特許第6137747号(P6137747)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6137747ナトリウム二次電池用活物質、ナトリウム二次電池用電極、ナトリウム二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6137747
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】ナトリウム二次電池用活物質、ナトリウム二次電池用電極、ナトリウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/60 20060101AFI20170522BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20170522BHJP
   H01M 10/054 20100101ALI20170522BHJP
   H01M 4/40 20060101ALI20170522BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20170522BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20170522BHJP
【FI】
   H01M4/60
   H01M4/13
   H01M10/054
   H01M4/40
   H01M4/38 Z
   H01M4/587
【請求項の数】8
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-67428(P2013-67428)
(22)【出願日】2013年3月27日
(65)【公開番号】特開2013-229321(P2013-229321A)
(43)【公開日】2013年11月7日
【審査請求日】2015年11月18日
(31)【優先権主張番号】特願2012-72854(P2012-72854)
(32)【優先日】2012年3月28日
(33)【優先権主張国】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度、文部科学省、科学技術試験研究委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100148884
【弁理士】
【氏名又は名称】▲廣▼保 直純
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(72)【発明者】
【氏名】中條 伸仁
(72)【発明者】
【氏名】智原 久仁子
(72)【発明者】
【氏名】岡田 重人
(72)【発明者】
【氏名】久世 智
【審査官】 小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−282059(JP,A)
【文献】 特表2001−512526(JP,A)
【文献】 特開2011−151029(JP,A)
【文献】 特開2011−009347(JP,A)
【文献】 特表平09−508487(JP,A)
【文献】 特開2007−197370(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/60
H01M 4/13
H01M 10/054
H01M 4/38
H01M 4/40
H01M 4/587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナトリウムイオンをドープかつ脱ドープすることのできるオキソカーボン酸塩を含んでなり、
前記オキソカーボン酸塩は、炭素数3〜7のナトリウム塩であり、一分子あたりナトリウムイオンを1〜保持していることを特徴とするナトリウム二次電池用活物質。
【請求項2】
前記オキソカーボン酸塩は、構成元素として水素を含まないオキソカーボン酸塩である、請求項1に記載のナトリウム二次電池用活物質。
【請求項3】
前記オキソカーボン酸塩は、ロジゾン酸二ナトリウムである、請求項1または2に記載のナトリウム二次電池用活物質。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のナトリウム二次電池用活物質を含んでなることを特徴とするナトリウム二次電池用電極。
【請求項5】
第1電極、第2電極および非水電解を備え、前記第1電極は、請求項4に記載のナトリウム二次電池用電極からなることを特徴とするナトリウム二次電池。
【請求項6】
前記第2電極の活物質は、ナトリウム金属またはナトリウム合金である、請求項5に記載のナトリウム二次電池。
【請求項7】
前記第2電極の活物質は、ナトリウムイオンをドープかつ脱ドープすることのできる周期表第14族元素を単体または主成分として含んでなる、請求項5または6に記載のナトリウム二次電池。
【請求項8】
前記第2電極の活物質は、ナトリウムイオンをドープかつ脱ドープすることのできる非黒鉛化炭素を単体または主成分として含んでなる、請求項7に記載のナトリウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナトリウム二次電池用活物質、ナトリウム二次電池用電極、ナトリウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
ナトリウム二次電池は、正極、負極および非水電解液を有する二次電池である。二次電池としては、リチウム二次電池が代表的である。リチウム二次電池は、携帯電話やノートパソコン等の小型電源として既に実用化され、さらに、電気自動車、ハイブリッド自動車等の自動車用電源や、分散型電力貯蔵用電源等の大型電源として使用可能であることから、その需要は増大しつつある。しかしながら、リチウム二次電池において、それを構成する材料の製造には、リチウム等の稀少金属元素を含有する原料が多く用いられるため、大型電源の需要の増大に対応するためには、稀少金属元素の安定した供給が懸念されている。
