(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1及び第2のリニアスケールの基準点は、前記測定平面に対して垂直に投影した場合に、前記回転台の回転軸と一致するように構成される請求項2に記載の真円度測定装置。
【背景技術】
【0002】
従来より、被測定物(ワーク)の真円度を測定する装置として真円度測定装置が知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
従来の真円度測定装置は、例えば
図12に示すように、台状のベース112と、ベース112上に回転可能に設けられ、ワーク114を載置する載物台116と、載物台116を回転駆動するためのモータ等を有する回転駆動部118と、ベース112上に立設されたコラム120と、コラム120に沿って上下方向(Z方向)に移動可能なキャリッジ122と、キャリッジ122に対して水平方向(X方向)に移動可能に設けられたアーム124と、アーム124の先端部に取り付けられた検出器ホルダ126と、検出器ホルダ126に取り付けられた検出器128と、を備える。検出器128は、測定子130と、差動トランス等の変位検出部と、を有し、測定子130の変位を示す電気信号を出力する。
【0004】
測定を行う場合には、ワーク114は、載物台116上に、ワーク114の円筒面の中心軸が載物台116の回転軸にほぼ一致するように載置する。測定子130がワーク114の測定する位置に接触するように、キャリッジ122を移動して上下方向の位置を調整し、アーム124を移動して水平方向の位置を調整する。この状態で、ワーク114の真円度を測定する。
【0005】
図13は、
図12の真円度測定装置の上面図である。
図13に示すように、コラム120は、載物台116の右側に設けられる。アーム124、検出器ホルダ126及び検出器128は、一直線上に配置され、その延長上に、載物台116の回転軸が位置する。測定子130は、検出器128の先端に設けられ、この直線と載物台116の回転軸がなす平面内で変位する。したがって、ワーク114の測定する円筒面の直径が異なる場合には、測定子130が測定する円筒面に接触するように、アーム124を移動する。ここでは、測定子130が測定する円筒面に接触する測定点と載物台116の回転軸がなす平面を測定平面と称し、載物台116の回転軸と測定点を結ぶ方向を径方向と称する。言い換えれば、測定する円筒面の直径が異なる場合でも、アーム124、検出器ホルダ126及び検出器128は、測定平面に沿って径方向に移動され、測定子130は、測定平面と円筒面の交差する線上で円筒面に接触し、測定平面上で変位する。
【0006】
このように、従来の真円度測定装置においては、載物台116の側方(右側又は左側)にコラム120が設けられる構成が一般的である。その理由としては、アーム124を測定平面上で移動させるためである。また、異なる円筒面を測定する場合に、円筒面の半径(直径)の差を、アーム124の移動量を検出することにより検出できるためである。
【0007】
しかしながら、従来の真円度測定装置では、コラム120が固定されるベース112は径方向に長い長方形である。さらに、アーム124は、測定する円筒面の半径に応じて径方向に移動されるため、アーム124が右方向に最大限移動した場合を考慮して、設置スペースを決定する必要がある。このため、径方向に長い長方形の設置スペースを必要とし、設置に必要な空間が大きくなるという問題がある。
【0008】
また、従来の真円度測定装置は、ベース112は径方向に長いため、
図14に示すように、ワーク114の重量によりベース112が撓む等の変形が生じやすい。そして、コラム120が載物台116の回転軸に対して平行がずれて傾いてしまうと、検出器128の位置ずれに起因する測定誤差が大きくなるという問題がある。なお、
図14では、ベース112が撓む様子を誇張して示したが、ベース112が撓む等の変形によって測定面内で検出器128に僅かでも位置ずれが生じると測定誤差が大きくなりやすい。
【0009】
