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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6134612
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】磁気抵抗素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 43/12 20060101AFI20170515BHJP
   H01L 29/82 20060101ALI20170515BHJP
   H01L 43/08 20060101ALI20170515BHJP
   H01L 21/8246 20060101ALI20170515BHJP
   H01L 27/105 20060101ALI20170515BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20170515BHJP
   C23F 4/00 20060101ALI20170515BHJP
   G11B 5/39 20060101ALI20170515BHJP
   G01R 33/09 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
   H01L43/12
   H01L29/82 Z
   H01L43/08 Z
   H01L27/10 447
   H01L21/302 104C
   C23F4/00 A
   G11B5/39
   G01R33/06 R
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-177686(P2013-177686)
(22)【出願日】2013年8月29日
(65)【公開番号】特開2015-46529(P2015-46529A)
(43)【公開日】2015年3月12日
【審査請求日】2016年5月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【弁理士】
【氏名又は名称】折居 章
(72)【発明者】
【氏名】山本 直志
(72)【発明者】
【氏名】大野 英男
(72)【発明者】
【氏名】池田 正二
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 英夫
【審査官】 安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−222093(JP,A)
【文献】 特開2003−197920(JP,A)
【文献】 特開2009−302434(JP,A)
【文献】 特開2006−004969(JP,A)
【文献】 特開2012−204408(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/030529(WO,A1)
【文献】 特開2009−081271(JP,A)
【文献】 特開2006−165030(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 43/08−12
H01L 29/82
H01L 27/105
H01L 21/8246
H01L 21/3065
C23F 4/00
G11B 5/39
G01R 33/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、第1の強磁性膜を含む参照層と、第2の強磁性膜を含む記憶層と、前記第1の強磁性膜と前記第2の強磁性膜との間に配置されたMgOからなる障壁層と、を有する積層体を形成し、
前記積層体の上に、Ru膜からなるマスクを形成し、
塩素系ガスのプラズマを形成することで、前記マスクを介して前記記憶層をエッチングし、
前記基板にバイアス電圧を印加し、アルゴンと塩素系ガスとの混合ガスのプラズマを形成することで、前記マスクを介して前記障壁層と前記参照層とをエッチングする
磁気抵抗素子の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の磁気抵抗素子の製造方法であって、
前記障壁層をエッチングする工程は、アルゴンイオンによるスパッタイオンエッチングで前記障壁層をエッチングする
磁気抵抗素子の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の磁気抵抗素子の製造方法であって、
