(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
所定方向に連続する複合シートから複数の貫通孔が形成されたシート状部材を製造する方法であって、
前記所定方向に連続する第1不織布と、前記複合シートの厚さ方向に前記第1不織布に重なって配されつつ前記所定方向に連続する第2不織布との間に、前記所定方向に伸長状態で前記所定方向に沿った複数の弾性部材が、前記所定方向と交差するCD方向に並んだ状態で介挿されて前記第1不織布及び前記第2不織布に固定された前記複合シートを、前記所定方向を搬送方向として搬送する搬送工程と、
前記複合シートにおいて前記CD方向に隣り合う前記弾性部材同士の間の位置に前記厚さ方向に押し込み部材を押し込むことにより、前記複合シートに前記厚さ方向に貫通する前記貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、を有し、
前記貫通孔形成工程では、前記第1不織布の両面のうちで前記第2不織布と対向しない非対向面から前記押し込み部材を前記厚さ方向に押し込んだ後に、前記押し込み部材を前記非対向面の方へ引き抜いていき、
前記第1不織布の前記非対向面は、前記第1不織布を生成すべく前記第1不織布の構成繊維を支持部材の支持面に吸引して堆積させた際に、前記支持面に当接した方の面であることを特徴とする吸収性物品に係るシート状部材の製造方法である。
【0011】
このような吸収性物品に係るシート状部材の製造方法によれば、上記の貫通孔の形成に伴って第1不織布の上記非対向面から厚さ方向の外方に突出し得るバリの大きさを小さくすることができる。詳しくは次の通りである。先ず、押し込み部材を押し込む際には、第1不織布の繊維が押し込み部材にまとわりついて厚さ方向の押し込み側に移動するが、押し込み部材を引き抜く際にも、押し込み部材にまとわりついた繊維が、引き抜く方向たる非対向面の方へと一緒に移動する。そのため、引き抜く際に押し込み部材にまとわりついていた繊維が、非対向面から厚さ方向の外方に突出して上記非対向面のバリとなる。一方、この厚さ方向の繊維の移動し易さは、繊維の密集度合いによって変わる。すなわち、繊維の密集度合いたる繊維の分布密度(g/cm
3)が低い場合には、押し込み部材の押し込み方向たる厚さ方向に繊維が移動し易いが、分布密度が高い場合には、繊維は厚さ方向に移動し難く、つまり、繊維は厚さ方向と直交する面方向に移動し易い。他方、第1不織布の生成工程で当該第1不織布を生成すべく繊維を上記支持部材の支持面に吸引して堆積する際には、当該支持面に近い方が、吸引力が有効に作用して繊維が密集し易く、支持面から堆積方向に離れる程に密集度合いが小さくなる。この点につき、上記の製造方法では、第1不織布の上記非対向面が、上記の支持面に当接した方の面となっている。そのため、当該非対向面側の部分の方が、逆側の面たる対向面側の部分よりも繊維の分布密度が高くなっている。よって、第1不織布に押し込んだ押し込み部材を引き抜く際に、対向面側の部分の繊維が押し込み部材と一緒に引き抜く方向に移動し易いが、ここで、上記対向面側の部分よりも引き抜き側の位置には、非対向面側の部分の繊維が高い分布密度で位置している。そのため、この厚さ方向に移動し難い非対向面側の部分の繊維が、押し込み部材と一緒に厚さ方向に移動しようとする対向面側の部分の繊維の引き抜く方向への移動を阻止して、これにより、非対向面からバリが突出することを抑制可能となる。
【0012】
かかる吸収性物品に係るシート状部材の製造方法であって、
前記第2不織布の両面のうちで前記第1不織布と対向しない非対向面は、前記第2不織布を生成すべく前記第2不織布の構成繊維を支持部材の支持面に吸引して堆積させた際に、前記支持面に当接した方の面であるのが望ましい。
【0013】
このような吸収性物品に係るシート状部材の製造方法によれば、上記の貫通孔の形成に伴って第2不織布の上記非対向面から厚さ方向の外方に突出し得るバリの大きさを小さくすることができる。詳しくは次の通りである。押し込み部材は先ず第1不織布に押し込まれ、しかる後に第2不織布に押し込まれるが、この第2不織布への押し込みの際には、第1不織布と対向する対向面側の部分、第1不織布と対向しない上記非対向面側の部分の順番で押し込まれる。すなわち、非対向面側の部分には、最後に押し込まれる。そして、このときに押し込み部材にまとわりついた繊維が一緒に押し込み方向に移動すると、非対向面から外方にバリが突出形成される。しかし、ここで、第2不織布の非対向面は、第2不織布の生成の際に上記支持部材の支持面に当接した方の面であり、前述したことから、当該非対向面側の部分の繊維の分布密度は高くなっている。そのため、非対向面側の部分の繊維は、押し込み方向たる厚さ方向に移動し難く、その結果、第2不織布の非対向面からバリが突出することを抑制可能となる。
【0014】
かかる吸収性物品に係るシート状部材の製造方法であって、
前記複合シートは、前記第1不織布と前記第2不織布とを固定する固定部を有し、
前記貫通孔が前記固定部に重ならないように前記複合シートに前記貫通孔を形成するのが望ましい。
【0015】
このような吸収性物品に係るシート状部材の製造方法によれば、固定部に重なるように貫通孔が形成される場合に起こり得る不具合、すなわち、貫通孔を形成する際の貫通抵抗が固定部に起因して増大してしまい貫通孔を形成し難くなることや、固定部の作用でバリが硬くなってしまいシート状部材の柔らかさが阻害されてしまうことを有効に防ぐことができる。
【0016】
かかる吸収性物品に係るシート状部材の製造方法であって、
前記複合シートは、前記弾性部材を介さずに前記第1不織布と前記第2不織布とを固定する直接固定部を有し、
前記貫通孔が前記直接固定部に重ならないように前記複合シートに前記貫通孔を形成するのが望ましい。
【0017】
このような吸収性物品に係るシート状部材の製造方法によれば、上記直接固定部に重なるように貫通孔が形成される場合に起こり得る不具合、すなわち、貫通孔を形成する際の貫通抵抗が直接固定部に起因して増大してしまい貫通孔を形成し難くなることや、直接固定部の作用でバリが硬くなってしまいシート状部材の柔らかさが阻害されてしまうことを有効に防ぐことができる。
【0018】
かかる吸収性物品に係るシート状部材の製造方法であって、
前記第1不織布の両面のうちで前記支持部材の前記支持面と当接しない方の面を非当接面とした場合に、
前記貫通孔形成工程において前記複合シートに前記貫通孔を形成する貫通孔形成処理位置よりも前記搬送方向の上流側の位置には、従動ローラーが配置されており、
前記従動ローラーは、搬送される前記第1不織布の前記非当接面と接触することにより、前記第1不織布から回転力を得て従動回転するのが望ましい。
【0019】
このような吸収性物品に係るシート状部材の製造方法によれば、第1不織布の上記非当接面側の部分の繊維は、従動ローラーとの接触によって付与される剪断力に基づいて効果的にほぐされる。よって、第1不織布に貫通孔を形成する際の貫通抵抗を縮小することができて、これにより、貫通孔を形成し易くなる。
【0020】
かかる吸収性物品に係るシート状部材の製造方法であって、
前記従動ローラーは、前記第1不織布が連続する所定方向に移動可能に案内されたダンサーロールであり、
前記ダンサーロールに前記第1不織布が掛け回されることによって前記第1不織布のループが形成されているとともに、前記ダンサーロールには、所定値の荷重が、前記ループが大きくなる方向に付与されているのが望ましい。
【0021】
このような吸収性物品に係るシート状部材の製造方法によれば、ダンサーロールには上記の荷重が付与されている。よって、当該ダンサーロールとの接触に基づいて第1不織布に付与される上記の剪断力を大きくすることができる。そして、これにより、当該剪断力に基づいて第1不織布の上記非当接面側の部分の繊維をより効果的にほぐすことができる。
【0022】
かかる吸収性物品に係るシート状部材の製造方法であって、
前記非対向面は、前記吸収性物品において肌側面を形成するのが望ましい。
【0023】
このような吸収性物品に係るシート状部材の製造方法によれば、バリが小さくされる上記の非対向面は、肌側面を形成する。よって、肌側から触れた際に良好な触感を感じさせることができて、これにより、肌触りの良好な吸収性物品を製造可能となる。
【0024】
かかる吸収性物品に係るシート状部材の製造方法であって、
前記非対向面は、前記吸収性物品において非肌側面を形成するのが望ましい。
【0025】
このような吸収性物品に係るシート状部材の製造方法によれば、バリが小さくされる上記の非対向面は、非肌側面を形成する。よって、非肌側から見た際に貫通孔を綺麗に見せることができて、これにより、良好な外観の吸収性物品を製造可能となる。
【0026】
また、
所定方向に連続する複合シートから複数の貫通孔が形成されたシート状部材を製造する装置であって、
前記所定方向に連続する第1不織布と、前記複合シートの厚さ方向に前記第1不織布に重なって配されつつ前記所定方向に連続する第2不織布との間に、前記所定方向に伸長状態で前記所定方向に沿った複数の弾性部材が、前記所定方向と交差するCD方向に並んだ状態で介挿されて前記第1不織布及び前記第2不織布に固定された前記複合シートを、前記所定方向を搬送方向として搬送する搬送装置と、
前記複合シートにおいて前記CD方向に隣り合う前記弾性部材同士の間の位置に前記厚さ方向に押し込み部材を押し込むことにより、前記複合シートに前記厚さ方向に貫通する前記貫通孔を形成する貫通孔形成装置と、を有し、
