のロータ42aは、スピンドル3aのすぐ外側に配設されている。第1のロータ42aは、ステータ41aと所定距離だけ離れた位置に、ステータ41aに軸方向に対向して配置されている。第1のロータ42aは、ステータ41aと対になってステータ41aと対向した状態で回転される第1のロータ板48aと、スピンドル3aを中心とする第1のロータ板48aの回転を支持する第1の回転円筒43aと、第1のキー溝34aに係合する第1のキー47aとを備える。第1のロータ板48aは、スピンドル3aが挿通される孔を有する小円板である。
【0099】
第1の回転円筒43aは、スピンドル3aに外嵌する円筒状であって第1のロータ板48aの背面に接続され第1のロータ板48aの回転を支持している。第1の回転円筒43aには、軸に直交する方向で貫通形成された二つの孔43aa、43abが設けられ、第1の孔43aaには第1のキー47aが螺合されている。また、第2の孔43abは、第1の回転円筒43aの周方向に長さを有する長孔状に形成されている。
【0100】
第2のロータリエンコーダ50aは、ステータ41a、及びキー溝34bに係合するキー47bを有しスピンドル3aを中心にして回転可能に設けられた第2のロータ51aを有する。
【0101】
第2のロータ51aは、第1のロータ42aの外側に、それを取り囲むように配置されている。第2のロータ51aは、ステータ41aと所定距離だけ離れた位置に、ステータ41aに軸方向に対向して配置されている。第2のロータ51aは、第1のロータ42aと同様に、ステータ41aと対になってステータ41aと対向した状態で回転される第2のロータ板55aと、スピンドル3aを中心とする第2のロータ板55aの回転を支持する第2の回転円筒52aと、第2のキー溝34bに係合する第2のキー47bとを備える。
【0102】
第2のロータ板55aは、第1のロータ板48aを内側に遊嵌する程度の内孔を有する環状板である。第2の回転円筒52aは、第2のロータ板55aの背面に接続され、内側に第1の回転円筒43aを遊嵌する孔を有する円筒状である。
【0103】
第2の回転円筒52aには、軸に直交する方向から貫通形成された孔52aaを有し、この孔52aaに第2のキー47bが螺合されている。なお、第2のキー47bは、第1の回転円筒43aの長孔である第2の孔43abを通過して第2のキー溝34bに係合している。
【0104】
そして、第2の回転円筒52aは、第1のロータ42aを間にしてステータ41aと反対側においてスピンドル3aを軸受けする軸受部52abを有する。また、スピンドル軸方向において、第2のキー47bの位置は第1の回転円筒43aに設けられた第1のキー47aの位置と略同じである。
【0105】
なお、ステータ41aが固定されている収納空間22の前端側内壁28においてスピンドル軸受け27aがステータ41aよりも後端側にわずかに延設されている。第1の回転円筒43aのスピンドル軸受け43acが第1のロータ板48aよりステータ41a側にわずかに延設されている。第1の回転円筒43aのスピンドル軸受け43acが本体2のスピンドル軸受け27aに当接することにより、ステータ41aと第1のロータ板48aとのギャップが適切に確保される。
【0106】
また、第2の回転円筒52aと中仕切り板23と間に図示しないコイルバネ(付勢手段)が介装されて、第2のロータ51aがステータ41a側に向けて付勢されているとともに、第1のロータ42aが第2の回転円筒52aの内壁にて押されることで第1のロータ42aもステータ41aに向けて付勢されている。
【0107】
次に、このような構成を備える第2の実施の形態に係るマイクロメータヘッド1aの動作について説明する。つまみ部32によってスピンドル3aが回転操作されると、本体2の雌ねじ26とスピンドル3aの送りねじ33との螺合によってスピンドル3aが軸方向に進退される。
【0108】
また、スピンドル3aが回転されると、スピンドル3aの第1のキー溝34aおよび第2のキー溝34bに第1の回転円筒43aの第1のキー47aと第2の回転円筒52aの第2のキー47bとがそれぞれ係合されているので、スピンドル3aの回転に伴って第1の回転円筒43aと第2の回転円筒52aとが回転される。このとき、第1の回転円筒43aはスピンドル軸受け43acによってスピンドル3aを軸受けしているので、第1の回転円筒43aはスピンドル3aを基準にして回転する。また、第2の回転円筒52aは軸受部622によってスピンドル3aを軸受けしているので、第2の回転円筒52aもスピンドル3aを基準として回転する。
【0109】
そして、第1のキー溝34aと第2のキー溝34bとは互いにリード角が異なっているので、スピンドル3aが一回転するに当たって第1の回転円筒43aと第2の回転円筒52aとでは互いに異なる回転量(回転位相)で回転される。スピンドル3aの回転によって第1および第2の回転円筒43a、52aが回転されると、第1の回転円筒43aとともに第1のロータ板48aが回転され、第2の回転円筒52aとともに第2のロータ板55aが回転される。すなわち、第2の実施の形態においても、第1の実施の形態と同様に、第1のロータ42aは、第2のロータ51aと異なる回転速度で回転する。
