(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0023】
[第1実施形態]
<電子機器の構成>
まず、
図1および
図2を参照して、本発明の第1実施形態による電子機器100の構成について説明する。
【0024】
本発明の第1実施形態による電子機器100は、たとえば、携帯可能な電子機器である。この電子機器100は、電子機器100の構造用部材として用いられる箱状の筐体1と、筐体1上に配置される基板2と、基板2に接続され、画像などが表示される表示部3とを備えている。なお、筐体1は、特許請求の範囲の「電子機器用筐体」の一例である。
【0025】
(クラッド材の構成)
筐体1は、
図2に示すように、クラッド材10から構成されている。具体的には、筐体1は、Mg−Li層11と、Al層12と、接合部13とを備えるクラッド材10から構成されている。また、クラッド材10は、Z1側からZ2側に向かって、Mg−Li層11およびAl層12がこの順に積層された状態で接合されている。また、クラッド材10を厚み方向(Z方向)に切断した際の断面視において、接合部13は、Mg−Li層11とAl層12との接合界面Iaに配置されている。なお、Mg−Li層11、Al層12および接合部13は、それぞれ、特許請求の範囲の「第1層」、「第2層」および「第1接合部」の一例である。
【0026】
Mg−Li層11は、Mg−Li基合金から構成されている。なお、Mg−Li基合金としては、14質量%のLiと残部Mgおよび不可避的不純物元素とからなるMg−Li合金、LZ91(9質量%のLiと1質量%のZnと残部Mgおよび不可避的不純物元素とからなるMg−Li−Zn合金)、および、LA141(14質量%のLiと1質量%のAlと残部Mgおよび不可避的不純物元素とからなるMg−Li−Al合金)などがある。ここで、Mg−Li基合金は、約6質量%以上約15質量%以下のLiを含有するのが好ましい。なお、Mg−Li基合金の一例としてのLZ91の比重は、約1.5である。
【0027】
クラッド材10の表層に位置するAl層12は、Mg−Li基合金よりも耐食性に優れ、かつ、アルマイト処理などにより表面加工が容易なAl基合金から構成されている。なお、Al基合金には、純AlとAl合金とが含まれる。純Alとしては、99.5質量%以上のAlとその他の元素とからなるA1050および99.8質量%以上のAlとその他の元素とからなるA1080などがある。また、Al合金としては、Al−2Si(2質量%のSiと残部Alおよび不可避的不純物元素とからなるAl−Si合金)などのA4000番台のAl−Si合金およびA5000番台のAl−Mg合金などがある。ここで、Al層12を構成するAl基合金としては、延性の高い純Alを用いるのが好ましい。なお、Al層12を構成するAl基合金の比重は、Mg−Li層11を構成するMg−Li基合金の比重よりも大きい。ここで、Al基合金の一例としてのA1080の比重は、約2.7である。
【0028】
接合部13は、Cu基合金から構成されている。なお、Cu基合金には、純CuとCu合金とが含まれる。純Cuとしては、C1020(無酸素銅)、C1100(タフピッチ銅)、C1201(りん脱酸銅)およびC1220(りん脱酸銅)などがある。また、Cu合金としては、Cu−Ni合金などがある。
【0029】
また、接合部13を構成するCu基合金の比重は、Mg−Li層11を構成するMg−Li基合金の比重、および、Al層12を構成するAl基合金の比重よりも大きい。なお、Cu基合金の一例としてのC1020の比重は、約8.9である。
【0030】
また、クラッド材10では、接触する層同士が原子拡散や化合物形成などにより強固に接合されている。具体的には、クラッド材10において、Mg−Li層11とAl層12との接合界面Iaでは、Al層12と接合部13とが強固に接合されているだけでなく、Mg−Li層11と接合部13とが強固に接合されていることによって、Mg−Li層11とAl層12とが接合されている。
【0031】
ここで、第1実施形態では、クラッド材10の比重は、一般的に広く使用されているAlであるA1080の板材の比重(約2.7)よりも大幅に小さい2.10以下である。なお、軽量化のためにクラッド材10の比重は、約2.00以下であるのが好ましく、約1.90以下であるのがより好ましい。
【0032】
この際、クラッド材10では、比重が小さなMg−Li層11の厚みをt2とした場合に、Mg−Li層11の板厚比率((t2/t1)×100(%))をクラッド材10の厚みt1の約60%以上に大きくするのが好ましい。また、Mg−Li層11の板厚比率をクラッド材10の厚みt1の約90%以下にするのがより好ましい。
【0033】
また、第1実施形態では、接合部13は、接合界面Iaに島状に配置されている。つまり、接合部13は、接合界面Iaにおいて層状に形成されておらず、複数の島状部分13aから構成されている。これにより、接合部13が層状に形成されている場合と比べて、接合部13を構成するCu基合金の割合を小さくすることが可能である。なお、島状部分13aは、接合界面Iaの一部の領域に集中的に配置されているより、接合界面Iaの全体に亘って分散して配置されている方が好ましい。
【0034】
また、接合部13は、断面視において、接合界面Iaの約10%以上約90%以下の部分に配置されている(断面視において、約10%以上約90%以下の存在率である)のが好ましい。
【0035】
この際、接合部13の存在率は、下記のように算出される。つまり、
