【実施例】
【0034】
以下、実施例および比較例に基づいて説明する。なお、本実施例はあくまで一例であり、この例によって何ら制限されるものではない。すなわち、本発明は特許請求の範囲によってのみ制限されるものであり、本発明に含まれる実施例以外の種々の変形を包含するものである。
【0035】
(実施例1)
Ga
2O
3粉、ZnO粉を表1に示す原子比となるように調合し、これを混合した。次に、この混合粉末を大気中、温度1050℃で仮焼した後、湿式微粉砕(ZrO
2ビーズ使用)にて平均粒径2μm以下に粉砕し、乾燥後、目開き150μmの篩で篩別を行った。その後、この微粉砕粉とZnS粉とを表1に記載される配合比で混合した後、Ar雰囲気中、温度1100℃、圧力200kgf/cm
2の条件でホットプレス焼結した。
その後、この焼結体を機械加工でスパッタリングターゲット形状に仕上げた。得られたターゲットのバルク抵抗と相対密度を測定した結果、表1に示す通り、相対密度は97.7%に達し、バルク抵抗は0.02Ω・cmとなり、安定したDCスパッタが可能であった。ターゲットの成分組成は、分析の結果、原料粉末の配合比と同等になることを確認した。また、EMPA(電子線マイクロアナライザー)を用いてターゲット組織を観察した結果、
図1に示すように、Ga、Zn、Oからなる酸化物が形成されていることを確認した。
【0036】
上記仕上げ加工したターゲットを使用して、スパッタリングを行った。スパッタ条件は、DCスパッタ、スパッタパワー500W、酸素を2.0vol%含有するArガス圧0.5Paとし、膜厚5000〜7000Åに成膜した。成膜サンプルの、屈折率(波長550nm)、消衰係数(波長405nm)、体積抵抗率、を測定した。表1に示す通り、スパッタにより形成した薄膜は、屈折率が2.35、消衰係数が0.02と、所望の光学特性が得られた。また、アモルファス性、高温高湿耐性(耐候性)は、良好であった。
【0037】
【表1】
【0038】
(実施例2)
Ga
2O
3粉、ZnO粉を表1に示す原子比となるように調合し、これを混合した。次に、この混合粉末を大気中、温度1050℃で仮焼した後、湿式微粉砕(ZrO
2ビーズ使用)にて平均粒径2μm以下に粉砕し、乾燥後、目開き150μmの篩で篩別を行った。その後、この微粉砕粉とZnS粉とを表1に記載される配合比で混合した後、実施例1と同様にホットプレス焼結した。その後、この焼結体を機械加工でスパッタリングターゲット形状に仕上げた。得られたターゲットのバルク抵抗と相対密度を測定した結果、表1に示す通り、相対密度は96.7%に達し、バルク抵抗は0.003Ω・cmとなり、安定したDCスパッタが可能であった。また、EMPA(電子線マイクロアナライザー)を用いてターゲット組織を観察した結果、
図1に示すように、Ga、Zn、Oからなる酸化物が形成されていることを確認した。
次に、仕上げ加工したターゲットを使用して、スパッタリングを行った。スパッタ条件は、実施例1と同様とした。成膜サンプルの、屈折率(波長550nm)、消衰係数(波長405nm)、体積抵抗率、を測定した結果、表1に示す通り、スパッタにより形成した薄膜は、屈折率が2.24、消衰係数が0.04と、所望の光学特性が得られた。また、アモルファス性(
図2参照)が、高温高湿耐性(耐候性)は、良好であった。
【0039】
(実施例3)
Ga
2O
3粉、ZnO粉を表1に示す原子比となるように調合し、これを混合した。次に、この混合粉末を大気中、温度1050℃で仮焼した後、湿式微粉砕(ZrO
