(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態による撮像装置の構成を示す図である。撮像装置1は、カメラボディ20と、レンズマウント9を介してカメラボディ20に着脱可能なレンズ鏡筒10とから成る。レンズ鏡筒10は、被写体像を所定の予定焦点面に結像させる結像光学系11と、結像光学系11への入射光量を調節する絞り12を有している。なお、
図1では結像光学系11を1枚のレンズとして模式的に示しているが、結像光学系11は実際には、結像光学系11の焦点状態を調節するフォーカシングレンズを含む複数のレンズで構成されている。
【0009】
更に、カメラボディ20内の、結像光学系11の光軸L上には、結像光学系11を通過した被写体光を二方向に分岐させるペリクルミラー21が設けられている。カメラボディ20内には更に、結像光学系11により結像された被写体像を撮像する主撮像素子22と焦点検出ユニット30とが設けられている。ペリクルミラー21は、分岐させた被写体光の一方を主撮像素子22に、他方を焦点検出ユニット30に向かわせる。焦点検出ユニット30は、マイクロレンズアレイ31、および副撮像素子32を有する。焦点検出ユニット30の構造については後に詳述する。
【0010】
主撮像素子22は、例えばCCDやCMOS等の固体撮像素子であり、その撮像面が結像光学系11の第1予定焦点面5aに位置するよう配置されている。他方、焦点検出ユニット30が有するマイクロレンズアレイ31は、結像光学系11の第2予定焦点面5b(第1予定焦点面5aと共役な面)の近傍に配置されている。なお、
図1では図示を省略しているが、主撮像素子22の撮像面、およびマイクロレンズアレイ31の各前面には、赤外線カットフィルター等が設けられている。
【0011】
更に、カメラボディ20内の、結像光学系11の光軸L上には、ペリクルミラー21と結像光学系11との間に、結像光学系11を通過した被写体光の一部を遮光するためのマスク部材33が設けられている。マスク部材33は、例えば、光軸方向(x方向)の厚みが薄い平板状の部材である。カメラボディ20内には更に、マスク部材33を駆動させるマスク部材駆動装置34が設けられている。マスク部材33およびマスク部材駆動装置34については後に詳述する。
【0012】
カメラボディ20は更に、いわゆる電子ビューファインダー(EVF)を構成する電子ビューファインダーユニット40、接眼レンズ42、および背面モニター41を有している。電子ビューファインダーユニット40は、液晶ディスプレイ等の表示デバイスを内蔵しており、主撮像素子22や副撮像素子32により撮像された画像等をこの表示デバイスに表示させることが可能である。ユーザは接眼レンズ42を通して、この表示デバイスに表示される画像等を視認する。以下の説明では、電子ビューファインダーユニット40の表示デバイスに画像や文字等を表示することを、単に「ファインダーに表示する」と表記する。背面モニター41は、カメラボディ20の背面に設けられた液晶ディスプレイ等の表示デバイスであり、電子ビューファインダーユニット40と同様に、画像等を表示することができる。
【0013】
カメラボディ20は、以上で述べた各部を制御する制御装置23を更に備えている。制御装置23はマイクロプロセッサやその周辺回路等から構成されており、図示しない記憶媒体(例えばフラッシュメモリなど)に予め記憶されている制御プログラムを読み込んで実行することにより、上述した各部を制御する。例えば制御装置23は、主撮像素子22または副撮像素子32のいずれかの撮像素子の出力に基づいて、被写体像の画像データ(いわゆるスルー画)をファインダーや背面モニター41に表示する。なお制御装置23を、この制御プログラムと同等の機能を有する電子回路により構成することも可能である。
【0014】
(焦点検出ユニットの構成)
次に、
図2を用いて、焦点検出ユニット30の詳細を説明する。
図2は焦点検出ユニット30の斜視図である。
図2に示すように、焦点検出ユニット30内には、ペリクルミラー21側から見て、マイクロレンズアレイ31、副撮像素子32の順に、これらの各部材が平行に配置されている。マイクロレンズアレイ31は、正レンズであるマイクロレンズ35を複数有している。各マイクロレンズ35は、円形状の球面レンズから4辺を落とした形状に形成され、光軸Lの方向から見て略正方形形状でなる。複数のマイクロレンズ35は、マイクロレンズアレイ31のペリクルミラー21側の面に、二次元状の正方配列から45度傾いた配置で設けられている。
【0015】
副撮像素子32は、撮像面がマイクロレンズアレイ31に相対するように配置されている。副撮像素子32の撮像面には、略正方形の受光素子(光電変換素子)が正方配列されており、その撮像面の大きさは、少なくとも主撮像素子22による撮像範囲の全域をカバーする大きさである。一つの受光素子は一つのマイクロレンズ35より小さく形成され、一つのマイクロレンズ35を垂直に投影した範囲には複数の受光素子が含まれている。
【0016】
なお、
図2に示すマイクロレンズアレイ31は、便宜上200個のマイクロレンズ35を有するかのように描写されているが、実際にはより多くのマイクロレンズ35を有している。同様に、副撮像素子32が有する受光素子も、実際には
図2に示す数より多くが存在する。
【0017】
通常、マイクロレンズアレイ31と副撮像素子32との間隔は、おおよそマイクロレンズアレイ31を構成する各マイクロレンズ35の焦点位置近傍に副撮像素子32の撮像面があるように定められるが、
図1および
図2では説明のため実際よりも広く描いている。
【0018】
なお、マイクロレンズアレイ31は、その前側主面が第2予定焦点面5bに一致するように配置してもよい。ただし、マイクロレンズアレイ31の前側主面を第2予定焦点面5bに一致させると、マイクロレンズ35同士の間に被写体像のコントラストがあるような場合にその部分が不感帯となってしまう。本実施形態では、マイクロレンズアレイ31の前側主面と第2予定焦点面5bとをずらして配置することにより、そのような不感帯の発生を回避させている。
【0019】
(レンズ鏡筒の種類の説明)
ところで、カメラボディ20のレンズマウント9に装着可能なレンズ鏡筒10には、(1)カメラボディ20からフォーカスレンズの駆動制御が可能か否か、(2)カメラボディ20から撮影F値(絞り値)の制御が可能か否か、(3)カメラボディ20から結像光学系11の収差特性を表す収差情報が取得可能か否か、等により複数の種類が存在する。制御装置23は、カメラボディ20に装着されたレンズ鏡筒10が、これらの種類のうちどの種類に該当するレンズ鏡筒10かを判断し、レンズ鏡筒10の制御内容を変更する。以下、各々の種類における制御装置23の制御内容について説明する。
【0020】
(1)カメラボディ20からフォーカスレンズの駆動制御が可能か否か
