【実施例】
【0079】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下において濃度単位「M」は「モル/L」を意味する。
【0080】
「実施例1」
オキソカーボン酸塩として、ロジゾン酸二ナトリウム(Merck社製)、導電材として、アセチレンブラック(電気化学工業社製)、バインダーとして、ポリテトラフルオロエチレン(ダイキン社製)を用い、これらが質量比で、オキソカーボン酸塩:導電材:バインダー=70:25:5の組成となるように、それぞれを秤量した。
その後、まず、オキソカーボン酸塩と導電材をメノウ乳鉢で十分に混合し、さらにバインダーを加え、引き続き均一になるように混合した後、その混合物を薄く延ばしてシート化した。
得られたシートを、コルクボーラーで直径1.0cmに打ち抜いた。
次に、打ち抜いたシートを、ハンドプレスにより、集電体であるステンレスメッシュに十分に圧着し、さらに、乾燥機に入れて十分に乾燥して、第1電極(正極)E1を得た。
【0081】
コインセル(宝泉社製)の下側パーツの窪みに、第1電極(正極)E1を、ステンレスメッシュ側の面を下に向けて載置し、非水電解液として、ジメチルカーボネート(DMC)とエチレンカーボネート(EC)とが体積比で1:1となるように混合された混合溶媒に、1Mの濃度でNaClO
4を溶解させた溶液(キシダ化学社製)、セパレータとして、ポリプロピレン多孔質膜(商品名:セルガード3501、セルガード社製)、および、第2電極(負極)として、金属ナトリウム(アルドリッチ社製)を組み合わせて、ナトリウム二次電池B1を作製した。
なお、電池の組み立てを、アルゴン雰囲気のグローブボックス内で行った。
【0082】
<二次電池の充放電容量の測定>
ナトリウム二次電池B1の充放電容量を測定した。具体的な測定方法は、以下の通りである。
まず、レストポテンシャルから1.5Vまで0.2mAcm
−2でCC(コンスタントカレント:定電流)放電を行った。
次に、放電速度と同じ速度で、CC(コンスタントカレント:定電流)充電を行い、電圧2.9Vでカットオフすることにより、1サイクル目の充放電を行った。
この1サイクル目の放電容量は、オキソカーボン酸塩であるロジゾン酸二ナトリウムの質量に対して、238mAhg
−1であった。
【0083】
2サイクル目以降の放電および充電を、上記の充放電速度と同じ0.2mAcm
−2で行い、1サイクル目と同様に、放電電圧1.5V、充電電圧2.9Vでカットオフした。
その結果、2サイクル目の放電容量は163mAhg
−1であり、15サイクル目の放電容量は154mAhg
−1であった。すなわち、2サイクル目に対する15サイクル目の放電容量維持率は94%であった。結果を
図1および表1に示す。
【0084】
「比較例1」
正極活物質として、ロジゾン酸二ナトリウムの代わりに、以下の方法で得られたマンガン酸ナトリウム(金属元素のモル比がNa:Mn=7:10)を用いた以外は、実施例1と同様にして、第1電極(正極)E2を得て、実施例1と同様にして、ナトリウム二次電池B2を作製した。
すなわち、炭酸ナトリウム(Na
2CO
3、和光純薬工業社製、純度99.8%)と酸化マンガン(IV)(MnO
2、高純度化学研究所社製、純度99.9%)を用い、これらがモル比で、Na:Mn=7:10となるように秤量した。その後、炭酸ナトリウムと酸化マンガンを、乾式ボールミルで4時間、混合し、金属含有化合物の混合物を得た。
次に、その混合物をアルミナボートに充填し、電気炉を用いて、空気雰囲気において、800℃にて2時間加熱して、マンガン酸ナトリウム(金属元素のモル比がNa:Mn=7:10)を得た。
【0085】
<二次電池の充放電容量の測定>
ナトリウム二次電池B2の充放電容量を測定した。具体的な測定方法は、以下の通りである。
まず、レストポテンシャルから4.0Vまで0.2mAcm
