(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記熱伝導性フィラーが、窒化アルミニウム粉、酸化アルミニウム粉、酸化亜鉛粉、酸化マグネシウム粉、炭化ケイ素粉および炭化タングステン粉からなる群より選ばれる少なくとも1種の粉体を含む、請求項6に記載の放熱部材。
前記熱伝導性フィラーが、グラファイト粉、カーボンナノチューブおよびダイヤモンド粉からなる群より選ばれる少なくとも1種の粉体を含む、請求項9に記載の放熱部材。
前記グラファイト層の、前記積層体の積層方向に対して略垂直な方向の熱伝導率が250〜2000W/m・Kである、請求項1〜10のいずれか1項に記載の放熱部材。
前記金属層が、銀、銅、アルミニウム、ニッケルおよびこれらの少なくともいずれか1つの金属を含有する合金からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を含む層である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の放熱部材。
前記金属層が、銅、アルミニウムおよびこれらの少なくともいずれか1つの金属を含有する合金からなる群より選ばれる1種の金属を含む層である、請求項1〜14のいずれか1項に記載の放熱部材。
前記放熱部材が、銅、アルミニウムおよびこれらの少なくともいずれか1つの金属を含有する合金からなる群より選ばれる1種以上の金属を含む金属層を少なくとも2つ有し、
前記金属層の少なくとも2つは異なる層である、請求項1〜15のいずれか1項に記載の放熱部材。
前記樹脂層が、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂およびニトロセルロースからなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂と、アルミナ、シリカ、コーディエライト、ムライト、炭化珪素および酸化マグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物とを含む、請求項17または18に記載の放熱部材。
【発明を実施するための形態】
【0031】
≪放熱部材≫
本発明の放熱部材は、金属層とグラファイト層とを接着層を介して積層した積層体を含み、該接着層は、ポリビニルアセタール樹脂を含む組成物から形成される。
【0032】
前記積層体は、金属層とグラファイト層とが前記接着層を介して積層されるため、該積層体を含む本発明の放熱部材は、金属層とグラファイト層との接着強度が高く、加工性に優れ、折り曲げ可能である。
【0033】
<接着層>
前記接着層は、ポリビニルアセタール樹脂を含む組成物から形成されれば特に制限はなく、該樹脂の他に、金属層の種類等に応じて、本発明の効果を損なわない範囲において、さらに熱伝導性フィラー、添加剤および溶剤を含む組成物から形成されてもよい。
このような接着層を用いることで、金属層とグラファイト層との接着強度に優れ、折り曲げ可能であり、靭性、柔軟性、耐熱性および耐衝撃性に優れる放熱部材を得ることができる。
【0034】
〔ポリビニルアセタール樹脂〕
前記ポリビニルアセタール樹脂は、特に制限されないが、靭性、耐熱性および耐衝撃性に優れ、厚みが薄くても金属層やグラファイト層との密着性に優れる接着層が得られるなどの点から、下記構成単位A、BおよびCを含む樹脂であることが好ましい。
【0035】
【化5】
前記構成単位Aは、アセタール部位を有する構成単位であって、例えば、連続するポリビニルアルコ−ル鎖単位とアルデヒド(R−CHO)との反応により形成され得る。
【0036】
構成単位AにおけるRは独立に、水素またはアルキルである。前記Rが嵩高い基(例えば炭素数が多い炭化水素基)であると、ポリビニルアセタール樹脂の軟化点が低下する傾向がある。また、前記Rが嵩高い基であるポリビニルアセタール樹脂は、溶媒への溶解性は高いが、一方で耐薬品性に劣ることがある。そのため前記Rは、水素または炭素数1〜5のアルキルであることが好ましく、得られる接着層の靭性などの点から水素または炭素数1〜3のアルキルであることがより好ましく、水素またはプロピルであることがさらに好ましく、耐熱性などの点から水素であることが特に好ましい。
【0038】
前記ポリビニルアセタール樹脂は、構成単位A〜Cに加えて、下記構成単位Dを含むことが、金属層やグラファイト層との接着強度に優れる接着層を得ることができるなどの点から好ましい。
【0039】
【化8】
前記構成単位D中、R
1は独立に水素または炭素数1〜5のアルキルであり、好ましく
は水素または炭素数1〜3のアルキルであり、より好ましくは水素である。
【0040】
前記ポリビニルアセタール樹脂における構成単位A、B、CおよびDの総含有率は、該樹脂の全構成単位に対して80〜100mol%であることが好ましい。ポリビニルアセタール樹脂に含まれ得るその他の構成単位としては、構成単位A以外のビニルアセタール鎖単位(前記構成単位AにおけるRが水素またはアルキル以外である構成単位)、下記分子間アセタール単位、および下記ヘミアセタール単位などが挙げられる。構成単位A以外のビニルアセタール鎖単位の含有率は、ポリビニルアセタール樹脂の全構成単位に対して5mol%未満であることが好ましい。
【0041】
【化9】
(前記分子間アセタール単位中のRは、前記構成単位A中のRと同義である。)
【0042】
【化10】
(前記ヘミアセタール単位中のRは、前記構成単位A中のRと同義である。)
【0043】
前記ポリビニルアセタール樹脂において、構成単位A〜Dは、規則性をもって配列(ブロック共重合体、交互共重合体など)していても、ランダムに配列(ランダム共重合体)していてもよいが、ランダムに配列していることが好ましい。
【0044】
前記ポリビニルアセタール樹脂における各構成単位は、該樹脂の全構成単位に対して、構成単位Aの含有率が49.9〜80mol%であり、構成単位Bの含有率が0.1〜49.9mol%であり、構成単位Cの含有率が0.1〜49.9mol%であり、構成単位Dの含有率が0〜49.9mol%であることが好ましい。より好ましくは、前記ポリビニルアセタール樹脂の全構成単位に対して、構成単位Aの含有率が49.9〜80mol%であり、構成単位Bの含有率が1〜30mol%であり、構成単位Cの含有率が1〜30mol%であり、構成単位Dの含有率が1〜30mol%である。
【0045】
耐薬品性、可撓性、耐摩耗性および機械的強度に優れるポリビニルアセタール樹脂を得るなどの点から、構成単位Aの含有率は49.9mol%以上であることが好ましい。
【0046】
前記構成単位Bの含有率が0.1mol%以上であると、ポリビニルアセタール樹脂の溶媒への溶解性が良くなるため好ましい。また、構成単位Bの含有率が49.9mol%以下であると、ポリビニルアセタール樹脂の耐薬品性、可撓性、耐摩耗性、および機械的強度が低下しにくいため好ましい。
【0047】
前記構成単位Cは、ポリビニルアセタール樹脂の溶媒への溶解性や得られる接着層の金属層やグラファイト層との接着性などの点から、含有率が49.9mol%以下であることが好ましい。また、ポリビニルアセタール樹脂の製造において、ポリビニルアルコ−ル鎖をアセタール化する際、構成単位Bと構成単位Cが平衡関係となるため、構成単位Cの含有率は0.1mol%以上であることが好ましい。
【0048】
金属層やグラファイト層との接着強度に優れる接着層を得ることができるなどの点から、構成単位Dの含有率は前記範囲にあることが好ましい。
【0049】
前記ポリビニルアセタール樹脂における構成単位A〜Cのそれぞれの含有率は、JIS K 6728またはJIS K 6729に準じて測定することができる。
【0050】
前記ポリビニルアセタール樹脂における構成単位Dの含有率は、以下に述べる方法で測定することができる。
1mol/l水酸化ナトリウム水溶液中で、ポリビニルアセタール樹脂を、2時間、80℃で加温する。この操作により、カルボキシル基にナトリウムが付加し、−COONaを有するポリマーが得られる。該ポリマーから過剰な水酸化ナトリウムを抽出した後、脱水乾燥を行なう。その後、炭化させて原子吸光分析を行い、ナトリウムの付加量を求めて定量する。
