(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔第1の実施の形態〕
(投影装置)
図1に第1の実施の形態における投影装置10を模式的に示す。投影装置10は、レーザ光源11a、11b、11c、レンズ12a、12b、12c、マイクロレンズアレイ13a、13b、13c、レンズ14a、14b、14c、空間光変調器15a、15b、15c、合波プリズム16、レンズ17を有している。なお、本実施の形態においては、レーザ光源11a、11b、11cより出射されたレーザ光等を光束と記載する場合がある。
【0010】
レーザ光源11aは、例えば、赤色の波長域におけるレーザ光を出射するものであり、レーザ光源11aより出射されたレーザ光は、レンズ12aによってレーザ光の発散角度が調整され、マイクロレンズアレイ13aによって拡散され、再び、レンズ14aによって発散角度が調整され、空間光変調器15aを介し、合波プリズム16に入射する。空間光変調器15aでは、例えば、画素ごとにレーザ光の透過、非透過の制御がなされ、赤色に対応する像が形成される。
【0011】
レーザ光源11bは、例えば、緑色の波長域におけるレーザ光を出射するものであり、レーザ光源11bより出射されたレーザ光は、レンズ12bによってレーザ光の発散角度が調整され、マイクロレンズアレイ13bによって拡散され、再び、レンズ14bによって発散角度が調整され、空間光変調器15bを介し、合波プリズム16に入射する。空間光変調器15bでは、例えば、画素ごとにレーザ光の透過、非透過の制御がなされ、緑色に対応する像が形成される。
【0012】
レーザ光源11cは、例えば、青色の波長域におけるレーザ光を出射するものであり、レーザ光源11cより出射されたレーザ光は、レンズ12cによってレーザ光の発散角度が調整され、マイクロレンズアレイ13cによって拡散され、再び、レンズ14cによって発散角度が調整され、空間光変調器15cを介し、合波プリズム16に入射する。空間光変調器15cでは、例えば、画素ごとにレーザ光の透過、非透過の制御がなされ、青色に対応する像が形成される。
【0013】
合波プリズム16では、空間光変調器15aからのレーザ光、空間光変調器15bからのレーザ光、空間光変調器15cからのレーザ光が入射し、合波された後出射される。このように、合波プリズム16より出射された合波されたレーザ光の光束は、レンズ17により、スクリーン18に投影される。
【0014】
本実施の形態においては、レーザ光源11a、11b、11cとしては、半導体レーザや第二次高調波を用いる固体レーザなど各種レーザを用いることができる。また、レーザは複数用いてもよい。レーザ光源11a、11b、11cはレーザそのものに限られず、レーザ光源11a、11b、11cに相当するものとして、光ファイバーなどを用いてレーザ光源からの光束を伝播させたものの出射口であってもよい。また、
図1においては、赤、緑、青の各光束に対してレーザを用いているが、赤、緑、青のうち1または複数の光源に対してレーザを用いていればよい。マイクロレンズアレイ13a、13b、13cは、赤、緑、青のすべての光束に対して用いる必要はなく、赤、緑、青の光束のうち1つ以上の光束に対して用いていればよい。
【0015】
空間光変調器15a、15b、15cとしては、LCOS(Lyquid crystal on Silicon)やDMD(Digital Mirror Device)を用いることができる。
図1においては、LCOSを用いた例を示しているが、DMDは反射型の空間光変調器であるため、
図1に示すような透過型の配置とするのではなく、合波プリズム16の後段にDMDを設置し、DMDからの反射光をレンズ17によって投影する配置とすればよい。
【0016】
(マイクロレンズアレイ)
次に、
図2に基づきマイクロレンズアレイ13a、13b、13cの発散角度に関して説明する。
