(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記光学画像のパターンの寸法から、前記試料の面内における前記パターンの寸法分布を求める工程は、任意の大きさのブロック単位で前記パターンの寸法の平均値を算出して前記寸法分布を求める工程であることを特徴とする請求項1に記載の検査方法。
前記欠陥が検出された光学画像から欠陥が検出されない場合には、該光学画像について保存された前記欠陥に関する情報を、再比較によって欠陥が検出された光学画像の欠陥に関する情報と区別して保存することを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の検査方法。
前記参照画像を再生成する工程では、前記試料の面内における前記パターンの寸法分布と併せて、前記光学画像のパターンの寸法を測定するのに使用した装置のオフセット量が反映されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の検査方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来のマスク検査では、もっぱらパターンの形状欠陥を検出することを目的としており、それに適した欠陥判定のアルゴリズムや、欠陥の記録方法が工夫されてきた。また、マスク検査装置においては、パターンの線幅変動に起因するLSIの製造マージン不足が課題とされていることに対応して、線幅変動による欠陥を検出する機能が充実してきている。しかし、最近のマスクパターンにおいては、形状欠陥や線幅変動として指摘されるべき欠陥の寸法が、マスク全面での線幅変動(線幅分布)と同等程度になってきている。このため、検出される欠陥の数が膨大になるという問題があった。
【0006】
また、欠陥検出をする手法の1つとして、ダイ−トゥ−データベース(Die to Database)比較方式がある。この方式は、マスク製造に使用された設計パターンデータから生成される参照画像と、マスク上の実際のパターンの光学画像とを比較する検査方法である。具体的には、両者の画像信号の差分信号を求め、その差分信号が大きい部位に欠陥があると判定する。このとき、差分信号には、パターンの形成誤差や画像取得時の検出誤差に伴うノイズが含まれる。このため、欠陥判定においては、パターン欠陥によって生じる差分信号をノイズと如何にして分離するかが重要となるが、これは欠陥検出の感度とトレードオフの関係にある。つまり、欠陥判定の閾値を大きく設定すると、ノイズは低減されるが、本来検出されるべき欠陥が見逃されるおそれがある。一方、欠陥判定の閾値を小さく設定すると、ノイズによる疑似欠陥を検出する結果となり、検出する必要のない形状や線幅を欠陥としてしまうおそれがある。
【0007】
本発明は、こうした問題に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、疑似欠陥を低減しつつ微細な欠陥を検出することのできる検査方法および検査装置を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的および利点は、以下の記載から明らかとなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様は、試料に形成されたパターンの光学画像を取得する工程と、
前記光学画像に対応する参照画像を生成する工程と、
前記光学画像と前記参照画像とをダイ−トゥ−データベース方式によって比較し、欠陥が検出された光学画像について該欠陥に関する情報を保存する工程と、
前記参照画像に前記試料の面内における前記パターンの寸法分布を反映させて参照画像を再生成する工程と、
前記ダイ−トゥ−データベース方式による比較で欠陥が検出された光学画像と、該光学画像に対応する前記再生成された参照画像とを、ダイ−トゥ−データベース方式によって再比較し、前記欠陥が検出された光学画像から再度欠陥が検出された場合には該欠陥に関する情報を保存し、前記欠陥が検出された光学画像から欠陥が検出されない場合には、該光学画像には欠陥がないとする工程とを有することを特徴とする検査方法に関する。
【0010】
本発明の第1の態様は、前記光学画像のパターンの寸法を測定する工程と、
前記光学画像のパターンの寸法から、前記試料の面内における前記パターンの寸法分布を求める工程とを有することが好ましい。
この場合、任意の大きさのブロック単位で前記パターンの寸法の平均値を算出して前記寸法分布を求めることが好ましい。
【0011】
本発明の第1の態様において、前記寸法分布を求める工程は、前記光学画像を取得する工程と並行して行われることが好ましい。
【0012】
本発明の第1の態様において、前記欠陥が検出された光学画像から欠陥が検出されない場合には、該光学画像について保存された前記欠陥に関する情報を削除することが好ましい。
【0013】
本発明の第1の態様において、前記欠陥が検出された光学画像から欠陥が検出されない場合には、該光学画像について保存された前記欠陥に関する情報を、再比較によって欠陥が検出された光学画像の欠陥に関する情報と区別して保存することが好ましい。
【0014】
本発明の第1の態様において、前記参照画像を再生成する工程では、前記試料の面内における前記パターンの寸法分布と併せて、前記光学画像のパターンの寸法を測定するのに使用した装置のオフセット量が反映されることが好ましい。
【0015】
本発明の第2の態様は、試料に形成されたパターンの光学画像を取得する光学画像取得部と、
前記光学画像に対応する参照画像を生成する参照画像生成部と、
前記光学画像と前記参照画像とをダイ−トゥ−データベース方式によって比較する比較部と、
前記比較部で欠陥が検出された光学画像について該欠陥に関する情報を保存する保存部とを有し、
前記参照画像生成部は、前記参照画像に前記試料の面内における前記パターンの寸法分布を反映させて参照画像を再生成し、
前記比較部は、前記ダイ−トゥ−データベース方式による比較で欠陥が検出された光学画像と、該光学画像に対応する前記再生成された参照画像とを、ダイ−トゥ−データベース方式によって再比較し、