【0003】
これに対して、稀少金属元素の供給に関する懸念を解決するために、ナトリウム二次電池が検討されている。ナトリウム二次電池において、それを構成する材料の製造には、資源量が豊富で、しかも安価な原料が用いられる。それゆえに、ナトリウム二次電池を実用化することによって、大型電源が大量に供給可能になるものと期待されている。
【0004】
そして、従来のナトリウム二次電池を構成する材料としては、正極材料として、マンガン酸ナトリウム(金属元素のモル比がNa:Mn=7:10)を用い、負極材料として、ナトリウム金属を用い、非水電解質として、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとを体積比で50:50の割合で混合した非水溶媒に、電解質塩である六フッ化リン酸ナトリウムを1mol/Lの濃度になるように溶解させたものを用いることが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−216509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の材料を組み合わせて得られるナトリウム二次電池は、二次電池の放電容量維持率の点で十分な性能が得られていなかった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、充放電を繰り返した際の放電容量維持率、すなわち、充放電サイクル特性に優れたナトリウム二次電池を実現することが可能なナトリウム二次電池用活物質、そのナトリウム二次電池用活物質を含んでなるナトリウム二次電池用電極、および、そのナトリウム二次電池用電極を備えたナトリウム二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、下記の発明が上記課題に合致することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
本発明のナトリウム二次電池用活物質は、ナトリウムイオンをドープかつ脱ドープすることのできるオキソカーボン酸塩を含んでなることを特徴とする。
【0010】
本発明のナトリウム二次電池用活物質において、前記オキソカーボン酸塩は、構成元素として水素を含まないオキソカーボン酸塩であることが好ましい。
【0011】
本発明のナトリウム二次電池用活物質において、前記オキソカーボン酸塩は、ロジゾン酸二ナトリウムであることが好ましい。
【0012】
本発明のナトリウム二次電池用電極は、本発明のナトリウム二次電池用活物質を含んでなることを特徴とする。
【0013】
本発明のナトリウム二次電池は、第1電極、第2電極および非水電解液を備え、前記第1電極は、本発明のナトリウム二次電池用電極からなることを特徴とする。
【0014】
本発明のナトリウム二次電池において、前記第2電極の活物質は、ナトリウム金属またはナトリウム合金であることが好ましい。
本発明のナトリウム二次電池において、前記第2電極の活物質は、ナトリウムイオンをドープかつ脱ドープすることのできる周期表第14族元素を単体または主成分として含んでなることが好ましい。
本発明のナトリウム二次電池において、前記第2電極の活物質は、ナトリウムイオンをドープかつ脱ドープすることのできる非黒鉛化炭素を単体または主成分として含んでなることが好ましい。
【0015】
すなわち、本発明の一態様は以下に関する。
(1)ナトリウムイオンをドープかつ脱ドープすることのできるオキソカーボン酸塩を含むことを特徴とするナトリウム二次電池用活物質。
(2)前記オキソカーボン酸塩は、構成元素として水素を含まないオキソカーボン酸塩である、(1)に記載のナトリウム二次電池用活物質。
(3)前記オキソカーボン酸塩は、ロジゾン酸二ナトリウムである、(1)または(2)に記載のナトリウム二次電池用活物質。
(4)(1)〜(3)のいずれか1つに記載のナトリウム二次電池用活物質を含むことを特徴とするナトリウム二次電池用電極。
(5)第1電極、第2電極および非水電解液を備え、前記第1電極は、(4)に記載のナトリウム二次電池用電極からなることを特徴とするナトリウム二次電池。
(6)前記第2電極の活物質は、ナトリウム金属またはナトリウム合金である、(5)に記載のナトリウム二次電池。
(7)前記第2電極の活物質は、ナトリウムイオンをドープかつ脱ドープすることのできる周期表第14族元素を単体または主成分として含む、(5)または(6)に記載のナトリウム二次電池。
(8)前記第2電極の活物質は、ナトリウムイオンをドープかつ脱ドープすることのできる非黒鉛化炭素を単体または主成分として含む、(7)に記載のナトリウム二次電池。
【0016】
また、本発明の別の側面を以下に記載する。
(1)ナトリウムイオンを挿入かつ脱離することのできるオキソカーボン酸塩を含むことを特徴とするナトリウム二次電池用活物質。
(2)前記オキソカーボン酸塩は、構成元素として水素を含まないオキソカーボン酸塩である、(1)に記載のナトリウム二次電池用活物質。
(3)前記オキソカーボン酸塩は、ロジゾン酸二ナトリウムである、(1)または(2)に記載のナトリウム二次電池用活物質。
(4)(1)〜(3)のいずれか1つに記載のナトリウム二次電池用活物質を含むことを特徴とするナトリウム二次電池用電極。
(5)第1電極、第2電極および非水電解液を備え、前記第1電極は、(4)に記載のナトリウム二次電池用電極からなることを特徴とするナトリウム二次電池。
(6)前記第2電極の活物質は、ナトリウム金属またはナトリウム合金である、(5)に記載のナトリウム二次電池。
