(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
段階d3)において、前記傾斜角は、前記群(80)の各反射光学要素(M)に対して、前記アレイ(34)上の前記放射照度分布の変化が前記走査積分実角度光分布及び前記走査積分実光エネルギに対して最小の効果を有するように決定されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
前記アレイ(34)上の前記放射照度分布は、前記第1の線(76)に対して垂直である方向(X)に沿って少なくとも実質的に一定であることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の方法。
前記アレイ(34)上の前記放射照度分布は、前記第1の線(76)に沿ってガウス分布又はスーパーガウス分布に少なくとも実質的に従って変化することを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の方法。
前記アレイ(34)上の前記放射照度分布は、前記第1の線(76)に沿ってガウス分布又はスーパーガウス分布に少なくとも実質的に従って変化することを特徴とする請求項12又は請求項13に記載の装置。
【背景技術】
【0002】
マイクロリソグラフィ(フォトリソグラフィ又は単純にリソグラフィとも呼ばれる)は、集積回路、液晶ディスプレイ、及び他の微細構造デバイスの製作のための技術である。マイクロリソグラフィ処理は、基板、例えば、シリコンウェーハ上に形成された薄膜スタック内に特徴部をパターン化するのにエッチング処理と共に使用される。製作の各層では、最初に、ウェーハは、ある一定の波長の光に敏感な材料であるフォトレジストで被覆される。次いで、フォトレジストをその上に有するウェーハは、投影露光装置内でマスクを通した投影光に露光される。マスクは、フォトレジスト上に結像される回路パターンを含む。露出後に、フォトレジストが現像され、マスク内に含まれる回路パターンに対応する像が生成される。次いで、エッチング処理は、回路パターンをウェーハ上の薄膜スタック内に転写する。最後にフォトレジストが除去される。異なるマスクを用いたこの処理の反復により、多層微細構造化構成要素がもたらされる。
【0003】
投影露光装置は、典型的には、例えば、矩形スリット又は湾曲スリットの形状を有することができるマスク上の視野を照明する照明系を含む。更に、装置は、マスクを位置合わせするためのマスク台と、マスク上で照明視野を有する部分をフォトレジスト上に結像する投影対物系(時に「レンズ」とも呼ばれる)と、フォトレジストで被覆されたウェーハを位置合わせするためのウェーハ位置合わせ台とを含む。
【0004】
投影露光装置の開発における極めて重要な目的の1つは、ウェーハ上に益々小さい寸法を有する構造をリソグラフィによって定めることができることである。小さい構造は、そのような装置を用いて製作される微細構造化構成要素の性能に対して一般的に好ましい効果を有する高い集積密度を導く。更に、高集積密度の場合に、単一ウェーハ上により多くの構成要素を生成することができ、それによって装置のスループットが増大する。
【0005】
この目的を実現するために、これまでに様々な手法が追求されている。1つの手法は、マスクの照明を改善することである。理想的には、投影露光装置の照明系は、マスク上で照明される各視野点を明確に定められた角度光分布及びエネルギを有する投影光で照明する。角度光分布という表現は、マスク上の特定の点に向けて収束する光束の光エネルギが、光束を構成する光線の様々な方向の間で如何に配分されるかを表している。
【0006】
通常、マスク上に入射する投影光の角度光分布は、フォトレジスト上に結像されるパターンの種類に適合される。例えば、比較的大きいサイズの特徴部は、小さいサイズの特徴部とは異なる角度光分布を必要とする場合がある。最も一般的に使用される角度光分布は、従来照明設定、環状照明設定、二重極照明設定、及び四重極照明設定と呼ばれる。これらの表現は、照明系の瞳平面内の放射照度分布を意味する。例えば、環状照明設定の場合に、瞳平面内で環状領域だけしか照明されない。従って、投影光の角度光分布内には小さい角度範囲しか存在せず、全ての光線は、マスク上に類似の角度で斜方入射する。