図2に示すように、クラッド材10を厚み方向(Z方向)に切断した際の所定の断面において、Mg−Li層11とAl層12との接合界面Iaに沿う方向のある程度の長さL(たとえば、L=1000μm)の測定範囲内において、接合部13の島状部分13aが存在している合計の長さを取得する。そして、取得した合計の長さをLで除することによって、接合部13の存在率を算出する。たとえば、
図2に示す場合において、接合部13の存在率(%)は、((L1a+L1b+L1c)/L)×100により算出される。なお、接合部13は、断面視において、接合界面Iaの約20%以上約80%以下の部分に配置されているのがより好ましい。また、接合部13の複数の異なる測定位置(たとえば、3ヶ所以上10ヶ所以下の測定位置)で上記測定を行い、その平均を接合部13の存在率(%)とする。
【0036】
また、接合界面Iaにおいてクラッド材10を剥離した際に、接合部13は、剥離されたAl層12の接合界面Ia側であった表面(剥離面)のうち、約4%以上約70%以下の部分に配置されているのが好ましい。
【0037】
さらに、接合界面Iaにおいてクラッド材10を剥離する際における、Mg−Li層11と接合部13とのピール強度(剥離強度)は、約1.0N/mm以上であるのが好ましい。なお、接合界面Iaにおいて、Mg−Li層11と接合部13とのピール強度は、約1.7N/mm以上であるのがより好ましく、約3.5N/mm以上であるのがさらに好ましい。
【0038】
また、クラッド材10において、Mg−Li層11の厚みt2は、Al層12の厚みt3および接合部13の厚みt4のいずれの厚みよりも大きい方が好ましい。なお、厚みt2は、クラッド材10の厚みt1の約60%以上であるのが好ましい。また、厚みt2は、厚みt1の約75%以上であるのがより好ましく、約90%以下であるのがさらに好ましい。
【0039】
また、比重が大きなCu基合金から構成される接合部13の厚みt4は、Mg−Li層11の厚みt2以下、かつ、Al層12の厚みt3以下であるのが好ましい。なお、クラッド材10全体の比重を小さくするために、厚みt4は、約6μm以下であるのが好ましい。また、厚みt4は、約0.5μm以上であるのが好ましい。
【0040】
[クラッド材の製造方法]
次に、
図1〜
図3を参照して、本発明の第1実施形態によるクラッド材10の製造方法について説明する。
【0041】
まず、
図3に示すように、Mg−Li基合金から構成されるMg−Li板材111と、Al基合金から構成されるAl板材112と、Cu基合金から構成されるCu板材113とを準備する。なお、Mg−Li板材111、Al板材112およびCu板材113は、所定の温度条件下で所定の時間焼鈍されることによって作製された焼鈍材である。
【0042】
この際、Mg−Li板材111、Al板材112およびCu板材113の各々の厚みを、接合後のクラッド材10の比重が2.10以下になるように調整する。そして、Mg−Li板材111、Cu板材113およびAl板材112をこの順で連続的に積層させる。この際、オーバーレイ型のクラッド材が形成されるように各々の板材を積層させる。そして、積層された3枚の金属板を、圧延ロール101を用いて連続的に熱間圧延する。なお、熱間圧延の温度条件Tは、約150℃以上約300℃以下であるのが好ましい。
【0043】
これにより、
図2に示すように、Mg−Li層11およびAl層12がこの順に積層され、Mg−Li層11とAl層12との接合界面Iaに接合部13が配置されたクラッド材10が作製される。なお、接合部13の厚みt4がある一定値以下の厚みである場合には、熱間圧延中の接合部13の伸びがMg−Li層11およびAl層12の伸びに追随できなくなり、接合部13が破断する。これにより、接合部13に島状部分13aが形成される。その後、クラッド材10に対して、約100℃以上約300℃以下の温度条件で所定の時間(たとえば、約5分)拡散焼鈍を行う。これにより、電子機器100(
図1参照)の構造用部材(筐体1)に用いられるクラッド材10が作製される。
【0044】
[第1実施形態の効果]
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0045】
第1実施形態では、上記のように、Mg合金から構成されるMg−Li層11がMg−Li基合金から構成されることによって、Liが含まれたMg−Li基合金により、Mg合金から構成される層がAZ80から構成される場合と比べて、Mg−Li層11の比重をより小さくすることができる。これにより、クラッド材10の比重を2.10以下にして大きくなるのを抑制することができる。また、クラッド材10がAl層12を備えることにより、クラッド材10の耐食性を向上させることができる。これらの結果、軽量で、かつ、耐食性の高いクラッド材10を得ることができる。さらに、Mg−Li層11を構成するMg−Li基合金は、Mg以外にAlを主として含有するMg合金と比べて、Cu基合金から構成される接合部13と接合しやすい。これにより、接合界面Iaにおける接合強度を十分に確保してMg−Li層11とAl層12とが互いに剥離するのを抑制することができる。この結果、特に軽量化が要求される携帯可能な電子機器100に特に適した筐体1(クラッド材10)を提供することができる。
【0046】
また、第1実施形態では、上記のように、接合部13を接合界面Iaに島状に配置する。これにより、接合部13が接合界面Iaの全体に層状に形成されている場合と比べて、Mg−Li基合金およびAl基合金と比べて比重が大きいCu基合金から構成される接合部13を減少させることができる。
