特許第6133783号(P6133783)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジーカ テクノロジー アクチェンゲゼルシャフトの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6133783
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】第二級アミノシラン
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/18 20060101AFI20170515BHJP
   C09J 183/08 20060101ALI20170515BHJP
   C09J 11/02 20060101ALI20170515BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20170515BHJP
   C09D 183/08 20060101ALI20170515BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20170515BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20170515BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20170515BHJP
   C08G 18/30 20060101ALI20170515BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20170515BHJP
【FI】
   C07F7/18 P
   C07F7/18 UCSP
   C09J183/08
   C09J11/02
   C09J175/04
   C09D183/08
   C09D5/00 D
   C09D175/04
   C08G18/10
   C08G18/30 050
   !C07B61/00 300
【請求項の数】16
【全頁数】44
(21)【出願番号】特願2013-543722(P2013-543722)
(86)(22)【出願日】2011年12月13日
(65)【公表番号】特表2014-501237(P2014-501237A)
(43)【公表日】2014年1月20日
(86)【国際出願番号】EP2011072631
(87)【国際公開番号】WO2012080266
(87)【国際公開日】20120621
【審査請求日】2014年11月26日
(31)【優先権主張番号】10195811.4
(32)【優先日】2010年12月17日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506416400
【氏名又は名称】シーカ テクノロジー アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(72)【発明者】
【氏名】ウルス ブルクハルト
【審査官】 杉江 渉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−256048(JP,A)
【文献】 特開2007−211121(JP,A)
【文献】 特開2006−001975(JP,A)
【文献】 特開平03−184983(JP,A)
【文献】 米国特許第03033815(US,A)
【文献】 国際公開第01/016201(WO,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第00256643(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 7/00 − 7/30
C08G 18/00 − 18/87
C09D 1/00 −201/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式(I)のアミノシラン:
【化1】
(R及びRは、互いに独立に、1〜12の炭素原子を有する一価の炭化水素残基を表し、又は一緒になって、5〜8の炭素原子を有する任意に置換された環状炭素の一部である4〜12の炭素原子を有する二価炭化水素残基を表し;
は、水素原子、又は各々1〜12の炭素原子を有するアルキル基、アリールアルキル基、若しくはアルコキシカルボニル基を表し;
は、任意にヘテロ原子を含む1〜20の炭素原子を有する一価の脂肪族、脂環式、又はアリール脂肪族残基を表し、かつRは、水素原子、又は任意にヘテロ原子を含む1〜20の炭素原子を有する一価の脂肪族、脂環式、又はアリール脂肪族残基を表し、又は
及びRが一緒になって、5〜8の環原子を有する任意に置換された複素環の一部である3〜30の炭素原子を有する二価脂肪族残基を表し、ここで、この環は窒素原子と並んで、更なるヘテロ原子を任意に含み;
は、1〜20の炭素原子を有し、任意に芳香族部分を有し、及び任意に一つ以上のヘテロ原子を有する、直鎖若しくは分岐アルキレン又はシクロアルキレン残基を表し;
は、任意にエーテル酸素を含む1〜10の炭素原子を有するアルキル基を表し、また、2つのOR基は一緒になって、ケイ素原子を有する環を形成する二価グリコレート基を表すことができ;
は、1〜8の炭素原子を有するアルキル基を表し;かつ
xは0、1、又は2を表す)。
【請求項2】
及びRが各々メチル残基を表し、及び/又はRが水素原子を表す、請求項1に記載の式(I)のアミノシラン。
【請求項3】
それぞれのRが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、2―エチルヘキシル、シクロヘキシル、2―ヒドロキシエチル、2―ヒドロキシプロピル、2―メトキシエチル、若しくはベンジルを表し、かつRが、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、2―エチルヘキシル、シクロヘキシル、2―ヒドロキシエチル、2―ヒドロキシプロピル、2―メトキシエチル、若しくはベンジルを表し、又はR及びRが一緒になって窒素原子を含む環を形成し、ここでこの環は置換基を有し、又は置換基を有していない、請求項1又は2に記載の式(I)のアミノシラン。
【請求項4】
が1〜6の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐アルキレン残基、又は鎖内に1又は2の第二級アミノ基を有する5〜7の炭素原子を有する直鎖アルキレン残基を表す、請求項1〜3のいずれか一項に記載の式(I)のアミノシラン。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の式(I)のアミノシランを製造するために水素化することができる、下記の式(II)のイミノシラン:
【化2】
【請求項6】
下記の式(III)の少なくとも一つのアミノシランASと、下記の式(IV)の少なくとも一つのアルデヒドALDとを縮合させる、請求項5に記載の式(II)のイミノシランの製造方法:
【化3】
【請求項7】
式(III)のアミノシランASが、3―アミノプロピルトリメトキシシラン、3―アミノプロピルトリエトキシシラン、4―アミノ―3,3―ジメチルブチルトリメトキシシラン、N―(2―アミノエチル)―3―アミノプロピルトリメトキシシラン、及びN―(2―アミノエチル)―3―アミノプロピルトリエトキシシランからなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
式(IV)のアルデヒドALDが、2,2―ジメチル―3―メチルアミノプロパナール、2,2―ジメチル―3―ジメチルアミノプロパナール、2,2―ジメチル―3―エチルアミノプロパナール、2,2―ジメチル―3―ジエチルアミノプロパナール、2,2―ジメチル―3―ビス(2―メトキシエチル)アミノプロパナール、2,2―ジメチル―3―ブチルアミノプロパナール、2,2―ジメチル―3―ジブチルアミノプロパナール、2,2―ジメチル―3―ヘキシルアミノプロパナール、2,2―ジメチル―3―(2―エチルヘキシル)アミノプロパナール、2,2―ジメチル―3―ドデシルアミノプロパナール、2,2―ジメチル―3―(N―ピロリジノ)プロパナール、2,2―ジメチル―3―(N―ピペリジノ)プロパナール、2,2―ジメチル―3―(N―モルホリノ)プロパナール、2,2―ジメチル―3―(N―(2,6―ジメチル)モルホリノ)プロパナール、2,2―ジメチル―3―ベンジルアミノプロパナール、2,2―ジメチル―3―(N―ベンジルメチルアミノ)プロパナール、2,2―ジメチル―3―(N―ベンジルイソプロピルアミノ)プロパナール、2,2―ジメチル―3―シクロヘキシルアミノプロパナール、2,2―ジメチル―3―(N―シクロヘキシルメチルアミノ)プロパナール、及びN,N’―ビス(2,2―ジメチル―3―オキソプロピル)ピペラジンからなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の式(I)の少なくとも一つのアミノシランと、少なくとも1つの反応性基RGを有する少なくとも一つの化合物VBと反応することを含み、前記反応性基RGは、イソシアネート基、イソチオシアネート基、シクロカーボネート基、エポキシド基、エピスルフィド基、アジリジン基、アクリル基、メタクリル基、1―エチニルカルボニル基、1―プロピニルカルボニル基、マレイミド基、シトラコンイミド基、ビニル基、イソプロペニル基、及びアリル基からなる群から選択されることを特徴とする、付加体ADの製造方法
【請求項10】
前記付加体ADが、化合物VBとしてイソシアネート基を含むポリウレタンポリマーPUPを使用することにより得られるシラン官能性ポリマーSPの形態である、請求項9に記載の方法
【請求項11】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の式(I)の少なくとも一つのアミノシラン、又は請求項5に記載の式(II)の少なくとも一つのイミノシラン、又は請求項9若しくは10に記載の方法によって得られる少なくとも一つの付加体ADを、少なくとも部分的に加水分解することを含む、少なくとも一つの式(IX)のシラノール基を有する化合物の製造方法:
【化4】
(nは最大で値(3―x)であるという条件で、nが1、2、又は3を表す)。
【請求項12】
コーティング表面への接着性を助長する試剤、及び/若しくは促進剤、及び/若しくは乾燥剤としての、又は硬化性材料、活性化剤、若しくはプライマーの構成成分としての、請求項1〜4のいずれか一項に記載の式(I)のアミノシラン、又は請求項5に記載の式(II)のイミノシラン、又は請求項9若しくは10に記載の方法によって得られる付加体ADの使用。
【請求項13】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の式(I)の少なくとも一つのアミノシラン、及び/又は請求項5に記載の式(II)の少なくとも一つのイミノシラン、及び/又は請求項9に記載の方法によって得られる少なくとも一つの付加体ADを含有させることを含む、組成物の製造方法
【請求項14】
請求項10に記載の方法によって得られる少なくとも一つのシラン官能性ポリマーSP、及び少なくとも一つの更なる構成成分を含有させることを含む、水分硬化性組成物の製造方法
【請求項15】
建築及び工業用途のための、繊維複合材料、弾性流延材料、封止剤、接着剤、被覆剤、コーティング、又は塗料としての、及び発泡物質としての、請求項14に記載の方法によって得られる水分硬化性組成物の使用。
【請求項16】
及びRが互いに独立に、1〜3の炭素原子を有する一価の炭化水素残基を表し; Rが、水素原子又は各々1〜3の炭素原子を有するアルキル基を表し;
が、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、2―エチルヘキシル、シクロヘキシル、2―ヒドロキシエチル、2―ヒドロキシプロピル、2―メトキシエチル、若しくはベンジルを表し、かつRが、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、2―エチルヘキシル、シクロヘキシル、2―ヒドロキシエチル、2―ヒドロキシプロピル、2―メトキシエチル、若しくはベンジルを表し、又はR及びRが一緒になって窒素原子を含む環を形成し、ここでこの環は置換基を有し、又は置換基を有しておらず
が1〜6の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐アルキレン残基、又は鎖内に1又は2の第二級アミノ基を有する5〜7の炭素原子を有する直鎖アルキレン残基を表し;
は、任意にエーテル酸素を含む1〜3の炭素原子を有するアルキル基を表し、また、2つのOR基は一緒になって、ケイ素原子を有する環を形成する二価グリコレート基を表すことができ;
は、1〜3の炭素原子を有するアルキル基を表し;かつ
xは0、1、又は2を表す、
請求項1に記載の式(I)のアミノシラン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第二級アミノシラン、及びそれらの使用、特に接着剤としてのそれらの使用、架橋剤としてのそれらの使用、及びシラン官能性ポリマーの構成要素としてのそれらの使用;並びに硬化性材料、特にシラン架橋硬化性材料としてのそれらの使用、及びそれらの使用、特に流延材料、封止剤、接着剤、被覆剤、コーティング、及び塗料としてのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
アミノシランとして簡潔に言及されるアミノ基を含む有機シロキサンは、特に接着剤、硬化性材料のための架橋剤、並びにシラン官能性ポリマーの構成要素として使用される。製造が容易であるため、第一級アミノ基を有するアミノシラン(「第一級アミノシラン」)が最も一般的であるが、それらは使用に際し、いくつかの欠点がある。第一級の基は比較的親水性であるため、それらは望ましくない吸水特性を有する傾向があり、硬化した組成物が水分に露出されると、この組成物の基材に対する粘着力に悪影響を及ぼす可能性がある。シラン官能性ポリマーの構成要素としての使用において(このポリマーはイソシアネート官能性ポリウレタンポリマーのアミノシランへの付加反応によって調製される)、第一級アミノシランは高粘度をもたらし、これらはシラン官能性ポリマーの取り扱いを困難にし、またこれらから調製される生成物の適用性及び延性を悪化させる。したがって、第一級アミノシランの代わりに、第二級アミノ基を有するアミノシラン(「第二級アミノシラン」)を使用することは有利なことがあり、これらは疎水性であり、低粘性のシラン官能性ポリウレタンポリマーをもたらす。しかしながら、費用効果がよく、かつ保管可能な第二級アミノシランの入手可能性は限られている。従来技術で公知の第二級アミノシランで作成されたシラン架橋ポリウレタンは、硬化するのに通常長い時間がかかり、また、しばしば低い耐熱性を有する。
【0003】
従来、第二級アミノシランは、例えば特許文献1において開示されているように、アリルシランのヒドロシリル化によって、又は特許文献2又は3において開示されているように、クロロ又はブロモアルキルシランと第一級アミンとの求核置換、若しくはアルキル若しくはアリールハロゲン化物と第一級アミノシランとの求核置換によって調製されている。第一級アミノシランと比較して、製造が高価で、量が非常に少ないため、それらは第一級アミノシランよりかなり高価である。したがって、シラン官能性ポリマーの製造者にとって、第一級アミノシランから出発して第二級アミノシランを作成することは、より有利である。マイケル受容体(特にアクリロニトリル、アクリル酸エステル、及びマレイン酸エステル)を用いた付加反応が特に一般に使用され、例えば特許文献4〜6に記載されている。これらの試薬は安価であり、第二級アミノシランを形成する反応は、穏和な条件下で既に成功している。しかしながら、それは通常遅く、不完全であり、したがって一部のマイケル受容体が付加されていない形態で残る。したがって、付加生成物と共に生成される生成物の好ましくない匂いを防止したい場合は、付加されていないマイケル受容体のその後の除去を必要とすることがある。第一級アミノシランのマイケル付加体は、更なる官能基、例えばシアノ基、及び特にエステル基を含む。エステル基の存在は、比較的低い粘度を有するシラン官能性ポリウレタンポリマーをもたらす。しかしながら、これは、エステル基が第一級又は第二級アミノ基と反応できるという短所を伴い、処理においてそれらはアミドを形成する。触媒及び接着剤としての第一級アミン及びアミノシランと通常は配合されるシラン架橋硬化性材料において、これは望ましくない。これは、エステル基が、アミンの非活性化、及び増大した架橋密度をもたらし、したがって硬化したポリマーの増大した脆性をもたらす可能性があることによる。また、自己縮合がゆっくり進行してポリアミドを形成するため、エステル基を有する不完全にアルキル化されたアミノシランは、しばしば保管にも不適当である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6,197,912号
