【実施例】
【0080】
以下に、本発明を実施例に基づいて更に詳しく説明する。まず、実施例で用いた化合物の合成例について、以下に説明する。
【0081】
[合成例1]化合物(1−2)の合成
<9−(4−メトキシフェニル)−10−(ナフタレン−1−イル)アントラセンの合成>
市販品である9−ブロモ−10−(ナフタレン−1−イル)アントラセン(46.0g)、(4−メトキシフェニル)ボロン酸(20.1g)、Pd(PPh
3)
4(1.4g)、リン酸三カリウム(50.9g)、1,2,4−トリメチルベンゼン(300mL)、t−ブチルアルコール(60mL)および水(12mL)をフラスコに入れ、窒素雰囲気下、還流温度で8時間攪拌した。反応の進行が遅かった為、更にPd(PPh
3)
4(1.39g)を追加し9時間攪拌した。反応液を室温まで冷却し水を加え、析出した固体を吸引濾過にて採取した。この固体をトルエンに溶解してシリカゲルショートカラム(展開液:トルエン)で精製し、溶出液を濃縮して、9−(4−メトキシフェニル)−10−(ナフタレン−1−イル)アントラセン(46.5g)を得た。
【0082】
<4−(10−(ナフタレン−1−イル)アントラセン−9−イル)フェノールの合成>
窒素雰囲気下、9−(4−メトキシフェニル)−10−(ナフタレン−1−イル)アントラセン(45.2g)、ピリジン塩酸塩(63.8g)、N−メチルピロリドン(50mL)をフラスコに入れ、還流温度で5時間攪拌した。反応液を室温まで冷却し水を加え、析出した固体を吸引濾過にて採取した。この固体を温水で洗浄し、更にメタノールで洗浄して、4−(10−(ナフタレン−1−イル)アントラセン−9−イル)フェノール(42.0g)を得た。
【0083】
<4−(10−(ナフタレン−1−イル)アントラセン−9−イル)フェニル トリフルオロメタンスルホナートの合成>
窒素雰囲気下、4−(10−ナフタレン−1−イル)アントラセン−9−イル)フェノール(18.0g)、ピリジン(脱水)(130ml)の入ったフラスコを、氷浴で冷却した。次いで、トリフルオロメタンスルホン酸無水物(11.2ml)をこの溶液に滴下した。滴下終了後氷浴を外し、室温で8時間撹拌し、水を加え反応を停止した。生成した固体を吸引濾過にて採取し、水、次いで2−プロパノールで洗浄した。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン)で精製した後、トルエン/ヘプタン混合溶媒にて再沈殿を行い、4−(10−(ナフタレン−1−イル)アントラセン−9−イル)フェニル トリフルオロメタンスルホナート(15.0g)を得た。
【0084】
<4,4,5,5−テトラメチル−2−(4−(10−(ナフタレン−1−イル)アントラセン−9−イル−)フェニル)−1,3,2−ジオキサボロランの合成>
窒素雰囲気下、4−(10−(ナフタレン−1−イル)アントラセン−9−イル)フェニル トリフルオロメタンスルホナート(15.0g)、ビスピナコラートジボロン(8.6g)、酢酸カリウム(5.6g)、Pd(dppf)Cl
2(0.7g)およびシクロペンチルメチルエーテル(130ml)の入ったフラスコを還流温度で7時間撹拌した。反応液を室温まで冷却した後、水およびトルエンを加え分液し、溶媒を減圧留去した。得られた固体をシリカゲルショートカラム(トルエン)で精製し、4,4,5,5−テトラメチル−2−(4−(10−(ナフタレン−1−イル)アントラセン−9−イル−)フェニル)−1,3,2−ジオキサボロラン(11.2g)を得た。
【0085】
<化合物(1−2)の合成>
4,4,5,5−テトラメチル−2−(4−(10−(ナフタレン−1−イル)アントラセン−9−イル−)フェニル)−1,3,2−ジオキサボロラン(3.0g)、国際公開2007/086552パンフレットに記載の方法で合成した5−ブロモ−2,2’−ビピリジン(1.4g)、Pd(PPh
3)
4(0.2g)、リン酸三カリウム(2.5g)、1,2,4−トリメチルベンゼン(25ml)、イソプロピルアルコール(10ml)および水(2ml)の入ったフラスコを還流温度で2.5時間撹拌した。反応液を室温まで冷却した後、水を加え無機塩を溶解させ、吸引濾過にて析出物を採取した。得られた固体をメタノール、次いで酢酸エチルで洗浄した。更にクロロベンゼンでソックスレー抽出を行い、抽出液から再結晶して、式(1−2)で表される化合物:5−(4−(10−(ナフタレン−1−イル)アントラセン−9−イル)フェニル)−2,2’−ビピリジン(1.8g)を得た。NMR測定により化合物の構造を確認した。
1H−NMR(CDCl
3):δ=9.14(m,1H), 8.75(m,1H), 8.58(d,1H), 8.52(d,1H), 8.23(dd,1H), 8.08(d,1H), 8.03(d,1H), 7.95(t,2H), 7.88(t,1H), 7.83(d,2H), 7.66−7.75(m,3H), 7.60(d,1H), 7.45−7.53(m,3H), 7.36(m,3H), 7.17−7.27(m,4H).
