【文献】
BARDOSOVA, M. et al.,Thin films of liquid crystal fumarates and a related acrylate,Thin Solid Films,1997年,Vol.300,pp.234-239
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
この明細書における用語の使い方は次のとおりである。「液晶性化合物」は、液晶相を有する化合物および液晶相を有しないが液晶組成物の成分として有用な化合物の総称である。「非重合性の液晶組成物」とは、重合可能な基を有しない液晶化合物からなる液晶組成物である。液晶性化合物、液晶組成物、液晶表示素子をそれぞれ化合物、組成物、素子と表記することがある。式(1)で表わされる化合物を化合物(1)または式(1)の化合物と表記することがある。他の式についても同様に略記することがある。「化合物(1)」は、式(1)で表される1つの化合物または2つ以上の化合物を意味する。他の式で表される化合物についても同様である。式(P−1)で表される基を「基(P−1)」と略すことがある。他の式で表される基についても同様である。式(2)から(7)において、六角形で囲んだB
11、C
11などの記号は、それぞれ環B
11、環C
11などに対応する。複数のR
11を同一の式または異なった式に記載した。これらの化合物において、任意の2つのR
11が表わす2つの基は、同一であってもよいし、または異なってもよい。このルールは、環A
1、Z
2などの記号にも適用される。組成物に混合される添加物の割合は、液晶組成物の全重量に基づいた重量百分率(重量%)を意味する。少なくとも1つの−CH
2−が−O−で置き換えられてもよいとするとき、隣り合った−CH
2−が−O−で置き換えられることおよび−O−の隣の−CH
2−が−O−で置き換えられることは含まれない。「単官能」とは、重合性基が1つであることで、「多官能」とは、重合性基が2つ以上あることを示す。
【0012】
2−フルオロ−1,4−フェニレンは、下記の2つの二価基を意味する。式(1)などにおいて、フッ素は左向きであってもよいし、右向きであってもよい。このルールは、テトラヒドロピラン−2,5−ジイルのような、非対称の二価基にも適用される。
【0013】
本発明は、下記の項などである。
1. 式(1)で表わされる化合物。
式(1)において、
A
1は独立して、単結合、1,4−シクロへキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン、ナフタレン−2,6−ジイル、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、またはピリジン−2,5−ジイルであり、これらにおいて、少なくとも1つの水素は、ハロゲン、炭素数1から12のアルキル、または少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた炭素数1から12のアルキルで、置き換えられてもよく;
A
2は1,4−フェニレンまたはナフタレン−2,6−ジイルであり、これらにおいて、少なくとも1つの水素は、ハロゲン、炭素数1から12のアルキル、または少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた炭素数1から12のアルキルで、置き換えられてもよく;
Z
1は炭素数1から12のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの−CH
2−は、−O−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−CH=CH−、または−C≡C−で置き換えられてもよく;
Z
2は独立して、単結合または炭素数1から12のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの−CH
2−は、−O−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−CH=CH−、または−C≡C−で置き換えられてもよく;
すべてのA
1およびA
2が、1つの水素も置き換えられていない基の場合、Z
1およびZ
2の少なくとも1つが不飽和結合を有しており;
X
1は、水素、フッ素、メチル、またはトリフルオロメチルであり;
P
1は重合可能な基であり;
aは0から3の整数である。
【0014】
2. 項1に記載の式(1)において、
A
1が、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレンまたはナフタレン−2,6−ジイルであり、これらにおいて、少なくとも1つの水素は、フッ素、塩素、炭素数1から4のアルキル、または少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた炭素数1から4のアルキルで、置き換えられてもよく;
A
2が1,4−フェニレンまたはナフタレン−2,6−ジイルであり、これらにおいて、少なくとも1つの水素は、フッ素、塩素、炭素数1から4のアルキル、または少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた炭素数1から4のアルキルで、置き換えられてもよく;
Z
1が炭素数1から12のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの−CH
2−は、−O−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−CH=CH−、または−C≡C−で置き換えられてもよく;
Z
2が、単結合または炭素数1から12のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの−CH
2−は、−O−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−CH=CH−、または−C≡C−で置き換えられてもよく;
Z
1およびZ
2の少なくとも1つは、少なくとも1つの−CH
2−が、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−CH=CH−、または−C≡C−で置き換えられた炭素数1から12のアルキレンであり;
X
1が水素またはメチルであり;
P
1が式(P−1)から式(P−3)で表わされる基から選択された基であり;
aが1である、項1に記載の化合物。
【0015】
3. 項1に記載の式(1)において、
A
1が、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレンまたはナフタレン−2,6−ジイルであり、これらにおいて、少なくとも1つの水素は、フッ素、塩素、炭素数1から4のアルキル、または少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数1から4のアルキルで、置き換えられてもよく;
A
2が1,4−フェニレンまたはナフタレン−2,6−ジイルであり、これらにおいて、少なくとも1つの水素は、フッ素、塩素、炭素数1から4のアルキル、または少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数1から4のアルキルで、置き換えられてもよく;
Z
1が炭素数1から7のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの−CH
2−は、−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよく;
Z
2が単結合または炭素数1から7のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの−CH
2−は、−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよく;
Z
1およびZ
2の少なくとも1つは、少なくとも1つの−CH
2−が−CH=CH−で置き換えられた炭素数1から7のアルキレンであり;
X
1が水素またはメチルであり;
P
1が式(P−1)から式(P−3)で表わされる基から選択された基であり;
aが1である、項1に記載の化合物。
【0016】
4. 式(1−1)で表わされる項1に記載の化合物。
式(1−1)において、
Z
3は炭素数1から7のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの−CH
2−は、−O−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく;
Y
1からY
8は独立して、水素、フッ素、メチル、またはトリフルオロメチルであり;
Y
1からY
8がすべて水素の場合、Z
3は、少なくとも1つの−CH
2−が、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−CH=CH−、または−C≡C−で置き換えられた炭素数1から7のアルキレンであり;
X
1は、水素、フッ素、メチル、またはトリフルオロメチルであり;
P
1は重合可能な基である。
【0017】
5. 項4に記載の式(1−1)において、Z
3が炭素数1から7のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの−CH
2−が、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−CH=CH−、または−C≡C−で置き換えられており、そして少なくとも1つの−CH
2−が、−O−で置き換えられてもよく;Y
1からY
8が独立して、水素、フッ素、メチル、またはトリフルオロメチルである項4に記載の化合物。
【0018】
6. 項4に記載の式(1−1)において、Z
3が炭素数1から7のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの−CH
