(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記窒化ケイ素質セラミックスは、焼結体であって、アルミニウム(Al)の含有量が0.1質量%以下、マグネシウム(Mg)の含有量が0.7質量%以下、チタン(Ti)の含有量が0.9質量%以下である、請求項8に記載の支持ロール。
前記窒化ケイ素質セラミックスは、ジルコニウム(Zr)の含有量が3.5質量%以下、イットリウム(Y)の含有量が0.5質量%以上、10質量%以下である、請求項9に記載の支持ロール。
請求項1〜12のいずれか一項に記載の支持ロールを用いて、帯板状のガラスリボンを支持する工程を有し、その後、前記ガラスリボンを徐冷し、切断する工程を有する、ガラス板の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。以下の図面において、同一のまたは対応する構成には、同一のまたは対応する符号を付して、説明を省略する。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態によるガラス板の成形装置を示す一部断面図である。
図2は、
図1のガラス板の成形装置の下部構造を示す平面図である。
【0011】
成形装置10は、溶融ガラスを帯板状のガラスリボン14に成形する。成形装置10は、溶融金属(例えば溶融スズ)16を収容する浴槽20を備え、溶融金属16上に連続的に供給される溶融ガラスを、溶融金属16上で所定方向(
図2中、X方向)に流動させて帯板状に成形する。ガラスリボン14は、所定方向(
図2中、X方向)に流動する過程で冷却された後、リフトアウトロールによって溶融金属から引き上げられ、徐冷炉内で徐冷され、徐冷炉から搬出された後、切断機によって所定の寸法形状に切断され、製品であるガラス板となる。
【0012】
成形装置10は、溶融金属16を収容する浴槽20、浴槽20の上方に設けられる天井22、および浴槽20と天井22との間の隙間を塞ぐ側壁24などを備える。天井22にはガス供給路32が設けられ、ガス供給路32には、加熱源としてのヒータ34が挿通される。
【0013】
ガス供給路32は、溶融金属16の上方空間に還元性ガスを供給し、溶融金属16の酸化を防止する。還元性ガスは、例えば、水素ガスを1〜15体積%、窒素ガスを85〜99体積%含む。
【0014】
ヒータ34は、ガラスリボン14の移動方向および幅方向に間隔をおいて、溶融金属16およびガラスリボン14上方に複数設けられる。ヒータ34の出力は、上流側から下流側に向かうほどガラスリボン14の温度が低くなるように制御される。また、ヒータ34の出力は、ガラスリボン14の厚さが幅方向(Y方向)に均一になるように制御される。
【0015】
成形装置10は、帯板状のガラスリボン14の幅方向における収縮の抑制に用いられる支持ロール40を有する。支持ロール40は、対で用いられ、ガラスリボン14の両側縁部を押さえる。複数対の支持ロール40が、ガラスリボン14の移動方向に沿って間隔をおいて配設される。支持ロール40はガラスリボン14と接触する回転部材42を先端部に有し、回転部材42が回転することによって、ガラスリボン14が所定方向に送り出される。ガラスリボン14は所定方向に移動しながら、徐々に冷却され固くなる。
【0016】
図3は、本発明の一実施形態による支持ロールを示す断面図である。支持ロール40は、回転部材42、軸部材44、張出部材としてのフランジ46、伝熱部材48、押付部材50、第1弾性体54、断熱部材60、芯合わせ部材64、第2弾性体66等で構成される。
【0017】
回転部材42は、ガラスリボン14に対するスリップを抑制するため、例えば
図1に示すように、ガラスリボン14と接触する歯車状の凹凸43を外周に有してよい。歯車状の凹凸43の凸部の形状は、特に限定されないが、例えば
図3に示すように、先細り状(例えば、四角錐状)に形成されてよい。歯車状の凹凸43は、