【0007】
過去において、望ましい角度光分布は、多くの場合に回折光学要素、ズーム対物系、及び1対のアキシコン要素によって生成されてきた。回折光学要素は、基本的な角度光分布を決定し、次いで、この分布は、ズーム対物系及びアキシコン要素を用いて修正することができる。この手法の欠点は、角度光分布を修正する柔軟性が制限されることである。例えば、環状照明設定から二重極照明設定に切り換える段階は、回折光学要素の交換を必要とする。
【0008】
従って、ミラーアレイを用いて望ましい角度光分布を生成することが提案されている。そのような照明系は、例えば、EP 1 262 836 A1、US 2006/0087636 A1、US 7,061,582 B2、及びWO 2005/026843 A2に記載されている。これらの照明系では、ミラーアレイが光学ラスター要素を照明し、光学ラスター要素が、望ましい形状及び放射照度分布を有する照明視野をマスク上に照明する。
【0009】
US 2010/0157269 A1に開示されている照明系では、光学ラスター要素は割愛される。従って、ミラーアレイは、マスク上に直接結像される。この理由から、ミラーアレイは、マスク上に照明される視野と同じ全体形状を有する。所与の時点で、マスク上の点は、この時点でこの点を照明するミラーの傾斜角によって決定される単一方向からしか照明することができない。それにも関わらず、この点が走査作動中に照明視野を通して移動する間に、逐次異なる方向からこの点を照明することができるので、ほぼあらゆる任意の角度光分布を得ることができる。従って、望ましい角度光分布は、他の従来技術の照明系の場合と同じく同時には生成されず、走査積分の後に初めて生成される。光源とミラーアレイの間に配置された光学ラスター要素は、アレイの全てのミラーが光源によって正確に同じ方式で照明されることを確実にする。それによってミラーアレイの制御が簡素化される。ミラーに対する均一照明条件は、ミラーアレイを照明する光ビームの横方向シフトが、マスクレベルの角度光分布及び光エネルギに対して影響を持たないことも確実にする。
【0010】
装置の分解能を改善するための別の手法は、投影光の波長を低減することである。最近まで、最も精巧な投影露光装置は、真空紫外(VUV)スペクトル範囲にある193nmの波長を有する投影光を用いていた。一方、僅か13.5nmの波長のみを有する投影光を使用する投影露光装置も利用可能である。この波長は、極紫外(EUV)スペクトル範囲にあり、従って、そのような装置は、多くの場合に単純にEUV装置と呼ばれる。EUV投影光に対して十分に高い透過性を有する利用可能な光学材料は存在しないので、そのような装置は、反射タイプのものであり、すなわち、それらは、ミラーのみを含む。
【0011】
ミラーアレイにマスクを直接に照明させる手法、すなわち、結像関係を破壊する中間の光学ラスター要素なしに照明させる手法は、照明系内で必要とされる反射面の個数を低減するので、EUV装置に対しても有意な利点を有し、従って、装置のスループットを改善するのに役立つ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、反射光学要素のアレイがマスク上に結像されるリソグラフィ装置を作動させる方法を提供することである。本方法は、角度光分布及び/又は光エネルギを微調節し、かつマスク内に含まれるパターンに対してより良く適応させることができることを確実にするはずである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明により、この目的は、a)少なくとも1つの傾斜軸の周りに傾斜角だけ傾斜されるように各々が構成された反射光学要素のアレイを含み、第1の線に沿って少なくとも50%だけ、好ましくは、75%だけ変化する光放射照度分布を生成するように構成された照明系をアレイ上に与える段階と、b)装置の走査方向と平行に延びる第1の線