前記貫通孔形成装置は、前記第1不織布の両面のうちで前記第2不織布と対向しない非対向面から前記押し込み部材を前記厚さ方向に押し込んだ後に、前記押し込み部材を前記非対向面の方へ引き抜いていき、
前記第1不織布の前記非対向面は、前記第1不織布を生成すべく前記第1不織布の構成繊維を支持部材の支持面に吸引して堆積させた際に、前記支持面に当接した方の面であることを特徴とする吸収性物品に係るシート状部材の製造装置である。
このような吸収性物品に係るシート状部材の製造装置によれば、前述した製造方法の場合と同様の作用効果を奏することができる。
【0027】
===本実施形態===
本実施形態の吸収性物品に係るシート状部材の製造方法及び製造装置は、例えば、吸収性物品の一例としての使い捨ておむつ1の製造ラインで使用される。
図3は、使い捨ておむつ1の一例としての3ピースタイプのおむつ1をパンツ型状態において腹側から見た概略斜視図である。また、
図4は、展開状態のおむつ1を肌側から見た概略平面図であり、
図5は、
図4中のV−V断面図である。
【0028】
このおむつ1は、
図3のパンツ型状態において、互いに直交する三方向として上下方向と横方向と前後方向とを有している。そして、以下では、このパンツ型状態において上下方向の上側及び下側のことを、それぞれ「胴回り開口側」及び「股下側」とも言い、また、前後方向の前側及び後側のことを、それぞれ「腹側」及び「背側」とも言う。
一方、
図4及び
図5の展開状態においては、おむつ1は、互いに直交する三方向として縦方向と横方向と厚さ方向とを有している。そして、以下では、この展開状態において縦方向の一方側及び他方側のことをそれぞれ「腹側」及び「背側」とも言い、また、厚さ方向の一方側及び他方側のことをそれぞれ「肌側」及び「非肌側」とも言う。
ちなみに、横方向については、パンツ型状態と展開状態とで互いに同じ意味である。また、展開状態の縦方向は、パンツ型状態の上下方向に沿っているとともに、展開状態の厚さ方向は、パンツ型状態の前後方向に沿っている。
更に、
図4及び
図5の展開状態では、おむつ1に伸縮性を付与するための後述の弾性部材たる糸ゴム16,35,45による収縮力が全く無いものと仮想して広がった状態のおむつ1を示している。
【0029】
このおむつ1は所謂3ピースタイプであることから、
図4の展開状態において、第1部品として、排泄物を吸収する吸収性本体10を有し、第2部品として腹側帯部材31を有し、第3部品として背側帯部材41を有している。詳しくは、腹側帯部材31と背側帯部材41とが縦方向に間隔をあけて平行に並んだ状態において、これら両者31,41同士の間に吸収性本体10が掛け渡されつつ、同吸収性本体10の縦方向の各端部10ea,10ebがそれぞれ最寄りの帯部材31,41に接合固定されていて、その外観形状は平面視略H形状をなしている。
そして、この略H形状の展開状態から、吸収性本体10の縦方向の所定位置CL10(縦方向におけるおむつ1の中央位置CL1に相当する位置)を折り位置として同吸収性本体10が二つ折りされるとともに、この二つ折りの状態において互いに対向する帯部材31,41同士が横方向の各端部31e,41eにて溶着等で接合されると、これら帯部材31,41同士が環状に繋がって、これにより、
図3に示すような胴回り開口BH及び一対の脚回り開口LH,LHが形成されたパンツ型状態のおむつ1となる。
【0030】
なお、
図4及び
図5の展開状態においては、吸収性本体10は、平面視略長方形状をなしている。そして、吸収性本体10の長手方向は、縦方向に沿うように配されている。また、吸収性本体10は、吸収体11と、同吸収体11を肌側から覆って設けられたトップシート13と、同吸収体11を非肌側から覆って設けられたバックシート15と、を備えている。
【0031】
吸収体11は、液体吸収性の吸収性コア11cと、同コア11cの外周面を被覆する不図示のティッシュペーパー等のコアラップシートと、を有する。吸収性コア11cは、所定の液体吸収性素材を所定形状の一例としての平面視略砂時計形状に成形した成形体である。液体吸収性素材としては、パルプ繊維等の液体吸収性繊維や、高吸収性ポリマー(所謂SAP)等の液体吸収性粒状物を例示できる。
【0032】
トップシート13は、吸収体11から縦方向及び横方向に突出するような平面サイズの不織布等の液透過性のシートである。また、バックシート15も、吸収体11から縦方向及び横方向に突出するような平面サイズのシートであり、その一例としては、
図5のような二層構造のラミネートシート15が挙げられる。すなわち、当該ラミネートシート15は、肌側に、ポリエチレンフィルム(PE)やポリプロピレンフィルム(PP)等の液不透過性の防漏シート15aを有し、非肌側には、不織布製の外装シート15bを有している。
そして、これらトップシート13とバックシート15との間に吸収体11を挟んだ状態において、吸収体11から縦方向及び横方向に突出した部分でこれら両シート13,15同士が例えば額縁状に接着や溶着等で接合されることにより、吸収性本体10が形成されている。なお、バックシート15は、外装シート15bを有さずに、防漏シート15aだけを有していても良い。
【0033】
また、この
図4の例にように、吸収性本体10における吸収体11よりも横方向の外側の各部分10LGには、それぞれ縦方向に伸縮するレッグギャザーLGを設けても良い。かかるレッグギャザーLGは、脚回り開口LHの一部を構成する。また、レッグギャザーLGの伸縮性の付与は、上記の各部分10LGに、それぞれ縦方向に沿って弾性部材としての糸ゴム16を縦方向に伸長した状態で固定することでなされる。なお、このレッグギャザーLGに加えて、更に、横漏れを防止する目的で、吸収性本体10における横方向の両側に防漏壁部として所謂立体ギャザー(不図示)を設けても良い。
【0034】
一方、
図4に示すように、腹側帯部材31は、不織布32,33を素材とした平面視略矩形形状のシート部材である。この例では、
図5に示すように、二枚重ねの不織布32,33同士を後述の糸ゴム35に塗布されたホットメルト接着剤で接合することにより、腹側帯部材31は形成されている。そして、
図4及び
図5に示すように、腹側帯部材31の横方向の中央部が、吸収性本体10における縦方向の腹側の端部10eaに非肌側から重ねられて接合されている。
【0035】
また、背側帯部材41も、腹側帯部材31と同様に、不織布42,43を素材とした平面視略矩形形状のシート部材であり、この例では、
図5に示すように、二枚重ねの不織布42,43同士を後述の糸ゴム45に塗布されたホットメルト接着剤で接合することにより、背側帯部材41は形成されている。そして、
図4及び
図5に示すように、背側帯部材41の横方向の中央部が、吸収性本体10における縦方向の背側の端部10ebに非肌側から重ねられて接合されている。
【0036】
なお、以下で説明する内容は、腹側帯部材31及び背側帯部材41の両者について共通の内容である。そのため、ここでは、両者を代表して腹側帯部材31についてのみ説明し、背側帯部材41については、対応する部材の符号を括弧書きで示すのみとする。
【0037】
図4及び
図5に示すように、腹側帯部材31(41)に係る2枚の不織布32,33(42,43)同士の間には、横方向に沿った弾性部材として複数本の糸ゴム35,35…(45,45…)が縦方向に並んで介挿されつつ、横方向に伸長下で同不織布32,33(42,43)にホットメルト接着剤で接合固定されている。そして、これにより、腹側帯部材31(41)には横方向の伸縮性が付与されている。
【0038】
また、この例では、
図4に示すように、腹側帯部材31(41)において吸収性コア11cと重なる部分の少なくとも一部(例えば、横方向の中央部)については、吸収体11の皺の発生を防ぐ等の目的で、糸ゴム35(45)が非連続とされている。そして、これにより、この部分については伸縮性が付与されていない。
すなわち、
図6の腹側帯部材31を厚さ方向の非肌側から見た概略平面図に示すように、腹側帯部材31(41)を、縦方向に二つの領域AU,ADに区分し、そして、縦方向において胴回り開口BH側に位置する領域AUのことを「上部領域AU」と言い、股下側に位置する領域ADのことを「下部領域AD」と言った場合に、前者の上部領域AUには、吸収性本体10の吸収性コア11cが概ね重なっていない。そのため、当該上部領域AUには、横方向の略全長に亘って伸縮性が付与されている。すなわち、当該上部領域AUには、横方向の略全長に亘って糸ゴム35,35…(45,45…)が設けられている。
【0039】
一方、後者の下部領域ADについては、その横方向の中央領域ADcに吸収性本体10の吸収性コア11cが重なっていることから、当該中央領域ADcの中央部には糸ゴム35,35…が配置されておらず、これにより、同中央領域ADcの中央部には、横方向の伸縮性がほぼ無い非伸縮領域ALが存在している。但し、この中央領域ADcの両側に位置する各端側領域ADe,ADeには、吸収性コア11cが概ね重ならないことから、当該端側領域ADe,ADeには糸ゴム35,35…(45,45…)が配置されていて、これにより、同端側領域ADe,ADeは、上記の非伸縮領域ALよりも高い伸縮性を有した伸縮領域AH,AHとなっている。なお、このような非伸縮領域AL及び伸縮領域AHを下部領域ADに形成することの実現は、上記の中央部を横方向に横断して配された糸ゴムの連続体35a(45a)(