前記欠陥が検出された光学画像から再度欠陥が検出された場合には、該欠陥に関する情報が前記保存部に保存され、前記欠陥が検出された光学画像から欠陥が検出されない場合には、該光学画像について保存された前記欠陥に関する情報が削除されることを特徴とする検査装置に関する。
【0016】
本発明の第2の態様において、前記試料の面内における前記パターンの寸法分布は外部から入力されることが好ましい。
【0017】
本発明の第2の態様は、前記光学画像のパターンの寸法を測定する寸法測定部と、
前記光学画像のパターンの寸法から、前記試料の面内における前記パターンの寸法分布を求める寸法分布取得部とを有することが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の第1の態様によれば、疑似欠陥を低減しつつ微細な欠陥を検出することのできる検査方法が提供される。
【0019】
本発明の第2の態様によれば、疑似欠陥を低減しつつ微細な欠陥を検出することのできる検査装置が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本実施の形態における検査装置の概略構成図である。また、
図2は、
図1の検査装置におけるデータの流れを示す図である。尚、これらの図では、本実施の形態で必要な構成部を記載しているが、検査に必要な他の公知の構成部が含まれていてもよい。また、本明細書において、「〜部」または「〜回路」と記載したものは、コンピュータで動作可能なプログラムにより構成することができるが、ソフトウェアとなるプログラムだけではなく、ハードウェアとソフトウェアとの組合せやファームウェアとの組合せによって実施されるものであってもよい。プログラムにより構成される場合、プログラムは、磁気ディスク装置などの記録装置に記録される。
【0022】
本実施の形態においては、フォトリソグラフィ法などで使用されるマスクを検査対象としているが、これに限られるものではなく、例えば、ウェハを検査対象としてもよい。
【0023】
図1に示すように、検査装置100は、光学画像取得部を構成する構成部Aと、構成部Aで取得された光学画像を用いて検査に必要な処理等を行う構成部Bとを有する。
【0024】
構成部Aは、光源103と、水平方向(X方向、Y方向)および回転方向(θ方向)に移動可能なXYθテーブル102と、透過照明系を構成する照明光学系170と、拡大光学系104と、フォトダイオードアレイ105と、センサ回路106と、レーザ測長システム122と、オートローダ130とを有する。
【0025】
構成部Aでは、検査対象となるマスク101の光学画像、すなわち、マスク採取データ204が取得される。マスク採取データ204は、マスク101の設計パターンデータに含まれる図形データに基づく図形が描画されたマスクの画像である。例えば、マスク採取データ204は、8ビットの符号なしデータであって、各画素の明るさの階調を表現する。
【0026】
マスク101は、オートローダ130により、XYθテーブル102上に載置される。尚、オートローダ130はオートローダ制御回路113によって駆動され、オートローダ制回路113は制御計算機110によって制御される。マスク101がXYθテーブル102の上に載置されると、マスク101に形成されたパターンに対し、XYθテーブル102の上方に配置された光源103から光が照射される。より詳しくは、光源103から照射される光束が、照明光学系170を介してマスク101に照射される。マスク101の下方には、拡大光学系104、フォトダイオードアレイ105およびセンサ回路106が配置されている。マスク101を透過した光は、拡大光学系104を介して、フォトダイオードアレイ105に光学像として結像する。
【0027】
拡大光学系104は、図示しない自動焦点機構によって自動的に焦点調整がなされるように構成されていてもよい。さらに、図示しないが、検査装置100は、マスク101の下方から光を照射し、反射光を拡大光学系を介してフォトダイオードアレイに導く構成としてもよい。この構成によれば、透過光と反射光による各光学画像を同時に取得することが可能である。
【0028】
フォトダイオードアレイ105上に結像したマスク101のパターン像は、フォトダイオードアレイ105によって光電変換され、さらにセンサ回路106によってA/D(アナログデジタル)変換される。フォトダイオードアレイ105には、センサ(図示せず)が配置されている。このセンサの例としては、TDI(Time Delay Integration)センサなどが挙げられる。この場合、XYθテーブル102が連続的に移動しながら、TDIセンサによってマスク101のパターンが撮像される。ここで、光源103、拡大光学系104、フォトダイオードアレイ105およびセンサ回路106により高倍率の検査光学系が構成される。
【0029】
構成部Bでは、検査装置100全体の制御を司る制御部としての制御計算機110が、データ伝送路となるバス120を介して、位置回路107、比較部の一例であって、第1の比較部108aと第2の比較部108bとを有する比較回路108、参照画像生成部の一例となる参照回路112、展開回路111、寸法取得部の一例となる寸法測定回路125、寸法分布取得部の一例となるマップ作成回路126、オートローダ制御回路113、テーブル制御回路114、保存部の一例となる磁気ディスク装置109、磁気テープ装置115およびフレキシブルディスク装置116、CRT117、パターンモニタ118並びにプリンタ119に接続されている。XYθテーブル102は、テーブル制御回路114によって制御されたX軸モータ、Y軸モータおよびθ軸モータによって駆動される。これらの駆動機構には、例えば、エアスライダと、リニアモータやステップモータなどとを組み合わせて用いることができる。
【0030】
図1で「〜部」または「〜回路」と記載したものは、既に述べたように、コンピュータで動作可能なプログラムにより構成することができるが、ソフトウェアとなるプログラムだけではなく、ハードウェアとソフトウェアとの組合せやファームウェアとの組合せによって実施されるものであってもよい。プログラムにより構成される場合、プログラムは、磁気ディスク装置109に記録されることができる。例えば、オートローダ制御回路113、テーブル制御回路114、比較回路108および位置回路107内の各回路は、電気的回路で構成されてもよく、制御計算機110によって処理することのできるソフトウェアとして実現されてもよい。また、電気的回路とソフトウェアの組み合わせによって実現されてもよい。