前記参照層は、前記第1の強磁性膜と貴金属膜とを少なくとも含み、
前記参照層をエッチングする工程は、
塩素系ガスによる反応性イオンエッチングで前記第1の強磁性膜をエッチングする工程と、
アルゴンイオンによるスパッタイオンエッチングで前記貴金属膜をエッチングする工程とを含む
磁気抵抗素子の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の磁気抵抗効果素子の製造方法であって、
前記混合ガスは、前記塩素系ガスを5[at%]以上20[at%]以下含む
磁気抵抗効果素子の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の磁気抵抗素子の製造方法であって、
前記バイアス電圧は、0.5[W/cm2]以上2.6[W/cm2]以下である
磁気抵抗素子の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の磁気抵抗素子の製造方法であって、さらに、
前記積層体の上に、Taからなる電極層を形成し、
前記マスクを形成する工程は、
前記電極層の上にRu膜を形成し、
前記Ru膜の上にSiNマスクを形成し、
酸素系ガスのプラズマを形成することで、前記SiNマスクを介して前記Ru膜をエッチングする
磁気抵抗素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気抵抗効果を利用した磁気抵抗素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、磁気メモリ(MRAM:Magnetic Random Access Memory)、磁気ヘッド、磁気センサなど、磁気抵抗効果を利用した磁気抵抗素子が種々開発されている。特に、磁気メモリの分野においては、素子に電流を流すことにより、電子の持つスピンで磁化を書き換えるスピン注入型MRAM(STT(Spin-Transfer Torque)−MRAM)が提案されている。
【0003】
磁気抵抗素子は、典型的には、磁化方向が固定された参照層(ピン層)と、磁化方向が可変な記憶層(フリー層)と、これらの間に配置されたAl23、MgO等の非磁性絶縁材料からなる障壁層(トンネル接合層)とを有する。障壁層を挟み込む参照層及び記憶層各々の界面は、Fe系材料又はCoFe系材料からなる強磁性膜で構成される。そして、この種の磁気抵抗素子は、参照層、障壁層及び記憶層の形成後、これらをエッチング加工することで、個々のメモリセル(MTJ:Magnetic Tunnel Junction)を形成するようにしている。
【0004】
メモリセルの形成に必要な強磁性膜のエッチング方法として、RIE(Reactive Ion Etching)法を用いることが知られている。例えば特許文献1には、Taマスクを介してアルコールあるいはCO+NH3のカルボニル系ガスで強磁性膜をエッチングする方法が記載されている。さらに特許文献2には、Ruマスクを介して塩素系ガスで強磁性膜をエッチングする方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−42143号公報
【特許文献2】WO2011/030529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の方法は、プラズマ中で解離された酸素によって参照層の側壁が酸化するという問題がある。一方、特許文献2に記載の方法は、記憶層のエッチングのみで記憶セルの形成が完了しており、障壁層や参照層のエッチング方法については開示されていない。
【0007】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、記憶層、障壁層及び参照層を高精度にエッチングすることができる磁気抵抗素子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る磁気抵抗素子の製造方法は、基板上に、第1の強磁性膜を含む参照層と、第2の強磁性膜を含む記憶層と、前記第1の強磁性膜と前記第2の強磁性膜との間に配置されたMgOからなる障壁層と、を有する積層体を形成することを含む。
前記積層体の上に、Ru膜からなるマスクが形成される。
塩素系ガスのプラズマを形成することで、前記マスクを介して前記記憶層がエッチングされる。