図10A及び
図10Bを参照)を、当該中央部で切断することによりなされているが、かような切断処理については後述する。
【0040】
また、かかる糸ゴム35(45)の繊度としては、例えば、400dtex〜1000dtexを例示でき、また、糸ゴム35(45)の具体例としては、LYCRA(商標)などを例示できる。但し、何等これに限らない。
【0041】
更に、この例では、
図5に示すように、2枚の不織布32,33(42,43)のうちで厚さ方向の非肌側に位置する不織布32(42)の平面サイズは、肌側に位置する不織布33(43)から縦方向の外側に突出するようなサイズとされている。そして、前者の不織布32(42)において突出する部分が、縦方向の内側に折り返されていて、この折り返し部32B(42B)が後者の不織布33(43)の縦方向の端部33Le(43Le)を肌側から覆っているが、何等これに限らない。
【0042】
また、
図4及び
図6に示すように、上記の腹側帯部材31(41)における横方向の両側には、上記の端側領域ADeを含め、吸収性本体10が重ね合わせられていない部分31s(41s)(以下、吸収性本体非存在部分31s(41s)とも言う)が存在しているが、当該吸収性本体非存在部分31s(41s)には、その通気性を良くする目的で、同非存在部分31s(41s)を貫通する複数の通気孔h(h)が所定の配置パターンで離散的に形成されていて、これにより、これら通気孔h(h)は、通気孔hの一群たる通気孔群Gh31(Gh41)をなしている。すなわち、この例では、
図7の概略拡大図に示すように、吸収性本体非存在部分31s(41s)において縦方向に隣り合う糸ゴム35,35(45,45)同士の間の位置に、それぞれ、複数の通気孔h,h…(h,h…)が横方向に所定の形成ピッチで並んで形成されていて、これにより、これら通気孔h,h…(h,h…)は、横方向に沿った通気孔列Rh31(Rh41)をなしている。また、縦方向に隣り合う通気孔列Rh31,Rh31(Rh41,Rh41)同士は、互いに上記形成ピッチの半値だけ横方向にずれている。そして、これにより、これら通気孔h,h…(h,h…)は、
図4及び
図6に示すような略千鳥配置で配された通気孔群Gh31(Gh41)をなしている。但し、何等これに限らない。例えば、通気孔h,h…(h,h…)が、格子配置で形成されていても良い。
【0043】
更に、この例では、各通気孔h,h…は、例えば直径が0.2mm〜3mmの正円を目標の開口形状として形成されているが、形成精度の問題で正円になっていない通気孔h,h…も存在する。そして、そのような非正円形状の通気孔hの直径は、通気孔hの周方向の位置に応じて変動しているが、かかる変動する直径についても、例えば0.2mm〜3mmの範囲に入っている。よって、各通気孔hは、所期の通気性を速やかに奏することができる。但し、通気孔hの目標の開口形状は、何等上述の正円に限らない。例えば、正三角形や正方形などの多角形でも良い。
【0044】
また、この例では、腹側帯部材31に係る2枚の不織布32,33及び背側帯部材41に係る2枚の不織布42,43の何れも、スパンボンド不織布が使用されている。但し、何等これに限らず、SMS(スパンボンド/メルトブローン/スパンボンド)不織布等の別の種類の不織布を用いても良い。また、この例では、不織布の構成繊維として熱可塑性樹脂の代表例のポリプロピレン(PP)の単独繊維を用いているが、何等これに限らない。例えば、ポリエチレン(PE)などの他の熱可塑性樹脂の単独繊維を用いても良いし、更には、PE及びPPの鞘芯構造などの複合繊維を用いても良い。
【0045】
このようなおむつ1は、製造ラインで製造される。同ラインでは、おむつ1の中間製品1mが、所定の搬送方向に沿って搬送されている(搬送工程に相当)。そして、かかる搬送中に、同中間製品1mには種々の処理が施され、各処理が施される度に、順次中間製品1mの形態が変化していって、最終的に
図3のようなおむつ1が完成する。
【0046】
なお、以下では、製造ラインの幅方向のことを「CD方向」とも言う。また、この例では、CD方向は水平方向に沿っている。そして、この製造ラインでは、このCD方向と直交する平面内の任意の方向を搬送方向として中間製品1mは搬送されている。すなわち、搬送方向は、鉛直な上下方向と水平な前後方向との両者で規定される方向を向いている。なお、ここで言う「上下方向」及び「前後方向」は、それぞれ、前述のおむつ1の説明で用いた「上下方向」及び「前後方向」とは直接的には関係しない別の方向である。
【0047】
また、中間製品1mの搬送は、ベルトコンベアや搬送ローラー等の適宜な搬送装置でなされる。よって、特段の説明が無い限りは、これらの搬送装置によって、中間製品1mが搬送方向に搬送されているものとする。なお、ベルトコンベアの一例としては、駆動周回する無端ベルトを搬送面として有した通常のベルトコンベアや、無端ベルトの外周面に吸着機能を有したサクションベルトコンベア等を挙げることができる。
【0048】
図8は、製造ラインでなされる各種処理を説明するための同ラインの概略平面図である。製造ラインは、通気孔形成工程S50(貫通孔形成工程に相当)と、スリット工程S60と、間隔形成工程S70と、腹側糸ゴム切断工程S80と、背側糸ゴム切断工程S90と、吸収性本体取り付け工程S100と、二つ折り工程S110と、サイドシール工程S120と、切断工程S130と、を有している。そして、これらの各工程S50〜S130を行う各位置が、搬送方向の上流側から下流側へと、この順番で並んで位置している。
【0049】
図9Aは、通気孔形成工程S50へ搬送される直前の中間製品1mの概略平面図であり、
図9Bは、通気孔形成工程S50を通過直後の中間製品1mの概略平面図である。
【0050】
図9A及び
図9Bを対比してわかるように、この通気孔形成工程S50では、腹側帯部材31及び背側帯部材41の両者の基材となる中間製品1mに対して前述の通気孔h,h…(貫通孔に相当)を形成する。ここで、この製造ラインでは、中間製品1mは、所謂横流れの搬送形態で搬送されている。すなわち、おむつ1の横方向が搬送方向を向き縦方向がCD方向を向いた姿勢で中間製品1mは搬送されている。そのため、
図9Aに示すように、上工程から通気孔形成工程S50に送られる時点の中間製品1mの形態は、概ね、複数の腹側帯部材31,31…が横方向に連続してなる腹側帯部材の連続体31aと、複数の背側帯部材41,41…が横方向に連続してなる背側帯部材の連続体41aとがCD方向に一体に繋がってなる一つのシート状部材30mfとなっている。
【0051】
より正確には、このシート状部材30mfは、腹側帯部材31の不織布32の縦方向の寸法と背側帯部材41の不織布42の縦方向の寸法との加算値に相当するCD方向の大きさを有しつつ搬送方向に連続する不織布30mf1(第1不織布に相当し、以下では、第1不織布30mf1とも言う)と、腹側帯部材31の不織布33の縦方向の寸法と背側帯部材41の不織布43の縦方向の寸法との加算値に相当するCD方向の大きさを有しつつ搬送方向に連続する不織布30mf2(第2不織布に相当し、以下では、第2不織布30mf2とも言う)と、を有している。そして、これら第1不織布30mf1と第2不織布30mf2とは、厚さ方向に重ね合わせられた二枚重ねの状態とされている。また、これら第1不織布30mf1と第2不織布30mf2との間には、前述の複数の糸ゴム35,45となるべき複数の糸ゴムの連続体35a,45aが、搬送方向に伸長状態で搬送方向に沿って連続しつつ、CD方向に並んだ状態で介挿されている。そして、この介挿状態で、糸ゴムの連続体35a,45aは、同連続体35a,45aに塗布されたホットメルト接着剤によって第1不織布30mf1及び第2不織布30mf2に固定されており、また、当該糸ゴムの連続体35a,45aを介して第1不織布30mf1と第2不織布30mf2とは間接的に固定されている。更に、第1不織布30mf1は、第2不織布30mf2よりもCD方向のサイズが大きくなっていて、これにより、第1不織布30mf1は、第2不織布30mf2からCD方向の両側に突出する部分30mf1p1,30mf1p2を有している。そして、かかる各突出する部分30mf1p1,30mf1p2が、それぞれCD方向の内側に折り返されていて、これにより、前述の折り返し部32B,42Bに相当する部分が形成されている。
【0052】
そして、通気孔形成工程S50では、このようなシート状部材30mf(複合シートに相当)たる
図9Aの中間製品1mに対して、
図9Bに示すようにCD方向の一方側の領域に腹側帯部材31の一対の通気孔群Gh31,Gh31をそれぞれ搬送方向に製品ピッチP1で繰り返し形成し、また、他方側の領域には背側帯部材41の一対の通気孔群Gh41,Gh41をそれぞれ搬送方向に製品ピッチP1で繰り返し形成する。なお、ここで言う製品ピッチP1は、
図4の展開状態における腹側帯部材31及び背側帯部材41の横方向の全長L31,L41と概ね同値である。
【0053】
次のスリット工程S60では、同
図8に示すように上記のシート状部材30mfをCD方向に二分割して、これにより、糸ゴムの連続体35aが未切断状態の腹側帯部材の連続体31aと、糸ゴムの連続体45aが未切断状態の背側帯部材の連続体41aとを生成する。
【0054】