【特許文献2】米国特許第3,676,478号
【特許文献3】米国特許第6,197,912号
【特許文献4】米国特許第3,033,815号
【特許文献5】米国特許第4,067,844号
【特許文献6】米国特許第5,364,955号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、接着剤及び架橋剤、並びにシラン官能性ポリマーの構成要素として使用する際に有益な特性を有する新規な第二級アミノシランを作成することである。それらは単純な方法によって作成することができなければならず、それらは室温において液体で、低粘性を有すべきである。特に、それらは低粘性であり、速硬性であり、かつ良好な耐熱性を有する可能性あるシラン官能性ポリマーを作成すべきである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
驚くべきことに、この目的は、下記の〈1〉項に記載の第二級アミノシランによって達成できることが分かった。それらは、室温において、低い揮発性を有し、ほとんど匂いを有しておらず、また通常は液体であり、比較的低い粘度を有する。それらは、市販の第一級アミノシランから、及び第二級又は第三級アミノ基を有する特別なアルデヒドから、高価な処理工程を必要としない単純な方法で製造することができる。有利な特性、例えばシラン基の迅速な加水分解速度、多くの硬化性材料における良好な適合性、及び特に良好な粘着力を助長する特性は、おそらくアルデヒドに由来する更なるアミノ基の存在により説明することができる。下記の〈1〉項に記載の第二級アミノシランは、付加反応でイソシアネート官能性ポリウレタンポリマーを付加してシラン官能性ポリマーを製造するために用いる際に、特に有利な特性を有する。そのようなシラン官能性ポリマーを含むシラン架橋硬化性材料は、比較的低い粘度を有し、水分と接触して急速かつ完全に硬化し、また通常、従来技術による第二級アミノシランを用いて類似する系で製造したものと比較して実質的に良好な、優れた耐熱性を有する。
本発明の更なる態様は、下記の更なる独立項の対象である。また、本発明の特に好ましい実施形態は、下記の従属項の対象である。
【0007】
〈1〉下記の式(I)のアミノシラン:
【化1】
(R及びRは、互いに独立に、1〜12の炭素原子を有する一価の炭化水素残基を表し、又は共に、5〜8、好ましくは6の炭素原子を有する任意に置換された環状炭素の一部である4〜12の炭素原子を有する二価炭化水素残基を表し;
は、水素原子、又は各々1〜12の炭素原子を有するアルキル基、アリールアルキル基、若しくはアルコキシカルボニル基を表し;
は、任意にヘテロ原子を含む1〜20の炭素原子を有する一価の脂肪族、脂環式、又はアリール脂肪族残基を表し、かつRは、水素原子、又は任意にヘテロ原子を含む1〜20の炭素原子を有する一価の脂肪族、脂環式、又はアリール脂肪族残基を表し、又は
及びRは共に、5〜8、好ましくは6の環原子を有する任意に置換された複素環の一部である3〜30の炭素原子を有する二価脂肪族残基を表し、ここで、この環は窒素原子と並んで、更なるヘテロ原子を任意に含み;
は、1〜20の炭素原子を有し、任意に芳香族部分を有し、及び任意に一つ以上のヘテロ原子(特に窒素原子)を有する、直鎖若しくは分岐アルキレン又はシクロアルキレン残基を表し;
は、任意にエーテル酸素を含む1〜10の炭素原子を有するアルキル基を表し、また、2つのOR基は共に、ケイ素原子を有する環を形成する二価グリコレート基を表すことができ;
は、1〜8の炭素原子を有するアルキル基を表し;かつ
xは0、1、又は2を表す)。
〈2〉R及びRが各々メチル残基を表し、及び/又はRが水素原子を表す、上記〈1〉項に記載の式(I)のアミノシラン。
〈3〉それぞれのRが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、2―エチルヘキシル、シクロヘキシル、2―ヒドロキシエチル、2―ヒドロキシプロピル、2―メトキシエチル、若しくはベンジルを表し、かつRが、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、2―エチルヘキシル、シクロヘキシル、2―ヒドロキシエチル、2―ヒドロキシプロピル、2―メトキシエチル、若しくはベンジルを表し、又はR及びRが共に窒素原子を含む環、特にピロリジン、ピペリジン、モルホリン、又はN―アルキルピペラジン環を形成し、ここでこの環又はアルキル基は任意に置換されている、上記〈1〉又は〈2〉項に記載の式(I)のアミノシラン。
〈4〉Rが1〜6の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐アルキレン残基、特にプロピレン基、又は鎖内に1又は2の第二級アミノ基を有する5〜7の炭素原子を有する直鎖アルキレン残基、特に―(CH―NH―(CH―、又は―(CH―NH―(CH―NH―(CH―残基を表す、上記〈1〉〜〈3〉項のいずれか一項に記載の式(I)のアミノシラン。
〈5〉上記〈1〉〜〈4〉項のいずれか一項に記載の式(I)のアミノシランを製造するために水素化することができる、下記の式(II)のイミノシラン:
【化2】
〈6〉下記の式(III)の少なくとも一つのアミノシランASと、下記の式(IV)の少なくとも一つのアルデヒドALDとを縮合させる、上記〈5〉項に記載の式(II)のイミノシランの製造方法:
【化3】
〈7〉式(III)のアミノシランASが、3―アミノプロピルトリメトキシシラン、3―アミノプロピルトリエトキシシラン、4―アミノ―3,3―ジメチルブチルトリメトキシシラン、N―(2―アミノエチル)―3―アミノプロピルトリメトキシシラン、及びN―(2―アミノエチル)―3―アミノプロピルトリエトキシシランからなる群から選択される、上記〈6〉項に記載の方法。
〈8〉式(IV)のアルデヒドALDが、2,2―ジメチル―3―メチルアミノプロパナール、2,2―ジメチル―3―ジメチルアミノプロパナール、2,2―ジメチル―3―エチルアミノプロパナール、2,2―ジメチル―3―ジエチルアミノプロパナール、2,2―ジメチル―3―ビス(2―メトキシエチル)アミノプロパナール、2,2―ジメチル―3―ブチルアミノプロパナール、2,2―ジメチル―3―ジブチルアミノプロパナール、2,2―ジメチル―3―ヘキシルアミノプロパナール、2,2―ジメチル―3―(2―エチルヘキシル)アミノプロパナール、2,2―ジメチル―3―ドデシルアミノプロパナール、2,2―ジメチル―3―(N―ピロリジノ)プロパナール、2,2―ジメチル―3―(N―ピペリジノ)プロパナール、2,2―ジメチル―3―(N―モルホリノ)プロパナール、2,2―ジメチル―3―(N―(2,6―ジメチル)モルホリノ)プロパナール、2,2―ジメチル―3―ベンジルアミノプロパナール、2,2―ジメチル―3―(N―ベンジルメチルアミノ)プロパナール、2,2―ジメチル―3―(N―ベンジルイソプロピルアミノ)プロパナール、2,2―ジメチル―3―シクロヘキシルアミノプロパナール、2,2―ジメチル―3―(N―シクロヘキシルメチルアミノ)プロパナール、及びN,N’―ビス(2,2―ジメチル―3―オキソプロピル)ピペラジンからなる群から選択される、上記〈6〉項に記載の方法。
〈9〉上記〈1〉〜〈4〉のいずれか一項に記載の式(I)の少なくとも一つのアミノシランと、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つの反応性基RGを有する少なくとも一つの化合物VBとの反応から得られ、ここで、反応性基RGは、イソシアネート基、イソチオシアネート基、シクロカーボネート基、エポキシド基、エピスルフィド基、アジリジン基、アクリル基、メタクリル基、1―エチニルカルボニル基、1―プロピニルカルボニル基、マレイミド基、シトラコンイミド基、ビニル基、イソプロペニル基、及びアリル基からなる群から選択されることを特徴とする、付加体AD。
〈10〉化合物VBとしてイソシアネート基を含むポリウレタンポリマーPUPを使用することにより得られるシラン官能性ポリマーSPの形態である、上記〈9〉項に記載の付加体AD。
〈11〉上記〈1〉〜〈4〉項のいずれか一項に記載の式(I)の少なくとも一つのアミノシラン、又は上記〈5〉項に記載の式(II)の少なくとも一つのイミノシラン、又は上記〈9〉若しくは〈10〉項に記載の少なくとも一つの付加体ADの少なくとも部分的な加水分解から得られる、少なくとも一つの式(IX)のシラノール基を有する化合物:
【化4】
(nは最大で値(3―x)であるという条件で、nが1、2、又は3を表す)。
〈12〉コーティング表面への接着性を助長する試剤、及び/若しくは促進剤、及び/若しくは乾燥剤としての、又は硬化性材料、活性化剤、若しくはプライマーの構成成分としての、上記〈1〉〜〈4〉項のいずれか一項に記載の式(I)のアミノシラン、又は上記〈5〉項に記載の式(II)のイミノシラン、又は上記〈9〉若しくは〈10〉項に記載の付加体ADの使用。
〈13〉上記〈1〉〜〈4〉項のいずれか一項に記載の式(I)の少なくとも一つのアミノシラン、及び/又は上記〈5〉項に記載の式(II)の少なくとも一つのイミノシラン、及び/又は上記〈9〉項に記載の少なくとも一つの付加体ADを含む、組成物。
〈14〉上記〈10〉項に記載の少なくとも一つのシラン官能性ポリマーSP、及び少なくとも一つの更なる構成成分を含む、水分硬化性組成物。
〈15〉建築及び工業用途のための、繊維複合材料、弾性流延材料、封止剤、接着剤、被覆剤、コーティング、又は塗料としての、及び発泡物質としての、上記〈14〉項に記載の水分硬化性組成物の使用。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の対象は、下記の式(I)のアミノシランである。
【化1】
(R及びRは、それぞれ独立に、1〜12の炭素原子を有する一価の炭化水素残基を表し、又はR及びRは共に、5〜8、好ましくは6の炭素原子を有する任意に置換された環状炭素の一部である4〜12の炭素原子を有する二価炭化水素残基を表し;
は、水素原子、又は各々1〜12の炭素原子を有するアルキル基、アリールアルキル基、若しくはアルコキシカルボニル基を表し;
は、ヘテロ原子を任意に含む1〜20の炭素原子を有する、一価の脂肪族、脂環式、又はアリール脂肪族残基を表し、かつRは、水素原子、又はヘテロ原子を任意に含む1〜20の炭素原子を有する、一価の脂肪族、脂環式、又はアリール脂肪族残基を表し、又は
及びRは共に、5〜8、好ましくは6の環原子を有する任意に置換された複素環の一部である3〜30の炭素原子を有する二価脂肪族残基を表し、ここで、この環は窒素原子と並んで、更なるヘテロ原子を任意に含み;
は、1〜20の炭素原子を有し、任意に芳香族部分を有し、かつ任意に一つ以上のヘテロ原子、特に窒素原子を有する、直鎖若しくは分岐アルキレン又はシクロアルキレン残基を表し;
は、任意にエーテル酸素を含む1〜10の炭素原子を有するアルキル基を表し;
は、1〜8の炭素原子を有するアルキル基を表し;また
xは0、1、又は2を表す)。
【0009】
2つのOR基は共に、ケイ素原子を有する環を形成する二価グリコレート基を表すことができる。
【0010】
用語「第二級アミノシラン」は、直接にケイ素原子に結合している残基が少なくとも一つの第二級アミノ基を含む有機アルコキシシランを意味する。用語「第一級アミノシラン」は、ケイ素原子に結合している残基が少なくとも一つの第一級アミノ基を含む有機アルコキシシランを意味する。用語「イミノシラン」は、直接にケイ素原子に結合している残基が少なくとも一つのイミノ基を含む有機アルコキシシランを意味する。
【0011】
用語「有機アルコキシシラン」、簡単には「シラン」は、ケイ素を含む化合物であって、ケイ素原子が、少なくとも1つ、特に2又は3つのアルコキシル基の群を有し、かつケイ素原子が直接結合した有機残基を有し、したがって少なくとも一つのSi―C結合を含む、ケイ素を含む化合物を意味する。用語「シラン基」は、有機アルコキシシランの有機残基に結合しているケイ素を含む基を意味する。
【0012】
用語「第一級アミノ基」は、有機残基に結合しているNH基を意味し、用語「第二級アミノ基」は、環の共通部であることもできる2つの有機残基に結合しているNH基を意味し、また、用語「第三級アミノ基」は、その窒素原子(「第三級アミン窒素」)が3つの有機残基に結合しているアミノ基を意味する(これらの残基の2つは、環の共通部であることもできる)。
【0013】
用語「シラン架橋」は、硬化性材料を意味するために用い、ここで、シラン基を含むポリマー(「シラン官能性ポリマー」)は、主にシラン基と水分とが反応することにより硬化することができる。
【0014】
アミン又はイソシアネート基が、脂肪族、脂環式、又はアリール脂肪族残基に各々結合する場合、用語「脂肪族」はアミン又はイソシアネートを意味するために用い、したがって、その官能基は、脂肪族アミノ基、又は脂肪族イソシアネート基として言及される。
【0015】
アミン又はイソシアネート基が芳香族残基に各々結合する場合、用語「芳香族」はアミン又はイソシアネートを意味するために用い、したがって、その官能基は、芳香族アミノ基、又は芳香族イソシアネート基として言及される。
【0016】
用語「硬化性材料」は、少なくとも部分的に合成的に製造され、単独で及び/又は空気との接触の結果として、硬化してプラスチック及びプラスチック組成物になることができる、液体又は溶融可能な反応性有機物及びその組成物を含む。
【0017】
用語「ポリマー」は、化学的に同一の高分子であるが、重合度、分子量、及び鎖長に関して異なる集合体を含み、この集合体は重合反応(重合、重付加、重縮合)によって製造される。この用語は、重合反応によって得られるそのような高分子の集合体の誘導体も含む。ここで、この誘導体は、所定の高分子上の官能基の反応、例えば付加又は置換反応によって得られる化合物であり、化学的に同一であっても同一でなくてもよい。この用語はさらにいわゆるプレポリマー、すなわち反応性オリゴマー予備付加体もまた含み、その官能基は高分子の構築に関与する。
【0018】
用語「ポリウレタン」は、いわゆるジイソシアネート重付加法によって製造される全てのポリマーを含む。したがって、ポリウレタンは、通常ウレタン又はチオウレタン基、及び特に尿素基もまた含む。しかしながら、用語ポリウレタンは、ウレタン基をほとんど、又は完全に含まないポリマーもまた含む。それらは特に、いわゆるポリウレア、ポリエーテルポリウレア、及びポリエステルポリウレア、並びに更にポリエーテルポリウレタン、ポリエステルポリウレタン、ポリイソシアヌレート、及びポリカルボジイミドである。
【0019】
例えばポリアミン、ポリオール、又はポリエポキシド等のような、物質名の初めの用語「ポリ」は、それらの名前に存在する官能基を形式的に1分子当たり2以上含む物質を意味するために用いる。
【0020】
用語「ポリイソシアネート」は、それらが単量体、ジイソシアネート、トリイソシアネート、オリゴマー、又はイソシアネート基を含む付加体及びポリマーであるかどうかに関わらず、2以上のイソシアネート基を有する化合物を含む。
【0021】
AS、ALD、Y1、Y2、C、AD、VB、RG、SP、PUP、S1、S2、又はこれと同種の記号は、単に読みやすさ及び識別性を改善するために用いる。
【0022】
表現「室温」は、23℃の温度を意味するために用いる。
【0023】
及びRは、好ましくは各々メチル残基を表す。
【0024】
は、好ましくは水素原子を表す。
【0025】
したがって、特に、R及びRは各々メチル残基を表し、及び/又はRは水素原子を表す。
【0026】
