(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
シート状部材によって縦長形状に形成された袋体と、該袋体に個別に封入されたアプリケータと、前記アプリケータの内筒によって押し出し可能に前記アプリケータの外筒内に収容されたタンポンと、を有したアプリケータ付きタンポンの個別包装体であって、
前記袋体は、該袋体の本体として互いに対向する一対の面部を有するとともに、前記面部同士は、幅方向の各端部及び長手方向の一端部にて、折り線又は接合部を介して繋がっており、
前記袋体の前記長手方向の他端部が前記アプリケータを取り出す際に開封されることによって、前記一対の面部の前記長手方向の他端側の縁部同士が互い共同して開口部を構成し、
少なくとも前記開口部のうちで前記接合部以外の部分の一部に、補強部が設けられており、
前記補強部は、前記面部における前記幅方向の前記端部の前記接合部に連続して設けられていることを特徴とするアプリケータ付きタンポンの個別包装体。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
シート状部材によって縦長形状に形成された袋体と、該袋体に個別に封入されたアプリケータと、前記アプリケータの内筒によって押し出し可能に前記アプリケータの外筒内に収容されたタンポンと、を有したアプリケータ付きタンポンの個別包装体であって、
前記袋体は、該袋体の本体として互いに対向する一対の面部を有するとともに、前記面部同士は、幅方向の各端部及び長手方向の一端部にて、折り線又は接合部を介して繋がっており、
前記袋体の前記長手方向の他端部が前記アプリケータを取り出す際に開封されることによって、前記一対の面部の前記長手方向の他端側の縁部同士が互い共同して開口部を構成し、
少なくとも前記開口部のうちで前記接合部以外の部分の一部に、補強部が設けられていることを特徴とするアプリケータ付きタンポンの個別包装体である。
【0011】
このようなアプリケータ付きタンポンの個別包装体によれば、少なくとも上記開口部の一部に補強部が設けられている。よって、一対の面部に対して幅方向に互いに逆向きのスライド力を付与した際に、開口部のうちで補強部が設けられた上記一部は、当該補強部で高められた曲げ剛性に基づいてスライド変形に対する抗力を生じ、この抗力の作用によって開口部は開くように動く。一方、当該互いに逆向きのスライド力の一対の面部への付与を、使用者は片手で行うことができる。例えば、親指と中指とで袋体の一対の面部を両側から挟んだ状態で、これら親指と中指とを互いに幅方向の逆側にずらすことにより、上記の互いに逆向きのスライド力を一対の面部に対して付与することができる。よって、使用者は、片手操作で上記開口部を容易に開くことができる。
【0012】
かかるアプリケータ付きタンポンの個別包装体であって、
前記補強部は、前記面部における前記幅方向の前記端部の前記接合部に連続して設けられているのが望ましい。
【0013】
このようなアプリケータ付きタンポンの個別包装体によれば、補強部は、面部の幅方向の端部の接合部に連続して設けられているが、当該接合部は高い曲げ剛性を有する。よって、当該接合部の高い曲げ剛性も、上記スライド力の付与の際に補強部に基づいて生じる上記の抗力に有効に加担する。よって、上記のスライド力の付与の際に、開口部はより開き易くなる。
【0014】
かかるアプリケータ付きタンポンの個別包装体であって、
前記補強部は、少なくとも前記開口部のうちで前記接合部以外の部分の全部に亘って設けられているのが望ましい。
【0015】
このようなアプリケータ付きタンポンの個別包装体によれば、補強部は、少なくとも開口部のうちで接合部以外の部分の全部に亘って設けられている。よって、上記スライド力の付与の際に補強部に基づいて生じる上記の抗力を大きくすることができて、結果、開口部はより開き易くなる。
【0016】
かかるアプリケータ付きタンポンの個別包装体であって、
前記他端側の縁部に相当する位置を折り返し位置として前記シート状部材が折り返されることによって、前記面部における前記他端側の縁部が形成されているとともに、当該折り返された部分が前記シート状部材のうちで折り返されていない部分に重ね合わせられることによって、前記折り返された部分が前記補強部として機能するのが望ましい。
【0017】
このようなアプリケータ付きタンポンの個別包装体によれば、シート状部材を折り返すという簡単な方法で、上記他端側の縁部がなす開口部に補強部を設けることができる。よって、別部材を設けずに済んで、製造コストを低くすることができる。