の像である第2の線に沿って照明視野を通して移動する点に対して走査積分ターゲット角度光分布及び走査積分ターゲット光エネルギを指定する段階と、c)第1の線が通って延びる反射光学要素の群を決定する段階と、d)その点に対する走査積分実角度光分布及び走査積分実光エネルギが、段階b)で指定されたターゲット角度光分布及びターゲット光エネルギそれぞれを近似するように群の反射光学要素の傾斜角を決定する段階と、e)段階d)で決定された傾斜角を設定する段階と、f)アレイ上に光放射照度分布を生成する段階と、g)アレイの実像をマスク上に形成することによって照明視野を生成する段階と、h)マスクが走査方向に沿って移動する間にマスクのうちで照明視野によって照明される部分を面上に結像する段階とを含む方法によって達成される。
【0015】
本発明は、アレイの反射光学要素の均一な照明が、低いシステム複雑度をもたらすことはできるが、マスクレベルの角度光分布の設定、更に光エネルギの設定に関して重大な欠点を有するという認識に基づいている。より具体的には、照明視野を通過する点の照明に寄与する各反射光学要素が同じ放射照度で照明される場合に、この放射照度は、角度光分布及び光エネルギを調節することができる最小単位である。
【0016】
それとは対照的に、本発明は、照明視野を通して移動する点が逐次異なる放射照度を受けるように反射光学要素を意図的に異なって照明することを提案する。唯一問題になるのは走査積分後の角度光分布及び光エネルギであるので、この照明は可能である。反射光学要素上に有意に変化する放射照度を有することにより、マスク上の点に対する走査積分後の角度光分布及び光エネルギをより微細に調節することが可能になる。
【0017】
これは、物品を計量するための一台の天秤に使用される1組の分銅と比較することができる。様々な異なる分銅がある場合にのみ、異なる分銅をこれらの分銅の合計が少なくとも良い近似で物品の重さに等しくなるように組み合わせることができる。全ての分銅が等しかったら、非常に大雑把な近似しかもたらすことができないであろう。
【0018】
一実施形態において、群は、少なくとも8つの反射光学要素を含み、これらの少なくとも8つの反射光学要素上で少なくとも5つの異なる放射照度が発生する。これは、角度光分布及び光エネルギを組み立てることを可能にするほど十分に様々な利用可能放射照度が存在することを確実にする。
【0019】
アレイ上の放射照度分布が変化しない場合に、段階d)は、d1)その点に対する走査積分実角度光分布及び走査積分実光エネルギが、走査積分ターゲット角度光分布及び走査積分ターゲット光エネルギそれぞれと異なることが許される最大偏差を指定する段階と、d2)群の各反射光学要素に対して最大偏差を超えないような傾斜角を決定する段階とを含むことができる。
【0020】
一般的に最適化問題の解を伴うそのような手法は、走査積分実角度光分布及び走査積分実光エネルギが、段階b)で指定されたターゲット角度光分布及びターゲット光エネルギそれぞれを近似することを確実にする。
【0021】
アレイ上の放射照度分布が変化する場合に、マスクレベルの照明条件に対してアレイ上の放射照度分布のシフトによって影響を及ぼすことができる。そのようなシフトは、多くの場合に完全には抑制することができず、光源におけるビーム方向の変化の結果として発生する可能性がある。光源と照明系は、多くの場合に数メートルだけ分離されるので、ビーム方向の微小な変化であっても、アレイ上の放射照度分布の有意な横方向シフトに変換される。
【0022】
アレイが光学インテグレーターを照明する照明系に対して、EP 2 209 135 A1は、マスクレベルの安定した照明条件を確実にするために、光源によってミラーアレイ上に生成される放射照度分布を検出し、ミラーアレイの傾斜角の実時間調節を実施することを提案している。しかし、アレイが数千個又は更に数百万個のミラーを含む場合があることを考えると、この手法は、非常に複雑な制御手法を必要とする。それによって実時間制御は困難になる。
【0023】
