(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の凸部を、その複数の凸部の底面が含まれる平面において任意の位置に任意の方向に直線を引いたとき、その直線が少なくともいずれかの凸部内を通過するように配置したことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のサファイア基板。
前記複数の凸部は、隣接する凸部間において、一方の凸部はその底面の1つの頂点が他方の凸部の底面の2つの頂点とその間にある窪みの最深点を結ぶ領域内に位置するように配置されている請求項1乃至5のいずれか1項に記載のサファイア基板。
前記複数の凸部は、それぞれ正n角形の頂点と中心とに配置された(n+1)個の凸部からなるグループが繰り返し配置された請求項1乃至6のいずれか1項に記載のサファイア基板。
前記窒化物半導体層として、下地層、n型層、活性層、p型層が順に積層された構造を有し、前記下地層が平坦な表面を有することを特徴とする請求項9に記載の半導体発光素子。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る実施形態の窒化物半導体発光素子は、
図1に示すように、サファイア基板10の上に、下地層21、第1導電型層(n型層)22、活性層(発光層)23、第2導電型層(p型層)24が順に積層された半導体積層構造20が設けられており、下地層21が成長される基板10の表面には、それぞれ錐形状又は台形錐形状の複数の凸部(ディンプル)1が設けられている。
ここで特に、本実施形態では、複数の凸部1を、隣接する凸部1間に位置する基板表面に対して平行にかつ基板表面に近接して伝搬する光がどのような方向に伝搬した場合であっても少なくとも1つの凸部1によって反射されるように配置している。
これにより、本実施形態の窒化物半導体発光素子は、発光層23で発光した光を複数の凸部1によって側面から出射させることなく、出射方向に効率よく反射させることが可能になり、光の取り出し効率を高くできる。
以下、本発明に係る実施形態のサファイア基板における凸部1の具体的な配置例について説明する。
【0015】
尚、本発明において、凸部1は略n角錐形状又は底面と略平行でかつ底面と略相似形状の上面1bを有する略n角錐台形状であり、それぞれ底面が外側に膨らんだ円弧形状のn個の辺を有する略n角形であればよいが、以下の実施形態1〜6の説明では、代表的な略三角錐形状又は略三角錐台形状の凸部1の例により示している。
また、実施形態1〜6において参照する図面では、凸部1の平面形状(底面の形状)を正三角形により模式的に示しているが、サファイア基板をエッチングすることにより略三角錐形状又は略三角錐台形状の凸部1を形成した場合には、その底面の各辺は、通常、外側に膨らんだ円弧形状になり、凸部1の傾斜した側面は外側に膨らんだ面となる。
【0016】
実施形態1.
図2の平面図には、本発明に係る実施形態1のサファイア基板における凸部1の配列を示している。
本実施形態1では、格子形状が正三角形である三角格子の格子点にそれぞれ底面の重心が一致するようにそれぞれ略三角錘形状の複数の凸部1を配置している。また、実施形態1では、全ての凸部1が同一の方向を向くように三角格子の格子点に配置している。本明細書において、凸部1の方向とは、底面の頂点の角度を2等分する線が凸部1内から外に向かう方向をいい、2以上の凸部1が同一の方向を向くとは凸部1間で対応する全ての方向が同一方向を向いていることをいう。言い替えれば、底面を回転することなく、平行移動させることにより、他の全ての凸部1の底面に重ね合わせることができるような状態で配置されていることをいう。
このように配列された実施形態1の複数の凸部1は、複数の行が形成されるように凸部1が配列されており、どの方向の行をみても、同一行内に配列された凸部1は、その1つの頂点の角度を2等分する2等分直線が一直線上に位置しかつその2等分直線が凸部1内部から外部に向かう方向により規定される凸部方向が同一になるようにそれぞれ配列されている。
【0017】
本実施形態1では、上記配置に加えさらに、凸部1の底面を含む平面において任意の位置に任意の方向に直線を引いたとき、その直線が必ずいずれかの凸部1内を通過するように凸部1の大きさは設定される。
【0018】
このように凸部1の大きさが設定されかつ
図2に示すように配列された複数の凸部1を有するサファイア基板を用いて、その複数の凸部1が形成された一方の主面上に、下地層21、第1導電型層(n型層)22、活性層(発光層)23、第2導電型層(p型層)24が順に積層された半導体積層構造20を構成して、窒化物半導体発光素子を構成すると、発光層23で発光した光のうちサファイア基板側に出射された光は、隣接する凸部1間に位置する基板表面に対して平行にかつ基板表面に近接して伝搬する光L1がどのような方向に伝搬した場合であっても少なくとも1つの凸部1によって反射される。
したがって、本実施形態1のサファイア基板を用いて構成された窒化物半導体発光素子は、上記配列された複数の凸部1があることによって側面から出射させることなく、出射方向に効率よく反射させることが可能になり、光の取り出し効率を高くできる。
【0019】
また、本実施形態1のサファイア基板において凸部1は、上記配列により比較的密に配置されることになり、一方の主面に設けられた複数の凸部1のサファイア基板の一方の主面全体に対して占める割合が大きくなるので、低転位の窒化物半導体の成長が可能になり、窒化物半導体発光素子の発光効率を高くできる。
【0020】
実施形態2.
