(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6134597
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】ダイアタッチ剤
(51)【国際特許分類】
C09J 163/00 20060101AFI20170515BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20170515BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20170515BHJP
H01B 1/22 20060101ALI20170515BHJP
H01L 21/52 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
C09J163/00
C09J11/04
C09J11/06
H01B1/22 D
H01L21/52 E
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-144587(P2013-144587)
(22)【出願日】2013年7月10日
(65)【公開番号】特開2015-17175(P2015-17175A)
(43)【公開日】2015年1月29日
【審査請求日】2016年5月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】591252862
【氏名又は名称】ナミックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(74)【代理人】
【識別番号】100078662
【弁理士】
【氏名又は名称】津国 肇
(74)【代理人】
【識別番号】100135873
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 圭子
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 文也
【審査官】
西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−298963(JP,A)
【文献】
特開2006−028477(JP,A)
【文献】
特開2012−156330(JP,A)
【文献】
特開2012−238703(JP,A)
【文献】
特開2007−262243(JP,A)
【文献】
特開2009−280790(JP,A)
【文献】
特開2003−327669(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
H01B 1/00− 1/24
H01L 21/52
H01L 21/58
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、
(B)銀粉、
(C)ジスルフィド結合を含む脂肪族ジカルボン酸化合物、及び
(D)シランカップリング剤
を含み、ダイアタッチ剤中、(C)が0.08〜0.65質量%である、ダイアタッチ剤。
【請求項2】
(C)が、ジチオジグリコール酸及び/又はジチオジプロピオン酸である、請求項1記載のダイアタッチ剤。
【請求項3】
ダイアタッチ剤中、(A)が3.5〜19質量%であり、(B)が80〜96質量%であり、かつ(D)が0.05〜0.5質量%である、請求項1又は2記載のダイアタッチ剤。
【請求項4】
さらに硬化剤を含む、請求項1〜3のいずれか1項記載のダイアタッチ剤。
【請求項5】
ダイアタッチ剤中、硬化剤が0.01〜2質量%である、請求項4記載のダイアタッチ剤。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項記載のダイアタッチ剤を用いて作製された半導体装置。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項記載のダイアタッチ剤を適用した表面が銅である、請求項6記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイアタッチ剤、及びダイアタッチ剤を用いて作製した半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造において、半導体チップをリードフレーム等の金属板に接着・固定するため、ダイアタッチ剤が用いられている。ダイアタッチ剤には、接着強度(ダイシェア強度)、特に、リフロー時の接着強度が要求される。また、近年、半導体チップからの発熱量が増大しており、高熱伝導であることも求められている。高熱伝導のダイアタッチ剤とするために、銀粉のような高熱伝導のフィラーを高充填することができるが、この場合、フィラーを高充填するため、その分樹脂の配合量が減り、接着力が低下するという問題が生じる。
【0003】