(7)前記第2電極の活物質は、ナトリウムイオンを挿入かつ脱離することのできる周期表第14族元素を単体または主成分として含む、(5)または(6)に記載のナトリウム二次電池。
(8)前記第2電極の活物質は、ナトリウムイオンを挿入かつ脱離することのできる非黒鉛化炭素を単体または主成分として含む、(7)に記載のナトリウム二次電池。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、充放電を繰り返した際の放電容量維持率、すなわち、充放電サイクル特性に優れたナトリウム二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施例1および比較例1において、ナトリウム二次電池の充放電サイクル特性を示すグラフである。
図2】実施例2において、スクアリン酸二ナトリウムの製造方法を示すフローチャートである。
図3】実施例3において、クロコン酸二ナトリウムの製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のナトリウム二次電池用活物質、ナトリウム二次電池用電極、ナトリウム二次電池の実施の形態について説明する。
なお、本実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0020】
<ナトリウム二次電池用活物質>
本発明のナトリウム二次電池用活物質は、ナトリウムイオンをドープ(挿入)かつ脱ドープ(脱離)することのできるオキソカーボン酸塩を含んでなるものである。
【0021】
オキソカーボン酸塩としては、ナトリウム二次電池の放電容量をより高め、初回の不可逆容量をより減少させ、ナトリウム二次電池のエネルギー密度をより高める観点から、構成元素として水素を含まないオキソカーボン酸塩、すなわち、炭素、酸素およびアルカリ金属のみからなるものが好ましく用いられる。
炭素、酸素およびアルカリ金属のみからなるオキソカーボン酸塩としては、下記の化学式(1)で表されるデルタ酸(三角酸)のアルカリ金属塩、下記の化学式(2)で表されるスクアリン酸(四角酸)のアルカリ金属塩、下記の化学式(3)で表されるクロコン酸(五角酸)のアルカリ金属塩、下記の化学式(4)で表されるロジゾン酸(六角酸)のアルカリ金属塩および下記の化学式(5)で表されるヘプタゴン酸(七角酸)のアルカリ金属塩が挙げられる。
アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウムが好ましく、より好ましくは、ナトリウムである。
【0022】
オキソカーボン酸塩のナトリウム塩としては、下記の化学式(6)で表されるデルタ酸一ナトリウム、下記の化学式(7)で表されるデルタ酸二ナトリウム、下記の化学式(8)で表されるスクアリン酸一ナトリウム、下記の化学式(9)で表されるスクアリン酸二ナトリウム、下記の化学式(10)で表されるクロコン酸一ナトリウム、下記の化学式(11)で表されるクロコン酸二ナトリウム、下記の化学式(12)で表されるロジゾン酸一ナトリウム、下記の化学式(13)で表されるロジゾン酸二ナトリウム、下記の化学式(14)で表されるヘプタゴン酸一ナトリウム、下記の化学式(15)で表されるヘプタゴン酸二ナトリウム下記の化学式(16)で表されるロジゾン酸三ナトリウム、下記の化学式(17)で表されるロジゾン酸四ナトリウム、下記の化学式(18)で表されるヘプタゴン酸三ナトリウム、下記の化学式(19)で表されるヘプタゴン酸四ナトリウム等が挙げられる。
【0023】
【化1】
【0024】
【化2】
【0025】
【化3】
【0026】
【化4】
【0027】
【化5】
【0028】
【化6】
【0029】
【化7】
【0030】
【化8】
【0031】
【化9】
【0032】
【化10】
【0033】
【化11】
【0034】
【化12】
【0035】
【化13】
【0036】
【化14】
【0037】
【化15】
【0038】
【化16】
【0039】
【化17】
【0040】
【化18】
【0041】
【化19】
【0042】
本発明のナトリウム二次電池用活物質を用いて作製されたナトリウム二次電池の放電容量維持率をより高める観点からは、ロジゾン酸一ナトリウム、ロジゾン酸二ナトリウム、ヘプタゴン酸一ナトリウムおよびヘプタゴン酸二ナトリウムが好ましく、より好ましくはロジゾン酸二ナトリウムおよびヘプタゴン酸二ナトリウムであり、さらに好ましくはロジゾン酸二ナトリウムである。
【0043】
また、本発明のナトリウム二次電池用活物質を用いて作製されたナトリウム二次電池の放電容量をより高める観点からは、ロジゾン酸三ナトリウム、ロジゾン酸四ナトリウム、ヘプタゴン酸三ナトリウムおよびヘプタゴン酸四ナトリウムが好ましい。
【0044】
また、本発明のナトリウム二次電池の効果を損なわない範囲で、活物質としては、オキソカーボン酸塩とナトリウム無機化合物の混合物を用いてもよい。
ナトリウム無機化合物としては、次の化合物を挙げることができる。すなわち、NaFeO2、NaMnO2、NaNiO2およびNaCoO2等のNaM1a12で表される酸化物、Na0.44Mn1-a21a22で表される酸化物、Na0.7Mn1-a21a22.05で表される酸化物(M1は1種以上の遷移金属元素、0<a1<1、0≦a2<1);
Na6Fe2Si1230およびNa2Fe5Si1230等のNab2cSi1230で表される酸化物(M2は1種以上の遷移金属元素、2≦b≦6、2≦c≦5);
Na2Fe2Si618およびNa2MnFeSi618等のNad3eSi618で表される酸化物(M3は1種以上の遷移金属元素、2≦d≦6、1≦e≦2);
Na2FeSiO6等のNaf4gSi26で表される酸化物(M4は遷移金属元素、MgおよびAlからなる群より選ばれる1種以上の元素、1≦f≦2、1≦g≦2)
NaFePO4、NaMnPO4、Na3Fe2(PO43等のリン酸塩;