は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、2―エチルヘキシル、シクロヘキシル、2―ヒドロキシエチル、2―ヒドロキシプロピル、2―メトキシエチル、又はベンジルを表し、並びにRは水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、2―エチルヘキシル、シクロヘキシル、2―ヒドロキシエチル、2―ヒドロキシプロピル、2―メトキシエチル又はベンジルを表すことが好ましい。
【0027】
さらに、R及びRは共に、窒素原子を含む環、特にピロリジン、ピペリジン、モルホリン、又はN―アルキルピペラジン環を形成することが好ましく、ここで、この環又はアルキル基は任意に置換される。
【0028】
は、1〜6の炭素原子を有する直鎖又は分岐アルキレン残基、特にプロピレン基を表すことが好ましい。
【0029】
さらに、Rは好ましくは、鎖内に1又は2の第二級アミノ基を含む5〜7の炭素原子を有する直鎖アルキレン残基、特に−(CH―NH―(CH―、又は−(CH―NH―(CH―NH―(CH―残基を表す。
【0030】
は好ましくは、メチル基、エチル基、又はイソプロピル基、特にメチル基、又はエチル基を表す。
【0031】
がメチル基又はエチル基、特にメチル基を表すことが好ましい。
【0032】
xは好ましくは0又は1、特に0を表す。
【0033】
本発明の更なる対象は、下記の式(II)のイミノシランである。
【化2】
【0034】
式(II)において、R、R、R、R、R、R、R、R、及びxは、すでに言及した定義を有する。
【0035】
式(I)のアミノシランの製造のため、式(II)のイミノシランを水素化することができる。この水素化は、分子水素によって直接的に、又は他の試薬から転移する水素によって間接的に起こることができる。そのような試薬の例としては、COを放出するギ酸(ロイカート―ヴァラッハ反応に基づく));ベンゼンへと脱水素されるシクロヘキセン、及び他のアルケン、例えばリモネン;有機シラン;プロトン性溶媒中のアルカリ金属;又は酸化剤の存在下でのヒドラジンである。用語「水素化」は、水素化物、例えば水素化アルミニウムリチウム、水素化ホウ素ナトリウム、及びナトリウムビス(2―メトキシエトキシ)アルミニウム水素化物(Vitride(商標)、Red―Al(商標))等を用いた還元もまた含む。分子水素を用いた水素化処理が好ましい。
【0036】
水素化のために必要とする水素は、適切な触媒の存在下、増大した圧力、特に5〜250bar(0.5MPa〜25MPa)の圧力、及び上昇した温度、特に20〜160℃の温度において好ましくは用いる。ここで、条件は有利には、一方ではイミノ基が可能な限り完全に水素化され、一方では式(IV)のイミンの構成要素がほとんど水素化又は分解しないように選択する。
【0037】
水素化に適切な触媒は、均一系触媒、例えば、ロジウム錯体、ルテニウム錯体、又はイリジウム錯体、及び不均一触媒、例えばプラチナ、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、オスミウム、レニウム、ニッケル、コバルト、又は鉄、並びに担体物質上のそれらの化合物又は調製物である。ここで、特に好適な支持物質は、軽石、珪藻土、アルミニウム、シリカゲル、又は活性炭である。炭素上のパラジウム(Pd/C)、炭素上のプラチナ(Pt/C)、アダムズ触媒、及びラネーニッケルを使用することが特に適切である。炭素上のパラジウム、及び炭素上のプラチナが好ましい。
【0038】
還元的アルキル化は、好ましくは液相中で行われる。これは、望ましい場合、溶媒の非存在下で又は溶媒の存在下で行うことができ、ここで適切な溶媒は、反応条件の下で不活性である。特に適切な溶媒は、C〜C10のアルカン、例えばヘキサン、ヘプタン、若しくはシクロヘキサン、又は例えばアルコール、特に第一級C〜Cのアルコール、例えばメタノール若しくはエタノールであるが、第二級アルコール、例えばイソプロパノール、及び第三級アルコール、例えばtert―ブタノールもまた適切である。溶媒としてアルコールを使用する際は、シラン基の加水分解の間に放出されるアルコールを使用することが好ましく、すなわち、例えば、メトキシシランを使用する場合はメタノール、又はエトキシシランを使用する場合はエタノールである。
【0039】
水素化はバッチで、又は連続的方法で、例えば連続運転水素化装置で行うことができる。その工程において、式(II)の少なくとも一つのイミノシランは、任意に溶液中で、圧力の下で連続的に水素と混合され、適切な触媒を通過する。ここでの水素は、水の電気分解によって連続的に発生させることができる。
【0040】
必要に応じて、式(I)のアミノシランは、製造の後、例えば蒸留によって精製することができる。
【0041】
式(II)のイミノシランは、下記の式(III)の少なくとも一つのアミノシランASと、下記の式(IV)の少なくとも一つのアルデヒドALDとが縮合する製造方法によって特に得られる。ここでの反応物は、遊離又は誘導体化した形態とすることができる。
【化3】
【0042】
式(III)及び(IV)において、R、R、R、R、R、R、R、R、及びxは、すでに言及した定義を有する。
【0043】
アルデヒドALDは、アミノシランASに対して、化学量論量又は化学量論過剰量で使用することができる。
【0044】
そのような第一級アミンとアルデヒドとの縮合反応は、非常によく知られている。式(II)のイミノシランの製造のため、アミノシランはこの場合において第一級アミンとして使用される。これは、縮合の間に放出される水がシラン基の加水分解を引き起こす可能性があるという更なる問題点を伴う。しかしながら、これは望ましくなく、大部分を抑制して、質的に良好な生成物を得るべきである。そうでなければ、繰り返す水の放出の下、例えば、この場合はシロキサン基を介して結合した2以上のイムノシランを含む分子である有機シロキサンのような縮合生成物が形成する。良質の式(II)のイミノシランの製造において、その水素化の後に良質の式(I)のアミノシランを得るために、シラン基の加水分解の大部分が抑制される製造方法を選択することは有利である。
【0045】
式(III)のアミノシランASと式(IV)のアルデヒドALDとの縮合による、式(II)のイミノシランの製造において、アミノシランASを出発物質として用い、アルデヒドALDを加える方法を使用することが好ましい。ここで、例えば反応混合物から縮合によって放出する水を直ちに吸引する減圧の永続的な適用によって、又は、例えば水を吸収する物質(例えば適切なモレキュラーシーブ)を用いて、この水を除去することによって、すでに転換の間に形成している水を確実に除去することは有利である。反応は、5〜250℃の温度で行うことができる。20〜100℃の範囲の反応温度を使用することが好ましい。
【0046】
通常、そのような反応は水と共沸混合物を形成する溶媒の存在下で行われ、ここで、溶媒とともに水は反応混合物から除去される。しかしながら、シラン基の加水分解の間に放出されるアルコール、すなわち例えば、メトキシシランを使用する場合はメタノール、又はエトキシシランを使用する場合はエタノールを使用して、式(II)のイミノシランを製造することが好ましい。アミノシランASを対応するアルコールの出発物質として用い、水を即時に除去すると共にアルデヒドALDを滴下して加える場合、優れた質の式(II)のイミノシランが得られることが観察された。しかしながら、製造の間、溶媒の使用を完全に省略することによって、上質の式(II)のイミノシランを得ることもできる。その工程においては、アミノシランASを出発物質として用い、アルデヒドALDを減圧下で加える。
【0047】
さらに、式(II)のイミノシランは、特に間接的な経路によってイミノ転移反応の生成物として生成することもできる。この目的のため、式(IV)の少なくとも一つのアルデヒドALDと、小さく比較的揮発性の第一級モノアミンとを反応させることによって、最初に下記の式(Va)のイミンの形態の中間生成物を作成する。ここでは、縮合において生成する水を、適切な手順を用いてできるだけ完全に除去する。その後、大部分の無水中間生成物は、上昇した温度及び減圧の下、イミノ転移で、式(III)の少なくとも一つのアミノシランASと反応して式(I)のアミノシランを生成する。ここでは、小さく比較的揮発性の第一級モノアミンを、減圧によって反応混合物から連続的に除去する。
【化4】
【0048】
式(Va)において、Rは、小さく比較的揮発性の第一級モノアミンのアルキル残基、好ましくは1〜6の炭素原子を有するアルキル基、特にプロピル基、イソプロピル基、又はブチル基を表し、またR、R、R、R、及びRはすでに言及した定義を有する。
【0049】
さらに、式(II)のイミノシランは、特に下記の式(Vb)のアセタールの形態の中間生成物を介した間接的な経路によって得ることもできる。
【化5】
【0050】
式(Vb)において、R10は、小さく比較的揮発性のアルコールのアルキル残基、好ましくは1〜6の炭素原子を有するアルキル基、特にメチル基、エチル基、又はイソプロピル基を表し、またR、R、R、R、及びRはすでに言及した定義を有する。
【0051】
式(Vb)のアセタールの製造において、式(IV)のアルデヒドALDは、小さく比較的揮発性のアルコールと縮合する。ここでは、その過程で放出する水を、適切な手順を用いてできるだけ完全に除去する。その後、大部分の無水中間生成物は、任意に触媒の存在下で、上昇した温度及び減圧の下、式(III)の少なくとも一つのアミノシランASと反応して式(I)のアミノシランを生成する。ここでは、小さく比較的揮発性のアルコールを、減圧によって連続的に反応混合物から除去する。
【0052】
式(Vb)のアセタールとの反応において、Rがメチル基を表すメトキシシラン基を有する式(III)のアミノシランASを用いる場合には、アセテート形成のために、比較的揮発性のアルコールとしてメタノールを使用することが好ましく、またエトキシシラン基を有する対応する場合には、アセタールの製造のために、エタノールを使用することが好ましい。
【0053】
アセタールを経る製造及びイミノ転移を経る製造は共に、実際に、直接的な縮合よりもわずかに複雑だが、どちらの場合においても、潜在的にシラン基の望ましくない加水分解を生じるシラン基と水との接触の前に、形成する水を除去できるという効果を有する。
【0054】
しかしながら、式(II)の対応するイミノシランを分離せずに、水素化の下、ワンポット反応で、式(III)の少なくとも一つのアミノシランASと式(IV)の少なくとも一つのアルデヒドALDとを反応させることにより、式(I)のアミノシランを製造することもまた可能である。例えば、アミノシランASを適切な溶媒中、モレキュラーシーブの存在下で出発物質として用いることができ、次いでアルデヒドALDを滴下して加え、そして、最後に、任意にモレキュラーシーブの除去の後で、反応溶液を適切な方法を使用して水素化する。
【0055】
式(III)のアミノシランASとして適切なものは、特に以下の第一級アミノシランである:
【0056】
○3―アミノプロピルトリメトキシシラン、3―アミノプロピルジメトキシメチルシラン、3―アミノ―2―メチルプロピルトリメトキシシラン、4―アミノブチルトリメトキシシラン、4―アミノブチルジメトキシメチルシラン、4―アミノ―3―メチルブチルトリメトキシシラン、4―アミノ―3,3―ジメチルブチルトリメトキシシラン、4―アミノ―3,3―ジメチルブチルジメトキシメチルシラン、2―アミノエチルトリメトキシシラン、2―アミノエチルジメトキシメチルシラン、アミノメチルトリメトキシシラン、アミノメチルジメトキシメチルシラン、アミノメチルメトキシジメチルシラン、7―アミノ―4―オキサヘプチルジメトキシメチルシラン、及びケイ素上のメトキシ基の代わりにエトキシ又はイソプロポキシ基を有するそれらの類似体;
【0057】
○第一級アミノ基の他に、特にケイ素原子に関してγ位にある第二級アミノ基(NH基)を有する、いわゆるジアミノシラン、例えば、特にN―(2―アミノエチル)―3―アミノプロピルトリメトキシシラン、N―(2―アミノエチル)―3―アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N―(2―アミノエチル)―3―アミノプロピルトリエトキシシラン、及びN―(2―アミノエチル)―3―アミノプロピルトリイソプロポキシシラン;及び
【0058】
○第一級アミノ基の他に、2つの第二級アミノ基(NH基)を有する、いわゆるトリアミノシラン、例えば、特にN―(2―アミノエチル)―N’―[3―(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン。
【0059】
3―アミノプロピルトリメトキシシラン、3―アミノプロピルトリエトキシシラン、4―アミノ―3,3―ジメチルブチルトリメトキシシラン、N―(2―アミノエチル)―3―アミノプロピルトリメトキシシラン、及びN―(2―アミノエチル)―3―アミノプロピルトリエトキシシランからなる群から選択される式(III)のアミノシランASを使用することが好ましい。
【0060】
専門文献で公知であるように、式(IV)のアルデヒドALDとして、特に、α―アミノアルキル化の様なマンニッヒ反応の生成物を使用することが適切である。下記の式(VI)のアルデヒドY1、下記の式(VII)のアルデヒドY2、及び下記の式(VIII)の第一級又は第二級脂肪族アミンCを、水の脱離を伴って、この処理で反応させて、式(IV)のアルデヒドALDにする。
【化6】
【0061】
式(VI)、(VII)、及び(VIII)において、R、R、R、R、及びRは、すでに言及した定義を有する。
【0062】
この反応は、式(VI)、(VII)、及び(VIII)の遊離した試薬Y1、Y2、及びCを用いて行うことができ、又は試薬を部分的若しくは完全に誘導体化した形態で用いることもできる。好ましい実施形態において、反応は遊離型の全ての試薬を用いてワンポット反応として行い、反応完結の後、アルデヒドALDを蒸留によって精製する。その工程において、有機溶剤を使用しないことが好ましい。
【0063】
式(VI)のアルデヒドY1として適切なものは特に、イソブチルアルデヒド、2―メチルブチルアルデヒド、2―エチルブチルアルデヒド、2―メチルバレルアルデヒド、2―エチルカプロンアルデヒド、シクロペンタンカルボキサルデヒド、シクロヘキサンカルボキサルデヒド、1,2,3,6―テトラヒドロベンズアルデヒド、2―メチル―3―フェニルプロピオンアルデヒド、2―フェニルプロピオンアルデヒド、及びジフェニルアセトアルデヒドである。イソブチルアルデヒドを使用することが好ましい。
【0064】
式(VII)のアルデヒドY2として適切なものは特に、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、及びグリオキシル酸エステル、特にグリオキシル酸エチルエステルである。ホルムアルデヒドを使用することが好ましい。
【0065】
式(VIII)のアミンCとして適切なものは特に、メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、イソブチルアミン、ジイソブチルアミン、s―ブチルアミン、ジ―s―ブチルアミン、ヘキシルアミン、ジヘキシルアミン、2―エチルヘキシルアミン、ジ―(2―エチルヘキシル)アミン、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N―メチルブチルアミン、N―エチルブチルアミン、N―メチルシクロヘキシルアミン、N―エチルシクロヘキサアミン、ビス(2―メトキシエチル)アミン、ピロリジン、ピペリジン、ベンジルアミン、N―メチルベンジルアミン、N―イソプロピルベンジルアミン、N―t―ブチルベンジルアミン、ジベンジルアミン、モルホリン、2,6―ジメチルモルホリン、ビス(3―ジメチルアミノプロピル)アミン、N―メチル―又はN―エチルピペラジン、並びに第一級アミンのアルコキシレート、例えば2―(N―エチルアミノ)エタノール、及び2―(N―プロピルアミン)エタノールである。メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、イソブチルアミン、ジイソブチルアミン、ヘキシルアミン、2―エチルヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、N―メチルシクロヘキシルアミン、N―メチルベンジルアミン、N―イソプロピルベンジルアミン、N―t―ブチルベンジルアミン、ベンジルアミン、ジベンジルアミン、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、及び2,6―ジメチルモルホリンを使用することが好ましい。メチルアミン、ジメチルアミン、及び特にモルホリンを使用することが特に好ましい。