接着力向上のために、ダイアタッチ剤に硫黄を含むシランカップリング剤を添加することが提案されている(特許文献1〜3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−191214号公報
【特許文献2】特開2011−207944号公報
【特許文献3】特開2000−103940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ダイアタッチ剤として、例えば、硫黄を含むシランカップリング剤を添加したものを使用すると、接着強度は向上できるものの、熱伝導率は向上できなかった。本発明は、低い体積抵抗率を保持しつつ、接着強度と熱伝導率との両方を改善することができるダイアタッチ剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ジスルフィド結合(−S−S−)を分子構造中に含むジカルボン酸化合物をダイアタッチ剤に配合することで、低い体積抵抗率を保持しつつ、接着強度と熱伝導率との両方を改善することができるとの知見に基づきなされたものである。
【0007】
本発明1は、
(A)エポキシ樹脂、
(B)銀粉、
(C)ジスルフィド結合を含む脂肪族ジカルボン酸化合物、及び
(D)シランカップリング剤
を含み、ダイアタッチ剤中、(C)が0.08〜0.65質量%である、ダイアタッチ剤に関する。
本発明2は、(C)が、ジチオジグリコール酸及び/又はジチオジプロピオン酸である、本発明1のダイアタッチ剤に関する。
本発明3は、ダイアタッチ剤中、(A)が3.5〜19質量%であり、(B)が80〜96質量%であり、かつ(D)が0.05〜0.5質量%である、本発明1又は2のダイアタッチ剤に関する。
本発明4は、さらに硬化剤を含む、本発明1〜3のいずれかのダイアタッチ剤に関する。
本発明5は、ダイアタッチ剤中、硬化剤が0.01〜3質量%である、本発明4のダイアタッチ剤に関する。
本発明6は、本発明1〜5のいずれかのダイアタッチ剤を用いて作製された半導体装置に関する。
本発明7は、本発明1〜5のいずれかのダイアタッチ剤を適用した表面が銅である、本発明6の半導体装置に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のダイアタッチ剤によれば、低い体積抵抗率を保持しつつ、接着強度及び熱伝導率との両方を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例におけるジチオジプロピオン酸の添加量と、体積抵抗率・熱伝導率の関係を示す図である。
【
図2】実施例におけるジチオジプロピオン酸の添加量と、室温におけるベア銅リードフレーム上でのダイシェア強度との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のダイアタッチ剤は、
(A)エポキシ樹脂、
(B)銀粉、
(C)ジスルフィド結合を含む脂肪族ジカルボン酸化合物、及び
(D)シランカップリング剤
を含む。
【0011】
(A)エポキシ樹脂
本発明のダイアタッチ剤は、(A)エポキシ樹脂を含む。(A)は、エポキシ基を分子内に1つ以上有する化合物であり、加熱によりエポキシ基が反応することで3次元的網目構造を形成し、硬化することができる。エポキシ基は、硬化物特性の点から、1分子に2つ以上含まれていることが好ましい。
【0012】
(A)としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビフェノール等のビスフェノール化合物又はこれらの誘導体(例えば、アルキレンオキシド付加物)、水素添加ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールF、水素添加ビフェノール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、シジロヘキサンジエタノール等の脂環構造を有するジオール又はこれらの誘導体、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール等の脂肪族ジオール又はこれらの誘導体等をエポキシ化した2官能性エポキシ樹脂;トリヒドロキシフェニルメタン骨格、アミノフェノール骨格を有する3官能性エポキシ樹脂;フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂等をエポキシ化した多官能性エポキシ樹脂が挙げられるが、これらに限定されない。
【0013】
(A)は、室温(25℃)で液状であることが好ましく、単独で、又は混合物として室温で液状であるようにすることができる。
【0014】
(A)としては、30Pa・s以下の低粘度のものが好ましく、中でも1,4−シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテルが特に好ましい。
【0015】
(A)は、単独でも、2種以上を併用してもよい。
【0016】
(B)銀粉
本発明のダイアタッチ剤は、(B)銀粉を含む。