【0086】
[合成例2]化合物(1−85)の合成
<5−ブロモ−6’−メチル−2,2’−ビピリジンの合成>
2−ブロモ−6−メチルピリジン(5.2g)およびシクロペンチルメチルエーテル(30ml)の入ったフラスコをメタノール/ドライアイス浴で冷却した。この溶液に1.6Mのn−ブチルリチウム・ヘキサン溶液(22ml)を滴下した。滴下終了後、メタノール/ドライアイス浴で冷却しながら2時間撹拌し、塩化亜鉛テトラメチルエチレンジアミン(8.3g)を加え、メタノール/ドライアイス浴を外し昇温した。室温まで昇温した後、2,5−ジブロモピリジン(7.1g)およびPd(PPh
3)
4(1.0g)を加え、還流温度で3時間半撹拌した。反応液を室温まで冷却した後、EDTA・4Na水溶液およびトルエンを加え分液した。溶媒を減圧留去した後、得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開液:トルエン/酢酸エチル)で精製した。この際、「有機化学実験のてびき(1)−物質取扱法と分離精製法−」株式会社化学同人出版、94頁に記載の方法を参考にして、展開液中の酢酸エチルの比率を徐々に増加させて目的物を溶出させた。次いで溶媒を減圧留去し、得られた固体をヘプタンから再結晶し、5−ブロモ−6’−メチル−2,2’−ビピリジン(1.4g)を得た。
【0087】
<化合物(1−85)の合成>
4,4,5,5−テトラメチル−2−(4−(10−(ナフタレン−1−イル)アントラセン−9−イル−)フェニル)−1,3,2−ジオキサボロラン(2.0g)、5−ブロモ−6’−メチル−2,2’−ビピリジン(1.2g)、Pd(PPh
3)
4(0.1g)、リン酸三カリウム(1.7g)、1,2,4−トリメチルベンゼン(20ml)、イソプロピルアルコール(5ml)および水(1ml)の入ったフラスコを還流温度で6.5時間撹拌した。反応液を室温まで冷却した後、水を加え無機塩を溶解させ、吸引濾過にて析出物を採取した。得られた固体をメタノール、次いで酢酸エチルで洗浄した。更にシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開液:トルエン/酢酸エチル)で精製した。この際、前記と同様に展開液中の酢酸エチルの比率を徐々に増加させて目的物を溶出させた。溶媒を一旦減圧留去した後、再度トルエンに溶解し、活性炭ショートカラムに通した。溶媒を減圧留去し、得られた油状物質に酢酸エチルを加え、析出した沈殿を採取することによって、式(1−85)で表される化合物:6’−メチル−5−(4−(10−(ナフタレン−1−イル)アントラセン−9−イル)フェニル)−2,2’−ビピリジン(0.6g)を得た。NMR測定により化合物の構造を確認した。
1H−NMR(CDCl
3):δ=9.12(m,1H), 8.59(d,1H), 8.28(d,1H), 8.21(dd,1H), 8.08(d,1H), 8.03(d,1H), 7.94(t,2H), 7.83(d,2H), 7.70−7.78(m,3H), 7.67(m,1H), 7.59(dd,1H), 7.50(t,1H), 7.47(d,2H), 7.36(m,2H), 7.18−7.27(m,5H), 2.69(s,3H).
