(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(D)成分が一分子中に平均2個以上のケイ素原子結合の水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンであり、(E)成分が白金系触媒であり、ヒドロシリル化反応により硬化するものである請求項4記載の熱伝導性シリコーン組成物。
【背景技術】
【0002】
電子部品の多くは使用中に熱を発生させるので、その電子部品を適切に機能させるためには、その電子部品から熱を取り除くことが必要である。
【0003】
この熱を除去する手段として多くの方法が提案されている。特に発熱量の多い電子部品では、電子部品とヒートシンク等の部材との間に熱伝導性グリースや熱伝導性シートなどの熱伝導性材料を介在させて熱を逃がす方法が提案されている(特許文献1:特開昭56−28264号公報、特許文献2:特開昭61−157587号公報)。
【0004】
また、このような熱伝導性材料としては、シリコーンオイルをベースとし、酸化亜鉛やアルミナ粉末などの熱伝導性充填剤を配合した放熱グリースが知られている(特許文献3:特公昭52−33272号公報、特許文献4:特公昭59−52195号公報)。
【0005】
これらの熱伝導性材料の熱伝導率を上げるには、熱伝導性充填剤を高充填すればよいが、ただ単に高充填しようとすると、熱伝導性材料の流動性が著しく低下し、塗布性(ディスペンス性、スクリーンプリント性)等の作業性が悪くなり、更には電子部品やヒートシンク表面の微細な凹凸に追従できなくなるという問題が生じる。
【0006】
そこで、この問題を解決するために、熱伝導性充填剤をシランカップリング剤(ウェッター)で表面処理してベースポリマーであるシリコーンに分散させ、熱伝導性材料の流動性を保つという方法が提案されている。
【0007】
現在、頻繁に用いられるウェッターとして、アルコキシシラン(特許文献5:特許第3290127号公報、特許文献6:特許第3372487号公報)や、アルコキシ基含有オルガノポリシロキサン(特許文献7:特開2004−262972号公報、特許文献8:特開2005−162975号公報)があり、このウェッターを用いると、熱伝導性材料の初期粘度を非常に低くすることができるという利点がある。しかし、アルコキシシランにおいては揮発しやすいため、熱伝導性組成物に熱をかけ続けていくと経時で増粘し、ひいては流動性を保てなくなるという問題がある。アルコキシ基含有オルガノポリシロキサンにおいては、揮発し難いものの、同容量部のアルコキシシランと比較して非常に濡れ性が悪いため、このウェッターでは熱伝導性充填剤を高充填できないという問題がある。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の熱伝導性シリコーン組成物は、
(A)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン、
(B)下記一般式(1)で表わされるポリオルガノメタロシロキサン、
【化2】
(式中、R
1〜R
4は互いに同一又は異種の炭素数1〜10の非置換もしくは置換の一価炭化水素基である。Mは金属原子(ただし、ケイ素原子を除く)であり、nは1〜100の整数である。またXは炭素数1〜20のアルコキシ基、及び炭素数5〜20の分子内に2個以上のカルボニル基をもつキレート結合が可能なβ−ケトエステル化合物からなる配位子を示す。kは1以上の整数、特に2以上の整数で金属Mの価数、mは1以上の整数で、k≧mである。)
(C)熱伝導性充填剤
を含有してなるものである。
本組成物は、上記(A)成分、(B)成分及び(C)成分を少なくとも含有する非硬化性のものであってもよく、更には後述する(D)硬化剤及び(E)硬化触媒を含有するゲル状あるいはゴム状の硬化物を形成する硬化性のものであってもよい。
【0014】
[(A)成分]
本発明に使用される(A)成分は、組成物の主剤(ベースポリマー)となる成分であり、平均で1分子中に少なくとも2個、好ましくは2〜20個のケイ素原子に結合したアルケニル基(以下、「ケイ素原子結合アルケニル基」という)を含有するオルガノポリシロキサンである。
【0015】
前記ケイ素原子結合アルケニル基は、炭素数が、通常、2〜8、好ましくは2〜4のものである。その具体例としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基等が挙げられ、好ましくはビニル基である。
【0016】