また、従来の真円度測定装置では、検出器128は、コラム120から測定平面に沿って延びるアーム124及び検出器ホルダ126に取り付けられる。そのため、温度変化によりアーム124が伸縮すると、伸縮量が直接測定値に影響する。アーム124が長い場合には、測定中の短時間での温度変化でもアーム124の伸縮量は無視できない大きさになり、測定誤差となる。
【0010】
そこで、本出願人は、これらの問題を改善した真円度測定装置を提案している(特許文献4参照)。
【0011】
図15〜
図17は、特許文献4に開示された真円度測定装置の構成を示す図であり、
図15は正面側から見た外観図、
図16は背面側から見た外観図、
図17は上面図である。なお、
図15〜
図17において、
図1の構成要素と同一又は対応する構成要素には同一の符号を付している。これらの図に示すように、特許文献4に開示された真円度測定装置においては、コラム120は、載物台116の背面側に、測定平面と平行に移動可能に設けられる。検出器ホルダ126は、キャリッジ122から測定平面に垂直な方向に伸び、検出器128は、測定子130が測定平面上で変位するように取り付けられる。ワーク114の測定する円筒面の直径が異なる場合には、コラム120を測定平面と平行に移動するので、検出器ホルダ126及び検出器128は、測定平面に沿って径方向に移動され、測定子130は、測定平面と円筒面の交差する線上で円筒面に接触し、測定平面上で変位する。
【0012】
このように構成される真円度測定装置によれば、従来の真円度測定装置に比べて、ベースの径方向の長さが大幅に短縮され、アームが側方に突き出すこともないので、設置スペース(設置に必要な空間)を大幅に小さくできる。また、ベースの径方向の長さが短縮されたのでベースが撓みにくい。さらにベースに撓む等の変形が生じた場合でも、検出器ホルダは測定平面に垂直な方向に伸びるため、従来の真円度測定装置に比べて測定誤差が小さくなる。さらに、長いアームを使用しない上、検出器ホルダは測定平面に垂直な方向に伸びるため、温度変化により検出器ホルダが伸縮しても、伸縮量は直接測定値に影響しないため、温度変化の測定誤差への影響を低減できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
真円度測定装置においては、コラムを、載物台の側方(右側又は左側)ではなく、背面側に配置したことにより、設置に必要な空間を大幅に小さくしたり、ベースが撓む等の変形や温度変化に起因する測定誤差を小さくすることが可能となったものの、次のような課題が残る。
【0015】
すなわち、ワークの円筒面の直径(半径)を測定する場合には、リニアスケール等の位置検出機構で検出器ホルダの位置を検出して、その検出値から測定点の位置を求めることが必要となる。しなしながら、検出器ホルダは測定平面に垂直な方向に伸びるため、検出ホルダの取付精度が低いと、検出器ホルダの測定平面に対する垂直精度が低くなり、検出器ホルダの傾きに応じて測定点の位置に誤差が生じてしまう問題がある。
【0016】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、ワークの円筒面の直径(半径)を精度良く求めることができ、高精度な真円度測定が可能な真円度測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る真円度測定装置は、ベースと、ベースに固定され、載置されたワークを回転する回転台と、回転台の回転軸に対して平行に伸びるコラムと、コラムに沿って移動可能に支持されたキャリッジと、キャリッジに取り付けられるホルダ支持部材と、検出器ホルダが取り付けられるホルダ固定部とを有し、ホルダ固定部を回転台の回転軸とワークの測定点を含む測定平面に平行に移動可能な検出器ホルダ移動機構と、測定子が測定平面で変位可能なように、検出器ホルダに取り付けられた検出器と、検出器ホルダ移動機構に設けられ、検出器ホルダの測定平面に平行な方向の位置を検出する第1及び第2の位置検出手段と、第1及び第2の位置検出手段の検出結果に基づいて、検出器の測定子がワークに接触する測定点の位置を算出する測定点算出手段と、を備える。