【0031】
制御計算機110は、テーブル制御回路114を制御して、XYθテーブル102を駆動する。XYθテーブル102の移動位置は、レーザ測長システム122により測定されて位置回路107に送られる。
【0032】
また、制御計算機110は、オートローダ制御回路113を制御して、オートローダ130を駆動する。オートローダ130は、マスク101を自動的に搬送し、検査終了後には自動的にマスク101を搬出する。
【0033】
データベース方式の基準データとなる設計パターンデータは、磁気ディスク装置109に格納されており、検査の進行に合わせて読み出されて展開回路111に送られる。ここで、設計パターンデータについて、
図2を参照しながら説明する。
【0034】
図2に示すように、設計者(ユーザ)が作成したCADデータ201は、OASISなどの階層化されたフォーマットの設計中間データ202に変換される。設計中間データ202には、レイヤ(層)毎に作成されて各マスクに形成される設計パターンデータが格納される。ここで、一般に、検査装置は、OASISデータを直接読み込めるようには構成されていない。すなわち、検査装置の製造メーカー毎に、独自のフォーマットデータが用いられている。このため、OASISデータは、レイヤ毎に各検査装置に固有のフォーマットデータ203に変換された後に検査装置100に入力される。この場合、フォーマットデータ203は、検査装置100に固有のデータとすることができるが、描画装置と互換性のあるデータとすることもできる。
【0035】
フォーマットデータ203は、
図1の磁気ディスク装置109に入力される。すなわち、マスク101のパターン形成時に用いた設計パターンデータは、磁気ディスク装置109に記憶される。
【0036】
設計パターンに含まれる図形は、長方形や三角形を基本図形としたものである。磁気ディスク装置109には、例えば、図形の基準位置における座標(x、y)、辺の長さ、長方形や三角形等の図形種を区別する識別子となる図形コードといった情報であって、各パターン図形の形、大きさ、位置等を定義した図形データが格納される。
【0037】
さらに、数百μm程度の範囲に存在する図形の集合を一般にクラスタまたはセルと称するが、これを用いてデータを階層化することが行われている。クラスタまたはセルには、各種図形を単独で配置したり、ある間隔で繰り返し配置したりする場合の配置座標や繰り返し記述も定義される。クラスタまたはセルデータは、さらにストライプと称される、幅が数百μmであって、長さがマスク101のX方向またはY方向の全長に対応する100mm程度の短冊状領域に配置される。
【0038】
入力された設計パターンデータは、磁気ディスク装置109から制御計算機110を通して展開回路111によって読み出される。
【0039】
展開回路111では、設計パターンデータがイメージデータ(ビットパターンデータ)に変換される。すなわち、展開回路111は、設計パターンデータを図形毎のデータにまで展開し、その図形データの図形形状を示す図形コード、図形寸法などを解釈する。そして、所定の量子化寸法のグリッドを単位とするマス目内に配置されるパターンとして、2値ないしは多値のイメージデータに展開される。さらに、センサ画素に相当する領域(マス目)毎に設計パターンにおける図形が占める占有率が演算され、各画素内の図形占有率が画素値となる。
【0040】
展開回路111で変換されたイメージデータは、参照画像生成部としての参照回路112に送られて、参照画像(参照データとも称する。)の生成に用いられる。
【0041】
センサ回路106から出力されたマスク採取データ204は、位置回路107から出力されたXYθテーブル102上でのマスク101の位置を示すデータとともに、比較回路108に送られる。また、上述した参照画像も比較回路108に送られる。
【0042】
比較回路108では、マスク採取データ204と参照データとが、適切な比較判定アルゴリズムを用いて比較される。
図1の構成であれば、透過画像同士での比較となるが、反射光学系を用いた構成であれば、反射画像同士での比較、あるいは、透過と反射を組み合わせた比較判定アルゴリズムが用いられる。比較の結果、両者の差異が所定の閾値を超えた場合には、その箇所が欠陥と判定される。
【0043】
ストライプは、適当なサイズに分割されてサブストライプとなる。そして、マスク採取データ204から切り出されたサブストライプと、マスク採取データ204に対応する参照画像から切り出されたサブストライプとが、比較回路108内の比較ユニットに投入される。投入されたサブストライプは、さらに検査フレームと称される矩形の小領域に分割され、比較ユニットにおいてフレーム単位で比較されて欠陥が検出される。比較回路108には、複数の検査フレームが同時に並列して処理されるよう、数十個の比較ユニットが装備されている。各比較ユニットは、1つの検査フレームの処理が終わり次第、未処理のフレーム画像を取り込む。これにより、多数の検査フレームが順次処理されていく。
【0044】
比較ユニットでの処理は、具体的には次のようにして行われる。まず、センサフレーム画像と、参照フレーム画像とを位置合わせする。このとき、パターンのエッジ位置や、輝度のピークの位置が揃うように、センサ画素単位で平行シフトさせる他、近隣の画素の輝度値を比例配分するなどして、センサ画素未満の合わせ込みも行う。位置合わせを終えた後は、センサフレーム画像と参照フレーム画像との画素毎のレベル差を評価したり、パターンエッジ方向の画素の微分値同士を比較したりするなどして、適切な比較アルゴリズムにしたがって欠陥を検出していく。尚、本明細書においては、センサフレーム画像と参照フレーム画像との比較を、単に光学画像と参照画像との比較と称することがある。
【0045】