図3の平面図には、本発明に係る実施形態2のサファイア基板における凸部1の配列を示している。
この
図3の配列は、複数の凸部1によってそれぞれ構成された複数の行からなっており、同一行内に配列された凸部1は、その1つの頂点の角度を2等分する2等分直線が一直線上に位置しかつその2等分直線が凸部1内部から外部に向かう方向により規定される凸部方向が同一になるようにそれぞれ配列されており、奇数行の凸部1の配列方向と偶数行の凸部1の配列方向とは反対になっている。すなわち、各列における凸部1は隣接間で方向が反対になっている。
また、行に平行に任意の位置に直線を引いたとき、列に平行に任意の位置に直線を引いた場合のいずれの場合であっても、それらの直線がいずれかの凸部1の内部を通過するように各凸部1の底面の大きさが設定されている。
【0021】
このように凸部1の大きさが設定されかつ
図3に示すように配列された複数の凸部1を有するサファイア基板を用いて、その複数の凸部1が形成された一方の主面上に、下地層21、第1導電型層(n型層)22、活性層(発光層)23、第2導電型層(p型層)24が順に積層された半導体積層構造20を構成して、窒化物半導体発光素子を構成すると、発光層23で発光した光のうちサファイア基板側に出射された光は、隣接する凸部1間に位置する基板表面に対して平行にかつ基板表面に近接して伝搬する光L1がどのような方向に伝搬した場合であっても少なくとも1つの凸部1によって反射される。
したがって、本実施形態2のサファイア基板を用いて構成された窒化物半導体発光素子は、複数の凸部1によって側面から出射させることなく、出射方向に効率よく反射させることが可能になり、光の取り出し効率を高くできる。
【0022】
また、本実施形態2のサファイア基板において凸部1は、上記配列によって比較的密に配置され、一方の主面に設けられた複数の凸部1の底面が、サファイア基板の一方の主面全体に対して占める占有面積が大きくなるので、低転位の窒化物半導体の成長が可能になり、窒化物半導体発光素子の発光効率を高くできる。
【0023】
実施形態3.
図4の平面図には、本発明に係る実施形態3のサファイア基板における略三角錐形状の凸部1の配列を示している。本実施形態3において、複数の凸部1は、それぞれ正五角形の頂点と中心とに、その底面の重心が一致するように配置された6個の凸部1からなるグループG1が一定の規則にしたがって繰り返し配置されている。
本実施形態3において、6個の凸部1が配置された正五角形は、回転することなく、平行移動させることにより、他の正五角形に重ね合わせることができるような向き(同じ向き)に配置されている。
また、正五角形の配列は、各正五角形の中心が三角格子点の頂点と一致するように、かつ隣接するグループG1間で凸部1が離れて重なることがないように配置される。
さらに、各凸部1の大きさは、一方の主面上に任意に直線を引いたとき、その直線がいずれかの凸部1の内部を通過するように各凸部1の底面の大きさが設定されている。
【0024】
このように凸部1の大きさが設定されかつ
図4に示すように配列された複数の凸部1を有するサファイア基板を用いて、その複数の凸部1が形成された一方の主面上に、下地層21、第1導電型層(n型層)22、活性層(発光層)23、第2導電型層(p型層)24が順に積層された半導体積層構造20を構成して、窒化物半導体発光素子を構成すると、発光層23で発光した光のうちサファイア基板側に出射された光は、隣接する凸部1間に位置する基板表面に対して平行にかつ基板表面に近接して伝搬する光L1がどのような方向に伝搬した場合であっても少なくとも1つの凸部1によって反射される。
したがって、本実施形態3のサファイア基板を用いて構成された窒化物半導体発光素子は、複数の凸部1によって側面から出射させることなく、出射方向に効率よく反射させることが可能になり、光の取り出し効率を高くできる。
【0025】
また、本実施形態3のサファイア基板において凸部1は、上記配列によって比較的密に配置され、一方の主面に設けられた複数の凸部1の底面が、サファイア基板の一方の主面全体に対して占める占有面積が大きくなるので、低転位の窒化物半導体の成長が可能になり、窒化物半導体発光素子の発光効率を高くできる。
【0026】
実施形態4.