【0088】
[合成例3]化合物(1−97)の合成
<5’−ブロモ−3−メチル−2,2’−ビピリジンの合成>
2−ブロモ−3−メチルピリジン(24.1g)およびTHF(100ml)の入ったフラスコを氷浴で冷却し、この溶液に2MのイソプロピルマグネシウムクロリドTHF溶液(84ml)を滴下した。滴下終了後、還流温度まで徐々に昇温し、その温度で0.5時間撹拌した。再び氷浴で冷却し、塩化亜鉛テトラメチルエチレンジアミン(42.3g)を加え、1時間室温で撹拌した後、2,5−ジブロモピリジン(39.8g)およびPd(PPh
3)
4(4.9g)を加え、還流温度で4時間撹拌した。反応液を室温まで冷却した後、EDTA・4Na水溶液および酢酸エチルを加え分液した。溶媒を減圧留去した後、得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開液:トルエン/酢酸エチル=9/1(容量比))で精製した。更にヘプタンから再結晶して、5’−ブロモ−3−メチル−2,2’−ビピリジン(13.5g)を得た。
【0089】
<化合物(1−97)の合成>
4,4,5,5−テトラメチル−2−(4−(10−(ナフタレン−1−イル)アントラセン−9−イル−)フェニル)−1,3,2−ジオキサボロラン(2.0g)、5’−ブロモ−3−メチル−2,2’−ビピリジン(1.2g)、Pd(PPh
3)
4(0.1g)、リン酸三カリウム(1.7g)、1,2,4−トリメチルベンゼン(20ml)、イソプロピルアルコール(5ml)および水(1ml)の入ったフラスコを還流温度で5時間撹拌した。反応液を室温まで冷却した後、水を加え無機塩を溶解させ、吸引濾過にて析出物を採取した。得られた固体をメタノール、次いで酢酸エチルで洗浄した。更にシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開液:トルエン/酢酸エチル)で精製した。この際、前記と同様に展開液中の酢酸エチルの比率を徐々に増加させて目的物を溶出させた。溶媒を一旦減圧留去した後、再度トルエンに溶解し、活性炭ショートカラムに通した。溶媒を減圧留去し、得られた油状物質に酢酸エチルを加え、析出した沈殿を採取することによって、式(1−97)で表される化合物:3−メチル−5’−(4−(10−(ナフタレン−1−イル)アントラセン−9−イル)フェニル)−2,2’−ビピリジン(1.4g)を得た。NMR測定により化合物の構造を確認した。
1H−NMR(CDCl
3):δ=9.14(m,1H), 8.60(m,1H), 8.22(dd,1H), 8.08(d,1H), 7.99−8.05(m,2H), 7.94(t,2H), 7.83(t,2H), 7.65−7.75(m,4H), 7.59(dd,1H), 7.45−7.52(m,3H), 7.37(m,2H), 7.17−7.30(m,5H), 2.64(s,3H).
【0090】
[合成例4]化合物(1−133)の合成
<6’−ブロモ−3−メチル−2,2’−ビピリジンの合成>
2−ブロモ−3−メチルピリジン(21.5g)およびTHF(15ml)の入ったフラスコを氷浴で冷却し、この溶液に2MのイソプロピルマグネシウムクロリドTHF溶液(75ml)を滴下した。滴下終了後、還流温度まで徐々に昇温し、その温度で0.5時間撹拌した。再び氷浴で冷却し、塩化亜鉛テトラメチルエチレンジアミン(37.8g)を加え、1時間室温で撹拌した後、2,6−ジブロモピリジン(44.4g)およびPd(PPh
3)
4(4.3g)を加え、還流温度で1時間撹拌した。反応液を室温まで冷却した後、EDTA・4Na水溶液および酢酸エチルを加え分液した。溶媒を減圧留去した後、得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開液:トルエン/酢酸エチル=9/1(容量比))で精製し、6’−ブロモ−3−メチル−2,2’−ビピリジン(15.8g)を得た。
【0091】
<化合物(1−133)の合成>
4,4,5,5−テトラメチル−2−(4−(10−(ナフタレン−1−イル)アントラセン−9−イル−)フェニル)−1,3,2−ジオキサボロラン(2.0g)、6’−ブロモ−3−メチル−2,2’−ビピリジン(1.2g)、Pd(PPh
3)
4(0.1g)、リン酸三カリウム(1.7g)、1,2,4−トリメチルベンゼン(20ml)、イソプロピルアルコール(5ml)および水(1ml)の入ったフラスコを還流温度で14時間撹拌した。反応液を室温まで冷却した後、水およびトルエンを加え分液した。溶媒を減圧留去して得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開液:トルエン/酢酸エチル)で精製した。この際、前記と同様に展開液中の酢酸エチルの比率を徐々に増加させて目的物を溶出させた。溶媒を一旦減圧留去した後、再度トルエンに溶解し、活性炭ショートカラムに通した。溶媒を減圧留去し、得られた固体をクロロベンゼンから再結晶して、式(1−133)で表される化合物:3−メチル−6’−(4−(10−(ナフタレン−1−イル)アントラセン−9−イル)フェニル)−2,2’−ビピリジン(1.1g)を得た。NMR測定により化合物の構造を確認した。
1H−NMR(CDCl
3):δ=8.59(m,1H), 8.35(t,2H), 8.07(d,1H), 8.02(d,1H), 7.98(d,1H), 7.93(t,2H),7.83(d,2H), 7.63−7.74(m,4H),7.58(d,1H), 7.49(t,1H), 7.46(d,2H),7.35(t,2H), 7.17−7.29(m,5H), 2.78(s,3H).
