(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A)下記式(a1)で表される光重合性化合物、及び(B)下記一般式(1)で表されるオキシム系光重合開始剤を含み、下記一般式(1)におけるnが2であることを特徴とする感光性樹脂組成物。
【化1】
(上記式(a1)中、Xは、下記式(a2)で表される基を表す。Yは、ジカルボン酸無水物から酸無水物基(−CO−O−CO−)を除いた残基を表す。Zは、テトラカルボン酸二無水物から2個の酸無水物基を除いた残基を表す。mは、0〜20の整数を表す。)
【化2】
(上記式(a2)中、R
1aは、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6の炭化水素基、又はハロゲン原子を表し、R
2aは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、Wは、単結合又は下記式(a3)で表される基を表す。)
【化3】
【化4】
(上記一般式(1)中、lは1〜5の整数であり、mは0〜(l+3)の整数であり、R
1は、置換基を有してもよい炭素数1〜11のアルキル基、又は置換基を有してもよいアリール基であり、R
2は下記一般式(2)〜(4)で表される置換基のいずれかであり、R
3は炭素数1〜11のアルキル基、又はアリール基である。ただし、R
2が下記一般式(2)で表される置換基であるとき、R
1は、置換基を有してもよいアリール基である。)
【化5】
(上記一般式(2)及び(3)中、R
4は置換基を有してもよいアリール基であり、R
5は水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基、又はアリール基である。上記一般式(4)中、R
6は置換基を有してもよいアリール基である。)
(A)下記式(a1)で表される光重合性化合物、及び(B)下記一般式(1)で表されるオキシム系光重合開始剤を含み、下記一般式(1)におけるnが2であることを特徴とする感光性樹脂組成物。
【化6】
(上記式(a1)中、Xは、下記式(a2)で表される基を表す。Yは、ジカルボン酸無水物から酸無水物基(−CO−O−CO−)を除いた残基を表す。Zは、テトラカルボン酸二無水物から2個の酸無水物基を除いた残基を表す。mは、0〜20の整数を表す。)
【化7】
(上記式(a2)中、R
1aは、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6の炭化水素基、又はハロゲン原子を表し、R
2aは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、Wは、単結合又は下記式(a3)で表される基を表す。)
【化8】
【化9】
(上記一般式(1)中、lは1〜5の整数であり、mは0〜(l+3)の整数であり、R
1は、置換基を有してもよい炭素数1〜11のアルキル基、又は置換基を有してもよいアリール基であり、R
2は下記一般式(3)又は(4)で表される置換基であり、R
3は炭素数1〜11のアルキル基、又はアリール基である。)
【化10】
(上記一般式(3)中、R
4は置換基を有してもよいアリール基であり、R
5は水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基、又はアリール基である。上記一般式(4)中、R
6は置換基を有してもよいアリール基である。)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記化学式(a)〜(d)で表される化合物を光重合開始剤として用いることにより、高感度の感光性樹脂組成物を作製することができる。しかし、これらの化合物を光重合開始剤として使用してブラックマトリクスを形成させようとすると、感度が良好である反面、形成されたブラックマトリクスのパターン形状に下記のような問題が生じることを本発明者らは見出した。
【0010】
通常、感光性樹脂組成物を使用して液晶表示ディスプレイ用のカラーフィルタのパターンを形成させた場合、
図1(a)に示すように、当該パターンの幅方向の断面である断面1が、底辺1aに近いほど幅広となり、頂辺1bに近いほど幅狭となる台形形状となることが一般的である。このとき、パターンの断面1がカラーフィルタ基板(図示せず)との間でなす角θは、鋭角となる。
【0011】
しかしながら、上記化学式(a)〜(d)で表される化合物を光重合開始剤として含む感光性樹脂組成物を使用してブラックマトリクスを形成させると、
図1(b)に示すように、現像時にパターンの底部の一部が溶解することに伴って、当該パターンの幅方向の断面となる断面2における底辺2aの両端にアンダーカット21を生じる場合がある。このとき、パターンの断面2がカラーフィルタ基板(図示せず)との間でなす角θは、鈍角となる。このように角θが鈍角になると、ブラックマトリクスに隣接する赤色、緑色、青色等の各色の画素領域を形成させる際に、アンダーカット21の部分に気泡を生じる。すなわち、ブラックマトリクスに隣接して画素領域形成用の感光性樹脂組成物の膜を形成させた場合に、アンダーカット21として存在する空間に感光性樹脂組成物が入り込まずに、当該空間が気泡として残留する。このような気泡がカラーフィルタに存在すると、液晶表示装置の画質を大きく損なうことにつながるため、問題である。こうした問題は、ブラックマトリクスのパターン形成の際の現像が、やや過剰気味となるオーバー現像の場合に特に顕著に生じる。