【0051】
なお、構成単位B(ビニルアセテート鎖)の含有率を分析する際に、構成単位Dは、ビニルアセテート鎖として定量されるため、前記JIS K 6728またはJIS K6729に準じて測定された構成単位Bの含有率より、定量した構成単位Dの含有率を差し引き、構成単位Bの含有率を補正する。
【0052】
前記ポリビニルアセタール樹脂の重量平均分子量は、5000〜300000であることが好ましく、10000〜150000であることがより好ましい。重量平均分子量が前記範囲にあるポリビニルアセタール樹脂を用いると、放熱部材を容易に製造でき、成形加工性や曲げ強度に優れる放熱部材が得られるため好ましい。
前記ポリビニルアセタール樹脂の重量平均分子量は、所望の目的に応じて適宜選択すればよいが、放熱部材を製造する際の温度を低く抑えることができ、高い熱伝導率を有する放熱部材を得ることができる等の点から、10000〜40000であることがさらに好ましく、耐熱温度の高い放熱部材を得ることができる等の点から、50000〜150000であることがさらに好ましい。
【0053】
本発明において、ポリビニルアセタール樹脂の重量平均分子量は、GPC法により測定することができる。具体的な測定条件は以下の通りである。
検出器:830−RI (日本分光(株)製)
オ−ブン:西尾社製 NFL−700M
分離カラム:Shodex KF−805L×2本
ポンプ:PU−980(日本分光(株)製)
温度:30℃
キャリア:テトラヒドロフラン
標準試料:ポリスチレン
【0054】
前記ポリビニルアセタール樹脂のオストワルド粘度は、1〜100mPa・sであることが好ましい。オストワルド粘度が前記範囲にあるポリビニルアセタール樹脂を用いると、放熱部材を容易に製造でき、靭性に優れる放熱部材が得られるため好ましい。
オストワルド粘度は、ポリビニルアセタール樹脂5gをジクロロエタン100mlに溶解した溶液を用い、20℃で、Ostwald−Cannon Fenske Viscometerを用いて測定することができる。
【0055】
前記ポリビニルアセタール樹脂としては、具体的には、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセトアセタールおよびこれらの誘導体等が挙げられ、グラファイト層との接着性および、接着層の耐熱性などの点から、ポリビニルホルマールが好ましい。
前記ポリビニルアセタール樹脂としては、前記樹脂を単独で用いてもよく、構造単位の結合の順番や結合の数等が異なる樹脂を2種以上併用してもよい。
【0056】
前記ポリビニルアセタール樹脂は、合成して得てもよく、市販品でもよい。
前記構成単位A、BおよびCを含む樹脂の合成方法は、特に制限されないが、例えば、特開2009−298833号公報に記載の方法を挙げることができる。また、前記構成単位A、B、CおよびDを含む樹脂の合成方法は、特に制限されないが、例えば、特開2010−202862号公報に記載の方法を挙げることができる。
【0057】
前記ポリビニルアセタール樹脂の市販品としては、ポリビニルホルマールとして、ビニレック C、ビニレック K(JNC(株)製)などが挙げられ、ポリビニルブチラールとして、デンカブチラール 3000−K(電気化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0058】
〔熱伝導性フィラー〕
前記接着層が、熱伝導性フィラーを含むことで、接着層の熱伝導性が向上し、特に、前記積層体の積層方向への熱伝導性が向上する。
熱伝導性フィラーを含む接着層を用いることで、接着層の厚みが薄く、放熱特性および加工性に優れ、金属層とグラファイト層との接着強度が高く、加工性に優れ、折り曲げ可能である放熱部材を提供することができる。また、発熱体から発せられる熱が十分に除去され、軽量化、小型化可能な電子デバイスや、高エネルギー密度でも発熱によるトラブルが抑えられたバッテリーなどを提供することができる。
【0059】
なお、本発明において、「積層体の積層方向」とは、例えば、
図1において、縦方向、つまり、積層体(放熱部材)1の金属層2、接着層3、グラファイト層4が積層された方向のことをいう。具体的には、金属層2から接着層3、グラファイト層4に向かう方向、またはグラファイト層4から接着層3、金属層2に向かう方向のことをいう。
【0060】
前記熱伝導性フィラーとしては、特に制限されないが、金属粉、金属酸化物粉、金属窒化物粉、金属水酸化物粉、金属酸窒化物粉および金属炭化物粉などの金属または金属化合物含有フィラー、ならびに炭素材料を含むフィラー等が挙げられる。
【0061】
前記金属粉としては、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケルなどの金属およびこれら金属を含有する合金からなる粉などが挙げられる。前記金属酸化物粉としては、酸化アルミニウム粉、酸化亜鉛粉、酸化マグネシウム粉、酸化ケイ素粉、ケイ酸塩粉などが挙げられる。前記金属窒化物粉としては、窒化アルミニウム粉、窒化ホウ素粉、窒化ケイ素粉などが挙げられる。前記金属水酸化物粉としては、水酸化アルミニウム粉、水酸化マグネシウム粉などが挙げられる。前記金属酸窒化物としては、酸化窒化アルミニウム粉などが挙げられ、前記金属炭化物粉としては、炭化ケイ素粉、炭化タングステン粉などが挙げられる。
これらの中でも、熱伝導性および入手容易性などの点から窒化アルミニウム粉、酸化アルミニウム粉、酸化亜鉛粉、酸化マグネシウム粉、炭化ケイ素粉および炭化タングステン粉が好ましい。
【0062】
なお、前熱伝導性フィラーとして金属または金属化合物含有フィラーを用いる場合には、前記金属層を構成する金属と同種の金属を含有するフィラーを用いることが好ましい。
前熱伝導性フィラーとして前記金属層を構成する金属と異なる金属または金属化合物含有フィラーを用いると、金属層とフィラーとの間に局部電池が構成され、金属層またはフィラーが腐食される場合がある。
【0063】
前記金属または金属化合物含有フィラーの形状としては、特に制限されないが、粒子状(球状、楕円球状を含む)、偏平状、柱状、針状(テトラポット形状、樹枝状を含む)および不定形状などが挙げられる。これらの形状は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置やSEM(走査型電子顕微鏡)を用いて確認することができる。
【0064】
前記金属または金属化合物含有フィラーとしては、窒化アルミニウム粉、酸化アルミニウム粉、および針状(特にテトラポット形状)の酸化亜鉛粉を用いることが好ましい。
酸化亜鉛は、窒化アルミニウムに比べ、熱伝導率は低いが、テトラポット形状の酸化亜鉛粉を用いると、粒子状の酸化亜鉛粉を用いる場合より放熱特性に優れる放熱部材が得られる。また、テトラポット形状の酸化亜鉛粉を用いることで、アンカー効果により、前記金属層とグラファイト層との層間剥離の発生を低減することができる。
また、酸化アルミニウムは、窒化アルミニウムや酸化亜鉛に比べ、熱伝導率は低いが、化学的に安定であり、水や酸により反応したり、水や酸に溶解したりしないので、高い耐候性を有する放熱部材を得ることができる。
前記金属または金属化合物含有フィラーとして窒化アルミニウム粉を用いると、放熱特性により優れる放熱部材を得ることができる。
【0065】
前記金属または金属化合物含有フィラーの一次粒子の平均径は、形成したい放熱部材の大きさ、接着層の厚み等に応じて適宜選択すればよいが、前記接着層の、前記積層体の積層方向への熱伝導性などの点から、好ましくは0.001〜30μmであり、より好ましくは0.01〜20μmである。金属または金属化合物含有フィラーの平均径は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置やSEM(走査型電子顕微鏡)などを用いて確認することができる。
【0066】
なお、金属または金属化合物含有フィラーの平均径とは、該フィラーが粒子状の場合は、粒子の直径(楕円球状の場合は長軸の長さ)のことをいい、該フィラーが扁平状の場合は、最も長い辺のことをいい、該フィラーが柱状の場合は、円の直径(楕円の長軸)または柱の長さのうちいずれか長い方のことをいい、該フィラーが針状の場合は、針の長さのことをいう。