フォーカスレンズの駆動制御をカメラボディ20側から行うことができる場合、制御装置23はいわゆるオートフォーカス制御を行う。例えばカメラボディ20の動作モードを静止画撮影モードに設定した後、ユーザがレリーズスイッチを半押しする等の所定の撮影準備操作を行うと、制御装置23は焦点検出ユニット30を用いて結像光学系11の焦点検出を行い、検出結果に基づいてフォーカスレンズを駆動させピント調節を行う。
【0021】
他方、フォーカスレンズの駆動制御をカメラボディ20側から行うことができない場合、制御装置23はピント調節の代わりに、検出結果に関する情報をファインダーや背面モニター41に表示する。例えば、ピントが合っているか否か、前ピンか後ピンか、どれくらいピントが合っていないか、等を表すアイコンやインジケータを表示する。
【0022】
(2)カメラボディ20から撮影F値の制御が可能か否か
撮影F値の制御をカメラボディ20側から行うことができる場合、すなわち露光時における絞り12の開口径をカメラボディ20から制御可能である場合、制御装置23はカメラボディ20に設けられた不図示の操作部材により撮影F値の入力を受け付ける。また、後述する種々の制御において、絞り12の開口径を制御する必要がある場合、制御装置23は絞り12の開口径を自動的に制御する。
【0023】
他方、撮影F値の制御をカメラボディ20側から行うことができない場合、撮影F値はレンズ鏡筒10に設けられた不図示の操作部材(例えば絞り環など)により設定される。後述する種々の制御において、絞り12の開口径を制御する必要がある場合、制御装置23はファインダーや背面モニター41に所定のメッセージを表示し、上記の操作部材を操作してF値を所定の値に設定するようユーザに促す。
【0024】
(3)カメラボディ20から結像光学系11の収差情報が取得可能か否か
レンズ鏡筒10の中には、結像光学系11の収差特性を表す収差情報をカメラボディ20に送信可能なものが存在する。このようなレンズ鏡筒10は、例えば収差情報が予め格納されている不図示の記憶媒体を備え、カメラボディ20からの指示に応じてこの記憶媒体から収差情報を読み出してカメラボディ20に送信する。この種のレンズ鏡筒10が装着された場合、制御装置23は予めレンズ鏡筒10からこの収差情報を受信しておき、少なくともレンズ鏡筒10が装着されている間、この収差情報を不図示のメモリ等に記憶する。そして、焦点検出の際に、この収差情報を用いて焦点検出結果を補正し、焦点検出の精度を高める。
【0025】
他方、カメラボディ20に対して収差情報を送信可能でないレンズ鏡筒10が装着された場合、カメラボディ20の動作モードとして、結像光学系11の収差を測定する収差測定モードを設定することが可能となる。ユーザは、撮影に先立ってこの収差測定モードを設定し、結像光学系11の収差を測定して収差情報を作成しておくことにより、収差情報を送信可能なレンズ鏡筒10と同様に、高精度な焦点検出を行うことができる。
【0026】
(収差の演算方法の説明)
ここで、本実施形態の収差測定モードにおける収差の演算方法について説明する。
図3は、結像光学系11および焦点検出ユニット30の模式図である。なお、
図3では、焦点検出ユニット30の中心部分(結像光学系11の光軸L付近)のみを拡大して図示している。
【0027】
図3(a)に示すように、結像光学系11上の部分瞳13a〜13hからの光束は、それぞれ各マイクロレンズ35n1〜35n5に入射し、副撮像素子32へと入射する。なお、マイクロレンズ35n1を透過した部分瞳13a〜13hからの光束を受光する受光素子が出力した信号を、
図3ではそれぞれa(1)、…、h(1)と表記している。その他のマイクロレンズ35n2〜35n5に対応する出力信号についても、同様に表記している。
【0028】
また、以下、部分瞳13aから出射した光束による受光信号から成る信号列を、{a(i)}(i=1,2,…)と表記する。他の部分瞳13a〜13hについても同様に、例えば部分瞳13bを通過した光束による受光信号から成る信号列を{b(i)}(i=1,2,…)のように表す。
【0029】
物点からの光束のうち結像光学系11の各部分瞳13a〜13hに入射した光束が、像面において、射出瞳の中心を通った光即ち主光線とは異なる位置に入射する場合がある。これら各部分瞳13a〜13hを通過した光束の像面上の入射位置の主光線の入射位置からのずれ量が、横収差である。横収差の分布から本発明が補正の対象とする縦収差の分布へは周知の方法で変換できる。制御装置23は、撮影範囲のうち、例えば、光軸L(撮影範囲の中央)から撮影範囲の右端までの領域に配列されているマイクロレンズ35を対象として、収差を測定する。これらのマイクロレンズ35の並びに対応する受光素子から読み出された、各部分瞳13a〜13hを通過した光束による信号列{a(i)}〜{h(i)}の各々と、光軸L上の部分瞳を通過した光束による受光信号から成る基準信号列とから、部分瞳13a〜13hの像ずれ量Sa〜Shをそれぞれ演算する。以下、上記の基準信号列を{x(i)}と表記して、像ずれ量Saの演算方法を説明する。
【0030】
制御装置23はまず、信号列{a(i)}、{x(i)}の相関量C(N)を次式(1)により算出する。
C(N)=Σ|a(i)−x(j)| …(1)
【0031】
上式(1)において、j−i=Nであり、Nはシフト数である。また、Σはiに関する所定範囲の総和演算を表す。制御装置23は次に、上式(1)により離散的に求められた相関量C(N)から次式(2)、(3)により、精緻なシフト量Eを求める。ここで、相関量C(N)の極小値をC0とし、そのときのシフト量NをN0とおく。また、シフト量(N0−1)における相関量をCr、シフト量(N0+1)における相関量をCfとする。制御装置23は、次式(4)により、最終的な像ずれ量Saを求める。
DL=(Cr−Cf)/2 …(2)
E=max{(Cf−C0),(Cr−C0)} …(3)
Sa=N0+DL/E …(4)
制御装置23は同様の手順で部分瞳13b〜13hにそれぞれ対応する像ずれ量Sb〜Shを演算する。制御装置23は、この像ずれ量Sa〜Shを収差情報として扱う。
【0032】
ところで、結像光学系11がマイクロレンズ35よりも明るいレンズである(結像光学系11のF値がマイクロレンズ35のF値よりも小さい)場合には、隣り合うマイクロレンズ35同士で副撮像素子32に入射する光束が重複して(すなわちクロストークが発生して)しまう。
図3(b)は、この状態を説明する図である。
図3(b)では、結像光学系11上の部分瞳14a〜14pからの光束が、それぞれ各マイクロレンズ35n1〜35n5に入射し、副撮像素子32へと入射する。
図3(b)に示す状態では、例えば、部分瞳14bを通ってマイクロレンズ35n2を透過した光束r1が、マイクロレンズ35n3を垂直に投影した範囲に含まれる受光素子pに入射してしまう。受光素子pには、例えば、部分瞳14jを通ってマイクロレンズ35n3を透過した光束r2も入射する。したがって、結像光学系11の各部分瞳14a〜14pを通って副撮像素子32に入射した光束の検出を正しく行うことができないので、結像光学系11の収差を測定することができない。
【0033】
