特許第6136473号(P6136473)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6136473
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】光変調装置
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/035 20060101AFI20170522BHJP
【FI】
   G02F1/035
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-75400(P2013-75400)
(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2014-199370(P2014-199370A)
(43)【公開日】2014年10月23日
【審査請求日】2015年1月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100171583
【弁理士】
【氏名又は名称】梅景 篤
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 徳一
(72)【発明者】
【氏名】片岡 利夫
(72)【発明者】
【氏名】細川 洋一
【審査官】 佐藤 宙子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−185979(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0227666(US,A1)
【文献】 特開平03−269402(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00−1/125,1/21−7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気光学効果を有する基板に設けられた光導波路素子部と、前記光導波路素子部に電気信号を入力する中継基板部とを備え、前記光導波路素子部における光導波路の分岐導波路上に第1マッハツェンダ部及び第2マッハツェンダ部がそれぞれ設けられたネスト型構造を有する光変調装置であって、
前記光導波路素子部は、
前記第1マッハツェンダ部を構成する第1光導波路と、
前記第1光導波路に沿って設けられ、前記第1光導波路を導波する光波と相互作用する第1相互作用部と、
前記第1相互作用部へ電気信号を入力する第1EO基板線路と、
前記第2マッハツェンダ部を構成する第2光導波路と、
前記第2光導波路に沿って設けられ、前記第2光導波路を導波する光波と相互作用する第2相互作用部と、
前記第2相互作用部へ電気信号を入力する第2EO基板線路と、
を備え、
前記中継基板部は、
前記第1EO基板線路に接続され、前記第1EO基板線路に前記電気信号を伝達する第1中継基板線路と、
前記第2EO基板線路に接続され、前記第2EO基板線路に前記電気信号を伝達する第2中継基板線路と、
電気損失を増大させる損失調整部と、
を備え、
前記第1EO基板線路と前記第2EO基板線路とは互いに電気長が異なり、
前記第1EO基板線路及び前記第1中継基板線路の組における合計の電気長と、前記第2EO基板線路及び前記第2中継基板線路の組における合計の電気長とは互いに略等しく、
前記第1EO基板線路及び前記第1中継基板線路の組における合計の電気損失と、前記第2EO基板線路及び前記第2中継基板線路の組における合計の電気損失とが互いに略等しくなるように、少なくとも電気損失が低い方の組における前記第1中継基板線路又は前記第2中継基板線路に前記損失調整部を設ける、
光変調装置。
【請求項2】
前記損失調整部は、前記第1EO基板線路、前記第2EO基板線路、前記第1中継基板線路及び第2中継基板線路とは損失が異なる電気配線で構成される、請求項1に記載の光変調装置。
【請求項3】
前記損失調整部は、集中定数回路によって構成される、請求項1に記載の光変調装置。
【請求項4】
前記損失調整部は、分布定数回路によって構成される、請求項1に記載の光変調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光変調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光変調装置は、多値変調や偏波合成に対応するために、光波と相互作用して光波を変調する複数の相互作用部を備えている。各相互作用部には、相互作用部毎にそれぞれ設けられた電気配線を介して、光波を変調するための電気信号が供給される。このように、光変調装置が複数の相互作用部を備える場合、各相互作用部へ入力される電気信号の状態等を同じとするために、相互作用部までの電気配線の電気長を揃えることや、相互作用部毎に設けられた電気配線の電気損失を互いに同じとすることが要求される。
