(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記真空チャンバが、第1の側壁と第2の側壁と、チャンバ連結アセンブリとを備え、該チャンバ連結アセンブリが前記第1の側壁にある隣接チャンバへの真空相互連結部の1つの第1の真空フランジと前記第2の側壁にある別の隣接チャンバへの真空相互連結部の1つの第2の真空フランジとを有する、請求項1又は2に記載の装置。
前記真空チャンバが、底部壁および上部壁である別の2つの側壁を備え、前記セパレータ構造体が、前記真空チャンバの前記壁のうちの1つ以下とのガス密連結部を有して設けられる、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、図に1つまたは複数の例が示されている本発明の様々な実施形態について細部にわたり言及する。図面についての以下の説明の中で、同じ参照番号は同じ構成要素を指す。一般に、個々の実施形態に関し相違点のみについて説明する。各例は、本発明の説明として与えられており、本発明の限定を意味するものではない。さらに、一実施形態の一部として図示または説明された特徴を他の実施形態に用いて、または他の実施形態と組み合わせて用いて、さらに別の実施形態を得ることができる。本明細書は、このような変更形態または変形形態を含むものである。
【0016】
図1は、堆積装置100を示す。堆積装置100は、真空チャンバ102を含む。通常、真空チャンバ102は、側壁104、第1の側壁部105、および第2の側壁部103を有する。工業技術的な真空を真空チャンバ102内に設けることができるように、壁は真空気密筐体を形成する。通常、側壁104は、隣接チャンバ20への、すなわち隣接チャンバ20のそれぞれの側壁24への連結を考慮しておく。これにより、本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる典型的な実施形態によれば、隣接チャンバ20は、ロードロックチャンバ、移送チャンバ、堆積チャンバ、エッチングチャンバ、および処理チャンバからなる群から選択することができる。
【0017】
堆積装置100はさらに、輸送システム21を含む。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる典型的な実施形態によれば、輸送システム21は、複数のローラ、磁気レールシステム、およびこれらの組合せを含むことができる。通常、輸送システム21は、堆積システムのチャンバのそれぞれに設けられる。これにより、基板10、または1つもしくは複数の基板を支持するキャリアは、堆積システムおよび堆積装置100の中を連続的または準連続的に、矢印11で示されるように輸送することができる。
【0018】
本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる典型的な実施形態によれば、本明細書に記載の装置、システム、および方法は特に、1つまたは複数の堆積システムに沿って基板が動く間に基板処理(たとえば、層スタックの堆積)が実施される動的堆積プロセスに対し有効である。これに関して、動的処理は、基板の動きがない短い期間、または(前後に)動揺する基板の動きがある期間を含み得る。しかし、基板処理の少なくとも一部分、または基板処理の少なくともかなりの部分(たとえば50%以上)は、基板を動かしている間に実施される。
【0019】
図1は、堆積装置100の上面図を示す。したがって、
図1に示される堆積装置では、処理時の基板の配向が垂直である。いくつかの実施形態によれば、基板またはキャリアはわずかに(たとえば、10°以下で)傾斜させることができる。しかし、基板は本質的に垂直である。代替実施形態によれば、本明細書に記載の実施形態による装置、システムおよび方法はまた、水平堆積システムに適用することもできる。この場合、第1の側壁部105は下方壁部になり、第2の側壁部103は上方壁部になる。基板10、または1つもしくは複数の基板が支持されているそれぞれのキャリアは、堆積装置100の中を水平に動く。
【0020】
本明細書に記載の実施形態によれば、第1の回転スパッタカソード110および第2の回転スパッタカソード114が真空チャンバ102内に設けられる。これに応じて、堆積装置100は、動作時にそれぞれのスパッタカソードを支持するための第1の支持体および第2の支持体を含む。これに関して、これら支持体は、回転カソードをそれぞれの回転軸のまわりに回転させるように構成される。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる典型的な実施形態によれば、スパッタカソードは、動作時に矢印111および115で示されるように回転する回転スパッタカソードである。さらに、磁石配置112が第1のスパッタカソード110に設けられ、磁石配置116が第2のスパッタカソード114に設けられる。これらの磁石配置により、基板10上にそれぞれの薄膜を堆積するためのマグネトロンスパッタリングが可能になる。