そこで、本実施形態の撮像装置1では、結像光学系11からの被写体光を一部遮光するマスク部材33を用いることで、結像光学系11がマイクロレンズ35よりも明るいレンズである(結像光学系11のF値がマイクロレンズ35のF値よりも小さい)場合にも、結像光学系11の収差測定を行えるようになっている。以下、このマスク部材33を用いた収差測定について説明する。
【0034】
(マスク部材の構成)
図4は、マスク部材33をレンズ鏡筒10側(被写体側)から見た模式図である。マスク部材33は、結像光学系11からの入射光を遮光する遮光部36aと、入射光を透過する透明部36bとを有する。
【0035】
遮光部36aは、略八角形部分の下側に長方形部分が連結されたような形状でなる。この長方形部分に、マスク部材駆動装置34との接続部37が設けられている。マスク部材33は、マスク部材駆動装置34により、接続部37を中心としてyz平面上で回転可能に構成される。また、マスク部材33の接続部37は、マスク部材駆動装置34により、yz平面上で上下に移動可能に構成される。
【0036】
透明部36bは、遮光部36aの略八角形部分の内部を略円形状に繰り抜いた形状でなる。即ち、透明部36bの周囲は、遮光部36aとなっている。なお、本撮像装置1では、透明部36bは極薄い透明材で成るか、または素通し即ち空気層である。
【0037】
マスク部材33は、収差測定用の第1位置、第2位置、第3位置および第4位置と、撮影時用の退避位置との5つの位置に駆動可能に構成されている。マスク部材駆動装置34は、制御装置23の制御に応じて、マスク部材33を結像光学系11の光軸Lに対して垂直な面(yz平面)上で駆動させ、マスク部材33を第1位置〜第5位置、および退避位置のいずれかに駆動させる。
図4(a)の実線で示す位置が第1位置であり、
図4(a)の二点鎖線で示す位置が第2位置である。
図4(b)の実線で示す位置が第3位置であり、
図4(b)の二点鎖線で示す位置が第4位置である。退避位置(不図示)は、マスク部材33が結像光学系11からの光束を一切遮光しない位置である。
【0038】
図4(a)に示すように、第1位置とは、マスク部材33の透明部36bの中心Oが、光軸Lよりも図中左方向(z方向)にずれている位置であり、マスク部材33が、光軸Lに対して左方向に偏心した絞りを形成する位置である。第2位置とは、透明部36bの中心Oが、光軸Lよりも図中右方向(z方向)にずれている位置であり、マスク部材33が、光軸Lに対して右方向に偏心した絞りを形成する位置である。なお、第1位置と第2位置において、透明部36bは、光軸Lに対して左右対称な位置にある。
【0039】
マスク部材33が第1位置にある場合、マスク部材33の遮光部36aにより、結像光学系11を通過した被写体光束14の右側部分がけられ、被写体光束14の光軸Lを含む中央領域から左側外周部分までを含む一部分のみがマスク部材33の透明部36bを通過して焦点検出ユニット30に入射する。すなわち、マスク部材33は、結像光学系11を通過した被写体光束14の断面を、光軸Lを含み、且つ光軸Lに対して左側に偏った形状に制限する。
【0040】
マスク部材33が第2位置にある場合、マスク部材33の遮光部36aにより、結像光学系11を通過した被写体光束14の左側部分がけられ、被写体光束11Lの光軸Lを含む中央領域から右側外周部分までを含む一部分のみがマスク部材33の透明部36bを通過して焦点検出ユニット30に入射する。すなわち、マスク部材33は、結像光学系11を通過した被写体光束14の断面を、光軸Lを含み、且つ光軸Lに対して右側に偏った形状に制限する。
【0041】
図4(b)に示すように、第3位置とは、マスク部材33の透明部36bの中心Oが、光軸Lよりも図中上方向(y方向)にずれている位置であり、マスク部材33が、光軸Lに対して上方向に偏心した絞りを形成する位置である。第4位置とは、透明部36bの中心Oが、光軸Lよりも図中下方向(y方向)にずれている位置であり、マスク部材33が、光軸Lに対して下方向に偏心した絞りを形成する位置である。第3位置と第4位置とにおいて、透明部36bは、光軸Lに対して上下対称な位置にある。
【0042】
マスク部材33が第3位置にある場合、マスク部材33の遮光部36aにより、結像光学系11を通過した被写体光束14の下側部分がけられ、被写体光束14の光軸Lを含む中央領域から上側外周部分までを含む一部分のみがマスク部材33の透明部36bを通過して焦点検出ユニット30に入射する。すなわち、マスク部材33は、結像光学系11を通過した被写体光束14の断面を、光軸Lを含み、且つ光軸Lに対して上側に偏った形状に制限する。
【0043】
マスク部材33が第4位置にある場合、マスク部材33の遮光部36aにより、結像光学系11を通過した被写体光束14の上側部分がけられ、被写体光束14の光軸Lを含む中央領域から下側外周部分までを含む一部分のみがマスク部材33の透明部36bを通過して焦点検出ユニット30に入射する。すなわち、マスク部材33は、結像光学系11を通過した被写体光束14の断面を、光軸Lを含み、且つ光軸Lに対して下側に偏った形状に制限する。
【0044】
なお、
図4(a)に示すように、第1位置と第2位置との切り替えは、接続部37を中心としてマスク部材33をyz平面上で所定量回転させることにより行う。また、
図4(b)に示すように、第3位置と第4位置との切り替えは、マスク部材33の接続部37をyz平面上で所定量上下に移動させることにより行う。また、第1位置または第2位置から第3位置または第4位置への切り替え、またはその逆の切り替えは、接続部37を中心としてマスク部材33をyz平面上で所定量回転させ、且つマスク部材33の接続部37をyz平面上で所定量上下に移動させればよい。また、第1〜第4位置から退避位置への切り替えは、接続部37を中心としてマスク部材33をyz平面上で所定量回転させるようにすればよい。
【0045】
図5は、Y方向から見たマイクロレンズ35と副撮像素子32に形成される被写体像とを重ねて描いた図である。
図5では、結像光学系11のF値がマイクロレンズ35のF値よりも小さい状態を示す。なお、この種の焦点検出ユニット30では、副撮像素子32の受光素子が結像光学系11の射出瞳に投影されるのが理想であるが、実際は、結像光学系11の射出瞳、つまり、像側からみた絞り像の見かけ位置は結像光学系11により異なるのが普通であるのでいつも上記理想の状態にすることはできない。また、副撮像素子32の一つの受光素子の幅に相当するF値は極めて大きく、像面が一致しなくても射出瞳上でのその受光素子の像はあまりボケないので、実用上上記理想の状態にできなくても問題ない。
図5では図示の都合上、絞り像が鮮鋭であるように描いているが、上記の理由により実際は若干のボケを伴った像である。また、マスク部材33の像についても、副撮像素子32の受光素子と同様で実際はいくらかボケているが、
図5では図示の都合上、鮮鋭であるように描いている。
【0046】