【0012】
本発明は、以上の状況に鑑みてなされたものであり、良好な感度を有し、かつ、感光性樹脂組成物が遮光剤を含んだり、露光量が不足したりするような状況にあっても、現像後のパターンにアンダーカットが生じることを抑制することのできる感光性樹脂組成物、並びにそれを用いたカラーフィルタ及び表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特定構造を有し、オキシム炭素にシクロアルキルアルキレン基が結合したオキシムエステル化合物において、オキシム基に含まれる炭素原子とシクロアルキル基との間のアルキレン基を、メチレン基(炭素数1)やプロピレン基(炭素数3)等とした場合にはパターンのアンダーカットが観察される一方で、このアルキレン基を特にエチレン基(炭素数2)とすることによって、特異的にパターンのアンダーカットが抑制されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
本発明の第一の態様は、(A)光重合性化合物、及び(B)下記一般式(1)で表されるオキシム系光重合開始剤を含み、下記一般式(1)におけるnが2であることを特徴とする感光性樹脂組成物である。
【0015】
【化2】
(上記一般式(1)中、lは1〜5の整数であり、mは0〜(l+3)の整数であり、R
1は、置換基を有してもよい炭素数1〜11のアルキル基、又は置換基を有してもよいアリール基であり、R
2は下記一般式(2)〜(4)で表される置換基のいずれかであり、R
3は炭素数1〜11のアルキル基、又はアリール基である。)
【0016】
【化3】
(上記一般式(2)及び(3)中、R
4は置換基を有してもよいアリール基であり、R
5は水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基、又はアリール基である。上記一般式(4)中、R
6は置換基を有してもよいアリール基である。)
【0017】
また本発明の第二の態様は、上記感光性樹脂組成物を用いて形成されたカラーフィルタである。
【0018】
また本発明の第三の態様は、上記カラーフィルタが使用された表示装置である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、良好な感度を有し、かつ、感光性樹脂組成物が遮光剤を含んだり、露光量が不足したりするような状況にあっても、現像後のパターンにアンダーカットが生じることを抑制することのできる感光性樹脂組成物、並びにそれを用いたカラーフィルタ及び表示装置が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[感光性樹脂組成物]
本発明に係る感光性樹脂組成物は、(A)光重合性化合物、及び(B)オキシム系光重合開始剤を少なくとも含有する。以下、本発明の感光性組成物に含有される各成分について詳細に説明する。
【0022】
<(A)光重合性化合物>
本発明に係る感光性樹脂組成物に含有される(A)光重合性化合物としては、特に限定されず、従来公知の光重合性化合物を用いることができる。その中でも、エチレン性不飽和基を有する樹脂又はモノマーが好ましく、これらを組み合わせることがより好ましい。エチレン性不飽和基を有する樹脂とエチレン性不飽和基を有するモノマーとを組み合わせることにより、感光性樹脂組成物の硬化性を向上させ、パターン形成を容易にすることができる。
【0023】
[エチレン性不飽和基を有する樹脂]
エチレン性不飽和基を有する樹脂としては、(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、カルドエポキシジアクリレート等が重合したオリゴマー類;多価アルコール類と一塩基酸又は多塩基酸とを縮合して得られるポリエステルプレポリマーに(メタ)アクリル酸を反応させて得られるポリエステル(メタ)アクリレート;ポリオールと2個のイソシアネート基を持つ化合物とを反応させた後、(メタ)アクリル酸を反応させて得られるポリウレタン(メタ)アクリレート;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノール又はクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、レゾール型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ポリカルボン酸ポリグリシジルエステル、ポリオールポリグリシジルエステル、脂肪族又は脂環式エポキシ樹脂、アミンエポキシ樹脂、ジヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂と、(メタ)アクリル酸とを反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート樹脂等が挙げられる。さらに、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂に多塩基酸無水物を反応させた樹脂を好適に用いることができる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」は、「アクリル又はメタクリル」を意味する。