【0021】
本明細書に記載の実施形態は、第1のスパッタカソード110が第1の材料のターゲットを有し、第2のスパッタカソード114が、第1の材料と異なる第2の材料のターゲットを有する場合に特に有効である。このような場合、一般的な堆積システムは、第1の材料を第1のチャンバ内で、第2の材料を第2のチャンバ内で堆積するために、少なくとも2つの異なるチャンバを含んでいた。これにより、堆積時の材料の混合を回避することができる。しかし、1つ1つの処理チャンバは、堆積システムの全体コストをかなり上げ、堆積システムの設置面積を増大させ、さらには堆積システムの長さが増大するので、堆積システムを通して基板、または1つもしくは複数の基板が支持されるキャリアを輸送する時間によって少なくとも一部はもたらされる処理タクトタイムを増大させる。
【0022】
本明細書に記載の実施形態によれば、スパッタ堆積システムのコストを低減させるために、かつ処理タクトタイムを低減および/または最小限にするために、マルチレイヤ堆積が単一堆積チャンバ(たとえば真空チャンバ102)内で実施され、隣接するスパッタカソード(たとえばカソード110および114)それぞれが、第1の材料の層および第2の材料の層それぞれを同じチャンバ内で堆積する。これに関して、堆積時の材料の混合を低減または回避するために、セパレータ構造体120が真空チャンバ102内に設けられる。
【0023】
典型的な実施形態によれば、セパレータ構造体は、第1のスパッタカソードまたはその回転軸と、第2のスパッタカソードまたはその回転軸との間に設けられる。さらに、セパレータ構造体は、第2のスパッタカソードの堆積ゾーンに向けてスパッタされた第1の材料を受ける、かつ/または阻止するように、また第1のスパッタカソードの堆積ゾーンに向けてスパッタされた第2の材料を受ける、かつ/または阻止するように適合される。
【0024】
したがって、本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、セパレータ構造体は、少なくともスパッタカソードの回転軸間から輸送システム21に向かって延びるプレート形の構造体とすることができる。これにより、本明細書に記載の実施形態によれば、第1のカソード、第2のカソードおよびセパレータ構造体は、単一真空チャンバ102の中に設けられることに留意されたい。したがって、第1のスパッタカソードと第2のスパッタカソードのそれぞれの回転軸の間隔は、約300mmまたは約220mmなど、700mm以下または500mm以下(たとえば200mmから400mm)とすることができる。これは、
図1に参照符号Lで示されている。これにより、本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、外側ターゲット面からセパレータ板までの距離は約100mm以下、たとえば約30mmとすることができ、かつ/または外側ターゲット面のそれぞれの外面の間隔は200mm以下、たとえば約60mmとすることができる。さらに、本明細書に記載の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、2つのカソードのうちの少なくとも一方の直径に対する2つのカソードの軸の間隔の比は2.5以下、たとえば2以下とすることができる。
【0025】
セパレータ板は、第2のターゲットの堆積ゾーンに向けてスパッタされる第1の材料の一部を受け、逆も同様である。これにより、スパッタカソードのターゲットから、ある量の第1の材料が放出される。放出材料の第1の部分が、基板上に要望通りに堆積する。残りの部分、すなわち基板上に堆積しない放出材料の一部は、たとえば、キャリア上、2つのキャリア間、マスクまたはシールド、およびセパレータ板上に堆積する。特に、主堆積方向または平均堆積方向がセパレータ板から遠ざかって傾斜している構成では、残りの部分の少なくとも15%がセパレータ板で受けられる。主堆積方向または平均堆積方向がセパレータ板と平行である実施形態では、30%以上をセパレータ構造体で受けることができる。
【0026】