図5(a)に示すように、マスク部材33が退避位置にある場合、結像光学系11を通過した被写体光束による被写体像(絞り像)Im1が、各マイクロレンズ35によって、副撮像素子32上に形成される。この被写体像Im1は、各マイクロレンズ35において、マイクロレンズ35を垂直に投影した範囲よりも広い円形状に形成されるため、
図5(b)に示すように、隣り合うマイクロレンズ35同士で一部重なってしまう。この重なり部分における受光素子からの出力は、収差測定に用いることができない。なお、
図5(b)では、被写体像Im1の中心(すなわち光軸L)近傍では、被写体像Im1同士の重なりが発生していないため、この部分の受光素子からの出力を用いることはできるが、結像光学系11の瞳の中央領域に対応する収差しか測定できず、結像光学系11の瞳の外周部分に近い領域に対応する収差を測定することはできない。
【0047】
一方、マスク部材33が第1位置にある場合、結像光学系11を通過し、且つマスク部材33の透明部36bを通過した被写体光束による被写体像(マスク部材33の像)Im2が、各マイクロレンズ35によって、副撮像素子32上に形成される。各マイクロレンズ35において、結像光学系11を通過し、且つマスク部材33の透明部36bを通過した被写体光束と、副撮像素子32に入射する光束との対応関係は、結像光学系11の光軸Lを対称軸として上下左右を反転したものとなる。したがって、被写体像Im2は、第1位置にあるマスク部材33により制限された被写体光束14の形状(
図4(a))を上下左右に反転させた形状となっており、
図5(a)に示すように、マスク部材33が退避位置にある場合の被写体像Im1の中央領域から右側外周部分までを含む一部分のみの形状でなる。
【0048】
したがって、
図5(c)に示すように、マスク部材33が第1位置にある場合における被写体像Im2は、隣り合うマイクロレンズ35同士で重複する部分が、マスク部材33が退避位置にある場合に比べて狭くなっている。この被写体像Im2が、隣り合うマイクロレンズ35同士で重複していない部分を、収差測定に用いることができる。例えば、被写体像Im2が形成された範囲のうち、光軸L上にある受光素子pOから右側外周部分に近い受光素子pRまでの受光素子による受光信号を、収差測定に用いることができる。光軸L上にある受光素子pOは、結像光学系11の瞳の中央領域を通った光束を受光し、右側外周部分に近い受光素子pRは、結像光学系11の瞳の左側外周部分に近い領域を通った光束を受光する。したがって、結像光学系11の光軸Lから左側の部分瞳に対応する収差を演算することができる。
【0049】
一方、マスク部材33が第2位置にある場合、
図5(d)に示すように、被写体光束による像Im2は、マスク部材33が第1位置にある場合の被写体像Im2を反転させた形状となっており、マスク部材33が退避位置にある場合の被写体像Im1の中央領域から左側外周部分までを含む一部分のみの形状でなる。そのため、例えば、被写体像Im2が形成された範囲のうち、光軸L上にある受光素子pOから左側外周部分に近い受光素子pLまでの受光素子による受光信号を、収差測定に用いることができる。これにより、結像光学系11の光軸Lから右側の部分瞳に対応する収差を演算することができる。
【0050】
したがって、マスク部材33を第1位置と第2位置とに駆動して、それぞれ収差演算を行うことにより、結像光学系11の横方向(z方向)についての収差を測定することができる。
【0051】
なお、マスク部材33が第3位置または第4位置にある場合の被写体像Im2は、マスク部材33が第1位置または第4位置にある場合の被写体像Im2を90度回転させた形状であるため、図示を省略する。
【0052】
マスク部材33が第3位置にある場合の被写体像Im2は、マスク部材33が退避位置にある場合の被写体像Im1の中央領域から下側外周部分までを含む一部分のみの形状でなる。そのため、例えば、被写体像Im2が形成された範囲のうち、光軸L上の受光素子から下側外周部分に近い受光素子までの受光素子による受光信号を、収差測定に用いることができる。これにより、結像光学系11の光軸Lから上側の部分瞳に対応する収差を演算することができる。
【0053】
また、マスク部材33が第4位置にある場合の被写体像Im2は、マスク部材33が退避位置にある場合の被写体像Im1の中央領域から上側外周部分までを含む一部分のみの形状でなる。そのため、例えば、被写体像Im2が形成された範囲のうち、光軸L上の受光素子から上側外周部分に近い受光素子までの受光素子による受光信号を、収差測定に用いることができる。これにより、結像光学系11の光軸Lから下側の部分瞳に対応する収差を演算することができる。
【0054】
したがって、マスク部材33を第3位置と第4位置とに駆動して、それぞれ収差演算を行うことにより、結像光学系11の縦方向(y方向)についての収差を測定することができる。
【0055】
以上のように、結像光学系11がマイクロレンズ35よりも明るいレンズである(結像光学系11のF値がマイクロレンズ35のF値よりも小さい)場合であっても、マスク部材33を第1〜第4位置にそれぞれ駆動することで収差測定を行うことができる。
【0056】
(収差測定処理の説明)
次に、本実施形態において実行する収差測定処理の流れについて説明する。制御装置23は、例えばモードダイヤル等の操作部材により、ユーザがカメラボディ20の動作モードを収差測定モードに設定すると、収差測定処理を開始する。
【0057】
制御装置23はまず、マスク部材駆動装置34を制御し、マスク部材33を第1位置に駆動させる。また制御装置23は、レンズ鏡筒10の撮影F値を開放F値に設定する。なお、ここでは、レンズ鏡筒10の開放F値がマイクロレンズ35のF値よりも小さい場合を想定する。そして制御装置23は、背面モニター41に、所定の縦縞パターンチャートを用意することを促す表示を行う。
【0058】
なお、前述した通り、レンズ鏡筒10が撮影F値をカメラボディ20から設定できない種類(例えば、撮影F値を手動で操作する絞り環によってのみ設定できる機構のレンズ鏡筒等)である場合には、制御装置23は撮影F値を開放F値に設定する代わりに、背面モニター41へ開放F値を設定するよう促すメッセージを表示する。
【0059】
ここでユーザは、所定の縦縞パターンチャートを用意して画角に収め、ファインダーに表示されたいわゆるスルー画を観察しながら手動操作で、チャートにピントを合せ、レリーズ操作等の所定の操作を行う。制御装置23は、この所定操作が為されたことを検出すると、副撮像素子32に撮像を行わせ、各受光素子からの出力を不図示のメモリへ一時的に記憶する。制御装置23は、この副撮像素子32の出力に基づいて、上述したように、結像光学系11の光軸Lから左側の部分瞳に対応する収差を演算し、演算結果を不図示のメモリへ一時的に記憶する。
【0060】
また、制御装置23はマスク部材33を第2位置に駆動させて、副撮像素子32に撮像を行わせ、各受光素子からの出力を不図示のメモリへ一時的に記憶する。そして、制御装置23は、この副撮像素子32の出力に基づいて、上述したように、結像光学系11の光軸Lから右側の部分瞳に対応する収差を演算し、演算結果を不図示のメモリへ一時的に記憶する。
