(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
接続される前記第1の縦方向ガス流路の数がk(kは1以上の整数)個である第1の横方向ガス流路(k)と、n(k<n、nは2以上の整数)個である第1の横方向ガス流路(n)とが存在し、前記第1の横方向ガス流路(k)に接続される前記第1の接続流路の流体抵抗が、前記第1の横方向ガス流路(n)に接続される前記第1の接続流路の流体抵抗よりも大きい、または、
接続される前記第2の縦方向ガス流路の数がk(kは1以上の整数)個である第2の横方向ガス流路(k)と、n(k<n、nは2以上の整数)個である第2の横方向ガス流路(n)とが存在し、前記第2の横方向ガス流路(k)に接続される前記第2の接続流路の流体抵抗が、前記第2の横方向ガス流路(n)に接続される前記第2の接続流路の流体抵抗よりも大きいことを特徴とする請求項1ないし請求項5いずれか一項記載の気相成長装置。
前記第1の横方向ガス流路(k)に接続される前記第1の接続流路の内径が、前記第1の横方向ガス流路(n)に接続される前記第1の接続流路の内径よりも小さい、または、
前記第1の横方向ガス流路(k)に接続される前記第2の接続流路の内径が、前記第1の横方向ガス流路(n)に接続される前記第2の接続流路の内径よりも小さいことを特徴とする請求項6記載の気相成長装置。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0020】
なお、本明細書中では、気相成長装置が成膜可能に設置された状態での重力方向を「下」と定義し、その逆方向を「上」と定義する。したがって、「下部」とは、基準に対し重力方向の位置、「下方」とは基準に対し重力方向を意味する。そして、「上部」とは、基準に対し重力方向と逆方向の位置、「上方」とは基準に対し重力方向と逆方向を意味する。また、「縦方向」とは重力方向である。
【0021】
また、本明細書中、「水平面」とは、重力方向に対し、垂直な面を意味するものとする。
【0022】
また、本明細書中、「プロセスガス」とは、基板上への成膜のために用いられるガスの総称であり、例えば、ソースガス、キャリアガス、分離ガス等を含む概念とする。
【0023】
(第1の実施の形態)
本実施の形態の気相成長装置は、反応室と、反応室の上部に配置され、反応室内にガスを供給するシャワープレートと、反応室内のシャワープレート下方に設けられ、基板を載置可能な支持部とを備える気相成長装置である。そして、シャワープレートが、第1の水平面内に配置され互いに平行に延伸する複数の第1の横方向ガス流路と、第1の横方向ガス流路に接続され縦方向に延伸し反応室側に第1のガス噴出孔を有する複数の第1の縦方向ガス流路を備える。また、第1の水平面より上方の第2の水平面内に配置され第1の横方向ガス流路と同一方向に互いに平行に延伸する複数の第2の横方向ガス流路と、第2の横方向ガス流路に接続され第1の横方向ガス流路の間を通って縦方向に延伸し反応室側に第2のガス噴出孔を有する複数の第2の縦方向流路とを備える。
【0024】
本実施の形態の気相成長装置は、上記構成を備えることにより、プロセスガスを反応室に噴出するガス噴出孔の間隔を狭め、ガス噴出孔の配置密度を大きくすることが可能である。同時に、ガス噴出孔にプロセスガスが至るまでのガス流路の流体抵抗を小さくすることで、ガス噴出孔から噴出するガスの流量分布を均一化することが可能である。したがって、本実施の形態の気相成長装置によれば、基板上に膜厚や膜質等の均一性に優れた膜を成長させることが可能となる。
【0025】
以下、MOCVD法(有機金属気相成長法)を用いてGaN(窒化ガリウム)をエピタキシャル成長させる場合を例に説明する。
【0026】
図1は、本実施の形態の気相成長装置の模式断面図である。本実施の形態の気相成長装置は、枚葉型のエピタキシャル成長装置である。
【0027】
図1に示すように、本実施の形態のエピタキシャル成長装置は、例えばステンレス製で円筒状中空体の反応室10を備えている。そして、この反応室10上部に配置され、反応室10内に、プロセスガスを供給するシャワープレート(またはインジェクタヘッド)100を備えている。
【0028】
また、反応室10内のシャワープレート100下方に設けられ、半導体ウェハ(基板)Wを載置可能な支持部12を備えている。支持部12は、例えば、中心部に開口部が設けられる環状ホルダー、または、半導体ウェハW裏面のほぼ全面に接する構造のサセプタである。
【0029】
また、支持部12をその上面に配置し回転する回転体ユニット14、支持部12に載置されたウェハWを輻射熱により加熱する加熱部16としてヒーターを、支持部12下方に備えている。ここで、回転体ユニット14は、その回転軸18が、下方に位置する回転駆動機構20に接続される。そして、回転駆動機構20により、半導体ウェハWをその中心を回転中心として、例えば、300rpm〜1000rpmの高速回転させることが可能となっている。
【0030】