−2でCC(コンスタントカレント:定電流)充電を行った。
次に、充電速度と同じ速度で、CC(コンスタントカレント:定電流)放電を行い、電圧2.0Vでカットオフすることにより、1サイクル目の充放電を行った。
この1サイクル目の放電容量は、マンガン酸ナトリウムの質量に対して、159mAhg
−1であった。
【0086】
2サイクル目以降の充電および放電を、上記の充放電速度と同じ0.2mAcm
−2で行い、1サイクル目と同様に、充電電圧4.0V、放電電圧2.0Vでカットオフした。
その結果、2サイクル目の放電容量は150mAhg
−1であり、15サイクル目の放電容量は118mAhg
−1であった。すなわち、2サイクル目に対する15サイクル目の放電容量維持率は79%であった。結果を
図1および表1に示す。
【0087】
「参考例1」
正極活物質として、オキソカーボン酸であるスクアリン酸(Merck社製)、導電材として、アセチレンブラック(電気化学工業社製)、バインダーとして、ポリテトラフルオロエチレン(ダイキン社製)を用い、これらが質量比で、オキソカーボン酸:導電材:バインダー=70:25:5の組成となるように、それぞれを秤量した。
その後、まず、オキソカーボン酸と導電材をメノウ乳鉢で十分に混合し、さらにバインダーを加え、引き続き均一になるように混合した後、その混合物を薄く延ばしてシート化した。
得られたシートを、コルクボーラーで直径1.0cmに打ち抜いた。
次に、打ち抜いたシートを、ハンドプレスにより、集電体であるステンレスメッシュに十分に圧着し、さらに、乾燥機に入れて十分に乾燥して、第1電極(正極)E3を得た。
【0088】
コインセル(宝泉社製)の下側パーツの窪みに、第1電極(正極)E3を、ステンレスメッシュ側の面を下に向けて載置し、非水電解液として、プロピレンカーボネート(PC)溶媒に、1Mの濃度でNaClO
4を溶解させた溶液(キシダ化学社製)、セパレータとして、ポリプロピレン多孔質膜(商品名:セルガード3501、セルガード社製)、および、第2電極(負極)として、金属ナトリウム(アルドリッチ社製)を組み合わせて、ナトリウム二次電池B3を作製した。
なお、電池の組み立てを、アルゴン雰囲気のグローブボックス内で行った。
【0089】
<二次電池の充放電容量の測定>
ナトリウム二次電池B3の充放電容量を測定した。具体的な測定方法は、以下の通りである。
まず、レストポテンシャルから1.0Vまで0.2mAcm
−2でCC(コンスタントカレント:定電流)放電を行った。
次に、放電速度と同じ速度で、CC(コンスタントカレント:定電流)充電を行い、電圧3.4Vでカットオフすることにより、1サイクル目の充放電を行った。
この1サイクル目の放電容量は、オキソカーボン酸であるスクアリン酸の質量に対して、64mAhg
−1であった。
【0090】
「参考例2」
正極活物質として、オキソカーボン酸であるクロコン酸(Merck社製)、導電材として、アセチレンブラック(電気化学工業社製)、バインダーとして、ポリテトラフルオロエチレン(ダイキン社製)を用い、これらが質量比で、オキソカーボン酸:導電材:バインダー=70:25:5の組成となるように、それぞれを秤量した。
その後、まず、オキソカーボン酸と導電材をメノウ乳鉢で十分に混合し、さらにバインダーを加え、引き続き均一になるように混合した後、その混合物を薄く延ばしてシート化した。
得られたシートを、コルクボーラーで直径1.0cmに打ち抜いた。
次に、打ち抜いたシートを、ハンドプレスにより、集電体であるステンレスメッシュに十分に圧着し、さらに、乾燥機に入れて十分に乾燥して、第1電極(正極)E4を得た。
【0091】
コインセル(宝泉社製)の下側パーツの窪みに、第1電極(正極)E4を、ステンレスメッシュ側の面を下に向けて載置し、非水電解液として、プロピレンカーボネート(PC)溶媒に、1Mの濃度でNaClO