【0061】
次に、制御装置23は、マスク部材33を第3位置に駆動させる。そして、制御装置23は、所定の横縞パターンチャートを用意することを促す表示を行う。ここでユーザは、所定の横縞パターンチャートを用意して画角に収め、手動で焦点合わせをし、レリーズ操作等の所定の操作を行う。制御装置23は、この所定操作が為されたことを検出すると、副撮像素子32に撮像を行わせ、各受光素子からの出力を不図示のメモリへ一時的に記憶する。そして、制御装置23は、この副撮像素子32の出力に基づいて、上述したように、結像光学系11の光軸Lから上側の部分瞳に対応する収差を演算し、演算結果を不図示のメモリへ一時的に記憶する。
【0062】
また、制御装置23はマスク部材33を第4位置に駆動させて、副撮像素子32に撮像を行わせ、各受光素子からの出力を不図示のメモリへ一時的に記憶する。そして、制御装置23は、この副撮像素子32の出力に基づいて、上述したように、結像光学系11の光軸Lから下側の部分瞳に対応する収差を演算し、演算結果を不図示のメモリへ一時的に記憶する。
【0063】
このようにして、制御装置23は、縦横それぞれのパターンについて結像光学系11の収差を測定すると、例えばレンズ鏡筒10の名称やモデル名などのレンズ鏡筒10を特定する情報と共に、測定結果を不図示のメモリに記憶する。なお、レンズ鏡筒10がいわゆるズームレンズであった場合には、収差は焦点検出や撮影が行われるズーム位置ごとに測定する必要がある。そこで制御装置23は、収差の測定結果および上記の「レンズ鏡筒10を特定する情報」と共に、測定時のズーム位置やその他の収差に影響を及ぼすレンズ鏡筒10の状態に関する情報を記憶しておく。「レンズ鏡筒10を特定する情報」やズーム位置等は、ユーザに入力させてもよいし、レンズ鏡筒10から何らかの手段(例えばレンズマウント9に設けられた電気接点を介するデータ通信等)により取得してもよい。
【0064】
なお以上の例では、チャートに対してのピントあわせを、ユーザが手動で行うとしたが、これにかわり、通常の撮影時と同様に焦点検出ユニット30を用いた自動焦点合わせによってピントあわせをしてもよい。または、焦点検出ユニット30を用いて、焦点調節情報を表示して手動焦点合わせを補助してもよい。いずれの場合でも、焦点が多少ずれても収差状態は大きくは変わらないので、支障がない。
【0065】
また、以上の例では、結像光学系11のF値がマイクロレンズ35のF値よりも小さい場合を想定して、マスク部材33を第1〜第4位置にそれぞれ駆動して、収差を測定するようにした。しかしながら、結像光学系11のF値がマイクロレンズ35のF値以上である場合には、隣り合うマイクロレンズ35同士でクロストークが発生しない。そこで、そのような場合には、マスク部材33を第1〜第4位置にそれぞれ駆動して収差測定を行うのではなく、マスク部材33を退避位置に駆動し、受光信号を1回だけ読み出して、収差測定を行うようにしてもよい。
【0066】
(焦点検出動作の説明)
次に、本実施形態における焦点検出動作について説明する。ユーザは静止画の撮影を行う際、例えばモードダイヤル等の操作部材により、カメラボディ20の動作モードを静止画撮影モードに設定する。制御装置23はこれに応じて、マスク部材33が退避位置以外にある場合、マスク部材33を退避位置まで駆動させる。ユーザが例えばレリーズスイッチを半押しする等の所定の撮影準備操作を行うと、制御装置23は焦点検出ユニット30を用いて結像光学系11の焦点検出を行う。以下、撮影準備操作に応じて行われる焦点検出の詳細について説明する。
【0067】
なお、収差情報を送信できない種類のレンズ鏡筒10が装着されている場合、制御装置23は焦点検出を行う前(例えば静止画撮影モードが設定されたとき等)に、前述した「レンズ鏡筒10を特定する情報」でメモリを検索し、収差情報が記憶されているか否かを判定する。この「レンズ鏡筒10を特定する情報」は、例えばユーザにレンズ鏡筒10を特定するための名称等を入力させたり、あるいはレンズ鏡筒10のモデル名等をレンズ鏡筒10とのデータ通信により受信する等の方法で取得する。収差情報がメモリに記憶されていれば、制御装置23は焦点検出において、その収差情報を用いて焦点検出結果の補正を行う。これにより、収差情報を送信できない種類のレンズ鏡筒10を利用する場合であっても、事前に収差測定モードで収差情報を作成しておけば、収差情報を送信可能なレンズ鏡筒10を利用する場合と同様に、収差情報を用いた高精度な焦点検出を行うことができる。
【0068】
制御装置23は、副撮像素子32の出力を用いていわゆる位相差検出方式による焦点検出を行う。すなわち、結像光学系11の瞳面上の一対の領域を通過した一対の光束により形成される一対の被写体像の位置ずれ量に基づいて、結像光学系11の焦点調節状態をデフォーカス量の形で検出する。
【0069】
制御装置23は、撮影画面上に設けられた複数のフォーカスエリアからいずれかを選択し、そのフォーカスエリアに含まれる各マイクロレンズ35の中心から左に3番目の受光素子の出力を繋げた波形が表す合成像と、中心から右に3番目の受光素子の出力を繋げた波形が表す合成像との位置ずれ量に基づいてデフォーカス量を検出する。例えば、連続して配置されるマイクロレンズ35n1〜35n5について、制御装置23は各マイクロレンズの中心から左に3番目の受光素子の出力q(n1)〜q(n5)を繋げた信号列{q(i)}に対応する像と、中心から右に3番目の受光素子の出力r(n1)〜r(n5)を繋げた信号列{r(i)}に対応する像との位置ずれ量を検出する。信号列{q(i)}、{r(i)}は、第2予定焦点面5bにおける同一の像による信号出力を表しており、これら2つの信号列を比較することで、結像光学系11により第2予定焦点面5b上に結像された一対の被写体像の位置ずれ量を検出することができる。なお、一対の信号列{q(i)}、{r(i)}を、上述とは異なる位置の受光素子の出力から作成してもよい。
【0070】
次に、制御装置23による焦点検出の手順を詳細に説明する。まず副撮像素子32の出力を不図示のA/Dコンバーターによりデジタル信号に変換し、いったん不図示のメモリに記憶する。制御装置23は、このメモリから副撮像素子32の出力データを読み出し、第1信号列 {q(i)}=q(1),q(2),q(3),…と、第2信号列{r(i)}=r(1),r(2),r(3),…を作成する。制御装置23は、副撮像素子32が有する全受光素子のうち、焦点検出の対象としたい範囲から複数のマイクロレンズ35を選択し、上記の第1信号列{q(i)}および第2信号列{r(i)}を作成する。焦点検出の対象としたい範囲は、例えばユーザにいわゆるフォーカスエリアを指定させることにより決定してもよいし、予め定められた範囲としてもよい。
【0071】