このケイ素原子結合アルケニル基のオルガノポリシロキサン分子中における結合位置は、分子鎖末端であっても、分子鎖非末端(即ち、分子鎖側鎖)であっても、あるいはこれらの両方であってもよい。本成分中、前記ケイ素原子結合アルケニル基の含有量は、本成分100g中、好ましくは0.001〜10モル、特に好ましくは0.01〜5モルである。
【0017】
本成分のオルガノポリシロキサン分子中において、前記ケイ素原子結合アルケニル基以外のケイ素原子に結合した有機基(以下、「ケイ素原子結合有機基」という)は、脂肪族不飽和結合を有しないものであれば特に限定されず、例えば、非置換又は置換の、炭素数が、通常、1〜12、好ましくは1〜10の、脂肪族不飽和結合を除く一価炭化水素基等が挙げられる。この非置換又は置換の一価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;これらの基の水素原子の一部又は全部が塩素原子、フッ素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換された、クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基等が挙げられ、好ましくはアルキル基、アリール基であり、より好ましくはメチル基、フェニル基である。
【0018】
また、(A)成分の分子構造は特に限定されず、例えば直鎖状、分岐鎖状、一部分岐を有する直鎖状、三次元網状、デンドリマー状が挙げられ、好ましくは直鎖状(代表的には、主鎖がジオルガノシロキサン単位の繰返し構造からなり分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖された直鎖状ジオルガノポリシロキサン)、一部分岐を有する直鎖状である。(A)成分は、これらの分子構造を有する単一の重合体、これらの分子構造からなる共重合体、又はこれらの重合体の2種以上の混合物であってもよい。
【0019】
本成分の25℃における粘度は、組成物の作業性や硬化物の力学特性がより優れたものとなるので、好ましくは100〜500,000mPa・s、特に好ましくは300〜100,000mPa・sである。なお、本発明において、粘度は回転粘度計(例えば、BL型、BH型、BS型、コーンプレート型等)により測定できる。このような粘度を与える直鎖状ジオルガノポリシロキサンとしては、重合度(主鎖中のジオルガノシロキサン単位の繰返し数)が、好ましくは50〜1,000、より好ましくは100〜500程度であることが望ましい。なお、本発明においては、重合度(又は分子量)は、例えば、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)等を展開溶媒としたゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析によるポリスチレン換算の重量平均重合度(又は重量平均分子量)等として求めることができる。
【0020】
このような(A)成分としては、例えば、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端メチルフェニルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサンコポリマー、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサンコポリマー、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサンコポリマー、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサンコポリマー、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチル(3,3,3−トリフルオロプロピル)ポリシロキサン、式:(CH
3)
3SiO
1/2で表わされるシロキサン単位と式:(CH
3)
2(CH
2=CH)SiO
1/2で表わされるシロキサン単位と式:(CH
3)
2SiO
2/2で表わされるシロキサン単位からなる三次元網状オルガノシロキサンコポリマー、及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0021】
[(B)成分]
本発明における組成物中において、(B)成分は、後述する、熱伝導性を付与する成分(C)に作用して、(A)成分のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンと(C)成分の熱伝導性充填剤との濡れ性(親和性)、分散性を向上させる分散向上剤(ウェッター)としての作用効果を奏する本発明の特徴となる成分であって、組成物全体の流動性を確保するために、本発明に必須の成分である。