【0024】
また、エチレン性不飽和基を有する樹脂としては、エポキシ化合物と不飽和基含有カルボン酸化合物との反応物を、さらに多塩基酸無水物と反応させることにより得られる樹脂を好適に用いることができる。
【0025】
その中でも、下記式(a1)で表される化合物が好ましい。この式(a1)で表される化合物は、それ自体が、光硬化性が高い点で好ましい。
【化4】
【0026】
上記式(a1)中、Xは、下記式(a2)で表される基を表す。
【化5】
【0027】
上記式(a2)中、R
1aは、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6の炭化水素基、又はハロゲン原子を表し、R
2aは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、Wは、単結合又は下記式(a3)で表される基を表す。
【化6】
【0028】
また、上記式(a1)中、Yは、ジカルボン酸無水物から酸無水物基(−CO−O−CO−)を除いた残基を表す。ジカルボン酸無水物の例としては、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水クロレンド酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水グルタル酸等が挙げられる。
【0029】
また、上記式(a1)中、Zは、テトラカルボン酸二無水物から2個の酸無水物基を除いた残基を表す。テトラカルボン酸二無水物の例としては、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
また、上記式(a1)中、mは、0〜20の整数を表す。
【0030】
エチレン性不飽和基を有する樹脂の酸価は、樹脂固形分で、10〜150mgKOH/gであることが好ましく、70〜110mgKOH/gであることがより好ましい。酸価を10mgKOH/g以上とすることにより、現像液に対する十分な溶解性が得られるので好ましい。また、酸価を150mgKOH/g以下とすることにより、十分な硬化性を得ることができ、表面性を良好にすることができるので好ましい。
【0031】
また、エチレン性不飽和基を有する樹脂の質量平均分子量は、1000〜40000であることが好ましく、2000〜30000であることがより好ましい。質量平均分子量を1000以上とすることにより、良好な耐熱性、膜強度を得ることができるので好ましい。また、質量平均分子量を40000以下とすることにより、良好な現像性を得ることができるので好ましい。
【0032】
[エチレン性不飽和基を有するモノマー]
エチレン性不飽和基を有するモノマーには、単官能モノマーと多官能モノマーとがある。
単官能モノマーとしては、(メタ)アクリルアミド、メチロール(メタ)アクリルアミド、メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、ブトキシメトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、クロトン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、tert−ブチルアクリルアミドスルホン酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルフタレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、フタル酸誘導体のハーフ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの単官能モノマーは、単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0033】
一方、多官能モノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジグリシジルエステルジ(メタ)アクリレート、グリセリントリアクリレート、グリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート(すなわち、トリレンジイソシアネート)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートとヘキサメチレンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応物、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドメチレンエーテル、多価アルコールとN−メチロール(メタ)アクリルアミドとの縮合物等の多官能モノマーや、トリアクリルホルマール等が挙げられる。これらの多官能モノマーは、単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0034】