【0003】
例えば、特許文献1に記載された光変調装置は、複数の相互作用部(変調部)と、各相互作用部に電気信号を供給する複数の電気配線とが設けられる光導波路素子部を備えている。また、これらの電気配線のうち、高損失となる配線の厚みを厚くして伝播損失を低減し、各電気配線で損失を同じとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−185979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電極で損失調整するためには、電極の断面構造を変える必要がある。同一基板上に電気配線を構成している場合には、損失の低い電極構成は他の電極構造と比べ信号電極幅を大きくするか、信号電極と接地電極との間隔を広げる必要があり、電極構造自体が大きくなってしまう。この場合、電気配線間のクロストークが発生しやすくなるため、特性の劣化を抑制するためには電気配線間隔を大きくし、基板サイズを大きくする必要が出てしまう。
【0006】
変調部の集積が進み、一つの変調器が多数の変調部を有し、それぞれの長さが異なる場合には、配線部分に非常に多くの種類の電気配線構造が必要となり、前述した電極間のクロストークや、曲げ損失などに対し、それぞれの構造に対応した対策を考慮する必要があり、設計が非常に複雑になる。
【0007】
ここで、光変調装置においては、相互作用部が設けられる光導波路素子部のより一層の小型化が求められている。このため、光導波路素子部に、特許文献1に記載された光変調装置のように高損失となる電気配線の伝播損失を低減する機構を組み入れることが困難となるが、この機構を組み入れない場合には各電気配線で損失を互いに同じとすることができない。
【0008】
そこで、本発明は、光導波路素子部を小型化しつつ、複数の相互作用部にそれぞれ電気信号を供給する複数の配線同士の相互作用部までの電気配線の電気長及び電気損失を同じとすることができる光変調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の光変調装置は、電気光学効果を有する基板に設けられた光導波路素子部と、光導波路素子部に電気信号を入力する中継基板部とを備え、光導波路素子部における光導波路の分岐導波路上に第1マッハツェンダ部及び第2マッハツェンダ部がそれぞれ設けられたネスト型構造を有する光変調装置である。光導波路素子部は、第1マッハツェンダ部を構成する第1光導波路と、第1光導波路に沿って設けられ、第1光導波路を導波する光波と相互作用する第1相互作用部と、第1相互作用部へ電気信号を入力する第1EO基板線路と、第2マッハツェンダ部を構成する第2光導波路と、第2光導波路に沿って設けられ、第2光導波路を導波する光波と相互作用する第2相互作用部と、第2相互作用部へ電気信号を入力する第2EO基板線路と、を備える。中継基板部は、第1EO基板線路に接続され、第1EO基板線路に電気信号を伝達する第1中継基板線路と、第2EO基板線路に接続され、第2EO基板線路に電気信号を伝達する第2中継基板線路と、電気損失を増大させる損失調整部と、を備える。第1EO基板線路と第2EO基板線路とは互いに電気長が異なる。第1EO基板線路及び第1中継基板線路の組における合計の電気長と、第2EO基板線路及び第2中継基板線路の組における合計の電気長とは互いに略等しい。第1EO基板線路及び第1中継基板線路の組における合計の電気損失と、第2EO基板線路及び第2中継基板線路の組における合計の電気損失とが互いに略等しくなるように、少なくとも電気損失が低い方の組における第1中継基板線路又は第2中継基板線路に損失調整部を設ける。
【0010】
この光変調装置によれば、中継基板部に設けられた損失調整部が、第1EO基板線路及び第1中継基板線路の組における合計の電気損失と、第2EO基板線路及び第2中継基板線路の組における合計の電気損失とが互いに略等しくなるように、少なくとも電気損失が低い方の組における第1中継基板線路又は第2中継基板線路の電気損失を増大させる。このように、電気損失を増大させる損失調整部が中継基板部に設けられているので、複数の相互作用部にそれぞれ電気信号を供給する複数の配線同士の電気損失を同じとしつつ、光導波路素子部を小型化することができる。
【0011】