【0022】
(B)成分は、下記一般式(1)で示されるポリオルガノメタロシロキサンである。
【化3】
(式中、R
1〜R
4は互いに同一又は異種の炭素数1〜10の非置換もしくは置換の一価炭化水素基である。Mは金属原子(ただし、ケイ素原子を除く)であり、nは1〜100の整数である。またXは炭素数1〜20のアルコキシ基、及び炭素数5〜20の分子内に2個以上のカルボニル基をもつキレート結合が可能なβ−ケトエステル化合物からなる配位子を示す。kは1以上の整数、特に2以上の整数で金属Mの価数、mは1以上の整数で、k≧mである。)
【0023】
上記式(1)中、R
1〜R
4はそれぞれ独立に炭素数1〜10、好ましくは1〜6の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基等のアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基、あるいはこれらの基の水素原子が部分的に塩素原子、フッ素原子、臭素原子といったハロゲン原子等で置換された基、例えばトリフルオロプロピル基などが挙げられ、メチル基、フェニル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。このR
1〜R
4は同一の基であっても異種の基であってもよい。
また、式(1)中のnは1〜100の整数であり、10〜50の整数であることが好ましい。
【0024】
Mは金属原子(ただし、ケイ素原子を除く)であり、ホウ素原子、アルミニウム原子、ガリウム原子などのIII族の金属原子、チタニウム原子、ジルコニウム原子、スズ原子などのIV族の金属原子等が、ルイス酸性の強い化合物となり得るので好ましく、これらの他に、リン原子、アンチモン原子、ニオブ原子、ビスマス原子、タンタル原子などのV族の金属原子、ベリリウム原子、マグネシウム原子、亜鉛原子などのII族の金属原子、鉄原子、コバルト原子、ニッケル原子などのVIII族の金属原子等が挙げられ、チタニウム原子、ジルコニウム原子、アルミニウム原子が好ましい。
また、Xは炭素数1〜20、特に炭素数1〜4のアルコキシ基、及び炭素数5〜20、特に炭素数5〜8の分子内に2個以上のカルボニル基をもつキレート結合が可能なβ−ケトエステル化合物からなる配位子であり、炭素数1〜20のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等が挙げられ、炭素数5〜20の分子内に2個以上のカルボニル基をもつキレート結合が可能なβ−ケトエステル化合物としては、アセチルアセトネート、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸n−プロピル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸n−ブチル、アセト酢酸sec−ブチル、アセト酢酸tert−ブチル等が挙げられる。Xとしてはイソプロポキシ基、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトネートが好ましい。
kは1以上(通常1〜6)、特に2〜4の整数で、金属Mの価数であり、mは1以上(通常1〜6)、特に2〜4の整数で、k≧mである。
【0025】
上記ポリオルガノメタロシロキサンは、金属含有ルイス酸とヘキサメチルシクロトリシロキサン等の環状シロキサンを反応させることにより得ることができる(特許第3047769号公報参照)。また、片末端シラノール基封鎖ポリオルガノシロキサンと、チタニウムなどの金属アルコキシドとを反応させても得ることができる(特開2003−165841号公報参照)。なお、前者の方法においては、オルガノポリシロキサン末端にアルコキシシリル基以外の官能基を有するポリオルガノメタロシロキサンを得ることができない。
【0026】
上記ポリオルガノメタロシロキサンとしては、下記式で表わされるものを例示することができる。なお、下記例において、Meはメチル基、etacはエチルアセトアセテート、acacはアセチルアセトネートを示す。
【化4】
【0028】
本発明において(B)成分の配合量は、(C)成分の表面を処理して、得られる熱伝導性シリコーン組成物中への分散性を向上できる量であり、(A)成分100質量部あたり、1〜50質量部、好ましくは5〜30質量部である。(B)成分の配合量が少なすぎると濡れ性の乏しいものとなり、(B)成分の効果を十分に発揮できないおそれがあり、多すぎてもウェッター効果が増大することがないため、不経済であり好ましくない。(B)成分は1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0029】
