特許第6135511号(P6135511)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6135511-逆浸透処理方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6135511
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】逆浸透処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/44 20060101AFI20170522BHJP
   B01D 61/04 20060101ALI20170522BHJP
   C02F 1/52 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
   C02F1/44 C
   B01D61/04
   C02F1/52 Z
【請求項の数】4
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-553236(P2013-553236)
(86)(22)【出願日】2012年12月21日
(86)【国際出願番号】JP2012083288
(87)【国際公開番号】WO2013105421
(87)【国際公開日】20130718
【審査請求日】2015年12月14日
(31)【優先権主張番号】特願2012-3287(P2012-3287)
(32)【優先日】2012年1月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(72)【発明者】
【氏名】育野 望
【審査官】 團野 克也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−071252(JP,A)
【文献】 特開2009−066508(JP,A)
【文献】 特開2002−059194(JP,A)
【文献】 特開2002−191942(JP,A)
【文献】 特開2009−006209(JP,A)
【文献】 特開2006−007145(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC B01D21/01
B01D61/00−71/82
C02F1/44
C02F1/52−1/56
DB等 JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水に鉄系無機凝集剤を添加し、固液分離した後、逆浸透装置で処理する逆浸透処理方法において、
該逆浸透装置への給水にキレート系スケール抑制剤とスケール分散剤とを添加する逆浸透処理方法であって、
前記鉄系無機凝集剤は、Mn、Zn及びNiの合計の含有率が0.05重量%以上であり、
前記被処理水に前記鉄系無機凝集剤を10〜400mg/L添加し、
前記キレート系スケール抑制剤の添加量が、前記給水中のMn、Zn及びNiの重金属合計当量の20倍量以上であり、
前記給水にスケール分散剤を1〜200mg/L添加することを特徴とする逆浸透処理方法。
【請求項2】
請求項1において、キレート系スケール抑制剤は、エチレンジアミン四酢酸及び/又はニトリロ三酢酸であることを特徴とする逆浸透処理方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、スケール分散剤は(メタ)アクリル酸重合体及びその塩、並びにマレイン酸重合体及びその塩よりなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする逆浸透処理方法。
【請求項4】
請求項1ないしのいずれか1項において、前記被処理水に鉄系無機凝集剤を添加してpH4〜8で凝集処理した後固液分離することを特徴とする逆浸透処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆浸透処理方法に係り、特に被処理水に鉄系無機凝集剤を添加し、固液分離した後、逆浸透処理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被処理水に塩化第二鉄を添加した後、加圧浮上分離し、砂濾過した後、逆浸透膜装置(以下、RO装置ということがある。)で膜分離処理する方法は特許文献1,2等に記載の通り周知である。RO処理に際し、RO給水にスケール分散剤を添加することも行われている(特許文献3,4)。
【0003】
特許文献5の0003段落には、塩化鉄よりなる凝集剤にはMn(マンガン)が含まれており、38%濃度の塩化第二鉄溶液にはマンガンが400〜1000mg/L存在することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−240974
【特許文献2】特開2008−246386
【特許文献3】特開平5−269463
【特許文献4】特開平10−202066
【特許文献5】特開2006−342007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
被処理水に鉄系無機凝集剤を添加し、固液分離した後、RO処理する方法において、鉄系無機凝集剤中のMn等の重金属がRO膜表面に付着し、これが酸化触媒として作用し、RO膜を劣化させることがある。
【0006】