(A)成分である光重合性化合物の含有量は、感光性樹脂組成物の固形分の合計100質量部に対して10〜99.9質量部であることが好ましい。(A)成分の含有量を固形分の合計100質量部に対して10質量部以上とすることにより、形成されるパターンの十分な耐熱性及び耐薬品性が期待できる。
【0035】
<(B)オキシム系光重合開始剤>
本発明に係る感光性樹脂組成物に含有されるオキシム系光重合開始剤は、下記一般式(1)で表される化合物であり、特に下記一般式(1)におけるnが2であることを特徴とする。既に述べたように、オキシム系光重合開始剤は、特にブラックマトリクス形成用の感光性樹脂組成物のように組成物が遮光剤を含む場合であっても良好な感度をもたらすものであるが、その一方で、形成されたパターンにおけるアンダーカットを生じる場合がある。本発明者は、(B)成分であるオキシム系光重合開始剤として、下記一般式(1)で表されるように、オキシム基に含まれる炭素原子がシクロアルキルアルキル基に結合しており、かつ当該シクロアルキルアルキル基に含まれるアルキレン基がエチレン基である(すなわち、下記一般式(1)におけるn=2である)オキシム系化合物を光重合開始剤として用いることにより、感光性樹脂組成物に良好な感度を付与しつつ、形成されるパターンにおけるアンダーカットが抑制されることを見出し、本発明を完成した。したがって、本発明に係る感光性樹脂組成物では、特に、下記一般式(1)におけるn=2であるオキシム系光重合開始剤を(B)成分として用いる。
【0037】
上記一般式(1)中、nは2であり、lは1〜5の整数であり、mは0〜(l+3)の整数であり、R
1は、置換基を有してもよい炭素数1〜11のアルキル基、又は置換基を有してもよいアリール基であり、R
2は下記一般式(2)〜(4)で表される置換基のいずれかであり、R
3は炭素数1〜11のアルキル基、又はアリール基である。R
1がアルキル基である場合に有してもよい置換基としては、フェニル基、ナフチル基等が好ましく例示される。また、R
1がアリール基である場合に有してもよい置換基としては、炭素数1〜5のアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子等が好ましく例示される。
上記一般式(1)中、R
1としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、フェニル基、ベンジル基、メチルフェニル基、ナフチル基等が好ましく例示され、これらの中でも、メチル基又はフェニル基であることがより好ましい。また、上記一般式(1)中、R
3としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、フェニル基等が好ましく例示され、これらの中でも、メチル基であることがより好ましい。
【0039】
上記一般式(2)及び(3)中、R
4は置換基を有してもよいアリール基であり、R
5は水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基、又はアリール基である。R
4であるアリール基が有してもよい置換基としては、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、ハロゲン原子等が好ましく例示される。また、R
5がアルキル基である場合に有してもよい置換基としては、炭素数1〜5のアルコキシ基、フェニル基、ナフチル基等が好ましく例示される。
上記一般式(2)及び(3)中、R
4としては、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2−エチルフェニル基、3−エチルフェニル基、4−エチルフェニル基、2,3−ジメチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、2,5−ジメチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、ナフチル基、2−メトキシ−1−ナフチル基、9−アントラセニル基等が好ましい。上記一般式(2)及び(3)中、R
5としては、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル、n−ヘキシル基、フェニル基、3−メチルブチル基、3−メトキシブチル基等が好ましく例示され、これらの中でも、エチル基であることがより好ましい。
【0040】
上記一般式(4)中、R
6は置換基を有してもよいアリール基である。R