前記基板にバイアス電圧を印加し、アルゴンと塩素系ガスとの混合ガスのプラズマを形成することで、前記マスクを介して前記障壁層と前記参照層とがエッチングされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る磁気抵抗素子の概略構成を示す側断面図である。
図2】上記磁気抵抗素子の各層の構成例を示す概略断面図である。
図3】上記磁気抵抗素子の製造装置を概略的に示す平面図である。
図4】上記製造装置におけるエッチング装置の概略構成図である。
図5】上記磁気抵抗素子の製造方法を説明する図であって、積層体の作製工程を示す概略断面図である。
図6】上記磁気抵抗素子の製造方法を説明する図であって、マスクパターンの形成工程を示す概略断面図である。
図7】上記磁気抵抗素子の製造方法を説明する図であって、マスクパターンの形成工程を示す概略断面図である。
図8】上記磁気抵抗素子の製造方法を説明する図であって、上部電極及び記憶層のエッチング工程を示す概略断面図である。
図9】上記磁気抵抗素子の製造方法を説明する図であって、障壁層及び参照層のエッチング工程を示す概略断面図である。
図10】上記磁気抵抗素子の構成の変形例を示す概略側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態に係る磁気抵抗素子の製造方法は、基板上に、第1の強磁性膜を含む参照層と、第2の強磁性膜を含む記憶層と、前記第1の強磁性膜と前記第2の強磁性膜との間に配置されたMgOからなる障壁層と、を有する積層体を形成することを含む。
前記積層体の上に、Ru膜からなるマスクが形成される。
塩素系ガスのプラズマを形成することで、前記マスクを介して前記記憶層がエッチングされる。
前記基板にバイアス電圧を印加し、アルゴンと塩素系ガスとの混合ガスのプラズマを形成することで、前記マスクを介して前記障壁層と前記参照層とがエッチングされる。
【0011】
MTJの構成材料は複雑化の一途を辿っており、参照層は、貴金属膜(Pt,Pd等)と強磁性膜(Co,Fe等)を含む多層膜や合金膜で構成され、各々の総膜厚は、10〜20nm程度であることが一般的である。また、参照層及び記憶層を構成する強磁性膜は、CoFeB、障壁層は、MgOであることが一般的である。このような複雑な膜構成の積層膜をエッチングするためには種々の混合ガスを使用するかマルチステップでのエッチングあるいはスパッタライクなエッチングプロセスが考えられる。
【0012】
ここで、Pt等の貴金属膜やMgO膜は、強磁性膜と異なり、ハロゲン系をはじめとしたエッチングガスでリアクティブにエッチングできない。Ruは、ガス中に酸素を含まなければ、PtやMgOと同様にハロゲン系ではリアクティブにエッチングできない材料であるため、マスクとして十分に機能し得る。障壁層は、通常、1nm程度と薄いため、スパッタ的にエッチングしてもRuマスクとの選択比は大きな問題とならない。Ru,Pt,Pdのスパッタ収量は、Ruが最も低い。すなわちRuは、スパッタ的なエッチングでも貴金属膜に対して大きな選択比を確保できるため、微細な素子の加工が可能となる。
【0013】
そこで上記製造方法においては、リアクティブ性のガスとして塩素系のガスを用い、スパッタ性のガスとしてアルゴンを用いることで、中間的なエッチングを実現し、これにより障壁層及び参照層を高精度にエッチングすることを可能とした。
【0014】
塩素系ガスとしては、典型的にはCl2が用いられるが、これ以外にも、BCl3、SiCl4等が適用可能である。
【0015】
また、上記積層体は、参照層と記憶層との間に障壁層が挟み込まれた構成であれば積層順序は特に限定されず、参照層が基板側に配置されてもよいし、記憶層が基板側に配置されてもよい。
【0016】
前記障壁層をエッチングする工程は、アルゴンイオンによるスパッタイオンエッチングで前記障壁層をエッチングしてもよい。
MgOからなる障壁層は、リアクティブにエッチングすることが困難であるため、スパッタ的なエッチングが有効である。また、Ruマスクに対するMgOのエッチング選択比は高くはないが、MgOの膜厚が1nm程度であるため、Ruマスクの消耗量を低く抑えることができる。
【0017】
前記参照層は、少なくとも前記第1の強磁性膜と貴金属膜を含む場合、前記参照層をエッチングする工程は、塩素系ガスによる反応性イオンエッチングで前記第1の強磁性膜をエッチングする工程と、アルゴンイオンによるスパッタイオンエッチングで前記貴金属膜をエッチングする工程とを含んでもよい。
エッチングガスに酸素を含まないため、参照層の側壁を酸化させることなく参照層をエッチングすることができる。