【0018】
かかるアプリケータ付きタンポンの個別包装体であって、
前記折り返された部分と前記折り返されていない部分とは、互いに重ね合わせられた状態で溶着されているのが望ましい。
【0019】
このようなアプリケータ付きタンポンの個別包装体によれば、折り返された部分と折り返されていない部分とは、互いに重ね合わせた状態で溶着されている。よって、当該溶着分だけ、開口部の曲げ剛性を更に高めることができて、その結果、上記スライド力の付与の際に、開口部はより開き易くなる。
【0020】
かかるアプリケータ付きタンポンの個別包装体であって、
前記他端側の縁部に相当する位置の山折り線を折り返し位置として、前記一対の前記面部の前記シート状部材がそれぞれ前記袋体の内側に折り返されているとともに、前記内側に折り返された部分同士が谷折り線を介して繋がっていることによって、前記袋体の前記他端部は封止されており、
前記アプリケータを取り出す際に開封される部分が、前記折り返された部分又は前記谷折り線に設定されているのが望ましい。
【0021】
このようなアプリケータ付きタンポンの個別包装体によれば、一対の面部のシート状部材のうちで袋体の内側に折り返された部分同士が谷折り線を介して繋がっていることにより、袋体の他端部は封止されている。よって、袋体は、アプリケータ付きタンポンを完全に封入しており、これにより、開封まで同タンポンを清潔な状態で保管することができる。
【0022】
かかるアプリケータ付きタンポンの個別包装体であって、
前記一対の面部のうちの一方の面部の前記折り返し位置と、もう一方の面部の前記折り返し位置とは、前記長手方向に関してずれているのが望ましい。
【0023】
このようなアプリケータ付きタンポンの個別包装体によれば、一方の面部の他端側の縁部の位置と、もう一方の面部の他端側の縁部の位置とは、長手方向に関してずれている。そして、これら縁部は、互いに共同して開口部を構成しているため、開口部は、長手方向にずれた一対の縁部を有した形態になっている。よって、当該開口部から袋体内に、使用済みのアプリケータを差し込み収容する際に、一対の縁部のうちで長手方向のより他端側に位置する方の縁部を、差し込み収容用のガイド部材として使用することができて、結果、袋体内に当該アプリケータを収容し易くなる。
【0024】
かかるアプリケータ付きタンポンの個別包装体であって、
互いに重ね合わせられる前記折り返された部分と前記折り返されていない部分とのうちのどちらか一方だけに、前記長手方向に沿ったスリットが形成されているのが望ましい。
【0025】
このようなアプリケータ付きタンポンの個別包装体によれば、上記の折り返し要因で開口部の曲げ剛性が著しく高くなってしまう場合に起こり得るスライド変形への抗力の著しい高まりを、スリットによって抑制できて、その結果、袋体に作用し得る過大な負荷の軽減を通して、袋体の損傷を抑えることができる。また、同スリットは、折り返された部分と折り返されていない部分とのうちのどちらか一方にだけ形成されるので、当該スリットを介して袋体の内部空間が外部と連通して袋体の封入が解かれる事態も有効に回避することができる。
【0026】
かかるアプリケータ付きタンポンの個別包装体であって、
前記幅方向に互いに逆方向のスライド力を前記一対の前記面部に対してそれぞれ付与することにより、前記開口部は開き、
前記面部のうちで前記スライド力を付与すべき対象部分には、目印が設けられているのが望ましい。
【0027】
このようなアプリケータ付きタンポンの個別包装体によれば、面部のうちで上記のスライド力を付与すべき対象部分には、目印が設けられている。よって、使用者は、面部においてスライド力を付与すべき対象部分を容易に把握することができて、その結果、当該使用者は片手操作で開口部を確実に開くことができる。
【0028】
===第1実施形態===
図2Aは、アプリケータ付きタンポン20の概略側面図であり、
図2Bは、第1実施形態のアプリケータ付きタンポン20の個別包装体10の概略側面図である。また、
図3Aは、個別包装体10に係る袋体30の概略側面図であり、
図3B及び
図3Cは、それぞれ、
図3A中のB−B矢視図及びC―C矢視図である。更に、
図4Aは、開封後の袋体30の概略側面図であり、
図4B及び
図4Cは、それぞれ、
図4A中のB−B矢視図及びC―C矢視図である。
【0029】
図2Bに示すように、この第1実施形態のアプリケータ付きタンポン20の個別包装体10は、柔軟なシート状部材30sによって縦長形状且つ扁平形状に形成された袋体30と、袋体30に個別に封入されたアプリケータ付きタンポン20と、を有する。