Na2FePO4F、Na2VPO4F、Na2MnPO4F、Na2CoPO4F、Na2NiPO4F等のフッ化リン酸塩;
NaFeSO4F、NaMnSO4F、NaCoSO4F、NaFeSO4F等のフッ化硫酸塩;
NaFeBO4、Na3Fe2(BO43等のホウ酸塩;
Na3FeF6、Na2MnF6等のNah56で表されるフッ化物(M5は1種以上の遷移金属元素、2≦h≦3);等が挙げられる。
【0045】
{オキソカーボン酸塩の製造方法}
本発明において、オキソカーボン酸塩またはオキソカーボン酸は、例えば、下記の製造方法(I)〜(V)に準拠して製造することができる。
また、下記の製造方法(I)〜(V)によって得られたオキソカーボン酸を、アルカリ金属水酸化物を含む溶液等で中和することにより、オキソカーボン酸塩が得られる。
【0046】
製造方法(I)としては、アルカリ金属と一酸化炭素を低温において反応させて得られたジヒドロキシアセチレンの2アルカリ塩を加熱し、酸化処理することによりオキソカーボン酸塩またはオキソカーボン酸を製造する方法(Helv. Chem. Acta,46,1121(1963);Z. Anorg. Allg. Chem.,330,251(1964);Chem. Ber.,98,126(1965)参照)が挙げられる。
【0047】
製造方法(II)としては、リチウム試薬を用いて、オキソカーボン酸を製造する方法(Journal of Organic Chemistry,53,2482,2477(1988)参照)が挙げられる。
【0048】
製造方法(III)としては、グリニヤール試薬を用いて、オキソカーボン酸を製造する方法(Heterocycles,27(5),1191(1988)参照)が挙げられる。
【0049】
製造方法(IV)としては、スズ試薬を用いて、オキソカーボン酸塩を製造する方法(Journal of Organic Chemistry,55,5359(1990);Tetrahydron Letters,31(30),4293(1990)参照)が挙げられる。
【0050】
製造方法(V)としては、Friedel Crafts反応を用いて、オキソカーボン酸塩を合成する方法(Synthesis,46頁(1974)参照)が挙げられる。
【0051】
なお、オキソカーボン酸塩としては、市場から入手可能なものを用いてもよい。
【0052】
<ナトリウム二次電池用電極>
本発明のナトリウム二次電池用電極は、本発明のナトリウム二次電池用活物質を含んでなるものである。詳細には、本発明のナトリウム二次電池用電極は、集電体上に、本発明のナトリウム二次電池用活物質、導電材およびバインダーを含む電極合材からなる層が積層された構造をなしている。また、本発明のナトリウム二次電池用電極は、ナトリウムイオンをドープかつ脱ドープすることができる。
本発明のナトリウム二次電池用電極は、ナトリウム二次電池において、正極として作用する。
【0053】
[集電体]
集電体としては、アルミニウム、ニッケル、ステンレス、銅等の導電体が用いられる。集電体の形状は、箔状、網状および多孔体状等が挙げられる。これらのなかでも、二次電池の正極作動電位において安定であり、薄膜に加工し易く、安価であるという点から、アルミニウム箔が好ましい。
【0054】
[導電材]
導電材としては、天然黒鉛、人造黒鉛、コークス類、カーボンブラック等の炭素材料等が挙げられる。
なお、本発明において、ナトリウム二次電池用電極は、導電材を必要としないこともある。
【0055】
[バインダー]
バインダーとしては、熱可塑性樹脂が用いられ、具体的には、ポリフッ化ビニリデン(以下、「PVDF」と言うことがある。)、ポリテトラフルオロエチレン(以下、「PTFE」と言うことがある。)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン・フッ化ビニリデン系共重合体、六フッ化プロピレン・フッ化ビニリデン系共重合体および四フッ化エチレン・パーフルオロビニルエーテル系共重合体等のフッ素樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、1種または2種以上が組み合わされて用いられる。
【0056】
{ナトリウム二次電池用電極の製造方法}
ナトリウム二次電池用電極は、集電体に、活物質、導電材およびバインダーを含む電極合材を担持(積層)することによって製造される。
集電体に、電極合材を担持する方法としては、(1)電極合材を加圧成形する方法、(2)有機溶媒等と電極合材を混合して、電極合材のペーストを調製し、そのペーストを、集電体に塗工し、さらに、集電体に塗工したペーストを乾燥した後、プレスする等して固着する方法が挙げられる。
【0057】
有機溶媒としては、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルトリアミン等のアミン系溶媒;エチレンオキシド、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;酢酸メチル等のエステル系溶媒;ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。
【0058】
集電体に、ペーストを塗工する方法としては、例えば、スリットダイ塗工法、スクリーン塗工法、カーテン塗工法、ナイフ塗工法、グラビア塗工法、静電スプレー法等が挙げられる。本発明では、これらの塗工法を、複数組み合わせて用いてもよい。
【0059】
<ナトリウム二次電池>
本発明のナトリウム二次電池は、第1電極、第2電極および非水電解液を備えてなるものである。
また、本発明のナトリウム二次電池において、第1電極は、上記の本発明のナトリウム二次電池用電極からなる。
【0060】
<第1電極>
本発明のナトリウム二次電池において、第1電極は、正極として作用する。