【0047】
また、第1実施形態では、上記のように、接合部13を、断面視において、接合界面Iaの約10%以上の部分(好ましくは、約20%以上の部分)に配置する。このように構成すれば、接合界面Iaにおける接合強度を確実に確保することができる。また、接合部13を、断面視において、接合界面Iaの約90%以下の部分(より好ましくは約80%以下の部分)に配置する。このように構成すれば、Mg−Li基合金およびAl基合金と比べて比重が大きいCu基合金から構成される接合部13が過剰になるのを抑制することができるので、クラッド材10の比重が大きくなるのを抑制することができる。
【0048】
また、第1実施形態では、上記のように、断面視における接合部13の厚みt4を約0.5μm以上にすれば、接合部13を十分に確保することができるので、接合界面Iaにおける接合強度が小さくなるのを抑制することができる。また、厚みt4を約6μm以下にすれば、Mg−Li基合金およびAl基合金と比べて比重が大きいCu基合金から構成される接合部13が過剰になるのを抑制することができるので、クラッド材10の比重が大きくなるのを抑制することができる。
【0049】
また、第1実施形態では、上記のように、Mg−Li層11の厚みt2をクラッド材10の厚みt1の約60%以上にすることによって、Mg−Li基合金、Al基合金およびCu基合金のうち、最も比重の小さいMg−Li基合金の割合を十分に大きくすることができるので、クラッド材10を効果的に軽量化することができる。また、厚みt2を厚みt1の約90%以下にすることによって、Al基合金から構成されるAl層12の厚みt3が十分に確保されなくなるのを抑制して、クラッド材10の耐食性が低下するのを抑制することができる。また、接合部13が十分に確保されなくなるのを抑制して、接合界面Iaにおける接合強度が小さくなるのを抑制することができる。
【0050】
また、第1実施形態では、上記のように、Mg−Li層11と接合部13との間のピール強度を約1.0N/mm以上にすることによって、接合部13を介したMg−Li層11とAl層12との間の接合強度を確実に確保することができる。
【0051】
また、第1実施形態では、上記のように、Mg−Li層11を構成するMg−Li基合金が約6質量%以上のLiを含有することによって、Mg−Li基合金においてLiの含有量を十分に確保することができるので、Mg−Li層11を十分に軽量化することができる。さらに、Mg−Li基合金が約6質量%以上のLiを含有することによって、Mg−Li層11の延性を向上させることができるので、クラッド材10のプレス加工性を向上させることができる。また、Mg−Li基合金が約15質量%以下のLiを含有することによって、耐食性を低下させるLiがMg−Li基合金に多く含まれるのを抑制することができるので、Mg−Li層11の安定性を確保することができる。
【0052】
[第2実施形態]
次に、
図4を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態では、クラッド材210が5層構造を有する場合について説明する。
【0053】
<クラッド材の構成>
第2実施形態では、クラッド材210は、Mg−Li層211と、Al層212と、接合部213とに加えて、Al層214と接合部215とを備えている。また、クラッド材210は、Z1側からZ2側に向かって、Al層214、Mg−Li層211およびAl層212がこの順に積層された状態で接合されている。また、クラッド材210を厚み方向(Z方向)に切断した際の断面視において、接合部213は、Mg−Li層211とZ2側のAl層212との接合界面Iaに配置されている。また、断面視において、接合部215は、Mg−Li層211とZ1側のAl層214との接合界面Ibに配置されている。なお、Mg−Li層211、Al層212、214、接合部213および215は、それぞれ、特許請求の範囲の「第1層」、「第2層」、「第3層」、「第1接合部」および「第2接合部」の一例である。
【0054】
Mg−Li層211は、Mg−Li基合金から構成されている。クラッド材210の表層に位置するAl層212および214は、共に、Al基合金から構成されている。なお、Al層212および214は、略同一の組成を有するAl基合金から構成されているのが好ましい。さらに、Al層212の厚みt13およびAl層214の厚みt15は、略同一であるのが好ましい。これらにより、クラッド材210の表裏を厳密に区別する必要がなくなる。
【0055】
接合部213および215は、Cu基合金から構成されている。また、クラッド材210において、Mg−Li層211とAl層212との接合界面Iaでは、Al層212と接合部213とが強固に接合されているだけでなく、Mg−Li層211と接合部213とが強固に接合されていることによって、Mg−Li層211とAl層212とが接合されている。また、Mg−Li層211とAl層214との接合界面Ibでは、Al層214と接合部215とが強固に接合されているだけでなく、Mg−Li層211と接合部215とが強固に接合されていることによって、Mg−Li層211とAl層214とが接合されている。
【0056】
ここで、第2実施形態では、クラッド材210の比重は、一般的に広く使用されているAlであるA1080の板材の比重(約2.7)よりも大幅に小さい2.10以下である。なお、軽量化のためにクラッド材210の比重は、約2.00以下であるのが好ましく、約1.90以下であるのがより好ましい。
【0057】