上述の理由から、アレイ上の光分布が段階f)中に変化する場合に、傾斜角が全く変更されないことを好ましいとすることができる。これは、傾斜角が、マスクレベルの照明条件がアレイ上の光分布のシフトによってそれ程影響を受けないような精巧な方式で決定されることを一般的に要求することになる。この場合に、段階d)は、d1)その点に対する走査積分実角度光分布及び走査積分実光エネルギが、走査積分ターゲット角度光分布及び走査積分ターゲット光エネルギそれぞれと異なることが許される最大偏差を指定する段階と、d2)装置の作動中に発生する場合があるアレイ上の放射照度分布の最大シフトを指定する段階と、d3)アレイ上で放射照度分布の最大シフトが発生した場合に最大偏差を超えないような傾斜角を群の各反射光学要素に対して決定する段階とを含む。
【0024】
段階d3)における決定は、最適化アルゴリズムを使用することによって達成することができる。最適化中に、最大偏差を超えない場所まで群の反射光学要素の傾斜角が変更される。最適化アルゴリズムは、偏差が満足できる最大偏差を下回った直後に終了することができる。別の選択肢は、最適化がより良好な結果を生じることができるように最適化処理を指定期間にわたって続けることである。最適化は、従来技術の手法とは異なり、傾斜角の実時間制御ではなく、傾斜角の初期設定に関するものである。この初期設定は、走査積分ターゲット角度光分布及び/又は走査積分ターゲット光エネルギが修正されることになる場合にしか変更しなくてもよい。従って、通常は、最適な傾斜角セットが得られるまで最適化を実施するための十分な時間が存在する。この場合に、段階d3)では、アレイ上の放射照度分布の変化が、走査積分実角度光分布及び走査積分実光エネルギに対して最小の効果のみを有するような傾斜角を群の各反射光学要素に対して決定することができる。言い換えれば、最適化処理は、最適化アルゴリズムが広域最適解を見出したことを証明することができるまで続けられる。
【0025】
最適化アルゴリズムは、混合整数線形問題の解を伴う場合がある。そのような問題は、標準の数値アルゴリズムを用いて解くことができる。最適化を改善するために、発見的手法、特に、変数近傍下降(VND)を使用することができる。
【0026】
アレイ上の放射照度分布が、第1の線に沿って少なくとも実質的にガウス分布又はスーパーガウス分布に従って変化する場合に、アレイ上の放射照度分布のシフトも許容する傾斜角セットを見出すために実施しなければならない最適化も容易になることが見出されている。
【0027】
マスクは、単一走査方向に沿ってしか移動しないので、角度光分布及び光エネルギを微調節する点に対しては、走査方向に対応し、かつ第1の線が平行である1つの方向に沿ってアレイ上の放射照度を変更するだけで十分である。従って、アレイ上の放射照度分布は、第1の線に対して垂直な方向に沿って少なくとも実質的に一定とすることができる。これは、放射照度分布のシフトが走査方向に沿ってのみ影響を有し、走査直交方向に沿っては影響を持たない場合があることを確実にする。更に、視野依存の角度光分布が必要とされない場合に、最適化処理は、単一群の反射光学要素に対してだけしか実施しなくてもよく、その理由は、異なる走査直交位置を照明する他の群内の反射光学要素を同じ方式で制御することができるからである。
【0028】
走査積分後のマスクレベルの角度光分布を微調節することができるためには、各反射光学要素において連続的な傾斜角度範囲が存在しなければならない。その一方、少なくとも1つの反射要素は、マスクの照明に寄与しない傾斜位置を有すべきである。
【0029】
本発明の主題は、上述の方法を実施することができる装置である。本発明による装置は、a)光源と、b)少なくとも1つの傾斜軸の周りに傾斜角だけ傾斜されるように各々が構成された反射光学要素のアレイ、光源とアレイの間の光路に配置され、光源によって放出された光を集光して第1の線に沿って少なくとも50%だけ変化する光放射照度分布をアレイ上に生成するように構成された第1の光学系、反射光学要素のアレイの実像である照明視野をマスク上に生成するように構成され、かつ第1の線が装置の走査方向と平行に延びるマスク上の第2の線上に結像されたアレイと照明されるマスクの間に配置された第2の光学系、及び照明視野を通して第2の線に沿って移動する点に対する走査積分ターゲット角度光分布及び走査積分ターゲット光エネルギを受け入れる段階と、その点に対する走査積分実角度光分布及び走査積分実光エネルギが走査積分ターゲット角度光分布及び走査積分ターゲット光エネルギそれぞれを近似するような傾斜角を第1の線が通って延びる各反射光学要素に対して決定する段階と、決定された傾斜角を設定する段階とを実施するように構成された制御ユニットを含む照明系と、c)マスクを面上に結像するように構成された投影対物系とを含む。