損失調整部を、第1EO基板線路、第2EO基板線路、第1中継基板線路及び第2中継基板線路とは損失が異なる線路で構成してもよい。この場合には、第1EO基板線路、第2EO基板線路、第1中継基板線路及び第2中継基板線路とは損失が異なる電気配線により、電気損失を容易に増大させることができる。
【0012】
損失調整部を、集中定数回路、又は、分布定数回路によって構成してもよい。このように、集中定数回路又は分布乗数回路を用いることで、電気損失をより好適に増大させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、光導波路素子部を小型化しつつ、複数の相互作用部にそれぞれ電気信号を供給する複数の配線同士の電気損失を同じとすることができる。
【0015】
また、本発明によれば、配線の一部にのみ損失調整部を設けるため、その他の配線部分は共通の設計ルールを適用することが可能になり、変調器の電極や中継基板の設計が容易になる。
【0016】
また、本発明によれば、損失調整部以外の電極(電気配線)には配線小型化に有利な電極構造を選択することが容易になり、デバイスの小型化に効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】一実施形態、第1変形例及び第2変形例に係る光変調装置の構成を概略的に示す図である。
図2図1の損失調整部の構成を示す図である。
図3】第1変形例における損失調整部の回路構成を示す図であり、(a)はコイルと抵抗器とによって構成される回路、(b)は抵抗器とコンデンサとによって構成される回路、(c)はコイルと抵抗器とコンデンサとによって構成される回路を示す。
図4】第1変形例における電気配線1、電気配線2及び損失調整部の電気損失の特性を示す図である。
図5】第2変形例における損失調整部の概略構成を示す図である。
図6】第2変形例における電気配線1、電気配線2及び損失調整部の電気損失の特性を示す図である。
図7】第3及び第4変形例に係る光変調装置の構成を概略的に示す図である。
図8】第3変形例における損失調整部の回路構成を示す図であり、(a)はコイルと抵抗器とによって構成される回路、(b)は抵抗器とコンデンサとによって構成される回路、(c)はコイルと抵抗器とコンデンサとによって構成される回路、(d)及び(e)は抵抗器によって構成される回路を示す。
図9】第3変形例における電気配線1、電気配線2及び損失調整部の電気損失の特性を示す図である。
図10】第4変形例における電気配線1、電気配線2及び損失調整部の電気損失の特性を示す図である。
図11】第5変形例における損失調整部の概略構成を示す図である。
図12】第6変形例における損失調整部の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0019】
図1に示すように、光変調装置1は、光ファイバF1によって導入された光波を変調して、光ファイバF2に変調光を出力する光デバイスである。光変調装置1は、光入力部2、中継基板部3、光導波路素子部4、終端基板部5、光出力部6、及び、筐体10を含んで構成される。
【0020】
筐体10は、一方向(以下、「方向A」という。)に延びる箱型の部材であって、例えばステンレス鋼から構成されている。筐体10は、方向Aにおける両端面である一端面10a及び他端面10bを有する。一端面10aには光ファイバF1を挿入するための開口が設けられている。他端面10bには光ファイバF2を挿入するための開口が設けられている。筐体10は、例えば、光入力部2、中継基板部3、光導波路素子部4、終端基板部5及び光出力部6を収容する。
【0021】
光入力部2は、光ファイバF1によって導入される光波を光導波路素子部4に供給する。光入力部2は、光ファイバF1と光導波路素子部4との接続を補助するための補助部材を備えていても良い。
【0022】
光導波路素子部4は、中継基板部3から出力される電気信号(変調信号)に応じて、光入力部2から入力される光波を変調光に変換し、光波を合成する。光導波路素子部4は、光導波路基板41、複数の光導波路42、及び、相互作用部43を含んで構成される。光導波路基板41は、例えばリチウムナイオベート(LiNbO、以下「LN」という。)などの電気光学効果を有する材料から構成されている。光導波路基板41は方向Aに沿って延びており、方向Aにおける両端部である一端部41a及び他端部41bを有する。
【0023】