2−は、−O−で置き換えられてもよく;Y
1からY
8が独立して、水素、フッ素、メチルまたはトリフルオロメチルであり;Y
1からY
8のうち少なくとも1つが、フッ素、メチル、またはトリフルオロメチルである項4に記載の化合物。
【0019】
7. 項4に記載の式(1−1)において、X
1が水素またはメチルであり;Y
1からY
8がすべて水素である項5に記載の化合物。
【0020】
8. 項4に記載の式(1−1)において、P
1が項3に記載の式(P−1)および式(P−2)で表わされる基から選択された基である項5に記載の化合物。
【0021】
9. 項4に記載の式(1−1)において、P
1が項3に記載の式(P−3)で表わされる基である項5に記載の化合物。
【0022】
10.式(1−2)で表される項1に記載の化合物。
式(1−2)において、
Z
3は炭素数1から7のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの−CH
2−は、−O−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく;
L
1からL
12は独立して、水素、フッ素、メチル、またはトリフルオロメチルであり;
L
1からL
12がすべて水素の場合、Z
3は、少なくとも1つの−CH
2−が、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−CH=CH−、または−C≡C−で置き換えられた炭素数1から7のアルキレンであり;
X
1は、水素、フッ素、メチル、またはトリフルオロメチルであり;
P
1は重合可能な基である。
【0023】
11.項10に記載の式(1−2)において、Z
3が炭素数1から7のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの−CH
2−が、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−CH=CH−、または−C≡C−で置き換えられており、そして少なくとも1つの−CH
2−が、−O−で置き換えられてもよく;L
1からL
12が独立して、水素、フッ素、メチル、またはトリフルオロメチルである項10に記載の化合物。
【0024】
12.項10に記載の式(1−2)において、Z
3が炭素数1から7のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの−CH
2−は、−O−で置き換えられてもよく;L
1からL
12が独立して、水素、フッ素、メチル、またはトリフルオロメチルであり;L
1からL
12のうち少なくとも1つが、フッ素、メチル、またはトリフルオロメチルである項10に記載の化合物。
【0025】
13.項10に記載の式(1−2)において、X
1が水素またはメチルであり;L
1からL
12がすべて水素である項11に記載の化合物。
【0026】
14.項10に記載の式(1−2)において、P
1が請求項3に記載の式(P−1)および式(P−2)で表わされる基から選択された基である、項11に記載の化合物。
【0027】
15.項10に記載の式(1−2)において、P
1が項3に記載の式(P−3)で表わされる基である項11に記載の化合物。
【0028】
16. 項1から15のいずれか1項に記載の化合物を含む組成物。
【0029】
17. 項1から15のいずれか1項に記載の化合物を非重合性の液晶組成物に添加してなる項16に記載の組成物。
【0030】
18. 式(2)から式(4)で表わされる化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する項16または17に記載の組成物。
式(2)から式(4)において、
R
11は独立して、炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−CH
2−は−O−で置き換えられてもよく;
環B
11、環B
12、および環B
13は独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,3−ジオキサン−2,5-ジイル、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、または少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレンであり;
Z
11およびZ
12は独立して、−(CH
2)
2−、−(CH
2)
4−、−COO−、−CF
2O−、−OCF
2−、−CH=CH−、−C≡C−、−CH
2O−、または単結合であり;
Y
11は独立して、フッ素、塩素、−OCF
3、−OCHF
2、−CF
3、−CHF
2、−CH
2F、−OCF
2CHF
2、または−OCF
2CHFCF
3であり;
Y
12およびY
13は独立して水素またはフッ素である。
【0031】
19. 式(5)から式(7)で表わされる化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する項16、17または18に記載の組成物。
式(5)から式(7)において、
R
12およびR
13は独立して、炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−CH
2−は−O−で置き換えられてもよく;
環C
11、環C
12、および環C
13は独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、または2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレンであり;
Z
13およびZ
14は独立して、−(CH
2)
2−、−COO−、−CH=CH−、−C≡C−、または単結合である。
【0032】
20. 項1から15のいずれか1項に記載の化合物を重合させて得られる重合体。
【0033】
21. 項16から19のいずれか1項に記載の組成物を重合させて得られる重合体。
【0034】
22. 項1から15のいずれか1項に記載の化合物、項16から19のいずれか1項に記載の組成物、および項20または21に記載の重合体の群から選択される少なくとも1つを含む液晶表示素子。
【0035】
23. 項1から15のいずれか1項に記載の化合物、項16から19のいずれか1項に記載の組成物、および項20または21に記載の重合体の群から選択される少なくとも1つの液晶表示素子における使用。
【0036】
本発明は、次の項も含む。1)光学活性な化合物をさらに含有する上記の組成物、2)酸化防止剤、紫外線吸収剤、消泡剤などの添加物をさらに含有する上記の組成物。3)上記の組成物を含有するAM素子、4)上記の組成物を含有し、そしてTN、ECB、OCB、IPS、FFS、VA、またはPSAのモードを有する素子、5)上記の組成物を含有する透過型の素子、6)上記の組成物を、ネマチック相を有する組成物としての使用、7)上記の組成物に光学活性な化合物を添加することによって光学活性な組成物としての使用。
【0037】
本発明の化合物について説明する。本発明の化合物は式(1)で表わされる。
【0038】
式(1)において、A
1は、独立して単結合、1,4−シクロへキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン、ナフタレン−2,6−ジイル、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、またはピリジン−2,5−ジイルであり、これらにおいて、少なくとも1つの水素は、ハロゲン、炭素数1から12のアルキル、または少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた炭素数1から12のアルキルで、置き換えられてもよい。aが2または3のとき、任意の2つのA
1が表わす2つの基は、同じであっても異なってもよい。
【0039】
好ましいA
1は、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレンまたはナフタレン−2,6−ジイルであり、これらの基において、少なくとも1つの水素は、フッ素、塩素、炭素数1から4のアルキル、または少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数1から4のアルキルで、置き換えられてもよい。より好ましいA
1は1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2−メチル−1,4−フェニレン、2−トリフルオロメチル−1,4−フェニレン、2,3−ビス(トリフルオロメチル)−1,4−フェニレンまたはナフタレン−2,6−ジイルである。さらに好ましいA
1は、1,4−フェニレンまたは2−フルオロ−1,4−フェニレンであり、特に好ましいA
1は1,4−フェニレンである。
【0040】
A
2は1,4−フェニレンまたはナフタレン−2,6−ジイルであり、これらにおいて、少なくとも1つの水素は、ハロゲン、炭素数1から12のアルキル、または少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた炭素数1から12のアルキルで、置き換えられてもよい。
【0041】
好ましいA
2は1,4−フェニレンまたはナフタレン−2,6−ジイルであり、これらの基において、少なくとも1つの水素はフッ素、塩素、炭素数1から4のアルキル、または少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた炭素数1から4のアルキルで、置き換えられてもよい。より好ましいA
2は、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2−メチル−1,4−フェニレン、2−トリフルオロメチル−1,4−フェニレン、2,3−ビス(トリフルオロメチル)−1,4−フェニレンまたはナフタレン−2,6−ジイルである。さらに好ましいA