【0030】
定義
「光」という表現は、いずれかの電磁放射線、特に可視光、UV光、DUV光、VUV光、及びEUV光を表している。
【0031】
本明細書では、線で表すことができる伝播経路を有する光を表す上で「光線」という表現を使用する。
【0032】
本明細書では、単一点から射出し、及び/又は単一点に収束する複数の光線を表す上で「光束」という表現を使用する。
【0033】
本明細書では、特定のレンズ又は他の光学要素を通過する全ての光を表す上で「光ビーム」という表現を使用する。
【0034】
本明細書では、3次元空間内のいずれかの平面又は曲面を表す上で「面」という表現を使用する。面は、本体の一部とすることができ、又は通常は視野平面又は瞳平面の場合にそうであるように本体から完全に分離されたものとすることができる。
【0035】
本明細書では、2つの点又は2つの面の間の結像関係を表す上で「光学的に共役」という表現を使用する。従って、点から射出する光束は、光学的に共役な点に収束する。
【0036】
本明細書では、マスク平面と光学的に共役な平面を表す上で「視野平面」という表現を使用する。
【0037】
本明細書では、マスク平面又は別の視野平面内の異なる点を通過する周辺光線が交わる平面を表す上で「瞳平面」という表現を使用する。当業技術で通例であるように、瞳平面が実際には数学的な意味で平面ではなく、若干湾曲しており、従って、厳密な意味では瞳面と呼ぶべきである場合にも「瞳平面」とう表現を使用する。
【0038】
本明細書では、位置に依存しない特性を表す上で「均一」という表現を使用する。
【0039】
本明細書では、光が入射する面にわたって合計放射照度が如何に変化するかを表す上で「放射照度分布」又は「空間放射照度分布」という表現を使用する。通常、空間放射照度分布は、x,yが面上の点の空間座標である時に、関数I
s(x,y)によって表すことができる。
【0040】
本明細書では、光束の放射照度が光束を構成する光線の角度に依存して如何に変化するかを表す上で「角度光分布」という表現を使用する。通常、角度放射照度分布は、α,βが光線の方向を表す角座標である時に、関数I
a(α,β)によって表すことができる。角度放射照度分布が視野依存性を有する場合に、I
aは、視野座標x、yの関数でもあることになり、すなわち、I
a=I
a(α,β,x,y)である。
【0041】
本明細書では、露光中にマスクが移動する方向を表す上で「走査方向」という表現を使用する。通常、この方向は、ウェーハの周縁に達すると反転される。従って、走査方向は、実際には空間内で方向が定まらない向きである。
【0042】
以下に続く詳細説明を添付図面に関連付けて参照することで本発明の様々な特徴及び利点をより容易に理解することができる。
【発明を実施するための形態】
【0044】
I.投影露光装置の一般的な構成
図1は、本発明による投影露光装置10を示す非常に簡略化した斜視図である。装置10は、マスク14の下面上に配置された反射構造12のパターンを例えばフォトレジストによって形成することができる感光層16上に結像するように機能する。感光層16は、ウェーハ台(
図1には示していない)によって保持されたウェーハ18又は別の適切な基板によって支持される。
【0045】
投影露光装置10は、5nmと30nmの間の中心波長を有する投影光PLを生成するように構成された光源LSを含む。図示の例では、投影光PLの中心波長は約13.5nmであり、従って、極紫外スペクトル範囲(EUV)内にある。他の中心波長、特に6.6nmと6.8nmの間のものも可能である。