4を溶解させた溶液(キシダ化学社製)、セパレータとして、ポリプロピレン多孔質膜(商品名:セルガード3501、セルガード社製)、および、第2電極(負極)として、金属ナトリウム(アルドリッチ社製)を組み合わせて、ナトリウム二次電池B4を作製した。
なお、電池の組み立てを、アルゴン雰囲気のグローブボックス内で行った。
【0092】
<二次電池の充放電容量の測定>
ナトリウム二次電池B4の充放電容量を測定した。具体的な測定方法は、以下の通りである。
まず、レストポテンシャルから1.0Vまで0.2mAcm
−2でCC(コンスタントカレント:定電流)放電を行った。
次に、放電速度と同じ速度で、CC(コンスタントカレント:定電流)充電を行い、電圧3.4Vでカットオフすることにより、1サイクル目の充放電を行った。
この1サイクル目の放電容量は、オキソカーボン酸であるクロコン酸の質量に対して、136mAhg
−1であった。
【0093】
「実施例2」
フラスコにオキソカーボン酸であるスクアリン酸(Merck社製)15.2gを秤り取り、メタノール(和光純薬工業社製)4リットルを加えて(
図2のS4)、室温で攪拌させながら(
図2のS5)溶解した溶液を調製した。
室温で反応容器である丸底フラスコ内に窒素を流入させて、丸底フラスコ内の空気を窒素で置換した(
図2のS1)。
水酸化ナトリウム(和光純薬工業社製)11.1gを100ミリリットルのメタノール(和光純薬工業社製)に(
図2のS2)室温で攪拌させて(
図2のS3)溶解した溶液を、前記スクアリン酸溶液に室温で攪拌させながら5分間かけて滴下し(
図2のS6)、さらに室温で2時間攪拌し続けた(
図2のS7)後、析出した固体を濾過により分離し(
図2のS8)、適量のメタノール(和光純薬工業社製)で回収した固体を洗浄し(
図2のS9)、真空中120℃で8時間乾燥する(
図2のS10)ことによりスクアリン酸二ナトリウムを得た。
【0094】
上記で得たオキソカーボン酸塩であるスクアリン酸二ナトリウム、導電材として、アセチレンブラック(電気化学工業社製)、バインダーとして、ポリフッ化ビニリデン(株式会社クレハ社製)を質量比で70:25:5となるように混合し、溶剤としてN−メチルピロリドン(NMP)を適量加えて混練し、電極材ペーストを得た。
アルミニウム箔上に、この電極材ペーストを塗布し、乾燥後、プレスして電極シートを得た。
この電極シートを直径15mmに裁断し、ステンレスプレートに溶接して電極を得た。
さらに、乾燥機に入れて十分に乾燥して、第1電極(正極)E5を得た。
【0095】
コインセル(宝泉社製)の下側パーツの窪みに、第1電極(正極)E5を、ステンレスメッシュ側の面を下に向けて載置し、非水電解液として、プロピレンカーボネート(PC)溶媒に、1Mの濃度でNaClO
4を溶解させた溶液(キシダ化学社製)、セパレータとして、ポリプロピレン多孔質膜(商品名:セルガード3501、セルガード社製)、および、第2電極(負極)として、金属ナトリウム(アルドリッチ社製)を組み合わせて、ナトリウム二次電池B5を作製した。
なお、電池の組み立てを、アルゴン雰囲気のグローブボックス内で行った。
【0096】
<二次電池の充放電容量の測定>
ナトリウム二次電池B5の充放電容量を測定した。具体的な測定方法は、以下の通りである。
まず、レストポテンシャルから0.1VまでCC(コンスタントカレント:定電流)放電を行った。
次に、放電速度と同じ速度で、CC(コンスタントカレント:定電流)充電を行い、電圧2.0Vでカットオフすることにより、1サイクル目の充放電を行った。また、電流密度を0.1Cと設定したが、1C=235mA/gより算出した。
この1サイクル目の放電容量は、オキソカーボン酸塩であるスクアリン酸二ナトリウムの質量に対して、94mAhg
−1であった。
【0097】
2サイクル目以降の充電および放電を、上記の充放電速度と同じ0.2mAcm