本実施の形態において、マスク採取データ204は、寸法測定回路125へも送られる。また、位置回路107からは、XYθテーブル102上でのマスク101の位置を示すデータが寸法測定回路125へ送られる。寸法測定回路125では、マスク採取データ204から、マスク101に描画されたパターンの寸法(Critical Dimension;以下、CDと称す。)が測定される。例えば、ラインパターンであれば、その線幅が測定される。
【0046】
寸法測定回路125におけるパターンの寸法測定は、マスク101の光学画像を取得するのと並行して行われる。但し、これに限られるものではなく、例えば、後述する第1の比較部108aで検査を行うのと並行して、寸法測定回路125でパターンの寸法測定を行ってもよい。
【0047】
寸法測定回路125は、本発明の寸法取得部の一例であり、本実施の形態では、線幅に代えてラインパターン間のスペース幅、すなわち、線間距離を測定してもよく、線幅と線間距離の両方の寸法を求めてもよい。さらに、寸法測定回路125へ参照回路112から参照データを送り、光学画像のラインパターンに対応するパターンの線幅を測定して、光学画像におけるパターン線幅と参照画像におけるパターン線幅との寸法差(ΔCD)または寸法比率を求めてもよく、また、線間距離の寸法差または寸法比率を求めてもよい。あるいは、これらの任意の組み合わせとすることもできる。
【0048】
線幅は、例えば、マスク101のパターンを分割して複数の検査領域を形成し、各検査領域の光学画像について画素毎の線幅を求め、次いで、得られた線幅の度数を集計して、その度数分布の集計結果から線幅の平均値を計算することにより求められる。また、この平均値と参照画像から求めた線幅とから、線幅の寸法差や寸法比率を求めることもできる。
【0049】
寸法測定回路125で得られたCD値は、寸法分布取得部としてのマップ作成回路126へ送られる。マップ作成回路126では、送られたCD値を基に、例えば、マスク101の面内におけるパターン線幅の寸法マップ(CDマップ)が作成される。作成されたCDマップは、磁気ディスク装置109に保存される。尚、検査装置100は、必ずしもマップ作成回路126を有している必要はなく、寸法測定回路125がマップ作成機能を有していてもよく、あるいは、外部の計算機などによってマップを作成し、これを検査装置100に入力してもよい。さらに、マップを作成せずに、寸法測定回路125で得られたCD値を用いて、後述する再検査を行うことも可能である。
【0050】
次に、
図1の検査装置100を用いてマスク101を検査する方法の一例を述べる。
【0052】
図1の構成部Aにおいて、マスク101の光学画像が取得される。
図3は、マスク101に形成されたパターンの欠陥を検出するための光学画像の取得手順を説明する図である。尚、既に述べたように、光学画像は、
図2のマスク採取データ204に対応する。
【0053】
図3でマスク101は、
図1のXYθテーブル102の上に載置されているものとする。また、マスク101上の検査領域は、
図3に示すように、短冊状の複数の検査領域、すなわち、ストライプ20
1,20
2,20
3,20
4,・・・に仮想的に分割されている。各ストライプは、例えば、幅が数百μmであって、長さがマスク101のX方向またはY方向の全長に対応する100mm程度の領域とすることができる。
【0054】
光学画像は、ストライプ毎に取得される。すなわち、
図3で光学画像を取得する際には、各ストライプ20
1,20
2,20
3,20
4,・・・が連続的に走査されるように、XYθテーブル102の動作が制御される。具体的には、XYθテーブル102が
図3の−X方向に移動しながら、マスク101の光学画像が取得される。そして、
図1のフォトダイオードアレイ105に、
図3に示されるような走査幅Wの画像が連続的に入力される。すなわち、第1のストライプ20
1における画像を取得した後、第2のストライプ20
2における画像を取得する。この場合、XYθテーブル102が−Y方向にステップ移動した後、第1のストライプ20
1における画像の取得時の方向(−X方向)とは逆方向(X方向)に移動しながら光学画像を取得して、走査幅Wの画像がフォトダイオードアレイ105に連続的に入力される。第3のストライプ20
3における画像を取得する場合には、XYθテーブル102が−Y方向にステップ移動した後、第2のストライプ20
2における画像を取得する方向(X方向)とは逆方向、すなわち、第1のストライプ20
1における画像を取得した方向(−X方向)に、XYθテーブル102が移動する。尚、
図3の矢印は、光学画像が取得される方向と順序を示しており、斜線部分は、光学画像の取得が済んだ領域を表している。
【0055】
図1のフォトダイオードアレイ105上に結像したパターンの像は、フォトダイオードアレイ105によって光電変換され、さらにセンサ回路106によってA/D(アナログデジタル)変換される。その後、光学画像は、センサ回路106から
図1の比較回路108へ送られる。
【0056】
尚、A/D変換されたセンサデータは、画素毎にオフセット・ゲイン調整可能なデジタルアンプ(図示せず)に入力される。デジタルアンプの各画素用のゲインは、キャリブレーション工程で決定される。例えば、透過光用のキャリブレーション工程においては、センサが撮像する面積に対して十分に広いマスク101の遮光領域を撮影中に、黒レベルを決定する。次いで、センサが撮像する面積に対して十分に広いマスク101の透過光領域を撮影中に、白レベルを決定する。このとき、検査中の光量変動を見越して、例えば、白レベルと黒レベルの振幅が8ビット階調データの約4%から約94%に相当する10〜240に分布するよう、画素毎にオフセットとゲインを調整する。
【0057】
<参照画像生成工程>
(1)記憶工程
ダイ−トゥ−データベース比較方式による検査の場合、欠陥判定の基準となるのは、設計パターンデータから生成する参照画像である。検査装置100では、マスク101のパターン形成時に用いた設計パターンデータが磁気ディスク装置109に記憶される。
【0058】
(2)展開工程
展開工程においては、
図1の展開回路111が、磁気ディスク装置109から制御計算機110を通して設計パターンデータを読み出し、読み出されたマスク101の設計パターンデータを2値ないしは多値のイメージデータ(設計画像データ)に変換する。このイメージデータは参照回路112に送られる。