【0067】
前記炭素材料を含むフィラーとしては、グラファイト粉(天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛、ケッチェンブラック)、カーボンナノチューブ、ダイヤモンド粉、炭素繊維およびフラーレンなどが挙げられ、これらの中でも熱伝導性に優れるなどの点から、グラファイト粉、カーボンナノチューブおよびダイヤモンド粉が好ましい。
【0068】
前記炭素材料を含むフィラーの一次粒子の平均径は、形成したい放熱部材の大きさ、接着層の厚み等に応じて適宜選択すればよいが、前記接着層の、前記積層体の積層方向への熱伝導性などの点から、好ましくは0.001〜20μmであり、より好ましくは0.002〜10μmである。炭素材料からなるフィラーの平均径は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置やSEM(走査型電子顕微鏡)などを用いて確認することができる。
なお、カーボンナノチューブや炭素繊維の平均径とは、チューブや繊維の長さのことをいう。
【0069】
前記熱伝導性フィラーは、平均径や形状が所望の範囲にある市販品をそのまま用いてもよく、平均径や形状が所望の範囲になるように市販品を粉砕、分級、加熱等したものを用いてもよい。
なお、前記熱伝導性フィラーの平均径や形状は、本発明の放熱部材の製造過程で変化することがあるが、前記組成物に前記平均径や形状を有するフィラーを配合すればよい。
【0070】
前記熱伝導性フィラーとしては、分散処理、防水処理などの表面処理された市販品をそのまま用いてもよく、該市販品から表面処理剤を除去したものを用いてもよい。また、表面処理されていない市販品を表面処理して用いてもよい。
特に窒化アルミニウムおよび酸化マグネシウムは空気中の水分により劣化しやすいので、防水処理されたものを使用することが望ましい。
【0071】
前記熱伝導性フィラーとしては、上述のフィラーを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0072】
前記熱伝導性フィラーの配合量は、接着層100体積%に対し、好ましくは1〜80体積%、より好ましくは2〜40体積%、さらに好ましくは2〜30体積%である。
前記熱伝導性フィラーが接着層中に前記量で含まれていると、接着性を維持しつつ、接着層の熱伝導性が向上するため好ましい。
前記熱伝導性フィラーの配合量が前記範囲の上限以下であると、金属層やグラファイト層に対する接着強度が高い接着層が得られ、前記熱伝導性フィラーの配合量が前記範囲の下限以上であると、熱伝導性が高い接着層が得られるため好ましい。
【0073】
〔添加剤〕
前記添加剤としては、本発明の効果を損なわない限り特に制限されないが、酸化防止剤、シランカップリング剤、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂、硬化剤、銅害防止剤、金属不活性化剤、防錆剤、粘着性付与剤、老化防止剤、消泡剤、帯電防止剤、耐候剤などが挙げられる。
【0074】
例えば、接着層を形成する樹脂が金属との接触により劣化する場合には、特開平5−48265号公報に挙げられるような銅害防止剤または金属不活性化剤の添加が好ましく、熱伝導性フィラーとポリビニルアセタール樹脂との密着性を向上させるにはシランカップリング剤の添加が好ましく、接着層の耐熱性(ガラス転移温度)を向上させるにはエポキシ樹脂の添加が好ましい。
【0075】
前記シランカップリング剤としては、JNC(株)製のシランカップリング剤(商品名 S330、S510、S520、S530)などが好ましい。
前記シランカップリング剤の添加量は、接着層の金属層との密着性を向上させることができるなどの点から、接着層に含まれる樹脂の総量100重量部に対して好ましくは1〜10重量部である。
【0076】
前記エポキシ樹脂としては、三菱化学(株)製、jER828、jER827、jER806、jER807、jER4004P、jER152、jER154;(株)ダイセル製、セロキサイド2021P、セロキサイド3000;新日鐵化学(株)製、YH−434;日本化薬(株)製、EPPN−201、EOCN−102S、EOCN−103S、EOCN−104S、EOCN−1020、EOCN−1025、EOCN−1027DPPN−503、DPPN−502H、DPPN−501H、NC6000およびEPPN−202;(株)ADEKA製、DD−503;新日本理化(株)製、リカレジンW−100;などが好ましい。
前記エポキシ樹脂の添加量は、接着層のガラス転移温度を高くするなどの点から、接着層に含まれる樹脂の総量100重量%に対して好ましくは1〜49重量%である。
【0077】
前記エポキシ樹脂を添加する際には、さらに、硬化剤を添加することが好ましい。前記硬化剤としては、アミン系硬化剤、フェノール系硬化剤、フェノールノボラック系硬化剤、イミダゾール系硬化剤などが好ましい。
【0078】
前記接着層を構成するポリビニルアセタール樹脂は、古くからエナメル線などに使用されており、金属と接触することにより劣化したり、金属を劣化させたりし難い樹脂ではあるが、放熱部材を高温多湿環境で使用する場合などでは、銅害防止剤や金属不活性化剤を添加してもよい。前記銅害防止剤としては、(株)ADEKA製、Mark ZS−27、Mark CDA−16;三光化学工業(株)製、SANKO−EPOCLEAN;BASF社製、Irganox MD1024;などが好ましい。
前記銅害防止剤の添加量は、接着層の金属と接触する部分の樹脂の劣化を防止できるなどの点から、接着層に含まれる樹脂の総量100重量部に対して好ましくは0.1〜3重量部である。
【0079】
〔溶剤〕
前記溶剤としては、前記ポリビニルアセタール樹脂を溶解できるものであれば特に制限されないが、熱伝導性フィラーを分散させることができるものであることが好ましく、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、n−オクタノール、ジアセトンアルコール、ベンジルアルコールなどのアルコール系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのセロソルブ系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、イソホロンなどのケトン系溶媒;N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリドンなどのアミド系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル系溶媒;ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒;ジクロロメタン、メチレンクロライド、クロロホルムなどの塩素化炭化水素系溶媒;トルエン、ピリジンなどの芳香族系溶媒;ジメチルスルホキシド;酢酸;テルピネオール;ブチルカルビトール;ブチルカルビトールアセテート等が挙げられる。
これらの溶剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0080】
前記溶剤は、組成物中の樹脂濃度が、好ましくは3〜30質量%、より好ましくは5〜20質量%となる量で用いることが、放熱部材の製造容易性および放熱特性などの点から好ましい。
【0081】
〔接着層の物性等〕
前記接着層は、前記積層体の積層方向の熱伝導率が、好ましくは0.05〜50W/m・Kであり、より好ましくは0.1〜20W/m・Kである。
接着層の熱伝導率が前記範囲にあることで、放熱性、接着性に優れる放熱部材を得ることができる。
接着層の熱伝導率が前記範囲の上限以下であると、前記金属層とグラファイト層との接着力が高く、機械的強度および耐久性に優れる放熱部材が得られるため好ましい。一方、接着層の熱伝導率が前記範囲の下限以上であると、放熱性に優れる放熱部材が得られるため好ましい。