【0092】
[合成例5]化合物(1−145)の合成
<化合物(1−145)の合成>
4,4,5,5−テトラメチル−2−(3−(10−(ナフタレン−1−イル)アントラセン−9−イル−)フェニル)−1,3,2−ジオキサボロラン(2.0g)、5−ブロモ−6’−メチル−2,2’−ビピリジン(1.2g)、Pd(PPh
3)
4(0.1g)、リン酸三カリウム(1.7g)、1,2,4−トリメチルベンゼン(20ml)、イソプロピルアルコール(5ml)および水(1ml)の入ったフラスコを還流温度で5時間撹拌した。反応液を室温まで冷却した後、水およびトルエンを加え分液した。溶媒を減圧留去して得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開液:トルエン/酢酸エチル)で精製した。この際、展開液中の酢酸エチルの比率を徐々に増加させて目的物を溶出させた。溶媒を一旦減圧留去した後、再度トルエンに溶解し、活性炭ショートカラムに通した。溶媒を減圧留去し、得られた固体をトルエン/ヘプタン混合溶媒(容量比≒1/1)から再結晶して、式(1−145)で表される化合物:6’−メチル−5−(3−(10−(ナフタレン−1−イル)アントラセン−9−イル)フェニル)−2,2’−ビピリジン(0.2g)を得た。NMR測定により化合物の構造を確認した。
1H−NMR(CDCl
3):δ=9.05(dd,1H), 8.50(m,1H), 8.23(m,1H), 8.06−8.14(m,2H), 8.02(d,1H), 7.68−7.91(m,7H), 7.57−7.66(m,2H), 7.45−7.54(m,3H), 7.36(t,2H), 7.16−7.27(m,5H), 2.65(s,3H).
【0093】
[合成例6]化合物(1−157)の合成
<化合物(1−157)の合成>
4,4,5,5−テトラメチル−2−(3−(10−(ナフタレン−1−イル)アントラセン−9−イル−)フェニル)−1,3,2−ジオキサボロラン(2.0g)、5’−ブロモ−3−メチル−2,2’−ビピリジン(1.2g)、Pd(PPh
3)
4(0.1g)、リン酸三カリウム(1.7g)、1,2,4−トリメチルベンゼン(20ml)、イソプロピルアルコール(5ml)および水(1ml)の入ったフラスコを還流温度で5時間撹拌した。反応液を室温まで冷却した後、水およびトルエンを加え分液した。溶媒を減圧留去して得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開液:トルエン/酢酸エチル)で精製した。この際、前記と同様に展開液中の酢酸エチルの比率を徐々に増加させて目的物を溶出させた。一旦減圧留去した後にトルエンに溶かし、活性炭ショートカラムに通した。溶媒を減圧留去し、酢酸エチル/ヘプタン混合溶媒で再沈殿させることで、式(1−157)で表される化合物:3−メチル−5’−(3−(10−(ナフタレン−1−イル)アントラセン−9−イル)フェニル)−2,2’−ビピリジン(0.9g)を得た。NMR測定により化合物の構造を確認した。
1H−NMR(CDCl
3):δ=9.06(dd,1H), 8.56(m,1H), 8.13(m,1H), 8.08(d,1H), 8.03(d,1H), 7.75−7.95(m,6H), 7.71(t,1H), 7.58−7.67(m,3H), 7.45−7.52(m,3H), 7.37(m,2H), 7.17−7.27(m,5H), 2.68(s,3H).