【0059】
(3)フィルタ処理工程
フィルタ処理工程では、
図1の参照回路112によって、図形のイメージデータである設計パターンデータに適切なフィルタ処理が施される。その理由は、次の通りである。
【0060】
マスク101のパターンは、その製造工程でコーナーの丸まりや線幅の仕上がり寸法などが加減されており、設計パターンと厳密には一致しない。また、
図1のセンサ回路106から得られた光学画像としてのマスク採取データ204は、拡大光学系104の解像特性やフォトダイオードアレイ105のアパーチャ効果などによってぼやけた状態、言い換えれば、空間的なローパスフィルタが作用した状態にある。
【0061】
そこで、検査に先だって検査対象となるマスクを観察し、その製造プロセスや検査装置の光学系による変化を模擬したフィルタ係数を学習して、設計パターンデータに2次元のデジタルフィルタをかける。このようにして、参照画像に対し光学画像に似せる処理を行う。
【0062】
フィルタ係数の学習は、製造工程で決められた基準となるマスクのパターンを用いて行ってもよく、また、検査対象となるマスク(本実施の形態ではマスク101)のパターンの一部を用いて行ってもよい。後者であれば、学習に用いられた領域のパターン線幅やコーナーの丸まりの仕上がり具合を踏まえたフィルタ係数が取得され、マスク全体の欠陥判定基準に反映されることになる。
【0063】
尚、検査対象となるマスクを使用する場合、製造ロットのばらつきや、検査装置のコンディション変動といった影響を排除したフィルタ係数の学習ができるという利点がある。しかし、マスク面内で寸法変動があると、学習に用いた箇所に対しては最適なフィルタ係数になるが、他の領域に対しては必ずしも最適な係数とはならないため、疑似欠陥を生じる原因になり得る。そこで、面内での寸法変動の影響を受け難いマスクの中央付近で学習することが好ましい。あるいは、マスク面内の複数の箇所で学習を行い、得られた複数のフィルタ係数の平均値を用いてもよい。
【0064】
<寸法測定工程>
寸法測定工程では、光学画像からパターンの寸法(CD)が測定される。
図1の検査装置100では、寸法測定回路125が、センサ回路106から出力されたマスク採取データ204を用いて、この画像におけるパターン線幅の寸法(CD)を測定する。このとき、位置回路107から送られた、XYθテーブル102上でのマスク101の位置情報が加味される。尚、パターンの寸法(CD)は、パターンの線幅でもよく、パターンの線間距離でもよい。
【0065】
検査が行われている間に、寸法測定回路125で寸法(CD)を測定する頻度は、例えば、
図3のストライプ(20
1,20
2,20
3,20
4,・・・)の長さ方向(X方向)に適当数(例えば、1000点程度)のサンプル採取を行う毎とし、ストライプの幅方向(Y方向)にも、X方向と同程度の数のサンプルが採取される毎とすることができる。寸法測定が行われる候補点付近においては、エッジペアの間隔の測定が可能な適当なラインパターンが用いられる。この場合、エッジペアは1つとしてもよいが、複数箇所のエッジペアを用いて寸法(CD)を測定し、得られた値の度数を集計して、その度数分布の集計結果から最も頻度の高い値(最頻値)を代表値として用いることが好ましい。尚、候補点付近にエッジペアが見つからなかったり、エッジペアの数が少なかったりする場合には、寸法(CD)を測定しなくてもよく、あるいは、限られたサンプル数から最頻値を求めてもよい。
【0066】
<マップ作成工程>
寸法測定回路125でパターンの寸法(CD)が求められると、得られたデータはマップ作成回路126へ送られる。マップ作成回路126では、蓄積されたCD値から、マスク面内での寸法分布を表すCDマップが作成される。このマップによれば、マスク101の検査領域において、パターンの線幅が細くなっている領域や太くなっている領域を容易に把握することができる。例えば、パターンの描画に使用される描画装置にマスクの特定部分で線幅が細くなる傾向があれば、そうした傾向を把握可能である。
【0067】
<ダイ−トゥ−データベース比較工程(1)>
図2に示すように、光学画像取得工程で取得されたマスク採取データ204は、比較回路108へ送られる。また、参照回路112からは、参照データが比較回路108へ送られる。比較回路108は、第1の比較部108aと第2の比較部108bとを有しており、第1の比較部108aにおいて、マスク採取データ204と参照データとが、ダイ−トゥ−データベース方式によって比較される。具体的には、撮像されたストライプデータが検査フレーム単位に切り出され、検査フレーム毎に、欠陥判定の基準となるデータと適切な比較判定アルゴリズムを用いて比較される。そして、両者の差が所定の閾値を超える場合に欠陥と判定される。欠陥に関する情報は、マスク検査結果205に保存される。例えば、制御計算機110によって、欠陥の座標、欠陥判定の根拠となった光学画像などが、マスク検査結果205として磁気ディスク装置109に保存される。
【0068】
例えば、マスク101に格子状のチップパターンが形成されているとする。検査対象としてn番目のチップを考えると、ダイ−トゥ−データベース比較方式においては、n番目のチップの光学画像におけるパターンと、n番目のチップの参照画像におけるパターンとの差が所定の閾値を超える場合に欠陥と判定される。
【0069】
欠陥判定は、より具体的には、次の2種類の方法により行うことができる。1つは、参照画像における輪郭線の位置と、光学画像における輪郭線の位置との間に、所定の閾値寸法を超える差が認められる場合に欠陥と判定する方法である。他の1つは、参照画像におけるパターンの線幅と、光学画像におけるパターンの線幅との比率が所定の閾値を超える場合に欠陥と判定する方法である。この方法では、参照画像におけるパターン間の距離と、光学画像におけるパターン間の距離との比率を対象としてもよい。
【0070】
<参照画像の再生成工程>