図2は別の堆積装置100を示す。これにより、
図1に示される堆積装置100と比較して、第1のスパッタカソード110は、矢印211で示された方向に回転する。そのため、基板10またはそれぞれのキャリアに面するカソードの側の回転方向は、スパッタカソード110と114の両方でセパレータ構造体120から遠ざかる向きになっている。したがって、回転方向211および115は、セパレータ構造体120への材料堆積を低減させるように構成されている。以下でより詳細に説明するように、セパレータ構造体120の寸法および位置は、
図2に示された回転方向により低減した混合の確率が考慮に入れられるように構成することができる。
【0027】
図3は、さらに別の堆積装置100を示す。これにより、基板、基板支持体、または基板が支持されるキャリアに面する側のセパレータ構造体から遠ざかる向きになっている回転方向211および115に加えて、磁石配置312および316がセパレータ構造体320から遠ざかって傾いている。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる異なる実施形態によれば、
図2および
図3に関して述べたスパッタカソードの回転方向、および磁石配置の傾きは、互いに別法として、または一緒に利用することができる。両方の方策の結果として、セパレータ構造体から遠ざかって傾いている主堆積方向または平均堆積方向が得られる。これにより、第1の材料と第2の材料の混合のリスクが低減され、セパレータ構造体のサイズ、位置、または他の構成が、低減された混合の確率を考慮に入れるように適合させることができる。さらに、これらの方策の一方または両方は、混合を低減させ、また2つの材料を同一の真空チャンバ内に、混合が低減されて堆積することが見こめ、、その結果、層スタックが、1つの真空チャンバ内に設けられた複数のスパッタカソードから得られるようになるので、それらは有益である。
【0028】
図3に示されたセパレータ構造体320は、板状部と、スパッタカソードからのそれぞれの材料の受取りの増大を可能にする、広げられた端部321とを有す。これにより、混合はさらに低減させることができる。
【0029】
典型的な実施形態によれば、セパレータ構造体320の端部の間隔、または本明細書に記載の別のセパレータ構造体120の端部の間隔は50mm以下、たとえば5mmから25mmとすることができる。この間隔は、
図3に参照記号d1で示されている。したがって、輸送システム21によって与えられる基板支持平面までの、参照符号d2で示された間隔は70mm以下、たとえば25mmから45mmとすることができ、20mmのキャリア厚さが考慮されている。さらには、輸送システムはまた、堆積平面(すなわち、処理される基板の面が動作時に位置する平面)が得られるように構成されたものとして描写することもできる。したがって、堆積平面は、動作時のセパレータ構造体からの間隔がd1になる。
【0030】
本明細書に記載のように、異なる材料を有するターゲットがある2つ以上のスパッタカソードが真空チャンバ102内に設けられる。これにより、装置は、層スタック(すなわち、第1の層の上に第2の層)を堆積するように構成され、その材料が混合することは、所望の層スタック特性を得るには低減または回避されなければならない。そのために、別の選択肢によれば、真空チャンバまたは単一真空チャンバという用語は、いくつかの選択肢によって定義され得る。たとえば、
図3に示された真空チャンバ102は、1つの真空フランジ302を有する。つまり、1つだけの単一フランジ302(たとえば、1つの方向に沿ってチャンバのほぼ中間に設けられた真空フランジ)が、少なくとも2つの堆積源が設けられているチャンバを排気するために設けられる。別の例として、真空チャンバ102の側壁104は、真空チャンバ102を隣接チャンバ20に、隣接チャンバの対応するフランジ部324を用いて連結できるように、フランジ部304を有する。たとえば、真空チャンバ102を1つまたは複数の隣接チャンバ20に連結するために、複数のねじ314をチャンバの周辺部に使用することができる。これに応じて、真空チャンバ102は、隣接チャンバとの連結のためのフランジがある2つの側壁104、すなわち2つしかない側壁104を有する。さらに、
図3に示されるように、1つまたは複数のシール334が、真空チャンバ102とそれぞれの隣接チャンバ20との間に設けられる。