前記接着層の、積層体の積層方向の熱伝導率は、レーザーフラッシュまたはキセノンフラッシュ熱拡散率測定装置から得られる熱拡散率、示差走査熱量測定装置(DSC)から得られる比熱、アルキメデス法で得られる密度などから算出することができる。
【0082】
前記接着層の厚みは、特に制限されず、前記金属層とグラファイト層とを接着できるだけの厚みを有すれば、熱抵抗を低減できるなどの点からできるだけ薄い方が好ましく、より好ましくは0.05〜10μmであり、さらに好ましくは0.1〜7μmである。
本発明の放熱部材は、接着層がポリビニルアセタール樹脂を含む組成物から形成されるため、該接着層の厚みが1μm以下の厚みであっても金属層とグラファイト層とを接着できる。
【0083】
なお、前記接着層の厚みとは、1層の接着層の片面に接する金属層またはグラファイト層と、該接着層の金属層またはグラファイト層が接した面と反対の面に接する、金属層またはグラファイト層との間の厚みのことをいう。ただし、
図2や
図3に示すようなグラファイト層を用いる場合であっても、金属層および/またはグラファイト層間の厚みのことをいい、該グラファイト層の穴やスリット部に充填され得る接着層の厚みは含まない。
また、前記接着層に含まれ得る熱伝導性フィラーは、グラファイト層に突き刺さっている場合などがあるが、この場合であっても、接着層の厚みは、グラファイト層に突き刺さったフィラー部分を考慮せず、金属層および/またはグラファイト層間の厚みのことをいう。
【0084】
<金属層>
前記金属層は、放電部材の熱容量、機械的強度および加工性の向上などのため積層される。
前記金属層としては、熱伝導性に優れる金属を含む層であることが好ましく、より好ましくは金、銀、銅、アルミニウム、ニッケルおよびこれらの少なくともいずれか1つの金属を含有する合金を含む層が挙げられ、さらに好ましくは銀、銅、アルミニウム、ニッケルおよびこれらの少なくともいずれか1つの金属を含有する合金を含む層が挙げられ、特に好ましくは銅、アルミニウムおよびこれらの少なくともいずれか1つの金属を含有する合金からなる群より選ばれる1種の金属を含む層が挙げられる。
【0085】
前記合金は、固溶体、共晶または金属間化合物のいずれの状態であってもよい。
前記合金としては、具体的には、リン青銅、銅ニッケル、ジュラルミンなどが挙げられる。
【0086】
前記金属層の厚みは、特に制限されず、得られる放電部材の用途、重さ、熱伝導性などを考慮して適宜選択すればよいが、好ましくはグラファイト層の0.01〜100倍の厚み、さらに好ましくは0.1〜10倍の厚みである。金属層の厚みが前記範囲にあると、放熱特性、機械強度に優れる放熱部材を得ることができる。
【0087】
<グラファイト層>
前記グラファイト層は、大きな熱伝導率を有し、軽くて柔軟性に富んでいる。このようなグラファイト層を用いることで、放熱特性に優れ、軽量な放熱部材を得ることができる。
前記グラファイト層は、グラファイトからなる層であれば、特に制限されないが、例えば、特開昭61−275117号公報および特開平11−21117号公報に記載の方法で製造したものを用いてもよいし、市販品を用いてもよい。
【0088】
市販品としては、合成樹脂シートから製造された人工グラファイトシートとして、eGRAF SPREADERSHIELD SS−1500(GrafTECH International製)、グラフィニティー((株)カネカ製)、PGSグラファイトシート(パナソニック(株)製)などが挙げられ、天然グラファイトから製造された天然グラファイトシートとしてはeGRAF SPREADERSHIELD SS−500(GrafTECH International製)などが挙げられる。
【0089】
前記グラファイト層は、前記積層体の積層方向に対して略垂直な方向の熱伝導率が、好ましくは250〜2000W/m・Kであり、より好ましくは500〜2000W/m・Kである。グラファイト層の熱伝導率が前記範囲にあることで、放熱性、均熱性に優れる放熱部材を得ることができる。
前記グラファイト層の、積層体の積層方向に対して略垂直な方向の熱伝導率は、レーザーフラッシュまたはキセノンフラッシュ熱拡散率測定装置、DSCおよびアルキメデス法で、それぞれ熱拡散率、比熱、密度を測定し、これらを掛け合わせることで測定することができる。
【0090】
前記グラファイト層の厚みは、特に制限されず、放熱特性に優れる放熱部材を得るためには、厚い層であることが好ましいが、より好ましくは15〜600μmであり、さらに好ましくは15〜500μmであり、特に好ましくは20〜300μmである。
【0091】
<樹脂層>
本発明の放熱部材は、酸化防止や意匠性向上のために、その最外層の片面または両面に樹脂層を有していてもよい。
前記樹脂層は、樹脂を含む層であれば特に制限されないが、該樹脂としては、例えば、塗料として広く使用されているアクリル樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、ニトロセルロースが挙げられ、これらの中でも耐熱性のある樹脂が望ましい。
前記樹脂を含む塗料の市販品としては、耐熱塗料(オキツモ(株)製:耐熱塗料ワンタッチ)などが挙げられる。
【0092】
前記樹脂層は、放熱部材表面からの遠赤外線の放射による放熱能力付与のために、前記熱伝導性フィラーや、遠赤外線放射率の高いフィラーを含んでいてもよい。
【0093】
前記遠赤外線放射率の高いフィラーとしては特に制限されないが、例えば、コーディエライト、ムライトなどの鉱物;窒化ホウ素、窒化アルミニウム等の窒化物;シリカ、アルミナ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム等の酸化物;炭化珪素;および黒鉛;からなる群より選ばれる少なくとも1種のフィラーであることが望ましい。
【0094】
前記樹脂層に用いる樹脂の種類は、放熱部材が使用される温度、樹脂層を形成する際の方法や温度に応じて適宜選択すればよい。
また、前記樹脂層に用いるフィラーの種類は放熱部材が使用される用途に応じて、熱伝導率の高いフィラーおよび/または遠赤外線放射率の高いフィラーを適宜選択すればよい。
【0095】
<放熱部材の構成等>
本発明の放熱部材は、前記積層体を含めば特に制限されず、前記積層体のグラファイト層の上に、金属層およびグラファイト層が交互に、または、金属層および/またはグラファイト層を任意の順番に、前記接着層を介して複数積層した積層体であってもよい。
複数の金属層、グラファイト層または接着層を用いる場合、これらの層は、それぞれ同様の層であってもよく、異なる層であってもよいが、同様の層を用いることが好ましい。また、これらの層の厚みも、同様であってもよく、異なってもよい。
【0096】
積層の順番は、所望の用途に応じて適宜選択すればよく、具体的には、所望の放熱特性や意匠性、耐腐食性等を考慮して選択すればよい。
前記積層数は、所望の用途に応じて適宜選択すればよく、具体的には、放熱部材の大きさや放熱特性等を考慮して選択すればよい。
【0097】
本発明の放熱部材は、その最外層が金属層であることが、機械的強度および加工性に優れる放熱部材が得られるなどの点から好ましい。
また、本発明の放熱部材を、
図1に示すような態様で使用する場合には、発熱体7から最も遠い層(
図1では金属層6)の接着層と接しない側の形状を、表面積が大きくなるような形状、例えば、剣山状や蛇腹状にすることで、発熱体7から最も遠い層の接着層に接した面と反対の面が外気に接触する面積を増大させてもよい。
【0098】
本発明の放熱部材は、放熱特性、機械的強度、軽量性および製造容易性などに優れる点から、
図1に示すような、金属層2、接着層3、グラファイト層4、接着層5および金属層6がこの順で積層された積層体1であることが好ましい。
【0099】
なお、
図1に示す積層体1を含む放熱部材を製造する場合であって、所望の用途に応じ、特に、グラファイト層4を介した金属層同士(2および6)の接着強度の高い積層体を製造したい場合には、接着層3および5が直接接するようにしてもよい。このような例としては、
図2に示すような穴8を設けたグラファイト層4'や、