図1に示すように、回転部材42の外周の厚さ方向(
図1のY方向)に一列形成されているが、複数列形成されてもよい。
【0018】
回転部材42は、内部に冷媒流路を有していない。尚、回転部材42の貫通孔に挿通される軸部材44は回転部材42とは別の部材であるので、軸部材44に形成される冷媒流路45は回転部材42の外部に形成される冷媒流路である。
【0019】
回転部材42は、金属材料よりも耐熱性の高いセラミックスで形成される。回転部材42のセラミックスとしては、特に限定されないが、例えば、炭化ケイ素(SiC)質セラミックス、窒化ケイ素(Si
3N
4)質セラミックスなどが用いられる。炭化ケイ素や窒化ケイ素は、溶融金属16の飛沫や溶融金属16の蒸気に対する耐性が高く、また、高温強度やクリープ特性に優れている。
【0020】
回転部材42のセラミックスの種類は、ガラスの種類などに応じて選定される。例えば、無アルカリガラスの場合、ガラスの成形温度が高いので、耐熱衝撃性に優れた窒化ケイ素質セラミックスが好適である。窒化ケイ素質セラミックスは、無アルカリガラスとの反応性が低い点でも優れている。一方、ソーダライムガラスの場合、窒化ケイ素質セラミックスの他、炭化ケイ素質セラミックスやアルミナ系セラミックスが使用できる。
【0021】
無アルカリガラスの場合、回転部材42のうち、少なくとも、ガラスリボン14と接触する部分が窒化ケイ素質セラミックスであればよく、回転部材42の全体が窒化ケイ素質セラミックスでなくてもよい。例えば、窒化ケイ素質セラミックス以外のセラミックスからなる基材上に、窒化ケイ素質セラミックスの層が形成されてもよい。
【0022】
窒化ケイ素質セラミックスは、窒化ケイ素の粉末と、焼結助剤の粉末とを含む混合粉末で作製した成形体を焼結した焼結体であってよい。焼結方法としては、常圧焼結法、加圧焼結法(ホットプレス焼結、ガス圧焼結を含む)などがある。焼結助剤としては、例えば、アルミナ(Al
2O
3)、マグネシア(MgO)、チタニア(TiO
2)、ジルコニア(ZrO
2)、およびイットリア(Y
2O
3)から選ばれる少なくとも1種類が用いられる。
【0023】
窒化ケイ素質セラミックスは、アルミニウム(Al)の含有量が0.1質量%以下、好ましくは1質量%未満、マグネシウム(Mg)の含有量が0.7質量%以下、好ましくは0.7質量%未満、チタン(Ti)の含有量が0.9質量%以下、好ましくは0.9質量%未満でよい。Al含有量、Mg含有量、およびTi含有量が上記の範囲であると、回転部材42とガラスリボン14との反応性が低く、また、回転部材42とガラスリボン14とがくっつき難く、良好な耐久性が得られる。Al含有量、Mg含有量、およびTi含有量は、それぞれ、0質量%であってもよい。
【0024】
窒化ケイ素質セラミックスは、ジルコニウム(Zr)の含有量が3.5質量%以下、好ましくは3.5質量%未満、イットリウム(Y)の含有量が0.5質量%以上、好ましくは0.5質量%超、10質量%以下、好ましくは10質量%未満でよい。ZrやYは、AlやMg、Tiに比べて、ガラスリボン14と相互拡散し難い成分であるので、上記の範囲で含有されてよい。上記の範囲で含有されることによって、窒化ケイ素粉末の焼結を促進することができる。Zrは任意成分であって、Zr含有量は0質量%であってもよい。
【0025】
尚、本実施形態の窒化ケイ素質セラミックスは、常圧焼結法または加圧焼結法により得られる焼結体であるとしたが、反応焼結法により得られる焼結体であってもよい。反応焼結法は、金属ケイ素(Si)の粉末で成形された成形体を窒素雰囲気中で加熱する方法である。反応焼結法は、焼結助剤を使用しないので、高純度の焼結体が得られ、焼結体のガラスリボン14に対する耐久性を向上できる。
【0026】