図2に示されるように、マイクロレンズアレイ13a、13b、13cは、透明基材21の表面にマイクロレンズとなる複数のレンズ部22が形成されている。なお、本実施の形態においては、マイクロレンズアレイ13a、13b、13cを総称してマイクロレンズアレイ13と記載する場合がある。透明基材21とレンズ部22とは同じ材料により形成してもよく、また、異なる材料により形成してもよい。
【0017】
マイクロレンズアレイ13におけるレンズ部22は、球面または非球面の形状となるように形成されており、レンズ部22の頂点から測定した光軸方向の変位量であるサグ値zは、数1に示される式によりあらわすことができる。数1に示される式において、rはレンズ部22の頂点から測定した半径、cはレンズ部22の曲率半径Rの逆数であり、kはコーニック係数、α
i(iは自然数)は非球面係数である。特に、レンズ部22の形状が球面である場合は、k=0、α
i=0となり、数2に示される式によりあらわすことができる。
【0019】
【数2】
数1に示される式において、レンズ部22の半径rにおけるレンズ部22の傾斜角β(r)は、数3に示される式のようにあらわされ、レンズ部22の形状が球面である場合には、数4に示される式のようになる。
【0021】
【数4】
マイクロレンズアレイ13aにおけるレンズ部22に対して光軸方向に光が入射する場合、光は光軸からβ−γの方向に屈折する。レンズ部22を形成している材料の屈折率をnとすると、角度γはsinβ=n×sinγを満たしている。次に、光は透明基材21の裏面において屈折し光軸から角度δの方向に出射される。角度δはn×sin(β−γ)=sinδを満たしている。レンズ部22におけるレンズ端部の半径r
0における傾斜角度β(r
0)が、レンズ部22における傾斜角で一番大きい場合、マイクロレンズアレイ13の拡散角度は、δ(r
0)によって表わされ、βを用いて数5に示される式であらわすことができる。マイクロレンズアレイ13の拡散角度δ(r
0)が大きい場合には、拡散された光束をとらえるために光学部品が大きくなることがあるため、δ(r
0)は10°以下となるようにするのが好ましい。
【0022】
【数5】
次に、マイクロレンズアレイ13の回折作用について、
図3及び
図4に基づき説明する。マイクロレンズアレイ13における相互に隣接するレンズ部22の頂点の距離をレンズ間隔Pとし、波長λの光が入射した場合を考える。
図3(a)に示されるように、レンズ部22によって拡散された入射光31は、角度δ(r
0)の範囲に広がるが、マイクロレンズアレイ13の周期性によって回折が生じ、出射光の出射角度が離散的な値を有するようになる。このとき、m次の回折光の出射角度ξ(m)はsinξ=mλ/Pを満たしている。
図3(a)では0次光32および1次光33、−1次光34が発生する場合を示している。このような場合、
図3(b)に示されるように、投影面60における光の強度分布の均一性が低下する。
【0023】
一方、
図4(a)に示されるように、入射光41をマイクロレンズアレイ13に入射させると、角度δ(r
0)内に複数の回折光42が発生するような場合には、
図4(b)に示されるように、投影面60に投影される光は均一となり、光の強度分布の均一性の低下が起きにくい。なお、回折光42には高次の回折光が含まれている。よって、角度δ(r
0)内のある方向に含まれる回折光の最大の次数が2つ以上(sinδ(r
0)>2λ/P)であることが好ましく、次数が5以上(sinδ(r
0)>5λ/P)であることがより好ましく、次数が10以上(sinδ(r
0)>10λ/P)であることがさらに好ましい。
【0024】
また、レンズ間隔Pを大きくすることで、上記の関係式を満たすことができるようになるが、入射光41の強度分布を均一化するために、入射光41のスポットの直径Dに対してマイクロレンズアレイ13の大きさが小さいことが求められる。したがって、レンズ間隔Pは、P<D/3を満たすことが好ましく、P<D/5であることがより好ましく、さらには、P<D/10であることが好ましい。
【0025】
以上においては、入射光41が平行光である場合について説明したが、入射光が発散光あると、出射される光束が広がりを持つため、回折による離散的な分布を平坦化することができるので好ましい。