円筒状の回転体ユニット14の径は、支持部12の外周径とほぼ同じにしてあることが望ましい。また、円筒状の回転軸18は中空の回転体ユニット14内を排気するための真空ポンプ(図示せず)に接続される。真空ポンプの吸引により、半導体ウェハWが支持部12に真空吸着する構成になっていてもよい。なお、回転軸18は、反応室10の底部に真空シール部材を介して回転自在に設けられている。
【0031】
そして、加熱部16は、回転軸18の内部に貫通する支持軸22に固定される支持台24上に固定して設けられる。この支持台24には半導体ウェハWを
支持部12から脱着させるための、例えば突き上げピン(図示せず)が設けられている。
【0032】
さらに、半導体ウェハW表面等でソースガスが反応した後の反応生成物および反応室10の残留ガスを反応室10外部に排出するガス排出部26を、反応室10底部に備える。なお、ガス排出部26は真空ポンプ(図示せず)に接続してある。
【0033】
そして、本実施の形態のエピタキシャル成長装置は、第1のプロセスガスを供給する第1のガス供給路31、第2のプロセスガスを供給する第2のガス供給路32、第3のプロセスガスを供給する第3のガス供給路33を備えている。
【0034】
例えば、MOCVD法により、GaNの単結晶膜を半導体ウェハWに成膜する場合、例えば、第1のプロセスガスとして、水素(H
2)を分離ガスとして供給する。また、例えば、第2のプロセスガスとして窒素(N)のソースガスとなるアンモニア(NH
3)を供給する。また、例えば、第3のプロセスガスとしてGa(ガリウム)のソースガスであるトリメチルガリウム(TMG)をキャリアガスである水素(H
2)で希釈したガスを供給する。
【0035】
ここで、第1のプロセスガスである分離ガスとは、第1のガス噴出孔111から噴出させることで、第2のガス噴出孔112から噴出する第2のプロセスガス(ここではアンモニア)と、第3のガス噴出孔113から噴出する第3のプロセスガス(ここではTMG)とを分離するガスである。例えば、第2のプロセスガスおよび第3のプロセスガスと反応性に乏しいガスを用いることが望ましい。
【0036】
なお、
図1に示した枚葉型エピタキシャル成長装置では、反応室10の側壁箇所において、半導体ウェハを出し入れするための図示しないウェハ出入口およびゲートバルブが設けられている。そして、このゲートバルブで連結する例えばロードロック室(図示せず)と反応室10との間において、ハンドリングアームにより半導体ウェハWを搬送できるように構成される。ここで、例えば合成石英で形成されるハンドリングアームは、シャワープレート100とウェハ支持部12とのスペースに挿入可能となっている。
【0037】
以下、本実施の形態のシャワープレート100について詳細に説明する。
図2は、本実施の形態のシャワープレートの模式上面図である。
図3は、
図2のAA断面図、
図4(a)〜(c)は、ぞれぞれ、
図2のBB断面図、CC断面図、DD断面図である。
【0038】
シャワープレート100は、例えば、所定の厚さの板状の形状である。シャワープレート100は、例えば、ステンレス鋼やアルミニウム合金等の金属材料で形成される。
【0039】
シャワープレート100の内部には、複数の第1の横方向ガス流路101、複数の第2の横方向ガス流路102、複数の第3の横方向ガス流路103が形成されている。複数の第1の横方向ガス流路101は、第1の水平面(P1)内に配置され互いに平行に延伸する。複数の第2の横方向ガス流路102は、第1の水平面より上方の第2の水平面(P2)内に配置され互いに平行に延伸する。複数の第3の横方向ガス流路103は、第1の水平面より上方、第2の水平面より下方の第3の水平面(P3)内に配置され互いに平行に延伸する。
【0040】
そして、第1の横方向ガス流路101に接続され縦方向に延伸し、反応室10側に第1のガス噴出孔111を有する複数の第1の縦方向ガス流路121を備える。また、第2の横方向ガス流路102に接続され縦方向に延伸し、反応室10側に第2のガス噴出孔112を有する複数の第2の縦方向ガス流路122を備える。第2の縦方向ガス流路122は、2本の第1の横方向ガス流路101の間を通っている。さらに、第3の横方向ガス流路103に接続され縦方向に延伸し、反応室10側に第3のガス噴出孔113を有する複数の第3の縦方向ガス流路123を備える。第3の縦方向ガス流路123は、2本の第1の横方向ガス流路101の間を通っている。
【0041】
第1の横方向ガス流路101、第2の横方向ガス流路102、第3の横方向ガス流路103は、板状のシャワープレート100内に水平方向に形成された横孔である。また、第1の縦方向ガス流路121、第2の縦方向ガス流路122、第3の縦方向ガス流路123は、板状のシャワープレート100内に重力方向(縦方向または垂直方向)に形成された縦孔である。
【0042】
第1、第2、および第3の横方向ガス流路101、102、103の内径は、それぞれ対応する第1、第2、および第3の縦方向ガス流路121、122、123の内径よりも大きくなっている。