【0018】
本発明の一態様において、第1の位置検出手段は、ホルダ支持部材に設けられ、測定平面に対して平行に配設された第1のリニアスケールと、ホルダ固定部に設けられ、第1のリニアスケールに対向する第1の読み取りヘッドと、を有し、第2の位置検出手段は、ホルダ支持部材に設けられ、測定平面に対して平行であり、且つ第1のリニアスケールに対して測定平面に対して垂直な方向の異なる位置に配設された第2のリニアスケールと、ホルダ固定部に設けられ、第2のリニアスケールに対向する第2の読み取りヘッドと、を有することが好ましい。
【0019】
また、本発明の一態様において、第1及び第2のリニアスケールの基準点は、測定平面に対して垂直に投影した場合に、回転台の回転軸と一致するように構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、第1及び第2の位置検出手段によって検出器ホルダの測定平面に平行な方向の位置を検出し、これらの検出結果に基づいて、検出器の測定子がワークに接触する測定点の位置を算出する。これにより、検出器ホルダの測定平面に対する垂直精度に左右されることなく測定点の位置を正確に求めることができる。したがって、ワークの円筒面の直径(半径)を精度良く求めることができ、高精度な真円度測定が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施形態について説明する。
【0023】
図1〜
図3は、本発明の一実施形態に係る真円度測定装置の構成を示す図であり、
図1は正面側から見た外観図、
図2は背面側から見た外観図、
図3は上面図である。これらの図に示すように、本実施形態の真円度測定装置10は、台状のベース12と、ベース12上に回転可能に設けられ、ワーク14を載置する載物台(回転台)16と、載物台16を回転駆動するためのモータ等を有する回転駆動部18と、ベース12の背面に設けられたコラム20と、コラム20に沿って上下方向(Z方向)に移動可能なキャリッジ22と、キャリッジ22に取り付けられた検出器ホルダ移動機構24と、検出器ホルダ移動機構24に水平方向(X方向)に移動可能に取り付けられた検出器ホルダ26と、検出器ホルダ26に取り付けられた検出器28と、を備える。
【0024】
載物台16は、ワーク14を載置して回転させるものであり、載物台16の回転角は、回転駆動部18の駆動軸に連結されたエンコーダ54(
図6参照)で検出される。
【0025】
コラム20は、載物台16の回転軸に対して平行に伸びる柱であり、その下端部はベース12の背面に固定される。すなわち、載物台16の背面側にコラム20が配置される。
【0026】
コラム20には、キャリッジ22がZ方向に移動可能に取り付けられる。キャリッジ22を移動させるための駆動手段(不図示)としては特に限定されるものではないが、例えば、モータ、ボールネジ、ガイドレール等の組み合わせで構成される。
【0027】
検出器ホルダ移動機構24は、キャリッジ22に取り付けられ、キャリッジ22と一体となってZ方向に移動可能なホルダ支持部材34と、検出器ホルダ26を取り付けるためのホルダ固定部36と、を備える。
【0028】
ホルダ固定部36は、ホルダ支持部材34に対してX方向に移動可能に構成される。ホルダ固定部36をX方向に移動させるための駆動手段(不図示)としては特に限定されるものではないが、例えば、モータ、ボールネジ、ガイドレール等の組み合わせで構成される。これにより、ホルダ固定部36に取り付けられた検出器ホルダ26は、ホルダ固定部36と一体となってX方向に移動する。
【0029】
検出器ホルダ26は、L字型の部材で、一方の端がホルダ固定部36に取り付けられ、他方の端に検出器28が取り付けられる。
【0030】
検出器28は、測定子30と、差動トランス等の変位検出部と、を有し、測定子30の変位を示す電気信号を出力する。
【0031】
ワーク14のつば部分の高さ位置(Z方向位置)の変化を検出するため、検出器ホルダ26は、取り付ける方向を90度ずつ異なる3方向にすることが可能であることが望ましい。また、検出器28は、測定する円筒面の方向を180度変えるために、検出器ホルダ26に対して方向を変えて取り付け可能であることが望ましい。