制御装置23は、こうして得られた第1信号列{q(i)}と第2信号列 {r(i)}に基づいて、周知の方法により像ずれ演算を行い、デフォーカス量を算出する。一対の信号列{q(i)}、 {r(i)}からデフォーカス量を算出する方法はよく知られており、まず第1信号列{q(i)}と第2信号列{r(i)}(i=1,2,3,・・・)から対応する一対の像の相関量C(N)を求める。
C(N)=Σ|q(i)−r(j)| …(5)
上式(5)において、j−i=Nであり、Nはシフト数である。また、Σはiに関する所定範囲の総和演算を表す。
【0072】
制御装置23は次に、上式(5)により離散的に求められた相関量C(N)から次のようにしてシフト量を求める。ここで、相関量C(N)の中でシフト量N=N0のときに極小値を与える相関量をC0とし、シフト量(N0−1)における相関量をCr、シフト量(N0+1)における相関量をCfとする。制御装置23は、相関量Cr、C0、Cfの並びから精密なシフト量Naを求める。
DL=(Cr−Cf)/2 …(6)
E=max {(Cf−C0),(Cr−C0)} …(7)
Na=N0+DL/E …(8)
【0073】
制御装置23は、ここで求めたシフト量Naに、焦点検出面の位置に応じた補正量(定数CONST)を加え、焦点検出面上での像ズレ量Δn=Na+CONSTを算出する。さらに、像ズレ量Δnに対し、検出開角に依存した定数Kfを乗じることにより、収差補正前のデフォーカス量Dfを算出する。
Df=Kf・Δn …(9)
【0074】
そして、制御装置23はこのデフォーカス量Dfに対し、収差情報に基づく補正を行い、収差の影響が補正されたより正確なデフォーカス量を算出する。具体的には、まず焦点検出に用いた一対の瞳(例えば、信号列{q(i)}に対応する瞳と、信号列{r(i)}に対応する瞳)から、それら一対の瞳の各重心位置の開きを表すF値を求め、そのF値に対応する最良像面位置を収差情報から決定する。そして、撮影F値に対応する最良像面位置を同様に収差情報から決定する。最後に、それら2つの最良像面位置の差分に応じた量だけデフォーカス量Dfを補正する。なお、上記の演算に対応するデータが収差情報に含まれていない場合には、近接する他のF値の情報から適宜補間を行えばよい。
【0075】
制御装置23は、算出したデフォーカス量に応じた量だけ結像光学系11のフォーカスレンズを駆動させ、ピント調節を行ったり、あるいはファインダーや背面モニター41に前ピンや後ピンなど現在の焦点状態を表示し、ユーザによる手動焦点調節を支援したりする。
【0076】
なお、焦点検出時に結像光学系11のF値がマイクロレンズ35のF値よりも小さい(結像光学系11の方がマイクロレンズ35よりも明るい)場合、隣り合うマイクロレンズ35の間でクロストークが発生してしまい、正常な焦点検出を行うことができない。そこで本実施形態の制御装置23は、焦点検出時にレンズ鏡筒10の絞り12をマイクロレンズ35のF値以上に制御することで、このようなクロストークが発生しないようにする。また、カメラボディ20から撮影F値の制御が行えないレンズ鏡筒10を装着していた場合には、制御装置23は例えば背面モニター41にメッセージを表示する等の方法により、F値を手動でマイクロレンズ35のF値以上にするようユーザに促す。
【0077】
その後、ユーザにより例えばレリーズスイッチが全押しされる等の所定の撮影操作が行われると、制御装置23はレンズ鏡筒10の絞り12を設定された撮影時のF値にあわせて主撮像素子22により被写体像を撮像し、画像データを作成して不図示の記憶媒体(例えばメモリカード等)に記憶する。または、カメラボディ20から撮影F値の制御が行えないレンズ鏡筒10を装着していた場合には、そのまま撮像する。この場合、上記撮影操作に先立ち撮影者は手動で所望の絞りに設定することを前提としている。
【0078】
上述した第1の実施の形態による撮像装置1によれば、次の作用効果が得られる。
(1)撮像装置1は、結像光学系11を透過した光束が入射するよう二次元状に配置された複数のマイクロレンズ35と、複数のマイクロレンズ35の各々に対応して当該マイクロレンズ35の後側に配置された複数の受光素子を有する受光素子アレイ32と、結像光学系11を透過した光束の一部を遮蔽することにより、結像光学系11を透過した光束の断面を、結像光学系11の光軸Lに対して偏よった形状に制限する遮蔽状態(第1〜第4位置)と、結像光学系11を透過した光束を遮蔽せずに通過させる通過状態(退避位置)とを切り替え可能なマスク部材33と、開放F値の結像光学系11を透過し、且つ上記遮蔽状態のマスク部材33により一部が遮蔽された光束に対応する受光素子アレイ32の出力信号に基づいて、結像光学系11の収差に関する収差情報を検出する制御装置23と、を備える。これにより、結像光学系11のF値がマイクロレンズ35のF値よりも小さい場合(すなわち、結像光学系11がマイクロレンズ35よりも明るいレンズである場合)でも、収差の測定を行うことができる。また、撮像装置1自体で収差を測定することができるので、収差を測定するための専用の機械を用いる必要がなく、また操作が簡単である。
【0079】
(2)上記(1)の撮像装置1において、焦点検出用の所定F値の結像光学系11を透過した光束に対応する受光素子アレイ32の出力信号に基づいて、結像光学系11の焦点調節状態を検出する制御装置23と、検出した結像光学系11の焦点調節状態を、上記収差情報と撮影F値とに基づき補正する制御装置23と、を備える。これにより、収差情報を通信できないレンズでも、焦点検出を精度よく行うことができる。また、収差検出と焦点検出とで、マイクロレンズ35および受光素子アレイ32を兼用するので、それぞれに専用の部品を設ける必要がなく、コストを抑えることができる。
【0080】
(3)上記(1)または(2)の撮像装置1において、マスク部材33は、遮蔽状態として、第1の遮蔽状態(第1位置または第3位置)および第2の遮蔽状態(第2位置または第4位置)に切替え可能であり、第1の遮蔽状態と第2の遮蔽状態とでは、結像光学系11を透過した光束の断面を、結像光学系11の光軸Lを含み、且つ前記光軸に対して偏よった互いに異なる形状に制限することを特徴とする。また、マスク部材33は、第1の遮蔽状態(第1位置または第3位置)では、結像光学系11を透過した光束の断面を、当該断面の外周の第1部分(左側部分または上側部分)から光軸Lまでを含む形状に制限し、第2の遮蔽状態(第2位置または第4位置)では、結像光学系11を透過した光束の断面を、当該断面の外周の第2部分(右側部分または下側部分)から光軸Lまでを含む形状に制限し、第1部分(左側部分または上側部分)と第2部分(右側部分または下側部分)とは、光軸Lに対して対称な位置であることを特徴とする。これにより、結像光学系11の所定方向(横方向または縦方向)における収差を測定することができる。
【0081】
(第2の実施の形態)
図6は、本発明の第2の実施の形態による撮像装置2の構成を示す図である。なお、以下の説明において、第1の実施の形態と同様の各部については、第1の実施の形態と同一の符号を付して説明を省略する。撮像装置2は、レンズ鏡筒10と、カメラボディ120と、レンズ鏡筒10およびカメラボディ120の間に装着される中間アダプタ130とからなる。カメラボディ120は、第1の実施の形態のカメラボディ20と比較して、ペリクルミラー21および焦点検出ユニット30を有していない点で異なるが、この他の構成は同一である。すなわち、カメラボディ120は、被写体光を反射する部材をもたない、メタルバックの比較的短いカメラボディである。