図3、4(a)〜(c)では、第1、第2、および第3の横方向ガス流路101、102、103、第1、第2、および第3の縦方向ガス流路121、122、123の断面形状は円形となっているが、円形に限らず、楕円形、矩形、多角形等その他の形状であってもかまわない。
【0043】
シャワープレート100は、第1のガス供給路31に接続され、第1の水平面(P1)より上方に設けられる第1のマニフォールド131と、第1のマニフォールド131と第1の横方向ガス流路101とを第1の横方向ガス流路101の端部で接続し縦方向に延伸する第1の接続流路141を備えている。
【0044】
第1のマニフォールド131は、第1のガス供給路31から供給される第1のプロセスガスを、第1の接続流路141を介して複数の第1の横方向ガス流路101に分配する機能を備える。分配された第1のプロセスガスは、複数の第1の縦方向ガス流路121の第1のガス噴出孔111から反応室10に導入される。
【0045】
第1のマニフォールド131は、第1の横方向ガス流路101に直交する方向に延伸し、例えば、中空の直方体形状を備える。本実施の形態では、第1のマニフォールド131は、第1の横方向ガス流路101の両端部に設けられるが、いずれか一方の端部に設けられるものであってもかまわない。
【0046】
また、シャワープレート100は、第2のガス供給路32に接続され、第1の水平面(P1)より上方に設けられる第2のマニフォールド132と、第2のマニフォールド132と第2の横方向ガス流路102とを第2の横方向ガス流路102の端部で接続し縦方向に延伸する第2の接続流路142を備えている。
【0047】
第2のマニフォールド132は、第2のガス供給路32から供給される第2のプロセスガスを、第2の接続流路142を介して複数の第2の横方向ガス流路102に分配する機能を備える。分配された第2のプロセスガスは、複数の第2の縦方向ガス流路122の第2のガス噴出孔112から反応室10に導入される。
【0048】
第2のマニフォールド132は、第2の横方向ガス流路102に直交する方向に延伸し、例えば、中空の直方体形状を備える。本実施の形態では、第2のマニフォールド132は、第2の横方向ガス流路102の両端部に設けられるが、いずれか一方の端部に設けられるものであってもかまわない。
【0049】
さらに、シャワープレート100は、第3のガス供給路33に接続され、第1の水平面(P1)より上方に設けられる第3のマニフォールド133と、第3のマニフォールド133と第3の横方向ガス流路103とを第3の横方向ガス流路103の端部で接続し垂直方向に延伸する第3の接続流路143を備えている。
【0050】
第3のマニフォールド133は、第3のガス供給路33から供給される第3のプロセスガスを、第3の接続流路143を介して複数の第3の横方向ガス流路103に分配する機能を備える。分配された第3のプロセスガスは、複数の第3の縦方向ガス流路123の第3のガス噴出孔113から反応室10に導入される。
【0051】
一般にシャワープレートにプロセスガスの供給口として設けられるガス噴出孔から、反応室10内に噴出するプロセスガスの流量は、成膜の均一性を確保する観点から、各ガス噴出孔間で均一であることが望ましい。本実施の形態のシャワー
プレート100によれば、プロセスガスを複数の横方向ガス流路に分配し、さらに、縦方向ガス流路に分配してガス噴出孔から噴出させる。この構成により、簡便な構造で各ガス噴出孔間から噴出するプロセスガス流量の均一性を向上させることが可能となる。
【0052】
また、均一な成膜を行う観点から配置されるガス噴出孔の配置密度はできるだけ大きいことが望ましい。もっとも、本実施の形態のように、互いに平行な複数の横方向ガス流路を設ける構成では、ガス噴出孔の密度を大きくしようとすると、ガス噴出孔の配置密度と横方向ガス流路の内径との間にトレードオフが生じる。
【0053】
このため、横方向ガス流路の内径が小さくなることで横方向ガス流路の流体抵抗が上昇し、横方向ガス流路の伸長方向について、ガス噴出孔から噴出するプロセスガス流量の流量分布が大きくなり、各ガス噴出孔間から噴出するプロセスガス流量の均一性が悪化するおそれがある。
【0054】
本実施の形態によれば、第1の横方向ガス流路101、第2の横方向ガス流路102および第3の横方向ガス流路103を異なる水平面に設けた階層構造とする。この構造により、横方向ガス流路の内径拡大に対するマージンが向上する。したがって、ガス噴出孔の密度をあげつつ、横方向ガス流路の内径に起因する流量分布拡大を抑制する。よって、結果的に、反応室10内に噴出するプロセスガスの流量分布を均一化し、成膜の均一性を向上させることが可能となる。
【0055】
次に、本実施の形態の気相成長方法について、GaNをエピタキシャル成長させる場合を例に説明する。
【0056】
本実施の形態の気相成長方法は、
図1に示した枚葉型エピタキシャル成長装置を用いて行う。
【0057】