【0110】
なお、第2の実施の形態においても、第1の実施の形態と同様に、ステータ41と対向する第1のロータ42a上には、第1、第2の磁束結合体422a、422bが形成されている(図示略)。ステータ41と対向する第2のロータ51a上には、第3、第4の磁束結合体512a、512bが形成されている(図示略)。第1、第2のロータ42a、51aと対向するステータ41a上には、第1〜第3の送信巻線412a〜412c、及び第1〜第4の受信巻線412a〜412dが形成されている(図示略)。
【0111】
第2の実施の形態に係るマイクロメータヘッド1aは、第1の実施の形態と略同様に構成されているので、第1の実施の形態と同様の効果を奏する。
【0112】
[第3の実施の形態]
次に、第3の実施の形態に係る誘導検出型ロータリエンコーダを説明する。なお、第3の実施の形態において、第1の実施の形態と同様の構成については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0113】
図17は、第3の実施の形態に係る第1〜第3の送信巻線412a〜412cに電流を供給する電流供給手段を示す図である。
図17に示すように、第3の実施の形態においては、スイッチS1を介して第1〜第3の送信巻線412a〜413cに別々に送信電流を供給する。この点で第1及び第3の送信巻線412a、412cに同時に送信電流を供給する第1の実施の形態と第3の実施形態は異なる。
【0114】
次に、
図18を参照して、第3の実施の形態に係る送受信制御部6の構成について説明する。
図18は、第3の実施の形態に係る送受信制御部6および演算処理部7の構成を示すブロック図である。
【0115】
送受信制御部6は、
図18に示すように、第1のロータリエンコーダ40に対する信号の送受信を制御する第1の送受信制御部61と、第2のロータリエンコーダ50に対する信号の送受信を制御する第2の送受信制御部62とを備える。
【0116】
第1の送受信制御部61は、第1の送信制御部63と第1の受信制御部64とを備える。第1の送信制御部63は、ステータ41に第1のロータ42用(第1、第2の送信巻線412a、412b用)の所定の交流信号を送信する。
【0117】
第2の送受信制御部62は、第2の送信制御部65と第2の受信制御部66とを備える。第2の送信制御部65は、ステータ41に第2のロータ51用(第2、第3の送信巻線412b、412c用)の所定の交流信号を送信する。
【0118】
上記第3の実施の形態であっても、第1の実施の形態と同様の効果を奏する。
【0119】
[その他の実施の形態]
以上、本発明に係る誘導検出型ロータリエンコーダの一実施の形態を説明してきたが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更、追加、置換等が可能である。例えば、第1〜第4の磁束結合体は、電極、導電板に形成された穴、凹部などでも良い。
【0120】
また、上記実施の形態は、第1のロータ42と第2のロータ51の位置関係に基づき、第1のロータ42が何回転目であるかを検出するものである。しかしながら、本発明は、第1のロータ42と第2のロータ51の位置関係に基づき、第2のロータ51が何回転目であるかを検出するものであってもよい。
【0121】
また、上記実施の形態においては、N1=N3、N2=N4、及びN4−N3=N2−N1=1であるが、N1≠N3、N2≠N4、及びN4−N3≠N2−N1≠1であっても、また、N1=N4、N2=N3であってもよい。或いは、N1,N2,N3,N4は全て異なっていてもよい。
【0122】
例えば、第2の受信巻線413bは第2の磁束結合体422bと対向し、第1の受信巻線413aと第1の磁束結合体422aとの間には第2の受信巻線413b及び第2の磁束結合体422bが配置されてもよい。同様に、第4の受信巻線413dは第4の磁束結合体512bと対向し、第3の受信巻線413cと第3の磁束結合体512aとの間には第4の受信巻線413d及び第4の磁束結合体512bが配置されてもよい。
【0123】
また、第2の受信巻線413bは第1の磁束結合体422aと対向し、第1の受信巻線413aと第2の磁束結合体422bとの間には第2の受信巻線413b及び第1の磁束結合体422aが配置されてもよい。同様に、第4の受信巻線413dは第3の磁束結合体512aと対向し、第3の受信巻線413cと第4の磁束結合体512bとの間には第4の受信巻線413d及び第3の磁束結合体512aが配置されてもよい。
【0124】
また、第1の受信巻線413aは第2の磁束結合体422bと対向し、第2の受信巻線413bと第1の磁束結合体422aとの間には第1の受信巻線413a及び第2の磁束結合体422bが配置されてもよい。同様に、第3の受信巻線413cは第4の磁束結合体512bと対向し、第4の受信巻線413dと第3の磁束結合体512aとの間には第3の受信巻線413c及び第4の磁束結合体512bが配置されてもよい。
【0125】
例えば、上記実施の形態は、電磁誘導型ロータリエンコーダであるが、本発明は、静電容量型や光電式のロータリエンコーダにも適用可能である。