【0030】
図2Aに示すように、アプリケータ付きタンポン20は、人体の孔部の一例たる膣腔に挿入されるタンポン21と、タンポン21を押し出し可能に収容するアプリケータ25と、を有する。
【0031】
タンポン21は、膣腔に挿入されて経血を吸収する吸収体21aと、吸収体21aのうちの挿入方向の尾端側部分に連結された紐部材21cと、を有する。吸収体21aは、例えばレーヨン繊維やコットン繊維等の親水性繊維を略円柱体形状に圧縮成形したものを本体とするが、場合によっては、当該本体の表面を、不織布等の液透過性シートで被覆していても良い。また、紐部材21cは、膣腔から使用済みの吸収体21aを引き出す際に持ち手として使用される。
【0032】
一方、アプリケータ25は、吸収体21aを膣腔に挿入する際に用いる挿入補助具25であり、
図2Aに示すように樹脂製の外筒26と内筒27とを有する。そして、外筒26の挿入方向の先端側部分26e1には吸収体21aが収容され、外筒26の尾端側部分26e2には、外筒26と略同軸に、内筒27の先端側部分27e1が収容されており、内筒27の先端側部分27e1以外の部分27e2は外筒26の尾端から外方に飛び出している。よって、タンポン21の使用時には、膣腔に外筒26の先端側部分26e1を挿入し、その状態のまま内筒27を外筒26内へ押し込むことにより、吸収体21aが外筒26の先端側部分26e1から押し出されて膣腔に挿入される。そして、当該吸収体21aの挿入後にはアプリケータ25は膣腔から抜かれる。
【0033】
袋体30は、熱可塑性樹脂フィルムや紙、或いは熱可塑性樹脂フィルムと紙とのラミネート紙等の柔軟なシート状部材30sを材料に形成される。そして、この例では、熱可塑性樹脂フィルムの範疇のPP(ポリプロピレン)フィルムが袋体30の材料とされている。
【0034】
袋体30の外形形状は、
図3Aのアプリケータ付きタンポン20の非収容状態においては、縦長形状の一例として略長方形をなしている。すなわち、袋体30の外形形状は、互いに直交する三方向として長手方向と幅方向と厚さ方向とを有した縦長扁平形状であり、当然ながら、厚さ方向の長さ寸法よりも幅方向の長さ寸法の方が大きく、幅方向の長さ寸法よりも長手方向の長さ寸法の方が大きくされている。そして、
図2Bに示すように、アプリケータ25の外筒26の筒軸方向C26が、袋体30の長手方向に沿わせられた状態で、袋体30内にアプリケータ付きタンポン20が収容されている。なお、以下では、袋体30の長手方向のことを「袋体長手方向」と言い、袋体30の幅方向のことを「袋体幅方向」と言い、袋体30の厚さ方向のことを「袋体厚さ方向」と言う。
【0035】
図3A及び
図3Bに示すように、かかる袋体30は、その本体として互いに袋体厚さ方向に対向して配された略長方形の一対の面部31,31を有する。そして、
図3Aに示すように、当該一対の面部31,31同士は、互いの四辺において溶着部(接合部に相当)又は折り線LM,LV,LMを介して繋がっており、これにより、袋状をなしている。例えば、この例では、一対の面部31,31同士は、袋体長手方向の上端部31eu(他端部に相当)においてのみ折り線LM,LV,LMで繋がっているが、袋体幅方向の各端部31es,31es及び長手方向の下端部31ed(一端部に相当)においては溶着部で繋がっている。そして、これにより、袋体30は四辺で綴じた状態になっている。ちなみに、この
図3Aだけでなく、以下で説明に用いる全図に亘って、溶着部には、ドット模様を付けて図示している。
【0036】
図3Bに示すように、袋体30の上端部30eu(袋体の他端部に相当)は、シート状部材30sが断面M字形状に折り曲げられることで形成されており、これにより、当該上端部30euは、複数の折り線LM,LV,LMを有している。すなわち、袋体厚さ方向に並ぶ一対の山折り線LM,LMと、当該一対の山折り線LM,LM同士の間に位置する谷折り線LVと、を有している。また、この例では、谷折り線LVに対して、その略全長に亘って不図示のミシン目が形成されている。よって、このミシン目を使用者が指で押し込む等して破ることにより、
図4B及び
図4Cに示すように、袋体30は速やかに開封される。
【0037】
なお、
図3A及び
図3Bに示すように、一対の山折り線LM,LMは、それぞれ、各面部31,31の上端側の縁部31ee1,31ee1(他端側の縁部に相当)をなしているが、当該一対の山折り線LM,LM同士は、袋体幅方向の各端部31es,31esにおいて上記の溶着部を介して接合されていて、これにより、一対の山折り線LM,LMは、互いに共同して環状になっている。そのため、上記ミシン目での袋体30の開封後には、