まず、反応室10内の支持部12に半導体ウェハWを載置する。ここで、例えば、反応室10のウェハ出入口のゲートバルブ(図示せず)を開きハンドリングアームにより、ロードロック室内の半導体ウェハWを反応室10内に搬送する。そして、半導体ウェハWは例えば突き上げピン(図示せず)を介して支持部12に載置され、ハンドリングアームはロードロック室に戻され、ゲートバルブは閉じられる。
【0058】
そして、図示しない真空ポンプを作動して反応室10内のガスをガス排出部26から排気して所定の真空度にする。ここで、支持部12に載置した半導体ウェハWは、加熱部16により所定温度に予備加熱している。さらに、加熱部16の加熱出力を上げて半導体ウェハWをエピタキシャル成長温度に昇温させる。
【0059】
そして、上記真空ポンプによる排気を続行すると共に、回転体ユニット14を所要の速度で回転させながら、第1ないし第3のガス噴出孔111、112、113から所定の第1ないし第3のプロセスガスを噴出する。第1のプロセスガスは、第1のガス供給路31から第1のマ
ニフォールド131、第1の接続流路141、第1の水平ガス流路101、第1の縦方向ガス流路121を経由して第1のガス噴出孔111から反応室10内に噴出される。また、第2のプロセスガスは、第2のガス供給路32から第2のマ
ニフォールド132、第2の接続流路142、第2の水平ガス流路102、第2の縦方向ガス流路122を経由して第2のガス噴出孔112から反応室10内に噴出される。また、第3のプロセスガスは、第3のガス供給路33から第3のマ
ニフォールド133、第3の接続流路143、第3の水平ガス流路103、第3の縦方向ガス流路123を経由して第3のガス噴出孔113から反応室10内に噴出される。
【0060】
半導体ウェハW上にGaNを成長させる場合、例えば、第1のプロセスガスは分離ガスである水素であり、第2のプロセスガスは窒素のソースガスであるアンモニアであり、第3のプロセスガスはキャリアガスである水素で希釈されたガリウムのソースガスであるTMGである。
【0061】
第1ないし第3のガス噴出孔111、112、113から噴出された第1ないし第3のプロセスガスは適度に混合されて半導体ウェハW上に整流状態で供給される。これにより、半導体ウェハW表面に、例えば、GaN(ガリウムナイトライド)の単結晶膜がエピタキシャル成長により形成される。
【0062】
そして、エピタキシャル成長終了時には、第1ないし第3のガス噴出孔111、112、113からの第1ないし第3のプロセスガスの噴出を停止し、半導体ウェハW上へのプロセスガスの供給が遮断され、単結晶膜の成長が終了される。
【0063】
成膜後は、半導体ウェハWの降温を始める。ここで、例えば、回転体ユニット14の回転を停止させ、単結晶膜が形成された半導体ウェハWを支持部12に載置したままにして、加熱部16の加熱出力を初めに戻し、予備加熱の温度に低下するよう調整する。
【0064】
次に、半導体ウェハWが所定の温度に安定した後、例えば突き上げピンにより半導体ウェハWを支持部12から脱着させる。そして、再びゲートバルブを開いてハンドリングアームをシャワー
プレート100および支持部12の間に挿入し、その上に半導体ウェハWを載せる。そして、半導体ウェハWを載せたハンドリングアームをロードロック室に戻す。
【0065】
以上のようにして、一回の半導体ウェハWに対する成膜が終了し、例えば、引き続いて他の半導体ウェハWに対する成膜が上述したのと同一のプロセスシーケンスに従って行うことも可能である。
【0066】
本実施の形態の気相成長方法では、
図1に示したエピタキシャル成長装置を用いることで、プロセスガスの流れを均一かつ安定にし、基板に膜厚や膜質等の均一性に優れた膜を形成することが可能となる。
【0067】
(第2の実施の形態)
本実施の形態の気相成長装置は、シャワー
プレートの第2の縦方向ガス流路の内径が、第1の縦方向ガス流路の内径よりも大きく、かつ、隣接する第2の縦方向ガス流路の間隔が、隣接する第1の縦方向ガス流路の間隔よりも小さい点、および、第2の横方向ガス流路の内径が、第1の横方向ガス流路の内径よりも大きい点で、第1の実施の形態と異なる。そして、第1のプロセスガスを供給する第1のガス供給路と、第1のプロセスガスよりも動粘度の小さい第2のプロセスガスを供給する第2のガス供給路とを備える。そして、第1の横方向ガス流路に第1のガス供給路が接続され、第2の横方向ガス流路に第2のガス供給路が接続される。以下、第1の実施の形態と重複する内容については、一部記述を省略する。
【0068】
本実施の形態によれば、動粘度の小さいプロセスガスの噴出時の流速を抑制することで、隣接するガス噴出孔から噴出される動粘度の高いプロセスガスの巻き込みを抑制することが可能となる。よって、プロセスガスの整流性が向上し、膜厚や膜質等の均一性の高い成膜を実現することが可能となる。
【0069】
図5は、本実施の形態のシャワープレートの模式上面図である。
図6は、
図5のEE断面図である。
【0070】