2ビーズ使用)にて平均粒径2μm以下に粉砕し、乾燥後、目開き150μmの篩で篩別を行った。その後、この微粉砕粉とZnS粉とを表1に記載される配合比で混合した後、実施例1と同様にホットプレス焼結した。その後、この焼結体を機械加工でスパッタリングターゲット形状に仕上げた。得られたターゲットのバルク抵抗と相対密度を測定した結果、表1に示す通り、相対密度は98.2%に達し、バルク抵抗は0.001Ω・cmとなり、安定したDCスパッタが可能であった。また、EMPA(電子線マイクロアナライザー)を用いてターゲット組織を観察した結果、Ga、Zn、Oからなる酸化物が形成されていることを確認した。
次に、仕上げ加工したターゲットを使用して、スパッタリングを行った。スパッタ条件は、実施例1と同様とした。成膜サンプルの、屈折率(波長550nm)、消衰係数(波長405nm)、体積抵抗率、を測定した結果、表1に示す通り、スパッタにより形成した薄膜は、屈折率が2.22、消衰係数が0.001、所望の光学特性が得られた。また、アモルファス性、高温高湿耐性(耐候性)は、良好であった。
【0040】
(実施例4)
Ga
2O
3粉、ZnO粉を表1に示す原子比となるように調合し、これを混合した。次に、この混合粉末を大気中、温度1050℃で仮焼した後、湿式微粉砕(ZrO
2ビーズ使用)にて平均粒径2μm以下に粉砕し、乾燥後、目開き150μmの篩で篩別を行った。その後、この微粉砕粉とZnS粉とを表1に記載される配合比で混合した後、実施例1と同様にホットプレス焼結した。その後、この焼結体を機械加工でスパッタリングターゲット形状に仕上げた。得られたターゲットのバルク抵抗と相対密度を測定した結果、表1に示す通り、相対密度は98.5%に達し、バルク抵抗は0.2Ω・cmとなり、安定したDCスパッタが可能であった。また、EMPA(電子線マイクロアナライザー)を用いてターゲット組織を観察した結果、Ga、Zn、Oからなる酸化物が形成されていることを確認した。
次に、仕上げ加工したターゲットを使用して、スパッタリングを行った。スパッタ条件は、実施例1と同様とした。成膜サンプルの、屈折率(波長550nm)、消衰係数(波長405nm)、体積抵抗率、を測定した結果、表1に示す通り、スパッタにより形成した薄膜は、屈折率が2.23、消衰係数が0.03、と所望の光学特性が得られた。また、アモルファス性、高温高湿耐性(耐候性)は、良好であった。
【0041】
(実施例5)
Ga
2O
3粉、ZnO粉、ZnS粉を表1に記載される配合比で混合した。この混合粉を、実施例1と同様に(但し、焼結温度は1150℃)でホットプレス焼結した。その後、この焼結体を機械加工でスパッタリングターゲット形状に仕上げた。得られたターゲットのバルク抵抗と相対密度を測定した結果、表1に示す通り、相対密度は97.5%に達し、バルク抵抗は0.01Ω・cmとなり、安定したDCスパッタが可能であった。また、EMPA(電子線マイクロアナライザー)を用いてターゲット組織を観察した結果、Ga、Zn、Oからなる酸化物が形成されていることを確認した。
次に、仕上げ加工したターゲットを使用して、スパッタリングを行った。スパッタ条件は、実施例1と同様とした。成膜サンプルの、屈折率(波長550nm)、消衰係数(波長405nm)、体積抵抗率、を測定した結果、表1に示す通り、スパッタにより形成した薄膜は、屈折率が2.23、消衰係数が0.05と、所望の光学特性が得られた。また、アモルファス性、高温高湿耐性(耐候性)は、良好であった。
【0042】
(実施例6)
Ga
2O
3粉、ZnO粉を表1に示す原子比となるように調合し、これを混合した。次に、この混合粉末を真空中、温度1050℃で仮焼した後、湿式微粉砕(ZrO