【0066】
ピペラジンは、アミンCとしても適切である。ピペラジンの場合、特に、2つのシラン基及び少なくとも2つの第二級アミノ基を有する式(I)のアミノシランを製造ために、モル比1:2でアミノシランASとの反応において使用することができるジアルデヒドの形態のアルデヒドALDが形成する。
【0067】
式(IV)の好ましいアルデヒドALDは、2,2―ジメチル―3―メチルアミノプロパナール、2,2―ジメチル―3―ジメチルアミノプロパナール、2,2―ジメチル―3―エチルアミノプロパナール、2,2―ジメチル―3―ジエチルアミノプロパナール、2,2―ジメチル―3―ビス(2―メトキシエチル)アミノプロパナール、2,2―ジメチル―3―ブチルアミノプロパナール、2,2―ジメチル―3―ジブチルアミノプロパナール、2,2―ジメチル―3―ヘキシルアミノプロパナール、2,2―ジメチル―3―(2―エチルヘキシル)アミノプロパナール、2,2―ジメチル―3―ドデシルアミノプロパナール、2,2―ジメチル―3―(N―ピロリジノ)プロパナール、2,2―ジメチル―3―(N―ピペリジノ)プロパナール、2,2―ジメチル―3―(N―モルホリノ)プロパナール、2,2―ジメチル―3―(N―(2,6―ジメチル)モルホリノ)プロパナール、2,2―ジメチル―3―ベンジルアミノプロパナール、2,2―ジメチル―3―(N―ベンジルメチルアミノ)プロパナール、2,2―ジメチル―3―(N―ベンジルイソプロピルアミノ)プロパナール、2,2―ジメチル―3―シクロヘキシルアミノプロパナール、2,2―ジメチル―3―(N―シクロヘキシルメチルアミノ)プロパナール、及びN,N’―ビス(2,2―ジメチル―3―オキソプロピル)ピペラジンからなる群から選択される。
【0068】
式(I)のアミノシランは、水分を除いて保管することができる。式(II)のイミノシランもまた、水分を除いて保管することができる。
【0069】
式(I)のアミノシランのシラン基、及び式(II)のイミノシランのシラン基は、それらが水分と接触したときに加水分解する特性を有する。その過程において、有機シラン(一つ以上のシラノール基(Si―OH基)を含むケイ素有機化合物)が形成し、その後の縮合反応の結果、有機シロキサン(一つ以上のシロキサン基(Si―O―Si基)を含むケイ素有機化合物)が形成する。ここでは、対応するアルコール(例えば、メトキシシラン基の場合はメタノール、又はエトキシシラン基の場合はエタノール)が放出される。
【0070】
式(I)の少なくとも一つのアミノシラン、又は式(II)の少なくとも一つのイミノシランの少なくとも部分的な加水分解において、下記の式(IX)の少なくとも一つのシラノール基を有する化合物が得られる。
【化7】
【0071】
式(IX)において、nは最大で(3―x)である条件で、nは1、2、又は3を表す。R、R、及びxは、すでに示した定義を有する。
【0072】
本明細書中の式の破線は、いずれの場合においても置換基と結合する分子残基との間の結合を表す。
【0073】
そのような加水分解された、又は部分的に加水分解された式(IX)のシラノール基を有する化合物は、シロキサン基(Si―O―Si基)の形成を伴う更なるシラノール基との縮合によって、又は例えば基材の水酸基との縮合によって、それらは非常に反応性であり、非常に高い速度で反応し続けることができる。
【0074】
式(I)のアミノシラン、及び式(II)のイミノシランは、さまざまな基材に対し強い接着性を確立し、又はこれらの基材を含む組成物の基材に対する粘着性の強化を改善する能力を有する。接着性の確立において、関与するシラノール基は、有機シロキサンを形成するために互いに排他的に縮合する代わりに、主にそれぞれの基材との接続の中に部分的に入ることがありうる。
【0075】
第二級アミノ基の他に、式(I)のアミノシランは、少なくとも1つの更なる第二級又は第三級アミノ基もまた有する。このアミノ基は、シラン基の加水分解に対し触媒効果を有することができる。同様に、基(II)のイミノシランは、イミノ基の他に、シラン基の加水分解に対し触媒効果を有することができる第二級又は第三級アミノ基を有することができる。シラン基の加水分解を更に加速するために、式(I)のアミノシラン又は式(II)のイミノシランを適切な触媒と組み合わせることは、有利なことがある。適切な触媒は、特に、有機スズ化合物(例えばジブチルスズジラウリン酸塩、又はジブチルスズジアセチルアセトネート)、チタネート、及びジルコネート、並びにアミン、アミジン、及びグアニジン、例えば1,4―ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ―7―エン(DBU)、又は1,1,3,3―テトラメチルグアニジンである。
【0076】
例えば、式(I)のアミノシラン、及び/又は式(II)のイミノシランは、コーティング面のための、例えばそれらの汚れの傾向、洗浄の容易さ等に関する特性を改良するための、プラスチックとさまざまな基材との間の接着性を助長する試薬として、促進剤として、及び/又は乾燥剤として、有利に使用可能である。この目的のため、それらは単独で、又は溶液及び組成物の構成成分として、例えば予備処理剤若しくは活性剤、第1の被膜、又はプライマーとして、使用することができる。
【0077】
式(I)のアミノシラン若しくは式(II)のイミノシランの、接着性を助長する試薬としての使用に適切な基材、又は表面のコーティングに適切な基材は、特に以下に言及する物質S1及びS2である。
【0078】
式(I)のアミノシラン及び式(II)のイミノシランは硬化性材料の構成成分として使用可能であり(ここではこれらは架橋剤として、及び/又は接着性を助長する試薬として、及び/又は促進剤として、及び/又は乾燥剤として硬化性材料において使用することができる)、並びに活性化剤又はプライマーの構成成分としてもまた使用可能である。
【0079】
式(I)のアミノシランは、驚くべき特性を有する新規な化合物である。それらは通常室温で液体であり、比較的低い粘度を有し、それは多くの適用にとって大きな利点である。それにもかかわらず、それらは低い揮発性を有し、ほとんど匂いがない。これは、低粘度のアミノ化合物では珍しい。さらに、それらは、市販の第一級アミノシラン及び式(IV)の開示されたアルデヒドALDから、高価な後処理工程を必要としない単純な方法で製造することができる。これが可能である理由は、第三級アルデヒドALDと第一級アミノ基との間のイミン形成が、能動的に水を除去することなく、及びアミナールを形成することなく自発的に発生し、水素化が、立体障害にもかかわらず第三級置換されたイミノ基を経由して驚くほど簡単に(比較的低い水素圧力、及び比較的低い温度でさえも)成功し、そして、結果として生じる式(I)のアミノシランの第二級アミノ基が、アルキル化反応に関与せず、したがってNH官能性の喪失を伴う過剰なアルキル化が発生することがないからである。
【0080】
水素化によってイミノ基から形成する第二級アミノ基の他に、式(I)のアミノシランは、アルデヒドALDに由来する第三級又は第二級アミノ基の形態の少なくとも一つの更なるアミノ基を含む。式(I)のアミノシランのいくつかの特に有利な特性、特にシラン基の迅速な加水分解速度の特性、多数の硬化性材料における良好な適合性、及び特に良好な接着性を助長する特性は、おそらく、この更なるアミノ基によって説明することができる。特にモルホリノ基の存在は、加水分解速度を加速する影響を及ぼすと思われる。
【0081】
硬化可能なシラン架橋ポリマーとして特に有利な特性は、付加された形態の式(I)のアミノシランによって示される。そのようなポリマーは、イソシアネート官能性ポリウレタンポリマーとアミノシランとを反応させることによって調製することができる。式(I)のアミノシランをこの目的に使用する場合、水分と接触した際に急速かつ完全に硬化する比較的低粘度のシラン官能性ポリマーが生成する。しかしながら、特に驚くべきことに、式(I)のアミノシランから誘導したシラン官能性ポリマーを含む硬化可能な物質は、硬化後の状態において優れた耐熱性を有する。ここでこれらの系の耐熱性は、従来技術による第二級アミノ基を含むアミノシランから誘導した類似する系の耐熱性と比較して、実質的に良好である。
【0082】
式(II)のイミノシランもまた、驚くべき特性を有する新規な化合物である。それらは通常、室温で液体であり、比較的低い粘度を有し、また、低い揮発性を有し、ほとんど匂いがしない。湿度を排除した条件では、それらは保管する際に安定である。それらが水と接触すると、イミノ基及びシラン基の加水分解が起こる。イミノ基は加水分解の間に形式的に反応して、アミノ基を生成し、対応するアルデヒドALDが放出される。アミンに対して反応性である基、例えばイソシアネート基の存在下で、第一級アミノ基は、例えば尿素基の形成を伴って反応し続ける。その結果、イミノ基の加水分解が急速かつ完全に起こる。放出されたアルデヒドALDは、匂いを有しないか、又はわずかにアミンの様な匂いを有する。それは匂いをもたらさず、又は組成物、例えば接着剤、封止剤、若しくは被覆剤において、多くともわずかな匂いのみをもたらす。式(II)の加水分解性イミノシランと、第一級アミンに対して反応性である構成成分との反応は、必ずしも式(III)のアミノシランASの放出を経て起こる必要はない。当然、イミノシランの加水分解の中間体との反応でアミノシランを形成することも可能である。例えば、式(II)の加水分解性イミノシランが、セミアミナールの形態で直接に、アミンに対して反応性である構成成分と反応することが考えられる。
【0083】
式(II)の開示したイミノシランの中で、下記の式(IIa)のイミノシランは特に興味深い。
【化8】
【0084】
式(II)において、R6’は、鎖中に1又は2の第二級アミノ基を有する5〜7の炭素原子を有する直鎖アルキレン残基、特に―(CH―NH―(CH―、又は―(CH―NH―(CH―NH―(CH―残基を表し、またR、R、R、R、R、R、R、及びxは、すでに言及した定義を有する。
【0085】
式(IIa)のイミノシランの基礎となる、第一級及び第二級アミノ基を含む特別なアミノシランASは、接着性を助長する試薬として有利である。ただし、それらの第一級アミン基は、組成物、特にエステル基を有する組成物の保管の間に、問題を引き起こす可能性がある。この問題点は、式(II)の接着性を助長する試薬としてのイミノシランを用いて、見事に克服することができる。
【0086】
本発明の更なる対象は、式(I)の少なくとも一つのアミノシランと、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つの反応性基RGを有する少なくとも一つの化合物VBとの反応によって得られる付加体ADである。ここで、反応性基RGは、イソシアネート基、イソチオシアネート基、シクロカーボネート基、エポキシド基、エピスルフィド基、アジリジン基、アクリル基、メタクリル基、1―エチニルカルボニル基、1―プロピニルカルボニル基、マレイミド基、シトラコンイミド基、ビニル基、イソプロペニル基、及びアリル基からなる群から選択される。イソシアネート基、エポキシド基、アクリル基、マレイミド基、ビニル基、イソプロペニル基、及びアリル基を使用することが好ましい。イソシアネート基、及びエポキシド基は、反応性基RGとして特に好ましい。
【0087】
式(I)のアミノシランの少なくとも一つの第二級アミノ基は、化合物VBの少なくとも一つの反応性基RGと付加反応で反応して、付加体ADを形成する。
【0088】
反応は、式(I)のアミノシランの第二級アミノ基が化合物VBの反応性基RGに対して化学量論量で、又は化学量論過剰量で存在するような方法で行うことができる。これによれば、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つのシラン基を有し、かつ反応性基RGがほとんどない付加体ADを得ることができる。
【0089】
しかしながら、反応は、化合物VBの反応性基RGが式(I)のアミノシランの第二級アミノ基に対して化学量論過剰量で存在するような方法で行うこともできる。化合物VBが少なくとも2つの反応性基RGを有する場合、この方法において少なくとも一つの反応性基RG及び少なくとも一つのシラン基を有する付加体ADを得ることができる。
【0090】
付加体ADを形成する式(I)のアミノシランと化合物VBとの間の反応は、所定の反応に関与する反応性基RGとの間の反応に典型的に使用されるような前述の条件下で起こる。反応は、溶媒を用いて、及び好ましくは溶剤を用いない態様において起こる。任意に、例えば補助剤、例えば触媒、開始剤又は安定剤を使用することもできる。イソシアネート基との反応は好ましくは、室温において行い、及びエポキシド基との反応は好ましくは、上昇した温度、例えば、40〜100℃において行う。
【0091】
適切な化合物VBの例は、下記の化合物である:
【0092】
○モノマー及び/又はオリゴマーの脂肪族、脂環式、アリール脂肪族、若しくは芳香族ポリイソシアネート、例えば1,4―テトラメチレンジイソシアネート、1,6―ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2―メチルペンタメチレン―1,5―ジイソシアネート、2,2,4―及び2,4,4―トリメチル―1,6―ヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、1,10―デカメチレンジイソシアネート、1,12―ドデカメチレンジイソシアネート、リシン及びリシンエステルジイソシアネート、シクロヘキサン―1,3―及び―1,4―ジイソシアネート並びにこれらの異性体の任意の混合物、1―メチル―2,4―及び―2,6―ジイソシアネートシクロヘキサン並びにこれらの異性体(HTDI)の任意の混合物、1―イソシアネート―3,3,5―トリメチル―5―イソシアネートメチルシクロヘキサン(=イソホロンジイソシアネート、又はIPDI)、ペルヒドロ―2,4’―及び―4,4’―ジフェニルメタンジイソシアネート(HMDI)、1,4―ジイソシアネート―2,2,6―トリメチルシクロヘキサン(TMCDI)、1,3―及び1,4―ビス―(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、m―及びp―キシリレンジイソシアネート(m―及びp―XDI)、1,3,5―トリス―(イソシアネートメチル)ベンゼン、m―及びp―テトラメチル―1,3―及び1,4―キシリレンジイソシアネート(m―及びp―TMXDI)、ビス(1―イソシアネート―1―メチルエチル)ナフタレン、二量体及び三量体の脂肪酸イソシアネート、例えば3,6―ビス―(9―イソシアネートノニル)―4,5―ジ―(1―ヘプテニル)シクロヘキセン(ジメリル(dimeryl)ジイソシアネート)、α、α、α’、α’、α”、α”―ヘキサメチル―1,3,5―メシチレントリイソシアネート、2,4―及び2,6―トルイレンジイソシアネート並びにこれらの異性体(TDI)の任意の混合物、4,4’−、2,4’―及び2,2’―ジフェニルメタンジイソシアネート並びにこれらの異性体(MDI)の任意の混合物、MDI及びMDI相同体の混合物(ポリマーMDI又はPMDI)、1,3及び1,4―フェニレンジイソシアネート、2,3,5,6―テトラメチル―1,4―ジイソシアネートベンゼン、ナフタレン―1,5―ジイソシアネート(NDI)、3,3’―ジメチル―4,4’―ジイソシアネートジフェニル(TODI)、ジアニシジンジイソシアネート(DADI)、トリス―(4―イソシアネートフェニル)メタン、トリス―(4―イソシアネートフェニル)チオリン酸エステル;ウレトジオン、イソシアヌレート、又はイミノオキサジアジンジオン基を含む上記のイソシアネートのオリゴマー;エステル、尿素、ウレタン、ビウレット、アロファネート、カルボジイミド、ウレトンイミン、又はオキサジアジントリオン基を含む変性ポリイソシアネート;並びにイソシアネート基を含むポリウレタンポリマー、すなわち、1以上のイソシアネートを含有する、二つ以上の水酸基を含む物質(いわゆる「ポリオール」)を含むポリイソシアネートの反応生成物、例えば、多価アルコール、グリコール、又はアミノアルコール、多価機能的ポリエーテル、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、又はポリ炭化水素、特に下記のようなイソシアネート基を含むポリウレタンポリマーPUPの製造のためのポリエーテル;