製品であるガラス板は、特に限定されないが、例えば液晶ディスプレイ(LCD)やプラズマディスプレイ(PDP)、有機ELディスプレイなどのフラットパネルディスプレイ(FPD)用であってよい。近年、FPDの薄型化が進行しており、FPD用のガラス板の薄板化が進行している。特にディスプレイ基板用ガラス板の場合、好ましくは0.7mm以下、より好ましくは0.3mm以下、さらに好ましくは0.2mm以下、特に好ましくは0.1mm以下のガラス板が要望されている。そのため、ガラスリボン14の厚さが薄くなっており、ガラスリボン14の幅方向の収縮力が強くなると共に、ガラスリボン14の成形温度が高くなっている。本実施形態の支持ロール40は、詳しくは後述するが、回転部材42と張出部材としてのフランジ46との間に、回転部材42よりも高い熱伝導率を有する伝熱部材48が配設されているので、回転部材42の割れを抑制でき、FPD用のガラス板の成形に適している。
【0027】
製品であるガラス板の種類は、特に限定されない。ガラス板の組成は、例えば、酸化物基準の質量%表示で、SiO
2:50〜75%、Al
2O
3:0.1〜24%、B
2O
3:0〜12%、MgO:0〜10%、CaO:0〜14.5%、SrO:0〜24%、BaO:0〜13.5%、Na
2O:0〜20%、K
2O:0〜20%、ZrO
2:0〜5%、MgO+CaO+SrO+BaO:5〜29.5%、Na
2O+K
2O:0〜20%を含有する。
【0028】
ガラス板は、例えば、無アルカリガラスで形成されてよい。無アルカリガラスは、アルカリ金属酸化物(Na
2O、K
2O、Li
2O等)を実質的に含有しないガラスである。無アルカリガラスは、アルカリ金属酸化物の含有量の合量が0.1質量%以下でよい。
【0029】
無アルカリガラスは、例えば、酸化物基準の質量%表示で、SiO
2:50〜70%(好ましくは50〜66%)、Al
2O
3:10.5〜24%、B
2O
3:0〜12%、MgO:0〜10%(好ましくは0〜8%)、CaO:0〜14.5%、SrO:0〜24%、BaO:0〜13.5%、ZrO
2:0〜5%、MgO+CaO+SrO+BaO:8〜29.5%(好ましくは9〜29.5%)を含有する。
【0030】
無アルカリガラスは、高い歪点と高い溶解性とを両立する場合、好ましくは、酸化物基準の質量%表示で、SiO
2:58〜66%、Al
2O
3:15〜22%、B
2O
3:5〜12%、MgO:0〜8%、CaO:0〜9%、SrO:3〜12.5%、BaO:0〜2%、MgO+CaO+SrO+BaO:9〜18%を含有する。
【0031】
無アルカリガラスは、特に高い歪点を得たい場合、好ましくは、酸化物基準の質量%表示で、SiO
2:54〜73%、Al
2O
3:10.5〜22.5%、B
2O
3:0〜5.5%、MgO:0〜10%、CaO:0〜9%、SrO:0〜16%、BaO:0〜2.5%、MgO+CaO+SrO+BaO:8〜26%を含有する。
【0032】
軸部材44は、
図1に示すように、側壁24を貫通しており、側壁24の外側に配設される駆動装置36と接続される。駆動装置36は、モータや減速機などで構成され、軸部材44の中心線を中心に軸部材44を回転させる。軸部材44は、回転部材42の中央部に形成される貫通孔に挿通され、回転部材42と共に回転する。
【0033】
軸部材44は、例えば金属材料で円筒状に形成されてよく、水などの冷媒が通る冷媒流路45を内部に有する。冷媒は、流体であればよく、空気などでもよい。
【0034】
フランジ46は、軸部材44と一体に形成されてよい。フランジ46は、軸部材44の途中で、軸部材44の外周から回転部材42の径方向に張り出す。フランジ46の内周には軸部材44の冷媒流路45から分岐する分岐路47が形成され、分岐路47はフランジ46の外周付近まで延びている。分岐路47を通る冷媒によってフランジ46が冷却される。
【0035】
伝熱部材48は、例えばリング状に形成される。伝熱部材48の内径は軸部材44の外径よりも大きく、伝熱部材48は軸部材44と接触しない。伝熱部材48は、フランジ46の回転部材42側の側面に形成される位置決め溝49によって位置決めされる。