2は、1,4−フェニレンまたは2−フルオロ−1,4−フェニレンであり、特に好ましいA
2は1,4−フェニレンである。
【0042】
Z
1は炭素数1から12のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの−CH
2−は、−O−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−CH=CH−、または−C≡C−で置き換えられてもよい。
【0043】
好ましいZ
1は、炭素数1から7のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの−CH
2−は、−O−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−CH=CH−、または−C≡C−で置き換えられてもよい。より好ましいZ
1は、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−CH=CH−、−CH=CH−O−または−C≡C−である。さらに好ましいZ
1は、−OCOO−、−CH=CH−、または−CH=CH−O−であり、特に好ましいZ
1は、−CH=CH−O−である。
【0044】
Z
2は、独立して、単結合または炭素数1から12のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの−CH
2−は、−O−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−CH=CH−、または−C≡C−で置き換えられてもよい。すべてのA
1およびA
2が1つの水素も置き換えられていない基の場合、Z
1およびZ
2の少なくとも1つが不飽和結合を有している。不飽和結合は、−CH=CH−、−C≡C−、または>C=Oを含む基を意味する。aが2または3のときの、任意の2つのZ
2が表わす2つの基は、同じであっても異なってもよい。
【0045】
好ましいZ
2、は単結合、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、または−C≡C−である。より好ましいZ
2、は単結合、−COO−または−CH=CH−であり、特に好ましいZ
2は単結合である。
【0046】
結合基Z
1またはZ
2が、−CH=CH−などの二重結合を有する基であるとき、その立体配置はシス体であっても、トランス体であってもよい。
【0047】
X
1は、水素、フッ素、メチル、またはトリフルオロメチルである。好ましいX
1は水素またはメチルである。
【0048】
P
1は重合可能な基である。好ましいP
1は、アクリロキシ基、メタクリロキシ基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、ビニル基、ビニルオキシ基、ビニルカルボニル基、エポキシ基、オキセタン基、3,4−エポキシシクロヘキシル基、マレイミド基、などである。より好ましいP
1は、基(P−1)から基(P−3)である。特に好ましいP
1は基(P−1)または基(P−2)である。
【0049】
aは0から3の整数である。好ましいaは0から2であり、より好ましいaは1または2である。特に好ましいaは1である。
【0050】
化合物(1)の好ましい例として、以下の化合物(1−1)および化合物(1−2)が挙げられる。
【0051】
式(1−1)において、Y
1からY
8は独立して、水素、フッ素、メチル、またはトリフルオロメチルである。好ましいY
1からY
8は、水素、フッ素、またはトリフルオロメチルである。より好ましいY
1からY
8は、水素またはフッ素であり、特に好ましいY
1からY
8は、水素である。
【0052】
式(1−2)において、L
1からL
12は独立して、水素、フッ素、メチル、またはトリフルオロメチルである。好ましいL
1からL
12は、水素、フッ素、またはトリフルオロメチルである。より好ましいL
1からL
12は、水素またはフッ素であり、特に好ましいL
1からL
12は、水素である。
【0053】
式(1−1)または式(1−2)において、Z
3は炭素数1から7のアルキレンである。このアルキレンにおいて、少なくとも1つの−CH
2−は、−O−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−CH=CH−、または−C≡C−で置き換えられてもよく、Y
1からY
8がすべて水素の場合、またはL
1からL
12がすべて水素の場合、Z
3は、少なくとも1つの−CH
2−が、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−CH=CH−、または−C≡C−で置き換えられた炭素数1から7のアルキレンである。
【0054】
好ましいZ
3は、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−CH=CH−、−CH=CH−O−または−C≡C−である。より好ましいZ
3は、−OCOO−、−CH=CH−、または−CH=CH−O−であり、特に好ましいZ
3は、−CH=CH−O−である。Z
3が、−CH=CH−などの二重結合を有する基であるとき、その立体配置はシス体であっても、トランス体であってもよい。
【0055】
X
1は、水素、フッ素、メチル、またはトリフルオロメチルである。より好ましいX
1は、水素またはフッ素である。
【0056】
P
1は重合可能な基である。好ましいP
1は、アクリロキシ基、メタクリロキシ基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、ビニル基、ビニルオキシ基、ビニルカルボニル基、エポキシ基、オキセタン基、3,4−エポキシシクロヘキシル基、マレイミド基、などである。より好ましいP
1は、基(P−1)から基(P−3)である。特に好ましいP
1は基(P−1)または基(P−2)である。
【0057】
化合物(1)のより好ましい例として、以下の化合物(1−1−1)および化合物(1−2−1)が挙げられる。
【0058】
式(1−1−1)において、Y
1からY
8は水素である。Y
1からY
8の1つは、フッ素、メチルまたはトリフルオロメチルであってもよい。式(1−2−1)において、L
1からL
12は水素である。L
1からL
12の1つはフッ素、メチルまたはトリフルオロメチルであってもよい。X
1およびX
2は独立して、水素またはメチルである。
【0059】
化合物(1)のさらに好ましい例として、以下の化合物(1−1−2)および化合物(1−2−2)が挙げられる。式(1−1−2)および式(1−2−2)において、X
1およびX
2は独立して、水素またはメチルである。
【0060】
本発明の組成物について説明する。この組成物は、少なくとも1つの化合物(1)を含むが、化合物(1)を2つ以上含んでいてもよい。この組成物は、その他の重合性化合物をさらに含んでもよい。その他の重合性化合物の好ましい例は、アクリレート、メタクリレート、ビニル化合物、ビニルオキシ化合物、プロペニルエーテル、エポキシ化合物(オキシラン、オキセタン)、およびビニルケトンである。さらに好ましい例は、少なくとも1つのアクリロイルオキシを有する化合物および少なくとも1つのメタクリロイルオキシを有する化合物である。さらに好ましい例には、アクリロイルオキシとメタクリロイルオキシとを有する化合物も含まれる。
【0061】
その他の重合性化合物の追加例は、化合物(M−1)〜(M−12)である。これらの化合物において、R
20は水素またはメチルであり;sは0または1であり;tおよびuは独立して、1〜10の整数である。かっこに入れた記号Fは、水素またはフッ素を意味する。
【0063】
化合物(1)は非重合性の液晶組成物に添加してもよい。好ましい組成物は、液晶表示素子に用いることのできる液晶組成物である。本発明の組成物は、化合物(1)を成分Aとして含む必要がある。この成分Aのみの組成物、または成分Aと本明細書中で特に成分名を示していないその他の成分との組成物でもよいが、この成分Aに以下に示す成分B、および成分Cから選ばれた成分を加えることにより種々の特性を有する液晶組成物が提供できる。
【0064】
成分Aに加える成分として、化合物(2)、化合物(3)、および化合物(4)の群から選ばれた少なくとも1つの化合物からなる成分Bが好ましい。さらに、化合物(5)、化合物(6)、および化合物(7)の群から選ばれた少なくとも1つの化合物からなる成分Cを混合することにより、しきい値電圧、液晶相の温度範囲、光学異方性、誘電率異方性、粘度等を調整することができる。
【0065】
化合物の物性に大きな差異がないので、化合物(1)は、
2H(重水素)、
13Cなどの同位体を天然存在比の量より多く含んでもよい。液晶組成物に添加される成分化合物についても同様である。
【0066】
上記成分Bのうち、化合物(2)の好適例として化合物(2−1)から化合物(2−13)、化合物(3)の好適例として化合物(3−1)から化合物(3−109)、および化合物(4)の好適例として化合物(4−1)から化合物(4−55)を挙げることができる。
【0076】
これらの化合物において、R
11およびY
11の定義は、前記と同じである。
【0077】
これらの化合物(2)から化合物(4)すなわち成分Bは、誘電率異方性が正であり、熱安定性や化学的安定性が非常に優れているので、TFT用の液晶組成物を調製する場合に用いられる。液晶組成物における成分Bの含有量は、液晶組成物の全重量に対して約1重量%から約99重量%の範囲が適するが、好ましくは約10重量%から約97重量%の範囲、より好ましくは約40重量%から約95重量%の範囲である。また化合物(5)から化合物(7)(成分C)をさらに含有させることにより粘度を調整することができる。
【0078】
化合物(5)、化合物(6)、および化合物(7)(成分C)の好適例として、化合物(5−1)から化合物(5−10)、化合物(6−1)から化合物(6−14)、および化合物(7−1)から化合物(7−6)を挙げることができる。