この際、クラッド材210では、比重が小さなMg−Li層211の厚みをt12とした場合に、Mg−Li層211の板厚比率((t12/t11)×100(%))をクラッド材210の厚みt11の約60%以上に大きくするのが好ましい。また、Mg−Li層211の板厚比率をクラッド材210の厚みt11の約90%以下にするのがより好ましい。
【0058】
また、第2実施形態では、接合部213および215は、それぞれ、接合界面IaおよびIbに島状に配置されている。つまり、接合部213および215は、それぞれ、接合界面IaおよびIbにおいて層状に形成されておらず、複数の島状部分213aおよび215aから構成されている。また、接合部213は、断面視において、接合界面Iaの約10%以上約90%以下の部分に配置されている(断面視において、約10%以上約90%以下の存在率である)のが好ましい。同様に、接合部215は、断面視において、接合界面Ibの約10%以上約90%以下の部分に配置されているのが好ましい。なお、
図4に示す場合において、接合部215の存在率(%)は、((L2a+L2b+L2c+L2d)/L)×100により算出される。また、接合部213および215の複数の異なる測定位置で測定を行い、その平均をそれぞれ接合部213および215の存在率(%)とする。
【0059】
なお、接合部213は、断面視において、接合界面Iaの約20%以上約80%以下の部分に配置されているのがより好ましい。同様に、接合部215は、断面視において、接合界面Ibの約20%以上約80%以下の部分に配置されているのがより好ましい。
【0060】
また、接合界面Iaにおいてクラッド材210を剥離した際に、接合部213は、剥離されたAl層212の接合界面Ia側であった表面(剥離面)のうち、約4%以上約70%以下の部分に配置されているのが好ましい。同様に、接合界面Ibにおいてクラッド材210を剥離した際に、接合部215は、剥離されたAl層214の接合界面Ib側であった表面のうち、約4%以上約70%以下の部分に配置されているのが好ましい。
【0061】
さらに、接合界面Iaにおいてクラッド材210を剥離する際における、Mg−Li層211と接合部213とのピール強度(剥離強度)は、約1.0N/mm以上であるのが好ましい。同様に、接合界面Ibにおいてクラッド材210を剥離する際における、Mg−Li層211と接合部215とのピール強度(剥離強度)は、約1.0N/mm以上であるのが好ましい。なお、接合界面IaおよびIbにおいて、Mg−Li層211と接合部213(215)とのピール強度は、約1.7N/mm以上であるのがより好ましく、約3.5N/mm以上であるのがさらに好ましい。
【0062】
また、クラッド材210において、Mg−Li層211の厚みt12は、Al層212の厚みt13、接合部213の厚みt14、Al層214の厚みt15および接合部215の厚みt16のいずれの厚みよりも大きい方が好ましい。なお、厚みt12は、クラッド材210の厚みt11の約60%以上であるのが好ましい。また、厚みt12は、厚みt11の約75%以上であるのがより好ましく、約90%以下であるのがさらに好ましい。
【0063】
また、比重が大きなCu基合金から構成される接合部213の厚みt14および接合部215の厚みt16は、共に、Mg−Li層211の厚みt12以下、Al層212の厚みt13以下、かつ、Al層214の厚みt15以下であるのが好ましい。なお、クラッド材210全体の比重を小さくするために、厚みt14およびt16は、共に、約6μm以下であるのが好ましい。また厚みt14およびt16は、共に、約0.5μm以上であるのが好ましい。
【0064】
なお、第2実施形態のクラッド材210のその他の構成は、上記第1実施形態のクラッド材10の構成と同様である。また、第2実施形態のクラッド材210の製造方法は、Al板材、Cu板材、Mg−Li板材、Cu板材およびAl板材をこの順で積層させる点を除き、上記第1実施形態のクラッド材10の製造方法と同様である。
【0065】
[第2実施形態の効果]
第2実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0066】
第2実施形態では、上記のように、Mg合金から構成されるMg−Li層211がMg−Li基合金から構成されるとともに、クラッド材210がAl層212および214を備える。これにより、軽量で、かつ、耐食性の高いクラッド材210を得ることができる。さらに、接合部213および215により、接合界面Iaにおける接合強度を十分に確保してMg−Li層211とAl層212とが互いに剥離するのを抑制することができるとともに、接合界面Ibにおける接合強度を十分に確保してMg−Li層211とAl層214とが互いに剥離するのを抑制することができる。
【0067】
また、第2実施形態では、上記のように、接合部213および215をそれぞれ接合界面IaおよびIbに島状に配置する。これにより、より確実に、クラッド材210の比重を2.10以下にしてクラッド材210を軽量化することができる。
【0068】
また、第2実施形態では、上記のように、接合部213を、断面視において、接合界面Iaの約10%以上の部分(好ましくは、約20%以上の部分)に配置する。同様に、接合部215を、断面視において、接合界面Ibの約10%以上の部分(好ましくは、約20%以上の部分)に配置する。これらのように構成すれば、接合界面IaおよびIbにおける接合強度を確実に確保することができる。また、接合部213を、断面視において、接合界面Iaの約90%以下の部分(より好ましくは約80%以下の部分)に配置する。同様に、接合部215を、断面視において、接合界面Ibの約90%以下の部分(より好ましくは約80%以下の部分)に配置する。これらのように構成すれば、クラッド材210の比重が大きくなるのを抑制することができる。