【0036】
伝熱部材48は、フランジ46と回転部材42との間に設けられ、回転部材42よりも高い熱伝導率を有し、ガラスリボン14から伝わった回転部材42の熱をフランジ46に逃がす。回転部材42の外周がガラスリボン14とくっつかない程度の温度に保たれ、回転トルクが軽減できる。
【0037】
ここで、伝熱部材48の熱伝導率および回転部材42の熱伝導率は、支持ロール40の使用温度で測定する。支持ロール40の使用温度において、伝熱部材48の熱伝導率は好ましくは30〜200W/(m・℃)である。
【0038】
フランジ46が伝熱部材48を冷却し、伝熱部材48が回転部材42を側面から冷却するので、回転部材42が内周から冷却される場合に比べて、回転部材42の径方向における温度勾配が緩やかになり、回転部材42の熱応力による破損が抑制できる。
【0039】
伝熱部材48は、回転部材42よりも高い熱伝導率を有していればよく、例えば金属やカーボンなどで形成される。金属やカーボンはセラミックスよりも柔らかく、伝熱部材48と回転部材42とが密接しやすい。よって、接触熱抵抗が低く、伝熱効率が良い。耐熱性の観点からカーボンが特に好ましい。
【0040】
伝熱部材48がフランジ46と同じ材料で形成される場合、伝熱部材48とフランジ46とは一体に形成されてもよい。
【0041】
押付部材50は、回転部材42を伝熱部材48に押し付け、伝熱部材48と回転部材42との接触熱抵抗を下げる。押付部材50は、回転部材42を基準として、伝熱部材48とは反対側に配設される。
【0042】
押付部材50は、例えば押付部材本体51および接触部52で構成される。押付部材本体51は例えば金属で形成され、押付部材本体51の中央部に形成される貫通孔に軸部材44が挿通される。接触部52は、伝熱部材48と同様にリング状に形成されてよい。接触部52の外径は軸部材44の内径よりも大きく、接触部52は軸部材44と接触せずに回転部材42における伝熱部材48の接触部分の反対側を集中的に押す。接触部52は、金属やカーボンで形成される。耐熱性の観点からカーボンが特に好ましい。接触部52は、押付部材本体51の回転部材42側の側面に形成される位置決め溝53によって位置決めされる。接触部52が押付部材本体51と同じ材料で形成される場合、接触部52と押付部材本体51とは一体に形成されてもよい。
【0043】
第1弾性体54は、軸部材44の軸方向に変位自在な押付部材50を回転部材42に向けて付勢する。第1弾性体54は例えば皿バネで構成され、第1弾性体54に形成される貫通孔に軸部材44が挿通される。軸部材44はネジ軸部44aを有し、ネジ軸部44aに螺合される第1ナット58と回転部材42との間に第1弾性体54が自然状態よりも縮んだ状態で配設される。温度変化などで寸法変化が生じる場合に、押付部材50によって回転部材42が伝熱部材48に常に押し付けられる。
【0044】
尚、本実施形態の第1弾性体54は皿バネで構成されるが、コイルバネで構成されてもよく、第1弾性体54の構成は特に限定されない。また、第1弾性体54はなくてもよく、この場合、第1ナット58を締めることで、第1ナット58が押付部材50を押し、押付部材50が回転部材42を伝熱部材48に押し付ける。
【0045】
断熱部材60は、例えば筒状に形成される。断熱部材60は、加工性やコストの観点から、周方向に複数の分割体(例えば2つの半割体)に分割されてもよい。
【0046】
断熱部材60は、回転部材42の内周と軸部材44の外周との間に配設され、回転部材42よりも低い熱伝導率を有し、回転部材42の熱が軸部材44に逃げるのを抑制する。回転部材42の径方向における温度勾配がより緩やかになり、回転部材42の熱応力による破損が抑制できる。
【0047】
ここで、断熱部材60の熱伝導率および回転部材42の熱伝導率は、支持ロール40の使用温度で測定する。支持ロール40の使用温度において、断熱部材60の熱伝導率は好ましくは0.01〜30W/(m・℃)である。