図5の平面図には、本発明に係る実施形態4のサファイア基板における凸部1の配列を示している。本実施形態4のサファイア基板は、実施形態3と同様、正五角形の頂点と中心とに配列された6個の凸部1からなるグループG1を複数有している点は、実施形態3と同様であるが、グループG1を繰り返し配置する際の規則が異なっている。
すなわち、実施形態4のサファイア基板では、
図5に示すように、第1行(図面上最も上の行)に配列された複数のグループG1は、凸部1の配置を決定する正五角形が同じ向きなるように並置される。
【0027】
また、次の第2行に配列された複数のグループG1は、第1行に配列されたグループG1に対して、その各グループG1の配置を決定する正五角形が第1行に配列されたグループG1の配置を決定する正五角形と反対向きなるように並置される。
このとき、第1行に配置されたグループG1の配置を決定する正五角形の中心と第2行に配置されたグループG1の配置を決定する正五角形の中心とが三角格子の頂点に位置するように、第1行に配置されたグループG1と第2行に配置されたグループG1の配置位置が設定される。
さらに、第3行と第4行における配置は、
図5に示すように、第3行と第4行とが線対称になるように設定される。以下第1行〜第4行と同様の配置を繰り返すことにより実施形態4のサファイア基板における凸部1の配列は設定される。
【0028】
尚、各凸部1の大きさは、実施形態3と同様に一方の主面上に任意に直線を引いたとき、その直線がいずれかの凸部1の底面の内部を通過するように各凸部1の底面の大きさが設定される。
【0029】
このように凸部1の大きさが設定されかつ
図5に示すように配列された複数の凸部1を有する実施形態4のサファイア基板を用いて構成された窒化物半導体発光素子は、複数の凸部1によって側面から出射させることなく、出射方向に効率よく反射させることが可能になり、光の取り出し効率を高くできる。
【0030】
また、本実施形態4のサファイア基板において凸部1は、上記配列によって比較的密に配置され、一方の主面に設けられた複数の凸部1の底面が、サファイア基板の一方の主面全体に対して占める占有面積が大きくなるので、低転位の窒化物半導体の成長が可能になり、窒化物半導体発光素子の発光効率を高くできる。
【0031】
実施形態5.
図6の平面図には、本発明に係る実施形態5のサファイア基板における凸部1の配列を示している。本実施形態5において、複数の凸部1は、それぞれ正五角形の頂点と中心とに、その底面の重心が一致するように配置された6個の凸部1からなるグループG1が実施形態3及び4とは異なる規則にしたがって繰り返し配置されている。
本実施形態5において、同じ列に配列されたグループG1は回転することなく同じ方向に配列されるが隣接する列間においてグループG1は逆向きに配列される。
また、偶数列に配置されるグループG1は奇数列に配置されるグループG1よりやや下方に配置される。その結果、各行に配列されるグループG1は、隣接間において向きが逆になり、各行におけるグループG1の配置を決定する正五角形の中心を結ぶ線は屈曲した線(ジグザグライン)になる。
さらに、各凸部1の大きさは、凸部1の底面を含む平面上に任意に直線を引いたとき、その直線がいずれかの凸部1の内部を通過するように各凸部1の底面の大きさが設定されている。
【0032】
このように凸部1の大きさが設定されかつ
図6に示すように配列された複数の凸部1を有するサファイア基板を用いて、その複数の凸部1が形成された一方の主面上に、下地層21、第1導電型層(n型層)22、活性層(発光層)23、第2導電型層(p型層)24が順に積層された半導体積層構造20を構成して、窒化物半導体発光素子を構成すると、発光層23で発光した光のうちサファイア基板側に出射された光は、隣接する凸部1間に位置する基板表面に対して平行にかつ基板表面に近接して伝搬する光L1がどのような方向に伝搬した場合であっても少なくとも1つの凸部1によって反射される。
したがって、本実施形態5のサファイア基板を用いて構成された窒化物半導体発光素子は、複数の凸部1によって側面から出射させることなく、出射方向に効率よく反射させることが可能になり、光の取り出し効率を高くできる。
【0033】
また、本実施形態5のサファイア基板において一方の主面に設けられた複数の凸部1の底面が、サファイア基板の一方の主面全体に対して占める占有面積が大きくなるので、低転位の窒化物半導体の成長が可能になり、窒化物半導体発光素子の発光効率を高くできる。
【0034】
実施形態6.