本組成物中に(B)成分を含有させる方法としては、例えば、(B)成分と(C)成分を混合して、(C)成分の表面を予め(B)成分で処理した後、(A)成分に添加する方法、(A)成分と、(B)成分及び(C)成分を同時に混合し、(A)成分中で(C)成分の表面を(B)成分で処理する方法等が挙げられ、特に後者の方法であることが好ましい。このように、(B)成分は、(C)成分の表面を予め処理した状態で本組成物中に含有されているか、又は本組成物中に単に含有されていてもよい。また、(C)成分を(B)成分により処理する場合、その処理を促進するために、加熱したり、酢酸などの酸性物質や4級アンモニウム塩などの塩基性物質を触媒量併用してもよい。加熱処理する場合、温度は100〜180℃、特に120〜150℃で、30分〜2時間程度加熱処理することが好ましい。
【0030】
[(C)成分]
本発明に使用される(C)成分の熱伝導性充填剤は、シリコーン組成物に熱伝導性を付与させるために用いられるものであり、例えば、アルミニウム粉末、銅粉末、ニッケル粉末等の金属系粉末、ハイジライト粉末等の金属水酸化物系粉末、アルミナ粉末、酸化マグネシウム粉末、酸化ベリリウム粉末、酸化クロム粉末、酸化チタン粉末等の金属酸化物系粉末、窒化ホウ素粉末、窒化アルミニウム粉末等の金属窒化物系粉末、及びこれら2種以上の混合物が挙げられる。
本発明において、電気絶縁性が要求される場合には、金属水酸化物系粉末、金属酸化物系粉末、金属窒化物系粉末であることが好ましく、特にハイジライト粉末(水酸化アルミニウム粉末)、アルミナ粉末が望ましい。
【0031】
また、(C)成分の形状としては、例えば、球状、針状、円盤状、棒状、扁平形状、不定形状が挙げられる。
(C)成分の平均粒径は特に限定されないが、0.1〜100μmの範囲内にあることが好ましく、特に0.5〜50μmの範囲内にあることが好ましい。本発明において、平均粒径は、例えば、レーザー光回折法による粒度分布測定における累積質量平均径;D50(又はメジアン径)等として求めることができる。
【0032】
本発明において(C)成分の配合量は、(A)成分100質量部あたり、100〜2,000質量部、好ましくは200〜1,800質量部、更に好ましくは300〜1,500質量部である。(C)成分の配合量が少なすぎると熱伝導性組成物の熱伝導率が低くなってしまい、多すぎると熱伝導性組成物の粘度が上昇して作業性に劣ったものとなる。(C)成分は1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0033】
本組成物は、上述したように、上記(A)〜(C)成分を少なくとも含有する非硬化性のものであってもよいが、後述する(D)硬化剤及び(E)硬化触媒を含有するゲル状あるいはゴム状の硬化物を形成する硬化性のものであってもよい。本組成物が硬化性を有する場合、その硬化機構は限定されないが、速やかに硬化し、副生成物が発生しないことから、ヒドロシリル化反応であることが好ましい。
【0034】
[(D)成分]
本組成物は、(D)硬化剤及び後述する(E)硬化触媒の配合により、硬化性の組成物とすることができる。本組成物がヒドロシリル化反応により硬化する場合には、(D)成分の硬化剤は、一分子中に平均2個以上のケイ素原子結合の水素原子(以下、「ケイ素原子結合水素原子」即ち、SiH基という)を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。
【0035】
オルガノハイドロジェンポリシロキサン分子中におけるケイ素原子結合水素原子の結合位置は、分子鎖末端であっても、分子鎖非末端であっても、あるいはこれらの両方であってもよい。本成分中、前記ケイ素原子結合水素原子の含有量は、本成分100g中、好ましくは0.001〜10モル、更に好ましくは0.01〜5モルである。
【0036】
このオルガノハイドロジェンポリシロキサン分子中において、前記ケイ素原子結合水素原子以外のケイ素原子結合有機基は、特に限定されないが、例えば、非置換又は置換の、炭素数が、通常、1〜10、好ましくは1〜6の一価炭化水素基等が挙げられる。その具体例としては、(A)成分の説明において、前記ケイ素原子結合アルケニル基以外のケイ素原子結合有機基として例示したものと同様のもの、またビニル基、アリル基等のアルケニル基などが挙げられ、好ましくは脂肪族不飽和結合を有しないものである。
【0037】