【0048】
断熱部材60の材料は、回転部材42の材料よりも熱伝導率の低いものであれば特に限定されないが、例えばスレートなどが用いられる。スレートは、例えば粘板岩等の岩石からなる天然スレート、セメントに繊維素材を混入させた人造スレートのいずれでもよい。
【0049】
断熱部材60の外周面は、回転部材42の内周面と接触する接触面であって、回転部材42の中心線に沿ってフランジ46に向かうほど直径が小さくなるテーパ形状である。同様に、回転部材42の内周面は、断熱部材60の外周面と接触する接触面であって、回転部材42の中心線に沿ってフランジ46に向かうほど直径が小さくなるテーパ形状である。互いに接触する断熱部材60および回転部材42のうちの少なくともいずれか一方の接触面がテーパ形状であれば、断熱部材60と回転部材42との間のがたつきが低減できる。尚、テーパの向きは逆向きでもよく、各接触面は、回転部材42の中心線に沿ってフランジ46に向かうほど直径が大きくなるテーパ形状でもよい。
【0050】
芯合わせ部材64は、断熱部材60の中心線と軸部材44の中心線とを合わせるものであり、例えば筒状に形成され、断熱部材60の内周と軸部材44の外周との間に配設される。芯合わせ部材64は軸部材44と同様に金属で形成されてよい。芯合わせ部材64と軸部材44との熱膨張差が小さいので、芯合わせ部材64と軸部材44とのクリアランスが狭く設定でき、芯合わせ部材64と軸部材44とのがたつきが低減できる。
【0051】
芯合わせ部材64は、断熱部材60が周方向に複数の分割体に分割される場合に、複数の分割体の位置を合わせる役割を果たす。
【0052】
芯合わせ部材64の外周面は、断熱部材60の内周面と接触する接触面であって、回転部材42の中心線に沿ってフランジ46に向かうほど直径が小さくなるテーパ形状である。同様に、断熱部材60の内周面は、芯合わせ部材64の外周面と接触する接触面であって、回転部材42の中心線に沿ってフランジ46に向かうほど直径が小さくなるテーパ形状である。互いに接触する芯合わせ部材64および断熱部材60のうちの少なくともいずれか一方の接触面がテーパ形状であれば、芯合わせ部材64と断熱部材60とのがたつきが低減できる。尚、テーパの向きは逆向きでもよく、各接触面は、回転部材42の中心線に沿ってフランジ46に向かうほど直径が大きくなるテーパ形状でもよい。
【0053】
尚、本実施形態では、断熱部材60の内周と軸部材44の外周との間に芯合わせ部材64が配設されるが、芯合わせ部材64がなくてもよく、断熱部材60の内周と軸部材44の外周との間に僅かなクリアランスがあってもよい。
【0054】
第2弾性体66は、軸部材44の軸方向に変位自在な芯合わせ部材64を介して、軸部材44の軸方向に変位自在な断熱部材60をフランジ46に向けて付勢する。第2弾性体66は例えば皿バネで構成され、第2弾性体66に形成される貫通孔に軸部材44が挿通される。軸部材44のネジ軸部44aに螺合される第2ナット68と、芯合わせ部材64との間に第2弾性体66が自然状態よりも縮んだ状態で配設される。温度変化などで寸法変化が生じる場合に、芯合わせ部材64と断熱部材60との離間が防止でき、また、断熱部材60と回転部材42との離間が防止できる。
【0055】
尚、本実施形態の第2弾性体66は皿バネで構成されるが、コイルバネで構成されてもよく、第2弾性体66の構成は特に限定されない。芯合わせ部材64がない場合、第2弾性体66は断熱部材60と接触し、断熱部材60をフランジ46に向けて付勢する。また、第2弾性体66はなくてもよく、この場合、第2ナット68を締めることで、芯合わせ部材64と断熱部材60とが密接し、断熱部材60と回転部材42とが密接する。
【0056】
本実施形態の支持ロール40は、ガラスリボン14の成形性を考慮すると、成形装置10の成形域(ガラスリボン14が10
4.5〜10