図7の平面図には、本発明に係る実施形態6のサファイア基板における凸部1の配列を示している。本実施形態6において、複数の凸部1は、それぞれ正八角形の頂点に配置した8個の凸部1とその凸部1より大きい凸部からなり正八角形の中心に配置した凸部2からなるグループG10が一定の規則にしたがって繰り返し配置されている。
本実施形態6において、グループG10は直交する行と列の2方向に繰り返し配列されており、同一行内で隣接する2つのグループG10間及び同一列内で隣接する2つのグループG10間においてそれぞれ2つの凸部1を共有している。
また、各凸部1の大きさと凸部2の大きさは、凸部1の底面を含む平面上に任意に直線を引いたとき、その直線がいずれかの凸部1または凸部2の内部を通過するように設定されている。
【0035】
このように凸部1の大きさと凸部2の大きさとが設定されかつ
図7に示すように配列された複数の凸部1を有するサファイア基板を用いて、その複数の凸部1が形成された一方の主面上に、下地層21、第1導電型層(n型層)22、活性層(発光層)23、第2導電型層(p型層)24が順に積層された半導体積層構造20を構成して、窒化物半導体発光素子を構成すると、発光層23で発光した光のうちサファイア基板側に出射された光は、隣接する凸部1間に位置する基板表面に対して平行にかつ基板表面に近接して伝搬する光L1がどのような方向に伝搬した場合であっても少なくとも1つの凸部1によって反射される。
したがって、本実施形態6のサファイア基板を用いて構成された窒化物半導体発光素子は、複数の凸部1と凸部2とによって側面から出射させることなく、出射方向に効率よく反射させることが可能になり、光の取り出し効率を高くできる。
【0036】
また、本実施形態6のサファイア基板において一方の主面に設けられた複数の凸部1の底面が、サファイア基板の一方の主面全体に対して占める占有面積が大きくなるので、低転位の窒化物半導体の成長が可能になり、窒化物半導体発光素子の発光効率を高くできる。
【0037】
実施形態7.
図9の平面図には、本発明に係る実施形態7のサファイア基板における凸部1の形状及び配列を示している。
図9に示すように、実施形態7の凸部1は、底面及び上面が以下のように変形された変形三角錘台形状であり、これにより、基板表面に対して平行でかつ基板表面に近接して伝搬する光L1がどのような方向に伝搬した場合であっても効果的に凸部1によって反射されるような複数の凸部1の配置を容易に実現でき、光の取り出し効率を向上させることが可能になる。
【0038】
<凸部1の形状>
実施形態7の凸部1の底面は、各辺11,12,13が中央部に窪みを有する略三角形状である。
具体的には、辺11は、それぞれ外側に膨らんだ2つの曲線11a,11bからなり、その接続部分に窪みが形成されている。同様に辺12は、それぞれ外側に膨らんだ2つの曲線12a,12bからなり、その接続部分に窪みが形成され、辺13は、それぞれ外側に膨らんだ2つの曲線13a,13bからなり、その接続部分に窪みが形成されている。
また、実施形態7の凸部1の上面も、各辺の中央部に窪みを有する底面とほぼ相似形状の略三角形状である。
そして、実施形態7の凸部1において、底面と上面の間の傾斜した側面には、上面の頂点と底面の頂点をそれぞれ結ぶ尾根と、底面の窪みの最深部と上面の窪みの最深部とをそれぞれ結ぶ谷が形成されている。
【0039】
実施形態7では、以上のように構成された凸部1は、隣接する凸部間において、一方の凸部1はその底面の頂点の1つが他方の凸部1の底面の2つの頂点とその間にある窪みの最深点を結ぶ近接領域内に位置する(入り込む)ように配置される。
このようにすると、凸部1の底面を含む平面において任意の位置に任意の方向に直線を引いたとき、その直線が必ずいずれかの凸部1内を通過するようにできる。
また、本実施形態7では、近接領域内に位置する一方の凸部1の頂点の角度を2等分する線の延長線上に他方の凸部1の窪みの最深部が位置するように配置されていることがさらに好ましい。