次の間隔形成工程S70では、中間製品1mとしての腹側帯部材の連続体31aと背側帯部材の連続体41aとを、それぞれ、CD方向の外側にそれぞれ移動する。そして、これにより、これら連続体31a,41a同士のCD方向の間に、
図4の展開形状のおむつ1における腹側帯部材31と背側帯部材41との間の縦方向の間隔Ldに相当する大きさの間隔を形成する。
【0055】
次の腹側糸ゴム切断工程S80では、上記の腹側帯部材の連続体31aが通過する際に、同連続体31aにおける非伸縮領域ALに対応する領域AL1で糸ゴムの連続体35aを切断し、これにより、腹側帯部材の連続体31aに非伸縮領域ALを形成する。詳しくは次の通りである。
【0056】
先ず、この腹側帯部材の連続体31aにおいては、
図10Aの概略平面図に示すように、CD方向の一方側の領域が、前述の腹側帯部材31における上部領域AUに相当し、他方側の領域が、同じく下部領域ADに相当している。そして、この時点では、どちらの領域にも、糸ゴムの連続体35aが搬送方向に沿って当該搬送方向に伸長した状態で配されている。但し、上部領域AUに相当する前者の一方側の領域には、糸ゴムの連続体35aが搬送方向の全長に亘ってホットメルト接着剤で固定されているが、下部領域ADに相当する後者の他方側の領域には、糸ゴムの連続体35aが固定されている固定領域AH1と、固定されていない非固定領域AL1とが、搬送方向に存在している。そして、この非固定領域AL1は、搬送方向に製品ピッチP1で且つ搬送方向に前述の非伸縮領域ALの大きさで存在している。
よって、
図10Bの右部に示すように、この非固定領域AL1の所定位置PCで糸ゴムの連続体35aを切断すると、糸ゴムの連続体35aにおける下流側の端部35aedが同連続体35aから切り離される。すると、切り離された糸ゴム35における上流側の部分35euが、その下流側に位置する固定領域AH1の方へと収縮する。また、上記の切断に基づいて糸ゴムの連続体35aにおける新たな下流側の端部となった部分35aednは、その上流側に位置する固定領域AH1の方へ収縮する。そして、これにより、
図10Bの左部に示すように、非固定領域AL1は、糸ゴム35が存在しない状態となって、結果、当該非固定領域AL1が、前述の非伸縮領域ALとなる。一方、同
図10Bに示すように、固定領域AH1には、ホットメルト接着剤での固定に基づいて、上記の切り離された糸ゴム35及び上記新たな下流側の端部となった部分35aednがそれぞれ留まるので、当該糸ゴム35によって当該固定領域AH1には伸縮性が付与される。そして、これにより、当該固定領域AH1は、前述の伸縮領域AHとなる。
【0057】
次の背側糸ゴム切断工程S90では、
図8に示す上記背側帯部材の連続体41aが通過する際に、同連続体41aにおける非伸縮領域ALに対応する領域AL1で糸ゴムの連続体45aを切断し、これにより、背側帯部材の連続体41aに非伸縮領域ALを形成する。なお、この切断による非伸縮領域ALの形成処理は、腹側帯部材の連続体31aに対してなされた上述の切断処理と概ね同じである。よって、その説明については省略する。
【0058】
次の吸収性本体取り付け工程S100では、上記の各糸ゴム切断工程S80,S90から中間製品1mとして送られる各帯部材の連続体31a,41a同士に、不図示の別工程で生成された単票状の吸収性本体10を掛け渡して固定し、これにより、中間製品1mを、
図4の略H形状に展開されたおむつ1H,1H…が連続してなる略梯子状のおむつの連続体1Haの形態にする。
【0059】
次の二つ折り工程S110では、
図8に示すように、中間製品1mたる略梯子状のおむつの連続体1Haを、腹側帯部材の連続体31aと背側帯部材の連続体41aとが厚さ方向の上下に重なるように二つ折りする。
【0060】
次のサイドシール工程S120では、二つ折り工程S110で上下に重ねられた腹側帯部材の連続体31aと背側帯部材の連続体41aとを、おむつ1の横方向の端部31e,41eに相当する位置で溶着してサイドシール部SSを形成し、これにより、二つ折り状態に固定する。そして、その結果、中間製品1mは、複数のパンツ型のおむつ1,1…が横方向に繋がってなるパンツ型のおむつの連続体1aの形態となる。
【0061】
そうしたら、最後の切断工程S130では、中間製品1mとしてのパンツ型のおむつの連続体1aを各サイドシール部SSで切断して、これにより、パンツ型のおむつ1が製造される。
【0062】
以下、各工程S50〜S100についてより詳しく説明するが、ここで、二つ折り工程S110以降の各工程S110〜S130については、適宜、周知な方法で実現可能なことは明らかなので、これ以上の説明はしない。
【0063】
<<<通気孔形成工程S50>>>
通気孔形成工程S50には、シート状部材30mfに通気孔hを形成する通気孔形成装置50(貫通孔形成装置に相当)が配置されている。
図11は、一部の構成(上流側ロール51及び下流側ロール58)を縦断面視で示す同装置50の概略側面図であり、
図12は、
図11中のXII−XII矢視の概略拡大図である。
図11に示すように、通気孔形成装置50は、CD方向に沿った回転軸回りに駆動回転する3本のロール51,55,58を有する。すなわち、搬送方向の上流側から下流側へと、上流側ロール51、中間ロール55、及び下流側ロール58の順番で各ロール51,55,58が並んで配置されている。また、中間ロール55は、上流側ロール51及び下流側ロール58の両者と、互いの外周面が対向するように各ロール51,58に近接配置されている。そして、通気孔形成装置50へ中間製品1mとして送られた上記のシート状部材30mfは、これら3本のロール51,55,58の回転動作に基づいて、略Ω形状の搬送ルートで搬送される。すなわち、先ず、シート状部材30mfは、当該上流側ロール51に巻き付いた状態となる円弧状の第1搬送ルートR51で搬送され、次に、中間ロール55に巻き付いた状態となる円弧状の第2搬送ルートR55で搬送され、最後に、下流側ロール58に巻き付いた状態となる円弧状の第3搬送ルートR58で搬送される。そして、しかる後に、シート状部材30mfは、下流側ロール58から離れて次工程のスリット工程S60へと送出される。
なお、上流側ロール51と中間ロール55とは、上流側ロール51の回転方向Dc51における所定位置P51で最接近しているが、この最接近位置P51が、第1搬送ルートR51から第2搬送ルートR55へと切り替わる位置である。同様に、中間ロール55と下流側ロール58とは、中間ロール55の回転方向Dc55における所定位置P55で最接近しているが、この最接近位置P55が、第2搬送ルートR55から第3搬送ルートR58へと切り替わる位置である。
【0064】
中間ロール55は、外周面に突出形成された複数のピン部材55p,55p…(押し込み部材)を有する。各ピン部材55p,55p…は、先端側が先細り形状の部材である。すなわち、
図12に示すように、この例では、ピン部材55pは、先端側に円錐部55paを有し、根元側に円錐部55paの底面と同径の円柱部55pbを一体に有している。また、上流側ロール51の外周面は、ピン部材55p,55p…を挿入可能な穴部51h,51h…を有している。すなわち、穴部51hは、ピン部材55pが挿入される範囲において、ピン部材55pの円錐部55paの直径よりも大きな直径を有している。そして、上記の最接近位置P51において、一つの穴部51hにピン部材55pが一つだけ挿入されるように、各穴部51hは各ピン部材55pに対応して形成されている。
【0065】
よって、
図11の上流側ロール51上に位置するシート状部材30mfにおいて通気孔hを形成すべき形成対象部分が上記最接近位置P51を通過する際には、
図12に示すように、上流側ロール51の各穴部51hに、対応するピン部材55pが挿入されることにより、ピン部材55pは、シート状部材30mfにおける上記形成対象部分に円滑に押し込まれて、これにより、当該形成対象部分に通気孔hが速やかに貫通形成される。
【0066】
ちなみに、この例では、上述のように最接近位置P51で通気孔hが形成されることから、以下では、当該最接近位置P51のことを「通気孔形成処理位置P51(貫通孔形成処理位置に相当)」とも言う。
【0067】
ここで、
図1を参照して既述のように、かかる通気孔hを形成する直前の時点では、ピン部材55pは、シート状部材30mfの厚さ方向において第2不織布30mf2の側ではなく第1不織布30mf1の側に位置している。そのため、同シート状部材30mfに通気孔を形成する際には、
図2Aのように、ピン部材55pを、第1不織布30mf1の両面30mf1sn,30mf1smのうちで第2不織布30mf2と対向しない方の面たる非対向面30mf1snからシート状部材30mfに押し込んでいく。そして、押し込み後に、
図2Bのように同ピン部材55pを非対向面30mf1snの方へ引き抜いていって、これにより、シート状部材30mfに貫通孔hが形成される。
【0068】
なお、このときには、
図2Aに示すように第2不織布30mf2の両面30mf2sn,30mf2smのうちで第1不織布30mf1と対向しない方の面たる非対向面30mf2snに、バリB2が厚さ方向の外方に突出形成されるが、それだけでなく、
図2Bに示すように第1不織布30mf1における上記の非対向面30mf1snにも、バリB1が外方に突出形成される。
すなわち、
図2Aのようにピン部材55pを押し込む際には、主に第2不織布30mf2の繊維f2がピン部材55pにまとわりついて厚さ方向の押し込み側に移動して、これが第2不織布30mf2の非対向面30mf2snから突出してバリB2となるが、