第1の実施の形態と同様、シャワープレート200の内部には、複数の第1の横方向ガス流路101、複数の第2の横方向ガス流路102、複数の第3の横方向ガス流路103が形成されている。複数の第1の横方向ガス流路101は、第1の水平面(P1)内に配置され互いに平行に延伸する。複数の第2の横方向ガス流路102は、第1の水平面より上方の第2の水平面(P2)内に配置され互いに平行に延伸する。複数の第3の横方向ガス流路103は、第1の水平面より上方、第2の水平面より下方の第3の水平面(P3)内に配置され互いに平行に延伸する。
【0071】
そして、第1の横方向ガス流路101に接続され縦方向に延伸し、反応室10側に第1のガス噴出孔111を有する複数の第1の縦方向ガス流路121を備える。また、第2の横方向ガス流路102に接続され縦方向に延伸し、反応室10側に第2のガス噴出孔112を有する複数の第2の縦方向ガス流路122を備える。第2の縦方向ガス流路122は、第1の横方向ガス流路1
01の間を通っている。さらに、第3の横方向ガス流路103に接続され縦方向に延伸し、反応室10側に第3のガス噴出孔113を有する複数の第3の縦方向ガス流路123を備える。第3の縦方向ガス流路123は、第1の横方向ガス流路1
01の間を通っている。
【0072】
ここで、第2の縦方向ガス流路102の内径が、第1の縦方向ガス流路101の内径よりも大きくなっている。なお、第3の縦方向ガス流路103の内径は、例えば、第1の縦方向ガス流路101の内径と同じである。そして、第1の縦方向ガス流路101の内径と第1のガス噴出孔111の径、第2の縦方向ガス流路102の内径と第2のガス噴出孔112の径、第3の縦方向ガス流路103の内径と第3のガス噴出孔113の径、はそれぞれ等しくなるよう形成されている。
【0073】
また、隣接する第2の縦方向ガス流路122の中心間の間隔が、隣接する第1の縦方向ガス流路121の中心間の間隔よりも小さい。いいかえれば、第2のガス噴出孔112の中心間の間隔は、第1のガス噴出孔111の中心間の間隔よりも狭い。ここで、隣接する第3の縦方向ガス流路123の中心間の間隔は、例えば、隣接する第1の縦方向ガス流路121の中心間の間隔に等しい。すなわち、第3のガス噴出孔113の中心間の間隔は、第1のガス噴出孔の中心間の間隔に等しい。
【0074】
さらに、第2の横方向ガス流路102の内径が、第1の横方向ガス流路101の内径よりも大きい。
【0075】
そして、本実施の形態のエピタキシャル成長装置は、
図1に示す第1の実施の形態のエピタキシャル成長装置と同様、第1のプロセスガスを供給する第1のガス供給路31と、第2のプロセスガスを供給する第2のガス供給路32と、第3のプロセスガスを供給する第3のガス供給路33と、を備える。
【0076】
第2のプロセスガスの動粘度は、第1のプロセスガスより小さい。また、第3のプロセスガスの動粘度は、例えば、第1のプロセスガスの動粘度と同等である。
【0077】
ここで、動粘度(ν)とは、流体の絶対粘度(μ)を密度(ρ)で割った値であり、
ν=μ/ρ
で表される。動粘度は定性的には流体そのものの動きにくさを表す指標となり、動粘度の小さい方が、流体が動きやすくなる。
【0078】
MOCVD法により、GaNの単結晶膜を半導体ウェハWに成膜する場合、例えば、第1のプロセスガスとして、水素(H
2)を分離ガスとして供給する。また、例えば、第2のプロセスガスとして、窒素(N)のソースガスとなるアンモニア(NH
3)を供給する。また、例えば、第3のプロセスガスとして、Ga(ガリウム)のソースガスとしてトリメチルガリウム(TMG)をキャリアガスである水素(H
2)で希釈したガスを供給する。
【0079】
この場合、第2のプロセスガスであるアンモニア(NH
3)は、第1のプロセスガスである水素(H
2)よりも、動粘度が小さい。
【0080】
GaNの成膜時には、第2のプロセスガスであるアンモニア(NH
3)は第2のガス噴出孔112から噴出され、第1のプロセスガスである水素(H
2)は隣接する第1のガス噴出孔111から噴出されることになる。この際、水素よりも動粘度の小さいアンモニアの噴出速度が、動粘度の大きい水素の噴出速度よりも速くなることでアンモニアの動圧が大きくなって、水素が引き寄せられることで乱流が生じ、プロセスガスの流れが悪化するおそれがある。
【0081】
ここで、全圧(P
0)、静圧(P)、流体の速度(v)、流体の密度(ρ)との間には以下の関係が成立する。
P+0.5ρv
2=P
0
ここで、0.5ρvが動圧である。流体の速度vが上がるほど動圧が大きくなり、静圧(P)が低下する、いわゆるベンチュリ効果が生ずる。例えば、アンモニアの流速が、分離ガスの水素の流速より大きいと、アンモニアを噴出するガス噴出孔近傍の静圧が下がり、水素が引き寄せられ乱流が生じやすくなる。
【0082】
本実施の形態では、動粘度が小さく流速が大きくなりやすい第2のプロセスガスが流れる第2の縦方向ガス流路122の内径を大きくし、かつ、間隔を狭めて数を増やす。これにより、動粘度の小さい第2のプロセスガス、ここではアンモニアの噴出速度を低下させる。したがって、動粘度の大きい第1のプロセスガス、ここでは水素の噴出速度との差が小さくなり乱流を抑制することが可能となる。
【0083】