また、凸部1はそれぞれ、窪みと、その窪みを含む辺に対する頂点とを結ぶ直線に対して線対称の形状であることが好ましく、これにより容易に上記配置を実現できる。
【0040】
以上のように凸部1の形状及び配置が設定された実施形態7のサファイア基板を用いて窒化物半導体発光素子を構成すると、基板表面に対して平行でかつ基板表面に近接して伝搬する光L1がどのような方向に伝搬した場合であっても凸部1によって反射されるようにできる。
したがって、本実施形態7のサファイア基板を用いて構成された窒化物半導体発光素子は、複数の凸部1によって側面から出射させることなく、出射方向に効率よく反射させることが可能になり、光の取り出し効率を高くできる。
【0041】
また、本実施形態7のサファイア基板において一方の主面に設けられた複数の凸部1の底面が、サファイア基板の一方の主面全体に対して占める占有面積が大きくなるので、低転位の窒化物半導体の成長が可能になり、窒化物半導体発光素子の発光効率を高くできる。
【0042】
さらに、本実施形態7のサファイア基板では、例えば、三角錐形状の凸部に比較して、凸部1の高さを低くできるので、複数の凸部1が形成された一方の主面上に下地層21を成長させる際、原料ガスを窒化物半導体層の成長表面(凸部1の間に位置するサファイア基板表面)にほぼ均一に供給することが可能になる。
これにより、窒化物半導体層の成長表面から均一に凸部1を覆う横方向成長させることが可能になるとともに、凸部1の高さを低くできることから比較的薄い下地層21によって平坦な表面が得られる。
【0043】
本実施形態7における花弁形状の凸部1は、基板の結晶形態及び凸部1が形成される基板表面の面方位、マスク形状及び寸法、エッチング条件を目的形状に応じて設定することにより形成することができる。
図8には、
図9に示す凸部1をサファイア基板のC面上に形成する際のマスクM1の一例を示している。この例のマスクM1は、中心から120度ずつ異なる3方向に延びる同一長同一幅の3つの脚部からなる(三脚形状)。
【0044】
このような三脚形状のマスクM1を用いて、サファイア基板のC面表面を硫酸やリン酸によってウェットエッチングすると、マスクM1の直下に凸部1の上面1bがマスクM1の形状が変形された形に形成され、凸部1の上面の端を上端とする傾斜側面1aが形成される。
【0045】
すなわち、凸部1の上面の形状は、エッチングが進むにつれて結晶形態に起因するエッチング速度の方向依存性の影響を受け、マスクM1の三脚形状がエッチング特性に依存して変形された形状になる。これにより、各辺の中央部に窪みを有しかつ尖った頂点を有する略三角形状となる。
同様に、凸部1の底面もマスクM1の三脚形状がエッチング特性に依存して変形された、各辺の中央部に窪みを有しかつ尖った頂点を有する上面とほぼ相似形の略三角形状となる。
さらに、結晶形態に起因するエッチング速度の方向依存性により、底面と上面の間の傾斜した側面には、上面の頂点と底面の頂点をそれぞれ結ぶ尾根1rと、底面の窪みの最深部と上面の窪みの最深部とをそれぞれ結ぶ谷12cが形成される。
【0046】
また、マスクM1の脚部の先端部分(脚先端)にはそれぞれ、脚先端より外側に突出した尾根1rとその尾根1rの両側に傾斜方向が異なる傾斜面が形成される。したがって、隣接するマスクM1間において、一方のマスクM1の2つの脚先端の角を結ぶ直線に他方のマスクM1の1つの脚部の脚先端が近接、又は一致するように複数のマスクM1を形成することにより、複数の凸部1は、隣接する凸部1間において、一方の凸部1の頂点が他方の凸部1の2つの頂点とその間にある窪みの最深点を結ぶ領域内に位置する(入り込む)ように形成される。
尚、凸部1の向きは、凸部1が形成されるサファイア基板表面のC面からのオフ角を変更することにより所望の向きに設定することができる。
【0047】
以上の実施形態7では、実施形態1と同様の凸部配列の例により説明したが、実施形態2〜6で説明した配列を適用することも可能である。
【0048】
変形例.