図2Bのようにピン部材55pを引き抜く際にも、ピン部材55pにまとわりついた主に第1不織布30mf1の繊維f1が、引き抜く方向たる非対向面30mf1snの方へと一緒に移動する。そのため、当該引き抜く際にピン部材55pにまとわりついていた繊維f1が、第1不織布30mf1の非対向面30mf1snから厚さ方向の外方に突出して、その結果、上記の第1不織布30mf1の非対向面30mf1snにも、外方に突出したバリB1が形成されることとなる。但し、これらのバリB2,B1は、おむつ1の肌触りや外観を損ねる恐れがある。
【0069】
そこで、本実施形態では、第1不織布30mf1の非対向面30mf1snから突出するバリB1及び第2不織布30mf2の非対向面30mf2snから突出するバリB2が、それぞれ小さくなるように工夫している。
【0070】
以下、この工夫について説明するが、ここで、当該工夫は、第1及び第2不織布30mf1,30mf2等の所謂不織布が厚さ方向に異方性を有していることを利用している。すなわち、不織布の繊維の分布密度(g/cm
3)が、不織布の両面のうちの一方の面側と他方の面側とで互いに異なることを利用しており、かかる厚さ方向の異方性は、不織布の生成工程において形成される。そのため、この工夫の説明の前に、不織布の生成工程について説明する。なお、かかる不織布の生成工程は、第1不織布30mf1及び第2不織布30mf2のどちらもほぼ同じである。そのため、以下では、これら不織布30mf1,30mf2を代表して第1不織布30mf1の生成工程S200について説明する。
【0071】
図13は、第1不織布30mf1の生成工程S200を示す概略側面図である。同
図13に示すように、不織布の生成工程S200では、サクションベルトコンベア201が使用される。サクションベルトコンベア201は、搬送方向に沿った平坦な経路を有する周回軌道を駆動周回する無端状のネット202(支持部材に相当)を有し、また、搬送方向の両側に配されて上記ネット202が掛け回される一対のローラー204,204も有する。そして、少なくとも1つのローラー204の駆動回転によって、ネット202の上面202s(支持面に相当)が平坦な搬送経路として搬送方向に沿って移動するようになっている。
また、ネット202の周回軌道の内側には、ブロワ等の適宜な負圧源(不図示)に連結されたサクションボックス206が配置されていて、同ボックス206は、上部の開口から吸引可能である。そして、この吸引に基づいてネット202の上面202sには吸引力が生じている。よって、ネット202の上面202sよりも上方に配されたノズル208から、溶融紡糸された繊維fが吐出されると、当該繊維fがネット202の上面202sに吸引されて堆積し、その結果、第1不織布30mf1が概ね成形される。
【0072】
但し、ネット202の上面202sに繊維が堆積する際には、上面202s近傍に大きな吸引力が作用し、上面202sから上方に離れるに従って吸引力が低下する。そのため、ネット202の上面202sでは繊維の密集度合いが高くなる一方、上面202sから上方に離れるに従って繊維の密集度合いは低くなる。そして、この上下方向たる繊維が堆積する方向が、第1不織布30mf1の厚さ方向となる。そのため、第1不織布30mf1の両面30mf1s1,30mf1s2のうちでネット202の上面202sに当接した方の面30mf1s1(以下、ネット当接面30mf1s1とも言う)の繊維の分布密度(g/cm
3)が高くなり、その逆側の面30mf1s2(非当接面に相当し、以下、ネット非当接面30mf1s2とも言う)の繊維の分布密度が低くなるという異方性を同第1不織布30mf1は厚さ方向に有している。
【0073】
一方、かかる異方性を有した第1不織布30mf1の繊維にピン部材55pの押し込み力が厚さ方向に作用した際には、分布密度が高い位置の繊維よりも分布密度が低い位置の繊維の方が厚さ方向に移動し易い傾向にある。
【0074】
そこで、本実施形態では、
図14A及び
図14Bに示すように、第1不織布30mf1の両面30mf1sn,30mf1smのうちで第2不織布30mf2と対向しない非対向面30mf1snから突出するバリB1を小さくする工夫として、当該非対向面30mf1snに対して、第1不織布30mf1の両面30mf1s1,30mf1s2のうちのネット当接面30mf1s1を対応付けている。詳しくは次の通りである。
【0075】
先ず、同
図14Aに示すように、ピン部材55pを第1不織布30mf1の非対向面30mf1snから押し込む際には、第1不織布30mf1の繊維がピン部材55pにまとわりついて厚さ方向の押し込み側に移動する。また、
図14Bに示すように、押し込み後にピン部材55pを引き抜く際にも、ピン部材55pにまとわりついた繊維が、引き抜く方向たる非対向面30mf1snの方へと一緒に移動するが、ここで、この
図14Bの例では、上述のように非対向面30mf1snを第1不織布30mf1の両面30mf1s1,30mf1s2のうちのネット当接面30mf1s1としている。
そのため、第1不織布30mf1の厚さ方向において非対向面30mf1sn側の部分P1snでは、繊維の分布密度(g/cm
3)が高く、その逆側の対向面30mf1sm側の部分P1smでは、繊維の分布密度が低くなっている。より正確には、当該非対向面30mf1sn側の部分P1snの方が、逆側の面たる対向面30mf1sm側の部分P1smよりも繊維の分布密度が高くなっている。よって、同
図14Bに示すように、第1不織布30mf1に押し込んだピン部材55pを引き抜く際に、対向面30mf1sm側の部分P1smの繊維がピン部材55pと一緒に引き抜く方向に移動し易いが、ここで、当該部分P1smよりも引き抜き側(
図14Bでは上側)の位置には、非対向面30mf1sn側の部分P1snの繊維が高い分布密度で位置している。そのため、この厚さ方向に移動し難い非対向面30mf1sn側の部分P1snの繊維が、ピン部材55pと一緒に厚さ方向に移動しようとする対向面30mf1sm側の部分P1smの繊維の引き抜く方向への移動を有効に阻止して、これにより、非対向面30mf1snからバリB1が突出することが抑制される。
【0076】
また、この例では、
図14Aに記載の二つ目のバリB2、つまり、第2不織布30mf2の両面30mf2sn,30mf2smのうちで第1不織布30mf1と対向しない非対向面30mf2snから突出し得るバリB2を小さくする工夫として、次のようにしている。
すなわち、第2不織布30mf2の非対向面30mf2snに対しても、第2不織布30mf2を生成する際の両面30mf2s1,30mf2s2のうちでネット202の上面202sに当接した方の面30mf2s1(以下、ネット当接面30mf2s1とも言う)を対応付けている。そして、このようにしていれば、次のようにして、非対向面30mf2snからのバリB2の突出が抑制される。
先ず、同
図14Aに示すように、ピン部材55pは第1不織布30mf1に押し込まれ、しかる後に第2不織布30mf2に押し込まれるが、この第2不織布30mf2への押し込みの際には、対向面30mf2sm側の部分P2sm、非対向面30mf2sn側の部分P2snの順番で押し込まれる。すなわち、第2不織布30mf2の非対向面30mf2sn側の部分P2snにはピン部材55pが最後に押し込まれる。そして、このとき、ピン部材55pにまとわりついた繊維が一緒に押し込み方向に移動すると、非対向面30mf2snから外方にバリB2が突出形成される。
しかし、ここで、第2不織布30mf2の非対向面30mf2snは、上記のネット当接面30mf2s1であり、前述したことから、当該ネット当接面30mf2s1の繊維の分布密度は高くなっている。つまり、上記の非対向面30mf2sn側の部分P2snの繊維の分布密度は高くなっている。よって、この非対向面30mf2sn側の部分P2snの繊維は、押し込み方向たる厚さ方向に移動し難く、その結果、第2不織布30mf2の非対向面30mf2snからのバリB2の突出が抑制される。
【0077】
ちなみに、第2不織布30mf2の非対向面30mf2snの上記バリB2が大きな問題にならない場合には、第2不織布30mf2の厚さ方向の位置関係を上述の逆にしても良い。すなわち、第2不織布30mf2の上記ネット当接面30mf2s1を、第2不織布30mf2の対向面30mf2snの方に対応付けても良い。
【0078】
また、
図4、
図9B、及び
図12の要部拡大図を相互に対照してわかるように、この例では、第1不織布30mf1の非対向面30mf1snは、最終的におむつ1の状態における腹側帯部材31及び背側帯部材41の各非肌側面を形成している。そのため、上述のようにして非対向面30mf1snのバリB1を小さくすることは、これら腹側帯部材31及び背側帯部材41を非肌側から見た際に通気孔hを綺麗に見せることに有効に寄与する。よって、良好な外観のおむつ1を製造可能となる。
但し、何等これに限らない。すなわち、第1不織布30mf1の非対向面30mf1snが、最終的に腹側帯部材31及び背側帯部材41の肌側面を形成するようにしても良い。そして、このようにすれば、上述のようにして非対向面30mf1snのバリB1を小さくすることは、腹側帯部材31及び背側帯部材41に肌側から触れた際に良好な触感を感じさせることに有効に寄与する。よって、肌触りの良好なおむつ1を製造可能となる。