図3は、チャンバの周辺部に沿って延びる2つのOリングを示す。通常、Oリングまたは他のシールは、真空チャンバの側壁の溝または凹部に設けられる。したがって、本明細書に記載の実施形態では、シールを受けるための溝、凹部、または別様に加工された面がある2つの側壁104、すなわち2つしかない側壁104を有する。さらに、本明細書に記載のセパレータ構造体は、厚さが15mm以下である真空チャンバの壁とさらに区別することができる。つまり、セパレータ構造体は、所望の工業技術的な真空を得るための真空チャンバの壁を形成するには不十分な厚さである。さらに、真空チャンバの壁は通常、1つまたは複数のシールドで覆われる。これとは反対にセパレータ板は、薄膜堆積システムの真空筐体を形成できる壁部分がなくて、単なるシールドである。
【0031】
これに関して、キャリアまたは基板、したがってチャンバの壁は通常、サイズが大きいことを考慮する必要もある。チャンバの寸法の大きいものは、本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、少なくとも2m、通常は少なくとも3mある。これにより、大面積の基板またはキャリアを処理することができる。いくつかの実施形態によれば、大面積の基板またはキャリアは、少なくとも0.174m
2のサイズを有することができる。典型的には、そのサイズは約1.4m
2から約8m
2であり、より典型的には約2m
2から約9m
2、または12m
2までにもなり得る。
【0032】
図4は、真空チャンバ102および隣接チャンバ20がある別の堆積装置を示し、基板10は、矢印11で示されるように輸送システム21の上を動く。これにより、第1のカソード110は、セパレータ構造体120(たとえば板)によって隣接カソード414に対し分離される。本明細書に記載のいくつかの実施形態によれば、1つ、2つ、または3つ以上のカソード414を設けることができる。
図4に示された例では、セパレータ構造体120によってカソード110から分離されている3つのカソード414を示す。これにより、第1のターゲット材料がカソード110に与えられ、カソード414のそれぞれは、第1の材料と異なる第2の材料を用いたターゲットを有する。したがって、層スタックは、第1の材料の薄い第1の層と、第2の材料の厚い第2の層とを有するように堆積することができる。第2の材料の堆積速度が第1の材料の堆積速度と比較して小さい場合にも、同様の配置を利用することができる。
図4は、1つの真空フランジ302を有する真空チャンバ102を示し、これにより、カソードおよびセパレータ構造体がすべて1つの真空チャンバの中に設けられることが示されている。
【0033】
図5は、真空チャンバ102の別の概略図を示す。これに関して、輸送システム21は、基板10またはそれぞれのキャリアが、
図5の紙面に対し垂直の方向に動くように設けられる。カソード110、カソードのそれぞれのベアリング、およびカソードの駆動装置514が点線で示されている。真空フランジ302は、チャンバが排気されるように構成されてチャンバに設けられる。
【0034】
図5に示されるように、また本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、セパレータ構造体120(たとえば板)は、セパレータ構造体と、チャンバの少なくとも2つの壁(通常はチャンバの3つの壁)との間に間隙が得られるように、真空チャンバ102内に設けられる。
図5で3つの壁は、セパレータ構造体120と基板10の間に間隔d1が設けられている輸送システムの方の壁、ならびに間隙521が示されている2つの側壁である。したがって、セパレータ構造体は間隙を備える。第1の材料を用いたカソード、および第2の材料が中に設けられたカソードを有する2つの領域は、両方とも1つの真空フランジ302を利用して容易に排気することができる。チャンバの内部の幅(
図5で左側から右側まで)は約3mとすることができるのに対し、対応するセパレータ板の寸法は約2.8mである。すなわち、典型的な実施形態によれば、回転スパッタターゲットの軸に平行な方向のセパレータ板の寸法は、対応する真空チャンバの内部寸法の約85%から99%とすることができる。
【0035】
本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる、さらに別の実施形態によれば、チャンバの側壁とセパレータ構造体120の間に、間隙の代わりに接点を設けることができる。しかし、この場合、接点領域は封止および/またははんだ付けされない。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる、さらに別の実施形態によれば、セパレータ構造体は、処理ガス混合物と、セパレータ構造体の反対側の処理雰囲気とが本質的に類似するように設けられる。