【0094】
原料の化合物を適宜変更することにより、上述した合成例に準じた方法で、本発明の他の誘導体化合物を合成することができる。
【0095】
以下、本発明をさらに詳細に説明するために、本発明の化合物を用いた有機EL素子の実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0096】
実施例1および比較例1〜2に係る素子を作製し、それぞれ、定電流駆動試験における駆動開始電圧(V)、初期値の90%以上の輝度を保持する時間(hr)の測定を行った。以下、実施例および比較例について詳細に説明する。
【0097】
作製した実施例1および比較例1〜2に係る素子における、各層の材料構成を下記表1に示す。
【表1】
【0098】
表1において、HIはN
4,N
4’−ジフェニル−N
4,N
4’−ビス(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン、HTはN−([1,1’−ビフェニル]−4−イル)−9,9−ジメチル−N−(4−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)フェニル)−9H−フルオレン−2−アミン、化合物(A)は9−([1,2’−ビナフタレン]−6’−イル)−10−フェニルアントラセン、化合物(B)は7,7−ジメチル−N
5,N
5,N
9,N
9−テトラフェニル−7H−ベンゾ〔C〕フルオレン−5,9−ジアミン、化合物(C)は6−(4−(10−(ナフタレン−1−イル)アントラセン−9−イル)フェニル)−2,4’−ビピリジン、化合物(D)は5−(3−(10−(ナフタレン−2−イル)アントラセン−9−イル)フェニル)−2,2’−ビピリジンである。電子輸送層と陰極の中間に形成する層に用いた「Liq」と共に以下に化学構造を示す。
【0099】
【化44】
【0100】
[実施例1]化合物(1−2)を電子輸送層に用いた素子
スパッタリングにより180nmの厚さに製膜したITOを150nmまで研磨した、26mm×28mm×0.7mmのガラス基板((株)オプトサイエンス製)を透明支持基板とした。この透明支持基板を市販の蒸着装置(昭和真空(株)製)の基板ホルダーに固定し、HIを入れたモリブデン製蒸着用ボート、HTを入れたモリブデン製蒸着用ボート、化合物(A)を入れたモリブデン製蒸着用ボート、化合物(B)を入れたモリブデン製蒸着用ボート、化合物(1−2)を入れたモリブデン製蒸着用ボート、Liqを入れたモリブデン製蒸着用ボート、マグネシウムを入れたモリブデンボート、および銀を入れたタングステン製蒸着用ボートを装着した。
【0101】
透明支持基板のITO膜の上に順次、下記各層を形成した。真空槽を5×10
−4Paまで減圧し、まず、HIが入った蒸着用ボートを加熱して膜厚40nmになるように蒸着して正孔注入層を形成し、次いで、HTが入った蒸着用ボートを加熱して膜厚30nmになるように蒸着して正孔輸送層を形成した。次に、化合物(A)が入った蒸着用ボートと化合物(B)の入った蒸着用ボートを同時に加熱して膜厚35nmになるように蒸着して発光層を形成した。化合物(A)と化合物(B)の重量比がおよそ95対5になるように蒸着速度を調節した。次に、化合物(1−2)の入った蒸着用ボートを加熱して膜厚20nmになるように蒸着して電子輸送層を形成した。各層の蒸着速度は0.01〜1nm/秒であった。
【0102】
その後、Liqが入った蒸着用ボートを加熱して膜厚1nmになるように0.01〜0.1nm/秒の蒸着速度で蒸着した。次いで、マグネシウムの入ったボートと銀の入ったボートを同時に加熱して膜厚100nmになるように蒸着して陰極を形成し、有機電界発光素子を得た。この時、マグネシウムと銀の原子数比が10対1となるように、蒸着速度を0.1〜10nm/秒の間で調節した。
【0103】
ITO電極を陽極、マグネシウム/銀電極を陰極として、直流電圧を印加すると、波長約458nmの青色発光が得られた。また、初期輝度2000cd/m
2を得るための電流密度により、定電流駆動試験を実施したところ、駆動試験開始電圧は5.15Vで、初期値の90%(1800cd/m
2)以上の輝度を保持する時間は137時間であった。
【0104】
[比較例1]
化合物(1−2)を化合物(C)に替えた以外は実施例1に準じた方法で有機EL素子を得た。ITO電極を陽極、マグネシウム/銀電極を陰極として、初期輝度2000cd/m