6であるアリール基が有してもよい置換基としては、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、ハロゲン原子等が好ましく例示される。
このようなR
6としては、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2−エチルフェニル基、3−エチルフェニル基、4−エチルフェニル基、2,3−ジメチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、2,5−ジメチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、ナフチル基、p−tert−ブチルフェニル基、p−メトキシフェニル基等が好ましく例示され、これらの中でも、フェニル基がより好ましく例示される。
【0041】
より具体的には、(B)オキシム系光重合開始剤として、下記式の化合物を好ましく例示することができる。
【化9】
【0042】
(B)成分であるオキシム系光重合開始剤の含有量は、感光性樹脂組成物の固形分の合計100質量部に対して0.1〜50質量部であることが好ましく、1〜45質量部であることがより好ましい。上記範囲内とすることにより、十分な耐熱性、耐薬品性を得るとともに、塗膜形成能を向上させ、光硬化不良を抑制することができる。
【0043】
<(C)着色剤>
本発明に係る感光性樹脂組成物は、さらに、(C)着色剤を含んでもよい。感光性樹脂組成物は、(C)成分である着色剤を含むことにより、例えば、液晶表示ディスプレイのカラーフィルタ形成用途として好ましく使用される。また、本発明に係る感光性樹脂組成物は、着色剤として遮光剤を含むことにより、例えば、表示装置のカラーフィルタにおけるブラックマトリクス形成用途として好ましく使用される。
【0044】
本発明に係る感光性樹脂組成物に含有される(C)着色剤としては、特に限定されないが、例えば、カラーインデックス(C.I.;The Society of Dyers and Colourists社発行)においてピグメント(Pigment)に分類されている化合物、具体的には、下記のようなカラーインデックス(C.I.)番号が付されているものを用いることが好ましい。
【0045】
C.I.ピグメントイエロー1(以下、「C.I.ピグメントイエロー」は同様であり、番号のみを記載する。)、3、11、12、13、14、15、16、17、20、24、31、53、55、60、61、65、71、73、74、81、83、86、93、95、97、98、99、100、101、104、106、108、109、110、113、114、116、117、119、120、125、126、127、128、129、137、138、139、147、148、150、151、152、153、154、155、156、166、167、168、175、180、185;
C.I.ピグメントオレンジ1(以下、「C.I.ピグメントオレンジ」は同様であり、番号のみを記載する。)、5、13、14、16、17、24、34、36、38、40、43、46、49、51、55、59、61、63、64、71、73;
C.I.ピグメントバイオレット1(以下、「C.I.ピグメントバイオレット」は同様であり、番号のみを記載する。)、19、23、29、30、32、36、37、38、39、40、50;
C.I.ピグメントレッド1(以下、「C.I.ピグメントレッド」は同様であり、番号のみを記載する。)、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、40、41、42、48:1、48:2、48:3、48:4、49:1、49:2、50:1、52:1、53:1、57、57:1、57:2、58:2、58:4、60:1、63:1、63:2、64:1、81:1、83、88、90:1、97、101、102、104、105、106、108、112、113、114、122、123、144、146、149、150、151、155、166、168、170、171、172、174、175、176、177、178、179、180、185、187、188、190、192、193、194、202、206、207、208、209、215、216、217、220、223、224、226、227、228、240、242、243、245、254、255、264、265;
C.I.ピグメントブルー1(以下、「C.I.ピグメントブルー」は同様であり、番号のみを記載する。)、2、15、15:3、15:4、15:6、16、22、60、64、66;
C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントグリーン36、C.I.ピグメントグリーン37;
C.I.ピグメントブラウン23、C.I.ピグメントブラウン25、C.I.ピグメントブラウン26、C.I.ピグメントブラウン28;
C.I.ピグメントブラック1、C.I.ピグメントブラック7。
【0046】