光導波路42は、光導波路基板41上に設けられている。光導波路42は、例えばマッハツェンダ(Mach-Zehnder)型の光導波路であって、光導波路素子部4の変調方式に応じた構造を有する。この例では、DQPSK(Differential Quadrature Phase Shift Keying:差動4値位相変調)変調などで用いられるネスト型変調器の構成を用いている。この場合、光導波路42は、マッハツェンダ部420の2つの分岐導波路上に、第1マッハツェンダ部421及び第2マッハツェンダ部422が設けられた構造を有する。
【0024】
マッハツェンダ部420の入力導波路42aは光導波路基板41の一端部41aから方向Aに沿って延び、分岐されて第1マッハツェンダ部421の入力端及び第2マッハツェンダ部422の入力端にそれぞれ接続されている。マッハツェンダ部420の出力導波路42bでは、マッハツェンダ部421の出力端及び第2マッハツェンダ部422の出力端から延びる導波路が合流して方向Aに沿って他端部41bまで延びている。
【0025】
第1マッハツェンダ部421には、方向Aに沿って延びる光導波路(第1光導波路)421a及び421bが設けられ。第2マッハツェンダ部422には、方向Aに沿って延びる光導波路(第2光導波路)422a及び422bが設けられる。
【0026】
相互作用部43は、第1相互作用部431と、第2相互作用部432とを備える。第1相互作用部431は、第1マッハツェンダ部421に設けられた光導波路421a及び421bに沿って延び、光導波路421a及び421bを導波する光波と相互作用する。
【0027】
第1相互作用部431は、光導波路基板41上に設けられ、電気信号に応じた電界を光導波路421a及び光導波路421bに印加する。この電界により光導波路421a及び421bを伝播する光に対し変調作用が及ぶ。第1相互作用部431は、主に金(Au)などで形成される。また、光導波路基板41には、中継基板部3からの電気信号を第1相互作用部431に入力する第1EO基板線路431Aと、第1相互作用部431からの電気信号を終端基板部5に出力する第1出力配線部431Bとが設けられる。
【0028】
更に、光導波路基板41には、第1相互作用部431とによって光導波路421aを挟み込むように配置された第1接地電極部431Cと、第1相互作用部431とによって光導波路421bを挟み込むように配置された第1接地電極部431Dとが設けられる。第1接地電極部431Cの一端は、中継基板部3の第1中継基板3Aに設けられた第1接地電極部31Aに接続され、第1接地電極部431Cの他端は、終端基板部5の第1終端基板5Aに設けられた第1接地電極部51Aに接続される。同様に、第1接地電極部431Dの一端は、中継基板部3の第1中継基板3Aに設けられた第1接地電極部31Bに接続され、第1接地電極部431Dの他端は、終端基板部5の第1終端基板5Aに設けられた第1接地電極部51Bに接続される。
【0029】
第2相互作用部432は、第2マッハツェンダ部422に設けられた光導波路422a及び422bに沿って延び、光導波路422a及び422bを導波する光波と相互作用する。
【0030】
第2相互作用部432は、光導波路基板41上に設けられ、電気信号に応じた電界を光導波路422a及び422bに印加する。この電界により光導波路422a及び422bを伝播する光に対し変調作用が及ぶ。第2相互作用部432は、主に金(Au)などで形成される。また、光導波路基板41には、中継基板部3からの電気信号を第2相互作用部432に入力する第2EO基板線路432Aと、第2相互作用部432からの電気信号を終端基板部5に出力する第2出力配線部432Bとが設けられる。
【0031】
更に、光導波路基板41には、第2相互作用部432とによって光導波路422aを挟み込むように配置された第2接地電極部432Cと、第2相互作用部432とによって光導波路422bを挟み込むように配置された第2接地電極部432Dとが設けられる。第2接地電極部432Cの一端は、中継基板部3の第2中継基板3Bに設けられた第2接地電極部32Aに接続され、第2接地電極部432Cの他端は、終端基板部5の第2終端基板5Bに設けられた第2接地電極部52Aに接続される。同様に、第2接地電極部432Dの一端は、中継基板部3の第2中継基板3Bに設けられた第2接地電極部32Bに接続され、第2接地電極部432Dの他端は、終端基板部5の第2終端基板5Bに設けられた第2接地電極部52Bに接続される。
【0032】
このように、第1マッハツェンダ部421及び第2マッハツェンダ部422は、いわゆる、Xカット板を使用したQPSK変調器を構成する。
【0033】