【0018】
前記混合ガスは、前記塩素系ガスを5[at%]以上20[at%]以下含むことが好ましい。
塩素系ガスが5[at%]未満では、アルゴンガスによるスパッタイオンエッチングが傾向的に強くなる結果、サブトレンチを誘発し、参照層の高精度なエッチングが困難となる。一方、塩素系ガスが20[at%]を超えると、アルゴンの存在比率が少なくなる結果、貴金属膜を適切にエッチングすることが困難となる。
【0019】
前記バイアス電圧は、0.5[W/cm2]以上2.6[W/cm2]以下であることが好ましい。
バイアス電圧が0.5[W/cm2]未満では、アルゴンイオンによるスパッタエッチング作用が低下し、貴金属膜を適切にエッチングすることが困難となる。一方、バイアス電圧が2.6[W/cm2]を超えると、Ruマスクの耐久性が低下するおそれがある。
【0020】
前記磁気抵抗効果素子の製造方法は、さらに、前記積層体の上に、Taからなる電極層を形成することを含んでもよい。この場合、前記マスクを形成する工程は、前記電極層の上にRu膜を形成し、前記Ru膜の上にSiNマスクを形成し、酸素系ガスのプラズマを形成することで、前記SiNマスクを介して前記Ru膜をエッチングする。
Ruは酸素を含むガスでエッチングが可能であり、Taは酸素を含むガスではエッチング速度が極端に遅くなるため、Taに対する選択比を大きくしてRuを加工することができ、これによりRuマスクを高精度に形成することが可能になる。なおTaは、塩素系ガスのプラズマを形成することでエッチングすることができる。
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0022】
[磁気抵抗素子の構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る磁気抵抗素子の概略構成を示す断面図である。本実施形態に係る磁気抵抗素子10は、基板11上に、下部電極12、参照層(ピン層)13、障壁層(非磁性絶縁層)14、記憶層(フリー層)15、上部電極16が順に積層された構成を有している。
なお理解容易のため、各層の構成は誇張して示されており、各層間の厚みの比率は必ずしも実際の厚みに対応するものではない。
【0023】
磁気抵抗素子10は、障壁層14をトンネル接合層とするMTJ(Magnetic Tunnel Junction)を構成し、例えば、STT−MRAM、磁気ヘッド、磁気センサ等の各種磁気デバイスとして用いられる。
【0024】
基板11は、シリコン(Si)基板等の半導体基板で構成されるが、これに限られず、セラミック基板やガラス基板等であってもよい。下部電極12は、非磁性金属の単層、多層、あるいは合金膜である。参照層13は、磁化方向が固定された強磁性材料層で構成されている。障壁層は、参照層13と記憶層15との間を接合するトンネルバリア層であり、酸化マグネシウム(MgO)で構成される。記憶層15は、磁化方向が変化可能な強磁性材料層で構成されている。上部電極16は、タンタル(Ta)やルテニウム(Ru)等で構成された金属導体層である。
【0025】
磁気抵抗素子10は、参照層13の磁化方向と記憶層15の磁化方向との相違による抵抗値の変化を利用して、情報の記録あるいは読み出しを可能とする。例えば、各層の磁化方向が相互に同一方向(平行)の場合の抵抗値は最も小さく、各層の磁化方向が相互に逆方向(反平行)の場合の抵抗値は最も大きい。そこで、前者の磁化態様を「0」、後者の磁化態様を「1」と各データを規定することによって、当該素子によるデジタル情報の記録あるいは読み出しが可能となる。情報の記録(書き込み)及び読み出しは、STT−MRAMの場合、下部電極12及び上部電極16を通じての記憶層15に対する電流の供給制御によって行われる。なお、ここでは磁気抵抗素子の詳細な動作原理の説明は省略する。
【0026】
参照層13及び記憶層15は各種の材料で構成された単層構造あるいは積層構造を有する。各層を構成する材料としては、例えば、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、マンガン(Mn)、ルテニウム(Ru)、タンタル(Ta)等から選択することができる。また、これらの材料にシリコン(Si)、ホウ素(B)、リン(P)などの半金属元素や、テルビウム(Tb)などの希土類元素が含まれてもよい。
【0027】
図2に、磁気抵抗素子を構成する各層の構成材料の一例を示す。本実施形態において、下部電極12はTa/Pt多層膜で構成される。参照層13および記憶層15はCoFeB膜を含む。