本発明は、鉄系無機凝集剤中の重金属によるRO膜の劣化を防止することができる逆浸透処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の逆浸透処理方法は、被処理水に鉄系無機凝集剤を添加し、固液分離した後、逆浸透装置で処理する逆浸透処理方法において、該逆浸透装置への給水にキレート系スケール抑制剤とスケール分散剤とを添加する逆浸透処理方法であって、前記鉄系無機凝集剤は、Mn、Zn及びNiの合計の含有率が0.05重量%以上であり、前記被処理水に前記鉄系無機凝集剤を10〜400mg/L添加し、前記キレート系スケール抑制剤の添加量が、前記給水中のMn、Zn及びNiの重金属合計当量の20倍量以上であり、前記給水にスケール分散剤を1〜200mg/L添加することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、被処理水に鉄系無機凝集剤を添加し、固液分離した分離水をRO給水とする。このRO給水に対しスケール分散剤の他にさらにキレート系スケール抑制剤を添加する。これにより、重金属の酸化触媒作用によるRO膜の劣化が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態に係る逆浸透処理方法の説明図である。
図2】実施例1と比較例1の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0012】
[被処理水]
被処理水としては、工業用水、河川水、湖沼水、井水などの他、有機性排水の生物処理水、各種製造工程や洗浄工程からの排水などが例示される。
【0013】
[鉄系無機凝集剤]
鉄系無機凝集剤としては、塩化第二鉄、ポリ硫酸鉄などが挙げられるが、特に重金属含有率が高い塩化第二鉄が挙げられる。この鉄系無機凝集剤中のMn、Ni及びZnの合計の含有率が0.05重量%以上5重量%以下、例えば0.1重量%以上2重量%以下である場合に本発明を適用すると効果的である。被処理水への鉄系無機凝集剤の添加量は、ジャーテストなどによって実験的に定めるのが好ましい。被処理水への鉄系無機凝集剤の添加量は、被処理水の水質等によっても異なるが、通常10〜400mg/L程度である。
【0014】
被処理水に鉄系無機凝集剤を添加した場合、必要に応じpH調整剤を添加してpHを4〜8特に5〜8程度に調整して凝集処理することが好ましい。pH調整剤としては、塩酸、硫酸などの酸や、水酸化ナトリウム等のアルカリが用いられるが、これらに限定されない。鉄系無機凝集剤を添加した後アニオン性ポリマー凝集剤などのポリマー凝集剤を添加してもよい。
【0015】
[固液分離]
凝集処理後の固液分離としては、浮上分離又は沈降分離と、濾材層に通水する濾過とを併用することが望ましい。濾材としては、砂、アンスラサイトなどを用いることができる。
【0016】
[キレート系スケール抑制剤]
キレート系スケール抑制剤としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)やニトリロ三酢酸(NTA)などが好適に用いられる。これらのキレート系スケール抑制剤は1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0017】
EDTA、NTA等のキレート系スケール抑制剤の添加量は、RO給水中のMn、Zn及びNiの重金属合計当量の20倍量以上特に30〜40倍量が好ましい。このキレート系スケール抑制剤の添加により、キレート系スケール抑制剤がRO給水中の重金属とキレート系化合物を形成し、重金属を可溶化するので重金属がRO装置からの濃縮水と共に流出し、重金属がRO膜面に付着することが防止され、重金属の触媒作用に起因したRO膜の劣化が防止される。
【0018】
[スケール分散剤]
スケール分散剤としては、(メタ)アクリル酸重合体及びその塩、マレイン酸重合体及びその塩などの低分子量ポリマー、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸及びその塩、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸及びその塩、ニトリロトリメチレンホスホン酸及びその塩、ホスホノブタントリカルボン酸及びその塩などのホスホン酸及びホスホン酸塩、ヘキサメタリン酸及びその塩、トリポリリン酸及びその塩などの無機重合リン酸及び無機重合リン酸塩などを使用することができる。これらのスケール分散剤は1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
スケール分散剤の添加量は、RO装置の給水である固液分離水に対して1〜100mg/L程度とすることが好ましい。
【実施例】
【0019】
[実施例1]
HF排水処理水の模擬排水(Ca:100mg/L、F:13mg/L、pH3)を調製し、図1の通り反応槽1に導入し、水酸化ナトリウムを添加してpH=6〜7に調整すると共に、塩化第二鉄を反応槽1内の濃度が150mg/Lとなるように添加した。この塩化第二鉄中のMn含有率は1重量%、Ni含有率は0.05重量%、Zn含有率は0.05重量%であった。反応槽1からの流出水を、凝集槽2に導入して、反応させた後、加圧浮上槽3で加圧浮上処理し、処理水を二層濾過器4(濾材:砂、アンスラサイト)にて濾過した。濾過器4の濾過水にキレート系スケール抑制剤としてウェルクリンA801(栗田工業製)を10mg/L添加し、スケール分散剤としてクリフロートN900(栗田工業製)を10mg/L添加し、次いでRO装置5にてRO膜処理した。RO膜は日東電工製ES−20であり、回収率は85%とした。RO装置5の脱塩率と差圧の経時変化を図2に示す。
【0020】
[比較例1]
キレート系スケール抑制剤を添加しなかったこと以外は実施例1と同一条件にて処理を行った。RO装置5の脱塩率と差圧の経時変化を図2に示す。
【0021】
図2の通り、本発明によると、RO膜の劣化が防止され、長期にわたって脱塩率が高く維持される。
【0022】
本発明を特定の態様を用いて詳細に説明したが、本発明の意図と範囲を離れることなく様々な変更が可能であることは当業者に明らかである。
なお、本出願は、2012年1月11日付で出願された日本特許出願(特願2012−003287)に基づいており、その全体が引用により援用される。
図1
図2