2ビーズ使用)にて平均粒径2μm以下に粉砕し、乾燥後、目開き150μmの篩で篩別を行った。その後、この微粉砕粉とZnS粉とを表1に記載される配合比で混合した後、実施例1と同様にホットプレス焼結した。その後、この焼結体を機械加工でスパッタリングターゲット形状に仕上げた。得られたターゲットのバルク抵抗と相対密度を測定した結果、表1に示す通り、相対密度は96.6%に達し、バルク抵抗は0.5Ω・cmとなり、安定したDCスパッタが可能であった。また、EMPA(電子線マイクロアナライザー)を用いてターゲット組織を観察した結果、Ga、Zn、Oからなる酸化物が形成されていることを確認した。
次に、仕上げ加工したターゲットを使用して、スパッタリングを行った。スパッタ条件は、実施例1と同様とした。成膜サンプルの、屈折率(波長550nm)、消衰係数(波長405nm)、体積抵抗率、を測定した結果、表1に示す通り、スパッタにより形成した薄膜は、屈折率が2.31、消衰係数が0.05と、所望の光学特性が得られた。また、アモルファス性、高温高湿耐性(耐候性)は、良好であった。
【0043】
(実施例7)
Ga
2O
3粉、ZnO粉を表1に示す原子比となるように調合し、これを混合した。次に、この混合粉末を真空中、温度1050℃で仮焼した後、湿式微粉砕(ZrO
2ビーズ使用)にて平均粒径2μm以下に粉砕し、乾燥後、目開き150μmの篩で篩別を行った。その後、この微粉砕粉とZnS粉とを表1に記載される配合比で混合した後、実施例1と同様にホットプレス焼結した。その後、この焼結体を機械加工でスパッタリングターゲット形状に仕上げた。得られたターゲットのバルク抵抗と相対密度を測定した結果、表1に示す通り、相対密度は96.8%に達し、バルク抵抗は3Ω・cmとなり、安定したDCスパッタが可能であった。また、EMPA(電子線マイクロアナライザー)を用いてターゲット組織を観察した結果、Ga、Zn、Oからなる酸化物が形成されていることを確認した。
次に、仕上げ加工したターゲットを使用して、スパッタリングを行った。スパッタ条件は、実施例1と同様とした。成膜サンプルの、屈折率(波長550nm)、消衰係数(波長405nm)、体積抵抗率、を測定した結果、表1に示す通り、スパッタにより形成した薄膜は、屈折率が2.32、消衰係数が0.04と、所望の光学特性が得られた。また、アモルファス性、高温高湿耐性(耐候性)は、良好であった。
【0044】
(比較例1)
Ga
2O
3粉、ZnO粉を表1に示す原子比となるように調合し、これを混合した。次に、この混合粉末を大気中、温度1050℃で仮焼した後、湿式微粉砕(ZrO
2ビーズ使用)にて平均粒径2μm以下に粉砕し、乾燥後、目開き150μmの篩で篩別を行った。その後、この微粉砕粉とZnS粉とを表1に記載される配合比で混合した後、実施例1と同様にホットプレス焼結した。なお、ZnS量を規定より多くした。その後、この焼結体を機械加工でスパッタリングターゲット形状に仕上げた。得られたターゲットのバルク抵抗を測定した結果、表1に示す通り、バルク抵抗は500kΩ・cm超となり、安定したDCスパッタは困難であった。
【0045】
(比較例2)
Ga
2O
3粉、ZnO粉を表1に示す原子比となるように調合し、これを混合した。このとき、Ga
2O
3量を規定より少なくした。次に、この混合粉末を大気中、温度1050℃で仮焼した後、湿式微粉砕(ZrO
2ビーズ使用)にて平均粒径2μm以下に粉砕し、乾燥後、目開き150μmの篩で篩別を行った。その後、この微粉砕粉とZnS粉とを表1に記載される配合比で混合した後、実施例1と同様にホットプレス焼結した。その後、この焼結体を機械加工でスパッタリングターゲット形状に仕上げた。得られたターゲットのバルク抵抗などを測定した結果、表1に示す通り、相対密度は98.5%に達し、バルク抵抗は0.01Ω・cmとなり、安定したDCスパッタが可能であった。