もっとも、第2の縦方向ガス流路122の内径を大きくし、かつ、間隔を狭めて数を増やすことにより、第2の縦方向ガス流路122の流体抵抗が低下する。このため、第2の横方向ガス流路102の伸長方向のガス流量分布が大きくなり、成膜の均一性が低下するおそれがある。
【0084】
本実施の形態では、第2の横方向ガス流路102を第1の横方向ガス流路101よりも上側に設けることで、第2の縦方向ガス流路122の長さを第1の縦方向ガス流路121の長さよりも長くし、相対的に流体抵抗が高くなる構成としている。第2の縦方向ガス流路122の流体抵抗を高くすることにより、第2の横方向ガス流路102の伸長方向のガス流量分布を均一化することが可能となる。
【0085】
さらに、本実施の形態では、第2の横方向ガス流路102の内径が、第1の横方向ガス流路101の内径よりも大きい。第2の横方向ガス流路102の内径を大きくすることにより、第2の横方向ガス流路102の流体抵抗を小さくすることで、第2の横方向ガス流路102の伸長方向のガス流量分布を均一化することが可能となる。
【0086】
横方向ガス流路を階層構造にする場合、最上部の横方向ガス流路が最も内径拡大のマージンを大きくすることが可能となる。他の階層の縦方向ガス流路が間を通らないためである。このため、本実施の形態のように、3層以上の構造となる場合、動粘度の小さいプロセスガスが流れる横方向ガス流路を最上部に設けることが、ガス流量分布を均一化する観点から望ましい。
【0087】
なお、動粘度の小さい第2のプロセスガスの噴出速度を抑制するためには、動粘度が小さく流速が大きくなりやすい第2のプロセスガスが流れる第2の縦方向ガス流路122の内径を大きくするか、または、間隔を狭めて数を増やすかのいずれか一方のみを採用する構成としてもかまわない。
【0088】
本実施の形態の気相成長装置によれば、ガス噴出孔近傍における乱流の発生を抑制することで、プロセスガスの流れを均一かつ安定にし、基板に膜厚や膜質等の均一性に優れた膜を形成することが可能となる。
【0089】
次に、本実施の形態の気相成長方法について説明する。本実施の形態の気相成長方法は、第2の縦方向ガス流路の内径が、第1の縦方向ガス流路の内径よりも大きく、第2の横方向ガス流路の内径が、第1の横方向ガス流路の内径よりも大きく、第2の横方向ガス流路に第1の横方向ガス流路よりも動粘度の小さいプロセスガスを供給し、第2のガス噴出孔から第1のガス噴出孔から噴出されるガスよりも動粘度の小さいガスを噴出させること以外は、第1の実施の形態の気相成長方法と同様である。
【0090】
本実施の形態の気相成長方法は、
図5に示したシャワー
プレート200を備える枚葉型エピタキシャル成長装置を用いて行う。
【0091】
第2の横方向ガス流路102に第1の横方向ガス流路101よりも動粘度の小さいプロセスガスを供給し、第2のガス噴出孔112から第1のガス噴出孔から噴出されるガスよりも動粘度の小さいガスを噴出させる。
【0092】
GaNを成膜する場合、第1のガス噴出孔111からは分離ガスである水素(第1のプロセスガス)、第2のガス噴出孔112からは、水素よりも動粘度の小さい窒素のソースガスであるアンモニア(第2のプロセスガス)、第3のガス噴出孔113からはキャリアガスである水素で希釈されたガリウムのソースガスであるTMG(第3のプロセスガス)を噴出する。
【0093】
第1ないし第3のガス噴出孔111、112、113から噴出されたプロセスガスは、適度に混合されて半導体ウェハW上に整流状態で供給される。特に、動粘度の異なる水素とアンモニアの流れがベンチュリ効果により乱流となることを抑制する。これにより、半導体ウェハW表面に、GaN(窒化ガリウム)の単結晶膜が均一性良くエピタキシャル成長により形成される。
【0094】
本実施の形態の気相成長方法では、ガス噴出孔近傍における乱流の発生を抑制することで、プロセスガスの流れを均一かつ安定にし、基板に膜厚や膜質等の均一性に優れた膜を形成することが可能となる。
【0095】
本実施の形態の変形例の気相成長装置は、反応室と、反応室の上部に配置され、反応室内にガスを供給するシャワープレートと、反応室内のシャワープレート下方に設けられ、基板を載置可能な支持部とを備える気相成長装置である。そして、シャワープレートが、水平面内に配置され互いに平行に延伸する複数の第1の横方向ガス流路と、第1の横方向ガス流路に接続され縦方向に延伸し反応室側に第1のガス噴出孔を有する複数の第1の縦方向ガス流路を備える。また、上記水平面内に配置され第1の横方向ガス流路と同一方向に互いに平行に延伸する複数の第2の横方向ガス流路と、第2の横方向ガス流路に接続され縦方向に延伸し反応室側に第2のガス噴出孔を有する複数の第2の縦方向流路とを備える。
【0096】
さらに、第1のプロセスガスを供給する第1のガス供給路と、第1のプロセスガスよりも動粘度の小さい第2のプロセスガスを供給する第2のガス供給路とをさらに備え、第1の横方向ガス流路に第1のガス供給路が接続され、第2の横方向ガス流路に第2のガス供給路が接続される。そして、第2の縦方向ガス流路の内径が、第1の縦方向ガス流路の内径よりも大きい、または、隣接する第2の縦方向ガス流路の間隔が、隣接する第1の縦方向ガス流路の間隔よりも小さい。