図5には、このような入射光が発散光である場合を示す。入射光51は広がり角ηを有しているため、回折光52も広がり角ηで投影面60に投影される。したがって、このような場合、
図3のように平行光が入射された場合に生じる回折光間においては、強度のボトム構造は生じず、投影面60に対して均一に光を照射することができる。このとき、広がり角ηが、sinη>λ/2Pを満たすと、隣り合う次数の回折光の間の空間を埋めることができるので好ましく、sinη>λ/Pであることがより好ましい。
【0026】
また、上記においては、入射光を発散光として説明したが、集光位置が投影面よりも前方に位置するような場合、入射光が収束光であっても投影面上において同様の効果を得ることができる。一般的に強度分布を均一化された光は空間光変調器を投影面として投影されるが、収束光の集光位置が空間光変調器に近いと入射光に広がり角ηを持たせることで生じる強度の均一化の効果が低減する。したがって、収束光を用いる場合は集光位置がマイクロレンズアレイ13と空間光変調器の距離の半値よりもマイクロレンズアレイ13側に位置していることが好ましい。以下では、広がり角ηを有する光とは発散光または収束光であるとする。
【0027】
次に、本実施の形態におけるマイクロレンズアレイ13の各種の構造について、
図6から
図8に基づき説明する。
【0028】
図6(a)は、マイクロレンズアレイ13におけるレンズ部22が、チドリ状に配置されており、各レンズ部22の境界が独立した場合の例を示している。なお、
図6(b)は、
図6(a)における一点鎖線6A−6Bにおいて切断した断面図である。
【0029】
図7(a)は、マイクロレンズアレイ13におけるレンズ部22が、チドリ状に配置されており、レンズ部22の境界を共有している場合の例を示している。なお、
図7(b)は、
図7(a)における一点鎖線7A−7Bにおいて切断した断面図である。
【0030】
図8(a)は、マイクロレンズアレイ13におけるレンズ部22が、正方配置をしており、レンズ部22の境界を共有している場合の例を示している。なお、
図8(b)は、
図8(a)における一点鎖線8A−8Bにおいて切断した断面図である。
【0031】
マイクロレンズアレイ13における各レンズ部22の配置は、
図6から
図8に示される例に限られず、各種の形状を用いることができ、凸レンズに限られず、凹レンズ等の形状であってもよい。
【0032】
また、本実施の形態における投影装置のように、光源にレーザ光源11a、11b、11cを用いている場合には、散乱によってスペックルノイズが生じる場合があるため、マイクロレンズアレイ13の表面における表面粗さは小さい方が好ましく、Raで100nm以下であることが好ましく、更には、10nm以下であることがより好ましい。また、スペックルノイズを低減するためにマイクロレンズアレイ13を回転させるなど、時間的に変位させるようにしてもよい。回転駆動させる場合には、マイクロレンズアレイ13の外形は円盤状に形成されていることが好ましい。
【0033】
また、光源の出力が大きく、マイクロレンズアレイ13に対して10W以上の光束が照射されるような場合には、部分的に温度が高くなり、マイクロレンズアレイ13において、大きな温度分布を生じ、破壊されてしまう場合がある。このような場合を考慮すると、マイクロレンズアレイ13の材料としてガラス(酸化シリコンを含むガラス)を用いることが好ましい。特に、アルカリ成分の含有量が少ないガラスの場合、熱線膨張係数が小さくなるので、低アルカリガラスや無アルカリガラスを用いることが好ましい。このようなガラスとしてパイレックス(登録商標)ガラス(熱線膨張径数:3.3×10
−6K
−1)やTEMPAX Float(熱線膨張径数:3.3×10
−6K
−1)などの耐熱ガラスや、AN100(熱線膨張径数:3.8×10
−6K
−1)、EAGLE−XG(熱線膨張係数:3.2×10
−6K
−1)などの液晶基板用ガラス、石英ガラス(熱線膨張係数:5.5×10
−7K
−1)などを用いることができる。これらのガラスではソーダライムガラス(熱線膨張係数:8.5〜9.0×10