【0036】
図6は、堆積システム600を示す。本明細書に記載の実施形態によれば、堆積システムは、本明細書に記載の実施形態による少なくとも1つの堆積装置を含む。
図6は、たとえば
図1から
図5に示されたように設けることができる、例示的な2つの堆積装置100および100Rを示す。一般に、システム600は2つの隣接堆積ラインを含み、一方は第1の方向の基板移動用に設けられ、他方のラインは逆方向の基板移動用に設けられる。これは矢印で示されている。これに関して、チャンバ612は、真空回転モジュールなどの回転モジュールとすることができる。基板は、一方のライン(たとえば、
図6の下方ライン)から、
図6の上方の反対ラインへと移送することができる。
【0037】
システム600は、基板、または1つもしくは複数の基板を支持するキャリアにシステム内でロードすることができるように、ロードロック602を含む。チャンバ604は、ローディング後に動的堆積プロセスを行うために複数のチャンバのローディング処理および排気をすることが可能であるように、移送チャンバになっている。基板の処理のために1つまたは複数のチャンバを連結および排気するために、ロードロックは大気に対して開放する必要がある。次に、基板またはキャリアをシステムに挿入し、ロードロックを閉じ、第1の移送チャンバを排気することができる。次の基板または次のキャリアをシステムに導入するためにロードロックを開放することが可能になる前に、第1の移送チャンバ604に通風できるように、基板が第2の移送チャンバ606の中に移送される。
【0038】
本明細書に記載の実施形態によれば、異なる材料の2つの層を含む層スタックが、堆積装置100(すなわち、少なくとも2つの異なるスパッタカソードと、これらカソード間のセパレータ構造体とがある1つの真空チャンバ)の中で堆積される。これにより、2つの材料の混合を回避または大幅に低減することができる。その後、チャンバ608内で、別の基板処理ステップ、たとえばイオン加工を行うことができる。
【0039】
チャンバ610、612および610Rは、
図6の下方ラインから
図6の上方ラインへの移送をするための別の移送チャンバである。上方ラインには、基板が移送チャンバ604Rおよび606Rを経由してロードロック602Rを通りシステムから外へ移動する前に、別の処理チャンバおよび/または堆積チャンバが設けられる。
【0040】
図7は、非可撓性基板上、またはキャリアによって供給される基板上に層スタックを堆積する実施形態の例を示し、さらに別の実施形態を説明するのに使用することができる。ステップ702で、第1の材料を有する第1の材料層が、第1の真空チャンバ内に第1の回転軸を有する第1の回転スパッタカソードから、基板上にスパッタされる。ステップ704で、第2の材料を有する第2の材料層が、第1の真空チャンバ内に第2の回転軸を有する第2の回転スパッタカソードから基板上にスパッタされる。これに関して、セパレータ構造体が、第1の回転軸と第2の回転軸の間に設けられ、第2の堆積ゾーンに向けてスパッタされた第1の材料と、第1の堆積ゾーンに向けてスパッタされた第2の材料とを受けるように適合される。セパレータ板は、インライン堆積プロセスの堆積時の、第1の材料と第2の材料の混合を低減させるために設けられ、このセパレータ板は、少なくとも第1の回転軸と第2の回転軸の間から基板に向かって延びる。
【0041】
その追加または代替の改変形態によれば、ステップ706で、各ロータリスパッタカソードは、反対方向に、すなわちそれぞれ時計回りおよび反時計回りに回転させることができ、かつ/またはステップ708で、磁石配置は、セパレータ構造体から遠ざけて傾けること、またはセパレータ構造体から遠ざかって傾いた配向で設けることができる。
【0042】
したがって、本明細書に記載の実施形態は、非可撓性基板上、またはキャリアによって供給される基板上に層スタックを堆積する装置および方法に関する。真空チャンバ内で第1の回転軸のまわりに回転可能な第1の回転スパッタカソードの第1の支持体であって、第1の材料を堆積するための第1の堆積ゾーンが設けられる第1の支持体と、真空チャンバ内で第2の回転軸のまわりに回転可能な第2の回転スパッタカソードの第2の支持体であって、第2の材料を堆積するための第2の堆積ゾーンが設けられる第2の支持体とが設けられる。カソードは1つのチャンバ内に設けられ、これにより、第1の回転軸と第2の回転軸は、互いに500mm以下の間隔を有することができる。第1の回転軸と第2の回転軸の間に、第2の堆積ゾーンに向けてスパッタされた第1の材料と、第1の堆積ゾーンに向けてスパッタされた第2の材料とを受けるように適合されているセパレータ構造体が設けられる。これにより、次の層の材料の混合を低減または回避することができる。