【0097】
本変形例は、第1および第2の横方向ガス流路が、同一水平面に配置され、階層構造を備えない点で上記実施の形態と異なっている。本変形例においても、ガス噴出孔近傍における乱流の発生を抑制することで、プロセスガスの流れを均一かつ安定にし、基板に膜厚や膜質等の均一性に優れた膜を形成することが可能となる。
【0098】
なお、流量分布を均一にする観点から、第2の横方向ガス流路の内径が、第1の横方向ガス流路の内径よりも大きいことが望ましい。
【0099】
また、流量分布を均一にする観点から、第2の縦方向ガス流路の内径が、第1の縦方向ガス流路の内径よりも大きい、かつ、隣接する第2の縦方向ガス流路の間隔が、隣接する第1の縦方向ガス流路の間隔よりも小さいことが望ましい。
【0100】
本実施の形態の気相成長装置は、接続される第1の縦方向ガス流路の数がk(kは1以上の整数)個である第1の横方向ガス流路(k)と、n(k<n、nは2以上の整数)個である第1の横方向ガス流路(n)とが存在し、第1の横方向ガス流路(k)に接続される第1の接続流路の流体抵抗が、第1の横方向ガス流路(n)に接続される第1の接続流路の流体抵抗よりも大きい。または、接続される第2の縦方向ガス流路の数がk(kは1以上の整数)個である第2の横方向ガス流路(k)と、
n(k<n、nは2以上の整数)個である第2の横方向ガス流路(n)とが存在し、第2の横方向ガス流路(k)に接続される第2の接続流路の流体抵抗が、第2の横方向ガス流路(n)に接続される第2の接続流路の流体抵抗よりも大きい。上記以外の点については、第1の実施の形態と同様である。したがって、第1の実施の形態と重複する内容については、一部記述を省略する。
【0101】
本実施の形態によれば、第1または第2の横方向ガス流路にプロセスガスを導入する第1または第2の接続流路の流体抵抗を調整することで、複数の第1または第2の横方向ガス流路の間で噴出するガスの流量に差が生じることを抑制する。よって、プロセスガスの流量分布が均一化し、膜厚や膜質等の均一性の高い成膜を実現することが可能となる。
【0102】
図7は、本実施の形態のシャワープレートの模式上面図である。
図8は、
図7のFF断面図である。
【0103】
第1の実施の形態と同様、シャワープレート300の内部には、複数の第1の横方向ガス流路101
a、101b、複数の第2の横方向ガス流路102、複数の第3の横方向ガス流路103が形成されている。複数の第1の横方向ガス流路101
a、101bは、第1の水平面(P1)内に配置され互いに平行に延伸する。複数の第2の横方向ガス流路102は、第1の水平面より上方の第2の水平面(P2)内に配置され互いに平行に延伸する。複数の第3の横方向ガス流路103は、第1の水平面より上方、第2の水平面より下方の第3の水平面(P3)内に配置され互いに平行に延伸する。
【0104】
そして、第1の横方向ガス流路101
a、101bに接続され縦方向に延伸し、反応室10側に第1のガス噴出孔111を有する複数の第1の縦方向ガス流路121を備える。また、第2の横方向ガス流路102に接続され縦方向に延伸し、反応室10側に第2のガス噴出孔112を有する複数の第2の縦方向ガス流路122を備える。第2の縦方向ガス流路122は、第1の横方向ガス流路
101a、101bの間を通っている。さらに、第3の横方向ガス流路103に接続され縦方向に延伸し、反応室10側に第3のガス噴出孔113を有する複数の第3の縦方向ガス流路123を備える。第3の縦方向ガス流路123は、第1の横方向ガス流路
101a、101bの間を通っている。
【0105】
シャワー
プレート300には、接続される第1の縦方向ガス流路の数が3個である第1の横方向ガス流路(3)101aと、7個である第1の横方向ガス流路(7)101bとが存在する。そして、第1の横方向ガス流路(3)101aに接続される第1の接続流路141aの流体抵抗が、第1の横方向ガス流路(7)101bに接続される第1の接続流路141
bの流体抵抗よりも大きくなっている。具体的には、第1の接続流路(3)141aの内径を、第1の接続流路(7)141bの内径よりも小さくすることにより、第1の接続流路(3)141aの流体抵抗を大きくしている。
【0106】
縦方向ガス流路の数が少ない、すなわちガス噴出孔の少ない横方向ガス流路では、縦方向ガス流路の数が多い、すなわちガス噴出孔の多い横方向ガス流路に比較して、ガス噴出孔から噴出するプロセスガスの流量が大きくなるおそれがある。本実施の形態のように、接続流路の流体抵抗を縦方向ガス流路の数によって調整することにより、縦方向ガス流路の数に依存するプロセスガスの流量のばらつきを抑制することが可能となる。したがって、噴出するプロセスガスの流量を均一化することが可能となる。
【0107】