【0093】
○ポリエポキシド、例えばビス―(2,3―エポキシシクロペンチル)エーテル、多価ポリグリシジルエーテル、脂肪族及び脂環式アルコール類、例えば1,4―ブタンジオール、ポリプロピレングリコール、及び2,2―ビス―(4―ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン;多価フェノールのポリグリシジルエーテル、例えばレゾルシノール、ビス(4―ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノールF)、2,2―ビス―(4―ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2―ビス―(4―ヒドロキシ―3,5―ジブロモフェニル)プロパン、1,1,2,2―テトラキス―(4―ヒドロキシフェニル)エタン、酸性条件の下で調製したフェノールとホルムアルデヒドとの縮合生成物(例えばフェノールノボラック、及びクレゾールノボラック)、並びにこれらのアルコール及びフェノールとの縮合生成物、若しくは例えばポリカルボン酸(例えば二量体の酸)との縮合生成物、又はその混合物、上記に拡張したポリグリシジルエーテル;多価カルボン酸のポリグリシジルエステル類、例えばフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、及びヘキサヒドロフタル酸;アミンのN―グリシジル誘導体、アミド、及び複素環式の窒素塩基、例えばN,N―ジグリシジルアニリン、N,N―ジグリシジルトルイジン、N,N,O―トリグリシジル―4―アミノフェノール、N,N,N’,N’―テトラグリシジル―ビス―(4―アミノフェニル)メタン、トリグリシジルシアヌレート、及びトリグリシジルイソシアヌレート;
【0094】
○1より多いアクリル、メタクリル、又はアクリルアミド基、例えばトリス―(2―ヒドロキシエチル)イソシアヌレート―トリ(メス)アクリレート、トリス―(2―ヒドロキシエチル)シアヌレート―トリ(メス)アクリレート、N,N’,N”―トリス―(メス)アクリロイルペルヒドロトリアジン基を有する合成物;脂肪族ポリエーテルのアクリル酸エステル及びメタクリル酸エステル、ポリエステル、ノボラック、フェノール、及び脂肪族又は脂環式アルコール、グリコール、並びにポリエステルグリコール、並びに上述の化合物のモノ―及びポリアルコキシル化誘導体、例えば、エチレングリコールジ(メス)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メス)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メス)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メス)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メス)アクリレート、1,4―ブタンジオールジ(メス)アクリレート、1,6―ヘキサンジオールジ(メス)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メス)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メス)アクリレート、ペンタエリトリトールテトラ(メス)アクリレート、ジペンタエリトリトールテトラ(メス)アクリレート、ジペンタエリトリトールペンタ(メス)アクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサ(メス)アクリレート;アクリル若しくはメタクリル官能性ポリブタジエン、ポリイソプレン、又はそのブロックコポリマー;ポリエポキシドの付加体、例えば上述のエポキシドとアクリル及びメタクリル酸との付加体;ポリウレタン(メス)アクリレート;アクリルアミド、例えばN,N’―メチレン―ビス―アクリルアミド;
【0095】
○1より多い1―エチニルカルボニル又は1―プロピニルカルボニル基を有する化合物;
【0096】
○1より多いマレイミド又はシトラコンイミド基を持有する化合物;
【0097】
○1より多いビニル及び/又はイソプロペニル基を有する化合物;
【0098】
○1より多いアリル基を有する化合物;
【0099】
○並びに、ヘテロ官能性化合物、すなわち少なくとも2つの異なる上述の反応性基を有する化合物、並びに
【0100】
○反応性基RGに対して単官能である化合物、特に加えてシラン基、例えば特にイソシアネートシラン、エポキシシラン、及び(メス)アクリルシラン基、特に3―イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、及び3―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン基を有する化合物。
【0101】
付加体ADの少なくとも部分的な加水分解の間、すでに式(I)のアミノシラン、及び式(II)のイミノシランについて開示したように、式(IX)のシラノール基を有する化合物が形成する。
【0102】
式(IX)のシラノール基を有するそのような加水分解した又は部分的に加水分解した付加体ADは、非常に反応性であり、すでに上記で開示したものと同じ態様で、非常に急速に反応し続けることができる。
【0103】
化合物VBとして特に適切なものは、一つの実施形態において、モノマー及びオリゴマーポリイソシアネート、イソシアネートシラン、ポリエポキシド、エポキシシラン、並びに(メス)アクリル基を有する化合物である。
【0104】
そのような化合物VBとの付加体ADは、硬化可能な物質の構成成分として特に適しており、ここではそれらは架橋剤として、及び/又は接着性を助長する試薬として、及び/又は促進剤として、及び/又は乾燥剤として、硬化可能な物質中で作用することができ、並びに活性化剤若しくはプライマーの構成成分として特に適している。
【0105】
更なる実施形態において、化合物VBとして特に適切なものは、ポリイソシアネートとポリオール(イソシアネート基含有ポリウレタンポリマーとも呼ばれる)との反応によって得られる(1より多いイソシアネート基を有する)反応生成物である。
【0106】
そのような化合物VBとの付加体ADは、特に硬化性材料の構成成分として適切であり、ここでは、それらは硬化性材料において硬化可能なシラン官能性ポリマーとして使用することができる。
【0107】
式(I)のアミノシラン、式(II)のイミノシラン、及び付加体ADは、コーティング面への接着性を助長する試薬、及び/若しくは促進剤、及び/若しくは乾燥剤として、又は硬化性材料、活性化剤、若しくはプライマーの構成成分として有利に使用可能である。
【0108】
本発明の更なる対象は、式(I)の少なくとも一つのアミノシラン、及び/又は式(II)の一つのイミノシラン、及び/又は少なくとも一つの付加体ADを含む組成物から成る。
【0109】
一つの実施形態において、そのような組成物は更に、少なくとも一つの溶媒、及び任意に更なる構成成分、例えば、特に触媒、更なるシラン、チタネート、及びジルコネートを含む活性化剤である。活性化剤は典型的に、基材と組成物との間に改良された接着性を生じるような態様で、硬化性材料のその後の適用のためと同時に、基材表面を洗浄してそれらを準備するために用いる。活性化剤の成分は典型的に、溶媒の蒸発の後、閉じたフィルムが基材表面上に残らないような態様で添加される。
【0110】
さらなる態様において、そのような組成物は更に、少なくとも一つの溶媒、及び少なくとも一つの膜形成構成成分、任意に更なる構成成分、例えば、特に触媒、充填材、更なるシラン、チタネート、ジルコネート、架橋剤、及び更なる添加物を含むプライマーである。特に適切な膜成形構成成分は、モノマー及び/若しくはオリゴマー脂肪族、脂環式、アリール脂肪族、又は芳香族ポリイソシアネート、イソシアネート及び/若しくはシラン基含有ポリウレタンポリマー、エポキシド樹脂、並びに開示した付加体ADである。プライマーは通常、溶媒の蒸発の後、数マイクロメートル〜数百マイクロメートルの層厚の、閉じたフィルムが基材上に残るよう適用される。プライマーは典型的に、プライマー膜が(硬化性材料と同様に)、基材に対する、及びプライマー膜に適用する硬化性材料に対する接着性を強化することを可能にすることにより、基材と組成物との間の接着性を高めるために用いる。
【0111】
そのような活性化剤又はプライマーに適切な溶媒は、特にアルコール、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール;ケトン、例えばアセトン、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトン、アセチルアセトン、メシチルオキシド、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン;アセテート、例えば酢酸エチル、プロピルアセテート、酢酸ブチル;
ギ酸エステル(formiates)、プロピオン酸エステル、及びマロネート、例えばジエチルマロネート;エーテル、例えばジアルキルエーテル、ケトンエーテル、及びエステルエーテル、例えばジイソプロピルエーテル、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、及びエチレングリコールジエチルエーテル;脂肪族及び芳香族炭化水素、例えばトルエン、キシレン、ヘプタン、オクタン、及び鉱油画分、例えばナフサ、ホワイトスピリット、石油エーテル、及びガソリン、例えばSolvessoTMタイプ(Exxon社);ハロゲン化炭化水素、例えば塩化メチレン;炭酸エステル、例えば炭酸プロピレン;ラクトン、例えばブチロラクトン;N―アルキル化ラクタム、例えばN―メチルピロリドン;並びに水である。
【0112】
さらなる態様において、そのような組成物は、イソシアネート基含有ポリウレタン組成物の形態、エポキシド樹脂組成物の形態、又は主にシラン基の加水分解及び縮合を経て硬化するシラン官能性硬化性材料の形態の硬化性材料である。
【0113】
そのような硬化性材料は、特に建築及び工業用途のための流延材料、封止剤、接着剤、被覆剤、コーティング、及び塗料として、例えば電気的絶縁物質、パテ組成物、目地材、組立接着剤、車体接着剤、ガラス接着剤、サンドイッチ要素接着剤、外装接着剤、積層接着剤、アンカー接着剤、床コーティング及び被覆材、バルコニ及び屋根被覆材、コンクリート保護被覆材、駐車場被覆材、並びに耐腐食保護塗料として使用することができる。
【0114】
硬化性材料、活性化剤、及びプライマーにおけるシランの使用は従来技術において一般的であり、ここでは、シランは架橋剤として、及び/又は接着剤として、及び/又は促進剤として、及び/又は乾燥剤として、及び/又は硬化可能なポリマーとして使用することができる。式(I)のアミノシランが更なるアミノ基を有するという事実は、そのような用途においてそれらを特に有利にする。
【0115】
開示した付加体ADの中で、特に有利なシラン官能性ポリマーSPは、少なくとも一つのイソシアネート基を含有するポリウレタンポリマーPUPと、式(I)の少なくとも一つのアミノシランとを反応させることによって調製することができる。
【0116】
この目的のために、1つの第二級基のみを有する式(I)のアミノシラン(すなわちRが水素原子を表さず、Rが第二級アミノ基を有しない式(I)のアミノシラン)を使用することが好ましい。
【0117】
式(I)のアミノシランの第二級アミノ基は、ポリウレタンポリマーPUPのイソシアネート基に対して好ましくは化学量論量で、又はわずかな化学量論過剰量で用いる。
【0118】
イソシアネート基のないシラン官能性ポリマーSPを使用することが好ましい。
【0119】
シラン官能性ポリマーSPの製造に適するイソシアネート基を含むポリウレタンポリマーPUPは、特に、少なくとも一つのポリオールと、少なくとも一つのポリイソシアネート(特にジイソシアネート)とを反応させることにより調製することができる。この反応は通常の方法を使用して、例えば50℃〜100℃の温度で、任意に適切な触媒を同時に使用して、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させることにより起こることができ、そこにおいて、ポリイソシアネートは、そのイソシアネート基がポリオールの水酸基に対して化学量論過剰量で存在するよう添加する。有利には、NCO/OH比率を1.3〜5、特に1.5〜3に維持するように、ポリイソシアネートを添加した。用語「NCO/OH比率」は、使用する水酸基の数に対する、使用するイソシアネート基の数の比率を意味する。ポリオールの全ての水酸基の反応の後、0.25〜5質量%、特に好ましくは0.3〜2.5質量%の遊離イソシアネート基の含有量が、ポリウレタンポリマーPUP内に残っていることが好ましい。
【0120】
任意に、ポリウレタンポリマーPUPは可塑剤を同時に使用することにより製造することができ、そこにおいて、使用する可塑剤はイソシアネートに対して反応性である基を含まない。
【0121】
1.5〜2のNCO/OH比率でジイソシアネートと高分子量ジオールとを反応させることによって得られる、前述の遊離イソシアネート基の含有量を有するポリウレタンポリマーPUPを使用することが好ましい。
【0122】
ポリウレタンポリマーPUPの製造のためのポリオールとして、特に、以下の市販のポリオール又はその混合物を使用することができる:
【0123】
○エチレンオキシド、1,2―プロピレンオキシド、1,2―若しくは2,3―ブチレンオキシド、オキセタン、テトラヒドロフラン、又はその混合物の重合生成物であり、おそらく二つ以上の活性な水素原子を有する開始剤分子の助けを借りて重合した、ポリエーテルポリオール又はオリゴエーテルオールとも呼ばれるポリオキシアルキレンポリオール。ここで、上記の開始剤分子は例えば、水、アンモニア、又はいくつかのOH又はNH基を有する化合物等、例えば、1,2―エタンジオール、1,2―及び1,3―プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、異性体ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、異性体ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ウンデカンジオール、1,3―及び1,4―シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、水素化ビスフェノールA、1,1,1―トリメチロールエタン、1,1,1―トリメチロールプロパン、グリセロール、アニリン、並びに前述の化合物の混合物である。例えば、いわゆる複金属シアン化物錯体触媒(DMC触媒)の助けを借りて製造される、低度の不飽和度を有するポリオキシアルキレンポリオール、及び、例えば陰イオン触媒(例えばNaOH、KOH、CsOH、若しくはアルカリアルコール化合物)の助けを借りて製造される、高度の不飽和度を有するポリオキシアルキレンポリオールの両者を使用することができる。ここで、不飽和度は、ASTM D―2849―69に従って測定され、ポリオール1グラム当たりの不飽和のミリグラム当量(mEq/g)で示される。
【0124】
特に適切なものは、ポリオキシアルキレンジオール、又はポリオキシアルキレントリオール、特にポリオキシエチレン、並びにポリオキシプロピレンジオール及びトリオールである。特に適切なものは、0.02mEq/g未満の程度の不飽和度、及び1000〜30,000グラム/モルの範囲の分子量を有するポリオキシアルキレンジオール及びトリオール、並びに400〜8000グラム/モルの分子量を有するポリオキシプロピレンジオール及びトリオールである。
【0125】