また、着色剤を遮光剤とする場合、遮光剤としては黒色顔料を用いることが好ましい。黒色顔料としては、カーボンブラック、チタンブラック、銅、鉄、マンガン、コバルト、クロム、ニッケル、亜鉛、カルシウム、銀等の金属酸化物、複合酸化物、金属硫化物、金属硫酸塩又は金属炭酸塩等、有機物、無機物を問わず各種の顔料を挙げることができる。これらの中でも、高い遮光性を有するカーボンブラックを用いることが好ましい。光重合開始剤として、上記の(B)成分を用いることにより、遮光性の高い黒色顔料を使用したとしても、現像後のパターンにアンダーカットが生じることを抑制することができる。
【0047】
カーボンブラックとしては、チャンネルブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、ランプブラック等の公知のカーボンブラックを用いることができるが、遮光性に優れるチャンネルブラックを用いることが好ましい。また、樹脂被覆カーボンブラックを使用してもよい。
【0048】
樹脂被覆カーボンブラックは、樹脂被覆のないカーボンブラックに比べて導電性が低いことから、液晶表示ディスプレイのような液晶表示素子のブラックマトリクスとして使用した場合に電流のリークが少なく、信頼性の高い低消費電力のディスプレイを製造できる。
【0049】
また、カーボンブラックの色調を調整するために、補助顔料として上記の有機顔料を適宜添加してもよい。
【0050】
上記の着色剤を感光性樹脂組成物において均一に分散させるために、さらに分散剤を使用してもよい。このような分散剤としては、ポリエチレンイミン系、ウレタン樹脂系、アクリル樹脂系の高分子分散剤を用いることが好ましい。特に、着色剤として、カーボンブラックを用いる場合には、分散剤としてアクリル樹脂系の分散剤を用いることが好ましい。
【0051】
また、無機顔料と有機顔料はそれぞれ単独又は2種以上併用してもよいが、併用する場合には、無機顔料と有機顔料との総量100質量部に対して、有機顔料を10〜80質量部の範囲で用いることが好ましく、20〜40質量部の範囲で用いることがより好ましい。
【0052】
感光性樹脂組成物における着色剤の使用量は、感光性樹脂組成物の用途に応じて適宜決定すればよいが、一例として、感光性樹脂組成物の固形分の合計100質量部に対して、5〜70質量部が好ましく、25〜60質量部がより好ましい。上記の範囲とすることにより、目的とするパターンでブラックマトリクスや各着色層を形成することができ、好ましい。
特に、感光性樹脂組成物を使用してブラックマトリクスを形成する場合には、ブラックマトリクスの被膜1μm当たりのOD値が4以上となるように感光性樹脂組成物における遮光剤の量を調整することが好ましい。ブラックマトリクスにおける被膜1μm当たりのOD値が4以上あれば、液晶表示ディスプレイのブラックマトリクスに用いた場合に、十分な表示コントラストを得ることができる。
【0053】
着色剤は、分散剤を用いて適当な濃度で分散させた分散液とした後、感光性樹脂組成物に添加することが好ましい。
【0054】
<その他の成分>
本発明に係る感光性樹脂組成物には、必要に応じて、各種の添加剤を加えてもよい。具体的には、溶剤、増感剤、硬化促進剤、光架橋剤、光増感剤、分散助剤、充填剤、密着促進剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤、熱重合禁止剤、消泡剤、界面活性剤等が例示される。
【0055】
本発明に係る感光性樹脂組成物に使用される溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等の他のエーテル類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン等のケトン類;2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル等の乳酸アルキルエステル類;2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチル部炭酸メチル、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、蟻酸n−ペンチル、酢酸イソペンチル、プロピオン酸n−ブチル、酪酸エチル、酪酸n−プロピル、酪酸イソプロピル、酪酸n−ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸n−プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸エチル等の他のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類等が挙げられる。これらの溶剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