−6K
−1)よりも小さい熱線膨張係数を有しており、大きな温度分布が生じた際にも応力が発生しにくく、破壊が起きにくい。熱線膨張係数は8.5×10
−6K
−1以下であることが好ましく、さらには、5.0×10
−6K
−1以下であることがより好ましい。
【0034】
また、マイクロレンズアレイ13を形成する材料としては、モル%表示で実質的に、SiO
2:65〜70%、Al
2O
3:9〜16%、B
2O
3:6〜12%、MgO:0〜6%、CaO:0〜7%、SrO:1〜9%、MgO+CaO+SrO:7〜18%からなり、BaOを実質的に含有しない無アルカリガラスであって、密度が2.6g/cc未満であり、歪点が640℃以上であるものであってもよい。
【0035】
なお、必要な耐熱性は、マイクロレンズアレイ13に照射されるエネルギー密度にも依存する。たとえば、10Wのトップハット型の光量分布を有する光束を20mm角の領域に照射する場合、25mmW/mm
2のエネルギー密度となる。レーザ光源の指向性が高い点と、レーザ光源から出射される光束の光量分布は、通常ガウス分布になっておりエネルギー密度の尖頭値が高くなる点を考慮すると、マイクロレンズアレイ13に照射されるエネルギー密度が25mmW/mm
2以上の場合に、上記のような熱膨張率を満たす材料を用いることが好ましい。エネルギー密度が75mmW/mm
2以上である場合や、エネルギー密度が125mmW/mm
2以上であるような場合には、上記のような熱膨張率を満たす材料を用いることが更に好ましい。
【0036】
マイクロレンズアレイ13におけるレンズ部の加工方法としては、射出成型、プレス成型、インプリント法や切削加工、ドライエッチングやウェットエッチングによる加工方法を用いることができるが、光源の出力が大きい場合には材料に耐熱性が求められるためガラスのプレス成型やドライエッチングやウェットエッチングを用いることが好ましい。特にガラスのプレス成型ではモールドを切削加工する際に切削痕が残る場合があり、表面の粗さが大きくなることがあるので、ドライエッチングやウェットエッチングを用いることがより好ましい。ドライエッチングを用いる場合には、レジストを一度フォトリソグラフィによってパターニングし、その後レジストを加熱することでレジストを軟化させるリフロー技術によりレジスト形状を球面状となるように形成する。この後、ドライエッチングを行うことにより、レンズ部22を球面状に形成してもよい。また、レジストに対する露光量を調整することでレジストを球面状に形成し、この後、ドライエッチングを行うことにより、レンズ部22を球面状に形成する方法等により形成してもよい。
【0037】
〔第2の実施の形態〕
次に、第2の実施の形態について説明する。
図9は、本実施の形態における投影装置100を模式的に示す。投影装置100では光源として青色のレーザ光源101を用いており、青色のレーザ光源から出射される光束は、第1のマイクロレンズアレイ102とダイクロイックミラー103を透過後、レンズ104によって蛍光ホイール105に照射される。第1のマイクロレンズアレイ102は、第1の実施の形態におけるマイクロレンズアレイ13と同様の構造のマイクロレンズアレイにより形成されている。
【0038】
図10に示されるように、蛍光ホイール105は、マイクロレンズアレイ領域105a、緑色蛍光体領域105b、赤色蛍光体領域105cの3つの領域に分割されている。マイクロレンズアレイ領域105aは、第2のマイクロレンズアレイが形成されており、緑色蛍光体領域105bには、緑色発光する蛍光体(蛍光材料)により形成されており、赤色蛍光体領域105cは、赤色発光する蛍光体により形成されている。なお、マイクロレンズアレイ領域105aにおける第2のマイクロレンズアレイは、第1の実施の形態におけるマイクロレンズアレイ13と同様の構造のマイクロレンズアレイにより形成されている。
【0039】