【0081】
これらの化合物において、R
12およびR
13の定義は、前記と同じである。
【0082】
化合物(5)から化合物(7)(成分C)は、誘電率異方性の絶対値が小さく、中性に近い化合物である。化合物(5)は主として、粘度の調整または光学異方性の調整の効果があり、また化合物(6)および化合物(7)は透明点を高くするなどによってネマチック相の温度範囲を広げる効果、または光学異方性の調整の効果がある。
【0083】
成分Cの含有量を増加させると液晶組成物の粘度が小さくなるが、しきい値電圧が高くなる。そこで、液晶組成物のしきい値電圧の要求値を満たす限り、含有量は多いほうが望ましい。TFT用の液晶組成物を調製する場合に、成分Cの含有量は、組成物全量に対して好ましくは約30重量%以上、より好ましくは約50重量%以上である。
【0084】
本発明の組成物は、化合物(1)の少なくとも1つを約0.05重量%から約20重量%の割合で含有することが好ましい。また、化合物(1)の少なくとも1つを約0.1重量%から約10重量%の割合で含有することが、より好ましい。
【0085】
本発明の組成物の調製は、公知の方法、例えば必要な成分を高温度下で溶解させる方法などにより一般に調製される。また、用途に応じて当業者によく知られている添加物を添加して、例えばつぎに述べるような光学活性化合物を含む組成物、染料を添加したGH型用の組成物を調製することができる。このような添加物は当該業者によく知られており、文献に記載されている。
【0086】
本発明の組成物は、さらに1つ以上の光学活性化合物を含有してもよい。光学活性化合物として、公知のキラルド−プ剤を添加できる。このキラルド−プ剤は液晶のらせん構造を誘起して必要なねじれ角を調整し、逆ねじれを防ぐといった効果を有する。キラルド−プ剤の例として、下記の化合物(Op−1)〜(Op−18)を挙げることができる。化合物(Op−18)において、環Eは1,4−シクロへキシレンまたは1,4−フェニレンであり、R
24は炭素数1から10のアルキルである。
【0088】
本発明の組成物は、メロシアニン系、スチリル系、アゾ系、アゾメチン系、アゾキシ系、キノフタロン系、アントラキノン系、テトラジン系などの二色性色素を添加すれば、GH型用の液晶組成物として使用することもできる。
【0089】
本発明の組成物は、ネマチック液晶をマイクロカプセル化して作製したNCAPや、液晶中に三次元網目状高分子を形成して作製したポリマー分散型液晶表示素子(PDLCD)例えばポリマーネットワーク液晶表示素子(PNLCD)用をはじめ、複屈折制御(ECB)型やDS型用の液晶組成物としても使用できる。
【0090】
本発明の組成物に、重合開始剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、消泡剤などの添加物を添加しても何ら差し支えない。
【0091】
酸化防止剤は、大きな電圧保持率を維持するために有効である。酸化防止剤の好ましい例として、下記の化合物(AO−1)および(AO−2);およびIRGANOX 415、IRGANOX 565、IRGANOX 1010、IRGANOX 1035、IRGANOX 3114、およびIRGANOX 1098(商品名:BASF社)を挙げることができる。紫外線吸収剤は、上限温度の低下を防ぐために有効である。紫外線吸収剤の好ましい例は、ベンゾフェノン誘導体、ベンゾエート誘導体、トリアゾール誘導体などである。具体例として下記の化合物(AO−3)および(AO−4);TINUVIN 329、TINUVIN P、TINUVIN 326、TINUVIN 234、TINUVIN 213、TINUVIN 400、TINUVIN 328、およびTINUVIN 99−2(商品名:BASF社);および1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)を挙げることができる。
【0092】
立体障害のあるアミンのような光安定剤は、大きな電圧保持率を維持するために好ましい。光安定剤の好ましい例として、下記の化合物(AO−5)および(AO−6);TINUVIN 144、TINUVIN 765、およびTINUVIN 770DF(商品名:BASF社)を挙げることができる。熱安定剤も大きな電圧保持率を維持するために有効であり、好ましい例としてIRGAFOS 168(商品名:BASF社)を挙げることができる。消泡剤は、泡立ちを防ぐために有効である。消泡剤の好ましい例は、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイルなどである。
【0094】
化合物(AO−1)において、R
25は炭素数1〜20のアルキル、炭素数1〜20のアルコキシ、−COOR
26、または−CH
2CH
2COOR
26であり;R
26は炭素数1〜20のアルキルである。化合物(AO−2)および(AO−5)において、R
27は炭素数1〜20のアルキルである。化合物(AO−5)において、環Fおよび環Gは1,4−シクロへキシレンまたは1,4−フェニレンであり、vは0、1、または2であり、R
28は水素、メチルまたはO
・である。
【0095】
本発明の化合物はラジカル重合に適している。重合開始剤の添加または反応温度を最適化することにより、より敏速に重合させることができるが、重合開始剤は添加してもしなくてもよい。
【0096】
光ラジカル重合開始剤の例は、具体的な商品名で、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)のダロキュアシリーズからTPO、1173および4265、イルガキュアシリーズから184、369、500、651、784、819、907、1300、1700、1800、1850、2959の商品であるが、公知のいずれの光ラジカル重合開始剤も使用できる。
【0097】
光ラジカル重合開始剤のその他の例は、4−メトキシフェニル−2,4−ビス(トリクロロメチル)トリアジン、2−(4−ブトキシスチリル)−5−トリクロロメチル−1,3,4−オキサジアゾール、9−フェニルアクリジン、9,10−ベンズフェナジン、ベンゾフェノン/ミヒラーズケトン混合物、ヘキサアリールビイミダゾール/メルカプトベンズイミダゾール混合物、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2,4−ジエチルキサントン/p−ジメチルアミノ安息香酸メチル混合物、ベンゾフェノン/メチルトリエタノールアミン混合物であるが、公知のいずれの光ラジカル重合開始剤も使用できる。
【0098】
本発明の重合体は、化合物(1)またはそれらを含有する組成物を重合することで製造できる。化合物(1)の1つのみを重合させると、単独重合体が得られる。複数の重合性化合物を含有する組成物を重合させると、共重合体が得られる。化合物(1)を、非重合性の液晶組成物に添加してなる組成物を重合させた場合、非重合性の液晶組成物中に化合物(1)の単独重合体が含まれることとなるが、この組成物も重合体と言う。
【0099】
重合はエネルギー(電磁波)を照射することで実施できる。かかる電磁波は、紫外線、赤外線、可視光線、X線、γ線などである。また、イオンやエレクトロンといった高エネルギー粒子を照射してもよい。
【0100】
化合物(1)またはこの組成物の配向は電磁波の照射で固定できる。電磁波の波長の範囲は150nmから500nmが好ましい。さらに好ましい範囲は250nmから450nmであり、特に好ましい範囲は300nmから400nmである。照射時の温度は、化合物(1)またはこの組成物が液晶状態である温度であるが、熱重合を防ぐために、100℃以下が好ましい。
【0101】
化合物(1)は、液晶表示素子の基板間の液晶組成物中に於いて重合させることにより重合または架橋される。電圧または磁場を印加した状態で重合させてもよい。好ましい重合方法は例えば熱、または光重合であり、好ましくは光重合である。必要であればここに重合開始剤を加えることもできる。重合条件および重合開始剤の適当な種類は当業者に公知であり、文献に記載されている。
【0102】
化合物(1)は、特に重合開始剤を用いることなく、速やかに反応する点で優れている。これによって未反応の光ラジカル重合開始剤またはその分解生成物に起因する表示不良を低減することおよび製品寿命の長期化を達成できる。本発明の重合性化合物は単独で用いても、その他の重合性化合物と混合して用いてもよい。併せて用いることのできる重合性化合物としては市販または公知のモノマー、例えば特開2004−123829に記載の液晶表示素子に好適である既存の単官能または多官能の液晶性モノマーが挙げられる。
【0103】
本発明の液晶表示素子は、例えば透明電極と液晶分子を配向させる配向制御膜とを備えた二枚の基板を有する。これらの基板の間に重合性化合物を含む液晶組成物を配置する。これらの基板の中の重合性化合物を重合することによって、素子は製造される。重合は電圧を印加しながら行われることもある。
【0104】
化合物(1)および組成物に含まれる成分化合物の合成法を説明する。このような化合物は、有機合成化学の手法を組み合わせることにより合成できる。出発物質に目的の末端基、環および結合基を導入する方法は、フーベン−ヴァイル(Houben-Wyle, Methoden der Organische Chemie, Georg-Thieme Verlag, Stuttgart)、オーガニック シンセシス(Organic Syntheses, John Wily & Sons, Inc.)、オーガニック リアクションズ(Organic Reactions, John Wily & Sons Inc.)、コンプリヘンシブ オーガニック シンセシス(Comprehensive Organic Synthesis, Pergamon Press)、新実験化学講座(丸善)などの成書に記載されている。
【0105】
結合基Z
1から結合基Z