7.5dPa・sの粘度範囲の領域)および第1低温域(ガラスリボン14が10
6.7〜10
7.65dPa・sの粘度範囲の領域)で用いることが好ましく、成形域(ガラスリボン14が10
4.5〜10
7.5dPa・sの粘度範囲の領域)および第2低温域(ガラスリボン14が10
7.5超〜10
7.65dPa・sの粘度範囲の領域)で用いることがさらに好ましい。無アルカリガラスの場合、ガラスリボン14が10
4.5〜10
7.5dPa・sの粘度範囲は、ガラスリボン14が946〜1200℃の温度範囲に相当し、ガラスリボン14が10
6.7〜10
7.65dPa・sの粘度範囲は、ガラスリボン14が937〜1000℃の温度範囲に相当し、ガラスリボン14が10
7.5超〜10
7.65dPa・sの粘度範囲は、ガラスリボン14が937℃以上946℃未満の温度範囲に相当する。
【0057】
尚、支持ロール40は、一般的な構成の支持ロールと組み合わせて用いられてもよく、成形域、第1低温域、第2低温域などの一部で用いられてもよい。
【実施例】
【0058】
例1〜4では、溶融ガラスに対する焼結体の濡れ性と、焼結体中に含まれる不純物との関係について調べた。
【0059】
評価用の試験片および試験板は、例毎に異なる窒化ケイ素(Si
3N
4)質セラミックスの焼結体を加工して作製した。
【0060】
焼結体中の不純物の含有量は、焼結体から角状に切り出した試験片をグロー放電質量分析法で分析して測定した。測定の対象とした不純物は、焼結助剤として含まれるものであって、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)である。
【0061】
溶融ガラスに対する焼結体の濡れ性は、高温濡れ性試験機(アルバック理工社製、WET1200)により測定した。具体的には無アルカリガラス(旭硝子社製、AN100)の角状ガラス片を厚さ1mmに加工した試験板上に載置し、窒素雰囲気中、1150℃まで10分で昇温し、1150℃で10分間保持して溶融ガラスを生成した後、温度を1150℃から1050℃に90秒で降下し1050℃で維持して、液滴の接触角を測定した。測定は、1050℃に降下した時点、およびその時点から2時間後、4時間後、6時間後、8時間後に行った。接触角が大きいほど、溶融ガラスが焼結体に濡れ難いことを意味するので、溶融ガラスと焼結体の反応性が低いことを示すことになる。また、接触角の時間変化が少ないほど、濡れ難さが持続しやすいことを意味する。
【0062】
評価の結果を、表1および
図4に示す。
図4中、縦軸は接触角(°)、横軸は経過時間(h:hours)を示す。尚、10000質量ppmは1質量%である。
【0063】
【表1】
表1および
図4から明らかなように、Al含有量が0.1質量%以下、好ましくは0.1質量%未満、Mg含有量が0.7質量%以下、好ましくは0.7質量%未満、Ti含有量が0.9質量%以下、好ましくは0.9質量%未満、Zr含有量が3.5質量%以下、好ましくは3.5質量%未満、Y含有量が0.5質量%以上、10質量%以下、好ましくは0.5質量%超、10質量%未満であれば、接触角の時間変化が少なく、8時間経過後の接触角が大きいので、良好な耐久性が得られることが分かる。
【0064】
以上、支持ロール、ガラス板の製造方法およびガラス板の製造装置の実施形態等を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。本発明は、特許請求の範囲に記載された趣旨の範囲で変形や改良が可能である。
【0065】
例えば、上記実施形態の支持ロール40は、溶融金属16上でガラスリボン14を成形するフロート法で用いられるが、他の成形方法で用いられてもよく、例えばフュージョン法で用いられてもよい。
【0066】