【0046】
図示の実施形態では、光源は、自由電子レーザ(FEL)である。そのようなデバイスは、例えば、WO 2009/121438 A1から公知である。投影露光装置10は、光源LSによって生成された投影光PLをマスク14の下面上に向ける照明系20を更に含み、照明系20は、下記で照明視野24と呼ぶことになる視野を照明する。照明視野24は、図示の実施形態において、細長い矩形の形状を有する。以下に更に説明する他の実施形態において、照明視野24は、照明視野24は、リングセグメントの形状を有する。
【0047】
更に、投影露光装置10は、所与の時点で照明視野24の内側に位置する構造12を感光層16上に結像する投影対物系26を含む。投影対物系26は、照明視野24の領域内に位置する構造12の縮小像24’が感光層16上に形成されるように|β|<1である拡大率βを有する。
【0048】
投影露光装置10は、感光層16の露光中にマスク14がウェーハ18と同期して変位する走査作動に向けて設計される。
図1にはマスク14及びウェーハ18の変位移動をそれぞれ矢印A1及びA2に示している。マスク14に対するウェーハ18の速度比は、投影レンズ26の拡大率βに等しい。図示の実施形態において、像24は正像であり(β>0)、従って、露光作動中にマスク14とウェーハ18は同じ方向に沿って移動する。露光作動中に照明視野24はマスク14にわたってスキャナ方式で進むので、照明視野よりもかなり大きい領域を感光層16に転写することができる。
【0049】
図1には、照明視野24内の点から射出する光束28を示している。光束28は投影対物系26に入射し、投影対物系26は、光束28を感光層16が配置された投影対物系26の像平面内の単一点の上に収束させる。構造12が配置された投影対物系26の物体平面内の視野点と感光面16が配置された像平面内の視野点との間の関係は、通常、結像関係又は光学的共役性と呼ばれる。
【0050】
投影対物系26に入射する光束28の開口角は、物体側開口数NAの尺度である。拡大率|β|<1の結果として、投影対物系26の像側開口数NAは、拡大率|β|の逆数だけ増大する。
【0051】
II.照明系
図2は、投影露光装置10を通る略子午断面図である。光源LSは、典型的には、投影光を中間焦点30内にフォーカスさせるコレクター(図示せず)を含む。この実施形態において、単一自由曲面ミラーによって形成された第1の光学系32は、焦点30から射出する投影光を以下により詳細に説明する方式でマイクロミラーMのアレイ34に向けて誘導する。アレイ34は、投影露光装置10の全体システム制御器38に接続した制御ユニット36によって制御される。
【0052】
アレイ34のマイクロミラーMは、ミラー42、44、46、及び48を含み、ミラー44の近くに瞳平面49を有する第2の光学系41の物体平面40に配置される。最後のミラー48は、かすめ入射に向けて設計される。第2の光学系41は、物体平面40に配置されたマイクロミラーMを投影対物系26の物体平面と一致する像平面50上に結像する。従って、マスク14の下面上に生成される照明視野24は、アレイ34の実像である。この理由から、第2の光学系41がX方向及びY方向に沿って同じ拡大率を有する限り、アレイ34と照明視野は同じ形状を有するが、一般的に異なるサイズを有する。
【0053】
図3は、光源LSと、第1の光学系32と、マイクロミラーMのアレイ34(上面図)と、第2の光学系41と、アレイ34の実像によって形成された照明視野26とを非常に概略的な表現形式で例示している。
図3では、第2の光学系41によって確立される結像関係は、2つの異なるマイクロミラーM上の点から異なる方向の下に射出し、最終的に照明視野26内の2つの光学的に共役な点の上に収束する2つの光束52a、52bによって例示している。
【0054】
図示の実施形態において、アレイ34は、規則的な格子状パターンで配置された8×27個のマイクロミラーMを含む。各マイクロミラーMは、2つの直交する傾斜軸の周りに、各マイクロミラーMにおいて個々に制御することができる傾斜角だけ傾斜させることができる。この傾斜をアレイ34の一部分54の拡大斜視