【0028】
参照層13および記憶層15はCoFeB膜の単層構造に限られず、MgO/CoFeB/MgO構造や、CoFeB/非磁性金属(TaやTaを少なくとも一つ含む合金)/CoFeB/MgO構造、ならびに他の磁性材料からなる単層構造あるいは他の材料層との積層構造であってもよい。例えば、Co/Pt人工格子、L1規則合金(FePt、CoPt、FePd)、L1規則合金(CoPt)、相分離系合金(CoCrPt、CoCrPt−SiO)、ホイスラー合金(CoMnSi)、アモルファス希土類(TbFeCo)などが挙げられる。
【0029】
障壁層14と接合される参照層13及び記憶層15各々の界面は、Fe系、Co系またはCoFe系強磁性材料膜で構成されており、特に本実施形態では、CoFeB膜で構成されている。以後の説明では、参照層13側のCoFeB膜を第1のCoFeB膜(第1の強磁性層)ともいい、記憶層15側のCoFeB膜を第2のCoFeB膜(第2の強磁性膜)ともいう。
【0030】
MRAM等の磁気メモリ素子は、共通の基板11上に複数のメモリセルが形成された形態を有する場合が多い。各メモリセル(磁気抵抗素子10)は、基板11上に、下部電極12、参照層13、障壁層14、記憶層15及び上部電極16を順に積層した積層体が形成された後、上部電極16、記憶層15、障壁層14及び参照層13をセル単位で順にエッチングすることで分離形成される。より具体的には、後述するように、上部電極16の上に形成されたRu(ルテニウム)マスクを介して、上部電極16、記憶層15、障壁層14及び参照層13の各層がパターニングされる。
【0031】
[磁気抵抗素子の製造装置]
図3は、磁気抵抗素子の製造装置を概略的に示す平面図である。図示する製造装置100は、搬送室101と、その周囲に配置されたロード室101、アンロード室102、第1のエッチング室104、第2のエッチング室105およびアッシング室106を有するマルチチャンバ式の真空処理装置で構成される。
【0032】
搬送室101には、各室へ基板を搬送する搬送ロボットが配置されている。第1のエッチング室104および第2のエッチング室105はそれぞれ同様な構成のエッチング装置で構成されており、本実施形態では、第1のエッチング室104は高温エッチング用のエッチング装置で構成され、第2のエッチング室105は常温エッチング用のエッチング装置で構成される。
【0033】
図4は、上記エッチング装置の概略構成図である。図示するエッチング装置20は、有磁場誘導結合プラズマエッチング装置として構成されているが、勿論これに限られない。
【0034】
エッチング装置20は、真空排気可能なチャンバ21を備える。チャンバ21の内部には、基板を支持するステージ25が設置されている。ステージ25の上面には、ステージ25上に載置された基板を保持する静電チャックが配置されており、チャック後基板裏面にHeを導入して均熱を図る機構となっている。エッチング装置20は、ステージ25の上面又はステージ25の内部において熱媒体を温度管理しながら循環させるチラー循環ユニット26を備えている。チラー循環ユニット26は、ステージ25を所定温度に保持することが可能である。高温エッチング用のエッチング装置の場合、ステージ25にヒータを内蔵し、加熱温度を制御可能に構成される。
【0035】
ステージ25の周囲には、プラズマ形成空間22を区画する防着板23が設置されている。エッチング装置20は、プラズマ形成空間22に導入された反応性ガス(エッチャント)のプラズマを形成し、当該反応性ガスのラジカルを生成する。反応性ガスの種類は、エッチングすべき材料膜の種類に応じて設定あるいは切り替えられ、例えば、Ruマスクのパターニング時には酸素系ガスが、上部電極及び記憶層のパターニング時には塩素系ガスが、そして障壁層及び参照層のパターニング時には、アルゴンと塩素系ガスとの混合ガスが導入可能に構成される。
【0036】
上記酸素系ガスは、典型的には酸素であるが、これに限られず、酸素と塩素の混合ガス等であってもよい。酸素ラジカルは、Ruと化学反応し蒸気圧の高いRuO4を生成することでRu膜を選択的にエッチングする。塩素系ガスとしては、Cl2が用いられるが、これ以外にも、BCl3、SiCl4等が適用可能である。塩素ラジカルは、強磁性膜と化学反応し蒸気圧の高いCo又はFeの塩素化合物を生成することで、強磁性層を選択的にエッチングする。
【0037】