図4Cのように環状に繋がる一対の山折り線LM,LMは、
図4Bに示すように袋体30の内部空間SP30と連通し、これにより、当該一対の山折り線LM,LMは、袋体30の環状の開口部30hとして機能する。
【0038】
ところで、開封後に袋体30の上記開口部30hからアプリケータ付きタンポン20を取り出すと、当該袋体30は、袋体厚さ方向に自然に潰れて元の薄厚の扁平形状に戻ってしまい、これに伴って、開口部30hも閉じて扁平状態になる。そのため、使用済みのアプリケータ25を袋体30に再度収容する際には、当該開口部30hを袋体厚さ方向に大きく開かねばならないが、通常このときには、使用者の片手は使用済みアプリケータ25を持つことで塞がってしまっている。よって、この開口部30hを開く操作にあっては、もう一方の手だけによる片手操作で行わざるを得ない。そこで、この第1実施形態では、片手操作で袋体30の開口部30hを速やかに開くことができるように工夫されている。以下、この工夫について説明する。
【0039】
ここで、
図4B及び
図4Cを参照して端的に言えば、この工夫とは、袋体30の開口部30hが上記の各山折り線LM,LMに起因して二層構造に構成されていることである。すなわち、上述したことや
図4Bからわかるように、各面部31,31のうちで袋体長手方向の上端側の縁部31ee1,31ee1及びその近傍部分を除く概ね全ての部分については、シート状部材30sが一枚の単層構造となっているが、これに対して、各面部31,31の上端側の縁部31ee1,31ee1及びその近傍部分では、シート状部材30sが山折り線LM,LMで折り返されているために、各面部31,31の上端側の縁部31ee1,31ee1は、シート状部材30sが二枚重なった二層構造をなしている。より詳しく言えば、山折り線LMに基づいて袋体30の内側に折り返された部分31bdが、折り返されていない部分31nbdたる面部31の上端部31euに重なっている。このため、当該折り返された部分31bdは、当該面部31の上端部31euを補強する補強部31bdとして機能して、これにより、各面部31,31の上端側の縁部31ee1,31ee1たる開口部30hにあっては、面部31のうちで開口部30h及びその近傍部分以外のほぼ全ての部分よりも曲げ剛性が高くされている。
【0040】
よって、使用者が、例えば親指と中指とで袋体30の一対の面部31,31を袋体厚さ方向の両側から挟んだ状態で、これら親指と中指とを互いに袋体幅方向の逆側にずらすことによって、袋体幅方向に互いに逆向きのスライド力を一対の面部31,31に対して付与してやれば、一対の面部31,31のうちの大半の部分は速やかにスライドするように変形するが、二層構造に基づいて補強された上記開口部30hにあっては、その高められた曲げ剛性に基づいて速やかにはスライドせずに、すなわちスライド変形に対する抗力を生じる。そして、この抗力の作用によって開口部30hは袋体厚さ方向に開くように動作して、これにより、使用者は、片手操作で開口部30hを速やかに開くことができる。
【0041】
なお、望ましくは、
図3Aに示すように、二層構造に構成された部分の袋体長手方向の長さ寸法Dd、すなわち、上端側の縁部31ee1たる山折り線LMから谷折り線LVまでの部分(つまり、折り返された部分31bd)の袋体長手方向の長さ寸法Ddを10〜50mmに設定すると良く、より望ましくは、25〜30mmに設定すると良い。そして、このように設定されていれば、折り返された部分31bdは、補強部31bdとして有効に機能することができる。
【0042】
また、場合によっては、開口部30hをなす一対の山折り線LM,LMのうちの少なくとも一方又は両方に対して、ヒートシールを施しても良い。すなわち、
図3Bに示すように、山折り線LMで折り返された部分31bdと折り返されていない部分31nbdとを重ね合わせた状態で熱溶着しても良い。そして、このようにすれば、当該溶着分だけ、開口部30hの曲げ剛性を更に高めることができて、その結果、上記のスライド力の付与の際に、開口部30hはより開き易くなる。
なお、上記の熱溶着により形成される溶着部は、山折り線LMの袋体幅方向の全長に亘って形成されていても良いし、場合によっては、袋体幅方向に部分的に形成されても良い。また、溶着部の袋体長手方向の長さは、例えば3〜30mmであり、望ましくは3〜10mmである。更に、溶着部は、適宜な形成パターンで形成されていても良い。例えば、複数のドット部分を有したドットパターンや、複数の直線部分を有したストライプパーターンで形成されても良いし、或いは、ベタ状のパターンで形成されても良い。