3の生成について、項(I)から項(IX)で説明する。このスキームにおいて、MSG
1(またはMSG
2)は少なくとも1つの環を有する一価の有機基である。複数のMSG
1(またはMSG
2)が表わす一価の有機基は、同一であってもよいし、または異なってもよい。化合物(1A)から化合物(1L)は、化合物(1)に相当する。
【0107】
アリールホウ酸(Q1)と公知の方法で合成される化合物(Q2)とを、炭酸塩水溶液中、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムのような触媒の存在下で反応させて化合物(1A)を合成する。この化合物(1A)は、公知の方法で合成される化合物(Q3)にn−ブチルリチウムを、次いで塩化亜鉛を反応させ、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムのような触媒の存在下で化合物(Q2)を反応させることによっても合成される。
【0109】
公知の方法で合成されるホスホニウム塩(Q5)にカリウムt−ブトキシドのような塩基を作用して発生させたリンイリドを、アルデヒド(Q4)に反応させて化合物(1B)を合成する。
【0111】
化合物(1B)をパラジウム炭素のような触媒の存在下で水素化することにより、化合物(1C)を合成する。
【0113】
ホスホニウム塩(Q5)の代わりにホスホニウム塩(Q7)を用い、項(II)の方法に従って−(CH
2)
2−CH=CH−を有する化合物を得る。これを接触水素化して化合物(1E)を合成する。
【0114】
(V) −CH
2O−または−OCH
2−の生成
【0115】
化合物(Q4)を水素化ホウ素ナトリウムなどの還元剤で還元して化合物(Q8)を得る。これを臭化水素酸などで臭素化して化合物(Q9)を得る。炭酸カリウムなどの存在下で、化合物(Q9)を化合物(Q10)と反応させて化合物(1F)を合成する。この方法によって−CH
2O−を有する化合物も合成できる。
【0116】
(VI) −COO−と−OCO−の生成
【0117】
化合物(Q3)にn−ブチルリチウムを、続いて二酸化炭素を反応させてカルボン酸(Q11)を得る。化合物(Q11)とフェノール(Q16)とを、DCC(1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド)とDMAP(4−ジメチルアミノピリジン)との存在下で、脱水させて−COO−を有する化合物(1G)を合成する。この方法によって−OCO−を有する化合物も合成できる。
【0119】
ジクロロパラジウムとハロゲン化銅との触媒存在下、化合物(Q13)を化合物(Q2)と反応させて、化合物(1J)を合成する。
【0120】
(VIII) −C≡C−COO−の生成
【0121】
化合物(Q13)をn−ブチルリチウムでリチオ化した後、二酸化炭素を作用しカルボン酸(Q14)を得る。カルボン酸(Q14)とフェノール(Q16)とをDCCとDMAPの存在下で脱水させて−C≡C−COO−を有する化合物(1K)を合成する。この方法によって−OCO−C≡C−を有する化合物も合成できる。
【0122】
(IX) −C≡C−CH=CH−と−CH=CH−C≡C−の生成
【0123】
化合物(Q13)とビニルブロミド(Q15)とのクロスカップリング反応により、−C≡C−CH=CH−を有する化合物(1L)を合成できる。シス体の化合物(Q15)を使用すれば、シス体の(1L)が生成する。
【0124】
重合性の基(P−1)または基(P−2)は、水酸基を持つ有機基にアクリル酸またはメタクリル酸の酸塩化物(または酸無水物)を作用させることにより導入できる。重合性の基(P−3)はハロゲンを有する有機基とビニルブロミドとのGrignard反応により導入できる。組成物は、このようにして得た化合物から公知の方法によって調製される。例えば、成分化合物を混合し、そして加熱によって互いに溶解させる。
【0125】
以上の方法により、化合物(a−1)から化合物(a−292)を合成する。
【実施例】
【0157】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例によっては制限されない。なお特に断りのない限り、「%」は「重量%」を意味する。
【0158】
1.化合物の実施例
合成した化合物は、プロトン核磁気共鳴分光法(
1H−NMR)などにより同定した。化合物の融点は、示差走査熱量測定(DSC)により決定した。まず、各分析方法について説明をする。
【0159】
1H−NMR分析:測定装置は、DRX−500(ブルカーバイオスピン製)を用いた。測定は、実施例などで製造したサンプルを、CDCl
3などのサンプルが可溶な重水素化溶媒に溶解し、室温で、500MHz、積算回数24回などの条件で行った。核磁気共鳴スペクトルの説明において、sはシングレット、dはダブレット、tはトリプレット、qはカルテット、mはマルチプレットであることを意味する。また、化学シフトδ値のゼロ点の基準物質としてはテトラメチルシラン(TMS)を用いた。
【0160】
HPLC分析:測定装置は、島津製作所製のProminence(LC−20AD;SPD−20A)を用いた。カラムはワイエムシー製のYMC−Pack ODS−A(長さ150mm、内径4.6mm、粒子径5μm)を用いた。溶出液はアセトニトリルと純水を適宜混合して用いた。検出器としてはUV検出器、RI検出器、CORONA検出器などを適宜用いた。UV検出器を用いた場合、検出波長は254nmとした。
【0161】
試料はアセトニトリルに溶解して、0.1重量%の溶液となるように調製し、この溶液1μLを試料室に導入した。記録計としては島津製作所製のC−R7Aplusを用いた。得られたクロマトグラムには、成分化合物に対応するピークの保持時間およびピークの面積値が示されている。
【0162】
HPLCより得られたクロマトグラムにおけるピークの面積比は成分化合物の割合に相当する。一般には、分析サンプルの成分化合物の重量%は、分析サンプルの各ピークの面積%と完全に同一ではないが、本発明において上述したカラムを用いる場合には、実質的に補正係数は1であるので、分析サンプル中の成分化合物の重量%は、分析サンプル中の各ピークの面積%とほぼ対応している。成分の液晶性化合物における補正係数に大きな差異がないからである。
【0163】
DSC測定:パーキンエルマー社製走査熱量計DSC−7システム、またはDiamond DSCシステムを用いて、3℃/分速度で昇降温し、試料の相変化に伴う吸熱ピーク、または発熱ピークの開始点を外挿により求め、融点を決定した。
【0164】
[測定試料]
相構造および転移温度を測定するときには、液晶性化合物そのものを試料として用いた。ネマチック相の上限温度、粘度、光学的異方性、誘電率異方性などの物性を測定するときには、化合物を母液晶に混合して調製した組成物を試料として用いた。
【0165】
化合物を母液晶と混合した試料を用いる場合には、次の方法で測定を行った。化合物15重量%と母液晶85重量%とを混合して試料を調製した。この試料の測定値から、次の式で表わされる外挿法にしたがって、外挿値を計算し、この値を記載した。〈外挿値〉=(100×〈試料の測定値〉−〈母液晶の重量%〉×〈母液晶の測定値〉)/〈化合物の重量%〉
【0166】
[測定方法]
物性の測定は下記の方法で行った。これらの多くは、日本電子機械工業会規格(Standard of Electronic Industries Association of Japan)、EIAJ・ED−2521Aに記載された方法、またはこれを修飾した方法であった。測定に用いたTN素子には、TFTを取り付けなかった。
【0167】
(1)相構造
偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレート(メトラー社FP−52型ホットステージ)に試料(化合物)を置き、3℃/分の速度で加熱しながら相状態とその変化を偏光顕微鏡で観察し、相の種類を特定した。
【0168】
(2)転移温度(℃)
パーキンエルマー社製走査熱量計DSC−7システム、またはDiamond DSCシステムを用いて、3℃/分速度で昇降温し、試料(化合物)の相変化に伴う吸熱ピーク、または発熱ピークの開始点を外挿により求め、転移温度を決定した。化合物が固体からスメクチック相、ネマチック相などの液晶相に転移する温度を「液晶相の下限温度」と略すことがある。化合物が液晶相から液体に転移する温度を「透明点」と略すことがある。
【0169】
結晶はCと表した。結晶の種類の区別がつく場合は、それぞれC
1またはC
2と表した。スメクチック相はS、ネマチック相はNと表した。スメクチック相の中で、スメクチックA相、スメクチックB相、スメクチックC相、またはスメクチックF相の区別がつく場合は、それぞれS
A、S
B、S
C、またはS
Fと表した。液体(アイソトロピック)はIと表した。転移温度は、例えば、「C 50.0 N 100.0 I」のように表記した。これは、結晶からネマチック相への転移温度(CN)が50.0℃であり、ネマチック相から液体への転移温度(透明点)が100.0℃であることを示す。
【0170】
(3)低温相溶性
化合物の割合が、20重量%、15重量%、10重量%、5重量%、3重量%、および1重量%となるように母液晶と化合物とを混合した試料を調製し、試料をガラス瓶に入れた。このガラス瓶を、−10℃または−20℃のフリーザー中に一定期間保管したあと、結晶またはスメクチック相が析出しているかどうか観察をした。
【0171】
(4)ネマチック相の上限温度(T
NIまたはNI;℃)
偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレートに試料を置き、1℃/分の速度で加熱した。試料の一部がネマチック相から等方性液体に変化したときの温度を測定した。ネマチック相の上限温度を「上限温度」と略すことがある。
【0172】
(5)ネマチック相の下限温度(T
C;℃)
ネマチック相を有する試料を0℃、−10℃、−20℃、−30℃、および−40℃のフリーザー中に10日間保管したあと、液晶相を観察した。例えば、試料が−20℃ではネマチック相のままであり、−30℃では結晶またはスメクチック相に変化したとき、T