上記実施形態の回転部材42は、外周に歯車状の凹凸を有するが、外周に歯車状の凹凸を有さなくてもよい。回転部材の内部に冷媒が流れていないので、回転部材の近傍において、ガラスリボンが強く冷却されず、固くなり難い。従って、歯車状の凹凸がなくても、回転部材がガラスリボンを押さえやすく、ガラスリボンの幅方向の収縮を抑制できる。
【0067】
図5は、変形例による回転部材を示す断面図である。
図6は、
図5の回転部材の凸形状の寸法を示す図その1である。
図7は、
図5の回転部材の凸形状の寸法を示す図その2である。
【0068】
図5に示す回転部材242は、
図3に示す回転部材42に代えて用いられる。回転部材242の外周面は、全周にわたって断面形状が径方向外方に凸の湾曲状であり、軸方向中央部が軸方向両端部よりも径方向外方に突出する。回転部材242の外周面は、全周にわたって同じ断面形状を有する。歯車状の凹凸がないので、破損し難く、成形や加工コストが低減される。
【0069】
例えば、
図6に示すように、前記凸の湾曲状の曲率半径Raは、ガラスリボン14とのグリップ力を考慮すると、R1〜R100mmが好ましく、R3〜R50mmがより好ましく、R5〜R30mmがさらに好ましく、R10〜R20mmが特に好ましい。また前記凸の湾曲状において、例えば
図7に示すように、前記軸方向中央部の曲率半径Rbと前記軸方向両端部の曲率半径Rcとが複合Rであってもよい。このとき曲率半径Rb、RcともR1〜R100mmが好ましく、R3〜R50mmがより好ましく、R5〜R30mmがさらに好ましく、R10〜R20mmが特に好ましい。また前記凸の湾曲状において、一部に平坦部を有していてもよいが、平坦部を有していない方がガラスリボン14とのグリップ力が安定するので好ましい。
【0070】
ガラスリボン14とのグリップ力を考慮すると、
図6に示す前記凸の湾曲状における回転部材242の半径方向の幅dは、0.5mm以上が好ましく、1mm以上がより好ましく、2mm以上がさらに好ましい。同様に、前記凸の湾曲状における回転部材242の半径方向の幅dは、5mm以下が好ましく、4mm以下がより好ましい。
【0071】
図6に示す回転部材242の半径rは、フランジ46とガラスリボン14との接触防止や軸部材44の水平性を考慮すると、100mm以上が好ましく、150mm以上がより好ましく、180mm以上がさらに好ましく、回転部材242とガラスリボン14との位置調整や回転部材242の回転速度の微調整を考慮すると350mm以下が好ましく、300mm以下がより好ましく、270mm以下がさらに好ましい。
【0072】
回転部材242の厚さwは、ガラスリボン14とのグリップ力を考慮すると、5mm以上が好ましく、10mm以上がより好ましく、15mm以上がさらに好ましく、30mm以上が特に好ましく、ガラスリボン14の平坦性向上や不要なグリップ幅の拡大防止を考慮すると120mm以下が好ましく、100mm以下がより好ましく、80mm以下がさらに好ましく、60mm以下がよりさらに好ましく、40mm以下が特に好ましい。
【0073】
図8は、別の変形例による回転部材を示す断面図である。
図8に示す回転部材342は、
図3に示す回転部材42に代えて用いられる。回転部材342の外周面の断面形状は平坦であり、回転部材342は外周面と側面との間に断面形状が丸みを帯びた境界部を有する。境界部は面取りなどによって形成される。
【0074】
図5に示す変形例や
図8に示す変形例において、回転部材の外周面に高さ0.1〜10mmの突起を複数設けてもよいし、回転部材の外周面に深さ0.1〜10mmの溝を複数設けてもよい。また、回転部材の外周面に突起と溝の両方を設けてもよい。突起の高さや溝の深さは、回転部材の外周面を基準面として計測される。突起の高さや溝の深さは、
図6に示す半径r、
図6に示す曲率半径Ra、および
図7に示す曲率半径Rb、Rcにくらべて小さい。
【0075】
本出願は、2013年5月16日に日本国特許庁に出願された特願2013−104378号に基づく優先権を主張するものであり、特願2013−104378号の全内容を本出願に援用する。