更に、上述の例では、袋体30の上端部30euを開封可能に封止する構成として、各山折り線LM,LMにより袋体30の内側に折り返された部分31bd,31bd同士が、ミシン目付きの谷折り線LVを介して繋がっている構成を例示したが、何等これに限らない。例えば、袋体30の内側に折り返された部分31bd,31bd同士が、ミシン目付きの谷折り線LVに代えて、容易に剥離可能な低い接合強度の接着剤の接着によって繋がった構成であっても良い。そして、この構成の場合には、当該接着剤の接着で繋がった部分同士を使用者が指などで押し込むことにより、同接着で繋がった部分同士が速やかに分離して、これにより、袋体30が開封されることになる。
【0043】
また、場合によっては、
図3A及び
図4Aに示すように、山折り線LMを介して互いに重ね合わせられる折り返された部分31bdと折り返されていない部分31nbdとのうちのどちらか一方にだけ、袋体長手方向に沿ったスリットSLを形成し、これにより、開口部30hに対して局所的に曲げ剛性の低い部分を設けても良い。この
図3A及び
図4Aの例では、折り返された部分31bdのうちの袋体幅方向の中央部分にスリットSLが形成されている。
【0044】
そして、このようにスリットSLが形成されていれば、上記の山折り線LM起因で開口部30hの曲げ剛性が著しく高くなってしまう場合に起こり得るスライド変形への抗力の著しい高まりを抑制できて、その結果、袋体30に作用し得る過大な負荷の軽減を通して、袋体30の損傷を抑えることができる。また、同スリットSLは、折り返された部分31bdと折り返されていない部分31nbdとのうちのどちらか一方にだけ形成されるので、当該スリットSLを介して袋体30の内部空間SP30が外部と連通して袋体30の封入が解かれる事態も有効に回避することができる。
【0045】
なお、望ましくは、かかるスリットSLの形成は、折り返されていない部分31nbdよりは、
図4Aのように折り返された部分31nbdの方に対してなすと良く、このようにすれば、スライド変形の際に袋体30に作用し得る過大な負荷をより有効に軽減可能となる。また、スリットSLの袋体長手方向の長さは、折り返された部分31bdの袋体長手方向の全長を超えない範囲であって、5〜20mmの範囲から選択される良く、そうすれば、上記の過大な負荷の軽減効果を確実に奏することができる。
【0046】
ちなみに、望ましくは、アプリケータ付きタンポン20を非収容状態における袋体30の袋体長手方向の内法を、アプリケータ付きタンポン20の袋体長手方向の全長よりも10〜40mmだけ長くすると良く、また、同袋体30の袋体幅方向の内法を、アプリケータ付きタンポン20の袋体幅方向の最大寸法よりも10〜80mmだけ長くすると良い。そして、このようにすれば、アプリケータ付きタンポン20を収容した際に、袋体30内に適度な余裕代を確保することができる。
【0047】
また、望ましくは、袋体幅方向の各端部31es,31esに形成される溶着部の袋体幅方向の長さを、例えば3〜5mmにするとともに、袋体長手方向の下端部31edに形成される溶着部の袋体長手方向の長さを、例えば5〜30mmにすると良い。
【0048】
図5A及び
図5Bは、第1実施形態の変形例の説明図である。
図5Aは、当該変形例の袋体30の概略側面図であり、
図5Bは、
図5A中のB−B矢視図ある。
上述の第1実施形態では、
図3Bに示すように、上端部30euに設定される一対の山折り線LM,LMの位置、すなわち折り返し位置LM,LMが互いに袋体長手方向に関して揃っていたが、
図5Bの変形例では、一対の山折り線LM,LMの位置が、袋体長手方向に関してずらされている点で主に相違する。そして、これ以外の点はほぼ第1実施形態と同じである。よって、以下の説明では、第1実施形態と同じ構成については同じ符号を付して、その説明については省略する。
【0049】
ここで、各山折り線LM,LMは、既述のように、各面部31,31の上端側の縁部31ee1,31ee1に相当している。よって、この変形例では、一方の面部31の上端側の縁部31ee1の位置と、もう一方の面部31の上端側の縁部31ee1の位置とが、互いに袋体長手方向に関してずれていることになる。また、これも既述していることであるが、これら一対の縁部31ee1,31ee1は、互いに共同して袋体30の開口部30hをなしている。そのため、この変形例の袋体30の開口部30hでは、その一対の縁部31ee1,31ee1の互いの位置が袋体長手方向にずれた形態になっている。よって、当該開口部30hから袋体30内に、使用済みのアプリケータ25を差し込み収容する際に、開口部30hの上記一対の縁部31ee1,31ee1のうちで袋体長手方向のより上端側に位置する方の縁部31ee1を、差し込み収容用のガイド部材として使用することができて、結果、袋体30内に当該アプリケータ25を収容し易くなる。