【0061】
<第2電極>
第2電極は、集電体上に、活物質、導電材およびバインダーを含む電極合材からなる層が積層された構造をなしている。また、第2電極は、ナトリウムイオンをドープかつ脱ドープすることができる。
【0062】
[集電体]
集電体としては、アルミニウム、ニッケル、ステンレス、銅等の導電体が用いられる。集電体の形状は、箔状、網状および多孔体状等が挙げられる。
【0063】
[活物質]
第2電極の活物質としては、ナトリウム金属またはナトリウム合金、あるいは、ナトリウムイオンをドープかつ脱ドープすることのできる周期表第14族元素を単体または主成分として含んでなるものが挙げられる。ナトリウム合金におけるナトリウム以外の金属元素としては、例えば、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)等が挙げられる。
また、第2電極の活物質としては、ナトリウムイオンをドープかつ脱ドープすることのできる非黒鉛化炭素を単体または主成分として含んでなるものが挙げられる。
【0064】
第2電極としては、活物質がナトリウム金属またはナトリウム合金からなるものが好ましい。
本発明のナトリウム二次電池において、第2電極は、負極として作用する。
【0065】
[導電材]
導電材としては、上記の本発明のナトリウム二次電池用電極における導電材と同様のものが用いられる。
【0066】
[バインダー]
バインダーとしては、上記の本発明のナトリウム二次電池用電極におけるバインダーと同様のものが用いられる。
【0067】
{第2電極の製造方法}
第2電極は、一般に、集電体に、活物質、導電材およびバインダーを含む電極合材を担持(積層)することによって製造される。
集電体に、電極合材を担持する方法としては、(1)電極合材を加圧成形する方法、(2)有機溶媒等と電極合材を混合して、電極合材のペーストを調製し、そのペーストを、集電体に塗工し、さらに、集電体に塗工したペーストを乾燥した後、プレスする等して固着する方法が挙げられる。
また、ナトリウム金属またはナトリウム合金からなるシートを、第2電極として用いてもよいし、ナトリウム金属またはナトリウム合金からなるシートを集電体に積層して、第2電極として用いてもよい。
【0068】
<非水電解質>
本発明における非水電解質とは、アルカリイオンを含有する物質からなる液体または固体であって、アルカリイオンとして、主にナトリウムイオンを含有する。
非水電解質は、ナトリウムイオン以外のアルカリイオンを含んでいてもよい。ナトリウムイオン以外のアルカリイオンとしては、リチウムイオンおよびカリウムイオンのいずれか一方、あるいは、リチウムイオンおよびカリウムイオンの両方が好ましい。
【0069】
非水電解質に含有されるナトリウムイオンの含有割合は、アルカリイオン全体の50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは75質量%以上であり、さらに好ましくは80質量%以上(100質量%を含む)である。
【0070】
本発明における非水電解質は、通常、電解質および有機溶媒を含有する非水電解液として用いられる。
電解質としては、例えば、NaClO、NaPF、NaAsF、NaSbF、NaBF、NaCFSO、NaN(SOCF、低級脂肪族カルボン酸ナトリウム塩、NaAlClが挙げられる。これらは、2種以上を混合した混合物を使用してもよい。
電解質としては、NaPF、NaAsF、NaSbF、NaBF、NaCFSOおよびNaN(SOCFからなる群より選択される少なくとも1種のフッ素含有ナトリウム塩を含むことが好ましい。
【0071】
有機溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、イソプロピルメチルカーボネート、ビニレンカーボネート、4−トリフルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、1,2−ジ(メトキシカルボニルオキシ)エタン等のカーボネート類;1,2−ジメトキシエタン、1,3−ジメトキシプロパン、ペンタフルオロプロピルメチルエーテル、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルジフルオロメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等のエーテル類;ギ酸メチル、酢酸メチル、γ−ブチロラクトン等のエステル類;アセトニトリル、ブチロニトリル等のニトリル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;3−メチル−2−オキサゾリドン等のカーバメート類;スルホラン、ジメチルスルホキシド、1,3−プロパンスルトン等の含硫黄化合物;または、前記の有機溶媒にさらにフッ素置換基を導入したもの等が用いられる。
【0072】
本発明では、非水電解質として、上記の非水電解液の代わりに固体電解質を用いてもよい。
固体電解質としては、例えば、ポリエチレンオキサイド系の高分子、ポリオルガノシロキサン鎖およびポリオキシアルキレン鎖から選ばれる少なくとも1種以上を含む高分子等の高分子固体電解質に電解液を保持させた、いわゆるゲルタイプの電解質や、NaS−SiS、NaS−GeS、NaS−P、NaS−B、NaS−SiS−NaPO、NaS−SiS−NaSO等の硫化物含有電解質;NaZr(PO等のNASICON型電解質等の無機固体電解質が挙げられる。
このような固体電解質を用いることにより、ナトリウム二次電池の安全性をより高めることができることがある。
なお、本発明のナトリウム二次電池において、固体電解質を用いる場合には、固体電解質がセパレータとして機能する場合もある。その場合には、セパレータを必要としないこともある。
【0073】
<セパレータ>