【0079】
更に、この例では、前述のように、第1不織布30mf1及び第2不織布30mf2に糸ゴムの連続体35a,45aを固定するためのホットメルト接着剤は、糸ゴムの連続体35a,45aの方に塗布されていた。そして、これにより、糸ゴムの連続体35a,45aを介して第1不織布30mf1と第2不織布30mf2とが固定されていて、つまり、糸ゴムの連続体35a,45aに塗布された上記のホットメルト接着剤が、第1不織布30mf1と第2不織布30mf2とを固定するための固定部として機能していた。そのため、この例では、第1不織布30mf1と第2不織布30mf2とを直接固定するための直接固定部は、設けられていない。すなわち、第1不織布30mf1及び第2不織布30mf2の方には、上記直接固定部としてのホットメルト接着剤は塗布されていないし、また、第1不織布30mf1と第2不織布30mf2とを溶着で直接固定するための溶着部も設けられていない。そして、これにより、シート状部材30mfの柔らかさの向上が図られている。
【0080】
また、
図9Bに示すように、この例では、通気孔hは、シート状部材30mfにおいて糸ゴムの連続体35a,35a(45a,45a)同士の間の位置に形成されている。そのため、当該通気孔hは、上記固定部としてのホットメルト接着剤が存在しない位置に形成され、つまり、固定部に重ならないように形成されている。よって、固定部に重なるように通気孔hが形成される場合に起こり得る不具合、すなわち、通気孔hを貫通形成する際の貫通抵抗が固定部に起因して増大してしまって通気孔hを貫通形成し難くなることや、固定部の作用でバリB1,B2が硬くなってしまってシート状部材30mfの柔らかさが阻害されてしまうことを有効に防ぐことができる。
【0081】
但し、何等これに限らない。例えば、シート状部材30mfが多少硬くなっても問題ない場合には、上記の糸ゴムの連続体35a,45aに塗布されたホットメルト接着剤に代えて、或いはこれに加えて、第1不織布30mf1及び第2不織布30mf2のうちの少なくとも一方にホットメルト接着剤を塗布することで、第1不織布30mf1と第2不織布30mf2とを直接固定しても良い。すなわち、前述の直接固定部を設けても良い。しかし、その場合にも、望ましくは、当該直接固定部としてのホットメルト接着剤が存在しない位置に通気孔hを形成すると良い。すなわち、第1不織布30mf1及び第2不織布30mf2におけるホットメルト接着剤の塗布位置に重ならないように通気孔hを形成すると良い。そして、そのようにすれば、上述と同様の作用効果、すなわち、通気孔hの貫通抵抗の増大やバリB1,B2の硬化を防ぐという作用効果を奏することができる。なお、糸ゴムの連続体35a,45aを介さずに第1不織布30mf1と第2不織布30mf2とを直接固定するという直接固定部の一例は、何等上述のホットメルト接着剤に限らない。例えば、第1不織布30mf1と第2不織布30mf2とを溶着する前述の溶着部も、直接固定部の概念に含まれる。
【0082】
ところで、
図12の円錐部55paの頂角は、例えば20°〜45°の範囲から選択され、この例では36°である。また円錐部55paの高さは、例えば3mm〜8mmの範囲から選択され、この例では、4.6mmである。但し、何等これに限らない。更に、この例では、穴部51hの縁部が面取りされているが、何等これに限らず、つまり、面取りされていなくても良い。
【0083】
また、この例では、
図11の中間ロール55は、一回転につき
図9Bのようにおむつ二つ分の通気孔群Gh31,Gh31,Gh31,Gh31,Gh41,Gh41,Gh41,Gh41を形成するように、周長が前述の製品ピッチP1の略2倍に相当する長さの大径ロールとされている。一方、
図11の上流側ロール51は、一回転につき
図9Bのおむつ一つ分の通気孔群Gh31,Gh31,Gh41,Gh41を形成可能なように、周長が略製品ピッチP1に相当する長さの小径ロールとされている。但し、何等これに限らない。
【0084】
図15は、中間ロール55の外周面におけるピン部材55pの配置パターンの説明図であり、
図16は、上流側ロール51の外周面における穴部51hの配置パターンの説明図である。なお、何れの図も、各ロール55,51の外周面を平面上に展開して示している。また、
図15では、図の錯綜を防ぐ目的で後述の受け部55rを不図示としている。
【0085】
図15に示すように、ピン部材55pは、前述のシート状部材30mfに形成される通気孔群Gh31,Gh41に対応させて設けられている。すなわち、
図9Bに示すように、シート状部材30mfにおけるCD方向の一方側の領域には、おむつ一つにつき腹側帯部材31用に一対の通気孔群Gh31,Gh31が形成されるべきであることから、
図15に示すように、中間ロール55の外周面におけるCD方向の一方側の領域には、通気孔群Gh31と同じ千鳥配置で複数のピン部材55pを有したピン部材群G55p1,G55p1が、回転方向Dc55に一対並んで設けられている。同様に、シート状部材30mfにおいてCD方向の他方側の領域には、おむつ一つにつき背側帯部材41用の一対の通気孔群Gh41,Gh41が形成されるべきであることから、中間ロール55の外周面におけるCD方向の他方側の領域には、通気孔群Gh41と同じ千鳥配置で複数のピン部材55pを有したピン部材群G55p2,G55p2が回転方向Dc55に一対並んで設けられている。
【0086】
また、この例では、前述のように、中間ロール55は一回転でおむつ二つ分の通気孔hを形成することから、回転方向Dc55に並ぶ上記一対のピン部材群G55p1,G55p1(G55p2,G55p2)を1セットのピン部材群セットSG55p1(SG55p2)とした場合に、中間ロール55の外周面には、回転方向Dc55に180°の等ピッチで2セットのピン部材群セットSG55p1,SG55p1(SG55p2,SG55p2)が並んで設けられている。
【0087】
更に、
図17Aに、
図15中のXVIIa部の拡大図を示し、
図17Bには、
図17A中のB−B矢視図を示すが、ここで、前者の
図17Aに示すように、この中間ロール55の外周面において隣り合うピン部材55p,55p同士の間の位置には、ピン部材55pとは別体の受け部55rが突出形成されている。そして、
図17Bに示すように、この受け部55rは、先端に、中間ロール55の回転半径方向Dr55の外方を向いた頂面55rtを有した略円柱体である。よって、シート状部材30mfは、ピン部材55p以外に当該受け部55rでも受け止められて保持される。そのため、シート状部材30mfを、全体として、中間ロール55の回転半径方向Dr55の適正な位置に安定して保持可能となる。また、このとき、同受け部55rは上記頂面55rtでシート状部材30mfの一方の面を貫通せずに受け止めるが、このことも、シート状部材30mfを上記の適正な位置に安定して保持することに有効に寄与する。
【0088】
また、この例では、
図17Aに示すように、かかる受け部55rは、ピン部材55pの周囲の四カ所にそれぞれ設けられていて、これにより、シート状部材30mfを確実に受け止め可能としているが、何等上記の四カ所に限らない。例えば、配置スペースを確保できない場合には、これより少なくても良いし、逆に配置スペースを確保できる場合には、これより多くても良い。
【0089】
更に、この
図17Bの例では、受け部55rの頂面55rtの位置は、ピン部材55pの頂点の位置よりも中間ロール55の回転半径方向Dr55の内方に位置している。そして、これにより、ピン部材55pによる通気孔hの貫通形成処理を、受け部55rが邪魔することを防止している。なお、ここで望ましくは、受け部55rの頂面55rtは、ピン部材55pの円錐部55paの底面の近傍に位置していると良く、例えば、当該頂面55rtは、回転半径方向Dr55の位置に関して上記底面の位置を中心とする±2mmの範囲に入っていると良い。そして、この例では、当該頂面55rtは、円錐部55paの底面と一致している。よって、受け部55rは、ピン部材55pの通気孔hの貫通形成処理を概ね邪魔せずにシート状部材30mfを確実に受け止めることができる。そして、これにより、ピン部材55pは、シート状部材30mfに対して速やかに通気孔hを形成可能となる。
【0090】
また、この例では、受け部55rの頂面55rtは正円形状とされていて、その直径は、例えば2mm〜5mmの範囲から選択されているが、何等これに限らない。例えば、正三角形や正方形などの多角形でも良いし、これら以外の形状でも良い。
【0091】
一方、
図16に示すように、上流側ロール51の外周面の穴部51hは、ピン部材55pに対応させて設けられている。すなわち、
図15に示すように、中間ロール55の外周面におけるCD方向の一方側の領域には一対のピン部材群G55p1,G55p1が回転方向Dc55に並んで設けられていることから、これに対応させて、上流側ロール51の外周面におけるCD方向の一方側の領域には、千鳥配置で複数の穴部51hを有した穴部群G51h1,G51h1が、回転方向Dc51に並んで一対設けられている。同様に、
図15に示すように、中間ロール55の外周面におけるCD方向の他方側の領域には一対のピン部材群G55p2,G55p2が回転方向Dc55に並んで設けられていることから、これに対応させて、上流側ロール51の外周面におけるCD方向の他方側の領域には、千鳥配置で複数の穴部51hを有した穴部群G51h2,G51h2が、回転方向Dc51に一対並んで設けられている。