光入力部2から光導波路素子部4に入力される光波は、入力導波路42aによって第1マッハツェンダ部421及び第2マッハツェンダ部422に分岐して入力される。分岐された光波は、第1マッハツェンダ部421及び第2マッハツェンダ部422を通過する際に、相互作用部43に供給された電気信号によりそれぞれ変調される。第1マッハツェンダ部421において変調された変調光及び第2マッハツェンダ部422において変調された変調光は、不図示の位相差付与手段により90度の位相差を付与され、出力導波路42bにおいて合波されて光導波路素子部4から出力される。
【0034】
中継基板部3は、外部から供給される電気信号(一般的に5〜8V)を中継して光導波路素子部4に出力する。中継基板部3には、例えば筐体10の側面10cに設けられた電気信号入力用のコネクタを介して電気信号が入力される。より詳細には、中継基板部3は、第1中継基板3A、及び、第2中継基板3Bを備える。
【0035】
第1中継基板3Aには、第1中継基板線路31、第1接地電極部31A、第1接地電極部31B、及び、損失調整部100が設けられる。第1中継基板線路31は、光導波路基板41に設けられた第1EO基板線路431Aに接続され、電気信号を第1EO基板線路431Aに伝達する。第1接地電極部31A及び31Bは、それぞれ、光導波路基板41に設けられた第1接地電極部431C及び431Dに接続される。
【0036】
損失調整部100は、第1中継基板線路31によって伝達される電気信号の電気損失を増大させる。損失調整部100について、詳しくは後述する。
【0037】
第2中継基板3Bには、第2中継基板線路32、第2接地電極部32A、及び、第2接地電極部32Bが設けられる。第2中継基板線路32は、光導波路基板41に設けられた第2EO基板線路432Aに接続され、電気信号を第2EO基板線路432Aに伝達する。第2接地電極部32A及び32Bは、それぞれ、光導波路基板41に設けられた第2接地電極部432C及び432Dに接続される。
【0038】
終端基板部5は、光導波路素子部4に入力される電気信号の電気的終端である。終端基板部5は、第1終端基板5A、及び、第2終端基板5Bを備える。第1終端基板5Aには、第1接地電極部51A、第1接地電極部51B、及び、第1終端基板線路51が設けられる。第1接地電極部51A及び51Bは、それぞれ、光導波路基板41に設けられた第1接地電極部431C及び431Dに接続される。第1終端基板線路51は、第1出力配線部431Bに接続され、第1出力配線部431Bからの電気信号が出力される。
【0039】
第2終端基板5Bには、第2接地電極部52A、第2接地電極部52B、及び、第2終端基板線路52が設けられる。第2接地電極部52A及び52Bは、それぞれ、光導波路基板41に設けられた第2接地電極部432C及び432Dに接続される。第2終端基板線路52は、第2出力配線部432Bに接続され、第2出力配線部432Bからの電気信号が出力される。
【0040】
ここで、第1EO基板線路431Aと、第2EO基板線路432Aとは、互いに電気長が異なっている。本実施形態において、第1EO基板線路431Aは、第2EO基板線路432Aよりも電気長が短い。また、第1EO基板線路431A及び第1中継基板線路31の組における合計の電気長と、第2EO基板線路432A及び第2中継基板線路32の組における合計の電気長とは互いに略等しい。
【0041】
光出力部6は、光導波路素子部4から出力される変調光を光ファイバF2に出力する。光出力部6は、光導波路基板41の他端部41bに設けられている。
【0042】
次に、損失調整部100の詳細について説明する。損失調整部100は、第1EO基板線路431A及び第1中継基板線路31の組と、第2EO基板線路432A及び第2中継基板線路32の組とのうち、電気損失が低い方の組における第1中継基板線路31又は第2中継基板線路32に設けられる。本実施形態では、第1EO基板線路431A及び第1中継基板線路31の組の合計の電気損失が、第2EO基板線路432A及び第2中継基板線路32の組の合計の電気損失よりも小さい。このため、損失調整部100は、第1中継基板線路31に設けられる。
【0043】
損失調整部100は、第1EO基板線路431A及び第1中継基板線路31の組の合計の電気損失と、第2EO基板線路432A及び第2中継基板線路32の組の合計の電気損失とが同じとなるように、第1中継基板線路31の電気損失を増大させる。
【0044】
損失調整部100の構成を図2に示す。図2に示すように、損失調整部100を、第1中継基板線路31の電気配線の一部の幅を細くした(断面積を小さくした)絞込部100aと、第1接地電極部31A及び31Bのうち、絞込部100aに隣接する部位の幅を広くした(断面積を大きくした)幅広部100bとによって構成することができる。
【0045】