ところで、マスクの製造工程では、レジストパターンをマスクとして下層の遮光膜等をエッチングすることで、ウェハに転写するパターンを形成している。この際、マスク面内でのレジスト膜や遮光膜の面積の違いが原因となって、レジストパターンの寸法が設計データの寸法と異なってしまう現象(ローディング効果)が起こる。その結果、マスクの面内でパターン寸法に分布が生じる。
【0071】
また、例えば、マスク101へのパターン形成に使用される荷電粒子ビーム描画装置によっては、特定の描画領域で線幅が太くなる(または細くなる)といった現象が見られることがある。
【0072】
上述したように、参照画像生成工程でのフィルタ処理によれば、局所的なパターン寸法のばらつきを学習して、光学画像に似せた参照画像を作り出すことが可能である。しかし、マスク面内での寸法分布はより広範であり、フィルタ処理によって参照画像にこの寸法分布を反映させることはできない。逆に、フィルタ処理は、設計パターンデータに対し、マスクの典型的なパターン箇所の光学画像を手本として模擬する処理であるため、参照画像は、学習を行った領域のパターン線幅に倣った線幅傾向を持つパターン像となる。このため、マスク内で線幅寸法に分布がある場合、学習を行った領域のパターン線幅とは異なるパターン線幅の領域を検査しようとすると、パターンの線幅バイアス(偏差)を有した状態で光学画像と参照画像が比較されることになる。その結果、欠陥として検出する必要のない形状や線幅を欠陥として検出してしまうという問題が生じる。
【0073】
そこで、本実施の形態では、第1の比較部108aで欠陥が検出されたパターンの光学画像に対応する参照画像に対し、CDマップを用いて、マスク面内におけるパターンの寸法分布を反映させる処理(参照画像の再生成)を行う。具体的には、マップ作成回路126からCDマップのデータを参照回路112へ送り、参照回路112において、CDマップを基にパターンの寸法調整を行う。
【0074】
<ダイ−トゥ−データベース比較工程(2)>
次に、第1の比較部108aで欠陥が検出された光学画像と、この光学画像に対応する再生成された参照画像とを、比較回路108の第2の比較部108bでダイ−トゥ−データベース比較する。ここで、再生成された参照画像には、マスク面内における寸法のばらつきが反映されているので、パターンの線幅バイアス(偏差)がキャンセルされた状態で、光学画像と参照画像を比較することができる。比較の結果、欠陥が検出されなければ、第1の比較部108aで検出された欠陥は疑似欠陥であり、本来欠陥として検出されるべきものではなかったと判断できる。
【0075】
このように、CDマップを反映させた参照画像と再度比較することで、マスク面内での寸法分布の影響を除いたダイ−トゥ−データベース比較が可能になる。これにより、疑似欠陥を低減しつつ本来検出されるべき欠陥を検出することができる。
【0076】
図4は、本実施の形態の検査方法の要部を示すフローチャートである。
【0077】
S101では、上記の方法にしたがい、
図2の第1の比較部108aでダイ−トゥ−データベース比較を行う。その結果、マスク101についてn(nは1以上の整数)個の欠陥が検出されたとする。これらの欠陥に関する情報は、マスク検査結果205に保存される。例えば、制御計算機110によって、欠陥の座標、欠陥判定の根拠となった光学画像などが、マスク検査結果205として磁気ディスク装置109に保存される。
【0078】
n個の欠陥が検出された時点で、光学画像からパターンの寸法が測定され、これを基にマスク101のCDマップが作成されている。尚、CDマップは、上記で説明した通り、
図1の検査装置100内で作成することができるが、検査装置100の外部装置で作成し、これを検査装置100に入力してもよい。
【0079】
次に、CDマップを用いて、マスク101の面内における寸法のばらつき(ΔCD)を算出する(S102)。例えば、
図3のストライプ(20
1,20
2,20
3,20
4,・・・)の長さ方向(X方向)に配列するn個の検査フレームと、ストライプの幅方向(Y方向)に配列するn個の検査フレームとによって定義される領域を1ブロック((n×n)個の検査フレーム数の領域)とし、1ブロック内の光学画像について画素毎の線幅を求め、次いで、得られた線幅の度数を集計して、その度数分布の集計結果から線幅の平均値を計算する。この平均値と参照画像から求めた線幅とから、線幅の寸法差(ΔCD)を求めることができる。他のブロックについても同様にしてΔCDを求めることにより、マスク101の面内における寸法のばらつき(ΔCD)が求められる。
【0080】
次に、S102で求められた、マスク面内における寸法のばらつき(ΔCD)を参照画像へ反映させる(S103)。例えば、線幅が細くなっている領域では、参照画像の線幅が細くなるようにし、逆に、線幅が太くなっている領域では、参照画像の線幅が太くなるようにする。このようにして寸法が調整されて再生成された参照画像を、最初に欠陥が検出された光学画像と再びダイ−トゥ−データベース比較する(S104)。この処理は、
図2の第2の比較部108bで行われる。
【0081】
尚、参照画像の再生成にあたっては、CDマップ以外の要素を加味することも可能である。例えば、寸法測定工程で使用される測長機によっては、所定のオフセット量を考慮する必要がある。例えば、測長機Aを用いて測定されたCD値を基準とする場合、測長機Bを用いて測定されたCD値に対しては、測長機Aを用いて測定された寸法と測長機Bを用いて測定された寸法との差から得られるオフセット量を加算する。あるいは、測長機Bを用いて測定されたCD値に基づくCDマップから得られるΔCD値にオフセット量を加算してもよい。こうして得られた値を用いて、参照画像の寸法を調整する。
【0082】
S104での再検査の結果、欠陥が検出されれば、S105に進んでマスク検査結果に保存する。例えば、制御計算機110によって、欠陥の座標、欠陥判定の根拠となった光学画像などが、マスク検査結果205として磁気ディスク装置109に保存される。
【0083】
その後、
図2に示すように、マスク検査結果205はレビュー装置500に送られる。レビューは、オペレータによって、検出された欠陥が実用上問題となるものであるかどうかを判断する動作である。オペレータは、例えば、欠陥判定の根拠となった基準画像と、欠陥が含まれる光学画像とを見比べて、修正の必要な欠陥であるか否かを判断する。そして、レビュー工程を経て判別された欠陥情報も、