【0082】
中間アダプタ130は、カメラボディ120よりもメタルバックの長いレンズ鏡筒10をカメラボディ120に装着するためのアダプタである。中間アダプタ130は、ボディ側マウント131を介してカメラボディ120に装着されると共に、レンズ側マウント132を介してレンズ鏡筒10に装着される。中間アダプタ130内の、結像光学系11の光軸L上には、結像光学系11を通過した被写体光を二方向に分岐させるペリクルミラー21が設けられている。中間アダプタ130内には更に、焦点検出ユニット30が設けられている。ペリクルミラー21は、分岐させた被写体光の一方をカメラボディ120の主撮像素子22に、他方を焦点検出ユニット30に向かわせる。焦点検出ユニット30の構成は、第1の実施の形態と同様である。
【0083】
更に、中間アダプタ130内の、結像光学系11の光軸L上には、ペリクルミラー21よりも結像光学系11側に、結像光学系11を通過した被写体光の一部を遮光するためのマスク部材33が設けられている。中間アダプタ130内には更に、マスク部材33を駆動させるマスク部材駆動装置34が設けられている。マスク部材33およびマスク部材駆動装置34の構成は、第1の実施の形態と同様である。
【0084】
中間アダプタ130は、中間アダプタ130内の各部を制御するアダプタ制御装置133を更に備えている。アダプタ制御装置133は、カメラボディ120内の制御装置23とボディ側マウント131を介して電気的に接続され、各種通信を行う。アダプタ制御装置133は、カメラボディ120から収差測定モードに設定された旨が通知されると、第1の実施の形態と同様にして、収差測定処理を実行する。またアダプタ制御装置133は、カメラボディ120から所定の撮影準備操作が行われた旨が通知されると、第1の実施の形態と同様にして、収差情報に基づく焦点検出処理を実行する。
【0085】
上述した第2の実施の形態による中間アダプタ130によれば、次の作用効果が得られる。
中間アダプタ130は、結像光学系11を透過した光束が入射するよう二次元状に配置された複数のマイクロレンズ35と、複数のマイクロレンズ35の各々に対応して当該マイクロレンズ35の後側に配置された複数の受光素子を有する受光素子アレイ32と、結像光学系11を透過した光束の一部を遮蔽することにより、結像光学系11を透過した光束の断面を、結像光学系11の光軸Lに対して偏よった形状に制限する遮蔽状態(第1〜第4位置)と、結像光学系11を透過した光束を遮蔽せずに通過させる通過状態(退避位置)とを切り替え可能なマスク部材33と、開放F値の結像光学系11を透過し、且つ上記遮蔽状態のマスク部材33により一部が遮蔽された光束に対応する受光素子アレイ32の出力信号に基づいて、結像光学系11の収差に関する収差情報を検出するアダプタ制御装置133と、を備える。また、中間アダプタ130は、焦点検出用の所定F値の結像光学系11を透過した光束に対応する受光素子アレイ32の出力信号に基づいて、結像光学系11の焦点調節状態を検出するアダプタ制御装置133と、検出した結像光学系11の焦点調節状態を、上記収差情報と撮影F値とに基づき補正するアダプタ制御装置133と、を備える。このように、第2の実施の形態による中間アダプタ130によれば、第1の実施の形態と同様に収差測定および焦点検出を行うことができるので、第1の実施の形態と同様の作用効果が得られる。
【0086】
(変形例1)
上述した実施の形態において、更に、マスク部材33を焦点検出用の第5位置に駆動可能とするようにしてもよい。
図7に示すように、第5位置は、マスク部材33の透明部36bの中心Oが、結像光学系11の光軸Lと一致する位置である。すなわち、マスク部材33の透明部36bが光軸Lに対して上下左右対称な形状である。マスク部材33を第5位置に駆動することにより、結像光学系11を通過した被写体光束14を絞り込むことができるようになっている。
【0087】
焦点検出時に結像光学系11のF値がマイクロレンズ35のF値よりも小さい(結像光学系11の方がマイクロレンズ35よりも明るい)場合、隣り合うマイクロレンズ35の間でクロストークが発生してしまい、正常な焦点検出を行うことができない。そこで変形例1の制御装置23は、焦点検出時において、マスク部材駆動装置34を制御し、マスク部材33を第5位置に駆動させる。マスク部材33の透明部36bの大きさは、例えば、マイクロレンズ35と同じF値である結像光学系11からの被写体光束の径よりも小さい大きさであるとする。これにより、第5位置にあるマスク部材33よって結像光学系11を通過した被写体光束が絞られるため、隣り合うマイクロレンズ35の間でクロストークが発生するのを防止することができる。
【0088】
なお、必ずしも、マスク部材33の透明部36bの大きさが、マイクロレンズ35と同じF値である結像光学系11からの被写体光束の径よりも小さくなくてもよい。少なくとも焦点検出を行う受光素子において、クロストークが発生しないような大きさであればよい。
【0089】
また、
図7では、マスク部材33が、結像光学系11を透過した被写体光束の断面を、光軸Lに対して上下左右に対称な形状に制限する例について示しているが、必ずしも上下左右に対称な形状でなくてもよい。焦点検出が可能であればよく、少なくとも、マスク部材33が第1〜第4位置にある場合よりも光軸Lに対して偏りが少ない形状であればよい。
【0090】
以上説明したように、変形例1において、マスク部材33は、さらに焦点検出用の遮蔽状態(第5位置)に切替え可能であり、第5位置は、結像光学系11を透過した光束の断面を、結像光学系11の光軸Lを含み、且つ光軸Lに対して第1〜第4位置よりも偏りが少ない形状に制限し、制御装置23は、撮影F値の結像光学系11を透過し、且つ第5位置のマスク部材33により一部が遮蔽された光束に対応する受光素子アレイ32の出力信号に基づいて、結像光学系11の焦点調節状態を検出する。これにより、自動で結像光学系11を通過した被写体光束を絞った状態にして、隣り合うマイクロレンズ35の間でのクロストークを防止することができる。したがって、例えば、カメラボディ20から撮影F値の制御が行えないレンズ鏡筒10を装着していた場合にも、ユーザに手動でF値の調整を行わせることなく、自動で正常な焦点検出を行うことができる。
【0091】
(変形例2)
マイクロレンズ35の配列は、
図2に示したものに限定されない。例えば、
図8に示すように、マイクロレンズ35が略六角形に形成されたハニカム配置のマイクロレンズアレイ31を利用してもよい。
図8は、変形例2において、
図5と同様に、結像光学系11のF値がマイクロレンズ35のF値よりも小さい状態での、副撮像素子32に形成される被写体像を模式的に示す図である。上述した実施の形態と同様に、マスク部材33が退避位置にある場合の被写体像Im1は、