蛍光ホイール105は、モータ等の回転駆動部105dにより回転させることができ、青色のレーザ光源101からのレーザ光が緑色蛍光体領域105bに照射された場合には緑色光を得ることができ、赤色蛍光体領域105cに照射された場合には赤色光を得ることができる。なお、青色のレーザ光源101からのレーザ光がマイクロレンズアレイ領域105aに照射された場合には、青色光はマイクロレンズアレイ領域105aを透過する。従って、蛍光ホイール105では回転駆動部105dにより回転させることにより、青色光、緑色光、赤色光を時分割させて出射させることができる。緑色蛍光体領域105b及び赤色蛍光体領域105cにおいて発生する蛍光発光は、
図9において点線で示される光路を通り、レンズ112に至る。レンズ112を透過後、合波ミラー111によって反射され、レンズ113を透過後インテグレータ114に照射される。本実施の形態においては、緑色蛍光体領域105b、赤色蛍光体領域105cに代えて、または、加えて、黄色蛍光体により形成された黄色蛍光体領域を設けたものであってもよい。
【0040】
酸化物系、硫化物系の蛍光体としては、黄色発光するYAG系の蛍光体(Y
3Al
5O
12:Ce、(Y,Gd)
3Al
5O
12:Ce)、TAG系の蛍光体(Tb
3Al
5O
12:Ce)や添加元素によって各色の蛍光発光が発生するシリケート系、アルカリ土類系の蛍光体などを用いることができる。また、窒化物系の蛍光体として添加元素によって各色の蛍光発光が発生するαサイアロン系(SiAlON)、緑色の蛍光発光をするβサイアロン系(SiAlON:Eu)、赤色の蛍光発光をするカズン系(CaAlSi
3N
3:Eu)を用いることができる。また、酸窒化物系の蛍光体としてLa酸窒化物(LaAl(Si
6−zAl
2)N
10−zO
2:Ce)を用いることができる。
【0041】
蛍光ホイール105のマイクロレンズアレイ領域105aにおける第2のマイクロレンズアレイに青色の光束が照射された場合、第2のマイクロレンズアレイによって拡散され、第2のマイクロレンズアレイを透過した青色の光束は、レンズ106によって発散角を変換される。この後、青色の光速はミラー107、レンズ108、ミラー109、レンズ110を透過後、合波ミラー111を透過し、レンズ113を透過後、インテグレータ114に照射される。
【0042】
インテグレータ114から出射される青色、緑色、赤色の光束はレンズ115を透過後、ミラー116によって反射され、レンズ117及びミラー118を介した後、空間光変調器119に照射される。空間光変調器119においては像が形成され、形成された像は投影レンズ120によって外部のスクリーン130に投影される。
【0043】
ここで、第1のマイクロレンズアレイ102は、蛍光ホイール105上の蛍光体に照射される光の強度分布を均一化する機能を有している。蛍光体は蛍光材料をシリコン樹脂などに混ぜたものであり、高い尖頭値を有する青色の光束を照射すると、高い尖頭値の青色光が照射された領域において、シリコン樹脂の劣化などが生じる。このような劣化を低減するために、第1のマイクロレンズアレイ102は用いられている。このように、第1のマイクロレンズアレイ102を用いることにより、通常の拡散板のように山型の出射光分布とはならずに、トップハット型の出射光分布を実現できるため光束の尖頭値が下がり、より強度の大きい光束を蛍光体に照射することができる。また、蛍光ホイール105におけるマイクロレンズアレイ領域105aの第2のマイクロレンズアレイは、空間的な強度分布を均一化する機能を有しており、回転させることでより均一性を高めることができる。
【0044】
第1のマイクロレンズアレイ及び第2のマイクロレンズアレイは、レーザ光源101からの光束を照射することにより、光の回折が生じるが、マイクロレンズアレイの形状を第1の実施の形態と同様に設計することでこれらの影響を小さくすることができる。
【0045】
〔第3の実施の形態〕
次に、第3の実施の形態について説明する。本実施の形態は、
図11に示されるように、マイクロレンズアレイ213における相互に隣接するレンズ部222において、レンズ部222の開口の大きさ、曲率半径、レンズ間隔のうちの1または2以上が、相互に異なるものにより形成されているものである。なお、マイクロレンズアレイ213は、レンズ部222により形成される複数のマイクロレンズにより構成されている。