【0043】
本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる典型的な実施形態によれば、特に、第1の材料層が金属層であり、第2の材料層が金属層であり、第1の材料層は、Ti、NiVおよびMoからなる群から選択され、第2の材料層は、Cu、Al、Au、Agからなる群から選択される。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる、さらに別の実施形態によれば、これらの材料の合金、たとえばAl:Nd、Mo:Nbなどもまた、第1の材料および/または第2の材料として供給することができる。
【0044】
本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる、さらに別の実施形態によれば、堆積される第1の材料および/または堆積される第2の材料は、非反応性で堆積することができる、すなわち、非反応性堆積材料とすることができる。たとえば、真空チャンバ内の第1の堆積プロセスを非反応性堆積プロセスとすることができ、真空チャンバ内の第2の堆積プロセスを非反応性堆積プロセスとすることができる。いくつかの実施形態によれば、第1および第2の堆積プロセスのどちらか一方または両方は、反応性堆積プロセスとすることもできる可能性があり得る。さらに、1つまたは複数の反応性堆積プロセスが真空チャンバ内で実施される場合には、真空チャンバ内の所望の雰囲気および/または所望の動作パラメータの調整が複雑になり得る。したがって、通常は、本明細書に記載の実施形態によれば、2つの非反応性堆積プロセスが行われ、本明細書に記載の実施形態による装置は、2つの非反応性堆積プロセスを実施するように構成される。
【0045】
通常、第1の金属層は、第2の金属層の接着層とすることができる。接着層は、100nm以下の厚さを有することができる。第2の金属層は、300nmから1000nm、または500nm以下、たとえば約500nmの厚さを有することができる。これにより、第2の金属層を堆積して、接着層の上にシード層を形成することができる。このシード層により、後に続く電気メッキ処理が可能になる。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる典型的な実施形態によれば、第1の層および第2の層は、たとえば、ある元素の酸化物で形成された酸化物層とは反対の金属層である。具体的には、接着層としてのTiと、シード層としてのCuの組合せを形成することができる。したがって、Ti層を基板の上に、またCu層をTi層の上に形成するために本明細書の実施形態のいずれかによる装置を使用することに関連して、本明細書に記載の実施形態を用いてさらに他の実施形態を形成することができる。
【0046】
実験的な試験では、従来の構成(すなわち、2つの異なる処理チャンバ)と、ロータリカソードが同一の処理チャンバ内においてセパレータ構造体で分けられている隣接カソード構成とで、2つの異なる金属層(Ti接着層、Cuシード層)をスパッタすることによって、同等の抵抗値および等しい最適接着を実現できることが示される。
【0047】
たとえば、動的スパッタリング処理の、たとえば0.4m/分の同様の基板速度、0.4から0.6Paの範囲のチャンバ圧力、ならびにTiで8kWから11kW、Cuで33kWから36kWの範囲の同じスパッタ電力に対し、表1に示される以下の結果を得ることができた。ここで、デュアルスパッタリング=「いいえ」は、別々の2つの真空チャンバ内での従来のスパッタリングの結果を指し、デュアルスパッタリング=「はい」は、セパレータ板で分離された1つの真空チャンバ内の2つのカソードでの結果を指す。
【0048】
上述のように、また表1に記載の結果が示すように、特に、上記の技術的解決策、すなわちセパレータ構造体、磁石ヨーク傾き(たとえば、約20°の磁石ヨーク角度)およびカソード回転方向の組合せにより、多数の材料を堆積するための隣接カソード構成が可能になる。本明細書に記載の、異なる材料を有する2つの層による層スタックを主に指す他の実施形態と組み合わせることができる、さらに別の実施形態によれば、層スタックはまた、異なる材料の2つより多い層、たとえば異なる材料の3つ、4つ、または5つの層を含むこともできる。そのため、通常は、異なるターゲット材料を用いた各回転カソードが、本明細書に記載のセパレータ構造体によって隣接カソードから分離される。