以上の実施形態1〜7では、底面が略多角形(特に、略三角形)である略多角錐形状(特に、略三角錐形状)の凸部について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、
図10に示すように、中央部で屈曲した「く」の字型の底面形状の凸部31であっても良いし、
図11に示すような十字の底面形状の凸部32であっても良い。
図10の底面が「く」の字形状の凸部31によれば、底面の少なくとも1つの辺が中央部に窪みを有していることで、複数の凸部31を、凸部31が形成されたサファイア基板表面において、任意の位置に任意の方向に直線を引いたとき、その直線が少なくともいずれかの凸部31内を通過するように配置することができる。
また、底面の各辺はそれぞれ中央部に窪みを有している十字の底面形状の凸部32(
図11)であっても、複数の凸部32を、凸部32が形成されたサファイア基板表面において、任意の位置に任意の方向に直線を引いたとき、その直線が少なくともいずれかの凸部32内を通過するように配置することができる。
【0049】
実施形態8.
図12の平面図には、本発明に係る実施形態8のサファイア基板における凸部40の形状及び配列を示している。
この実施形態8の凸部40は、実施形態7の凸部1を180度回転させた向きに形成している。ここで、本明細書において、凸部の向きは、
図15に示すように、サファイア基板のオリフラ(A面)100を基準にして規定する。
すなわち、実施形態8の凸部40と実施形態7の凸部1は、いずれも凸部の方向(略三角形状の底面において、その略三角形状の中心から頂点に向かう3方向)がa軸と直交するように形成されているが、凸部の方向が逆方向に向いている。その結果、実施形態7の凸部1における上記3方向は、
図15に示すa軸(a1軸、a2軸及びa3軸)を反時計回り(左回り)に30度回転させたものと一致するのに対して、実施形態8の凸部40における上記3方向は、
図15に示すa軸(a1軸、a2軸及びa3軸)を時計回り(右回り)に30度回転させたものと一致する。
【0050】
このような凸部1が180度回転された実施形態8の凸部40は、
図13に示す上記3方向と一致する3方向に延びたマスクM45をサファイア基板のC面上に形成して、エッチングすることにより形成することができる。
このように180度回転させると、a軸に平行方向にエッチングされる面はc面に対して角度が鈍角になり、逆に垂直方向にエッチングされる面はc面に対して角度が鋭角になることから、エッチングにより形成される凸部40の形状は凸部1とは後述するように、異なった形状になる。
【0051】
以上のようにして形成された実施形態8の凸部40は、底面が略三角形であり、かつその底面の各辺がそれぞれ中央部に窪みを有している点では実施形態7の凸部1と同様であるが、
図9と
図12を比較することにより理解できるように、凸部40において全体の表面積に占める傾斜側面40aの割合が大きくなっており、上面40bが占める割合が相対的に小さくなっている。また、実施形態8において、隣接する2つの凸部40間に着目すると、一方の凸部40の突出した部分の外周形状が他方の凸部40の窪んだ辺と同じような形状になっており、一方の凸部40の突出した部分と他方の凸部40の窪んだ辺との間にはサファイア基板C面がほぼ同じ幅になる形成されている。これにより、実施形態7では3つの凸部1間のサファイア基板C面が略三角形に拡がっているのに対して、実施形態8のサファイア基板では、3つの凸部40間に位置するサファイア基板C面は、ほぼ同じ幅になるように形成されて狭くなっている。このように、実施形態8の凸部40は、凸部40の底面の面積を、実施形態7の凸部1の底面の面積より広くでき、その結果、凸部40間のサファイア基板C面の面積を小さくできる。
【0052】
したがって、実施形態8の凸部40が形成されたサファイア基板表面に窒化物半導体を成長させると、横方向に成長される窒化物半導体の比率を高くでき、成長された窒化物半導体の転位を減らすことができる。
【0053】
以上のように、実施形態8のサファイア基板は、凸部40の底面の各辺はそれぞれ中央部に窪みを有していて、サファイア基板表面に任意の位置に任意の方向に直線を引いたとき、その直線が少なくともいずれかの凸部32内を通過するように配置することができることに加え、横方向に成長される窒化物半導体の比率を高くでき、成長された窒化物半導体の転位を減らすことができる。
【0054】
以上の実施形態8では、最も好ましい例として、凸部40における上記3方向を、a軸(a1軸、a2軸及びa3軸)を時計回り(右回り)に30度回転させたものと一致させた。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、凸部40における上記3方向を、a軸を時計回りに30度回転させた方向の±10度の範囲とすることにより実施形態8と同様の作用効果が得られる。
【0055】
実施形態9.