上記溶剤の中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、シクロヘキサノン、3−メトキシブチルアセテートは、上述の(A)成分及び(B)成分に対して優れた溶解性を示すとともに、上述の(C)成分の分散性を良好にすることができるため好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテートを用いることが特に好ましい。溶剤は、感光性樹脂組成物の用途に応じて適宜決定すればよいが、一例として、感光性樹脂組成物の固形分の合計100質量部に対して、50〜900質量部程度が挙げられる。
【0057】
本発明に係る感光性樹脂組成物に使用される熱重合禁止剤としては、例えば、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノエチルエーテル等を挙げることができる。また、消泡剤としては、シリコーン系、フッ素系等の化合物を、界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン等の化合物を、それぞれ例示できる。
【0058】
[感光性樹脂組成物の調製方法]
本発明に係る感光性樹脂組成物は、上記の各成分を全て撹拌機で混合することにより調製される。なお、調製された感光性樹脂組成物が均一なものとなるようフィルタを用いて濾過してもよい。
【0059】
[パターン形成方法]
本発明の感光性樹脂組成物を用いてパターンを形成するには、まず、ロールコータ、リバースコータ、バーコータ等の接触転写型塗布装置やスピンナー(回転式塗布装置)、カーテンフローコータ等の非接触型塗布装置を用いて、基板上に感光性樹脂組成物を塗布する。
【0060】
次いで、塗布された感光性樹脂組成物を乾燥させて塗膜を形成させる。乾燥方法は、特に限定されず、例えば、(1)ホットプレートにて80〜120℃、好ましくは90〜100℃の温度にて60〜120秒間乾燥させる方法、(2)室温にて数時間〜数日間放置する方法、(3)温風ヒータや赤外線ヒータ中に数十分間〜数時間入れて溶剤を除去する方法等が挙げられる。
【0061】
次いで、この塗膜に、ネガ型のマスクを介して、紫外線、エキシマレーザー光等の活性エネルギー線を照射して部分的に露光する。照射するエネルギー線量は、感光性樹脂組成物の組成によっても異なるが、例えば30〜2000mJ/cm
2程度が好ましい。
【0062】
次いで、露光後の膜を、現像液により現像することによって所望の形状にパターニングする。現像方法は、特に限定されず、例えば、浸漬法、スプレー法等を用いることができる。現像液としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機系のものや、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、アンモニア、4級アンモニウム塩等の水溶液が挙げられる。既に説明したように、本発明に係る感光性樹脂組成物を使用することにより、現像後に形成されるパターンにおけるアンダーカットが抑制される。そのため、本発明の感光性樹脂組成物を使用すれば、例えば表示装置用のカラーフィルタを作製した場合に、各画素の境界部付近に気泡が入ることを抑制できるので、好ましい。
【0063】
次いで、現像後のパターンに対して200℃〜250℃程度でポストベークを行うことが好ましい。
【0064】
このようにして形成されたパターンは、例えば、液晶ディスプレイ等のような表示装置におけるカラーフィルタの画素やブラックマトリクスとして好適に用いることができる。このようなカラーフィルタや、当該カラーフィルタの使用された表示装置も本発明の一つである。
【0065】
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例に限定されるものではない。
以降、実施例1、2、4、7はそれぞれ、参考例へ読み替えるものとする。後記の表1においても同様である。
【0066】
[感光性樹脂組成物の調製]
[実施例1〜6、及び比較例1〜7]
下記式E1〜E6及びC1〜C7のオキシム系光重合開始剤を使用して、実施例1〜6及び比較例1〜7の感光性樹脂組成物を調製した。実施例1〜6の感光性樹脂組成物では、それぞれ下記式E1〜E6のオキシム系光重合開始剤を使用し、比較例1〜7の感光性樹脂組成物では、それぞれ下記式C1〜C7のオキシム系光重合開始剤を使用した。
各感光性樹脂組成物の調製は、オキシム系光重合開始剤100質量部、下記樹脂A(固形分55質量%、溶剤3−メトキシブチルアセテート)310質量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA、日本化薬株式会社製)175質量部、及びカーボンブラック分散液(カーボンブラック含有量20質量%、「CFブラック」、御国色素株式会社製)450質量部の混合物に、固形分が15質量%となるように、3−メトキシブチルアセテート/シクロヘキサノン/プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)=60/20/20(重量比)を加え、均一になるまで撹拌することによって行った。
【0067】