【0049】
本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる、さらに別の実施形態によれば、異なるスパッタ材料の混合は、各磁石ヨークを反対の方向に傾けることによって、また各ロータリカソードを反対方向に回転させることによって、さらに最小限にすることができる。さらに加えて、または別法として、異なる回転方向により、特に高い回転速度(たとえば、10rpm以上の、または20rpm以上もの回転速度)において、セパレータ構造体から遠ざかって傾斜した主堆積方向または平均堆積方向が得られ、その結果、さらに混合が低減されることになる。これに関して、回転方向が主堆積方向または平均堆積方向のシフトの方向を規定するのに対し、より速い回転速度では、主堆積方向または平均堆積方向がさらにシフトされる。すなわち、セパレータから遠ざかる堆積方向は、より速いカソード回転によって大きくすることができる。
【0050】
本明細書に記載の実施形態のさらに別の使用法によれば、セパレータ板を用いた隣接カソード構成はまた、基板移送速度を変えることによって、光学的および電気的膜特性の水平調節を可能にする。
【0051】
さらに別の実施形態によれば、基板または基板支持平面からのセパレータ構造体の距離、すなわちセパレータ構造体またはセパレータ板の端部の、基板または基板支持平面までの距離は、次のように記述することができる。L[mm]は回転カソードの2つの隣接回転軸間の距離であり、d
1[mm]はセパレータ構造体の、基板までの距離であり、a
1[°]およびa
2[°]はセパレータ構造体から遠ざかる傾き角度であり、v
1[rpm]およびv
2は、回転カソードの基板に面する側のセパレータ構造体から遠ざかる方向の回転速度である。これに関して、a
1、a
2、v
1およびv
2は、カソードがセパレータ構造体の左側にあるか右側にあるかに応じて、数学的な意味でその符号を変えることに留意されたい。本明細書に記載の実施形態により与えることができる最大距離d1は、次式の通りである。
【0052】
d
1=L×C
L+a
1×C
A+a
2×C
A+v
1×C
V+v
2×C
V
【0053】
いくつかの実施形態によれば、距離Lに関連する第1の定数C
Lは1/10から1/50の範囲(たとえば1/40)にすることができ、ヨークの傾き角度に関連する第2の定数C
Aは1/2から1/10の範囲(たとえば1/5)にすることができ、単位[mm/°]を有し、カソードの回転速度と関連する第3の定数C
Vは1/10から1/30の範囲(たとえば1/20)にすることができ、単位[mm/rpm]を有する。したがって、セパレータ構造体から遠ざかる向きの回転方向、およびセパレータ構造体から遠ざかる磁石配置(すなわちヨーク)の傾きにより、セパレータ構造体(たとえば板)の基板からの距離d1を大きくすることが可能になり、混合がなお十分に低減される。基板支持板と関係するセパレータ構造体の距離は、基板、または基板が支持されるキャリアの厚さを加えることによって、その分だけ増大する。
【0054】
上記は本発明の実施形態を対象としているが、本発明の基本的な範囲から逸脱することなく、本発明のその他のさらなる実施形態を考案することができ、また本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって決定される。
また、本願は以下に記載する態様を含む。
(態様1)
非可撓性基板上、またはキャリアに設けられた基板上に層スタックを堆積する装置であって、
真空チャンバと、
輸送システムおよび前記真空チャンバがインライン堆積用に構成される前記輸送システムと、
前記真空チャンバ内で第1の回転軸のまわりに回転可能な第1の回転スパッタカソードの第1の支持体であって、第1の材料を堆積するための第1の堆積ゾーンが設けられる第1の支持体と、
前記真空チャンバ内で第2の回転軸のまわりに回転可能な第2の回転スパッタカソードの第2の支持体であって、第2の材料を堆積するための第2の堆積ゾーンが設けられる第2の支持体と
を備え、
前記第1の回転軸と前記第2の回転軸が互いに700mm以下の間隔を有し、
前記第1の回転軸と前記第2の回転軸の間に、前記第2の堆積ゾーンに向けてスパッタされた前記第1の材料、および前記第1の堆積ゾーンに向けてスパッタされた前記第2の材料を受けるように適合されているセパレータ構造体を備え、