【0050】
なお、ここで望ましくは、上記の一対の縁部31ee1,31ee1、すなわち一対の山折り線LM,LMのうちで上側に位置する山折り線LMと谷折り線LVとの間の袋体長手方向の間隔DV1を28〜35mmに設定するとともに、もう一方の山折り線LM(下側に位置する山折り線LM)と谷折り線LVとの間の間隔DV2を15〜22mmに設定すると良い。そして、このようにすれば、上側に位置する方の山折り線LMたる上端側の縁部31ee1を、上記の差し込み収容用のガイド部材として確実に機能させることができる。
【0051】
また、上述の第1実施形態及びその変形例では、
図3A及び
図5Aに示すように、袋体30の一対の面部31,31同士を、袋体長手方向の上端部31euでは折り線LM,LV,LMで繋ぐ一方、これ以外の各端部31ed,31es,31es、すなわち袋体長手方向の下端部31ed及び袋体幅方向の各端部31es,31esでは溶着部で繋いでいたが、何等これに限らない。例えば、
図6Aに示すように、袋体幅方向の各端部31es,31esのうちの一方の端部31esでは折り線で一対の面部31,31同士を繋ぎ、そして、もう一方の端部31es及び袋体長手方向の下端部31edでは溶着部で一対の面部31,31同士を繋いでも良い。或いは、
図6Bに示すように、袋体幅方向の各端部31es,31esでは溶着部で一対の面部31,31同士を繋ぎ、そして、袋体長手方向の下端部31edでは折り線で一対の面部31,31同士を繋いでも良い。
【0052】
また、場合によっては、袋体30の一対の面部31,31のうちで、袋体30の開口部30hを開くためにスライド力を付与すべき対象部分には、スライド力を付与すべき旨の目印Sが設けられていても良い。
図7の例では、目印Sの一例として、丸印と、付与すべきスライド力の方向の矢印との両者が描かれている。そして、このように目印Sが描かれていれば、使用者は、開口部30hを片手操作で開く方法や、面部31においてスライド力を付与すべき対象部分を容易に視認することができて、その結果、当該使用者は片手操作で開口部30hを確実且つ容易に開くことができる。なお、かかる目印Sは、何等上記のような丸印や矢印に限るものではなく、例えば動物の肉球や星形、ハート形等の図柄でも良い。
【0053】
===第2実施形態===
図8は、第2実施形態のアプリケータ付きタンポン20の個別包装体10bの概略側面図である。また、
図9Aは、個別包装体10bに係る袋体30bの概略側面図であり、
図9B及び
図9Cは、それぞれ、
図9A中のB−B矢視図及びC―C矢視図である。更に、
図10Aは、開封後の袋体30bの概略側面図であり、
図10B及び
図10Cは、それぞれ、
図10A中のB−B矢視図及びC―C矢視図である。
【0054】
図8に示すように、この第2実施形態のアプリケータ付きタンポン20の個別包装体10bも、柔軟なシート状部材30bsによって縦長形状且つ扁平形状に形成された袋体30bと、袋体30bに個別に封入されたアプリケータ付きタンポン20と、を有する。そして、アプリケータ付きタンポン20の構成は、第1実施形態と同じであるが、袋体30bの構成が異なる。よって、以下では、袋体30bについて主に説明し、アプリケータ付きタンポン20の説明については省略する。
【0055】
袋体30bは、熱可塑性樹脂フィルムや紙、或いは熱可塑性樹脂フィルムと紙とのラミネート紙等の柔軟なシート状部材30bsを材料に形成される。そして、この例では、熱可塑性樹脂フィルムの範疇のPPフィルムが袋体30bの材料とされている。
【0056】
袋体30bの外形形状は、
図9Aのアプリケータ付きタンポン20の非収容状態においては、縦長形状の一例として平面視略長方形をなしている。すなわち、袋体30bは、その本体として、互いに袋体厚さ方向に対向して配された略長方形の一対の面部31,31を有し、当該一対の面部31,31同士は、四辺において溶着部(接合部に相当)又は折り線を介して繋がっており、これにより、袋状をなしている。例えば、この例では、一対の面部31,31同士は、互いの四辺、すなわち袋体幅方向の各端部31es,31es、袋体長手方向の上端部31eu、及び同下端部31edにて熱溶着されて接合されており、つまり、四つの各端部31es,31es,31eu,31edに設けられた溶着部を介して一対の面部31,31同士は繋がっている。