本発明のナトリウム二次電池は、通常、セパレータをさらに備えている。
セパレータとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂、含窒素芳香族重合体等の材質からなる多孔質フィルム、不織布、織布等の形態をなす材料が用いられる。
【0074】
セパレータの厚さは、電池の体積エネルギー密度が上がり、内部抵抗が小さくなるという点で、機械的強度が保たれる限り薄いほど好ましい。
セパレータの厚さは、一般に、5〜200μm程度であることが好ましく、より好ましくは5〜40μm程度である。
【0075】
<ナトリウム二次電池の製造方法>
本発明において、ナトリウム二次電池がセパレータを備える場合には、例えば、上述の第1電極、セパレータおよび第2電極を、この順に積層および巻回することによって、第1電極、セパレータおよび第2電極から構成される電極群を得た後、この電極群を電池缶内に収納し、電池缶内に非水電解液を注入して、電極群に非水電解液を含浸させることによって、ナトリウム二次電池を製造することができる。
【0076】
電極群の形状としては、例えば、この電極群を巻回の軸と垂直方向に切断したときの断面が、円形、楕円形、長方形、角が取れたような長方形等をなすような形状が挙げられる。
【0077】
また、ナトリウム二次電池の形状としては、例えば、ペーパー型、コイン型、円筒型、角型等の形状が挙げられる。
【0078】
このようにして得られたナトリウム二次電池は、従来のナトリウム二次電池に比べて、充放電を繰り返した際の放電容量維持率が大きく、充放電サイクル特性に優れている。さらに、ナトリウムデンドライトの生成も抑制することができ、二次電池としての安定性に優れている。
なお、ナトリウムデンドライトは、充放電の繰り返しに伴って電極に析出するナトリウムの樹枝状晶のことである。このナトリウムデンドライトによって、第1電極と第2電極が短絡すると、ナトリウム二次電池が機能しなくなる。
【実施例】
【0079】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下において濃度単位「M」は「モル/L」を意味する。
【0080】
「実施例1」
オキソカーボン酸塩として、ロジゾン酸二ナトリウム(Merck社製)、導電材として、アセチレンブラック(電気化学工業社製)、バインダーとして、ポリテトラフルオロエチレン(ダイキン社製)を用い、これらが質量比で、オキソカーボン酸塩:導電材:バインダー=70:25:5の組成となるように、それぞれを秤量した。
その後、まず、オキソカーボン酸塩と導電材をメノウ乳鉢で十分に混合し、さらにバインダーを加え、引き続き均一になるように混合した後、その混合物を薄く延ばしてシート化した。
得られたシートを、コルクボーラーで直径1.0cmに打ち抜いた。
次に、打ち抜いたシートを、ハンドプレスにより、集電体であるステンレスメッシュに十分に圧着し、さらに、乾燥機に入れて十分に乾燥して、第1電極(正極)E1を得た。
【0081】
コインセル(宝泉社製)の下側パーツの窪みに、第1電極(正極)E1を、ステンレスメッシュ側の面を下に向けて載置し、非水電解液として、ジメチルカーボネート(DMC)とエチレンカーボネート(EC)とが体積比で1:1となるように混合された混合溶媒に、1Mの濃度でNaClOを溶解させた溶液(キシダ化学社製)、セパレータとして、ポリプロピレン多孔質膜(商品名:セルガード3501、セルガード社製)、および、第2電極(負極)として、金属ナトリウム(アルドリッチ社製)を組み合わせて、ナトリウム二次電池B1を作製した。
なお、電池の組み立てを、アルゴン雰囲気のグローブボックス内で行った。
【0082】
<二次電池の充放電容量の測定>
ナトリウム二次電池B1の充放電容量を測定した。具体的な測定方法は、以下の通りである。
まず、レストポテンシャルから1.5Vまで0.2mAcm−2でCC(コンスタントカレント:定電流)放電を行った。
次に、放電速度と同じ速度で、CC(コンスタントカレント:定電流)充電を行い、電圧2.9Vでカットオフすることにより、1サイクル目の充放電を行った。
この1サイクル目の放電容量は、オキソカーボン酸塩であるロジゾン酸二ナトリウムの質量に対して、238mAhg−1であった。
【0083】
2サイクル目以降の放電および充電を、上記の充放電速度と同じ0.2mAcm−2で行い、1サイクル目と同様に、放電電圧1.5V、充電電圧2.9Vでカットオフした。
その結果、2サイクル目の放電容量は163mAhg−1であり、15サイクル目の放電容量は154mAhg−1であった。すなわち、2サイクル目に対する15サイクル目の放電容量維持率は94%であった。結果を図1および表1に示す。
【0084】
「比較例1」
正極活物質として、ロジゾン酸二ナトリウムの代わりに、以下の方法で得られたマンガン酸ナトリウム(金属元素のモル比がNa:Mn=7:10)を用いた以外は、実施例1と同様にして、第1電極(正極)E2を得て、実施例1と同様にして、ナトリウム二次電池B2を作製した。
すなわち、炭酸ナトリウム(NaCO、和光純薬工業社製、純度99.8%)と酸化マンガン(IV)(MnO、高純度化学研究所社製、純度99.9%)を用い、これらがモル比で、Na:Mn=7:10となるように秤量した。その後、炭酸ナトリウムと酸化マンガンを、乾式ボールミルで4時間、混合し、金属含有化合物の混合物を得た。
次に、その混合物をアルミナボートに充填し、電気炉を用いて、空気雰囲気において、800℃にて2時間加熱して、マンガン酸ナトリウム(金属元素のモル比がNa:Mn=7:10)を得た。
【0085】
<二次電池の充放電容量の測定>
ナトリウム二次電池B2の充放電容量を測定した。具体的な測定方法は、以下の通りである。
まず、レストポテンシャルから4.0Vまで0.2mAcm−2でCC(コンスタントカレント:定電流)充電を行った。