プラズマの発生機構として、エッチング装置20は、アンテナ28と、高周波電源29と、マグネットユニット30と、ガス導入ライン等を備える。アンテナ28は、プラズマ形成空間22の上部を閉塞する蓋体24の上部に配置されており、高周波電源29に接続されることで、プラズマ形成空間22に高周波誘導電場を形成する。マグネットユニット30は、蓋体24の上部に設置されており、プラズマ形成空間22に固定磁場を形成する。ガス導入系を介してプラズマ形成空間22へ導入された反応性ガスは、アンテナ28による誘導電場の作用とマグネットユニット30による固定磁場の作用とを受けてプラズマ化する。エッチング装置20は、プラズマ中のイオンをステージ25側へ引き付けるバイアス電源27を備える。バイアス電源27は、高周波電源で構成することができる。
【0038】
Ruマスクの形成から参照層のエッチングにわたる各工程には、工程毎に異なるエッチング装置が用いられてもよいし、一台のエッチング装置で各工程を連続的に行うことも可能である。
【0039】
[磁気抵抗素子の製造方法]
次に、本実施形態の磁気抵抗素子10の製造方法について説明する。図5図9は、磁気抵抗素子10の製造方法を説明する工程断面図である。
【0040】
(積層体作製工程)
図5に示すように、基板11上に、下部電極12、参照層13、障壁層14、記憶層15、上部電極16及びRu膜17を順に成膜した積層体Lを作製する。各層は、スパッタリング法、CVD法等の薄膜形成方法によって所定厚みにそれぞれ形成される。
【0041】
(マスクパターン形成工程)
続いて、積層体Lをセル単位に加工するためのエッチングマスクが形成される。本実施形態では、マスク材として、Ru膜17と、SiN(窒化珪素)膜18とが上部電極16の上に、順に形成される(図5)。SiN膜18は、Ru膜17を加工するためのSiNマスク18M(図6)を形成するためのものであり、Ru膜17は、積層体Lを加工するためのRuマスク17M(図7)を形成するためのものである。SiNマスク18Mは、SiN膜18に代えて、SiO2膜、又は、SiNとSiO2の積層膜で構成されてもよい。
【0042】
Ru膜17及びSiN膜18の厚みは特に限定されないが、後述するMTJのエッチング工程において少なくともRuマスク17Mが最後までマスクとして機能し得る厚さに形成される。本実施形態では、Ru膜17が10nm、SiN膜18が30nmの厚さでそれぞれ形成される。
【0043】
SiNマスク18Mは、SiN膜18を所定形状にパターニングすることで形成される。具体的には、SiN膜18の上に電子線描画対応のフォトレジスト膜を形成し、電子線描画、現像処理等を経て、レジストパターン19が形成される(図6)。パターンサイズは特に限定されず、素子サイズの大きさに応じて適宜設定され、例えば、30〜100nmφの大きさに形成される。続いて、レジストパターン19をマスクとして、SiN膜18がエッチングされる。
【0044】
本実施形態では、エッチングガスにCHF3ガスを用いた反応性イオンエッチング(RIE)によって、SiN膜18がエッチングされる。これにより、Ru膜17上にSiNマスク18Mが形成される。その後、レジストパターン19は、アッシング室106においてアッシング処理により除去される。なおレジストパターン19は、以後のエッチング工程により自然に除去されるため、SiNマスク18Mの上に残留させてもよい。
【0045】
次に、図7に示すように、第2のエッチング室105において、SiNマスク18Mを介してRu膜17がエッチングされる。本実施形態では、エッチングガスに酸素、又は、酸素と塩素の混合ガスを用いたRIEによってRuO4が生成され、これによりRu膜17がエッチングされる。以上のようにして、上部電極16上にRuマスク17Mが形成される。
【0046】
エッチング条件は特に限定されず、例えば、基板温度を室温、ガス圧力を1[Pa]、塩素ガス流量を10[sccm]、酸素ガス流量を25[sccm]、アンテナ入力パワーを200[W]、バイアス入力パワーを0.28[W/cm2]とした。
【0047】
ここで、Ru膜17は、SiNマスク18Mに対して高い選択比を有する。また上部電極16を構成するTa膜は、酸素との反応によりエッチングされにくくなるため、エッチングストッパ層として有効に機能する。このため、微細なRuマスク17Mを高精度に形成することが可能となる。
【0048】
一例として、Ruマスク17Mの形成時におけるSiN、Ru及びTaの各エッチングレートを表1に示す。Ruマスク17M加工後におけるSiNマスク18Mの残存厚みは、Ru膜17の加工時間を20秒とすると、オーバーエッチング分も含めて、当初の30nmから最低でも28nmにまで減少する。