2を得るための電流密度により、定電流駆動試験を実施したところ、駆動試験開始電圧は3.84Vで、初期値の90%(1800cd/m
2)以上の輝度を保持する時間は26時間であった。
【0105】
[比較例2]
化合物(1−2)を化合物(D)に替えた以外は実施例1に準じた方法で有機EL素子を得た。ITO電極を陽極、マグネシウム/銀電極を陰極として、初期輝度2000cd/m
2を得るための電流密度により、定電流駆動試験を実施したところ、駆動試験開始電圧は4.96Vで、初期値の90%(1800cd/m
2)以上の輝度を保持する時間は86時間であった。
【0106】
以上の結果を表2にまとめた。
【表2】
【0107】
さらに実施例2〜4および比較例3に係る電界発光素子を作製し、それぞれ1000cd/m
2発光時の特性である電圧(V)および外部量子効率(%)を測定し、次に2000cd/m
2の輝度が得られる電流密度で定電流駆動した際に90%(1800cd/m
2)以上の輝度を保持する時間を測定した。以下、実施例および比較例について詳細に説明する。
【0108】
なお、発光素子の量子効率には、内部量子効率と外部量子効率とがあるが、発光素子の発光層に電子(または正孔)として注入される外部エネルギーが純粋に光子に変換される割合を示したものが内部量子効率である。一方、この光子が発光素子の外部にまで放出された量に基づいて算出されるものが外部量子効率であり、発光層において発生した光子は、その一部が発光素子の内部で吸収されたりあるいは反射され続けたりして、発光素子の外部に放出されないため、外部量子効率は内部量子効率よりも低くなる。
【0109】
外部量子効率の測定方法は次の通りである。アドバンテスト社製電圧/電流発生器R6144を用いて、素子の輝度が1000cd/m
2になる電流を印加して素子を発光させた。TOPCON社製分光放射輝度計SR−3ARを用いて、発光面に対して垂直方向から可視光領域の分光放射輝度を測定した。発光面が完全拡散面であると仮定して、測定した各波長成分の分光放射輝度の値を波長エネルギーで割ってπを掛けた数値が各波長におけるフォトン数である。次いで、観測した全波長領域でフォトン数を積算し、素子から放出された全フォトン数とした。印加電流値を素電荷で割った数値を素子へ注入したキャリア数として、素子から放出された全フォトン数を素子へ注入したキャリア数で割った数値が外部量子効率である。
【0110】
作製した実施例2〜4および比較例3に係る素子における、各層の材料構成を下記表3に示す。
【表3】
【0111】
表3において、「HAT−CN」は、1,4,5,8,9,12−ヘキサアザ−トリフェニレン−2,3,6,7,10,11−ヘキサカルボニトリルであり、「NPB」は、N
4,N
4’−ジナフタレン−1−イル−N
4,N
4’−ジフェニル−ビフェニル−4,4’−ジアミンであり、「BH1」は、9−フェニル−10−(4−フェニル−ナフタレン−1−イル)−アントラセンであり、「BD1」は、7,7−ジメチル−N
5,N
9−ジフェニル−N
5,N
9−ビス−(4−トリメチルシラニル−フェニル)−7H−ベンゾ[c]フルオレン−5,9−ジアミンである。以下に化学構造を示す。
【0112】
【化45】
【0113】
[実施例2]
<化合物(1−85)を電子輸送材料に用いた素子>
スパッタリングにより180nmの厚さに製膜したITOを150nmまで研磨した、26mm×28mm×0.7mmのガラス基板((株)オプトサイエンス製)を透明支持基板とした。この透明支持基板を市販の蒸着装置((株)昭和真空製)の基板ホルダーに固定し、HIを入れたモリブデン製蒸着用ボート、HAT−CNを入れたモリブデン製蒸着用ボート、NPBを入れたモリブデン製蒸着用ボート、BH1を入れたモリブデン製蒸着用ボート、BD1を入れたモリブデン製蒸着用ボート、本願発明の化合物(1−85)を入れたモリブデン製蒸着用ボート、Liqを入れたモリブデン製蒸着用ボート、マグネシウムを入れたモリブデンボート、および銀を入れたタングステン製蒸着用ボートを装着した。
【0114】
透明支持基板のITO膜の上に順次、下記各層を形成した。真空槽を5×10
−4Paまで減圧し、まず、HIが入った蒸着用ボートを加熱して膜厚60nmになるように蒸着し、さらにHAT−CNが入った蒸着用ボートを加熱して膜厚10nmになるように蒸着することで2層からなる正孔注入層を形成し、次いで、NPBが入った蒸着用ボートを加熱して膜厚10nmになるように蒸着して正孔輸送層を形成した。次に、BH1が入った蒸着用ボートとBD1の入った蒸着用ボートを同時に加熱して膜厚20nmになるように蒸着して発光層を形成した。BH1とBD1の重量比がおよそ95対5になるように蒸着速度を調節した。次に、化合物(1−85)の入った蒸着用ボートを加熱して膜厚30nmになるように蒸着して電子輸送層を形成した。各層の蒸着速度は0.01〜1nm/秒であった。