絞込部100aを設けることで、第1中継基板線路31の電気損失が大きくなる。また、第1EO基板線路431A及び第1中継基板線路31の組の合計の電気損失が、第2EO基板線路432A及び第2中継基板線路32の組の合計の電気損失と同じとなるように、絞込部100a及び幅広部100bの形状が設定される。
【0046】
本実施形態は以上のように構成され、第1EO基板線路431A及び第1中継基板線路31の組の合計の電気損失が、第2EO基板線路432A及び第2中継基板線路32の組の合計の電気損失と同じとなるように、電気損失を増大させる損失調整部100を中継基板部3に設ける。これにより、第1相互作用部431及び第2相互作用部432にそれぞれ電気信号を供給する配線同士の電気損失を同じとしつつ、光導波路素子部4を小型化することができる。
【0047】
第1中継基板線路31の電気配線の幅を狭くする等によって損失調整部100を構成する、即ち、第1中継基板線路31とは異なる線種を用いることで損失調整部100を構成することで、容易に電気損失を増大させることができる。
【0048】
また、中継基板部3を第1中継基板3Aと、第2中継基板3Bとによって構成し、それぞれの基板に第1中継基板線路31と、第2中継基板線路32とを設ける。これにより、第1中継基板線路31及び第2中継基板線路32間でのクロストークを抑制することができる。但し、中継基板部3を第1中継基板3Aと第2中継基板3Bとによって構成することは必須ではなく、一つの基板によって構成してもよい。同様に、終端基板部5を第1終端基板5Aと、第2終端基板5Bとによって構成し、それぞれの基板に第1終端基板線路51と、第2終端基板線路52とを設ける。これにより、第1終端基板線路51及び第2終端基板線路52間でのクロストークを抑制することができる。但し、終端基板部5を第1終端基板5Aと第2終端基板5Bとによって構成することは必須ではなく、一つの基板によって構成してもよい。
【0049】
(第1変形例)
次に、損失調整部の第1変形例について説明する。第1変形例では、損失調整部100A(図1参照)として集中定数回路を用いる。また、損失調整部100Aとして、周波数が高くなるにしたがって、損失が増加する回路を用いる。より詳細には、損失調整部100Aを、図3(a)に示すようにコイルと抵抗器とによって構成される回路、図3(b)に示すように抵抗器とコンデンサとによって構成される回路、図3(c)に示すようにコイルと抵抗器とコンデンサとによって構成される回路、或は、これらの回路の組み合わせによって構成することができる。
【0050】
ここで、図4において、第1EO基板線路431A及び第1中継基板線路31の組(以下「電気配線1」ともいう)の合計の電気損失の特性L1と、第2EO基板線路432A及び第2中継基板線路32の組(以下「電気配線2」ともいう)の合計の電気損失の特性L2とを示す。電気配線1及び電気配線2の電気損失は、周波数が高くなるにしたがって大きくなる。本変形例では、電気配線1における電気損失(特性L1)と損失調整部100Aにおける電気損失(図4の特性X1)との合計の電気損失が、電気配線2の電気損失(特性L2)となるように、損失調整部100Aの回路構成を選択する。このように、コイル、抵抗器及びコンデンサの少なくともいずれかを用いた集中定数回路によって損失調整部100Aを構成することで、電気損失をより好適に増大させることができる。
【0051】
(第2変形例)
次に、損失調整部の第2変形例について説明する。第2変形例では、損失調整部100B(図1参照)として分布定数回路を用いる。より詳細には、損失調整部100Bとして、図5に示すように、第1中継基板線路31、第1接地電極部31A及び31Bの一部に、他の領域とは異なるインピーダンスを有する領域を形成する(インピーダンスZ1とインピーダンスZ2とが異なっていればよく、Z2はZ1よりも大きくても小さくてよい。)。
【0052】
この分布定数回路を用いた損失調整部100Bは、インピーダンス差によって発生する反射を利用して電気損失を調整する。損失調整部100Bでは、インピーダンスの大小関係が同じ反射が2回生じるため、反射による位相変化は無反射成分と反射成分の間で同相関係となる。このため、DCの透過が最大で周波数と調整部の長さに応じて透過特性が変化する損失調整部100Bを構成することができる。ここでの透過特性は、無反射成分と反射成分とを合成したものとなる。
【0053】