Cを≦−20℃と記載した。ネマチック相の下限温度を「下限温度」と略すことがある。
【0173】
(6)粘度(バルク粘度;η;20℃で測定;mPa・s)
E型回転粘度計を用いて測定した。
【0174】
(7)粘度(回転粘度;γ1;25℃で測定;mPa・s)
測定はM. Imai et al., Molecular Crystals and Liquid Crystals, Vol. 259, 37 (1995) に記載された方法に従った。ツイスト角が0°であり、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が5μmであるTN素子に試料を入れた。この素子に16Vから19.5Vの範囲で0.5V毎に段階的に印加した。0.2秒の無印加のあと、ただ1つの矩形波(矩形パルス;0.2秒)と無印加(2秒)の条件で印加を繰り返した。この印加によって発生した過渡電流(transient current)のピーク電流(peak current)とピーク時間(peak time)を測定した。これらの測定値とM. Imaiらの論文、40頁の計算式(8)とから回転粘度の値を得た。この計算で必要な誘電率異方性の値は、この回転粘度を測定した素子を用い、下に記載した方法で求めた。
【0175】
(8)光学的異方性(屈折率異方性;25℃で測定;Δn)
測定は、波長589nmの光を用い、接眼鏡に偏光板を取り付けたアッベ屈折計により行なった。主プリズムの表面を一方向にラビングしたあと、試料を主プリズムに滴下した。屈折率(n‖)は偏光の方向がラビングの方向と平行であるときに測定した。屈折率(n⊥)は偏光の方向がラビングの方向と垂直であるときに測定した。光学的異方性(Δn)の値は、Δn=n‖−n⊥、の式から計算した。
【0176】
(9)誘電率異方性(Δε;25℃で測定)
2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が9μmであり、そしてツイスト角が80度であるTN素子に試料を入れた。この素子にサイン波(10V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の長軸方向における誘電率(ε‖)を測定した。この素子にサイン波(0.5V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の短軸方向における誘電率(ε⊥)を測定した。誘電率異方性の値は、Δε=ε‖−ε⊥、の式から計算した。
【0177】
(10)弾性定数(K;25℃で測定;pN)
測定には横河・ヒューレットパッカード株式会社製のHP4284A型LCRメータを用いた。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が20μmである水平配向素子に試料を入れた。このセルに0ボルトから20ボルト電荷を印加し、静電容量および印加電圧を測定した。測定した静電容量(C)と印加電圧(V)の値を「液晶デバイスハンドブックク」(日刊工業新聞社)、75頁にある式(2.98)、式(2.101)を用いてフィッティングし、式(2.99)からK
11およびK
33の値を得た。次に171頁にある式(3.18)に、先ほど求めたK
11およびK
33の値を用いてK
22を算出した。弾性定数は、このようにして求めたK
11、K
22、およびK
33の平均値である。
【0178】
(11)しきい値電圧(Vth;25℃で測定;V)
測定には大塚電子株式会社製のLCD5100型輝度計を用いた。光源はハロゲンランプである。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が約0.45/Δn(μm)であり、ツイスト角が80度であるノーマリーホワイトモード(normally white mode)のTN素子に試料を入れた。この素子に印加する電圧(32Hz、矩形波)は0Vから10Vまで0.02Vずつ段階的に増加させた。この際に、素子に垂直方向から光を照射し、素子を透過した光量を測定した。この光量が最大になったときが透過率100%であり、この光量が最小であったときが透過率0%である電圧−透過率曲線を作成した。しきい値電圧は透過率が90%になったときの電圧である。
【0179】
[実施例1]
化合物(a−4)の合成
【0180】
第1工程:化合物(S−3)の合成
窒素雰囲気下、化合物(S−1)(50.0g,0.269mol)、トリエチルアミン(20.4g,0.202mol)、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(BHT)(5.000mg、0.0220mmol)、ジクロロメタン(500mL)の混合物に氷冷下で化合物(S−2)(17.5g,0.167mol)のジクロロメタン(40mL)溶液を滴下し、その後徐々に室温まで昇温した。室温で16時間撹拌した後、反応溶液を水に注ぎ、有機層を1M塩酸、次いで飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、有機溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 ヘプタン:酢酸エチル=5:5(容積比))で精製し、化合物(S−3)を無色結晶(18.6g)として得た。
【0181】
第2工程:化合物(a−4)の合成
窒素雰囲気下、化合物(S−3)(16.0g,0.0629mol)、トリエチルアミン(3.82g,0.0377mol)、BHT(5.000mg、0.0220mmol)、ジクロロメタン(200mL)の混合物に氷冷下で化合物(S−4)(4.17g,0.0346mol)のジクロロメタン(10mL)溶液を滴下し、その後徐々に室温まで昇温した。室温で16時間撹拌した後、反応溶液を水に注ぎ、有機層を1M塩酸、飽和食塩水、1M水酸化ナトリウム水溶液で順次洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、有機溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 トルエン:酢酸エチル=9:1(容積比))で精製し、エタノールとジクロロメタンの混合溶媒より再結晶を行い、化合物(a−4)を無色結晶(17.1g)として得た。
融点:67.0℃.
1H−NMR(DMSO−d;δ ppm):7.57(dd,4H),7.26(dd,2H),7.20(dd,2H),6.38(s,1H),6.06−5.98(m,1H),5.78(t,1H),5.47−5.43(m,1H),5.35(dd,1H),4.77−4.76(m,2H),2.08(s,3H).
【0182】
[実施例2]
化合物(a−14)の合成
【0183】
第1工程:化合物(S−7)の合成
窒素雰囲気下、化合物(S−5)(20.0g,0.0803mol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(3.71g,3.21mmol)、ヨウ化銅(1.84g,9.64mmol)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(20mL)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)(100mL)の混合物に、氷冷下、化合物(S−6)(5.40g,0.0964mol)を滴下し1時間撹拌した。次に反応液を50℃に加熱し、4時間撹拌した。反応液を水に注ぎ、2M塩酸を加えて酸性にした。水層をジエチルエーテルで抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、有機溶媒を減圧下留去し、化合物(S−7)(15.8g)を得た。
【0184】
第2工程:化合物(S−8)の合成
窒素雰囲気下、水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム(3.6mol/Lトルエン溶液)(24.0mL,0.0864mol)のジエチルエーテル(50mL)溶液に、氷冷下、化合物(S−7)(12.0g,0.0535mol)のジエチルエーテル(60mL)溶液を滴下した。滴下終了後、反応溶液を室温に戻し、1時間撹拌した。反応溶液に1M硫酸(70mL)を滴下した後、有機層を水、次いで飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。有機溶媒を減圧下留去し、化合物(S−8)(9.53g)を得た。
【0185】
第3工程:化合物(a−14)の合成
窒素雰囲気下、化合物(S−8)(6.00g,0.0265mol)、トリエチルアミン(5.90g,0.0583mol)、BHT(5.000mg、0.0220mmol)、ジクロロメタン(100mL)の混合物に氷冷下で化合物(S−2)(6.09g,0.0583mol)のジクロロメタン(5mL)溶液を滴下し、その後徐々に室温まで昇温した。室温で16時間撹拌した後、反応溶液を水に注ぎ、有機層を1M塩酸、飽和食塩水、1M水酸化ナトリウム水溶液で順次洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、有機溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 トルエン:酢酸エチル=9:1(容積比))で精製し、エタノールとジクロロメタンの混合溶媒より再結晶を行い、化合物(a−14)を無色結晶(6.77g)として得た。
融点:72.0℃.
1H−NMR(DMSO−d;δ ppm):7.61(d,2H),7.55(d,2H),7.47(d,2H),7.20(d,2H),6.71(d,2H),6.40−6.35(m,1H),6.38(s,1H),6.17(s,1H),5.78(t,1H),5.61(t,1H),4.84(dd,2H),2.09(s,3H),1.99(s,3H).