図3に示すようなスリット9を設けたグラファイト層4''を用いる方法が挙げられる。
前記穴やスリットの形状、数や大きさは、放熱部材の機械的強度および放熱特性などの点から、適宜選択すればよい。
【0100】
穴やスリットを設けたグラファイト層を用いる場合には、例えば、該穴やスリットが無い場合に比べ、接着層を厚めに金属層やグラファイト層の上に形成し、張り合わせ時の温度を高めに設定することで、加熱圧着時などに接着層形成成分が穴やスリットに流れ込み、穴やスリット部に該接着層形成成分を充填することができる。また、金属層上のグラファイト層のスリットや穴にあたる部分の接着層を、予めディスペンサーなどで厚めに形成しておいてもよい。
【0101】
また、金属層2および6の大きさ(層の縦および横の長さ)より小さいグラファイト層4を用い、接着層3および5が直接接するようにすることで、機械的強度の高い放熱部材を製造することができる。
【0102】
前記樹脂層は、金属層やグラファイト層上に直接形成されてもよく、前記接着層を介して金属層やグラファイト層上に形成されてもよい。
【0103】
なお、本発明の放熱部材を発熱体に接触させる場合には、該接触部に熱伝導グリースや、熱伝導両面テープを付着させる必要があるため、該接触部には、前記樹脂層は無い方が好ましい。
【0104】
<放熱部材の製造方法>
本発明の放熱部材は、前記組成物を、前記金属層を形成する金属板またはグラファイト層を形成するグラファイト板に塗布し、必要により予備乾燥した後、金属板とグラファイト板とを該組成物を挟むように配置して、圧力をかけながら加熱することで製造することができる。また、前記放熱部材を製造する際には、金属板とグラファイト板との両方に前記組成物を塗布することが、金属層およびグラファイト層の接着強度が高い放熱部材が得られるなどの点から好ましい。
【0105】
前記組成物を塗布する前には、金属層およびグラファイト層の接着強度が高い放熱部材を得るなどの点から、金属層は、表面の酸化層を除去したり、表面を脱脂洗浄しておくことが好ましく、グラファイト層は、酸素プラズマ装置や強酸処理などにより表面を易接着処理しておくことが好ましい。
【0106】
前記組成物を金属板またはグラファイト板に塗布する方法としては、特に制限されないが、組成物を均一にコーティング可能なウェットコーティング法を用いることが好ましい。ウェットコーティング法のうち、膜厚の薄い接着層を形成する場合には、簡便で均質な膜を成膜可能であるスピンコート法が好ましい。生産性を重視する場合には、グラビアコート法、ダイコート法、バーコート法、リバースコート法、ロールコート法、スリットコート法、スプレーコート法、キスコート法、リバースキスコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ロットコート法などが好ましい。
【0107】
前記予備乾燥は、特に制限されず、室温で1〜7日間程度静置することで行ってもよいが、ホットプレートや乾燥炉などにより80〜120℃程度の温度で、1分〜10分間程度加熱することが好ましい。
また、前記予備乾燥は、大気中で行えばよいが、所望により、窒素や希ガスなどの不活性ガス雰囲気下で行ってもよく、減圧下で行ってもよい。特に、高い温度で短時間に乾燥させる場合には不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0108】
前記圧力をかけながら加熱する方法は、特に制限されないが、圧力としては、好ましくは0.1〜30MPaであり、加熱温度としては、好ましくは200〜250℃であり、加熱加圧時間は、好ましくは1分〜1時間である。また、加熱は、大気中で行えばよいが、所望により、窒素や希ガスなどの不活性ガス雰囲気下で行ってもよく、減圧下で行ってもよい。特に、高い温度で短時間に加熱する場合には不活性ガス雰囲気下または減圧下で行うことが好ましい。
【0109】
最外層の片面または両面に樹脂層を有する放熱部材は、前記放熱部材の最外層である金属層やグラファイト層の片面または両面に樹脂を含む塗料を塗布し、必要により乾燥させ、その後該塗料を硬化させることで製造してもよい。また、予め樹脂製フィルムを形成し、前記放熱部材の最外層である金属層やグラファイト層の片面または両面に前記組成物を塗布し、必要により予備乾燥した後、該塗布面に樹脂製フィルムを接触させ、必要により圧力をかけたり、加熱することなどで製造することもできる。
【0110】
≪放熱部材の用途≫
本発明の放熱部材(積層体)は、金属層とグラファイト層との接着強度に優れ、厚みの薄い接着層を有する。また、前記接着層に熱伝導性フィラーが含まれる場合には、積層方向に対して略垂直方向への熱伝導率が高く、全体の厚みが薄くても、従来の厚みの厚い放熱板と同様またはそれ以上の放熱特性を有する。また、切断、穴あけ、型抜きなどの加工性に優れ、金属層とグラファイト層との接着力が強く折り曲げ可能である。このため、本発明の放熱部材は、様々な用途に用いることができ、特に、電子デバイスやバッテリーに好適に用いられる。
また、本発明の放熱部材は、液晶ディスプレイや有機EL照明の色ムラを防ぐための均熱板としても好適である。
【0111】
本発明の放熱部材の、電子デバイス等への使用例としては、
図1や
図4に示すように、電子デバイス中の発熱体7に本発明の放熱部材(積層体)1を接するように配置して使用すればよい。
【0112】
図1は、本発明の放熱部材(積層体)1を、該積層体の積層方向が発熱体7の面に略垂直になるように配置した電子デバイスの一例を示す断面概略図である。
このように本発明の放熱部材1を配置することで、該放熱部材(積層体)の積層方向に対して略垂直方向(横方向)に熱を拡散させ、熱源付近の温度上昇を緩和させることができる。
【0113】
また、
図4は、
図1に示すような放熱部材1を90°回転させて、発熱体7に接するように配置した電子デバイスの一例を示す断面概略図である。
このように本発明の放熱部材1を配置することで、該放熱部材(積層体)の積層方向に対して略垂直方向(縦方向)に熱を拡散させ、熱源付近の温度上昇を緩和させることができる。
【0114】
なお、
図4に示すように本発明の放熱部材を配置する場合、放熱部材(積層体)を、該放熱部材の積層方向に切断したものを用いてもよい。本発明の放熱部材を
図4のように配置した場合、発熱体7から発生した熱を素早く放熱(例えば、冷却装置に移動)させることができるので、発熱体7の温度上昇を効果的に抑えることができる。
【0115】
<電子デバイス>
前記電子デバイスとしては、例えば、画像処理やテレビ、オーディオなどに使用されるASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のチップ、パーソナルコンピュータ、スマートフォンなどのCPU(Central Processing Unit)、LED(Light Emitting Diode)照明などが挙げられる。
【0116】
〔LED照明〕
図5を参照して前記LED照明について説明する。なお、
図5は、LED本体の裏面に本発明の放熱部材が熱伝導パッドを介して接触するように配置したLED照明の一例を示す断面概略図である。特に、前記LED本体として、超高輝度LEDなど発熱量が非常に大きいLEDを用いる場合には、本願の放熱部材の使用は有効である。
【0117】
電気エネルギーを光エネルギーに変換するLED本体は、点灯に伴い熱が発生し、この熱をLED本体の外へ排出させる必要がある。この熱は、LED本体から熱伝導パッドを介して本発明の放熱部材に伝達され、該放熱部材により放熱される。
【0118】
〔バッテリー〕
前記バッテリーとしては、自動車や携帯電話などに用いられるリチウムイオン二次電池、リチウムイオンキャパシタ、ニッケル水素電池などが挙げられる。
【0119】
前記リチウムイオンキャパシタとしては、リチウムイオンキャパシタセルが複数直列または並列に接続されたモジュールであってもよい。
この場合、本発明の放熱部材は、モジュール全体の外表面の一部に接するように、またはモジュール全体を覆うように配置してもよく、各リチウムイオンキャパシタセルの外表面の一部に接するように、または各セルを覆うように配置してもよい。