【0049】
【表1】
【0050】
続いて、上部電極16以下のMTJ多層膜がセルサイズに加工される。この工程は、上部電極16及び記憶層15を加工する第1のエッチング工程と、障壁層14及び参照層13を加工する第2のエッチング工程とを有する。
【0051】
(第1のエッチング工程)
図8に示すように、第1のエッチング工程では、第1のエッチング室104において、SiNマスク18M(及びRuマスク17M)を介して、上部電極16(Ta膜)及び記憶層15(CoFeB膜)が順にエッチングされる。本実施形態では、塩素ガスのプラズマを形成することで、上部電極16及び記憶層15がリアクティブにエッチングされる。
【0052】
エッチング条件は特に限定されず、例えば、基板温度を180℃、ガス圧力を0.5[Pa]、アンテナ入力パワーを2000[W]、バイアス入力パワーを0.14[W/cm2]とした。
【0053】
第1のエッチング工程では、エッチングガスに酸素を含まないため、記憶層15(FeCoB膜)の側壁の酸化を防止することができる。また、障壁層14(MgO膜)は、塩素系ガスではエッチングされないため、エッチングストッパ層として有効に機能する。これにより、上部電極16及び記憶層15を高精度に形成することが可能となる。
【0054】
一例として、第1のエッチング工程におけるSiN,Ru、Ta及びCoFeBの各エッチングレートを表2に示す。第1のエッチング工程終了後におけるSiNマスク18Mの残存厚みは、上部電極16(厚み50nmのTa膜)及び記憶層15(厚み1.5nmのFeCoB膜)のトータル加工時間を23秒とすると、オーバーエッチング分も含めて、加工前の28nmから最低でも18nmにまで減少する。
【0055】
【表2】
【0056】
(第2のエッチング工程)
第2のエッチング工程では、第1のエッチング室104において、図9に示すように、SiNマスク18M(及びRuマスク17M)を介して、障壁層14(MgO)及び参照層13が順にエッチングされる。本実施形態では、基板11にバイアス電力を印加し、かつ、アルゴンと塩素ガスの混合ガスのプラズマを形成することで、障壁層14(MgO)及び参照層13が順にエッチングされる。
【0057】
参照層13は、貴金属膜(Pt,Pd等)と強磁性膜(Co,Fe等)を含む多層膜や合金膜で構成され、各々の総膜厚は、10〜20nm程度である。Pt等の貴金属膜やMgO膜は、強磁性膜と異なり、ハロゲン系をはじめとしたエッチングガスでリアクティブにエッチングできない。Ruは、ガス中に酸素を含まなければ、PtやMgOと同様にハロゲン系ではリアクティブにエッチングできない材料であるため、マスクとして十分に機能し得る。障壁層は、通常、1nm程度と薄いため、スパッタ的にエッチングしてもRuマスクとの選択比は大きな問題とならない。Ru,Pt,Pdのスパッタ収量は、Ruが最も低い。すなわちRuは、スパッタ的なエッチングでも貴金属膜に対して大きな選択比を確保できるため、微細な素子の加工が可能となる。
【0058】
そこで本実施形態においては、リアクティブ性のガスとして塩素系のガスを用い、スパッタ性のガスとしてアルゴンを用いることで、中間的なエッチングを実現し、これにより障壁層14及び参照層13を高精度にエッチングすることを可能とした。
【0059】
すなわち、障壁層14は、アルゴンイオンによりスパッタ的にエッチング(スパッタイオンエッチング)される。参照層13に関しては、貴金属膜は、アルゴンイオンによりスパッタ的にエッチングされ、強磁性膜は、塩素ガスによりリアクティブにエッチングされる。
【0060】
エッチング条件は、基板温度を180℃、アルゴン/塩素系ガス比を90/10パーセント、基板バイアスを1.0[W/cm2]としたが、勿論これに限られない。
【0061】
例えば、アルゴンガスと塩素ガスの流量比は上記に限られず、アルゴンガスに対する塩素ガスの量は、例えば、5[at%]以上20[at%]以下とすることができる。塩素ガスが5[at%]未満では、アルゴンガスによるスパッタイオンエッチングが傾向的に強くなる結果、サブトレンチを誘発し、参照層13の高精度なエッチングが困難となる。一方、塩素ガスが20[at%]を超えると、アルゴンの存在比率が少なくなる結果、貴金属膜を適切にエッチングすることが困難となる。
【0062】