【0057】
また、一対の面部31,31のどちらの面部31についても、当該面部31のうちで上端部31euの溶着部よりも下方の部分には、袋体幅方向に沿ったミシン目P31が袋体幅方向の全長に亘って形成されている。そして、このミシン目P31を切断することにより、袋体30bのうちでミシン目P31よりも上側の部分30buを、同ミシン目P31よりも下側の部分30bdから切り離して、これにより袋体30bを開封するようになっている。なお、以下では、この袋体30bのうちでミシン目P31よりも下側の部分30bdのことを、「袋体下側部分30bd」とも言う。そして、かかる袋体下側部分30bdに、アプリケータ付きタンポン20が収容されている。また、
図9Aのように開封前にミシン目P31であった部分は、当該ミシン目P31での切断・開封後には、
図10A乃至
図10Cのように袋体下側部分30bdの各面部31,31の上端側の縁部31ee3,31ee3になり、そして、開封後には、当該上端側の縁部31ee3,31ee3が、袋体30bの開口部30bhとして機能する。よって、使用者は、同開口部30bhたる上端側の縁部31ee3,31ee3から袋体下側部分30bd内のアプリケータ付きタンポン20を取り出して使用する。
【0058】
なお、
図10A乃至
図10Cに示す当該開封後の袋体30bたる袋体下側部分30bdも、アプリケータ付きタンポン20の取り出し後には、前述の第1実施形態の場合と同様に、袋体厚さ方向に自然に潰れて元の薄厚な扁平形状に戻ってしまい、これに伴って、開口部30bhも閉じて略扁平状態になってしまう。そのため、この第2実施形態の袋体30bに対しても、開口部30bhを開き易くする目的で、当該開口部30bhには、補強部35が設けられている。
【0059】
この例では、補強部35は、熱可塑性樹脂製等のフィルムや同樹脂製等の不織布、又は紙等の適宜なシート状部材35であり、開口部30bhの一部にのみ接着又は溶着等の適宜な接合方法によって一体に接合されている。そして、当該補強部35が接合された部分の曲げ剛性は高くなっている。よって、第1実施形態の場合と同様に、使用者が、例えば親指と中指とで袋体下側部分30bdの一対の面部31,31を袋体厚さ方向の両側から挟んだ状態で、これら親指と中指とを互いに袋体幅方向の逆側にずらすことにより、袋体幅方向に互いに逆向きのスライド力を一対の面部31,31に対して付与してやれば、一対の面部31,31のうちの大半の部分は速やかにスライドするように変形するが、補強部35で補強された上記開口部30bhの一部にあっては、その高められた曲げ剛性に基づいて速やかにはスライドせずに、すなわちスライド変形に対する抗力を生じる。そして、この抗力の作用によって開口部30bhの一部及びその近傍部分は袋体厚さ方向に開くように動作し、これにより、使用者は、片手操作で開口部30bhを速やかに開くことができる。
【0060】
ちなみに、この
図10A乃至
図10Cの例では、開口部30bhの一部にのみ補強部35を設けていたが、何等これに限らない。例えば、開口部30bhにおける複数の部分に袋体幅方向に並ぶように複数の補強部を設けても良い。
【0061】
また、
図9A乃至
図9Cに示すように、この補強部35は、開封前の袋体30bのミシン目P31を跨いで設けられていても良いし、或いは、ミシン目P31よりも上側の部分には設けられずに、下側の部分、つまり袋体下側部分30bdにのみ設けられていても良い。なお、前者のミシン目P31を跨いで設けられる場合には(
図9A乃至
図9C)、袋体30bの開封性を阻害しないように、補強部35にも袋体幅方向の全長に亘ってミシン目P35が形成されていると良い。
【0062】
なお、望ましくは、
図10Aに示す補強部35の袋体幅方向の長さ寸法D35aを、袋体30bから外方にはみ出さない範囲で10mm以上に設定すると良く、また、袋体長手方向の長さ寸法D35bを10〜20mmに設定すると良い。そして、このように設定されていれば、同補強部35により開口部30bhの曲げ剛性は確実に向上されて、その結果、片手操作で開口部30bhを確実に開くことができるようになる。
【0063】
図11A乃至
図11Cは、第2実施形態の第1変形例の袋体30bの説明図である。なお、
図11Aは、開封後の袋体30bの概略側面図であり、
図11B及び
図11Cは、それぞれ、
図11A中のB−B矢視図及びC―C矢視図である。
同