【実施例】
【0120】
以下に本発明を、実施例を用いて詳細に説明する。しかし本発明は、以下の実施例に記載された内容に限定されるものではない。
【0121】
本発明の実施例に用いた材料は次のとおりである。
<接着層用樹脂>
・「PVF−C1」:ポリビニルホルマール樹脂、JNC(株)製、ビニレック C(商品名)
・「PVF−C2」:ポリビニルホルマール樹脂、JNC(株)製、ビニレック C(商品名)
・「PVF−K」:ポリビニルホルマール樹脂、JNC(株)製、ビニレック K(商品名)
・「PVB」:ポリビニルブチラール、電気化学工業(株)製、デンカブチラール 3000−K(商品名)
・「エポキシ」:エポキシ樹脂、三菱化学(株)製、jER828(商品名)
・「テルペンフェノール」:テルペンフェノール樹脂、ヤスハラケミカル(株)製、YSPOLYSTER T160(商品名)
・「アクリル」:アクリル接着剤、新興プラスチックス(株)製、アクリルダインB(商品名)
【0122】
前記「PVF−C1」、「PVF−C2」および「PVF−K」の構造および物性を下記表1に記載する。
【0123】
【表1】
【0124】
<溶剤>
・1−メチル−2−ピロリドン:和光純薬工業(株)製、和光特級
・シクロペンタノン:和光純薬工業(株)製、和光一級
【0125】
<熱伝導性フィラー>
・酸化亜鉛粉:(株)アムテック製、パナテトラ WZ−0511(商品名、テトラポット形状、平均径(針の長さ):約10μm)
・窒化アルミニウム粉:(株)トクヤマ製、窒化アルミニウム Hグレード(商品名、粒子状、平均径(Al):1μm)
・酸化アルミニウム粉:昭和電工(株)製、アルミナ(低ソーダ)AL−47−H(商品名、粒子状、平均径:2.1μm)
・ナノダイヤモンド粉:CARBODEON製、BLEND NUEVO(商品名、粒子状、平均径:0.004〜0.006μm)
・アルミニウム粉:(株)ニラコ製、アルミニウム粉末(粒子状、平均径:30μm)
【0126】
<グラファイトシート>
・グラファイトシート(人工グラファイト):GrafTECH International製、SS−1500(商品名)、厚み25μm、(シートの面方向の熱伝導率:1500W/m・K)
・グラファイトシート(人工グラファイト):GrafTECH International製、SS−1500(商品名)、厚み40μm、(シートの面方向の熱伝導率:1500W/m・K)
・グラファイトシート(天然グラファイト):GrafTECH International製、SS−500(商品名)、厚み76μm、(シートの面方向の熱伝導率:500W/m・K)
【0127】
・アクリル系粘着剤付グラファイトシート(人工グラファイト):(株)カネカ製、グラフィニティー(厚み25μm)の片面に、アクリル系粘着剤からなる層(厚み12μm)が設けられたシート
・シリコーン系粘着剤付グラファイトシート(人工グラファイト):(株)カネカ製、グラフィニティー(厚み25μm)の片面に、シリコーン系粘着剤からなる層(厚み40μm)が設けられたシート
・PGSグラファイトシート:(株)パナソニック製、EYG−S091203、厚み25μm、(シートの面方向の熱伝導率:1600W/m・K)
【0128】
<金属板>
・銅板:(株)ニラコ製、厚み0.1mm
・銅板:(株)ニラコ製、厚み0.2mm
・銅板:(株)ニラコ製、厚み0.4mm
・銅箔:(株)ニラコ製、厚み0.03mm
・銅箔:(株)ニラコ製、厚み0.05mm
・プリント配線板用電解銅箔:三井金属鉱業(株)製、厚み0.012mm
・プリント配線板用電解銅箔:福田金属箔粉工業(株)製、厚み0.018mm
・銀箔:(株)ニラコ製、厚み0.03mm
・アルミ板:アルミニウム板、(株)ニラコ製、厚み0.1mm
・アルミニウム箔:(株)ニラコ製、厚み0.03mm
・アルミニウム箔:東海アルミ箔(株)製、厚み0.02mm
・銅ニッケル合金(白銅)箔:(株)ニラコ製、厚み0.03mm
・リン青銅箔:(株)ニラコ製、厚み0.03mm
【0129】
<樹脂層用樹脂>
・「耐熱塗料」:オキツモ(株)製、耐熱塗料ワンタッチ(商品名)
・「エポキシ」:エポキシ樹脂、三菱化学(株)製、jER828(商品名)
・「クリアラッカー」:クリアラッカー、関西ペイント(株)製、セルバ26(商品名)
・「PMMA」:メチルメタクリレート重合体、(株)三羽研究所製、MA−830−M50(商品名)
【0130】
<樹脂層用フィラー>
・コーディエライト粉:丸ス釉薬合資会社製、合成コーディエライトSS−1000(平均粒径1.7μm)
・酸化アルミニウム粉:昭和電工(株)製、アルミナ(低ソーダ)AL−47−H(商品名、粒子状、平均径:2.1μm)
・炭化ケイ素粉:シリコンカーバイド、シグマアルドリッチ社製、200〜450メッシュ
・酸化マグネシウム粉:酸化マグネシウム、関東化学(株)製、鹿特級
【0131】
<熱伝導率の評価>
得られた放熱部材の、板面に垂直方向(積層体の積層方向)の熱拡散率および熱伝導率は下記のように求めた。下記実施例1〜13および比較例1〜3で得られた放熱部材を約9.8mmの正方形の平板に切り抜き、両面をカーボンスプレー(日本船舶工具有限会社製:DGF)で塗装した後、NETZSCH社製LFA−447型キセノンフラッシュ熱拡散率測定装置のサンプルホルダーにセットした。セットした放熱部材に該サンプルホルダーが25℃なった後でキセノンランプを所定の強度で照射し、該放熱部材のランプ照射面と反対の面からの熱放射強度の時間変化を測定し、付属のソフトウエアで解析することにより、熱拡散率を求めた。検出器のゲインなどの測定条件は自動とし、解析は、放熱部材の総合的な熱物性を評価するために1層の板とし計算した。
【0132】
さらに、放熱部材の比熱((株)パーキンエルマー製、diamond DSC型入力補償型示差走査熱量測定装置で測定した。)と比重(アルファーミラージュ(株)製、MD−300s型電子比重計により測定した。)を求め、熱伝導率=熱拡散率×比熱×比重の式より熱伝導率を求めた。下記実施例1〜13および比較例1〜3で得られた放熱部材の熱拡散率および熱伝導率を表2に示す。
【0133】
積層型の放熱部材の場合、積層体の積層方向に対して略垂直な方向の熱伝導は熱伝導率の高い層の割合に支配されるので、放熱部材の作製方法には大きく影響されず、ほぼ設計どおりの性能が得られる。逆に、各々の層の界面における、積層体の積層方向の熱抵抗の低減は、各層の界面の熱抵抗と、接着層の熱抵抗に大きく依存し、その低減をすることが好ましい。すなわち、積層体の積層方向の熱伝導率が高いほど、金属層とグラファイト層とが良好に接着できている、すなわち高性能な放熱部材であるといえる。
【0134】
<放熱特性の評価>
下記実施例14〜37で得られた放熱部材の片面に、耐熱塗料(オキツモ(株)製:耐熱塗料ワンタッチ)を塗膜の厚さが約20μmになるようにスプレーし、乾燥させた。この放熱部材の耐熱塗料未塗装面側とT0220パッケージのトランジスタ((株)東芝製:2SD2013)とを両面テープ(住友スリーエム(株)製、熱伝導性接着剤転写テープNo.9885)を用いて貼り合わせた。トランジスタの放熱部材を張り合わせた面の裏面にはK熱電対(理化工業(株)製ST−50)が取り付けられており、温度データロガー(グラフテック(株)製GL220)を用いて、パソコンで、トランジスタの放熱部材が張り合わされた面と反対側の面の温度を記録できる。この熱電対を取り付けたトランジスタを40℃に設定した恒温槽中央に静置し、トランジスタの温度が40℃で一定になったことを確認した後、トランジスタに直流安定化電源を用いて1.0Vを印加し、表面の温度変化を測定した。電圧印加1000秒後または3000秒後のトランジスタの温度を測定した。結果を表3または4に示す。
【0135】
トランジスタは同じワット数が印加されていれば一定の熱量を発生しているので、取り付けてある放熱部材の放熱効果が高いほど温度は低下する。すなわち、トランジスタの温度が低くなる放熱部材ほど放熱効果が高いといえる。
【0136】