なお、ここでは、第1の縦方向ガス流路、第1の横方向ガス流路、第1の接続流路について説明したが、同様の形態を、第2の縦方向ガス流路、第2の横方向ガス流路、第2の接続流路、または、第3の縦方向ガス流路、第3の横方向ガス流路、第3の接続流路について採用することも可能である。
【0108】
また、ここでは、k=3、n=7の場合について説明したが、kが1以上の整数で、k<n、nが2以上の整数であれば、その他の値を採ることも可能である。また、横方向ガス流路に接続される縦方向ガス流路の個数のバリエーションは、2通りに限らず、3通り以上であってもかまわない。
【0109】
また、ここでは接続流路の内径を変えることで接続流路の流体抵抗を調整する場合を例に説明したが、例えば、接続流路を複数にしてその数を変えたり、オリフィスを設けたりすることで流体抵抗を調整することも可能である。
【0110】
図9は、接続流路の内径で流体抵抗を調整する効果を示すシミュレーション結果である。横軸はガス噴出孔の位置、縦軸はガス噴出孔から噴出するガス流量である。ガス噴出孔の位置は2次元上の位置を、便宜的に1次元上に表している。
【0111】
図中、×マークが1本の横方向ガス流路に接続される縦方向ガス流路の数に関わりなく接続流路の内径を等しくした場合である。点線で囲まれるマークが、接続される縦方向ガス流路の数が少ない横方向ガス流路のデータである。他の位置に比べ、噴出するガスの流量が多いことがわかる。
【0112】
これに対し、○印は、接続される縦方向ガス流路の数が少ない横方向ガス流路について、接続流路の内径を小さくした場合である。縦方向ガス流路の数が少ない横方向ガス流路では、噴出するガスの流量が減少し、その他の横方向ガス流路では噴出するガスの流量が増加している。結果的に、噴出するガスの流量が横方向ガス流路間で均一化されている。
【0113】
本実施の形態の変形例の気相成長装置は、反応室と、反応室の上部に配置され、反応室内にガスを供給するシャワープレートと、反応室内のシャワープレート下方に設けられ、基板を載置可能な支持部とを備える気相成長装置である。そして、シャワープレートが、水平面内に配置され互いに平行に延伸する複数の横方向ガス流路と、横方向ガス流路に接続され縦方向に延伸し反応室側にガス噴出孔を有する縦方向ガス流路とを備える。
【0114】
そして、接続される縦方向ガス流路の数がk(kは1以上の整数)個である第1の横方向ガス流路(k)と、n(k<n、nは2以上の整数)個である第1の横方向ガス流路(n)とが存在し、第1の横方向ガス流路(k)に接続される第1の接続流路の流体抵抗が、第1の横方向ガス流路(n)に接続される第1の接続流路の流体抵抗よりも大きい。
【0115】
本変形例は、必ずしも、異なる水平面に設けられる階層構造の第1と第2の横方向ガス流路を前提としない点で、上記実施の形態と異なっている。本変形例においても、接続流路の流体抵抗を縦方向ガス流路の数によって調整することにより、縦方向ガス流路の数に依存するプロセスガスの流量のばらつきを抑制することが可能となる。したがって、噴出するプロセスガスの流量を均一化することが可能となる。
【0116】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。上記、実施の形態はあくまで、例として挙げられているだけであり、本発明を限定するものではない。また、各実施の形態の構成要素を適宜組み合わせてもかまわない。
【0117】
例えば、実施の形態では横方向ガス流路等の流路を3系統設ける場合を例に説明したが、横方向ガス流路等の流路を4系統以上設けても、2系統であってもかまわない。
【0118】
また、例えば、実施の形態では、GaN(窒化ガリウム)の単結晶膜を成膜する場合を例に説明したが、例えば、Si(珪素)やSiC(炭化珪素)の単結晶膜等の成膜にも本発明を適用することが可能である。
【0119】
また、動粘度の比較的大きいプロセスガスについては水素(H
2)を例に説明したが、その他、例えば、ヘリウム(He)も動粘度の大きいプロセスガスとして挙げることができる。また、動粘度の比較的小さいプロセスガスとして、アンモニア(NH
3)を例に説明したが、その他、例えば、窒素(N
2)やアルゴン(Ar)も動粘度の小さいプロセスガスとして挙げることが可能である。
【0120】
また、実施の形態では、ウェハ1枚毎に成膜する枚葉式のエピタキシャル装置を例に説明したが、気相成長装置は、枚葉式のエピタキシャル装置に限られるものではない。例えば、自公転する複数のウェハに同時に成膜するプラネタリー方式のCVD装置等にも、本発明を適用することが可能である。
【0121】
実施の形態では、装置構成や製造方法等、本発明の説明に直接必要としない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や製造方法等を適宜選択して用いることができる。その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての気相成長装置および気相成長方法は、本発明の範囲に包含される。本発明の範囲は、特許請求の範囲およびその均等物の範囲によって定義されるものである。