本成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は特に限定されず、従来製造されているものを用いることができ、例えば、直鎖状、環状、分岐鎖状、三次元網状構造(樹脂状)等が挙げられ、直鎖状又は環状が好ましい。
【0038】
本成分の25℃における粘度は、組成物の作業性や硬化物の力学特性がより優れたものとなるので、好ましくは0.1〜5,000mPa・s、より好ましくは0.5〜1,000mPa・s、特に好ましくは2〜500mPa・sの範囲を満たす、室温(25℃)で液状である範囲が望ましい。
【0039】
このようなオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサンコポリマー、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサンコポリマー、式:(CH
3)
3SiO
1/2で表わされるシロキサン単位と式:(CH
3)
2HSiO
1/2で表わされるシロキサン単位と式:SiO
4/2で表わされるシロキサン単位からなるオルガノシロキサンコポリマー、及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0040】
(D)成分の配合量は、前記(A)成分中のアルケニル基1モルに対し、ケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)が0.4〜4.0モルとなる量であることが好ましく、より好ましくは0.6〜3.0モルとなる量である。ケイ素原子に結合した水素原子が少なすぎると硬化物の強度が十分に得られない場合があり、多すぎると硬化物の力学特性が劣るおそれがある。
【0041】
[(E)成分]
また、本組成物がヒドロシリル化(付加)反応により硬化する場合には、(E)硬化触媒としては、白金系触媒等の白金族金属触媒が挙げられ、例えば、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、白金のオレフィン錯体、白金のアルケニルシロキサン錯体、白金のカルボニル錯体などが挙げられる。
【0042】
その配合量は、触媒としての有効量であればよいが、通常、(A)〜(D)成分の合計量に対して、白金族金属の質量換算で、0.1〜1,000ppmであり、好ましくは1〜500ppmであり、より好ましくは5〜100ppmである。これは、本成分の含有量が上記範囲の下限未満であると、得られるシリコーン組成物が十分に硬化しなくなる傾向があるからであり、一方、上記範囲の上限を超える量を配合しても、得られるシリコーン組成物の硬化速度は顕著に向上しないからである。
【0043】
[その他の成分]
更に本組成物には、本発明の目的を損なわない限り、その他任意の成分として、例えば沈降性シリカ、ヒュームドシリカ等のシリカ系充填剤や、その他の(C)成分以外の無機質充填剤、これらの充填剤の表面を有機ケイ素化合物により疎水化処理した充填剤;その他、顔料、耐熱添加剤、難燃付与剤、可塑剤、接着助剤を含有してもよい。
【0044】
特に、本組成物がヒドロシリル化反応により硬化する場合、本組成物の硬化速度を調節し、取扱作業性を向上させるために反応制御剤を含有することが好ましい。この反応制御剤の具体例としては、トリフェニルホスフィン等のリン含有化合物;トリブチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ベンゾトリアゾール等の窒素原子を含有する化合物;硫黄原子を含有する化合物;アセチレンアルコール類等のアセチレン系化合物;ハイドロパーオキシ化合物;マレイン酸誘導体等が挙げられる。
【0045】
本発明の熱伝導性シリコーン組成物は、上述した各成分を常法に準じて均一に混合することにより調製することができる。
【0046】
本組成物は、常温でグリース状、スラリー状、ペースト状あるいは粘土状である。
なお、本発明の熱伝導性シリコーン組成物は、25℃におけるBS型回転粘度計での10rpmの粘度が150Pa・s以下(特に、5〜150Pa・s)であることが好ましく、より好ましくは10〜120Pa・sである。熱伝導性シリコーン組成物の粘度を上記範囲とするためには(A)成分の粘度(25℃)を400〜1,000mPa・s程度とし、該(A)成分100質量部に対して、(B)成分を20〜50質量部、(C)成分を100〜300質量部程度の配合割合で添加することが好ましい。
【0047】