【0186】
[実施例3]
化合物(a−17)の合成
【0187】
第1工程:化合物(S−10)の合成
窒素雰囲気下、化合物(S−1)(100g,0.537mol)とDMF(500mL)の混合物を40℃に加温した。ここに60%水素化ナトリウム(22.6g,0.565mol)を加え、70℃で1時間撹拌した。次に、化合物(S−9)(52.9g,0.269mol)を30分間で反応溶液に滴下し、さらに95℃で2時間撹拌した。反応溶液を60℃に冷却し、0.6M水酸化ナトリウム水溶液(1L)に注ぎ、メチルtert−ブチルエーテル(MTBE):ヘキサン=1:1(容積比)の混合溶媒で抽出した後、有機層を0.6M水酸化ナトリウム水溶液で洗浄した。有機溶媒を減圧下留去し、化合物(S−10)を黄色液体(47.1g)として得た。
【0188】
第2工程:化合物(S−12)の合成
窒素雰囲気下、化合物(S−10)(47.1g,0.156mol)、化合物(S−11)(13.4g,0.156mol)、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)(1.91g,0.0156mol)とジクロロメタン(800mL)の混合物中、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(33.7g,0.163mol)のジクロロメタン(100mL)溶液を25℃で滴下し、15時間撹拌した。反応溶液中の析出物をろ過後、有機層を水洗し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。有機溶媒を減圧下留去後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 ジクロロメタン:ヘキサン=1:1(容積比))で精製し、化合物(S−12)を無色結晶(46.2g)として得た。
【0189】
第3工程:化合物(S−13)の合成
窒素雰囲気下、化合物(S−12)(46.2g,0.125mol)をアセトン(300mL)とTHF(600mL)の混合溶媒に溶解し、5℃で2M塩酸を滴下し、室温で15時間撹拌した。反応溶液を減圧下200mL程度溶媒を留去し、濃縮した反応溶液中の析出物をろ取した。得られた固形物を50℃で2時間乾燥し、化合物(S−13)を無色結晶(31.9g)として得た。
【0190】
第4工程:化合物(a−17)の合成
窒素雰囲気下、化合物(S−13)(31.9g,0.101mol)とトルエン(900mL)の混合物に、炭酸カリウム(83.8g,0.606mol)次いで化合物(S−14)(155g,1.01mol)を加え、40時間加熱還流した。反応溶液を室温まで放冷し、析出物をろ別した。ろ液の溶媒を減圧下留去し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒 1,2−ジクロロエタン:ヘキサン=3:7(容積比))で精製した。得られた結晶をヘキサン(100mL)中で1時間加熱還流し、冷却後析出物をろ取し、化合物(a−17)を無色結晶(8.31g)として得た。
融点:111.0℃.
1H−NMR(DMSO−d;δ ppm):7.74−7.67(m,4H),7.28−7.20(m,4H),6.89(d,1H),6.62(d,1H),6.30(s,1H),6.17(s,1H),5.91(s,1H),5.84(s,1H),2.02(s,3H),1.94(s,3H).
【0191】
実施例1〜3に示した合成方法により、下記の化合物を対応する出発原料から合成した。
【0192】
[実施例4]
化合物(a−33)
【0193】
融点:89.4℃.
1H−NMR(CDCl
3;δ ppm):7.55(dd,4H),7.20(d,2H),7.13(d,2H),6.98(d,1H),6.65−6.56(m,2H),6.38−6.20(m,3H),6.04(dd,1H),5.97(dd,1H).
【0194】
[実施例5]
化合物(a−16)
【0195】
融点:80.0℃.
1H−NMR(CDCl
3;δ ppm):7.55(dd,4H),7.19(d,2H),7.13(d,2H),6.96(d,1H),6.63(dd,1H),6.37−6.29(m,2H),6.18(d,1H),6.04(d,1H),5.71(t,1H),2.01(s,3H).
【0196】
[実施例6]
化合物(a−68)
【0197】
融点:105.9℃.
1H−NMR(CDCl
3;δ ppm):7.55(t,4H),7.18(d,2H),7.13(d,2H),6.98(d,1H),6.58(dd,1H),6.37(s,1H),6.26(dd,1H),6.20(d,1H),5.97(dd,1H),5.78(t,1H),2.08(s,3H).
【0198】
[実施例7]
化合物(a−31)
【0199】
融点:58.0℃.
1H−NMR(CDCl
3;δ ppm):7.52(d,2H),7.37−7.32(m,2H),7.22(t,1H),7.13(d,2H),6.96(d,1H),6.41(s,1H),6.29(s,1H),6.18(d,1H),5.82(s,1H),5.71(s,1H),2.09(s,3H),2.01(s,3H).
【0200】
[実施例8]
化合物(a−25)
【0201】
融点:64.7℃.
1H−NMR(CDCl
3;δ ppm):7.82(d,1H),7.74(dd,1H),7.54(d,2H),7.36(d,1H),7.16(d,2H),6.96(d,1H),6.42(s,1H),6.29(s,1H),6.19(d,1H),5.83(s,1H),5.71(s,1H),2.09(s,3H),2.00(s,3H).
【0202】
[実施例9]
化合物(a−261)
【0203】
融点:156.7℃.
1H−NMR(CDCl
3;δ ppm):7.66−7.59(m,6H),7.42(dd,1H),7.37(dd,1H),7.23−7.18(m,4H),6.99(d,1H),6.38(s,1H),6.29(s,1H),6.17(d,1H),5.79(t,1H),5.72(t,1H),2.09(s,3H),2.01(s,3H).
【0204】
[実施例10]
化合物(a−262)
【0205】
融点:91.3℃.
1H−NMR(CDCl
3;δ ppm):7.64(d,2H),7.57(dd,2H),7.48(t,1H),7.42(dd,1H),7.37(dd,1H),7.22(dd,2H),7.15(dd,2H),6.97(d,1H),6.38(s,1H),6.29(s,1H),6.21(d,1H),5.78(t,1H),5.71(t,1H),2.08(s,3H),2.01(s,3H).
【0206】
[実施例11]
化合物(a−199)
【0207】
融点:107.1℃.
1H−NMR(CDCl
3;δ ppm):7.65(d,2H),7.58(dd,2H),7.48(t,1H),7.40(dd,1H),7.37(dd,1H),7.22(dd,2H),7.15(dd,2H),6.98(d,1H),6.65−6.57(m,2H),6.38−6.21(m,3H),6.02(dd,1H),5.98(dd,1H).
【0208】
[実施例12]
化合物(a−241)
【0209】
融点:113.5℃.
1H−NMR(CDCl
3;δ ppm):7.63(d,2H),7.57(dd,2H),7.49(t,1H),7.42(dd,1H),7.37(dd,1H),7.22(dd,2H),7.16(dd,2H),6.99(d,1H),6.58(dd,1H),6.38(s,1H),6.26(dd,1H),6.22(d,1H),5.98(dd,1H),5.79(t,1H),2.09(s,3H).
【0210】
2.組成物の実施例
実施例により本発明の液晶組成物を詳細に説明する。本発明は下記の実施例によって限定されない。実施例における化合物は、下記の表1の定義に基づいて記号により表した。表1において、1,4−シクロヘキシレンに関する立体配置はトランスである。液晶性化合物の割合(百分率)は、液晶組成物の全重量に基づいた重量百分率(重量%)である。最後に、組成物の物性値をまとめた。物性は、先に記載した方法にしたがって測定し、測定値を外挿することなくそのまま記載した。
【0211】
【0212】
[実施例13](使用例1)
2−HH−3 15%
3−HH−4 5%
3−HB−O2 5%
3−HHB−1 8%
3−HHB−3 2%
3−HBB−F 20%
2−HHB(F,F)−F 14%
3−HHB(F,F)−F 4%
3−HBB(F,F)−F 2%
5−HBB(F,F)−F 6%
2−HHBB(F,F)−F 8%
3−HHBB(F,F)−F 5%
4−HHBB(F,F)−F 6%
上記組成物100重量部に下記化合物を0.3重量部添加した。
【0213】
[実施例14](使用例2)
5−HB−CL 16%
3−HH−4 12%
3−HH−5 4%
3−HHB−F 4%
3−HHB−CL 3%
4−HHB−CL 4%
3−HHB(F)−F 10%
4−HHB(F)−F 9%
5−HHB(F)−F 9%
7−HHB(F)−F 8%
5−HBB(F)−F 4%
1O1−HBBH−5 3%
3−HHBB(F,F)−F 2%
4−HHBB(F,F)−F 3%
5−HHBB(F,F)−F 3%
3−HH2BB(F,F)−F 3%
4−HH2BB(F,F)−F 3%
上記組成物100重量部に下記化合物を0.3重量部添加した。
NI=113.9℃;Δn=0.090;Δε=3.8;η=19.2mPa・s.