特に適切なものは、いわゆるエチレンオキシドで末端がキャップされた(「EO末端キャップ」)ポリオキシプロピレンポリオールである。後者は、例えば、エチレンオキシドを用いたポリプロポキシ化反応の終了後の、純粋なポリオキシプロピレンポリオール、特にポリオキシプロピレンジオール及びトリオールの更なるアルコキシ化によって調製される特別なポリオキシプロピレンポリオキシエチレンポリオールであり、その結果、それらは第一級水酸基を含む。
【0126】
○ポリエーテルポリオールをグラフトした、スチレン―アクリロニトリル又はアクリロニトリル―メチルメタクリル酸エステル。
【0127】
○周知の方法、特にヒドロキシカルボン酸の重縮合、又は脂肪族及び/若しくは芳香族ポリカルボン酸と二価若しくは多価アルコールとの重縮合によって製造した、オリゴエステロールとも呼ばれるポリエステルポリオール。
【0128】
特に適切なポリエステルポリオールは、二価又は三価、特に二価アルコール、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4―ブタンジオール、1,5―ペンタンジオール、3―メチル―1,5―ヘキサンジオール、1,6―ヘキサンジオール、1,8―オクタンジオール、1,10―デカンジオール、1,12―ドデカンジオール、1,12―ヒドロキシステアリルアルコール、1,4―シクロヘキサンジメタノール、二量体脂肪酸ジオール(ダイマージオール)、ヒドロキシピバル酸ネオペンチルグリコールエステル、グリセロール、1,1,1―トリメチロールプロパン、又は上述のアルコールの混合物と、有機ジ―又はトリカルボン酸、特にジカルボン酸、又はそれらの無水物若しくはエステル、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、トリメチルアジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボキシル酸、マレイン酸、フマル酸、二量体脂肪酸、フタル酸、フタル酸無水物、イソフタル酸、テレフタル酸、ジメチルテレフタレート、ヘキサヒドロフタル酸、トリメリト酸、及びトリメリト酸無水物、又は上述の酸の混合物とから製造されるポリエステルポリオールである。また、特に適切なポリエステルポリオールは、ラクトン、例えばε―カプロラクトンと、開始剤、例えば上述の二価又は三価のアルコールとから製造されるポリエステルポリオールである。
【0129】
ポリエステルジオールは、特に適切なポリエステルポリオールである。
【0130】
○例えば上述のアルコール(ポリエステルポリオールを構築するために使用する)と、ジアルキルカーボネート、ジアリールカーボネート、又はホスゲンとの反応によって調製することができるポリカーボネートポリオール。
【0131】
○少なくとも2つの水酸基を有し、かつ上述のタイプのポリエーテル、ポリエステル、及び/又はポリカーボネート構造を有する少なくとも2つの異なるブロックを含むブロックコポリマー、特にポリエーテルポリエステルポリオール。
【0132】
○ポリアクリレート及びポリメタクリレートポリオール。
【0133】
○ポリヒドロキシ官能性脂肪及び油、例えば、天然脂肪及び油、特にヒマの種子油;又は例えば不飽和油をエポキシ化し、続いてカルボン酸又はアルコールを用いて開環することによって得られる、エポキシポリエステル又はエポキシポリエーテル等の天然脂肪及び油を化学的に改変することによって調製されるポリオール(いわゆる油脂化学)、又は不飽和油のヒドロホルミル化及び水素化によって得られるポリオール;又は例えばアルコール分解又はオゾン分解等の分解処理、及び、その後の、例えば結果として生じる分解生成物又は結果として生じるポリオール誘導体のエステル交換反応又は二量体化による化学的架橋による、天然脂肪又は油。天然脂肪及び油の適切な分解生成物は、特に脂肪酸及び脂肪アルコール並びに脂肪酸エステル、特に例えばヒドロホルミル化及び水素化によって誘導体化してヒドロキシ脂肪酸エステルを形成することができるメチルエステル類(FAME)である。
【0134】
○オリゴヒドロカルボノールとしても言及されるポリヒドロカルボンポリオール、特にポリヒドロキシ官能性ポリオレフィン、ポリイソブチレン、又はポリイソプレン;例えばKraton Polymers社により製造される、ポリヒドロキシ官能性エチレン―プロピレン、エチレン―ブチレン、又はエチレン―プロピレン―ジエンコポリマー;特に陰イオン重合によって製造することもできるジエンのポリヒドロキシ官能性ポリマー、特に1,3―ブタジエン;ジエンからのポリヒドロキシ官能性コポリマー、例えば1,3―ブタジエン又はジエン混合物、及びビニル単量体、例えばスチレン、アクリロニトリル、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、イソブチレン、及びイソプレン、例えば、ポリヒドロキシ官能性アクリロニトリル/ブタジエンコポリマー、例えば、エポキシド又はアミノアルコール及びカルボキシル末端キャップされたアクリロニトリル/ブタジエンコポリマーから製造することができるもの(例えば、名称Hypro(商標)(形式上Hycar(商標))の下、商業的に入手可能な、Nanoresins AG(ドイツ)又はEmerald Performance Materials LLCからのCTBN、CTBNX、及びETBN);並びにジエンの水素化ポリヒドロキシ官能性ポリマー又はコポリマー。
【0135】
これら言及したポリオールは、好ましくは250〜30,000g/mol、特に1000〜30,000g/molの平均分子量を有し、それらは好ましくは1.6〜3の範囲の平均OH官能性を有する。
【0136】
好ましいポリオールは、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、及びポリアクリレートポリオール、好ましくはジオール、及びトリオールである。特にポリエーテルジオール、特にポリオキシプロピレン及びポリオキシプロピレンポリオキシエテンジオールを使用することが好ましい。0.02mEq/g未満の程度の不飽和度、及び4000〜30,000g/mol、特に8000〜30,000g/molの範囲の分子量を有する高分子量ポリオキシプロピレンジオールを使用することが最も好ましい。
【0137】
これらの言及したポリオールに加えて、少量の低分子量の二価又は多価アルコール、例えば、1,2―エタンジオール、1,2―及び1,3―プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、異性体ジプロピレングリコール及びトリプロピレングリコール、異性体ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ウンデカンジオール、1,3―及び1,4―シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA、二量体脂肪アルコール、1,1,1―トリメチロールエタン、1,1,1―トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリトリトール、糖アルコール、例えばキシリトール、ソルビトール、又はマンニトール、糖、例えばスクロース、他のより高原子価のアルコール、上述の二価及び多価アルコールの低分子量アルコキシ化生成物、並びに上述のアルコールの混合物を、ポリウレタンポリマーPUPの製造において同時に用いることができる。同様に、3よりも大きい平均OH官能性を有する少量のポリオール、例えば糖ポリオールを、同時に用いることもできる。
【0138】
イソシアネート基を含むポリウレタンポリマーPUPの製造のためのポリイソシアネートとして、芳香族又は脂肪族ポリイソシアネート、特にジイソシアネートが用いられる。
【0139】
特に適切な芳香族ポリイソシアネートは、単量体のジ―又はトリイソシアネート、例えば2,4―及び2,6―トルイレンジイソシアネート並びにこれらの異性体(TDI)の任意の混合物、4,4’−、2,4’−、及び2,2’―ジフェニルメタンジイソシアネート並びにこれらの異性体(MDI)の任意の混合物、MDI及びMDI相同体(ポリマーMDI又はPMDI)の混合物、1,3―及び1,4―フェニレンジイソシアネート、2,3,5,6―テトラメチル―1,4―ジイソシアネートベンゼン、ナフタレン―1,5―ジイソシアネート(NDI)、3,3’―ジメチル―4,4’―ジイソシアネートジフェニル(TODI)、ジアニシジンジイソシアネート(DADI)、トリス―(4―イソシアネートフェニル)メタン、トリス―(4―イソシアネートフェニル)チオリン酸エステル、並びに上述のイソシアネートの任意の混合物である。MDI及びTDIが好ましい。
【0140】
特に適切な脂肪酸ポリイソシアネートは、単量体のジ―又はトリイソシアネート、1,4―テトラメチレンジイソシアネート、2―メチルペンタメチレン―1,5―ジイソシアネート、1,6―ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4―及び2,4,4―トリメチル―1,6―ヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、1,10―デカメチレンジイソシアネート、1,12―ドデカメチレンジイソシアネート、リシン及びリシンエステルジイソシアネート、シクロヘキサン―1,3―及び―1,4―ジイソシアネート、1―メチル―2,4―及び―2,6―ジイソシアネートシクロヘキサン並びにこれらの異性体(HTDI又はHTDI)の任意の混合物、1―イソシアネート―3,3,5―トリメチル―5―イソシアネートメチルシクロヘキサン(=イソホロンジイソシアネート又はIPDI)、ペルヒドロ―2.4’―及び―4,4’―ジフェニルメタンジイソシアネート(HMDI又はH12MDI)、1,4―ジイソシアネート―2,2,6―トリメチルシクロヘキサン(TMCDI)、1,3―及び1,4―ビス―(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、m―及びp―キシリレンジイソシアネート(m―及びp―XDI)、m―及びp―テトラメチル―1,3―及び―1,4―キシリレンジイソシアネート(m―及びp―TMXDI)、1,3,5―トリス―(イソシアネートメチル)ベンゼン、ビス(1―イソシアネート―1―メチルエチル)ナフタレン、二量体及び三量体脂肪酸イソシアネート、例えば3,6―ビス―(9―イソシアネートノニル)―4,5―ジ―(1―ヘプテニル)シクロヘキセン(ジメリル(dimeryl)ジイソシアネート)、α、α、α’、α’、α”、α”―ヘキサメチル―1,3,5―メシチレントリイソシアネート、並びに上述のイソシアネートの任意の混合物である。HDI及びIPDIが好ましい。
【0141】
シラン官能性ポリマーSPは、下記の式(X)の末端キャップ基を有する。
【化9】
【0142】
式(X)において、R、R、R、R、R、R、R、R、及びxは、すでに言及した定義を有する。
【0143】
シラン官能性ポリマーSPは、水分を除いて保管することができる。水分と接触してポリマーSPのシラン基が加水分解し、その後、ポリマーは架橋したプラスチックに硬化する。したがって、本発明は、少なくとも一つのシラン官能性ポリマーSPと水分とが反応することによって得られる架橋したプラスチックもまた開示する。
【0144】
シラン官能性ポリマーSPは、さまざまな有利な特性を有する。それは式(I)の開示したアミノシランから簡単な方法で調製することができ、アミノシランが過剰の場合でさえ、ほとんど匂いを有しない。その粘度は、比較的低く、第一級アミノシランを使用して調製した対応するシラン官能性ポリマーより明らかに低い。水分と接触した場合、それは、硬化したポリマーへと急速かつ完全に架橋して、この硬化したポリマーは、優れた特性、特に高強度及び高延性、並びに驚くほど良好な耐熱性(例えば90℃の熱負荷)と共に良好な弾性を有する。耐熱性は、従来技術において公知の第二級アミノシランを使用して製造した硬化したシラン官能性ポリマーと比較して、明らかに優れている。
【0145】
シラン官能性ポリマーSPは、特にシラン官能性、水分硬化性組成物の調製のための、硬化性材料の構成成分として特に適切である。
【0146】
本発明の更なる対象は、上記に開示したように、少なくとも一つのシラン官能性ポリマーSP、及び少なくとも1つの更なる構成成分を含む、水分硬化性組成物である。
【0147】
通常、シラン官能性コポリマーSPは、水分硬化性組成物のうち10〜80質量%、好ましくは15〜50質量%の量で存在する。
【0148】
更なる構成成分として、他の物質の中でも、以下の補助物質、及び添加物を使用することができる:
【0149】
○接着性を助長する試薬として作用することができるシラン、架橋剤、乾燥剤、及び/又は触媒、例えば、特に、更なるアミノシラン、特に式(I)に開示したアミノシラン、第一級アミノ基、又は第二級若しくは第三級アミノ基を有する更なるアミノシランを有するそれらの製造において言及したアミノシランAS、並びに特にN―フェニル、N―シクロヘキシル、及びN―アルキルアミノシラン、更にメルカプトシラン、エポキシシラン、ビニルシラン、(メス)アクリルシラン、イソシアネートシラン、カルバマトシラン、アルキルシラン、S―(アルキルカルボニル)メルカプトシラン、並びにイミノシラン、並びに上記のシランのオリゴマーの形態、特に3―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3―アミノプロピルトリメトキシシラン、N―(2―アミノエチル)―3―アミノプロピルトリメトキシシラン、N―(2―アミノエチル)―N’―[3―(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、3―メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3―イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3―ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3―クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、又はメトキシ基の代わりにエトキシ基を有する対応する有機シラン、並びに上記のシランのオリゴマーの形態;
【0150】
○可塑剤、特にカルボン酸エステル、例えばフタル酸エステル、特にフタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソノニル、又はフタル酸ジイソデシル、アジピン酸エステル、特にジオクチルアジピン酸エステル、アゼラート、セバシン酸、ポリオール、特にポリオキシアルキレンポリオール又はポリエステルポリオール、グリコールエーテル、グリコールエステル、有機リン酸及びスルホン酸エステル、又はポリブテン;
【0151】
○反応希釈剤及び架橋剤、例えば、シラン官能性オリゴマー及びポリマー、天然樹脂、脂肪又は油、例えばコロホニ、セラック、亜麻仁油、ヒマの種子油、並びに大豆油;
【0152】
○非反応性熱可塑性ポリマー、例えば不飽和単量体のホモポリマー又はコポリマー、特にエチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、イソプレン、酢酸ビニル、及びアルキル(メス)アクリレート、特にポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリイソブチレン、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)、及びアタクチックポリ―α―オレフィン(APAO)を含む群から選択される不飽和単量体のホモポリマー又はコポリマー;
【0153】
○溶媒;
【0154】
○無機及び有機充填材、特に、任意にステアレートのような脂肪酸で被覆されている粉砕した又は沈殿させた炭酸カルシウム;バライト(重晶石)、タルク、クォーツ粉末、クォーツ砂、ドロマイト、ワラストナイト、カオリン、焼成カオリン、マイカ(カリウム―アルミニウムシリケート)、モレキュラーシーブ、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、熱分解処理からの高分散ケイ酸を含むケイ酸、産業的に製造した煤を含む煤、グラファイト、金属粉末、例えばアルミニウム、銅、鉄、銀、又は鋼、及びPVC粉末又は中空ビーズ;