次に、仕上げ加工したターゲットを使用して、スパッタリングを行った。スパッタ条件は、実施例1と同様とした。成膜サンプルの、屈折率(波長550nm)、消衰係数(波長405nm)、体積抵抗率、を測定した結果、表1に示す通り、スパッタにより形成した薄膜は、屈折率が2.32、消衰係数が0.02と、所望の光学特性が得られた。一方、高温高湿耐性(耐候性)は劣るものであった。
【0046】
(比較例3)
Ga
2O
3粉、ZnO粉を表1に示す原子比となるように調合し、これを混合した。このとき、Ga
2O
3量を規定より多くした。次に、この混合粉末を大気中、温度1050℃で仮焼した後、湿式微粉砕(ZrO
2ビーズ使用)にて平均粒径2μm以下に粉砕し、乾燥後、目開き150μmの篩で篩別を行った。その後、この微粉砕粉とZnS粉とを表1に記載される配合比で混合した後、実施例1と同様に(但し、焼結温度は1150℃)ホットプレス焼結した。その後、この焼結体を機械加工でスパッタリングターゲット形状に仕上げた。得られたターゲットのバルク抵抗を測定した結果、表1に示す通り、バルク抵抗は500kΩ・cm超となり、安定したDCスパッタは困難であった。
【0047】
(比較例4)
Al
2O
3粉、ZnO粉を表1に示す原子比となるように調合し、これを混合した。このとき、Ga
2O
3粉の代わりにAl
2O
3粉を使用した。次に、この混合粉末を大気中、温度1050℃で仮焼した後、湿式微粉砕(ZrO
2ビーズ使用)にて平均粒径2μm以下に粉砕し、乾燥後、目開き150μmの篩で篩別を行った。その後、この微粉砕粉とZnS粉とを表1に記載される配合比で混合した後、実施例1と同様に(但し、焼結温度は1150℃)ホットプレス焼結した。その後、この焼結体を機械加工でスパッタリングターゲット形状に仕上げた。得られたターゲットのバルク抵抗などを測定した結果、表1に示す通り、相対密度は96.9%に達し、バルク抵抗は0.3Ω・cmとなり、安定したDCスパッタが可能であった。
次に、仕上げ加工したターゲットを使用して、スパッタリングを行った。スパッタ条件は、実施例1と同様とした。成膜サンプルの、屈折率(波長550nm)、消衰係数(波長405nm)、体積抵抗率、を測定した結果、表1に示す通り、スパッタにより形成した薄膜は、屈折率が2.28、消衰係数が0.03と、所望の光学特性が得られた。一方、高温高湿耐性(耐候性)は劣るものであった。
【0048】
(比較例5)
Ga
2O
3粉、ZnO粉を表1に示す原子比となるように調合し、これを混合した。次に、この混合粉末を大気中、温度1050℃で仮焼した後、湿式微粉砕(ZrO
2ビーズ使用)にて平均粒径2μm以下に粉砕し、乾燥後、目開き150μmの篩で篩別を行った。その後、この微粉砕粉とZnS粉とを表1に記載される配合比で混合した後、実施例1と同様に(但し、焼結温度は1150℃)ホットプレス焼結した。なお、ZnS量を規定より少なくした。その後、この焼結体を機械加工でスパッタリングターゲット形状に仕上げた。得られたターゲットのバルク抵抗などを測定した結果、表1に示す通り、相対密度は96.4%に達し、バルク抵抗は0.8Ω・cmとなり、安定したDCスパッタが可能であった。
次に、仕上げ加工したターゲットを使用して、スパッタリングを行った。スパッタ条件は、実施例1と同様とした。成膜サンプルの、屈折率(波長550nm)、消衰係数(波長405nm)、体積抵抗率、を測定した結果、表1に示す通り、スパッタにより形成した薄膜は、屈折率が2.18、消衰係数が0.07と、所望の光学特性が得られた。一方、アモルファス膜とならず(
図2参照)、高温高湿耐性(耐候性)は劣るものであった。