【0069】
また、第2実施形態では、上記のように、断面視における接合部213の厚みt14および接合部215の厚みt16を約0.5μm以上にすれば、接合界面IaおよびIbにおける接合強度が小さくなるのを抑制することができる。また、厚みt14およびt16を約6μm以下にすれば、クラッド材210の比重が大きくなるのを抑制することができる。
【0070】
また、第2実施形態では、上記のように、Mg−Li層211と接合部213との間のピール強度を約1.0N/mm以上にするとともに、Mg−Li層211と接合部215との間のピール強度を約1.0N/mm以上にする。これにより、接合部213を介したMg−Li層211とAl層212との間の接合強度を確実に確保することができるとともに、接合部215を介したMg−Li層211とAl層214との間の接合強度を確実に確保することができる。
【0071】
また、第2実施形態では、上記のように、クラッド材210が、Mg−Li層211のAl層212とは反対側(Z1側)の表面に接合され、Al基合金から構成されるAl層214と、断面視において、Mg−Li層211とAl層214との接合界面Ibに配置され、Cu基合金から構成される接合部215と、を備える。これにより、耐食性の低いMg−Li層211が、Al基合金から構成されるAl層212およびAl層214により挟まれるので、クラッド材210における耐食性を効果的に向上させることができる。また、クラッド材210が、Al基合金から構成されたAl層212、Mg−Li基合金から構成されたMg−Li層211およびAl基合金から構成されたAl層214がこの順に積層され、Mg−Li層211を中心として対称な層構造を有していることにより、クラッド材210に反りが発生するのを効果的に抑制することができる。これにより、平坦性が要求される筐体1に適したクラッド材210を提供することができる。なお、その他の効果は、上記第1実施形態の効果と同様である。
【0072】
[実施例]
次に、
図3〜
図20を参照して、本発明の効果を確認するために行った実験およびシミュレーションについて説明する。なお、実験として、接合部の存在率の測定と、ピール強度の測定とを行った。また、シミュレーションとして、クラッド材の厚みおよび接合部の厚みを所定の値に設定した際の、Mg−Li層の板厚比率に対するクラッド材の比重を求めた。
【0073】
<実施例のクラッド材の作製>
まず、上記第2実施形態に対応する実施例1のクラッド材210を作製した。具体的には、まず、LZ91(Mg−Li−Zn合金)から構成されるMg−Li板材と、A1080(純Al)から構成される一対のAl板材と、C1020(純Cu)から構成される一対のCu板材を準備した。ここで、LZ91の比重は1.50であり、A1080の比重は、2.70であり、C1020の比重は、8.94である。
【0074】
そして、Al板材、Cu板材、Mg−Li板材、Cu板材およびAl板材をこの順で連続的に積層させる。そして、上記第1実施形態に記載した温度条件で積層された
図4の金属板を、圧延ロール(
図3参照)を用いて連続的に熱間圧延するとともに、上記第1実施形態に記載した温度条件で拡散焼鈍を行う。これにより、Al層214、Mg−Li層211およびAl層212がこの順に積層され、Mg−Li層211とAl層212との接合界面IaおよびMg−Li層211とAl層214との接合界面Ibに、それぞれ、接合部213および215が配置された、
図4に示す実施例1のクラッド材210を作製した。
【0075】
ここで、実施例1では、クラッド材210の厚みt11を480μmにした際に、Mg−Li層211の厚みt12が318μmに、Al層212の厚みt13およびAl層214の厚みt15が共に80μmに、接合部213の厚みt14および接合部215の厚みt16が共に1μmになるように、Mg−Li板材、一対のAl板材および一対のCu板材の各々の厚みを調整した。この結果、実施例1のクラッド材210の比重は、1.93であった。
【0076】
また、実施例2のクラッド材210を作製した。この実施例2では、厚みt12を317μmに、厚みt14およびt16を共に1.5μmにした点以外は、実施例1のクラッド材210と同様にして、クラッド材210を作製した。なお、実施例3のクラッド材210の比重は、1.95であった。
【0077】
また、実施例3のクラッド材210を作製した。この実施例3では、厚みt12を314μmに、厚みt14およびt16を共に3μmにした点以外は、実施例1のクラッド材210と同様にして、クラッド材210を作製した。なお、実施例3のクラッド材210の比重は、1.99であった。
【0078】
また、実施例4のクラッド材210を作製した。この実施例4では、厚みt12を308μmに、厚みt14およびt16を共に6μmにした点以外は、実施例1のクラッド材210と同様にして、クラッド材210を作製した。なお、実施例3のクラッド材210の比重は、2.09であった。
【0079】
一方、比較例1のクラッド材を作製した。この比較例1では、Mg−Li層の厚みを320μmにする一方、一対の接合部を設けない点以外は、実施例1のクラッド材210と同様にして、クラッド材を作製した。なお、比較例1のクラッド材の比重は、1.90であった。
【0080】