【0155】
○繊維、特にガラス繊維、炭素繊維、金属ファイバ、セラミック繊維、又はプラスチックファイバ、例えばポリアミド繊維、又はポリエチレン繊維;
【0156】
○願料、例えば酸化チタン、又は酸化鉄;
【0157】
○触媒、特に有機スズ化合物、例えば、特に二塩化ジブチルスズ、ジブチルスズオキシド、ジブチルスズジアセテート、ジブチルジラウリン酸塩、ジブチルスズジアセチルアセトネート、更なるジブチルスズジカルボン酸塩、ジオクチルスズジカルボン酸塩、例えば特に、ジオクチルスズジラウリン酸塩、三塩化モノブチルスズ、スズ(II)―オクトアート、アルキルスズチオエステル、更には亜鉛、マンガン、鉄、クロミウム、コバルト、銅、ニッケル、モリブデン、鉛、カドミウム、水銀、アンチモン、バナジウム、チタン、ジルコニウム、又はカリウムの化合物、並びに更なるアミン、アミジン、及びグアニジン、特にN―エチル―ジイソプロピルアミン、N,N,N’,N’―テトラメチルアルキレンジアミン、ビス―(N,N―ジエチルアミノエチル)アジペート、トリス―(3―ジメチルアミノプロピル)アミン、1,4―ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,8―ジアザビシクロ〔5.4.0〕ウンデセン―7(DBU)、1,5―ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ―5―エン(DBN)、N,N’―ジメチルピペラジン、1,1,3,3―テトラメチルグアニジン、窒素芳香族化合物、例えば4―ジメチルアミノピリジン、N―メチルイミダゾール、N―ビニルイミダゾール、又は1,2―ジメチルイミダゾール;有機アンモニウム合成物、又はアルコキシル化第三級アミン;並びに更なる前述の合成物の組合せ、特に異なる金属化合物の組合せ、又は金属化合物と窒素含有化合物との組合せ;
【0158】
○レオロジー改変剤、例えば特に増粘剤、例えば層状ケイ酸塩、例えばベントナイト、ヒマの種子油の誘導体、水素化したヒマの種子油、ポリアミド、ポリウレタン、尿素化合物、発熱性ケイ酸、セルロースエーテル、及び疎水的に変性したポリオキシエチレン;
【0159】
○乾燥剤、例えば、特にテトラエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、及びシラン基に関してα位に官能性基を有する有機アルコキシシラン、特にN―(メチルジメトキシシリルメチル)―O―メチルカルバメート、(メスアクリロキシメチル)シラン、メトキシメチルシラン、オルトギ酸エステル、酸化カルシウム、又はモレキュラーシーブ;
【0160】
○酸化、熱、光、及び紫外線に対する安定剤;
【0161】
○難燃剤、特にすでに言及した充填材、水酸化アルミニウム、及び水酸化マグネシウム、並びに特に、有機リン酸エステル、例えば、特にトリエチルリン酸塩、リン酸トリクレジル、リン酸トリフェニル、リン酸ジフェニルトリル、リン酸イソデシルジフェニル、トリス(1,3―ジクロロ―2―プロピル)リン酸塩、トリス(2―クロロエチル)リン酸塩、トリス(2―エチルヘキシル)リン酸塩、トリス(クロロイソプロピル)リン酸塩、トリス―(クロロプロピル)リン酸塩、イソプロピル化トリフェニルリン酸塩、様々なイソプロピル化の程度を有するモノ―、ビス―、及びトリス(イソプロピルフェニル)リン酸塩、レゾルシノール―ビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、及びアンモニウムポリリン酸塩;
【0162】
○界面活性物質、例えば特に架橋剤、平滑化剤、曝気剤、又は消泡剤;
【0163】
○殺生物剤、例えば、アルジサイド、殺菌剤、又は菌類の成長抑制物質;並びに
【0164】
○水分硬化性組成物において通常用いる更なる物質。
【0165】
更なる構成成分が水分硬化性組成物の保管安定性に影響を及ぼさないことを確保することは有利であり、すなわち、保管の間、それらは組成物に含まれるシラン基の架橋につながる反応を有意な程度に誘発してはならない。特に、これは、そのような更なる構成成分が、好ましくは水を含まず、又は多くとも痕跡量の水を含まないことを意味する。組成物に混合する前に、特定の構成成分を化学的又は物理的に乾燥することが適切である。
【0166】
水分硬化性組成物は、好ましくは可塑剤、充填材、シラン、及び/又は触媒を含む。
【0167】
水分硬化性組成物は、数カ月から1年以上の期間、水分を除いて、適切な包装内又は手段で、例えばバレル、小袋、又はカートリッジ内で、その使用に影響する程度まではその使用特性又はその硬化後の特性の変化を受けないようにして、保管できる。保管安定性は、粘度、押出量、又は押出力を測定することによって通常決定する。
【0168】
組成物は、好ましくは遊離イソシアネート基を含まない。そのようなイソシアネートのない組成物は、毒物学的な観点から有利である。
【0169】
水分硬化性組成物は、一成分型の組成物の形態、又は二成分型の組成物の形態であってよい。
【0170】
本明細書の用語「一成分型」は、硬化可能な組成物の全ての成分が同じ容器内に混合して保管されている組成物を意味し、この組成物は数週間から数ヶ月の期間、室温において保存に安定であり、したがって、保管によって、変化を受けないか又は使用又は使用特性に実質的でない変化のみを受け、また水分によって硬化可能である。
【0171】
本明細書の用語「二成分型」は、相互に別々の容器に保管され、またそれぞれ個別に室温で保存に安定である2つの異なる成分の状態で成分が存在する組成物を意味する。2つの成分を互いに混合するのは、組成物を適用する直前又は適用する間であり、その後、混合組成物は完全に硬化する。ここで、硬化は水分の作用のみにより起こる。
【0172】
水分硬化性組成物を少なくとも一つの固体又は物品への適用する場合、ポリマー及び任意に存在する更なるシランのシラン基は、水分と接触する。シラン基は、それらが水分と接触する際に加水分解する特性を有する。この工程で、有機シラノール(一つ以上のシラノール基(Si―OH基)を含むケイ素有機化合物)が形成し、その後の縮合反応の結果、有機シロキサン(一つ以上のシロキサン基(Si―O―Si基)を含むケイ素有機化合物)が形成する。触媒を用いて加速することができるこれらの反応の結果、組成物は最終的に完全に硬化する。この処理は、架橋とも呼ばれる。さらに、シラノール基は、例えば、水分硬化性組成物を適用した基材の水酸基と縮合することができ、その結果、硬化の間、基材に対する組成物の優れた接着性が発達する。硬化反応に必要な水は、空気(空気水分)に由来することもでき、又は組成物と水含有成分とを接触させること、例えば平滑剤等を使用するブラッシング又は噴霧によって、組成物と水含有成分とを接触させることができ、又は適用の間に水含有成分を組成物に加えることができ、例えば静的混合器等を使用して混合される水含有ペーストの形態で水含有成分を組成物に加えることができる。
【0173】
開示した水分硬化性組成物は、それが水分と接触すると完全に硬化する。したがって、本発明は、少なくとも一つのシラン官能性ポリマーSPと水分とを反応させることによって得た硬化組成物もまた開示する。
【0174】
硬化は、温度、接触のタイプ、水分の量、及び任意の触媒の存在に応じて、異なる速度で起こる。空気水分による硬化の間、まず組成物の表面上に皮膜が形成する。いわゆる皮膜形成時間は、硬化後の状態に硬化する速度の測定を意味し、組成物は高強度及び高延性と共に良好な弾性、並びに例えば90℃の熱負荷における驚くほど良好な耐熱性を有する。その結果、それは、特に繊維複合物(複合材)、建築及び工業適用のための強い包装材化合物、封止剤、接着剤、被覆剤、コーティング、又は塗料、例えば、電気絶縁物質、パテ合成物、目地材、組立接着剤、車体接着剤、ガラス接着剤、サンドイッチ要素接着剤、外層接着剤、積層接着剤、アンカー接着剤、床コーティング及び被覆材、バルコニ及び屋根被覆材、コンクリート保護被覆材、駐車場被覆材、並びに耐腐食保護塗料、シーリング、塗料、ラッカー、及びプライマーとして、多数の用途に適する。
【0175】
さらに、組成物は、発泡物質として、特にR=メチレンの(したがって、いわゆるα―アミノシラン基を含む)、式(I)のアミノシランから誘導されるシラン官能性ポリマーSPを含む組成物としての使用に適する。
【0176】
適切な用途は、例えば、地上及び地下の建築物への構成成分の接着、並びに生産品又は消費製品、例えば、特に窓、家庭用機械、又は搬送方法、例えば水上及び陸上車両、好ましくは自動車、バス、トラック、電車、若しくは船の、製造若しくは修理;産業上の製造若しくは修理、又は地上及び地下の建築物における継目、縫目、及び中空空間の封止;並びに様々な基材のコーティング、例えば、床被覆材として、例えば、オフィス、リビングスペース、病院、学校、保管施設、及び駐車場のため、又は液体の形態で適用される、特に屋根フィルムとしての建築物の封止。
【0177】
好ましい実施形態において、水分硬化性組成物は、強い接着剤又は封止剤として使用される。
【0178】
封止剤としての組成物の使用のため、例えば地上及び地下の建築物への接合のため、又は例えば車両構造において強く接着するための接着剤としての用途のため、組成物は好ましくは構造粘性特性を有するペースト状の粘稠度を有する。そのようなペースト状の封止剤又は接着剤は、適切な手段によって基材上に適用される。好適な適用方法は、例えば手動若しくは加圧空気で操作する市販のカートリッジからの適用、又は運搬ポンプ若しくは押出機、任意に適用ロボットによるバレル若しくはドラムからの適用である。
【0179】
良好な適用性を有する封止剤又は接着剤は高い安定性を有し、短い長さの糸引き(stringing)を伴う。これはすなわち、適用の後、それが適用された形にとどまり、すなわちそれは離れて流れず、適用装置が取られた後、基材が汚れないように、それは非常に短い糸のみを引くか、又は糸を引かない。
【0180】
例えば車両構造における弾性的接着のための接着剤は、好ましくは実質的に丸い又は三角形の断面表面を有するビーズに適用される。
【0181】
接着剤として使用する際、組成物は基材S1及び/又は基材S2上へ適用される。したがって、接着剤は、どちらか一方の基材に、又は、両方の基材に適用することができる。その後、接着するパーツを接続し、その後、接着剤は水分との接触により硬化する。ここで、パーツの接続がいわゆるオープンタイム内に起こることを確実にして、2つの接続パーツを互いに信頼性高く接着することを確実にするよう、注意しなければならない。
【0182】
封止剤として使用する際、組成物を基材S1とS2との間に適用し、その後、水分との接触の結果として、組成物の硬化が起こる。通常、封止剤は継目に押圧される。
【0183】
両方の用途において、基材S1は、基材S2と同じもの又は異なるものとすることができる。
【0184】
適切な基材S1又はS2は特に、下記のとおりである;
【0185】
○ガラス、ガラスセラミック、コンクリート、モルタル、タイルレンガ、石膏、及び天然石、例えば花崗岩又は大理石;
【0186】
○金属及び合金、例えばアルミニウム、鉄、鋼、及び非鉄金属、並びに表面精製した金属及び合金、例えば亜鉛被覆した、又はクロミウム被覆した金属;
【0187】
○樹脂を伴う革、織物、紙、木、例えばフェノール、メラミン、又はエポキシド樹脂が結合している木質材料、樹脂―織物複合材、及び更なるいわゆるポリマー複合材;
【0188】
○プラスチック、例えばポリ塩化ビニル(硬質及び軟質PVC)、アクリロニトリル―ブタジエン―スチレンコポリマー(ABS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(PA)、ポリエステル、ポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)、ポリエステル、エポキシド樹脂、ポリウレタン(PUR)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリオレフィン(PO)、ポリエチレン(PE)、又はポリプロピレン(PP)、エチレン/プロピレンコポリマー(EPM)、及びエチレン/プロピレン/ジエンターポリマー(EPDM)。ここで、プラスチックは、好ましくはプラズマ、コロナ、又は炎によって表面処理することができる;
【0189】
○繊維強化プラスチック、例えば炭素繊維強化プラスチック(CFP)、ガラス繊維強化プラスチック(GFP)、及びシートモールディングコンパウンド(SMC);
【0190】
○被覆基材、例えば粉末コートした金属又は合金;及び
【0191】
○塗料及びラッカー、特に自動車トップコートラッカー。
【0192】
必要であれば、接着剤又は封止剤の適用の前に、基材を予備処理することができる。そのような予備処理としては、特に物理的及び/又は化学的洗浄方法、例えば研磨、サンドブラスト、ブラッシング、これと同種のもの、又はクリーナー若しくは溶媒を用いた処理が挙げられ、又は接着性を助長する試薬、接着性を助長する溶液、若しくはプライマーの適用が挙げられる。
【0193】
本発明の組成物による基材S1及びS2の接着又は封止の後、接着又は封止された物品が得られる。そのような物品は、建築物、特に地上又は地下の建築物、又は輸送の手段、例えば水上若しくは地上車両、特に自動車、バス、トラック、電車、若しくは船、又は付属装置部品であってよい。
【0194】
水分硬化性組成物は、シラン官能性ポリマーSPが比較的低い粘度を有し、良好な適用性での固定を可能にすることにより、比較的低い基礎的な粘度を有する。水分硬化性組成物は、急速に硬化し、高強度及び高延性と共に良好な弾性、並びに例えば90℃の熱負荷の驚くほど良好な耐熱性を有する硬化後の状態になる。シラン官能性ポリマーSPの代わりに従来技術によるシラン官能性ポリマーを含む従来技術の系と比較して、硬化後の状態の耐熱性は明らかに良好である。
【実施例】
【0195】
1.測定方法の説明
アミン含有量、すなわち製造した合成物中の遊離アミノ基及びブロックされたアミノ基(アルジミノ基)の総容量は、滴定分析(クリスタルバイオレットに対して、酢酸中の0.1NのHClOを用いた)によって決定し、常にmmolN/gにて示す。
【0196】
赤外線スペクトルは、ZnSe結晶を用いた水平ATR測定装置を備えるPerkin−Elmer製FT―IR1600装置で、希釈していないフィルムとして測定した;吸収帯は、波数(cm−1)にて示す(測定領域:4000―650cm―1);付記shは、ショルダーとして現れるバンドを示す。
【0197】
H―NMRスペクトルは、Bruker DPX―300分光計で300.13MHzにて測定した;化学シフトδはテトラメチルシラン(TMS)と比較してppmで示し、カップリング定数JはHzで示す。真及び疑似カップリングパターンは区別しない。
【0198】
粘度は、コーンプレート粘度計Rheotec RC30(円錐直径50mm、円錐角度1°、円錐頂点―プレート距離0.05mm、剪断速度10〜100s―1)で測定した。
【0199】
2.式(IV)のアルデヒドの製造
2,2―ジメチル―3―(N―モルホリノ)プロパナール
窒素雰囲気下で、83.1g(1.00mol)の36%のホルムアルデヒド水溶液、及び75.0g(1.04mol)のイソブチルアルデヒドを、丸底フラスコに入れた。完全な撹拌及び氷冷却の下、反応混合物の温度が20℃を超えないことを確認しながら、滴下漏斗を使用して87.1g(1.00mol)のモルホリンをゆっくり加えた。添加が完了したあと、調合物を室温で1時間撹拌した。結果として生じる反応混合物を100℃の油浴で18時間還流して撹拌し、次いで室温に冷却し、相を分液漏斗で分離した。有機相は、更なる処理をすることなく減圧して分画した。生成物を、塔頂温度97℃、及び圧力14mbar(1.4kPa)で精製した。
【0200】
2,2―ジメチル―3―ジメチルアミノプロパナール
2,2―ジメチル―3―(N―モルホリノ)プロパナールのために開示した同じ態様において、83.1g(1.00mol)の36%のホルムアルデヒド水溶液、79.3g(1.10mol)のイソブチルアルデヒド、及び112.7g(1.00mol)の40%のジメチルアミン水溶液を互いに反応させた。精製の間、生成物を、塔頂温度94℃、及び圧力16mbar(1.6kPa)で蒸留した。
【0201】
3.式(II)のイミノシランの製造