また、本組成物が硬化性の組成物である場合、それを硬化させる方法は限定されず、例えば、本組成物を成形後、室温にて放置する方法、あるいは本組成物を成形後、50〜200℃に加熱する方法が挙げられる。また、このようにして得られるシリコーン硬化物の性状は限定されないが、例えば、ゲル状、低硬度のゴム状、あるいは高硬度のゴム状が挙げられる。JIS K 6253に規定のタイプAデュロメータ硬さが10〜95の範囲内であると、得られるシリコーン硬化物を放熱材料として部材に十分に密着させることができ、取扱性が良好となる。
【実施例】
【0048】
以下、合成例、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において部及び%は質量部及び質量%を示し、平均粒径は、レーザー回折法による粒度分布測定における累積質量平均径(D50)を示し、粘度は25℃での回転粘度計による測定法の測定値を示したものである。また、下記式において、Meはメチル基である。
【0049】
[合成例1]
温度計、撹拌機、冷却器を備えた内容積500mlの四つ口フラスコに、アルミニウムセカンダリーブチラート6.10g(0.0248mol)、下記一般式(2)で示される片末端シラノール基封鎖ジメチルポリシロキサン(以下、ポリマーAという)114.57g(0.0495mol)、及びトルエン115gの混合物を投入し、100℃で7時間撹拌した。反応混合物を10mmHgの減圧下で120℃に加熱して、希釈剤のトルエンを留去し、粘度が170mPa・s、不揮発分96%の淡桃色透明液体116.6gを得た。この反応生成物は、
29Si−NMRスペクトル、
1H−NMRスペクトルにより平均組成が下記式(3)で表わされるアルミノシロキサンであることが確認された。
【化6】
【0050】
[合成例2]
温度計、撹拌機、冷却器を備えた内容積500mlの四つ口フラスコに、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート3.32g(0.0121mol)、上記ポリマーA112.29g(0.0485mol)、及びトルエン110gの混合物を投入し、100℃で7時間撹拌した。反応混合物を10mmHgの減圧下で120℃に加熱して、希釈剤のトルエンを留去し、粘度が120mPa・s、不揮発分96%の淡桃色透明液体114.2gを得た。この反応生成物は、
29Si−NMRスペクトル、
1H−NMRスペクトルにより平均組成が下記式(4)で表わされるアルミノシロキサンであることが確認された。
【化7】
【0051】
[合成例3]
温度計、撹拌機、冷却器を備えた内容積500mlの四つ口フラスコに、ジイソプロポキシチタンジアセチルアセトネート(75%イソプロパノール溶液)4.45g(0.0122mol)、上記ポリマーA112.96g(0.0488mol)、及びトルエン110gの混合物を投入し、100℃で7時間撹拌した。反応混合物を10mmHgの減圧下で120℃に加熱して、希釈剤のトルエンを留去し、粘度が85mPa・s、不揮発分97%の褐色透明液体115.7gを得た。この反応生成物は、
29Si−NMRスペクトル、
1H−NMRスペクトルにより平均組成が下記式(5)で表わされるチタノシロキサンであることが確認された。
【化8】
【0052】
[実施例1]
平均粒径が0.9μmである真球状のアルミナ粉末60部と平均粒径が18μmである真球状のアルミナ粉末120部、合成例1で得られたアルミノシロキサン2部、及び粘度が600mPa・sである両末端ビニルジメチルシロキシ基封鎖ポリジメチルシロキサン18部を万能混合撹拌機(株式会社ダルトン製)にて、室温(25℃)で1時間混合した後、120℃で1時間混合した。得られた混合物を室温まで冷却し、組成物1を得た。
【0053】
[実施例2]
実施例1において、アルミノシロキサンの代わりに合成例2で得られたアルミノシロキサン2部を添加した以外は実施例1と同様の手法で組成物2を得た。
【0054】
[実施例3]
実施例1において、アルミノシロキサンの代わりに合成例3で得られたチタノシロキサン2部を添加した以外は実施例1と同様の手法で組成物3を得た。
【0055】
[比較例1]
実施例1において、アルミノシロキサンを除いた以外は実施例1と同様の手法で組成物4を得た。
【0056】
[比較例2]
実施例1において、アルミノシロキサンの代わりにアルミニウムセカンダリーブチラート2部を添加した以外は実施例1と同様の手法で組成物5を得た。
【0057】
上記実施例、比較例にて得られた組成物を25℃の恒温室に24時間放置後、BS型回転粘度計(株式会社東京計器製)を用いてローターNo.7、回転速度10rpmの条件で粘度を測定した。これらの結果を表1に示す。
【0058】
【表1】
*1)組成物はミキサーで撹拌混合しても熱伝導性充填剤であるアルミナ粉末の配合量が多すぎるため、ペースト状にならなかった。