また、比較例2のクラッド材を作製した。この比較例2では、Mg−Li層の厚みを296μmに、一対の接合部の厚みを共に12μmにした点以外は、実施例1のクラッド材210と同様にして、クラッド材を作製した。また、比較例3のクラッド材を作製した。この比較例3では、Mg−Li層の厚みを272μmに、一対の接合部の厚みを共に24μmにした点以外は、実施例1のクラッド材210と同様にして、クラッド材を作製した。なお、比較例2および3のクラッド材の比重は、それぞれ、2.27および2.64であり、共に、本発明のクラッド材の比重の上限(2.10)を上回っていた。
【0081】
さらに、比較例4のクラッド材を作製した。この比較例4では、実施例1のLZ91から構成されるMg−Li層211の代わりに、3質量%のAlと1%のZnと残部Mgおよび不可避的不純物元素とからなるAZ31から構成されたMg層を用いるとともに、実施例1のAl層212および214を構成するA1080の代わりに、A1050を用いた。つまり、比較例4では、Liを含むMg合金を用いなかった。また、比較例4では、Mg層の厚みを320μmに、一対のAl層の厚みを共に80μmに、一対の接合部の厚みを共に20μmにした。それら以外は、実施例1のクラッド材210と同様にして、クラッド材を作製した。なお、比較例4のクラッド材の比重は、2.61であった。
【0082】
なお、上記実施例1〜4および比較例1〜4のクラッド材の板厚比率および比重について表1に示す。
【0084】
<断面視における接合部の存在率の測定>
そして、実施例1〜4および比較例1および2のクラッド材について、クラッド材を厚み方向に切断して断面写真を撮影した。その後、断面写真から、断面視における接合界面での接合部の存在率(%)を算出した。この際、実施例1〜4および比較例1および2のクラッド材について、接合界面に沿う方向において測定範囲の長さL(
図4参照)を1000μmに設定した際の、接合部の島状部分が存在している合計の長さを取得した。そして、合計の長さを1000で除算し、100を乗算することによって、所定の測定範囲における接合部の存在率(%)を算出した。また、実施例1〜4および比較例1および2の各々において、4箇所の異なる測定範囲で測定を行い、その平均をクラッド材における接合部の存在率(%)とした。
【0085】
(断面視における接合部の存在率の測定結果)
図5〜
図10に実施例1〜4および比較例1および2のクラッド材についての断面写真をそれぞれ示す。実施例1〜4および比較例2のクラッド材では、Al層とMg−Li層との接合界面に純Cuから構成された接合部が存在していた。なお、
図6〜
図10の写真では、白線で囲む部分が接合部に該当する。
【0086】
また、
図6〜
図9にそれぞれ示すように、実施例1〜4のクラッド材では、Al層とMg−Li層との接合界面の一部に接合部が存在しておらず、その結果、接合部(島状部分)が接合界面に島状に存在していた。また、実施例1〜4のクラッド材では、接合部の島状部分が接合界面の全体に分散して存在していることが確認できた。一方、
図10に示すように、比較例2のクラッド材では、Al層とMg−Li層との接合界面の全体に層状に接合部が存在していた。つまり、比較例2のクラッド材では、接合部が島状に形成されていなかった。これは、比較例2のクラッド材では、12μmという十分大きな厚みになるように接合部を形成したからであると考えられる。なお、実施例4などある程度の厚みを有する接合部では、接合部の材質や熱間圧延の条件などを調整することによって、島状ではなく層状に形成することも可能であると考えられる。
【0087】
また、断面視において、実施例1の4箇所の所定の測定範囲における接合部の存在率は、それぞれ、18.2%、15.1%、18.6%および17.2%になった。これにより、実施例1のクラッド材における接合部の存在率は、平均して17.3%になった。また、断面視において、実施例2の4箇所の所定の測定範囲における接合部の存在率は、それぞれ、21.7%、27.4%、19.0%および28.4%になった。これにより、実施例2のクラッド材における接合部の存在率は、平均して24.1%になった。
【0088】
また、断面視において、実施例3の4箇所の所定の測定範囲における接合部の存在率は、それぞれ、59.7%、54.7%、53.4%および34.6%になった。これにより、実施例3のクラッド材における接合部の存在率は、平均して50.6%になった。また、断面視において、実施例4の4箇所の所定の測定範囲における接合部の存在率は、それぞれ、92.6%、70.7%、87.3%および67.5%になった。これにより、実施例4のクラッド材における接合部の存在率は、平均して79.4%になった。
【0089】
<剥離試験>
次に、実施例1〜4および比較例1〜4のクラッド材について剥離試験を行った。この剥離試験では、
図11に示すように、まず、ペンチなどの図示しない冶具を用いてクラッド材210の端部の接合界面を強制的に剥離させた。なお、接合強度が高く強制的な剥離が困難なクラッド材については、熱間圧延時に、端部を予め剥離しやすいようにクラッド材を接合させた。
【0090】
そして、クラッド材210に対して
図12に示す剥離試験を行った。具体的には、剥離した界面(たとえば
図12に示す接合界面Ib)の一方側(
図12に示すMg−Li層211、Al層212および接合部213)を固定部材102に固定するとともに、剥離した界面の他方側(