−2で行い、1サイクル目と同様に、充電電圧0.1V、放電電圧2.0Vでカットオフした。
その結果、2サイクル目の放電容量は20mAhg
−1であり、15サイクル目の放電容量は16mAhg
−1であった。すなわち、2サイクル目に対する15サイクル目の放電容量維持率は80%であった。結果を表1に示す。
【0098】
「実施例3」
フラスコにオキソカーボン酸であるクロコン酸(Merck社製)10.6gを秤り取り、メタノール(和光純薬工業社製)1リットルを加えて(
図3のS14)、室温で攪拌させながら(
図3のS15)溶解した溶液を調製した。
室温で反応容器である丸底フラスコ内に窒素を流入させて、丸底フラスコ内の空気を窒素で置換した(
図3のS11)。
水酸化ナトリウム(和光純薬工業社製)6.2gを100ミリリットルのメタノール(和光純薬工業社製)に(
図3のS12)室温で攪拌させて(
図3のS13)溶解した溶液を、前記スクアリン酸溶液に室温で攪拌させながら5分間かけて滴下(
図3のS16)し、さらに室温で2時間攪拌し続けた(
図3のS17)後、析出した固体を濾過により分離し(
図3のS18)、適量のメタノール(和光純薬工業社製)で回収した固体を洗浄し(
図3のS19)、真空中120℃で8時間乾燥する(
図3のS20)ことによりクロコン酸二ナトリウムを得た。
【0099】
上記で得たオキソカーボン酸塩であるクロコン酸二ナトリウム、導電材として、アセチレンブラック(電気化学工業社製)、バインダーとして、ポリフッ化ビニリデン(株式会社クレハ社製)を質量比で70:25:5となるように混合し、溶剤としてN−メチルピロリドン(NMP)を適量加えて混練し、電極材ペーストを得た。
アルミニウム箔上に、この電極材ペーストを塗布し、乾燥後、プレスして電極シートを得た。
この電極シートを直径15mmに裁断し、ステンレスプレートに溶接して電極を得た。
さらに、乾燥機に入れて十分に乾燥して、第1電極(正極)E5を得た。
【0100】
コインセル(宝泉社製)の下側パーツの窪みに、第1電極(正極)E6を、ステンレスメッシュ側の面を下に向けて載置し、非水電解液として、プロピレンカーボネート(PC)溶媒に、1Mの濃度でNaClO4を溶解させた溶液(キシダ化学社製)、セパレータとして、ポリプロピレン多孔質膜(商品名:セルガード3501、セルガード社製)、および、第2電極(負極)として、金属ナトリウム(アルドリッチ社製)を組み合わせて、ナトリウム二次電池B6を作製した。
なお、電池の組み立てを、アルゴン雰囲気のグローブボックス内で行った。
【0101】
<二次電池の充放電容量の測定>
ナトリウム二次電池B6の充放電容量を測定した。具体的な測定方法は、以下の通りである。
まず、レストポテンシャルから1.0VまでCC(コンスタントカレント:定電流)放電を行った。
次に、放電速度と同じ速度で、CC(コンスタントカレント:定電流)充電を行い、電圧2.0Vでカットオフすることにより、1サイクル目の充放電を行った。また、電流密度を0.1Cと設定したが、1C=188mA/gより算出した。
この1サイクル目の放電容量は、オキソカーボン酸塩であるクロコン酸二ナトリウムの質量に対して、224mAhg
−1であった。
【0102】
2サイクル目以降の充電および放電を、上記の充放電速度と同じ0.2mAcm
−2で行い、1サイクル目と同様に、充電電圧1.0V、放電電圧2.0Vでカットオフした。
その結果、2サイクル目の放電容量は184mAhg
−1であり、15サイクル目の放電容量は163mAhg
−1であった。すなわち、2サイクル目に対する15サイクル目の放電容量維持率は89%であった。結果を表1に示す。
【0103】
【表1】
【0104】
実施例1〜3と比較例1の結果から、実施例1〜3のナトリウム二次電池は、放電容量維持率が大きく、充放電サイクル特性に優れ、しかも放電特性にも優れるナトリウム二次電池であることが確認された。