基板11に印加するバイアス電圧は、例えば、0.5[W/cm2]以上2.6[W/cm2]以下とすることができる。バイアス電圧が0.5[W/cm2]未満では、アルゴンイオンによるスパッタエッチング作用が低下し、貴金属膜を適切にエッチングすることが困難となる。一方、バイアス電圧が2.6[W/cm2]を超えると、Ruマスク17Mの耐久性が低下するおそれがある。
【0063】
一例として、第2のエッチング工程におけるSiN,Ru、Co、Pt、CoFeB及びMgOの各エッチングレートを表3に示す。また、SiN(マスク18M)に対するCo、Pt及びMgOに対するエッチング選択比と、Ru(マスク17M)に対するCo、Pt、CoFeB及びMgOに対するエッチング選択比とを表4に示す。さらに、Arイオン(Ar)の加速エネルギーが100[eV]、300[eV]及び600[eV]におけるRu、Co、Fe、Pt及びPdのスパッタ収量(atoms/ion)を表5に示す。
【0064】
【表3】
【0065】
【表4】
【0066】
【表5】
【0067】
表3〜表5より、SiN及びRuは、Co、Pt、CoFeBよりも低いエッチングレートを有するため、これらの加工用マスクとして有効に機能し得る。また、マスクがSiNのときよりもRuのときの方がエッチング選択比が高いことから、第2のエッチング工程ではRuマスク単層でも十分な機能を果たせることがわかる。
【0068】
参照層13を構成する各金属膜の総厚とエッチング時間を表6に示す。エッチング時間は、表3に示した各金属膜のエッチングレートから算出した。
【0069】
【表6】
【0070】
SiNマスク18Mに関しては、第2のエッチング工程を開始する直前の膜厚が18nmであり、第2のエッチング工程におけるSiNのエッチングレートが14.1nm/minであることから、計算上ではSiNマスク18Mは76.6秒間消失せずに存在することになる。一方、参照層13の総加工時間は73.3秒(表6)と試算されるため、ジャストエッチングでSiNマスク18Mはほぼ消失し、オーバーエッチング分に相当するエッチング時間だけRuマスク17Mがエッチングされる。Ruマスク17Mの当初厚みは10nmであるため、マスクとしての機能を十分に果たすことができる。
【0071】
以上のように、本実施形態によれば、参照層13を高精度にエッチングすることができる。これにより、微細なメモリセルを高精度に作製することが可能となる。
【0072】
また本実施形態によれば、参照層13のエッチングに酸素を含まないエッチングガスを用いているため、参照層13(強磁性膜)の側壁の酸化が防止され、所期の磁気抵抗効果を有するMTJを高精度に形成することが可能となる。
【0073】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0074】
例えば以上の実施形態では、磁気抵抗素子の構成例として、図2に示した構成例を例に挙げて説明したが、勿論これに限られず、MgO層とこれを挟む一対の強磁性層を除く他の層の構成は適宜変更することが可能である。
【0075】
また以上の実施形態では、磁気抵抗素子の構成として、参照層13が記憶層15よりも基板11側に配置された例を説明したが、これに限られず、図10に示すように記憶層15が参照層13よりも基板11側に配置されてもよい。図10に示す磁気抵抗素子30は、基板11上に、下部電極12、記憶層15、障壁層14、参照層13および上部電極16の順で積層される。そしてRuマスク17Mを介して、上部電極16、参照層13、障壁層14および記憶層15が順次エッチングされることでセル化される。この場合、参照層13および障壁層14のエッチングについては上記第2のエッチング工程と同様なエッチング条件を採用することができ、記憶層15のエッチングについては上記第1のエッチング工程と同様なエッチング条件を採用することができる。
【0076】
また以上の実施形態では、MTJの加工用マスクがRuマスク17MとSiNマスク18Mとの積層体で構成されたが、これに限られず、Ruマスク17Mのみで上記加工用マスクが構成されてもよい。
【0077】
さらに以上の実施形態では、上部電極16がTa膜で構成されたが、これに代えて、Ru膜で構成されてもよい。この場合、当該Ru膜を、記憶層、障壁層及び参照層のエッチングマスクとして使用することができる。
【符号の説明】
【0078】
10…磁気抵抗素子
11…基板
12…下部電極
13…参照層
14…障壁層
15…記憶層
16…上部電極
17M…Ruマスク
18M…SiNマスク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10