【0032】
本実施形態においては、
図3に示すように、コラム20は、載物台16の背面に設けられる。検出器ホルダ26は、ホルダ支持部材34から測定平面に垂直な方向に伸び、検出器28は、測定子30が測定平面上で変位するように取り付けられる。ワーク14の測定する円筒面の直径が異なる場合には、ホルダ固定部36が測定平面と平行に移動するので、検出器ホルダ26及び検出器28は、測定平面に沿ってX方向に移動され、測定子30は、測定平面と円筒面の交差する線上で円筒面に接触し、測定平面上で変位する。
【0033】
さらに本実施形態においては、コラム20を測定平面に対して垂直に投影した場合に、投影されたコラム20の中心軸が載物台16の回転軸と一致するように構成される。すなわち、コラム20の中心軸と載物台16の回転軸はX方向位置が同一位置となっている。
【0034】
このように本実施形態においては、検出器ホルダ26及び検出器28は、測定平面に平行なZ方向に移動可能であるとともに、測定平面に平行且つ載物台16の回転軸に垂直なX方向に沿って移動することが可能である。つまり、検出器ホルダ26及び検出器28は、測定平面に平行な面内(XZ面内)で2次元的に移動可能に構成される。したがって、検出器ホルダ26及び検出器28は、Z方向に移動しても、姿勢は変化せず、Z方向の位置(高さ)のみが変化する。また、検出器ホルダ26及び検出器28をX方向に移動しても、姿勢は変化せず、X方向の位置のみが変化する。言い換えれば、異なる半径の円筒面の真円度を測定するため、検出器ホルダ26及び検出器28をX方向と平行に移動しても、検出器28の測定子30は、測定平面でワーク14と接触する。
【0035】
測定を行う場合には、ワーク14は、載物台16上に、ワーク14の円筒面の中心軸が載物台16の回転軸にほぼ一致するように載置する。測定子30がワーク14の測定する位置に接触するように、キャリッジ22を移動してZ方向の位置を調整し、検出器ホルダ26を移動してX方向の位置を調整する。この状態で、ワーク14の真円度を測定する。
【0036】
高精度の測定を行う場合には、ワーク14を回転して、ワーク14の円筒面の中心軸と載物台16の回転軸との偏心を測定し、載物台16に設けられたXY移動機構で、ワーク14の円筒面の中心軸が載物台16の回転軸により正確に一致するように調整した後に測定を行う。このとき、測定子30は、変位範囲の中心付近であることが望ましい。
【0037】
以上のように構成された本実施形態の真円度測定装置10において、
図3に示すように、ホルダ支持部材34の上面には、リニアスケール板40が取り付けられている。リニアスケール板40は熱膨張率の低い部材からなり、温度変化で変形しないように構成されている。リニアスケール板40の上面には、第1のリニアスケール42と第2のリニアスケール44とが、X方向に沿って互いに平行であり、且つY方向(すなわち、測定平面に対して垂直な方向)に互いにずれた位置に設けられている。各リニアスケール42、44は、測定平面に対して垂直に投影した場合に、各リニアスケール42、44の原点位置(基準点)42a、44aが載物台16の回転軸と一致するように構成される。すなわち、各リニアスケール42、44の原点位置42a、44aと載物台16の回転軸はX方向位置が同一位置となっている。
【0038】
さらに本実施形態の真円度測定装置10においては、ホルダ固定部36には、各リニアスケール42、44にそれぞれ対向する第1及び第2の読み取りヘッド46、48を備えたヘッド支持部材50が設けられている。ヘッド支持部材50は、ホルダ固定部36と一体的に移動可能であり、ホルダ固定部36に取り付けられた検出器ホルダ26及び検出器28とともにX方向に沿って移動する。このとき、各読み取りヘッド46、48はそれぞれリニアスケール42、44に対向する位置をX方向に沿って移動しながら、各リニアスケール42、44の目盛りを光学的、磁気的に読み取る。したがって、ホルダ固定部36がX方向に沿って移動すると、各読み取りヘッド46、48がそれぞれ対応するリニアスケール42、44の目盛りを同時に読み取ることができる。