なお、比較例9〜11として、前記放熱部材の代わりに、厚みがそれぞれ、0.2mm、0.4mmおよび0.05mmの銅板を用いた以外は同様にして、電圧印加1000秒後および3000秒後のトランジスタの温度を測定した。結果を表3に示す。
【0137】
<接着性の評価>
実施例1〜25および比較例1〜8で得られた放熱部材の金属層とグラファイト層との接着強度は、グラファイト層が、へき開(層内で剥離)する特性があるので、引き剥がす際の引っ張り荷重などの数値で求めることは難しい。したがって、実施例で作製した放熱部材の金属部分を引き剥がし、金属層内側表面の状態を目視で観察することにより評価した。引き剥がした金属層の表面全体が、へき開したグラファイトで覆われている場合は◎、わずかに金属層または接着層が現れているものを○、1/4以上金属層または接着層が現れているものを△、ほとんどもしくは全くグラファイトが残っていないものを×とした。結果を表2または3に示す。
【0138】
[実施例1]
200mlの三口フラスコに1−メチル−2−ピロリドン(NMP)を80g入れ、フッ素樹脂製の攪拌羽根を上部からセットし、モーターにより攪拌羽根を回転させた。回転数は溶液の粘度により適時調節した。このフラスコにガラス製の漏斗を用いてポリビニルホルマール樹脂(PVF−C1)を10g投入した。漏斗に付着したPVF−C1を20gのNMPで洗い流した後、漏斗を取り外し、ガラス栓をした。得られた溶液を80℃に設定したウォーターバスで4時間攪拌しながら加熱し、PVF−C1をNMPに完全に溶解させた。攪拌後のフラスコをウォーターバスから取り出し、室温に戻した後、熱伝導性フィラーとして酸化亜鉛粉を、乾燥した漏斗を用いて10g投入し、一夜攪拌することで、接着剤(組成物)を得た。
【0139】
この接着剤を、大きさ50mm×50mm、厚み0.1mmの銅板に、得られる接着層の厚みが4μmになるようにスピンコーター(ミカサ(株)製:1H−D3型)を用いて1500回転/分で塗布後、80℃に設定したホットプレート上で80℃で3分間予備乾燥し、接着塗膜付きの銅板を得た。なお、接着剤を銅板に塗布する際には、フラスコの底部に沈殿した大きな2次粒子を塗布しないように接着剤を採取し塗布した。
【0140】
この接着塗膜付の銅板2枚で、接着塗膜を内側にして、予め50mm×50mmに切断した厚み25μmのグラファイトシート(SS−1500)を挟みこみ、小型加熱プレス(井元製作所製:IMC−19EC型小型加熱手動プレス)の熱板の上に静置した。2枚の銅板とグラファイトシートがずれないように注意しながら、加圧と減圧を数回繰り返すことにより接着塗膜を脱気した後、6MPaになるまで加圧した。その後、加熱ヒーターにより220℃まで熱板を加熱し、30分間温度と圧力を保持した。30分経過後、圧力は保持したまま加熱ヒーターの電源を切り、およそ50℃になるまで自然冷却した。冷却後、圧力を解き放ち、放熱部材を得た。なお、放熱部材全体の厚みから、2枚の金属板の厚みと、グラファイトシートの厚みを差し引いた値の1/2を接着層の厚みとした。放熱部材の厚みは(株)ミツトヨ製デジマチックインジケータID−C112CXBにより測定した。
【0141】
[比較例1]
実施例1において、接着塗膜付の銅板の代わりに、住友スリーエム(株)製、熱伝導性接着剤転写テープNo.9882(厚み50μm)を張り付けた銅板を用いた以外は、実施例1と同様にして放熱部材を得た。
【0142】
[実施例2〜11、13〜15、17〜24および比較例4〜8]
実施例1において、金属板およびグラファイトシートの種類ならびに厚みを、表2〜3に示すように変更し、樹脂の種類、熱伝導性フィラーの種類(有無)や含有量を、表2〜3に示すように変更した接着剤を用い、接着層の厚みを表2〜3に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして放熱部材を得た。
【0143】
下記表において、(株)ミツトヨ製デジマチックインジケータID−C112CXBにより測定された放熱部材の厚みから2枚の金属板の厚みと、グラファイトシートの厚みを差し引いた値が1未満となった場合を、測定限界以下と記載する。
なお、実施例9で得られる放熱部材において、この放熱部材の断面を走査電子顕微鏡で観察したところ、接着層の厚みは場所によりバラツキはあるが約0.3〜0.5μmであった。
【0144】
[実施例12]
実施例1において、熱伝導性フィラーの種類および含有量を表2に示すように変更した接着剤を用い、実施例1と同様の方法で、接着層の厚みが1μmになるように、大きさ50mm×50mm、厚み0.2mmの銅板上に塗布し、実施例1と同様の方法で接着塗膜付の銅板を得た。
【0145】
この接着塗膜付の銅板を、接着塗膜が厚み25μmのグラファイトシート(SS−1500)に接するように配置し、小型加熱プレス(井元製作所製:IMC−19EC型小型加熱手動プレス)の熱板の上に静置した。銅板とグラファイトシートがずれないように注意しながら、加圧と減圧を数回繰り返すことにより接着塗膜を脱気した後加圧し、室温、6MPaで、120分間保持することで放熱部材を得た。
【0146】
なお、接着層の厚みは、放熱部材全体の厚みから、金属板の厚みと、グラファイトシートの厚みを差し引いた値とした。放熱部材の厚みは(株)ミツトヨ製デジマチックインジケータID−C112CXBにより測定した。
【0147】
[比較例2および3]
実施例12において、接着剤およびグラファイトシート(SS−1500)の代わりに、それぞれ、アクリル系粘着剤付グラファイトシート、またはシリコーン系粘着剤付グラファイトシートを用い、表2に記載の銅板を、前記粘着剤付グラファイトシートの粘着剤に接するように配置した以外は、実施例12と同様にして放熱部材を得た。また、実施例12と同様にして接着層の厚みを測定した。
【0148】
[実施例16]
実施例1において、熱伝導性フィラーの含有量を表3に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして接着剤を調製した。
この接着剤を、厚み25μmのグラファイトシート(SS−1500)の片面に、接着層の厚みが1μmとなるように塗布した以外は、実施例1と同様の方法で塗布し、予備乾燥することで、接着塗膜付のグラファイトシートを得た。
【0149】
この接着塗膜付のグラファイトシートを、接着塗膜が厚み25μmのグラファイトシート(SS−1500)に接するように配置し、小型加熱プレス(井元製作所製:IMC−19EC型小型加熱手動プレス)の熱板の上に静置した。2枚のグラファイトシートがずれないように注意しながら、加圧と減圧を数回繰り返すことにより接着塗膜を脱気した後加圧し、室温、6MPaで、120分間保持することで、2枚のグラファイトシートが積層された積層体を得た。
【0150】
実施例1において、グラファイトシートの代わりに、得られた積層体を用いた以外は、実施例1と同様にして放熱部材を得た。すなわち、銅板/接着層/グラファイトシート/接着層/グラファイトシート/接着層/銅板の構造を有する放熱部材を得た。
なお、放熱部材全体の厚みから、2枚銅板の厚みと、2枚のグラファイトシートの厚みを差し引いた値の1/3を接着層の厚みとした。放熱部材の厚みは(株)ミツトヨ製デジマチックインジケータID−C112CXBにより測定した。
【0151】
[実施例25]
実施例1において、熱伝導性フィラーの含有量を、表3に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして接着剤を得た。
この接着剤を、大きさ50mm×50mm、厚み0.03mmのアルミニウム箔に、得られる接着層の厚みが1μmになるように、また、大きさ50mm×50mm、厚み0.03mmの銅箔に、得られる接着層の厚みが1μmになるように、実施例1と同様の方法で塗布し、予備乾燥することで、それぞれ、接着塗膜付きのアルミニウム箔および銅箔を得た。
【0152】
この接着塗膜付のアルミニウム箔および銅箔で、接着塗膜を内側にして、予め50mm×50mmに切断した厚み25μmのグラファイトシート(SS−1500)を挟みこみ、実施例1と同様の方法で、アルミニウム箔、銅箔およびグラファイトシートがずれないように注意しながら、放熱部材を得た。
【0153】