【0017】
(B)の形状は、特に限定されず、球状、リン片状、デンドライト状等が挙げられる。好ましくは、リン片状である。
(B)の平均粒子径は、0.5〜30μmとすることができ、好ましくは1〜10μmである。ここで、平均粒子径は、レーザー回折法によって測定した体積基準のメジアン径をいう。
【0018】
(B)は、高充填して高熱伝導かつ低粘度のダイアタッチ剤にするため、高タップ密度で低比表面積の銀粉が好ましい。タップ密度は4〜7g/cm
3とすることができ、好ましくは5〜7g/cm
3であり、より好ましくは6〜7g/cm
3以下である。また、比表面積は0.05〜0.5m
2/gとすることができ、好ましくは0.08〜0.35m
2/gである。
【0019】
(B)は、単独でも、2種以上を併用してもよい。
【0020】
(C)ジスルフィド結合を含む脂肪族ジカルボン酸化合物
本発明のダイアタッチ剤は、(C)ジスルフィド結合(−S−S−)を含む脂肪族ジカルボン酸化合物を含む。(C)のカルボキシ部分が、銀粉表面の付着物を除去して銀粉同士の接触・焼結を促進し、これにより熱伝導性や電気的導電性が向上する一方、ジスルフィド結合部分(−S−S−)は、硬化時の熱により、解離してラジカルを発生し、これにより基板(特に銅基板)との接着強度を向上することができると考えられる。
【0021】
(C)は、沸点が硬化温度より高いものが好ましい。(C)の沸点が硬化温度より高いことで、硬化時に(C)が揮発してボイドとなることが抑制される。(C)としては、例えば、ジチオジグリコール酸、3,3’−ジチオジプロピオン酸、4,4’−ジチオジ酪酸、ジチオジ乳酸等が挙げられ、中でもジチオジグリコール酸、3,3’−ジチオジプロピオン酸が好ましい。
【0022】
(C)は、単独でも、2種以上を併用してもよい。
【0023】
本発明のダイアタッチ剤は、(D)シランカップリング剤を含む。(D)を配合することにより、一層の接着強度の向上を図ることができる。
【0024】
(D)は、特に限定されず、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル基含有シラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシ基含有シラン、p−スチリルトリメトキシシラン等のスチリル基含有シラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のメタクリロキシ基含有シラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアクリロキシ基含有シラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シラン等が挙げられる。中でも、接着強度と硬化時の揮発によるボイド発生の観点からエポキシ樹脂と反応する反応基をもち沸点の高い3―メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等を好ましく使用することができる。シランカップリング剤は、ビス(エトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(エトキシシリルプロピル)ジスルフィド等の硫黄含有シランカップリング剤であってもよいが、良好な体積抵抗率、熱伝導率を確保する点からは、硫黄非含有のシランカップリング剤が好ましい。
【0025】
(D)成分は、単独でも、2種以上を併用してもよい。
【0026】
本発明は、ダイアタッチ剤の合計質量を100質量%とした場合、ダイアタッチ剤中、(C)が、0.08〜0.65質量%である。この範囲であれば、接着強度と、熱伝導率との両方を改善することができる。(C)は、より好ましくは、0.09〜0.55質量%であり、特に好ましくは、0.1〜0.35質量%である。
【0027】
ダイアタッチ剤中、(A)は、ペーストの粘度と接着強度と熱伝導率の点から、3.5〜19質量%であることが好ましく、より好ましくは4〜12質量%である。
ダイアタッチ剤中、(B)は、粘性と熱伝導率の点から、80〜96質量%であることが好ましく、より好ましくは88〜95質量%である。
ダイアタッチ剤中、(D)は、接着強度とボイドの点から、0.05〜0.5質量%であることが好ましく、より好ましくは0.05〜0.3質量%である。
【0028】
本発明のダイアタッチ剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、硬化剤、硬化促進剤、着色剤、消泡剤、界面活性剤、重合禁止剤等の添加剤を含有することができる。
【0029】
硬化剤は、エポキシ樹脂の硬化剤であれば、特に限定されず、公知のものを使用することができる。例えば、脂肪族アミン、芳香族アミン、ジシアンジアミド、ジヒドラジド化合物、酸無水物、フェノール樹脂等が挙げられる。
【0030】