ここで、図6において、第1EO基板線路431A及び第1中継基板線路31の組(電気配線1)の合計の電気損失の特性L1と、第2EO基板線路432A及び第2中継基板線路32の組(電気配線2)の合計の電気損失の特性L2と、損失調整部100Bの電気損失の特性X2とを示す。本変形例では、電気配線1における電気損失(特性L1)と損失調整部100Bにおける電気損失(図6の特性X2)との合計の電気損失が、電気配線2の電気損失(特性L2)となるように、損失調整部100Bを形成する。なお、損失調整部100Bは、調整部分の電気配線のインピーダンスと調整部分の長さを変えることにより、周波数に対する電気損失の傾きの調整が可能である。このように、分布定数回路によって損失調整部100Bを構成することで、電気損失をより好適に増大させることができる。
【0054】
(第3変形例)
次に、損失調整部の第3変形例について説明する。第3変形例では、図7に示すように、光変調装置1Aの第1中継基板線路31に損失調整部100Cを設け、更に、光変調装置1Aの第2中継基板線路32に損失調整部200Cを設けるものである。損失調整部100C及び200Cは、いずれも電気損失を増大させるものである。
【0055】
損失調整部200Cは、周波数特性を有する損失調整部であり、周波数が高くなるに従って、電気損失が低下する。具体的には、損失調整部200Cは、図8(a)に示すようにコイルと抵抗器とによって構成される回路、図8(b)に示すように抵抗器とコンデンサとによって構成される回路、図8(c)に示すようにコイルと抵抗器とコンデンサとによって構成される回路、或は、これらの回路の組み合わせによって構成することができる。
【0056】
損失調整部100Cは、周波数特性を有さない、固定減衰量の損失調整部である。具体的には、損失調整部100Cを、図8(d)及び図8(e)に示すように、複数の抵抗器によって構成することができる。
【0057】
図9に、第1EO基板線路431A及び第1中継基板線路31の組(電気配線1)の合計の電気損失の特性L1と、第2EO基板線路432A及び第2中継基板線路32の組(電気配線2)の合計の電気損失の特性L2と、損失調整部100Cの電気損失の特性X3と、損失調整部200Cの電気損失の特性X4とを示す。本変形例では、電気配線1における電気損失(特性L1)と損失調整部100Cとにおける電気損失(特性X3)との合計の電気損失が、電気配線2の電気損失(特性L2)と損失調整部200Cにおける電気損失(特性X4)との合計の電気損失となるように、損失調整部100Cの回路構成及び損失調整部200Cの回路構成を選択する。
【0058】
このように、第1中継基板線路31の電気損失を増大させる損失調整部100Cと、第2中継基板線路32の電気損失を増大させる損失調整部200Cとを設けることで、電気配線1と電気配線2とにおける電気損失を好適に略等しくすることができる。従って、電気配線1及び電気配線2間の特性差を抑制しながら、より平坦な周波数特性を有する光変調装置を実現することができる。
【0059】
(第4変形例)
次に、損失調整部の第4変形例について説明する。第4変形例では、図7に示すように、光変調装置1Bの第1中継基板線路31に損失調整部100Dを設け、更に、光変調装置1Bの第2中継基板線路32に損失調整部200Dを設けるものである。損失調整部100D及び200Dは、いずれも電気損失を増大させるものである。
【0060】
損失調整部100D及び200Dは、周波数特性を有する損失調整部であり、周波数が高くなるに従って、電気損失が低下する。また、損失調整部100Dと、損失調整部200Dとは、周波数の変化に対する電気損失の変化が、互いに異なる。具体的には、損失調整部100D及び200Dを、図8(a)に示すようにコイルと抵抗器とによって構成される回路、図8(b)に示すように抵抗器とコンデンサとによって構成される回路、図8(c)に示すようにコイルと抵抗器とコンデンサとによって構成される回路、或は、これらの回路の組み合わせによって構成することができる。
【0061】
図10に、第1EO基板線路431A及び第1中継基板線路31の組(電気配線1)の合計の電気損失の特性L1と、第2EO基板線路432A及び第2中継基板線路32の組(電気配線2)の合計の電気損失の特性L2と、損失調整部100Dの電気損失の特性X5と、損失調整部200Dの電気損失の特性X6とを示す。本変形例では、電気配線1における電気損失(特性L1)と損失調整部100Dとにおける電気損失(特性X5)との合計の電気損失が、電気配線2の電気損失(特性L2)と損失調整部200Dにおける電気損失(特性X6)との合計の電気損失となるように、損失調整部100Dの回路構成及び損失調整部200Dの回路構成を選択する。
【0062】