【0092】
但し、前述のように上流側ロール51は、一回転でおむつ一つ分の通気孔hの形成に関与することから、回転方向Dc51に並ぶ上記一対の穴部群G51h1,G51h1(G51h2,G51h2)を1セットの穴部群セットSG51h1(SG51h2)とした場合に、上流側ロール51の外周面には、かかる穴部群セットSG51h1(SG51h2)が1セットだけ設けられている。
【0093】
なお、場合によっては、
図11の中間ロール55の内部に電熱ヒーター等の加熱装置(不図示)を内蔵させて、これにより、中間ロール55のピン部材55pを加熱しても良い。そして、このようにすれば、加熱されたピン部材55pに基づいて、シート状部材30mfの不織布30mf1,30mf2の構成繊維たる熱可塑性樹脂繊維を軟化させることができる。よって、当該ピン部材55pをシート状部材30mfに押し込む際に当該繊維を周囲に押し退け易くなって、これにより、通気孔hを形成し易くなる。
【0094】
ちなみに、加熱の目安としては、例えば、ピン部材55pの温度が、上記の熱可塑性樹脂の軟化点以上融点未満にすることが挙げられる。軟化点については、JISK7196(熱可塑性プラスチックフィルム及びシートの熱機械分析による軟化温度試験方法)のTMA(熱機械分析)で求めることができる。また、融点については、JISK7121(プラスチックの転移温度測定方法)のDSC(示差走査熱量測定)において融解ピーク温度として求めることができる。
【0095】
他方、
図11の下流側ロール58の構成は、概ね上流側ロール51のそれと同じである。例えば、下流側ロール58の外周面には、上流側ロール51の外周面の穴部群G51h1,G51h2と同仕様の穴部群G58h1,G58h2が設けられている。そして、これにより、シート状部材30mfを中間ロール55から受け取る際に、これら穴部群G58h1,G58h2の各穴部58hには、中間ロール55のピン部材55pが円滑に挿入されて、これにより、シート状部材30mfに形成された通気孔hの形状を大きく崩すことなく、当該シート状部材30mfを受け取り可能である。
【0096】
<<<スリット工程S60>>>
図8に示すように、スリット工程S60では、上記の通気孔形成工程S50から送られるシート状部材30mfを、CD方向の一方側の領域と他方側の領域との境界位置BL(
図9B)において二分割する。そして、これにより、糸ゴムの連続体35aが未切断状態の腹側帯部材の連続体31aと、糸ゴムの連続体45aが未切断状態の背側帯部材の連続体41aとが、CD方向に並んだ状態で生成される(
図8)。
【0097】
かかる二分割処理は、
図8の周知のスリッター装置60を用いて実施可能である。すなわち、同装置60は、例えば上下一対の円盤状の回転刃を有し、そして、回転刃の外周縁の刃先でもって上記のシート状部材30mfをCD方向に二分割するが、かような装置60は周知である。よって、これ以上の説明については省略する。
【0098】
<<<間隔形成工程S70>>>
図8に示すように、間隔形成工程S70では、上記のスリット工程S60から送られる腹側帯部材の連続体31aと背側帯部材の連続体41aとを、それぞれ、CD方向の外側にそれぞれ移動して、これにより、これら連続体31a,41a同士のCD方向の間に、
図4の展開形状のおむつ1における腹側帯部材31と背側帯部材41との間の縦方向の間隔Ldに相当する大きさの間隔を形成する。
【0099】
なお、かかる腹側帯部材の連続体31aのCD方向の外側への移動及び背側帯部材の連続体41aのCD方向の外側への移動については、それぞれ、上記移動を考慮した搬送経路に沿って複数の搬送ローラー(不図示)を配置することにより実現可能であり、その内容については上記の記載から想到可能である。そのため、これ以上の説明については省略する。
【0100】
<<<腹側糸ゴム切断工程S80>>>
腹側糸ゴム切断工程S80においては、上記の間隔形成工程S70から送られる
図10Aの腹側帯部材の連続体31aに対して、
図10Bに示すように、非伸縮領域ALに対応する非固定領域AL1では、糸ゴムの連続体35aを切断する一方、伸縮領域AHに対応する固定領域AH1では、糸ゴムの連続体35aを切断しない。そして、これにより、腹側帯部材の連続体31aに非伸縮領域ALと伸縮領域AHとが形成される。なお、非伸縮領域ALに対応する領域AL1は、搬送方向におむつ1の製品ピッチP1で現れる。よって、かかる切断処理は、腹側帯部材の連続体31aに対しておむつ1の製品ピッチP1で行われる。
【0101】
この切断処理は、腹側用カッター装置80によって行われる。
図18Aは、同カッター装置80の概略側面図であり、
図18Bは、
図18A中のB−B矢視図である。
【0102】
腹側用カッター装置80は、互いの外周面81ua,81daを対向させつつ、CD方向に沿った回転軸回りに駆動回転する上下一対のロール81u,81dを有する。そして、上ロール81uの外周面81uaのカッターブロック84には、
図10Bの所定位置PC,PC…に対応させて複数のカッター刃C,C…が突出形成されており、下ロール81dの外周面81daは、カッター刃C,C…を受けるべく平滑面とされている。また、これらロール81u,81dは、腹側帯部材の連続体31aの搬送動作と連動して回転するように制御されていて、これにより、非伸縮領域ALに対応する前述の非固定領域AL1が通過する度に、同非固定領域AL1にカッターブロック84が対向するようにカッターロール81uは回転する。そして、これにより、これら一対のロール81u,81dの外周面81ua,81da同士の間を、
図10Aの非伸縮領域ALに対応する非固定領域AL1が通過する度に、同非固定領域AL1は、カッターロール81uのカッターブロック84のカッター刃C,C…とアンビルロール81dの外周面81daとで押圧される。そして、押圧された各位置PCで各糸ゴムの連続体35a,35a…がそれぞれ切断される。
<<<背側糸ゴム切断工程S90>>>
図8に示すように、背側糸ゴム切断工程S90においては、同じく間隔形成工程S70から送られる背側帯部材の連続体41aに対して、
図10A及び
図10Bを参照して説明したのと同様の切断処理を行う。すなわち、非伸縮領域ALに対応する領域AL1では、糸ゴムの連続体45aを切断し、伸縮領域AHに対応する領域AH1では、糸ゴムの連続体45aを切断しない。そして、これにより、背側帯部材の連続体41aに非伸縮領域ALと伸縮領域AHとが形成される。なお、上述からわかるように、かかる切断処理は、前述の腹側糸ゴム切断工程S80と概ね同じであり、また、当該切断処理を行う
図8の背側用カッター装置90の構成も、腹側用カッター装置80のそれと同じである。そのため、ここでは、その詳細な説明については省略する。
【0103】
<<<吸収性本体取り付け工程S200>>>
吸収性本体取り付け工程S200においては、
図8に示すように、上記の各糸ゴム切断工程S80,S90から中間製品1mとして送られる各帯部材の連続体31a,41a同士に、不図示の別工程で生成された単票状の吸収性本体10を掛け渡して固定し、これにより、中間製品1mを、
図4の略H形状に展開されたおむつ1H,1H…が連続してなる略梯子状のおむつの連続体1Haの形態にする。
【0104】
なお、かかる吸収性本体10の取り付け処理の実現については、例えば、外周面に吸収性本体10を吸着保持する複数の保持部を回転方向に製品ピッチP1で並んで有した回転ドラム(不図示)を使用してなすことができ、かかる回転ドラムは周知である。そのため、詳細な説明については省略する。
【0105】
===通気孔形成工程S50よりも上流側に位置する工程S210について===
上述の本実施形態の説明では、通気孔形成工程S50及びその下流側に位置する各工程S60〜S130についてだけ述べ、それよりも上流側に位置する工程S210については述べていなかった。そのため、以下では、当該上流側の工程S210について説明する。
【0106】
図19Aは、製造ラインにおいて通気孔形成工程S50の位置よりも搬送方向の上流側に位置する工程S210の概略側面図である。
【0107】
図19Aに示すように、先ず、この製造ラインには、
図13等で説明済みの不織布の生成工程S200から第1不織布30mf1及び第2不織布30mf2がそれぞれ資材コイルC30mf1,C30mf2の形態で搬入される。ここで、各資材コイルC30mf1,C30mf2は、同
図19Aのように、それぞれ、第1不織布30mf1又は第2不織布30mf2が、各不織布30mf1,30mf2の連続方向にコイル状に巻き取られたものである。そして、各資材コイルC30mf1,C30mf2は、それぞれ、対応する繰り出し装置211,211の各回転軸211a,211aに取り付けられる。よって、各回転軸211a,211aが駆動回転することにより、各資材コイル30mf1,30mf2から第1不織布30mf1及び第2不織布30mf2がそれぞれ繰り出されて搬送方向に沿って搬送される。
【0108】
一方、各資材コイルC30mf1,C30mf2から繰り出された第1不織布30mf1と第2不織布30mf2とは、搬送方向の所定の合流位置P230で合流する。また、当該合流位置P230では、第1不織布30mf1と第2不織布30mf2との間に向けて、搬送方向に伸長状態の複数の糸ゴムの連続体35a,45aが搬送方向に沿って投入されるが、当該糸ゴムの連続体35a,45aには、予めホットメルト接着剤が塗布されている。よって、このホットメルト接着剤で同連続体35a,45aは、第1不織布30mf1及び第2不織布30mf2に固定されるとともに、当該糸ゴムの連続体35a,45aを介して第1不織布30mf1と第2不織布30mf2とは固定される。