図11Aに示すように、この第1変形例では、補強部35は、面部31における袋体幅方向の端部31esの溶着部(
図11A中、ドット模様を付して示された部分)に連続して設けられている。そして、このようにされていれば、同溶着部は高い曲げ剛性を有することから、当該溶着部の高い曲げ剛性も、上記スライド力の付与の際に補強部35に基づいて生じる上記の抗力に有効に加担する。よって、上記のスライド力の付与の際に、開口部30bhはより開き易くなる。
【0064】
なお、ここで望ましくは、
図12(
図11A中のC−C矢視図に相当する図)に示すように、袋体幅方向の端部31esの溶着部を跨いだ状態に補強部35が設けられていると良い。そして、このようになっていれば、当該溶着部の高い曲げ剛性の影響が、より確実に補強部35に及ぶため、同曲げ剛性が上記の抗力により加担し易くなる。
【0065】
図13A乃至
図13Cは、第2実施形態の第2変形例の袋体30bの説明図である。なお、
図13Aは、開封後の袋体30bの概略側面図であり、
図13B及び
図13Cは、それぞれ、
図13A中のB−B矢視図及びC―C矢視図である。
同
図13Aに示すように、この第2変形例では、補強部35は、開口部30bhの全周に亘って設けられている。すなわち、補強部35は、少なくとも開口部30bhのうちで上記の端部31es,31esの溶接部以外の部分の全部に亘って設けられている。そして、このようにされていれば、上記スライド力の付与の際に補強部35に基づいて生じる上記の抗力をより大きくすることができて、結果、開口部30bhはより開き易くなる。
【0066】
なお、上述の第2実施形態、及びその変形例では、補強部35としてシート状部材35を例示したが、何等これに限らない。例えば、開口部30bhのうちで補強すべき部分に、熱可塑性樹脂等の材料、すなわち所定条件で流動状態となり時間経過とともに固化するような材料を流動下で塗布し、固化後の当該材料を補強部としても良い。
【0067】
また、上述の第2実施形態及びその変形例では、未開封状態における袋体30bの一対の面部31,31同士を、袋体長手方向の上端部31eu及び下端部31ed、並びに袋体幅方向の各端部31es,31esの全てにおいて溶着部で繋いでいたが、何等これに限らない。すなわち、これら四つの端部31eu,31ed,31es,31esのうちの一つ以上の端部において一対の面部31,31同士を折り線で繋いでも良い。例えば、
図14Aの概略側面図に示すように、袋体幅方向の各端部31es,31esのうちの一方の端部31es、袋体長手方向の上端部31eu、及び下端部31edでは、それぞれ溶着部で一対の面部同士を繋ぐが、袋体幅方向のもう一方の端部では折り線で一対の面部31,31同士を繋いでも良い。また、場合によっては、
図14Bの概略側面図に示すように、袋体幅方向の各端部31es,31esでは、それぞれ溶着部で一対の面部31,31同士を繋ぐが、袋体長手方向の上端部31eu及び下端部31edでは折り線で一対の面部31,31同士を繋いでも良い。
【0068】
===その他の実施の形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されるものではなく、以下に示すような変形が可能である。
【0069】
上述の実施形態では、動物の孔部の一例として人体の膣腔を示したが、何等これに限らない。例えば、上記孔部が人体の肛門でも良く、すなわち、このアプリケータ付きタンポン20を痔の治療に用いても良い。また、動物の概念も何等人間に限らず、犬や猫などの動物に対して当該タンポン20を用いても良い。
【0070】
上述の実施形態では、袋体30,30bの外形形状が、縦長形状の一例として平面視略長方形である場合を例示したが、何等これに限らない。例えば長円形でも良い。
【0071】
上述の実施形態では、各端部31eu,31ed,31es,31esの接合部の一例として、熱溶着により接合形成された溶着部を例示したが、何等これに限らない。例えば、ホットメルト接着剤等の接着剤により接合形成される接着部でも良いし、エンボス加工等の圧着により接合形成される圧着部でも良い。
【0072】
上述の第1実施形態では、開封用のミシン目(不図示)が、
図3A及び
図3Bの谷折り線LVに形成されていたが、何等谷折り線LVに限らない。例えば、同
図3B及び
図3Cに示すように、袋体30の上端部30euのうちで一方の山折り線LMと谷折り線LVとを繋ぐ部分31eup、及びもう一方の山折り線LMと谷折り線LVとを繋ぐ部分31eupの両者に跨って不図示のミシン目が略V字状や略W次状などの所定形状で形成されていても良い。