図12に示すAl層214および接合部215)をZ1方向に引っ張ることによってさらに剥離させた。そして、剥離の際に要した荷重をクラッド材210の幅(紙面垂直方向におけるクラッド材210の幅)で除算することによって、Mg−Li層211と接合部215との間のピール強度(接合強度)Fを、単位幅あたりの荷重として求めた。なお、Al層と接合部との接合強度は、Mg−Li層と接合部との接合強度よりも大きいので、Mg−Li層と接合部とのピール強度を測定した。また、Mg−Li層211と接合部213との間のピール強度も、Mg−Li層211と接合部215との間のピール強度と略同一の結果になると考えられる。
【0091】
ここで、ピール強度は、5mm〜10mmの長さ範囲における荷重の平均として測定した。また、ピール強度は、5箇所測定し、その平均を実施例1〜4および比較例1〜4のクラッド材のピール強度とした。
【0092】
(剥離試験の結果)
上記表1および
図13に示す剥離試験の結果としては、純Cuから構成される接合部をAl層とMg−Li層との接合界面に設けない比較例1では、ピール強度が1.0N/mm未満に小さくなった一方、純Cuから構成される接合部を接合界面に設けた実施例1〜4および比較例2〜4では、ピール強度が1.2N/mm以上(1.0N/mm以上)に大きくなった。これにより、純Cuから構成される接合部を接合界面に設けることによって、接合強度を確実に向上させることができる点が確認できた。特に、実施例1では、比重が1.93でかなり小さいにもかかわらず、ピール強度が1.217N/mmになり、十分な接合強度が得られることが判明した。
【0093】
また、実施例4のように、断面視における接合部の存在率が79.4%で接合界面の全体に接合部が存在しない場合であっても、ピール強度が5N/mm以上になり、非常に大きな接合強度が生じていることが確認できた。
【0094】
一方、比較例3では、引き剥がしができなかった(剥離不可)。また、比較例4に示すように、20μmという十分な厚みを有する接合部であったとしても、Mg−Li基合金でなくLiを含有しないMg−Al基合金をMg層として用いた場合には、ピール強度が1.5N/mmに小さくなった。このピール強度は、1.5μmという小さな厚みしか有さない実施例2のピール強度(1.741N/mm)よりも小さい。これにより、Mg−Li基合金は、AZ31のようにLiを含有しないMg合金よりも、Cu基合金から構成される接合部との密着性に優れていることが確認できた。
【0095】
<剥離面の観察>
また、実施例1〜4のクラッド材において、剥離試験で剥離した表面のうち、Al層側の表面(剥離面)を観察した。
図14〜
図17に、実施例1〜4のクラッド材の剥離面の写真をそれぞれ示す。実施例1〜4のクラッド材の剥離面では、共に、接合部(島状部分)が接合界面(剥離面)の全体に分散していることが確認できた。
【0096】
<剥離面における接合部の存在率の測定>
また、実施例1〜4のクラッド材における平面写真から、剥離面における接合部の存在率を測定した。
【0097】
(剥離面における接合部の存在率の測定結果)
上記表1および
図13に示すように、実施例1〜4において、剥離面における接合部の存在率は、断面視における接合部の存在率よりも小さくなった。これは、剥離試験において接合部(島状部分)が脱落したり、Mg−Li層側に残ったりしたからであると考えられる。
【0098】
<シミュレーション>
シミュレーションとして、A1080から構成されたAl層214、LZ91から構成されたMg−Li層211およびA1080から構成されたAl層212がこの順に積層され、Mg−Li層211とAl層212との接合界面IaおよびMg−Li層211とAl層214との接合界面Ibにそれぞれ、C1020から共に構成された接合部213および215が配置された、
図4に示すクラッド材210を想定した。そして、想定したクラッド材210において、Mg−Li層211の板厚比率に対するクラッド材210の比重を求めた。
【0099】
この際、クラッド材210の厚みt11を0.6mmに設定するとともに、接合部213の厚みt14および接合部215の厚みt16を共に1μm、5μmまたは10μmに設定した際の、Mg−Li層211の板厚比率に対するクラッド材210の比重を求めた。なお、この際の接合部213および215の板厚比率は、それぞれ、0.017(=(1/600)×100)%、0.83(=(5/600)×100)%および1.67(=(10/600)×100)%である。
【0100】
また、クラッド材210の厚みt11を0.4mmに設定するとともに、接合部213の厚みt14および接合部215の厚みt16を共に1μm、5μmまたは10μmに設定した際の、Mg−Li層211の板厚比率に対するクラッド材210の比重を求めた。なお、この際の接合部213および215の板厚比率は、それぞれ、0.025(=(1/400)×100)%、1.25(=(5/400)×100)%および2.50(=(10/400)×100)%である。また、Al層212および214の板厚比率(%)は、共に、(100−(Mg−Li層211の板厚比率+接合部213の板厚比率+接合部215の板厚比率))/2になる。
【0101】
(シミュレーションの結果)
図18〜
図20に、それぞれ、接合部213の厚みt14および接合部215の厚みt16が1μmの場合、5μmの場合、および、10μmの場合における、Mg−Li層211の板厚比率に対するクラッド材210の比重を示す。