図14の平面図には、本発明に係る実施形態9のサファイア基板における凸部50の形状及び配列を示している。
この実施形態9のサファイア基板における凸部50は、実施形態8の凸部40と同様、実施形態7の凸部1を180度回転させた向きに形成されているが、凸部50の上面50bの構成が実施形態8の凸部40の上面40bとは異なっている。具体的には、実施形態9の上面50bは、凸部50の中央部で窪んでおり、上面50bがサファイアC面から傾斜した面になっている。
【0056】
このように形成された複数の凸部50を一方の主面に有する実施形態9のサファイア基板は、実施形態8のサファイア基板と同様、凸部50の傾斜側面50aの割合を増やして凸部50間のサファイア基板C面の面積を減少させることができ、サファイアC面から傾斜した面である凸部50の上面50bにおける窒化物半導体の成長も抑制できる。これにより、実施形態9のサファイア基板は、一方の主面全体に占めるC面の面積をさらに減少させることができることから、より貫通転位の少ない窒化物半導体の成長が可能になることに加えて以下のような利点がある。
【0057】
すなわち、凸部の上面に窒化物半導体が成長すると凸部の高さが高くなって、通常斜めから供給される原料ガスの供給が凸部によって遮られて凸部の根元に空孔(ボイド)が発生し易くなる。これに対して、本願のように凸部50の上面50bにおいて少なくとも一部、好ましくは全体をサファイアC面ではない面とすると、上面50bにおける窒化物半導体の成長が抑えられ、空孔(ボイド)の発生を抑えることができる。またさらに、実施形態9のサファイア基板は、凸部上面の中央部に窪みが形成されているので、凸部底面の窪み部分にも十分原料ガスが到達し、より効果的に空孔(ボイド)の発生を抑えることができる。このサファイアC面ではない面からなる上面50bを有する凸部50は、マスク形状を適宜調整することにより作製することができる。また、凸部50間のサファイア基板C面の面積を増加させることなく、上面50bをサファイアC面ではない面とするためには、マスクの間隔を適宜調整すればよい。
【0058】
実施形態10.
図16Aの平面図には、本発明に係る実施形態10のサファイア基板における凸部60の形状及び配列を示している。また、
図16Bには、
図16Aの凸部60を拡大して示している。
図16A及び
図16Bに示すように、凸部60は、傾斜側面60aと上面60bとを有してなる。
この実施形態10のサファイア基板において、凸部60は、実施形態7の凸部1を時計回りに30度回転させた向きに形成している。
すなわち、実施形態10の凸部60は、
図18(a)及び
図18(c)に示すように、凸部60の略三角形状の底面において中心から頂点に向かう3方向がa軸と一致するように形成されている。実施形態10のサファイア基板において、複数の凸部60は、a軸と一致する方向に配列されている。
【0059】
この凸部60は、中心から先端に向かう3方向がa軸と一致するように形成されたマスクM65をサファイア基板C面上にa軸と一致する方向に形成して、エッチングすることにより形成することができる。このように形成されたマスクM65を用いてサファイア基板をエッチングすると、エッチングされ易い方向とエッチングされ難い方向ができるために(エッチング異方性が現れる)、
図16A及び
図16Bに示すように、a軸の片側で傾斜側面の幅Aがもう一方の傾斜側面の幅Bより大きくなり傾斜側面60aの面積が大きくなる。その結果、凸部60間に形成されるサファイア基板C面の面積を小さくでき、窒化物半導体を成長させる際の貫通転位を少なくできる。
【0060】
さらに、実施形態10のサファイア基板では、凸部60が中心から先端に向かう3方向に延びる延在部がa軸と一致するように形成されているので、凸部60間のC面から成長した窒化物半導体の凸部60を覆う横方向成長が早くなり、成長される窒化物半導体の平坦化が促進され、より平坦な窒化物半導体層を形成することが可能になる。
【0061】
詳細に説明すると、サファイアC面上に成長させる窒化物半導体は、
図18(d)に示すように、a軸方向の成長が遅く、a軸から30度回転した方向の成長が早くなる。その結果、a軸に直交する方向の窒化物半導体の成長が早くなる。したがって、凸部60のa軸と一致する方向に伸びた延在部はその両側から成長した窒化物半導体によって速やかに覆われることになる(
図18(c))。
【0062】
以上のように、実施形態10のサファイア基板によれば、窒化物半導体を成長させる際の貫通転位を少なくでき、かつより平坦な窒化物半導体層を形成することが可能になる。
【0063】
以上の実施形態10では、最も好ましい例として、凸部60における上記3方向を、a軸に一致させた。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、凸部60における上記3方向を、a軸の±10度の範囲とすることにより実施形態10と同様の作用効果が得られる。
【0064】
実施形態11.