次に、充電速度と同じ速度で、CC(コンスタントカレント:定電流)放電を行い、電圧2.0Vでカットオフすることにより、1サイクル目の充放電を行った。
この1サイクル目の放電容量は、マンガン酸ナトリウムの質量に対して、159mAhg−1であった。
【0086】
2サイクル目以降の充電および放電を、上記の充放電速度と同じ0.2mAcm−2で行い、1サイクル目と同様に、充電電圧4.0V、放電電圧2.0Vでカットオフした。
その結果、2サイクル目の放電容量は150mAhg−1であり、15サイクル目の放電容量は118mAhg−1であった。すなわち、2サイクル目に対する15サイクル目の放電容量維持率は79%であった。結果を図1および表1に示す。
【0087】
「参考例1」
正極活物質として、オキソカーボン酸であるスクアリン酸(Merck社製)、導電材として、アセチレンブラック(電気化学工業社製)、バインダーとして、ポリテトラフルオロエチレン(ダイキン社製)を用い、これらが質量比で、オキソカーボン酸:導電材:バインダー=70:25:5の組成となるように、それぞれを秤量した。
その後、まず、オキソカーボン酸と導電材をメノウ乳鉢で十分に混合し、さらにバインダーを加え、引き続き均一になるように混合した後、その混合物を薄く延ばしてシート化した。
得られたシートを、コルクボーラーで直径1.0cmに打ち抜いた。
次に、打ち抜いたシートを、ハンドプレスにより、集電体であるステンレスメッシュに十分に圧着し、さらに、乾燥機に入れて十分に乾燥して、第1電極(正極)E3を得た。
【0088】
コインセル(宝泉社製)の下側パーツの窪みに、第1電極(正極)E3を、ステンレスメッシュ側の面を下に向けて載置し、非水電解液として、プロピレンカーボネート(PC)溶媒に、1Mの濃度でNaClOを溶解させた溶液(キシダ化学社製)、セパレータとして、ポリプロピレン多孔質膜(商品名:セルガード3501、セルガード社製)、および、第2電極(負極)として、金属ナトリウム(アルドリッチ社製)を組み合わせて、ナトリウム二次電池B3を作製した。
なお、電池の組み立てを、アルゴン雰囲気のグローブボックス内で行った。
【0089】
<二次電池の充放電容量の測定>
ナトリウム二次電池B3の充放電容量を測定した。具体的な測定方法は、以下の通りである。
まず、レストポテンシャルから1.0Vまで0.2mAcm−2でCC(コンスタントカレント:定電流)放電を行った。
次に、放電速度と同じ速度で、CC(コンスタントカレント:定電流)充電を行い、電圧3.4Vでカットオフすることにより、1サイクル目の充放電を行った。
この1サイクル目の放電容量は、オキソカーボン酸であるスクアリン酸の質量に対して、64mAhg−1であった。
【0090】
「参考例2」
正極活物質として、オキソカーボン酸であるクロコン酸(Merck社製)、導電材として、アセチレンブラック(電気化学工業社製)、バインダーとして、ポリテトラフルオロエチレン(ダイキン社製)を用い、これらが質量比で、オキソカーボン酸:導電材:バインダー=70:25:5の組成となるように、それぞれを秤量した。
その後、まず、オキソカーボン酸と導電材をメノウ乳鉢で十分に混合し、さらにバインダーを加え、引き続き均一になるように混合した後、その混合物を薄く延ばしてシート化した。
得られたシートを、コルクボーラーで直径1.0cmに打ち抜いた。
次に、打ち抜いたシートを、ハンドプレスにより、集電体であるステンレスメッシュに十分に圧着し、さらに、乾燥機に入れて十分に乾燥して、第1電極(正極)E4を得た。
【0091】
コインセル(宝泉社製)の下側パーツの窪みに、第1電極(正極)E4を、ステンレスメッシュ側の面を下に向けて載置し、非水電解液として、プロピレンカーボネート(PC)溶媒に、1Mの濃度でNaClOを溶解させた溶液(キシダ化学社製)、セパレータとして、ポリプロピレン多孔質膜(商品名:セルガード3501、セルガード社製)、および、第2電極(負極)として、金属ナトリウム(アルドリッチ社製)を組み合わせて、ナトリウム二次電池B4を作製した。
なお、電池の組み立てを、アルゴン雰囲気のグローブボックス内で行った。
【0092】
<二次電池の充放電容量の測定>
ナトリウム二次電池B4の充放電容量を測定した。具体的な測定方法は、以下の通りである。
まず、レストポテンシャルから1.0Vまで0.2mAcm−2でCC(コンスタントカレント:定電流)放電を行った。
次に、放電速度と同じ速度で、CC(コンスタントカレント:定電流)充電を行い、電圧3.4Vでカットオフすることにより、1サイクル目の充放電を行った。
この1サイクル目の放電容量は、オキソカーボン酸であるクロコン酸の質量に対して、136mAhg−1であった。
【0093】
「実施例2」
フラスコにオキソカーボン酸であるスクアリン酸(Merck社製)15.2gを秤り取り、メタノール(和光純薬工業社製)4リットルを加えて(図2のS4)、室温で攪拌させながら(図2のS5)溶解した溶液を調製した。
室温で反応容器である丸底フラスコ内に窒素を流入させて、丸底フラスコ内の空気を窒素で置換した(図2のS1)。
水酸化ナトリウム(和光純薬工業社製)11.1gを100ミリリットルのメタノール(和光純薬工業社製)に(図2のS2)室温で攪拌させて(図2のS3)溶解した溶液を、前記スクアリン酸溶液に室温で攪拌させながら5分間かけて滴下し(図2のS6)、さらに室温で2時間攪拌し続けた(図2のS7)後、析出した固体を濾過により分離し(図2のS8)、適量のメタノール(和光純薬工業社製)で回収した固体を洗浄し(図2のS9)、真空中120℃で8時間乾燥する(図2のS10)ことによりスクアリン酸二ナトリウムを得た。
【0094】