【0109】
そうしたら、合流位置P230よりも搬送方向の下流側に配置された周知の折り返し装置240によって、
図9Aに示すように第1不織布30mf1におけるCD方向の各端部30mf1p1,30mf1p2がそれぞれCD方向の内側へ折り返されて、各折り返された部分が、第2不織布30mf2におけるCD方向の各端部30mf2p1,30mf2p2を肌側から覆った状態にされる。
そして、以上をもって、前述の
図9Aのような通気孔形成工程S50へ送られる直前の状態のシート状部材30mfが生成される。
【0110】
ここで、この例では、繰り出し装置211から合流位置P230まで間の第1不織布30mf1の搬送を、複数の搬送ローラー215,215…が行っているが、望ましくは、これら搬送ローラー215,215…のうちの少なくとも1つが、
図19Aに示すような仕様の搬送ローラー215aであると良い。すなわち、当該搬送ローラー215aが、従動回転する従動ローラーであるとともに、同ローラー215aが、第1不織布30mf1の両面30mf1s1,30mf1s2のうちのネット非当接面30mf1s2(
図13のサクションベルトコンベア201のネット202の上面202sと当接しない方の面30mf1s2)と接触することにより、当該第1不織布30mf1から回転力を得て従動回転すると良い。
【0111】
そして、このような搬送ローラー215aを有していれば、第1不織布30mf1の上記ネット非当接面30mf1s2側の部分の繊維は、搬送ローラー215aとの接触で付与される剪断力に基づいてより一層ほぐされる。すなわち、当該部分は、そもそも繊維の分布密度が低くて謂わばある程度ほぐれていた部分ではあるが、これが、上記の搬送ローラー215aとの接触でより一層ほぐされる。よって、第1不織布30mf1に通気孔hを貫通形成する際の貫通抵抗を効果的に縮小することができて、これにより、通気孔hを形成し易くなる。
【0112】
また、より望ましくは、かかる搬送ローラー215aが、上述のような従動ローラーであるだけでなく、
図19Bに示すようなダンサー機能を有したダンサーロール215Dも兼ねていると良い。なお、ダンサーロール215Dは、例えば、繰り出し装置211から繰り出される第1不織布30mf1の張力値(N)を一定に維持するために使用されるものであり、詳しくは次の通りである。
先ず、ダンサーロール215Dは、定位置で回転する一対の定位置ロール215S,215S同士の間の位置で、第1不織布30mf1が連続する所定方向(
図19Bの例では、上下方向)に往復移動可能に案内されている。そして、これら一対の定位置ロール215S,215S及びダンサーロール215Dに第1不織布30mf1が掛け回されることによって、第1不織布30mf1のループLPが形成されているとともに、ダンサーロール215Dには、エアシリンダーや錘等の適宜な荷重付与装置(不図示)によって、所定値の荷重RDが上記所定方向においてループLPが大きくなる方向に付与されている。また、上記所定方向におけるダンサーロール215Dの位置は、適宜なセンサー(不図示)で計測されていて、当該センサーから出力される計測信号に基づいて、シーケンサー等の適宜なコントローラ(不図示)が、繰り出し装置211の回転軸211aの回転速度値(mpm)を制御する。すなわち、計測信号が、「ループLPの大きさが目標値よりも小さくなっている」旨を示している場合には、同コントローラは、回転軸211aの回転速度値(mpm)を大きくする一方、同計測信号が、「ループLPの大きさが目標値よりも大きくなっている」旨を示している場合には、回転軸211aの回転速度値(mpm)を小さくする。そして、これにより、繰り出し装置211から繰り出される第1不織布30mf1の張力値が一定に維持される。
【0113】
なお、このように搬送ローラー215aがダンサーロール215Dを兼ねている場合には、当該ダンサーロール215Dには、上述のように、ループLPが大きくなる方向に所定値の荷重RDが付与されている。そのため、かかるダンサーロール215Dとの接触に基づいて第1不織布30mf1に付与される前述の剪断力を、上記の荷重RDの作用分、大きくすることができる。そして、これにより、当該剪断力に基づいて第1不織布30mf1の上記ネット非当接面30mf1s2側の部分の繊維をより効果的にほぐすことができる。
【0114】
ちなみに、
図19Aに示すように、上述のような機能の搬送ローラー215aを、第2不織布30mf2の繰り出し装置211と合流位置P230の間の搬送経路に設けても良い。すなわち、当該搬送経路の搬送ローラー215,215…のうちの少なくとも1つが、上述のような機能の搬送ローラー215aであっても良い。そして、その場合には、この搬送ローラー215aも従動ローラーであるが、当該ローラー215aについては、第2不織布30mf2の両面30mf2s1,30mf2s2のうちのネット非当接面30mf2s2(
図13のサクションベルトコンベア201のネット202の上面202sと当接しない方の面30mf2s2)と接触することにより、当該第2不織布30mf2から回転力を得て従動回転する。
更には、第2不織布30mf2用の当該搬送ローラー215aが、上述のような従動ローラーであるだけでなく、
図19Bの如きダンサー機能を有したダンサーロール215Dを兼ねていても良い。なお、この内容については、第1不織布30mf1についての既述の内容から容易に想到可能と考えられる。そのため、同一又は類似の構成については同じ符号を付して、これ以上の説明については省略する。
【0115】
===その他の実施の形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのはいうまでもない。例えば、以下に示すような変形が可能である。
【0116】
上述の実施形態では、連続する弾性部材の一例として糸ゴムの連続体35a,45aを例示したが、何等これに限らない。例えば、帯ゴムの連続体でも良い。
【0117】
上述の実施形態では、
図12中の要部拡大図に示すように、中間ロール55のピン部材55pは、円錐部55paと円柱部55pbとを有していたが、何等これに限らない。例えば、円錐部55paに代えて三角錐や四角錐等の断面多角形の錐状部を有しても良いし、円柱部55pbに代えて三角柱や四角柱等の断面多角形の柱状部を有していても良い。
【0118】
上述の実施形態では、
図11に示すように中間製品1mとしてのシート状部材30mfを、通気孔形成工程S50の通気孔形成装置50の上流側ロール51及び中間ロール55にそれぞれ巻き付けていたが、何等これに限らない。すなわち、上流側ロール51及び中間ロール55のどちらにも巻き付けずに各ロール51,55同士の間にシート状部材30mfを通すようにしても良い。
【0119】
上述の実施形態では、吸収性物品の一例として3ピースタイプの使い捨ておむつ1を例示したが、何等これに限らない。例えば、2ピースタイプの使い捨ておむつの材料となるシート状部材を製造する際に、本発明のシート状部材の製造方法及び製造装置を適用しても良い。ちなみに、2ピースタイプの使い捨ておむつとは、例えば腹側部と股下部と背側部とを有した外装シートを第1部品として有し、同外装シートの肌側面に固定される吸収性本体10を第2部品として有するタイプのおむつのことである。そして、その場合には、上述の外装シートの連続シートが二枚重ねの不織布で形成されていて、当該二枚重ねの不織布に孔部を形成したり、二枚重ねの不織布同士の間の弾性部材を切断する際に、本発明のシート状部材の製造方法及び製造装置を使用することになる。
更に言えば、この2ピースタイプのおむつが、所謂テープ式の使い捨ておむつであっても良い。なお、テープ式の使い捨ておむつとは、着用者の胴部を腹側から覆う上記腹側部と、同胴部を背側から覆う上記背側部とを連結するのに、ファスニングテープを用いるタイプのおむつのことである。
また、更に言えば、吸収性物品は、何等使い捨ておむつ1に限らない。すなわち、不織布を材料として製造される吸収性物品であれば、その製造の際に、本発明のシート状部材の製造方法及び製造装置を適用可能である。そのため、この吸収性物品の概念には、尿取りパッドや生理用ナプキン等も含まれる。
搬送方向に連続するシート30mfから複数の貫通孔hが形成されたシート状部材を製造する方法である。搬送方向に連続しつつ互いに重なった第1不織布30mf1と第2不織布30mf2との間に、複数の弾性部材35aがCD方向に並んだ状態で介挿されたシート30mfを搬送する工程と、シート30mfにおいてCD方向に隣り合う弾性部材35a,35a同士の間の位置に部材55pを押し込むことで、シート30mfに貫通孔hを形成する工程S50と、を有する。同工程S50では、第1不織布30mf1の両面のうちで第2不織布30mf2と対向しない非対向面30mf1snから部材55pを押し込んだ後に、同部材55pを非対向面30mf1snの方へ引き抜く。非対向面30mf1snは、第1不織布30mf1を生成すべくその構成繊維を支持部材202の支持面202sに吸引して堆積させた際に、同面202sに当接した方の面30mf1s1である。