図18に示す厚みt14およびt16が1μmの場合で、かつ、クラッド材210の厚みt11が0.6mmの場合では、Mg−Li層211の板厚比率が約50%以上であれば、クラッド材210の比重が2.10以下になることが判明した。このことから、クラッド材210の厚みt11が0.6mmの場合には、Mg−Li基合金(LZ91)の使用量を減少させるために、Mg−Li層211の板厚比率を約50%に小さくしたとしても、上記剥離実験の結果から十分な接合強度を確保しつつ、クラッド材210の比重を2.10以下に小さくすることができることが判明した。なお、
図18に示すように、厚みt1が0.4mmである場合では、Mg−Li層211の板厚比率を約53%以上にすることによって、十分な接合強度を確保しつつ、クラッド材210の比重を2.10以下に小さくすることができることが判明した。
【0102】
また、
図20に示す厚みt14およびt16が10μmの場合で、かつ、厚みt1が0.6mmの場合では、Mg−Li層211の板厚比率が約72%以上であれば、クラッド材210の比重が2.10以下になることが判明した。このことから、厚みt14およびt16が10μmであり、接合部213および215の厚みを十分に確保した場合であっても、Mg−Li層211の板厚比率を約67%以上にすることによって、クラッド材210の比重を2.10以下に小さくすることができることが判明した。この結果、厚みt14およびt16を大きくすることによって、たとえ、接合部213および215が、それぞれ、Mg−Li層211とAl層212および214との接合界面IaおよびIbに層状に形成されたとしても、Mg−Li層211の板厚比率を大きくすることによって、クラッド材210の比重を2.10以下に小さくすることができることが確認できた。なお、
図20に示すように、厚みt1が0.4mmである場合では、Mg−Li層211の板厚比率を約74%以上にすることによって、クラッド材210の比重を2.10以下に小さくすることができることが判明した。また、厚みt14およびt16を10μmよりも大きくしたとしても、Mg−Li層211の板厚比率を調整することによって、クラッド材210の比重を2.10以下にすることが可能であると考えられる。
【0103】
また、
図19に示す厚みt14およびt16が5μmの場合で、かつ、厚みt1が0.6mmの場合では、Mg−Li層211の板厚比率が約59%以上であれば、クラッド材210の比重が2.10以下になることが判明した。また、厚みt1が0.4mmの場合では、Mg−Li層211の板厚比率が約62%以上であれば、クラッド材210の比重が2.10以下になることが判明した。
【0104】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態および実施例は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態および実施例の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0105】
たとえば、上記第1実施形態では、クラッド材10が、Mg−Li層11およびAl層12(第2層)がこの順に積層され、Mg−Li層11とAl層12との接合界面Iaに接合部13(第1接合部)が配置されたクラッド材である例を示し、上記第2実施形態および実施例では、クラッド材210が、Al層214(第3層)、Mg−Li層211(第1層)およびAl層212(第2層)がこの順に積層され、Mg−Li層211とAl層212との接合界面IaおよびMg−Li層211とAl層214との接合界面Ibに、それぞれ、接合部213(第1接合部)および接合部215(第2接合部)が配置されたクラッド材である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、クラッド材は、第1層と第2層とが積層され、第1層と第2層との接合界面に第1接合部が配置された構造を有していれば、他の金属層を備えていてもよい。たとえば、本発明のクラッド材では、第2層の第1層とは反対側の表面に他の金属層が接合されていてもよい。
【0106】
また、上記第1実施形態では、クラッド材10を電子機器100の筐体1として用いる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明のクラッド材を電子機器の筐体以外の自動車およびバイク等の構造材用途に用いてもよい。この場合、特に軽量化が要求される用途に本発明のクラッド材を用いるのが好ましい。
【0107】
また、上記第1実施形態、第2実施形態および実施例では、接合部13(213)および215(島状部分13a(213a)および215a)が、それぞれ、接合界面IaおよびIbの全体に亘って分散して配置されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第1(第2)接合部を接合界面の一部にのみ配置してもよい。たとえば、本発明のクラッド材を、オーバーレイ型のクラッド材ではなく、接合部を接合界面の一部にのみ配置したインレイ型のクラッド材により構成してもよい。この際、接合部を中心部を除く周縁部のみに形成することによって、第1層と第2層(第3層)との剥離を効果的に抑制することが可能であると考えられる。また、接合部は、島状に形成されていなくてもよい。つまり、クラッド材の比重が2.10以下であれば、接合部は層状に形成されていてもよい。
このクラッド材(10)は、Mg−Li基合金から構成される第1層(11)と、Al基合金から構成される第2層(12)と、厚み方向に切断した際の断面視において、第1層と前記第2層との接合界面(Ia)に配置され、Cu基合金から構成される第1接合部(13)とを備える。クラッド材の比重は、2.10以下である。