上記で得たオキソカーボン酸塩であるスクアリン酸二ナトリウム、導電材として、アセチレンブラック(電気化学工業社製)、バインダーとして、ポリフッ化ビニリデン(株式会社クレハ社製)を質量比で70:25:5となるように混合し、溶剤としてN−メチルピロリドン(NMP)を適量加えて混練し、電極材ペーストを得た。
アルミニウム箔上に、この電極材ペーストを塗布し、乾燥後、プレスして電極シートを得た。
この電極シートを直径15mmに裁断し、ステンレスプレートに溶接して電極を得た。
さらに、乾燥機に入れて十分に乾燥して、第1電極(正極)E5を得た。
【0095】
コインセル(宝泉社製)の下側パーツの窪みに、第1電極(正極)E5を、ステンレスメッシュ側の面を下に向けて載置し、非水電解液として、プロピレンカーボネート(PC)溶媒に、1Mの濃度でNaClOを溶解させた溶液(キシダ化学社製)、セパレータとして、ポリプロピレン多孔質膜(商品名:セルガード3501、セルガード社製)、および、第2電極(負極)として、金属ナトリウム(アルドリッチ社製)を組み合わせて、ナトリウム二次電池B5を作製した。
なお、電池の組み立てを、アルゴン雰囲気のグローブボックス内で行った。
【0096】
<二次電池の充放電容量の測定>
ナトリウム二次電池B5の充放電容量を測定した。具体的な測定方法は、以下の通りである。
まず、レストポテンシャルから0.1VまでCC(コンスタントカレント:定電流)放電を行った。
次に、放電速度と同じ速度で、CC(コンスタントカレント:定電流)充電を行い、電圧2.0Vでカットオフすることにより、1サイクル目の充放電を行った。また、電流密度を0.1Cと設定したが、1C=235mA/gより算出した。
この1サイクル目の放電容量は、オキソカーボン酸塩であるスクアリン酸二ナトリウムの質量に対して、94mAhg−1であった。
【0097】
2サイクル目以降の充電および放電を、上記の充放電速度と同じ0.2mAcm−2で行い、1サイクル目と同様に、充電電圧0.1V、放電電圧2.0Vでカットオフした。
その結果、2サイクル目の放電容量は20mAhg−1であり、15サイクル目の放電容量は16mAhg−1であった。すなわち、2サイクル目に対する15サイクル目の放電容量維持率は80%であった。結果を表1に示す。
【0098】
「実施例3」
フラスコにオキソカーボン酸であるクロコン酸(Merck社製)10.6gを秤り取り、メタノール(和光純薬工業社製)1リットルを加えて(図3のS14)、室温で攪拌させながら(図3のS15)溶解した溶液を調製した。
室温で反応容器である丸底フラスコ内に窒素を流入させて、丸底フラスコ内の空気を窒素で置換した(図3のS11)。
水酸化ナトリウム(和光純薬工業社製)6.2gを100ミリリットルのメタノール(和光純薬工業社製)に(図3のS12)室温で攪拌させて(図3のS13)溶解した溶液を、前記スクアリン酸溶液に室温で攪拌させながら5分間かけて滴下(図3のS16)し、さらに室温で2時間攪拌し続けた(図3のS17)後、析出した固体を濾過により分離し(図3のS18)、適量のメタノール(和光純薬工業社製)で回収した固体を洗浄し(図3のS19)、真空中120℃で8時間乾燥する(図3のS20)ことによりクロコン酸二ナトリウムを得た。
【0099】
上記で得たオキソカーボン酸塩であるクロコン酸二ナトリウム、導電材として、アセチレンブラック(電気化学工業社製)、バインダーとして、ポリフッ化ビニリデン(株式会社クレハ社製)を質量比で70:25:5となるように混合し、溶剤としてN−メチルピロリドン(NMP)を適量加えて混練し、電極材ペーストを得た。
アルミニウム箔上に、この電極材ペーストを塗布し、乾燥後、プレスして電極シートを得た。
この電極シートを直径15mmに裁断し、ステンレスプレートに溶接して電極を得た。
さらに、乾燥機に入れて十分に乾燥して、第1電極(正極)E5を得た。
【0100】
コインセル(宝泉社製)の下側パーツの窪みに、第1電極(正極)E6を、ステンレスメッシュ側の面を下に向けて載置し、非水電解液として、プロピレンカーボネート(PC)溶媒に、1Mの濃度でNaClO4を溶解させた溶液(キシダ化学社製)、セパレータとして、ポリプロピレン多孔質膜(商品名:セルガード3501、セルガード社製)、および、第2電極(負極)として、金属ナトリウム(アルドリッチ社製)を組み合わせて、ナトリウム二次電池B6を作製した。
なお、電池の組み立てを、アルゴン雰囲気のグローブボックス内で行った。
【0101】
<二次電池の充放電容量の測定>
ナトリウム二次電池B6の充放電容量を測定した。具体的な測定方法は、以下の通りである。
まず、レストポテンシャルから1.0VまでCC(コンスタントカレント:定電流)放電を行った。
次に、放電速度と同じ速度で、CC(コンスタントカレント:定電流)充電を行い、電圧2.0Vでカットオフすることにより、1サイクル目の充放電を行った。また、電流密度を0.1Cと設定したが、1C=188mA/gより算出した。
この1サイクル目の放電容量は、オキソカーボン酸塩であるクロコン酸二ナトリウムの質量に対して、224mAhg−1であった。
【0102】
2サイクル目以降の充電および放電を、上記の充放電速度と同じ0.2mAcm−2で行い、1サイクル目と同様に、充電電圧1.0V、放電電圧2.0Vでカットオフした。
その結果、2サイクル目の放電容量は184mAhg−1であり、15サイクル目の放電容量は163mAhg−1であった。すなわち、2サイクル目に対する15サイクル目の放電容量維持率は89%であった。結果を表1に示す。
【0103】
【表1】
【0104】
実施例1〜3と比較例1の結果から、実施例1〜3のナトリウム二次電池は、放電容量維持率が大きく、充放電サイクル特性に優れ、しかも放電特性にも優れるナトリウム二次電池であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明は、エネルギー分野で利用可能である。
図1
図2
図3