図19の平面図には、本発明に係る実施形態11のサファイア基板における凸部70の形状及び配列を示している。
この実施形態11のサファイア基板における凸部70は、実施形態7における花弁形状の凸部1が中央部で分離された形態のサブ凸部70s1とサブ凸部70s2とサブ凸部70s3からなる。凸部70が中央部で分離されることによって、この実施形態11のサファイア基板の一方の主面には、サブ凸部70s1,70s2,70s3の間には光が直進し得る三角形状の部分が形成されるが、3つのサブ凸部70s1,70s2,70s3は近接している。したがって、実施形態11における凸部70の構成であっても、実施形態7における花弁形状の凸部1と同様、凸部70が形成されたサファイア基板表面において、任意の位置に任意の方向に直線を引いたとき、その直線が少なくともいずれかの凸部70内を通過するように凸部70を配置することができる。
【0065】
以上の中央部で分離された凸部70は、
図20に示すような、中央部で分離されたマスクM70a1,M70a2,M70a3からなるマスク70を所定の配列で形成して、サファイア基板をエッチングすることにより形成することができる。尚、分離される部分の形状は、
図20に示すように、マスクM70a1,M70a2,M70a3の向かい合う先端部分の形状により調整することができる。
【0066】
以上のように構成された実施形態11のサファイア基板では、一方の主面にサブ凸部70s1,70s2,70s3に分離された凸部70が形成されている。これにより、凸部70が形成されたサファイアC面上に窒化物半導体を成長させる際、凸部70の中央部で原料ガスの供給が阻害されることがなく、ボイドの発生を防止することができる。
【0067】
実施形態12.
図21の平面図には、本発明に係る実施形態12のサファイア基板における凸部80の形状及び配列を示している。
この実施形態12のサファイア基板における凸部80は、実施形態8における花弁形状の凸部40が中央部で分離された形態のサブ凸部80s1とサブ凸部80s2とサブ凸部80s3からなる。凸部80が中央部で分離されることによって、この実施形態12のサファイア基板の一方の主面には、サブ凸部80s1,80s2,80s3の間には光が直進し得る隙間が形成されるが、3つのサブ凸部80s1,80s2,80s3は近接している。したがって、実施形態12における凸部80の構成であっても、実施形態8における花弁形状の凸部40と同様、凸部40が形成されたサファイア基板表面において、任意の位置に任意の方向に直線を引いたとき、その直線が少なくともいずれかの凸部80内を通過するように凸部80を配置することができる。
【0068】
以上の中央部で分離された凸部80は、
図22に示すような、中央部で分離されたマスクM80a1,M80a2,M80a3からなるマスク80を所定の配列で形成して、サファイア基板をエッチングすることにより形成することができる。尚、分離される部分の形状が
図19に示す実施形態11と異なる理由は、実施形態12の凸部80は、実施形態11の凸部70を180度回転させた向きに形成するものであるため、サファイア基板のエッチング速度の方向異方性によるものである。
【0069】
以上のように構成された実施形態12のサファイア基板では、一方の主面にサブ凸部80s1,80s2,80s3に分離された凸部80が形成されている。これにより、凸部80が形成されたサファイアC面上に窒化物半導体を成長させる際、凸部80の中央部で原料ガスの供給が阻害されることがなく、ボイドの発生を防止することができる。