【0214】
[実施例15](使用例3)
3−HHB(F,F)−F 9%
3−H2HB(F,F)−F 8%
4−H2HB(F,F)−F 8%
5−H2HB(F,F)−F 8%
3−HBB(F,F)−F 21%
5−HBB(F,F)−F 20%
3−H2BB(F,F)−F 10%
5−HHBB(F,F)−F 3%
5−HHEBB−F 2%
3−HH2BB(F,F)−F 3%
1O1−HBBH−4 4%
1O1−HBBH−5 4%
上記組成物100重量部に下記化合物を0.3重量部添加した。
NI=98.8℃;Δn=0.117;Δε=9.1;η=35.3mPa・s.
【0215】
[実施例16](使用例4)
5−HB−F 12%
6−HB−F 9%
7−HB−F 7%
2−HHB−OCF3 7%
3−HHB−OCF3 7%
4−HHB−OCF3 7%
5−HHB−OCF3 5%
3−HH2B−OCF3 4%
5−HH2B−OCF3 4%
3−HHB(F,F)−OCF2H 4%
3−HHB(F,F)−OCF3 5%
3−HH2B(F)−F 3%
3−HBB(F)−F 10%
5−HBB(F)−F 10%
5−HBBH−3 3%
3−HB(F)BH−3 3%
上記組成物100重量部に下記化合物を0.3重量部添加した。
【0216】
[実施例17](使用例5)
5−HB−CL 11%
3−HH−4 8%
3−HHB−1 5%
3−HHB(F,F)−F 8%
3−HBB(F,F)−F 20%
5−HBB(F,F)−F 15%
3−HHEB(F,F)−F 10%
4−HHEB(F,F)−F 3%
5−HHEB(F,F)−F 3%
2−HBEB(F,F)−F 3%
3−HBEB(F,F)−F 5%
5−HBEB(F,F)−F 3%
3−HHBB(F,F)−F 6%
上記組成物100重量部に下記化合物を0.3重量部添加した。
【0217】
[実施例18](使用例6)
3−HB−CL 6%
5−HB−CL 4%
3−HHB−OCF3 5%
3−H2HB−OCF3 5%
5−H4HB−OCF3 15%
V−HHB(F)−F 5%
3−HHB(F)−F 5%
5−HHB(F)−F 5%
3−H4HB(F,F)−CF3 8%
5−H4HB(F,F)−CF3 10%
5−H2HB(F,F)−F 5%
5−H4HB(F,F)−F 7%
2−H2BB(F)−F 5%
3−H2BB(F)−F 10%
3−HBEB(F,F)−F 5%
上記組成物100重量部に下記化合物を0.3重量部添加した。
NI=70.4℃;Δn=0.098;Δε=8.4;η=25.6mPa・s.
【0218】
[実施例19](使用例7)
5−HB−CL 17%
7−HB(F,F)−F 3%
3−HH−4 10%
3−HH−5 5%
3−HB−O2 15%
3−HHB−1 8%
3−HHB−O1 5%
2−HHB(F)−F 7%
3−HHB(F)−F 7%
5−HHB(F)−F 7%
3−HHB(F,F)−F 6%
3−H2HB(F,F)−F 5%
4−H2HB(F,F)−F 5%
上記組成物100重量部に下記化合物を0.3重量部添加した。
NI=71.7℃;Δn=0.074;Δε=2.9.
【0219】
[実施例20](使用例8)
5−HB−CL 3%
7−HB(F)−F 7%
3−HH−4 9%
3−HH−EMe 23%
3−HHEB−F 8%
5−HHEB−F 8%
3−HHEB(F,F)−F 10%
4−HHEB(F,F)−F 5%
4−HGB(F,F)−F 5%
5−HGB(F,F)−F 6%
2−H2GB(F,F)−F 4%
3−H2GB(F,F)−F 5%
5−GHB(F,F)−F 7%
上記組成物100重量部に下記化合物を0.15重量部添加し、
さらに下記化合物を0.15重量部添加した。
NI=80.1℃;Δn=0.065;Δε=5.8;η=20.1mPa・s.
【0220】
[比較例1]
化合物(R−1)の合成
【0221】
第1工程
化合物(S−8)を化合物(S−1)に変更した以外は、[実施例2]の第3工程と同様に合成を行い、化合物(R−1)の無色結晶を得た。
融点:150.0℃
1H−NMR(DMSO−d;δ ppm):7.24(d,4H),6.96(d,4H),6.41(d,2H),6.26(d,2H),1.98(s,6H).
【0222】
[比較例2]
化合物(R−2)の合成
【0223】
第1工程
窒素雰囲気下、化合物(S−15)(100g,0.768mol)、トルエン(300mL)、ピリジン(100mL)の混合物中に、氷冷下、化合物(S−16)(161g,0.845mol)を滴下し、室温で18時間撹拌した。純水を加え、40℃で4時間撹拌した後、反応溶液をトルエンで抽出し、有機層を水洗し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。有機溶媒を減圧下留去し、化合物(S−17)を無色液体(207g)として得た。
【0224】
第2工程
窒素雰囲気下、化合物(S−1)(30.0g,0.161mol)、DMF(200mL)の混合物に、水素化ナトリウム(55%)(16.8g,0.386mol)を加え、80℃で1時間撹拌した。反応溶液にBHT(5.000mg、0.0220mmol)とDMF(600mL)を加えた後、化合物(S−17)(110g,0.387mol)を加え、60℃で4時間撹拌した。反応溶液に純水を注ぎ、トルエンで抽出し、有機層を水洗し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、有機溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 トルエン:酢酸エチル=9:1(容積比))で精製後、エタノールより再結晶し、化合物(R−2)を無色結晶(22.3g)として得た。
融点:89.0℃
1H−NMR(DMSO−d;δ ppm):7.47(d,4H),6.98(d,4H),6.15(s,2H),5.60(t,2H),4.52(t,4H),4.26(t,4H),1.96(s,6H).
【0225】
[比較例3]
(液晶組成物への溶解性の比較)
液晶組成物Aに化合物(a−17)を0.3重量%加え、50℃で30分間加熱した。溶解した液晶組成物を室温で2日間放置した。その後、目視により結晶の析出の有無を確認した。化合物(a−262)についても同様に測定した。一方、[比較例1]の化合物(R−1)および[比較例2]の化合物(R−2)についても同様に測定した。表2に結果を示す。表2中の記号において“○”は結晶が認められないもの、“×”は結晶が認められたものを示す。
液晶組成物Aの成分とその割合は以下のとおりである。
【0226】
【0227】
表2.液晶組成物への溶解性の比較
【0228】
表2から、本発明の重合性化合物は、液晶組成物Aへの溶解性が良好であることが分かった。
【0229】
[比較例4]
(残留モノマー濃度の比較)
液晶組成物Aに重合性化合物(a−17)を0.3重量%加え溶解し、11mW/cm
2の紫外線(HOYA CANDEO OPTRONICS株式会社製EXECURE4000−D;水銀キセノンランプ)を273秒間照射した。その後、HPLCにより残存モノマー濃度を測定した。一方、[比較例1]の化合物(R−1)および[比較例2]の化合物(R−2)についても同様に測定した。表3に結果を示す。この比較により本発明の化合物は残留モノマー濃度が低いことがわかった。
【0230】
表3.重合反応性の比較