このように、第1中継基板線路31の電気損失を増大させる損失調整部100Dと、第2中継基板線路32の電気損失を増大させる損失調整部200Dとを設けることで、電気配線1と電気配線2とにおける電気損失を好適に略等しくすることができる。従って、電気配線1及び電気配線2間の特性差を抑制しながら、より平坦な周波数特性を有する光変調装置を実現することができる。
【0063】
(第5変形例)
図1を用いて説明した実施形態では、電気損失を増大させる損失調整部100を用いたが、第1EO基板線路431A及び第1中継基板線路31の組(電気配線1)の合計の電気損失が、第2EO基板線路432A及び第2中継基板線路32の組(電気配線2)の合計の電気損失よりも大きい場合には、図11に示すように、第1中継基板線路31の電気損失を低下させる損失調整部101を設けてもよい。
【0064】
具体的には、図11に示すように損失調整部101を、第1中継基板線路31の電気配線の一部の幅を太くした幅広部101aと、第1接地電極部31A及び31Bのうち、幅広部101aに隣接する部位の幅を狭くした絞込部101bとによって構成することができる。
【0065】
幅広部101aを設けることで、第1中継基板線路31の電気損失が小さくなる。また、第1EO基板線路431A及び第1中継基板線路31の組の合計の電気損失が、第2EO基板線路432A及び第2中継基板線路32の組の合計の電気損失と同じとなるように、幅広部101a及び絞込部101bの形状が設定される。この場合であっても、第1相互作用部431及び第2相互作用部432にそれぞれ電気信号を供給する配線同士の電気損失を同じとしつつ、光導波路素子部4を小型化することができる。
【0066】
(第6変形例)
次に、第6変形例について説明する。第6変形例は、第5変形例の損失調整部100Eの構成を変更したものである。具体的には、図12に示すように、損失調整部102として、第1中継基板線路31の電気配線の一部の幅を太くした幅広部102aを設ける。更に、第1接地電極部31Aのうち、幅広部101aに隣接する部位を除去することでギャップ部102bを設ける。
【0067】
幅広部102aを設けることで、第1中継基板線路31の電気損失が小さくなる。また、ギャップ部102bを設けることで、電気力線が広がる空間が大きくなる(ギャップ間隔が広がる)。このため、損失調整部102において、第1中継基板線路31の電気損失を小さくすることができる。損失調整部102の幅広部102aとギャップ部102bとは、第1EO基板線路431A及び第1中継基板線路31の組の合計の電気損失が、第2EO基板線路432A及び第2中継基板線路32の組の合計の電気損失と同じとなるように、これらの形状等が設定される。この場合であっても、第1相互作用部431及び第2相互作用部432にそれぞれ電気信号を供給する配線同士の電気損失を同じとしつつ、光導波路素子部4を小型化することができる。
【0068】
以上、本発明の一実施形態及び種々の変形例について説明したが、本発明は、上記実施形態及び変形例に限定されるものではない。例えば、光導波路素子部4として、いわゆる、Zカット板を使用した変調器を用いることができる。また、光導波路素子部4として、マッハツェンダ型の光導波路構造を有するものを用いたが、これ以外の構造の光導波路を用いることもできる。
【0069】
上記実施形態及び種々の変形例では、第1相互作用部431及び第2相互作用部432に供給される2本の配線の電気損失を略等しくするものとしたが、3つ以上の信号電極部と、各信号電極部に電気信号を供給する3つ以上信号電極部とが設けられている場合、上述した損失調整部100等を用いて、少なくとも2以上の電気損失を互いに略等しくすることができる。この場合であっても、上述した場合と同様の効果を得ることができる。
【0070】
上記実施形態、第5及び第6変形例では、第1中継基板線路31の信号電極の太さを変更することで電気損失を変更するものとしたが、信号電極と接地電極とのギャップ、電極部の種類を変更することで電気損失を変更することもできる。この場合、例えば、コプレーナ、マイクロストリップ、或は、コプレーナストリップを用いることができる。
【符号の説明】
【0071】
1,1A,1B…光変調装置、3…中継基板部、3A…第1中継基板部、3B…第2中継基板部、4…光導波路素子部、31…第1中継基板線路、32…第2中継基板線路、421a,421b…光導波路(第1光導波路)、422a,422b…光導波路(第2光導波路)、431…第1相互作用部、432…第2相互作用部、100,100A,100B,100C,100D,200C,200D…損失調整部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12