前記第1の材料の層および次の前記第2の材料の層を含む前記層スタックを堆積するように構成される装置。
(態様2)
前記セパレータ構造体が、少なくとも前記第1の回転軸と前記第2の回転軸の間から前記輸送システムに向かって延びる、態様1に記載の装置。
(態様3)
前記真空チャンバが、第1の側壁と第2の側壁と、チャンバ連結アセンブリとを備え、該チャンバ連結アセンブリが前記第1の側壁にある隣接チャンバへの真空相互連結部の1つの第1の真空フランジと前記第2の側壁にある別の隣接チャンバへの真空相互連結部の1つの第2の真空フランジとを有する、態様1又は2に記載の装置。
(態様4)
前記真空チャンバが排気システムの連結用の1つの単一真空フランジを備える、態様1から3のいずれか一項に記載の装置。
(態様5)
前記セパレータ構造体の厚さが、前記第1および第2の側壁の厚さよりも薄い、態様3又は4に記載の装置。
(態様6)
前記輸送システムが、堆積平面を提供するように構成され、前記セパレータ構造体が、前記セパレータ構造体と前記堆積平面の間の距離が5cm以下に、通常は0.5cmから2.5cmになるように前記堆積平面に向かって延びる、態様1から5のいずれか一項に記載の装置。
(態様7)
前記真空チャンバが、底部壁および上部壁である別の2つの側壁を備え、前記セパレータ構造体が、前記真空チャンバの前記壁のうちの1つ以下とのガス密連結部を有して設けられ、特に、前記セパレータ構造体の長さが、前記チャンバ壁間の対応する間隔の距離よりも短い、態様1から6に記載の装置。
(態様8)
前記第1の回転軸および前記第2の回転軸が互いに500mm以下の、特に300mm以下の間隔を有する、態様1から7に記載の装置。
(態様9)
第1のマグネトロン磁石アセンブリを有する前記第1の回転スパッタカソードと、第2のマグネトロン磁石アセンブリを有する前記第2の回転スパッタカソードとを備え、前記第1のマグネトロン磁石アセンブリおよび前記第2のマグネトロン磁石アセンブリそれぞれが、セパレータ平面から遠ざかって10°以上傾いている磁石ヨーク角度を有する、態様1から8に記載の装置。
(態様10)
非可撓性基板上、またはキャリアに設けられた基板上に材料を堆積するシステムであって、
前記基板をシステムの中に内向きに移送するための第1のロードロックチャンバと、
態様1から9のいずれか一項に記載の装置と
を備えるシステム。
(態様11)
非可撓性基板上、またはキャリアに設けられた基板上に層スタックを堆積する方法であって、
第1の材料を有する第1の材料層を第1の回転スパッタカソードからスパッタすることであって、前記第1の回転スパッタカソードの第1のターゲットから放出される前記第1の材料の第1の部分が前記基板上に堆積される、第1の材料層をスパッタすること、
第2の材料を有する第2の材料層を第2の回転スパッタカソードからスパッタすること、ならびに
セパレータ構造体を設けることであって、前記セパレータ構造体が、前記第1の材料の前記第1の部分以外の前記第1の材料の部分の少なくとも15%、特に、少なくとも30%を受ける、セパレータ構造体を設けること
を含む方法。
(態様12)
前記第1の材料層が金属層であり、前記第2の材料層が金属層であり、特に、前記第1の材料層が、Ti、NiVおよびMoからなる群から選択され、前記第2の材料層が、Cu、Al、Au、Agからなる群から選択される、態様11に記載の方法。
(態様13)
前記第1の回転スパッタカソードが第1のマグネトロン磁石アセンブリを有し、前記第2の回転スパッタカソードが第2のマグネトロン磁石アセンブリを有し、前記第1のマグネトロン磁石アセンブリおよび前記第2のマグネトロン磁石アセンブリそれぞれが、セパレータ平面から遠ざかって10°以上傾いている磁石ヨーク角度を有する、態様11又は12に記載の方法。
(態様14)
前記第1の回転スパッタカソードが、前記第1のカソードの前記基板に向けられた側が前記セパレータ構造体から遠ざかる向きの接線速度を有するような回転方向を有し、前記第2の回転スパッタカソードが、前記第2のカソードの前記基板に向けられた側が前記セパレータ構造体から遠ざかる向きの接線速度を有するような回転方向を有する、態様11から13のいずれか一項に記載の方法。
(態様15)
前記第1の材料層が、100nm以下の、具体的には20nmから50nmの厚さを有するようにスパッタされ、次に、前記第2の材料層が前記第1の材料層の上に、800nm以下の、具体的には100nmから500nmの、さらに具体的には120nmから250nmの厚さを有するようにスパッタされる、態様11から14のいずれか一項に記載の方法。