脂肪族アミンとしては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、m−キシレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン等の脂肪族ポリアミン、イソフォロンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ノルボルネンジアミン、1,2−ジアミノシクロヘキサン等の脂環式ポリアミン、N−アミノエチルピペラジン、1,4−ビス(2−アミノ−2−メチルプロピル)ピペラジン等のピペラジン型のポリアミンが挙げられる。芳香族アミンとしては、ジアミノジフェニルメタン、m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン、ジエチルトルエンジアミン、トリメチレンビス(4−アミノベンゾエート)、ポリテトラメチレンオキシド−ジ−p−アミノベンゾエート等の芳香族ポリアミン等が挙げられる。
ジヒドラジド化合物としては、アジピン酸ジヒドラジド、ドデカン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、p−オキシ安息香酸ジヒドラジド等のカルボン酸ジヒドラジド等が挙げられる。
酸無水物としては、フタル酸無水物、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、無水マレイン酸とポリブタジエンの反応物、無水マレイン酸とスチレンの共重合体等が挙げられる。
フェノール樹脂としては、硬化物特性の点から、1分子内にフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物が好ましい。例えば、ビスフェノールF、ビスフェノールA、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールS、ジヒドロキシジフェニルエーテル、ジヒドロキシベンゾフェノン、テトラメチルビフェノール、エチリデンビスフェノール、メチルエチリデンビス(メチルフェノール)、シクロへキシリデンビスフェノール、ビフェノールなどのビスフェノール類及びその誘導体、トリ(ヒドロキシフェニル)メタン、トリ(ヒドロキシフェニル)エタン等の3官能のフェノール類及びその誘導体、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等のフェノール類とホルムアルデヒドを反応することで得られる化合物で2核体又は3核体がメインのもの及びその誘導体等が挙げられる。組成物の粘性を低くし、(B)成分の含有量を増加できる点から液状ノボラックフェノール樹脂が特に好ましい。硬化剤は、単独でも、2種以上を併用してもよい。硬化剤は、ダイアタッチ剤中、0.01〜3質量%であることが好ましく、より好ましくは0.05〜2質量%である。
【0031】
硬化促進剤は、エポキシ樹脂の硬化促進剤であれば、特に限定されず、公知のものを使用することができる。例えば、アミン系硬化促進剤、リン系硬化促進剤等が挙げられる。
【0032】
アミン系硬化促進剤としては、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、2,4−ジアミノ−6−〔2’―メチルイミダゾリル−(1’)〕エチル−s−トリアジン等のトリアジン化合物、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7(DBU)、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン等の第三級アミン化合物が挙げられる。中でも、2,4−ジアミノ−6−〔2’―メチルイミダゾリル−(1’)〕エチル−s−トリアジン、2−フェニル−4−メチルイミダゾールが好ましい。また、リン系硬化促進剤としては、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ(p−メチルフェニル)ホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン等が挙げられる。硬化促進剤は、単独でも、2種以上を併用してもよい。
【0033】
本発明のダイアタッチ剤は、塗布性等を改善するため、希釈剤を含有してもよい。希釈剤としては、ブチルカルビトールアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族溶剤、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート等の高沸点溶剤、γ−ブチロラクトン、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテルなどの1官能の芳香族グリシジルエーテル類、脂肪族グリシジルエーテル類等が挙げられる。希釈剤の使用量は、特に限定されず、例えば、ダイアタッチ剤中0.5〜10質量%とすることができる。
【0034】