【0046】
このように、第3の実施の形態においては、マイクロレンズアレイ213においてレンズ部22の配置に不規則性を導入することで、回折作用を低減させることができる。本実施の形態におけるマイクロレンズアレイ213の平面図を、
図11(a)及び
図11(b)に、模式的に示している。
図11(a)ではレンズ境界が独立なチドリ配置のマイクロレンズアレイ213においてレンズ間隔Pに不規則性を導入した例であり、レンズの間隔Pが一定値を取らないように配置されている。
図11(b)ではレンズ境界を共有しているチドリ配置のマイクロレンズアレイ213においてレンズ開口の形状に不規則性を導入した例である。
【0047】
このような不規則性を導入することによって、マイクロレンズアレイ213におけるレンズ部222の規則性を弱め、回折作用を低減することができる。不規則性はレンズ間隔、レンズ部222の開口の形状、レンズ部222の非球面形状などに導入することができる。導入する不規則性の量が大きくなると、通常の拡散板と同様に出射光の光量分布が山型の分布になり、トップハット型の分布などが得られなくなる。例えば、レンズ部222の曲率半径が±50%の範囲でバラツキを有すると回折の影響を大きく低減できるものの、基準の出射角度が5°の場合、5°の50%である±2.5°の出射角度バラツキを有することになり、基準の出射角度である5°以上に出射される光が多く発生し光量のロスが発生する。したがって、光利用効率の点からは導入する不規則量は小さい方が好ましく、基準値に対し±50%以下の不規則量に収めるのがよく、±25%以下の不規則量であればより好ましく、±10%以下の不規則量であればより好ましい。また、このような回折の影響を低減する観点からは、隣り合うレンズ部222において、レンズ間隔、レンズの開口の形状、レンズの非球面形状のいずれかが相互に異なっていてもよい。なお、本実施の形態におけるマイクロレンズアレイ213は、第1の実施の形態におけるマイクロレンズアレイ13、第2の実施の形態における第1のマイクロレンズアレイ102、第2のマイクロレンズアレイに代えて用いることができる。
【実施例】
【0048】
透明基材21となる厚さ0.5mm、屈折率1.455の石英基板を洗浄後、レジストを塗布等した後、フォトリソグラフィによってφ200μmの円形のレジストがレンズ間隔Pが202μmのチドリ配置となるようにレジストのパターニングを行う。その後、レジストをリフローし、レジストの表面が球面形状となるようにする。球面形状のレジストをドライエッチングすることにより、曲率半径Rが1000μmのレンズ部22を形成することにより、マイクロレンズアレイ13を形成する。このように形成されたマイクロレンズアレイ13を20mm×20mmの形に切断する。このようなレンズ形状となるマイクロレンズアレイ13の出射角度β(r
0)は2.6°である。
【0049】
このようなマイクロレンズアレイを
図1に示される投影装置におけるマイクロレンズアレイ13a、13b、13cとして配置する。各々のマイクロレンズアレイ13a、13b、13cには、φ3mmの光が照射され、レンズ間隔である202μmに対して十分大きくなっている。また、赤、緑、青の各レーザ光源11a、11b、11cの波長λはそれぞれ、625nm、525nm、450nmとなっており、λ/Pの値は各色の波長に対してそれぞれ、3.1×10
−3、2.6×10
−3、2.2×10
−3とsinδ(r
0)=4.6×10
−2よりも十分小さくなっている。また、マイクロレンズアレイ13a、13b、13cには、0.2°の広がり角ηを有する発散光が照射されるようにする。このとき、sinη=3.4×10
−3となり、1/2×λ/Pの値よりも大きくなっている。
【0050】
以上により、マイクロレンズアレイにおいて、回折の影響を小さくすることができ、均一な光束を得ることができる。
【0051】
以上、本発明の実施に係る形態について説明したが、上記内容は、発明の内容を限定するものではない。