図1の磁気ディスク装置109に保存される。レビュー装置500で1つでも修正すべき欠陥が確認されると、マスク101は、欠陥情報リスト207とともに、検査装置100の外部装置である修正装置600に送られる。修正方法は、欠陥のタイプが凸系の欠陥か凹系の欠陥かによって異なるので、欠陥情報リスト207には、凹凸の区別を含む欠陥の種別と欠陥の座標が添付される。
【0084】
一方、S104での比較の結果、欠陥が検出されなかった場合には、制御計算機110は、第1の比較部108aで検出された欠陥は欠陥でないと判断して、S101で欠陥と判定された情報を削除する(S106)。あるいは、制御計算機110は、S101での結果をマスク検査結果と区別して保存し、検査装置100を使用するユーザの要求に応じて適宜読み出し可能なようにすることもできる(S106)。
【0085】
例えば、マスク101にライン・アンド・スペースパターンが形成されているとする。このとき、
図6に示すように、所定の光学画像におけるラインパターンの線幅(Wop)が61nmであり、対応する参照画像におけるパターンの線幅(Wref)が、
図7に示すように、50nmであったとする。閾値として10nmが定義され、寸法差が10nmを超える場合には欠陥と判定されるとすれば、この場合は、寸法差が11nmであるので、光学画像には欠陥があるとして、その情報がマスク検査結果に保存される。
【0086】
図5は、マスク101の面内におけるパターンのΔCDマップの一例である。
図6の光学画像は、
図5の検査フレームAに対応するとする。センサは、ストライプ20に沿ってパターンを撮像していく。比較回路108では、撮像されたストライプデータが検査フレーム単位に分割され、対応する参照画像と比較される。
【0087】
ここで、
図5から分かるように、マスク101の面内におけるパターンには寸法分布がある。そして、検査フレームAは、設計値より線幅が太くなっている領域に位置する。したがって、検査フレームAにおけるパターンの線幅には、この領域における線幅分布の傾向が加味されていると言える。そこで、この場合は、参照画像の線幅が太くなるように寸法を調整する。
【0088】
既に述べた通り、参照画像にパターンの寸法分布を反映させる際には、まず、光学画像のパターンの寸法を測定し、次いで、測定した寸法から、マスク101の面内におけるパターンの寸法分布を求める。このとき、パターンを任意の大きさのブロック単位に分割し、ブロック毎にパターンの寸法の平均値を算出して寸法分布を求めることができる。例えば、
図5のストライプ20の長さ方向(X方向)に配列する4個の検査フレームと、ストライプの幅方向(Y方向)に配列する4個の検査フレームとによって定義される領域(
図5で破線で囲まれた領域)を1ブロックとし、1ブロック内の光学画像について画素毎の線幅を求め、次いで、得られた線幅の度数を集計して、その度数分布の集計結果から線幅の平均値を計算する。この平均値と参照画像から求めた線幅とから、線幅の寸法差(ΔCD)を求めて、参照画像へ反映させる。ΔCD=2nmであれば、
図8に示すように、再生成後の参照画像のパターンの線幅(Wref’)は52nmとなり、光学画像との寸法差は10nm以下になる。したがって、この光学画像には検出すべき欠陥はなく、先に検出された欠陥は疑似欠陥であると判定される。尚、1ブロックの大きさは、上記の例に限られるものではなく、任意の大きさとすることが可能である。
【0089】
上記例において、再検査前の欠陥に関する情報、すなわち、光学画像におけるパターンの線幅が61nmであり、対応する参照画像におけるパターンの寸法が50nmであるため、寸法差が11nmとなって光学画像には欠陥があると判定された情報は、マスク検査結果から削除される。あるいは、削除せずに、再比較によって欠陥が検出された光学画像の欠陥に関する情報と区別して保存してもよい。
【0090】
その後、S101で2番目に欠陥が検出された光学画像についても同様の工程を繰り返す。制御計算機110は、m番目に欠陥が検出された光学画像に対し、再検査によりマスク検査結果への保存の是非を判定した後は、m=nであるか否かを判定することによって、このダイがn番目、すなわち、最後に欠陥が検出されたダイであるか否かを判定する。m=nであれば、全ての欠陥について再検査を行ったとして一連の工程を終了する。
【0091】
尚、
図4の工程にしたがってn個の欠陥を再検査する順序は、欠陥が検出された順序に限られない。例えば、最後に検出された欠陥から始まって、最初に検出された欠陥を最後に再検査することとしてもよく、また、XYθテーブル102の移動の効率性を考えて順番を決めてもよい。
【0092】
本実施の形態によれば、マスク面内での寸法分布を参照画像に反映させることにより、類似した寸法分布を有する光学画像と参照画像とが比較されることになる。つまり、寸法分布の差による影響を最小限にした状態での比較が可能となるので、検出する必要のない欠陥がマスク検査結果から除かれる。つまり、欠陥検出感度の低下を引き起こすことなしに、疑似欠陥の低減を図ることができる。また、検出する必要のない欠陥がマスク検査結果から除かれることで、オペレータがレビューする欠陥数が低減され、検査時間の短縮化に繋がる。さらに、欠陥情報リストに挙がる欠陥数を低減することにもなるので、マスクの製造歩留まりを向上させることが可能となる。
【0093】
本実施の形態において、マップ作成回路126で作成されたマップは、ウェハなどにマスク101のパターンを転写する際に利用することができる。例えば、マスク101のパターンをウェハへ転写する露光装置が、照射エネルギー量(ドーズ量)をマップとして入力可能なものであれば、マップ作成回路126で作成されたマップを露光装置に入力して、これを照射エネルギー量のマップに換算することで、ウェハに均一な線幅を転写することが可能となる。例えば、マスク101で寸法差がマイナス、すなわち、線幅が細くなっている箇所では、ウェハ上に転写されるパターンが太くなるように照射エネルギー量を調整する。一方、マスク101で寸法差がプラス、すなわち、線幅が太くなっている箇所では、ウェハ上に転写されるパターンが細くなるように照射エネルギー量を調整する。このようにすることで、パターンに寸法分布を有するマスクであっても、ウェハ上に転写されたパターンの線幅が均一となるようにすることができる。