本発明のダイアタッチ剤は、粘度を8〜60Pa・sとすることができ、好ましくは、8〜50Pa・sであり、より好ましくは、9〜40Pa・sである。本明細書において、粘度は、E型粘度計(3°コーン)を用いて、25℃で、回転数5rpmで、測定した値である。
【0035】
本発明のダイアタッチ剤は、リードフレームや基板等に適用し、半導体素子や放熱部材等をマウントし、加熱硬化させて、接着を行なうことができる。加熱硬化の条件は、適宜、選択することができ、例えば、100〜200℃のピーク温度で加熱することができる。次いで、ワイヤボンディングを経て、封止することにより、半導体装置を得ることができる。この半導体装置は、プリント配線基板上にはんだ実装して、各種の電子部品とすることができる。本発明のダイアタッチ剤は、接着強度に優れている。更に、支持部材が、銅リードフレームや銅基板である場合にも、これらの効果を一層発揮することができ、有用性が高い。
【実施例】
【0036】
以下、実施例及び比較例によって、本発明を更に詳細に説明する。部、%は、他に断りのない限り、質量部、質量%を表す。本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
【0037】
実施例における測定方法は、以下のとおりである。
(比表面積)
BET比表面積測定装置により測定した。
(タップ密度)
JIS Z 2512 金属粉−タップ密度測定方法に従い測定した。
(粘度)
E型粘度計(3°コーン)を用いて、25℃で、所定の回転数で測定した値である。
(体積抵抗率)
スライドガラス上にペーストを幅3mm、厚さ50μm塗布し、室温(25℃)から160℃まで30分で昇温し160℃のオーブン中に60分間保持して硬化した後、硬化物の体積抵抗率を4端子法で測定した値である。
(熱伝導率)
実施例・比較例の各剤を室温(25℃)から160℃まで30分で昇温し、160℃のオーブン中に60分間保持して硬化してフィルム状の硬化物を作製し、NETZSCH社製LFA447 Nanoflash装置を用いレーザフラッシュ法にて測定した値である。
(ダイシェア強度)
5mm×5mmのシリコンチップを、実施例・比較例の各剤を用いて、銅リードフレーム上にマウントし、室温(25℃)から160℃まで30分で昇温し160℃のオーブン中に60分間保持して硬化させた。硬化後、Dage社製のダイシェアテスターを用いて、室温(25℃)で測定した値である。
【0038】
実施例・比較例では、表1に示す配合量で、添加剤、イミダゾール系硬化促進剤及び希釈剤を容器に入れ、自転・公転式の攪拌機(シンキー社製あわとり練太郎)で2分間攪拌混合し、更にこの溶液にエポキシ樹脂、硬化剤、シランカップリング剤を添加して自転・公転式の攪拌機でこの溶液が完全に透明な液状になるまで約1分間攪拌混合して、ダイアタッチ剤の樹脂成分を調整した。この樹脂成分に銀粉を添加して自公転式攪拌機で30秒分散させて、その後減圧脱泡してペースト状のダイアタッチ剤を作製した。各剤について特性を測定した。結果を表1に示す。
【0039】
添加剤であるジチオジプロピオン酸の量を変化させたこと以外は、実施例1と同様にして、ダイアタッチペーストを調製し、添加量と体積抵抗率・熱伝導率・ダイシェア強度を求めた。
図1は、添加量と体積抵抗率・熱伝導率の関係を示す図であり、
図2は、添加量とダイシェア強度の関係を示す図である。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
【表3】
【0043】
実施例1〜6と比較例1〜3の対比から明らかなように、ジチオジグリコール酸、ジチオジプロピオン酸を特定量で含む実施例の各剤は、低い体積抵抗率、熱抵抗率を有し、かつ高いダイシェア強度を有していた。一方、スルフィド結合を有しない脂肪族ジカルボン酸を添加剤として使用した比較例4・5は、体積抵抗率が高く、比較例4はダイシェア強度も小さかった。ジスルフィド結合ではなくスルフィド結合(−S−)を有する脂肪族ジカルボン酸を添加剤として使用した比較例6・7は、ダイシェア強度も小さく、比較例6は体積抵抗率においても実施例に及ばなかった。ジスルフィド結合ではなくスルフィド結合(−S−)を有する脂肪族モノカルボン酸を添加剤として使用した比較例8は、体積抵抗率・ダイシェア強度の点で、実施例に及ばなかった。ジスルフィド結合を有する芳香族ジカルボン酸を使用した比較例9は体積抵抗率が極めて高く、熱伝導率は低かった。添加剤の代わりに、硫黄含有シランカップリング剤を使用した比較例10〜13は、体積抵抗率の点で実施例に及ばず、熱伝導率も総じて低く、また、比較例11に示されるようにジチオジプロピオン酸を併用すると、むしろ熱伝導率は低下した。シランカップリング剤を欠く比較例14は、ダイシェア強度が低かった。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明のダイアタッチ剤によれば、低い体積抵抗率を保持しつつ、接着強度、特に、リフロー時の接着強度と、熱伝導率との両方を改善することができ、産業上の有用性が高い。