【0039】
なお、本発明の第1の位置検出手段は、第1のリニアスケール42及び第1の読み取りヘッド46で構成される。また、本発明の第2の位置検出手段は、第2のリニアスケール44及び第2の読み取りヘッド48で構成される。
【0040】
図4は、検出器ホルダ26がホルダ支持部材34に対して垂直な状態(実線)と斜めに傾いた状態(破線)を示した図である。
【0041】
まず、
図4において実線で示すように、検出器ホルダ26がホルダ支持部材34に対して垂直な状態の場合(すなわち、検出器ホルダ26が測定平面に対して垂直な状態である場合)、第1の読み取りヘッド46による第1のリニアスケール42の読取値と、第2の読み取りヘッド48による第2のリニアスケール44の読取値は同じである。したがって、第1の読み取りヘッド46又は第2の読み取りヘッド48の読取値を測定点32の位置とすることができる。
【0042】
これに対し、
図4において破線で示すように、検出器ホルダ26がホルダ支持部材34に対して斜めに傾いた状態の場合(すなわち、検出器ホルダ26が測定平面に対して垂直な状態でない場合)、第1の読み取りヘッド46による第1のリニアスケール42の読取値と、第2の読み取りヘッド48による第2のリニアスケール44の読取値に差が生じる。
【0043】
この場合の測定点32の位置は、次のようにして求めることができる。
図5は、第1及び第2のリニアスケール42、44と測定点32の位置関係を示した図である。なお、各リニアスケール42、44と検出器ホルダ26と測定点32の位置関係を分かりやすくするため、検出器ホルダ26を簡略的に示している。
【0044】
図5において、第1のリニアスケール42から載物台16の回転軸16aまでの距離をA、第1のリニアスケール42と第2のリニアスケール44との間隔をB、第1のリニアスケール42に対向する第1の読み取りヘッド46の読取値をa、第2のリニアスケール44に対向する第2の読み取りヘッド48の読取値をb、測定点32の位置(載物台16の回転軸16aからの距離)をcとすると、次式の関係が成り立つ。
【0045】
c=(A/B)×(b−a)+a ・・・(1)
したがって、A、Bは既知であるため、読み取りヘッド46による第1のリニアスケール42の読取値aと、読み取りヘッド48による第2のリニアスケール44の読取値bとを用いて、式(1)により測定点32の位置cを求めることができる。
【0046】
図6は、本実施形態の真円度測定装置の制御系の構成を示すブロック図である。
図6に示すように、各読み取りヘッド46、48の読取値は制御部52に出力される。制御部52(本発明の測定点算出手段に相当)は、各読み取りヘッド46、48の読取値を用いて、式(1)により測定点32の位置を算出する。このようにして算出された測定点32の位置は、載物台16の回転軸16aから測定点32までの距離(すなわち、ワーク14の円筒面の中心軸から外周部までの距離)に相当する。したがって、測定点32の位置を求めることにより、ワーク14の円筒面の半径(直径)を得ることができる。
【0047】
また、制御部52は、各読み取りヘッド46、48の読取値から求めた測定点32の位置とともに、エンコーダ54で検出された載物台16の回転角度データや検出器28で検出された変位データからワーク14の真円度を演算し、演算結果を出力部56に出力する。
【0048】
ここで、
図7の(A)から(F)に示すように、X方向の各位置において検出器ホルダ26に傾きが生じた場合について考える。
【0049】
図8は、読み取りヘッド46による第1のリニアスケール42の読取値を測定点32の位置としたときの測定結果(本発明が適用されない場合)である。この場合、検出器ホルダ26の傾きに応じて、測定点32の位置(測定値)には真値との誤差が発生する。すなわち、第1のリニアスケール42の読取値だけでは測定点32の位置を正確に求めることはできない。
【0050】
これに対し、