図8(a)に示すように、マイクロレンズ35を垂直に投影した範囲よりも広い円形状に形成されるため、隣り合うマイクロレンズ35同士で一部重なってしまう。
【0092】
一方、マスク部材33が第1位置にある場合の被写体像Im2は、マスク部材33が退避位置にある場合の被写体像Im1の中央領域から右側外周部分までを含む一部分のみの形状でなる。そのため、
図8(b)に示すように、例えば、被写体像Im2が形成された範囲のうち、光軸L上にある受光素子pOから右側外周部分に近い受光素子pRまでの受光素子による受光信号を、収差測定に用いることができる。これにより、結像光学系11の光軸Lから左側の部分瞳に対応する収差を演算することができる。
【0093】
また、マスク部材33が第2位置にある場合の被写体像Im2は、
図8(c)に示すように、マスク部材33が第1位置にある場合の被写体像Im2を反転させた形状となっており、マスク部材33が退避位置にある場合の被写体像Im1の中央領域から左側外周部分までを含む一部分のみの形状でなる。そのため、例えば、被写体像Im2が形成された範囲のうち、光軸L上にある受光素子pOから左側外周部分に近い受光素子pLまでの受光素子による受光信号を、収差測定に用いることができる。これにより、結像光学系11の光軸Lから右側の部分瞳に対応する収差を演算することができる。
【0094】
したがって、上述した実施の形態と同様に、マスク部材33を第1位置と第2位置とに駆動して、それぞれ収差演算を行うことにより、結像光学系11の横方向(z方向)についての収差を測定することができる。
【0095】
また、変形例2において、横方向(z方向)に対して±60度の方向について、結像光学系11の収差を測定するようにしてもよい。この場合、マスク部材33の透明部36bが横方向(z方向)に対して±60度の方向に偏心するように、マスク部材33を駆動して収差を測定すればよい。
【0096】
(変形例3)
上述した実施の形態では、マスク部材33の透明部36bの形状が円形状である例について説明したが、これに限らなくてよく、例えば多角形形状などであってもよい。マスク部材33の透明部36bの形状は、撮影光路に挿入された場合に、マイクロレンズアレイ31による副撮像素子32の受光素子の逆投影像を考慮すると、光軸L上にある受光素子の像と絞り開口の一方向の最外周部に近い受光素子の像をいずれもけらず、かつ、隣接するマイクロレンズ35からその最外周部に近い受光素子に注ぐ光を遮る形状であればいい。
【0097】
また、上述した実施の形態では、マスク部材33の透明部36bの形状が固定である例について説明したが、例えば、マスク部材33を複数の部材で構成し、透明部36bの形状や大きさが可変であるように構成してもよい。
【0098】
(変形例4)
上述したカメラボディ20の代わりに、一般的な一眼レフレックスカメラに近い構成を有するカメラボディにおいて、上述したマスク部材33とマスク部材駆動装置34を設けるようにしてもよい。この場合、マスク部材33は、クイックリターンミラーの前に設けるようにしてもよいし、サブミラーの反射面の前に設けるようにしてもよい。
【0099】
また、変形例4の場合、焦点検出ユニットへは、クイックリターンミラーがダウン位置にある状態でサブミラーを介して被写体光が入射される。サブミラーは、例えば、ほぼ撮像範囲の幅いっぱいをカバーする横長形状であり、焦点検出ユニットも撮像範囲の横方向いっぱいをカバーする。この場合には、撮像範囲の縦方向の像高の高いところの収差は測れず、また結像光学系11の縦方向の周辺部を通った光による収差測定もできないなどの制約がある。しかし、結像光学系11が光軸Lを軸とした回転対称であるとした仮定のもとで、測定しうる収差から収差の補正値を割り出すことができる。このようにして割り出した収差の補正値を用いることで、収差の補正がない場合よりも正確な焦点検出を行うことができる。
【0100】
(変形例5)
上述した実施の形態では、マスク部材33を第1〜第4位置に駆動することにより、透明部36b(すなわち絞り)を上下左右にそれぞれ偏心させて収差測定を行う例について説明したが、これに限らず、より多くの方向について透明部36bを偏心させて、より精密に収差を測定するようにしてもよい。また、逆に、マスク部材33を第1位置および第2位置にのみ駆動させて(すなわち、左右方向にのみ透明部36bを偏心させて)、収差測定を行うようにしてもよい。直接測定できない必要な部分の必要な方向の収差情報については、収差が回転対称であるなどの仮定の元で割り出すようにすればよい。
【0101】
(変形例6)
ペリクルミラー21に代えて、ホログラム素子を形成したペリクルフィルムを設けてもよい。ホログラム素子により特定波長の光束の反射角度を変化させられるので、ペリクルミラー21と同様の構成を、ペリクルミラー21よりも浅い角度で実現することができる。この場合、撮像には特定波長の光束のみ欠けた被写体光を用いることになるが、ごく狭い波長域の光が欠けるだけなので、通常の撮像にはほとんど影響はない。これによりフランジバックを短くできるので、例えば中間アダプタ等を介してレンズ鏡筒10を装着する場合に、より多様な種類のレンズ鏡筒10に対応することが可能となる。
【0102】
(変形例7)
収差測定の場合と同様に、マスク部材33の駆動を伴う焦点検出を行ってもよい。すなわち、マスク部材33を第1位置に駆動して得た受光信号と、第2位置に駆動して得た受光信号とから、デフォーカス量を演算するようにしてもよい。ただし前述の通り、例えば移動する被写体を撮影する場合など、2つの受光信号の基となる被写体像が異なる場合にはデフォーカス量を正しく検出できないので、ユーザが指定した場合のみマスク部材33の駆動を伴う焦点検出を行うようにすることが望ましい。例えば、ユーザが固定的な被写体を撮影する場合には上記の焦点検出を行うモードを選択し、それ以外の場合には第1の実施形態で説明した焦点検出を行うモードを選択するように撮像装置を構成する。
【0103】
(変形例8)
マスク部材駆動装置34によりマスク部材33を駆動させる代わりに、遮光部36aおよび透明部36bを液晶により構成して、マイクロレンズ35からの光束の遮光と透過とを切り替えてもよい。
【0104】
(変形例9)
収差情報は、上述した像ずれ量Sa〜Sp以外の情報であってもよい。例えば、デフォーカス量を補正する演算の途中で表れる中間データであってもよい。その他、最終的に焦点検出結果から収差の影響を軽減可能なデータであれば、どのような形式のデータであってもよい。
【0105】
(変形例10)
収差測定時のF値を、上述した各実施形態のように開放F値にしない場合であっても、本発明を適用することが可能である。ただし、この場合には、絞り12により遮光される箇所(より光軸Lから遠い部分瞳)の収差を測定することはできない。
【0106】
本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。