【0094】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々変形して実施することができる。
【0095】
例えば、上記実施の形態において、比較回路108は、第1の比較部108aと第2の比較部108bとを有し、第1の比較部108aにおいて、最初のダイ−トゥ−データベース比較による検査が行われ、第2の比較部108bにおいて、再生成された参照画像を用いてのダイ−トゥ−データベース比較による再検査が行われた。しかし、比較回路は、必ずしも第1の比較部と第2の比較部を有している必要はない。すなわち、比較回路が有する複数の比較ユニットに対し、場合に応じて、マスク採取データから切り出されたセンサフレーム画像と、参照画像から切り出された参照フレーム画像とが投入されたり、あるいは、欠陥が検出されたセンサフレーム画像と、再生成された参照フレーム画像とが投入されたりしてもよい。前者であれば最初の検査が行われることになり、後者であれば再検査が行われることになる。
【0096】
また、上記実施の形態では、参照回路が参照画像の再生成を行ったが、検査装置全体の制御を司る制御部としての制御計算機が参照画像の再生成を行ってもよい。すなわち、制御計算機が、マップ作成回路からCDマップのデータを受け取り、また、参照回路から参照データを受け取って、参照画像の寸法調整を行ってもよい。但し、光学画像の取得、参照画像の生成、光学画像と参照画像の比較による検査といった処理と並行して参照画像の再生成を行う場合には、参照画像生成のための処理速度に速さが求められるので、電気的回路で構成された参照回路で参照画像を再生成することが好ましい。
【0097】
また、上記実施の形態では、
図1の寸法測定回路125で光学画像の寸法を測定し、この値から得られたCDマップを用いて参照画像の再生成を行った。ここで、CDマップは、検査対象となるマスク面内における寸法分布を反映したものであるが、本発明はこれに限られるものではなく、例えば、マスクへのパターン形成に使用される荷電粒子ビーム描画装置の特性、例えば、特定の描画領域で線幅が太くなる(または細くなる)といった特性を表したCDマップを用いて、参照画像の再生成を行ってもよい。この場合にも上記と同様の効果を得ることが可能である。
【0098】
さらに、上記実施の形態では、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要としない部分についての記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができることは言うまでもない。その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更し得る全ての検査方法または検査装置は、本発明の範囲に包含される。
以下に、本願出願当初の特許請求の範囲に記載の発明を付記する。
[C1]
試料に形成されたパターンの光学画像を取得する工程と、
前記光学画像に対応する参照画像を生成する工程と、
前記光学画像と前記参照画像とをダイ−トゥ−データベース方式によって比較し、欠陥が検出された光学画像について該欠陥に関する情報を保存する工程と、
前記参照画像に前記試料の面内における前記パターンの寸法分布を反映させて参照画像を再生成する工程と、
前記ダイ−トゥ−データベース方式による比較で欠陥が検出された光学画像と、該光学画像に対応する前記再生成された参照画像とを、ダイ−トゥ−データベース方式によって再比較し、前記欠陥が検出された光学画像から再度欠陥が検出された場合には該欠陥に関する情報を保存し、前記欠陥が検出された光学画像から欠陥が検出されない場合には、該光学画像には欠陥がないとする工程とを有することを特徴とする検査方法。
[C2]
前記光学画像のパターンの寸法を測定する工程と、
前記光学画像のパターンの寸法から、前記試料の面内における前記パターンの寸法分布を求める工程とを有することを特徴とする[C1]に記載の検査方法。
[C3]
前記光学画像のパターンの寸法から、前記試料の面内における前記パターンの寸法分布を求める工程は、任意の大きさのブロック単位で前記パターンの寸法の平均値を算出して前記寸法分布を求める工程であることを特徴とする[C2]に記載の検査方法。
[C4]
前記欠陥が検出された光学画像から欠陥が検出されない場合には、該光学画像について保存された前記欠陥に関する情報を、再比較によって欠陥が検出された光学画像の欠陥に関する情報と区別して保存することを特徴とする[C1]〜[C3]のいずれか1項に記載の検査方法。
[C5]
前記参照画像を再生成する工程では、前記試料の面内における前記パターンの寸法分布と併せて、前記光学画像のパターンの寸法を測定するのに使用した装置のオフセット量が反映されることを特徴とする[C2]〜[C4]のいずれか1項に記載の検査方法。
[C6]
試料に形成されたパターンの光学画像を取得する光学画像取得部と、
前記光学画像に対応する参照画像を生成する参照画像生成部と、
前記光学画像と前記参照画像とをダイ−トゥ−データベース方式によって比較する比較部と、
前記比較部で欠陥が検出された光学画像について該欠陥に関する情報を保存する保存部とを有し、
前記参照画像生成部は、前記参照画像に前記試料の面内における前記パターンの寸法分布を反映させて参照画像を再生成し、
前記比較部は、前記ダイ−トゥ−データベース方式による比較で欠陥が検出された光学画像と、該光学画像に対応する前記再生成された参照画像とを、ダイ−トゥ−データベース方式によって再比較し、
前記欠陥が検出された光学画像から再度欠陥が検出された場合には、該欠陥に関する情報が前記保存部に保存され、前記欠陥が検出された光学画像から欠陥が検出されない場合には、該光学画像について保存された前記欠陥に関する情報が削除されることを特徴とする検査装置。
[C7]
前記試料の面内における前記パターンの寸法分布は外部から入力されることを特徴とする[C6]に記載の検査装置。