なお、放熱特性の評価では、耐熱塗料(オキツモ(株)製:耐熱塗料ワンタッチ)を、アルミニウム箔上に、塗膜の厚さが約20μmになるようにスプレーし、乾燥させた。この放熱部材を用いた以外は上記と同様にして放熱特性を評価した。
【0154】
[実施例26]
実施例1において、熱伝導性フィラーを用いず、NMPの代わりにシクロペンタノンを用いたこと以外は実施例1と同様にして接着剤を得た。得られた接着剤を用い、金属層の種類および接着層の厚みを、表4に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして放熱部材を得た。
なお、実施例26以降では、放熱特性の評価の際には耐熱塗料を塗布しなかった。
【0155】
[実施例27]
実施例26で得られた接着剤を用い、金属板の種類および接着層の厚みを、表4に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。
【0156】
得られた積層体の片面に、耐熱塗料(オキツモ(株)製:耐熱塗料ワンタッチ)を、塗膜の厚さが約30μmになるようにスプレーし、乾燥させることで前記積層体に樹脂層が形成された放熱部材を得た。この放熱部材の樹脂層が形成された面と反対側の面(金属層)とT0220パッケージのトランジスタ((株)東芝製:2SD2013)とを両面テープ(住友スリーエム(株)製、熱伝導性接着剤転写テープNo.9885)を用いて貼り合わせた以外は前記<放熱特性の評価>と同様にして放熱特性を評価した。
【0157】
[実施例28]
実施例27と同様にして積層体を得た。
【0158】
エポキシ樹脂(jER828)10gをNMP90gに溶解させた溶液に、樹脂成分に対し、10wt%のコーディエライトを加え、シンキー(株)製、あわとり錬太郎ARE−250型を用い、回転数2000rpmで5分間撹拌した後に、回転数2000rpmで5分間脱泡することにより、放熱塗料を得た。この塗料を、前記積層体の一方の銅箔上に、得られる樹脂層の厚みが0.03mmになるようにスピンコーター(ミカサ(株)製:1H−D3型)を用いて塗布した後、120℃に設定したホットプレート上で30分間加熱することで、前記積層体に樹脂層が形成された放熱部材を得た。
なお、塗料中の樹脂濃度とスピンコーターの回転数を調整することで樹脂層の厚みを調整した。
【0159】
[実施例29〜36]
実施例27と同様にして積層体を得た。
得られた積層体を用い、樹脂層を形成する樹脂の種類およびフィラーの種類を表4に示すように変更した以外は、実施28と同様にして、積層体に樹脂層が形成された放熱部材を得た。
【0160】
[実施例37]
実施例26で得られた接着剤を用い、金属板およびグラファイトシートの種類ならびに接着層の厚みを、表4に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。
得られた積層体を用い、樹脂層を形成する樹脂の種類およびフィラーの種類を表4に示すように変更した以外は実施28と同様にして、積層体に樹脂層が形成された放熱部材を得た。
【0161】
【表2】
【0162】
【表3】
【0163】
【表4】
【0164】
[熱伝導性フィラーの検討]
実施例1〜5の放熱部材の熱拡散率および熱伝導率を比較すると、接着層に熱伝導性フィラーが配合されていない実施例2の放熱部材に比べ、接着層に熱伝導性フィラーが配合されている放熱部材の方が、熱伝導率が高いことがわかる。
【0165】
窒化アルミニウムに比べ、酸化亜鉛の熱伝導率は1桁程度小さいが、実施例1と3を比較すると、接着層に酸化亜鉛を配合した場合と窒化アルミニウムを配合した場合とで、得られる放熱部材の熱伝導率に大きな差異はなかった。また、酸化亜鉛の針状部分の長さに比べ、接着層の厚みが薄い。これは、酸化亜鉛の針状結晶のうち放熱部材(積層体)の積層方向に伸びている針の部分がグラファイト層に刺さっていると考えられ、その部分により、効率よく金属層からグラファイト層に熱を伝えているためと考えられる。
【0166】
ナノダイヤモンドは添加量が少ないにもかかわらず、他のフィラーを用いた場合と同等の放熱性能を示している。これは、ダイヤモンドの熱伝導率が他のものに比べ非常に高いためであると考えられる。ナノダイヤモンドの生産量は少ないが、特に高性能の放熱板を少量製造する場合に使用するとよいと考えられる。
【0167】
[熱伝導フィラー添加量の検討]
実施例1と実施例6〜8とを比較すると、熱伝導性フィラーの配合量が多いほど熱伝導率が高くなることがわかる。ただし、あまり多くのフィラーを添加すると、金属層およびグラファイト層との接着強度が下がる傾向にあるため、熱伝導率と接着強度を両立する添加量が望ましい。
【0168】
[樹脂の種類の検討]
実施例1と比較例1とを比較すると実施例1で得られる放熱部材は、市販の熱伝導性接着剤転写テープを使用して積層した放熱部材に比べ、放熱部材(積層体)の積層方向の熱伝導率が高い。
【0169】
また、実施例12、比較例2および比較例3で得られる放熱部材は、どの放熱部材もグラファイト層がへき開する以上の接着強度があった。接着層の樹脂の種類としてポリビニルアセタール樹脂を用いた場合は、接着層の厚みを薄くしても接着強度を保つことができるため、得られる放熱部材(積層体)の積層方向の熱伝導率は、接着層の樹脂の種類としてポリビニルアセタール樹脂を用いる場合が最も高い。したがって、ポリビニルアセタール樹脂を使用することにより、市販されている接着剤を使用する場合に比べ、高性能な放熱部材を作製できることがわかる。
【0170】
実施例2、9〜11と比較例4〜8とを比較すると、接着層の樹脂の種類としてポリビニルアセタール樹脂を用いると、得られる放熱部材は良好な接着性を示すことがわかる。
ポリビニルアセタール樹脂は、金属層およびグラファイト層に対する接着性に優れているので、接着層を薄くすることができる。特に、PVF−C2を使用し、より薄い接着層を形成した場合であっても、放熱部材の熱伝導率が飛躍的に上昇することがわかる(実施例9)。
【0171】
なお、アクリル接着剤やエポキシ樹脂を接着層形成材料として用いた場合、該接着層の厚みが1μmでは、金属層およびグラファイト層を全く接着できなかった。
【0172】
また、実施例25に示すように、本発明の放熱部材は、2層以上の金属層を含む場合、必要に応じて異なる金属層を用いることもできる。このような放熱部材は、例えば、熱伝導率のよい銅層をヒーターに接触する面に用い、錆びにくいアルミニウム層を反対面に使用することにより、放熱特性と錆びにくさを両立させた放熱部材を得ることもできる。この放熱部材の放熱特性は、金属板として銅箔のみを用いた放熱部材(実施例19)の放熱特性と、金属板としてアルミニウム箔のみを用いた放熱部材(実施例20)の放熱特性との中間的な特性を示す。
【0173】
[金属層の検討]
表2において、実施例15と比較例9とを比較すると、接着層に熱伝導性フィラーを配合しない場合でも、放熱部材とほぼ同じ厚みの0.2mm厚の銅板よりも放熱性が良いことがわかる。また、実施例14と比較例10とを比較すると、接着層に熱伝導性フィラーを配合することにより、得られる放熱部材は、放熱部材の厚みのほぼ2倍の厚みである0.4mm厚の銅板よりも放熱性能が良くなることがわかる。したがって、本発明の放熱部材を使用することにより、同じまたはそれ以上の放熱性能を有しながら、重さと厚さが銅の半分である高性能放熱部材を得ることができることがわかる。
【0174】
[樹脂層の検討]
本発明の放熱部材は、接着層に用いたものと同様の熱伝導性の良いフィラー、コーディエライト、ムライト、シリカなどの遠赤外線放射率が高いフィラー、またはそれらの両方を含む放熱樹脂層を最表面に設置することにより、更に放熱能力をさせることができる。
【0175】
表4において、樹脂層を有する放熱部材は、樹脂層を有しない放熱部材に比べ、トランジスタの温度をより低下させることができる、すなわち放熱能力が向上することがわかる。さらに、コーディエライト、アルミナ、炭化ケイ素、マグネシウムなどのフィラーを含む樹脂層を有する放熱部材は、耐熱塗料から形成される樹脂層を有する放熱部材に比べ、さらに放熱能力が向上することがわかる。