一般的な製造手順(イミノシラン)
アルデヒドを窒素雰囲気下で丸底フラスコに入れ、2―プロパンアミンを滴下して加え、調合物を室温で30分間撹拌し、その後、70〜100℃に加熱して、揮発性の構成成分、特に空気及び過剰なアミンを減圧の下で除去した。イミノ転移のため、その後、アミノシランを室温で加え、反応混合物を完全な撹拌の下で80℃に加熱し、そして、泡形成が終わるまで、圧力を20〜50mbar(2.0kPa〜5.0kPa)に段階的に減らし、そして、温度を120℃以上に上げ、再び泡形成が終わるまで、圧力を更に0.05mbar(0.005kPa)に減らした。結果として生じるイミノシランを室温に冷却し、水分を除いて保管した。
【0202】
実施例1:イミノシランI―1
3―(2,2―ジメチル―3―(N―モルホリノ)プロピリデンアミノ)プロピルトリメトキシシラン
17.98gの2,2―ジメチル―3―(N―モルホリノ)プロパナール、7.45gの2―プロパンアミン、及び17.93gの3―アミノプロピルトリメトキシシランを、一般的な製造手順(イミノシラン)に従って反応させた。収量:アミン含有量9.29mmolN/g、及び純度92%を有する、32.2gの透明な黄色がかった油。
【0203】
FT―IR:2955、2938、2920sh、2837、2809sh、1664(νC=N)、1454、1410、1396、1375、1360、1345sh、1318、1303、1282、1267、1189、1135、1116、1080、1036、1012、930、864、815、801、775、677。
【0204】
H―NMR(CDCl、300K):δ7.54(t、J=1.2、1H、CH=N)、3.64(t、J=4.7、4H、OCCHN)、3.57(s、9H、Si(OCH)、3.35(t×d、J=7.0/1.1、2H、CH=NC)、2.46(t、J=4.7、4H、OCHN)、2.34(s、2H、NCC(CH)、1.68(m、2H、CH=NCHCHSi)、1.06(s、6H、C(CH)、0.60(m、2H、CH=NCHCHSi)。
【0205】
実施例2:イミノシランI―2
3―(2,2―ジメチル―3―(N,N―ジメチルアミノ)プロピリデンアミノ)プロピルトリメトキシシラン
13.57gの2,2―ジメチル―3―ジメチルアミノプロパナール、7.45gの2―プロパンアミン、及び17.93gの3―アミノプロピルトリメトキシシランを、一般的な製造手順(イミノシラン)に従って反応させた。生成物は、オリゴマー部を除去するため、製造後に精製した。収量:アミン含有量6.61mmolN/g、及び純度95%を有する28.4gの無色透明の油。
【0206】
FT―IR:2938、2837、2828、2766、1665(νC=N)、1455、1411、1388、1363、1342、1301、1264、1189、1082、1042、906、872、844、814、775、676。
【0207】
H―NMR(CDCl、300K):δ7.57(t、J=1.2、1H、CH=N)、3.56(s、9H、Si(OCH)、3.37(t×d、J=7.0/1.2、2 H、CH=NC)、2.32(s、2H、NCC(CH)、2.23(s、6H、N(CH)、1.69(m、2H、CH=NCHCHSi)、1.07(s、6H、C(CH)、0.62(m、2H、CH=NCHCHSi)。
【0208】
実施例3:イミノシランI―3
3―(2,2―ジメチル―3―(N,N―ジメチルアミノ)プロピリデンアミノ)プロピルトリエトキシシラン
13.57gの2,2―ジメチル―3―ジメチルアミノプロパナール、7.45gの2―プロパンアミン、及び22.14gの3―アミノプロピルトリエトキシシランを、一般的な製造手順(イミノシラン)に従って反応させた。収量:アミン含有量5.97mmolN/g、及び純度98%を有する32.3gの無色透明の油。
【0209】
FT―IR:2970、2926、2882、2817、2765、1883br、1665(νC=N)、1466sh、1454、1442、1410、1389、1364、1341、1296、1264、1250sh、1181sh、1165、1101、1075、1042、993、954、867、845、809sh、791sh、774、678。
【0210】
H―NMR(CDCl、300K):δ7.57(t、J=1.2、1H、CH=N)、3.81(q、J=7.0、6H、Si(OCCH)、3.37(t×d、J=7.0/1.2、2H、CH=NC)、2.32(s、2H、NCC(CH)、2.23(s、6H、N(CH)、1.70(m、2H、CH=NCHCHSi)、1.22(t、J=7.0、9H、Si(OCH)、1.07(s、6H、C(CH)、0.60(m、2H、CH=NCHCHSi)。
【0211】
実施例4:イミノシランI―4
N―(2―(2,2―ジメチル―3―(N―モルホリノ)プロピリデンアミノ)エチル)―3―アミノプロピルトリメトキシシラン)
17.98gの2,2―ジメチル―3―(N―モルホリノ)プロパナール、7.45gの2―プロパンアミン、及び22.24gのN―(2―アミノエチル)―3―アミノプロピルトリメトキシシランを、一般的な製造手順(イミノシラン)に従って反応させた。収量:アミン含有量8.04mmolN/g、及び純度95%を有する、36.8gの透明な黄色がかった油。
【0212】
FT―IR:3310(νNH)、2941、2888、2865sh、2837、2802、1664(νC=N)、1454、1410、1395、1374、1358、1345、1315、1281、1265、1189、1133sh、1114、1079、1036、1011、922、882、864、812、805、776sh、758sh。
【0213】
H―NMR(CDCl、300K):δ7.61(t、J=1.2、1H、CH=N)、3.64(t、J=4.6、4H、OCCHN)、3.57(s、9H、Si(OCH)、3.49(t×d、J=4.8/1.2、2H、CH=NC)、2.81(t、J=4.8、2H、CH=NCHNH)、2.62(t、J=7.3、2H、NHCHCHCHSi)、2.47(t、J=4.6、4H、OCHN)、2.35(s、2H、NCC(CH)、1.59(m、3H、NHCHCHSi及びNH)、1.06(s、6H、C(CH)、0.64(m、2H、NHCHCHSi)。
【0214】
4.式(I)のアミノシランの製造
一般的な製造手順(水素化)
丸底フラスコ内でイミノシランを充分なイソプロパナールに溶解し、水素圧力80bar(8MPa)、温度80℃、及び3mL/minの流量で、Pd/C固体床触媒を備える連続運転水素化装置内で水素化した。反応制御のため、IR分光法による確認を行い、約1665cm―1のイミンバンドが消えたかどうかを判定した。その後、溶液を80℃で減圧した。
【0215】
実施例5:アミノシランA―1
3―(2,2―ジメチル―3―(N―モルホリノ)プロピルアミノ)プロピルトリメトキシシラン
一般的な製造手順(水素化)に従い、実施例1の10gのイミノシランI―1を水素化した。生成物は5.93mmolN/gのアミン含有量を有する透明な黄色の無臭の油であり、それは分解することなく長期間にわたって良好に保管された。
【0216】
FT―IR:2940m、2889m、2837m、2800m、2677vw、1465m sh、1455m、1411vw、1396vw、1373w、1358w、1318w、1305w、1283w、1264w、1190s、1114s、1080vs、1037m、1011s、932w、863s、814s sh、804s、782s、681w。
【0217】
H―NMR(CDCl、300K):δ3.66(t、J=4.6、4H、OCCHN)、3.57(s、9H、Si(OCH)、2.57(t、J=7.2、2H、NHCCHCHSi)、2.51(t、J=4.6、4H、OCHN)、2.40(s、2H、NCC(CH)、2.17(s、2H、NHCC(CH)、1.58(m、2H、NHCHCHSi)、1.3(br s、1H、NH)、0.87(s、6H、C(CH)、0.65(m、2H、NHCHCHSi)。
【0218】
実施例6:アミノシランA―2
3―(2,2―ジメチル―3―(N―モルホリノ)プロピルアミノ)プロピルトリメトキシシラン
一般的な製造手順(水素化)に従い、実施例2の10gのイミノシランI―2を水素化した。生成物はアミン含有量6.49mmolN/gを有する無色透明の無臭の油であり、それは分解することなく長期間にわたって良好に保管された。
【0219】
FT―IR:2971m sh、2939s、2867m、2837m、2814m、2763m、1885vw br、1463m sh、1454m、1410w、1387w、1373w、1359w、1303w、1268m、1189s、1150m、1084vs sh、1080vs、1043s、868m、815s、778s、761s sh、679w。
【0220】
H―NMR(CDCl、300K):δ3.57(s、9H、Si(OCH)、2.58(t、J=7.2、2H、NHCCHCHSi)、2.41(s、2H、NCC(CH)、2.27(s、6H、N(CH)、2.15(s、2H、NHCC(CH)、1.58(m、2H、NHCHCHSi)、1.2(br s、1H、NH)、0.89(s、6H、C(CH)、0.66(m、2H、NHCHCHSi)。
【0221】
実施例7:アミノシランA―3
3―(2,2―ジメチル―3―(N―モルホリノ)プロピルアミノ)プロピルトリエトキシシラン
一般的な製造手順(水素化)に従い、実施例3の10gのイミノシランI―3を水素化した。生成物は5.99mmolN/gのアミン含有量を有する透明な黄色の無臭の油であり、それは分解することなく長期間にわたって良好に保管された。
【0222】
FT―IR:2970m、2937m sh、2926m、2881m、2814m、2764m、2730w sh、1880vw br、1465m sh、1454m、1443m、1410w、1389m、1362w、1295w、1263w、1166m、1101s、1075vs、1043s、953s、845m、775s、680w。
【0223】
H―NMR(CDCl、300K):δ3.82(q、J=7.0、6H、Si(OCCH)、2.58(t、J=7.2、2H、NHCCHCHSi)、2.41(s、2H、NCC(CH)、2.27(s、6H、N(CH)、2.15(s、2H、NHCC(CH)、1.59(m、2H、NHCCHCHSi)、1.23(t、J=7.0、9H、Si(OCH)、1.1(br s、1H、NH)、0.89(s、6H、C(CH)、0.63(m、2H、NHCHCHSi)。
【0224】
5.シラン官能性ポリマーの製造
実施例8〜11及び比較例12〜14
それぞれの例について、表1において示したポリウレタンポリマー(「PUポリマーP―1」又は「PUポリマーP―2」)の100質量部を窒素雰囲気下に置き、表に示したアミノシランを、完全な攪拌の下、滴下漏斗を通して示した量(質量部)加え、遊離イソシアネートがIR分光法でもはや検出されなくなるまで、室温で攪拌した。生成物は、水分を除いて保管した。
【0225】
PU―ポリマーP―1
窒素雰囲気下、500.0gのPolyol Acclaim(商標)12200(バイエル;低モノオールポリオキシプロピレンジオール、OH数11.0mgKOH/g、含水量約0.02質量%)、22.0gのイソホロンジイソシアネート(Vestanat(商標)IPDI、デグッサ)、及び0.05gのジ―n―ブチルスズジラウリン酸塩を、連続的な撹拌の下、90℃に加熱して、滴定分析によって決定する遊離イソシアネート基の含有量が0.75質量%の値に達するまで、この温度に保った。生成物を室温に冷却し、湿気を除いて保管した。20℃における粘度は40Pa・sであった。
【0226】
PU―ポリマーP―2
窒素雰囲気下、500.0gのPolyol Acclaim(商標)12200(バイエル;低モノオールポリオキシプロピレンジオール、OH数11.0mgKOH/g、含水量約0.02質量%)、24.4gのテトラメチル―m―キシリレンジイソシアネート(TMXDI、Cytec)、及び0.05gのジ―n―ブチルスズジラウリン酸塩を、連続的な撹拌の下、90℃に加熱し、滴定分析によって決定する遊離イソシアネート基の含有量が0.80質量%の値に達するまで、この温度に保った。生成物を室温に冷却し、水分を除いて保管した。20℃における粘度は55Pa・sであった。
【0227】
【表1】
表1:実施例8〜11、及び比較例12〜14の組成物及び粘度。
【0228】
「比較」は「比較例」を表す。
Silquest(商標)A―1110、GE Advanced Materials社
上記とマレイン酸ジエチルエステルの付加体(例えば米国特許第5,364,955号明細書において開示されている)
【0229】
実施例8〜11の本発明によるシラン官能性ポリマーは、対応する第一級アミノシランから誘導した比較例12のシラン官能性ポリマーより低い粘度を有することは、表1から明らかである。
【0230】
6.水分硬化性組成物の製造
実施例15〜18、及び比較例19〜21
それぞれの例において、表2に示す成分を、遠心ミキサー(SpeedMixerTMDAC 150、FlackTek社)を使用して、示した量(質量部)において混合した。結果として生じた組成物について、外観(「組成物外観」)を評価し、標準の環境(23±1℃、相対湿度50±5%)における皮膜形成時間(「SFT」)を、硬化速度の測定により決定した。この目的のため、数グラムの組成物を、室温で、ボール紙の上へ約2mmの層厚で適用し、標準の環境において、LDPE製のピペットを用いて接着剤の表面にわずかに触れた後において残留物がピペット上に残らなくなるまでにかかった時間を決定した。さらに、それぞれの組成物の3つのフィルムを、2mmの層厚で適用し、及び標準の環境にて14日間硬化させた。それぞれの1つのフィルムの外観(「フィルム外観NK」)を判定し、引張強度、破断伸び、及び0.5〜5%の伸びにおける弾性率をDIN 53504により決定した(引張速度:200mm/min)(表において「(NK)」と印した値)。
【0231】
【表2】
表2:実施例15〜18、及び比較例19〜21の特性
【0232】
僅かに不均質
「比較」は「比較例」を表す
【0233】
それぞれの場合における2枚目の被膜を、硬化後、標準の環境(70℃及び相対湿度100%)において7日間保管し、次いで、引張強度、破断伸び、及び0.5〜5%の伸びにおける弾性率を同様に決定した(表において「(70/100)」と印した値)。それぞれの場合における3枚目の被膜を、硬化後、90℃の標準の環境において7日間保管し、次いで、引張強度、破断伸び、及び0.5〜5%の伸びにおける弾性率を同様に決定した(表において「(90℃)」と印した値)。最後に、このフィルムの外観を評価した(「フィルム外観90℃」)。
【0234】
結果を表2に示す。
【0235】
表2から分かるように、トリメトキシシラン基及びモルホリノ基を含む実施例8及び11のシラン官能性ポリマーを有する本発明による実施例15及び18の皮膜形成時間は、従来技術の第二級トリメトキシアミノシランに基づく比較例13及び14のシラン官能性ポリマーを含む比較例20及び21の皮膜形成時間より明らかに短かく、これはおそらくモルホリノ基の触媒効果によって説明される。14日以内に、組成物は、充填剤を添加していないシラン架橋組成物の典型的な機械的特性を有する透明なフィルムへと硬化した。本発明による実施例15、17、及び18はすべて非粘着性のフィルムを有する一方、どちらの場合も従来技術の第二級アミノシランを有するシラン架橋ポリマーを含む比較例20及び21はわずかに粘着性の表面を有した。表面粘着性の違いは、90℃の熱負荷をかけた後、非常に明白になった。比較例20及び21のフィルムは黄色及び粘着性だったが、実施例15、17、及び18のフィルムは無色及び非粘着性のままだった。第一級アミノシランから誘導した比較例19は、熱負荷の後、実際はわずかに粘着性であるだけであったが、それはそのような系において典型的で、しかしながら多くの用途にとって不十分な、低圧での膨張を有した。トリエトキシシラン基を介して架橋した実施例16は、遅い硬化を有し、したがって、14日後にまだ粘着性であった。しかしながら、熱負荷の間、それはよく硬化し続け、これは機械的な値、及び粘着性の減少の両者から認められる。