【0115】
その後、Liqが入った蒸着用ボートを加熱して膜厚1nmになるように0.01〜0.1nm/秒の蒸着速度で蒸着した。次いで、マグネシウムの入ったボートと銀の入ったボートを同時に加熱して膜厚100nmになるように蒸着して陰極を形成し、有機電界発光素子を得た。この時、マグネシウムと銀の原子数比が10対1となるように、蒸着速度を0.1〜10nm/秒の間で調節した。
【0116】
ITO電極を陽極、マグネシウム/銀電極を陰極として、直流電圧を印加し、1000cd/m
2発光時の特性を測定すると、駆動電圧は5.0V、外部量子効率は5.1%であった。また、初期輝度2000cd/m
2を得るための電流密度により、定電流駆動試験を実施したところ、初期値の90%(1800cd/m
2)以上の輝度を保持する時間は113時間であった。
【0117】
[実施例3]
化合物(1−85)を化合物(1−133)に替えた以外は実施例2に準じた方法で有機EL素子を得た。ITO電極を陽極、マグネシウム/銀電極を陰極として、直流電圧を印加し、1000cd/m
2発光時の特性を測定すると、駆動電圧は3.7V、外部量子効率は5.5%であった。また、初期輝度2000cd/m
2を得るための電流密度により、定電流駆動試験を実施したところ、初期値の90%(1800cd/m
2)以上の輝度を保持する時間は90時間であった。
【0118】
[実施例4]
化合物(1−85)を化合物(1−157)に替えた以外は実施例2に準じた方法で有機EL素子を得た。ITO電極を陽極、マグネシウム/銀電極を陰極として、直流電圧を印加し、1000cd/m
2発光時の特性を測定すると、駆動電圧は4.3V、外部量子効率は4.7%であった。また、初期輝度2000cd/m
2を得るための電流密度により、定電流駆動試験を実施したところ、初期値の90%(1800cd/m
2)以上の輝度を保持する時間は55時間であった。
【0119】
[比較例3]
化合物(1−85)を化合物(D)に替えた以外は実施例2に準じた方法で有機EL素子を得た。ITO電極を陽極、マグネシウム/銀電極を陰極として、直流電圧を印加し、1000cd/m
2発光時の特性を測定すると、駆動電圧は4.6V、外部量子効率は4.2%であった。また、初期輝度2000cd/m
2を得るための電流密度により、初期値の90%(1800cd/m
2)以上の輝度を保持する時間は40時間であった。
【0120】
下記表4は、上述した実施例2〜4および比較例3に係る電界発光素子の試験結果をまとめたものである。
【表4】
【0121】
さらに実施例5〜9および比較例4に係る電界発光素子を作製し、それぞれ1000cd/m
2発光時の特性である電圧(V)および外部量子効率(%)を測定し、次に2000cd/m
2の輝度が得られる電流密度で定電流駆動した際に90%(1800cd/m
2)以上の輝度を保持する時間を測定した。以下、実施例および比較例について詳細に説明する。
【0122】
作製した実施例5〜9および比較例4に係る素子における、各層の材料構成を下記表5に示す。なお、電子輸送層は下記表で挙げられた化合物と8−キノリノールリチウム(Liq)との混合物で形成した。
【表5】
【0123】
[実施例5]
<化合物(1−85)を電子輸送材料に用いた素子>
スパッタリングにより180nmの厚さに製膜したITOを150nmまで研磨した、26mm×28mm×0.7mmのガラス基板((株)オプトサイエンス製)を透明支持基板とした。この透明支持基板を市販の蒸着装置((株)昭和真空製)の基板ホルダーに固定し、HIを入れたモリブデン製蒸着用ボート、HAT−CNを入れたモリブデン製蒸着用ボート、NPBを入れたモリブデン製蒸着用ボート、BH1を入れたモリブデン製蒸着用ボート、BD1を入れたモリブデン製蒸着用ボート、本願発明の化合物(1−85)を入れたモリブデン製蒸着用ボート、Liqを入れたモリブデン製蒸着用ボート、マグネシウムを入れたモリブデンボートおよび銀を入れたタングステン製蒸着用ボートを装着した。
【0124】
透明支持基板のITO膜の上に順次、下記各層を形成した。真空槽を5×10