図9は、第1のリニアスケール42の読取値と第2のリニアスケール44の読取値を用いて、式(1)により測定点32の位置を求めたときの測定結果(本発明が適用される場合)である。この場合、検出器ホルダ26の傾きに関係なく、測定点32の位置(測定値)には真値との誤差がなく、測定点32の位置を正確に求めることができる。
【0051】
以上のとおり、本実施形態の真円度測定装置10においては、第1及び第2の読み取りヘッド46、48による各リニアスケール42、44の読取値から測定点32の位置を算出する。これにより、検出器ホルダ26の測定平面に対する垂直精度に左右されることなく、測定点32の位置を正確に求めることができる。したがって、ワーク14の円筒面の直径(半径)を精度良く求めることができ、ワーク14の真円度を高精度に測定することが可能となる。
【0052】
また、本実施形態の真円度測定装置10は、
図15〜
図17に示した真円度測定装置と同様に、従来の真円度測定装置に比べて、ベース12の径方向(X方向)の長さが大幅に短縮され、アームが側方に突き出すこともないので、設置スペースが大幅に小さくなっている。
【0053】
また、本実施形態の真円度測定装置10は、ベース12の径方向の長さが短縮されたので、ベース12が撓みにくい。さらに、ワーク14の重量によりベース12が撓む等の変形を起こした場合でも、検出器ホルダ26は測定平面に垂直な方向に伸びるため、測定点32の径方向の位置ずれはほとんどなく、測定誤差の発生を効果的に抑えることが可能となる。
【0054】
図10は、本実施形態と
図12に示した従来例における温度変化による測定子の変位の影響の違いを説明する図である。
【0055】
温度変化が発生すると、各部が伸縮するが、ベースやコラムは熱容量が大きく、1回の測定時間というような短時間であれば比較的温度変化は小さく、それに起因する伸縮量も小さい。これに対して、アームや検出器ホルダは熱容量が小さく、短時間であっても温度変化により伸縮する。例えば、鋼製の100mmのアームであれば、0.1℃の温度変化でも伸縮量は約1μmになる。
【0056】
図12に示した従来例では、アーム124及び検出器ホルダ126が温度変化により伸縮した場合、
図10の(A)に示すように、測定子の先端の変位dは、測定平面内で発生し、正しい位置60から60aで示す位置に変位する。そのため、この変位dは、そのままワークの表面位置のずれ、すなわち測定誤差となる。真円度測定装置では、1μmの測定誤差は無視できないレベルである。
【0057】
一方、本実施形態では、長いアームを使用しないため、そもそも測定子の変位が小さい。さらに、本実施形態では、検出器ホルダ26が温度変化により伸縮した場合、
図10の(A)に示すように、測定子の先端の変位dは、測定平面に垂直な面内で発生し、正しい位置60から60bに示す位置に変位する。この変位により、測定子は測定平面からずれるが、ワークに対して接触する圧力が印加されており、
図10の(B)に示すように、円筒状のワークの表面に接触する。この時の測定方向のずれΔ(測定誤差)は、測定平面に垂直な方向の変位d(アライメント誤差)が小さく、θが小さい範囲では、非常に小さい。具体的には、ワークの半径をRとすると、θ=sin(d/R)、Δ=R(1−cosθ)である。
【0058】
例えば、測定子の先端が、正しい位置60から60bに示す位置に変位したときの測定直径(測定値)と測定誤差との関係は
図11に示すようになる。なお、アライメント誤差とは、
図10の(A)において、測定子の先端の測定平面に垂直な方向の変位dに相当するものである。
図11から分かるように、アライメント誤差が0.01mmであっても、測定直径が20mm以上では誤差は0.01μm以下となり十分に小さい(すなわち、ワーク直径に対して誤差は1/1000以下である)。
【0059】
したがって、本実施形態では、温度変化があっても測定誤差への影響は小さく、高精度な測定を行うことが可能となっている。
【0060】
以上、本発明の真円度測定装置について詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。