上記感光性樹脂組成物の調製で使用した樹脂Aは、特開2010−32940号公報の段落0063〜0064に記載された樹脂A−1と同じものである。また、下記式E1〜E6及びC1〜C7の各オキシム系光重合開始剤におけるh、i、j、k線の吸光係数は全て同等だった。なお、実施例1〜6の感光性樹脂組成物の調製で使用した下記式E1〜E6のオキシム系光重合開始剤は、全て、上記一般式(1)においてn=2となる化合物である。また、比較例1〜7の感光性樹脂組成物の調製で使用した下記式C1〜C7のオキシム系光重合開始剤は、全て、上記一般式(1)においてn≠2となる化合物、又は上記一般式(1)に該当しない化合物である。表1の「n」として記載された数値は、上記一般式(1)におけるnの数値を意味し、表1の「顔料種」として記載された「CB」は、カーボンブラックを意味する。表1の「n」として、「−」と記載された感光性樹脂組成物は、オキシム系光重合開始剤として上記一般式(1)に該当しない化合物を含むことを意味する。
【0068】
[実施例7、比較例8]
カーボン分散液に代えて、AgSn分散液(AgSn含有量20質量%、PGMEA溶液)を450質量部使用したこと以外は、実施例1と同様の手順にて、実施例7の感光性樹脂組成物を調製した。また、カーボン分散液に代えて、AgSn分散液(AgSn含有量20質量%、PGMEA溶液)を450質量部使用したこと以外は、比較例1と同様の手順にて、比較例8の感光性樹脂組成物を調製した。
【0072】
[感度評価]
実施例1〜7及び比較例1〜8の感光性樹脂組成物のそれぞれについて、以下の手順にて、感度の評価を行った。感度の評価は、以下の手順で実施した。まず、感光性樹脂組成物をガラス基板(10cm×10cm)にスピン塗布し、90℃にて120秒間加熱することにより、ガラス基板の表面に1.0μmの塗布膜を形成させた。その後、ミラープロジェクションアライナー(製品名:TME−150RTO、株式会社トプコン製)を使用し、10μmのパターンの形成されたネガ型マスクを介して、露光量30−60−1200mJ/cm
2(Gap50μm)で露光させた。露光後の膜を、26℃の0.04質量%KOH水溶液で30秒間現像後、230℃にて30分間焼成処理を行い、各露光量でのパターンの線幅を光学顕微鏡で測定し、各線幅と露光量から最小二乗法による近似計算により10μmの線幅が得られる露光量を算出した。算出された、現像時間30秒における感度(mJ/cm
2)のデータを表1に示す。表1に示した感度のデータは、所定の線幅のパターン(10μm)を形成させるのに必要な露光量を示すものであり、この数値が小さいほど感光性樹脂組成物の感度が高いことを意味する。
【0073】
[パターン形状評価]
実施例1〜6及び比較例1〜7の感光性樹脂組成物のそれぞれについて、以下の手順にて、露光を行い、次いで現像後のパターンにおけるアンダーカットの有無、すなわちパターン形状の評価を行った。まず、感光性樹脂組成物をガラス基板(10cm×10cm)にスピン塗布し、90℃にて120秒間加熱することにより、ガラス基板の表面に1.0μmの塗布膜を形成させた。その後、ミラープロジェクションアライナー(製品名:TME−150RTO、株式会社トプコン製)を使用し、10μmのパターンの形成されたネガ型マスクを介して、露光量100mJ/cm
2(Gap50μm)で露光させた。露光後の膜を、26℃の0.04質量%KOH水溶液で50秒間現像後、230℃にて30分間焼成処理を行い、走査電子顕微鏡にてパターンと基板との間の接合角度(テーパー角)を測定した。このテーパー角は、
図1(a)及び(b)における角θに対応する。測定されたテーパー角を表1に示す。テーパー角が鋭角であれば、パターンにアンダーカットが存在しないことを意味し、テーパー角が鈍角であれば、パターンにアンダーカットが存在することを意味する。
【0075】
表1から理解されるように、オキシム系光重合開始剤として上記一般式(1)におけるn=2である化合物を使用した実施例1〜7の感光性樹脂組成物は、オキシム系光重合開始剤として上記一般式(1)においてn≠2となる化合物、又は上記一般式(1)に該当しない化合物を使用した比較例1〜8の感光性樹脂組成物に比べて、感度が高くなる傾向にあることが理解できる。そして、この傾向は、遮光剤としてカーボンブラックを使用した場合でも、AgSnを使用した場合でも、同様であることが理解できる。
【0076】
また、オキシム系光重合開始剤として上記一般式(1)におけるn=2である化合物を使用した実施例1〜6の感光性樹脂組成物では、いずれも、テーパー角が90°未満の鋭角となり、パターンにアンダーカットが生じない結果となった。それに対して、オキシム系光重合開始剤として上記一般式(1)においてn≠2となる化合物、又は上記一般式(1)に該当しない化合物を使用した比較例1〜7の感光性樹脂組成物では、いずれも、テーパー角が90°超の鈍角となり、パターンにアンダーカットが生じる結果となった。このことから、本発明の感光性樹脂組成物は、アンダーカットを生じない良好な形状のパターンを形成させるのに有効であることが理解できる。