−4Paまで減圧し、まず、HIが入った蒸着用ボートを加熱して膜厚60nmになるように蒸着し、さらにHAT−CNが入った蒸着用ボートを加熱して膜厚10nmになるように蒸着することで2層からなる正孔注入層を形成し、次いで、NPBが入った蒸着用ボートを加熱して膜厚10nmになるように蒸着して正孔輸送層を形成した。次に、BH1が入った蒸着用ボートとBD1の入った蒸着用ボートを同時に加熱して膜厚20nmになるように蒸着して発光層を形成した。この時、BH1とBD1の重量比がおよそ95対5になるように蒸着速度を調節した。次に、化合物(1−85)の入った蒸着用ボートとLiqの入った蒸着用ボートを同時に加熱して膜厚30nmになるように蒸着して電子輸送層を形成した。この時、化合物(1−85)とLiqの重量比がおよそ1対1になるように蒸着速度を調節した。各層の蒸着速度は0.01〜1nm/秒であった。
【0125】
その後、Liqが入った蒸着用ボートを加熱して膜厚1nmになるように0.01〜0.1nm/秒の蒸着速度で蒸着した。次いで、マグネシウムの入ったボートと銀の入ったボートを同時に加熱して膜厚100nmになるように蒸着して陰極を形成し、有機電界発光素子を得た。この時、マグネシウムと銀の原子数比が10対1となるように、蒸着速度を0.1〜10nm/秒の間で調節した。
【0126】
ITO電極を陽極、マグネシウム/銀電極を陰極として、直流電圧を印加し、1000cd/m
2発光時の特性を測定すると、駆動電圧は3.5V、外部量子効率は4.2%であった。また、初期輝度2000cd/m
2を得るための電流密度により、定電流駆動試験を実施したところ、初期値の90%(1800cd/m
2)以上の輝度を保持する時間は80時間であった。
【0127】
[実施例6]
化合物(1−85)を化合物(1−97)に替えた以外は実施例5に準じた方法で有機EL素子を得た。ITO電極を陽極、マグネシウム/銀電極を陰極として、直流電圧を印加し、1000cd/m
2発光時の特性を測定すると、駆動電圧は3.4V、外部量子効率は4.1%であった。また、初期輝度2000cd/m
2を得るための電流密度により、定電流駆動試験を実施したところ、初期値の90%(1800cd/m
2)以上の輝度を保持する時間は113時間であった。
【0128】
[実施例7]
化合物(1−85)を化合物(1−133)に替えた以外は実施例5に準じた方法で有機EL素子を得た。ITO電極を陽極、マグネシウム/銀電極を陰極として、直流電圧を印加し、1000cd/m
2発光時の特性を測定すると、駆動電圧は3.5V、外部量子効率は5.7%であった。また、初期輝度2000cd/m
2を得るための電流密度により、定電流駆動試験を実施したところ、初期値の90%(1800cd/m
2)以上の輝度を保持する時間は111時間であった。
【0129】
[実施例8]
化合物(1−85)を化合物(1−145)に替えた以外は実施例5に準じた方法で有機EL素子を得た。ITO電極を陽極、マグネシウム/銀電極を陰極として、直流電圧を印加し、1000cd/m
2発光時の特性を測定すると、駆動電圧は3.6V、外部量子効率は4.0%であった。また、初期輝度2000cd/m
2を得るための電流密度により、定電流駆動試験を実施したところ、初期値の90%(1800cd/m
2)以上の輝度を保持する時間は125時間であった。
【0130】
[実施例9]
化合物(1−85)を化合物(1−157)に替えた以外は実施例5に準じた方法で有機EL素子を得た。ITO電極を陽極、マグネシウム/銀電極を陰極として、直流電圧を印加し、1000cd/m
2発光時の特性を測定すると、駆動電圧は3.5V、外部量子効率は4.2%であった。また、初期輝度2000cd/m
2を得るための電流密度により、定電流駆動試験を実施したところ、初期値の90%(1800cd/m
2)以上の輝度を保持する時間は160時間であった。
【0131】
[比較例4]
化合物(1−85)を化合物(C)に替えた以外は実施例5に準じた方法で有機EL素子を得た。ITO電極を陽極、マグネシウム/銀電極を陰極として、直流電圧を印加し、1000cd/m
2発光時の特性を測定すると、駆動電圧は3.4V、外部量子効率は3.4%であった。また、初期輝度2000cd/m
2を得るための電流密度により、定電流駆動試験を実施したところ、初期値の90%(1800cd/m
2)以上の輝度を保持する時間は45時間であった。
【0132】
下記表6は、上述した実施例5〜9および比較例4に係る電界発光素子の試験結果をまとめたものである。
【表6】