図4に例示している。部分54は、共通基板56上に配置された6×6個のマイクロミラーMを含む。マイクロミラーMのうちの1つにおいて、58、60で表記した直交傾斜軸を示している。同じ入射角で入射する光線LR1及びLR2は、マイクロミラーMを個々に傾斜させることによって光の角度分布を如何に修正することができるかを示している。
【0055】
図5は、アレイ34の4つのマイクロミラーMを通る略断面図である。各マイクロミラーMは、ミラー基板60と、その上に塗布された反射コーティング62とを含む。一般的にコーティング62は、交替する屈折率を有する二重層を複数含む。コーティングは、投影光PLに対する反射係数を最大にするという観点で設計される。マイクロミラーMの下の回路基板68上に、固体接合部70、72によって定められた傾斜軸の周りにマイクロミラーMを傾斜させるように静電アクチュエータ64、66が配置される。
【0056】
アレイ34のマイクロミラーMからの光束は、マイクロミラーのある傾斜角に対してマスク14の照明に寄与しない場合がある。従って、ある一定量の光を意図的に制御された態様で消失させることができる。この消失は、照明系20内のアレイ34と像平面50の間のいずれかの点への開口の適正な配置によって達成することができる。この開口を瞳平面49の近くに位置付けることは、通常、そのような配置が必要な傾斜角を低減することになり、取りわけ、アクチュエータ64、66及び/又は固体接合部70、72に対する要件を緩和することで有利とすることができる。
【0057】
III.マイクロミラーアレイの制御
再び
図3を参照すると、次いで、照明系20を用いてマスクレベルでの望ましい照明条件を如何に得ることができるかを以下に説明する。
【0058】
マスク14上の各点は、明確に定められた光エネルギ及び角度光分布で照明しなければならない。一般的に、マスク14の各点が受け入れる光エネルギは等しくなければならず、通常、これは、角度光分布にも適用される。しかし、マスク14は露光中に照明視野26を通して移動するので、これらの条件は、照明視野26内の点において同じく満たす必要はない。これに代えて、マスク上のそれぞれの点が照明視野を通して完全に移動し終えた後にこれらの条件が満たされることで十分である。従って、光エネルギ、すなわち、走査積分放射照度がターゲット光エネルギに等しい場合、照明視野26内の放射照度は、変化することができる。
【0059】
類似の考察は、角度光分布にも適用される。例えば、二重極照明設定に対応するマスク14上の点が2つの反対方向だけから照明される場合に、それぞれの点は、例えば照明視野26を通る動程の前半の間に片側だけから照明し、その動程の後半の間に反対側だけを照明することで十分である。走査積分の後に、この点は、必要に応じて両方の方向から均等に照明されている。
【0060】
以下では、投影露光装置10の走査方向Yに対して垂直な走査直交方向Xに沿ったある一定の位置にあるマスク14上の点が照明視野26を通して進むと仮定する。走査方向Yに沿ったマスク14の走査移動の結果として、この点は、照明視野26を通して、走査方向Yと平行に延びる線76’に沿って移動する。
図3から分るように、線76’は、マイクロミラーMの群80の実像である筋を通して延びている。例示目的で、群80のマイクロミラーMと、更にその像(筋78)を黒色に示している。
図3に示すように、線76’は、マイクロミラーMの群80を通して延びる線76の像である。
【0061】
この場合に、マスク14上の点は、線76に沿って筋78を通って進む間に、群80に属する8つのマイクロミラーMによって逐次照明されることになる。群80の各マイクロミラーMは、光源LSによって異なる放射照度で照明され、この場合に、群80の8つ全てのマイクロミラーMの向きが異なる傾斜角によって定められると更に仮定する。従って、筋78を通して進むマスク点は、異なる放射照度を有し、更に異なる入射方向を有する8つの光束によって逐次照明されることになる。
図3には、別の群80に対して、照明視野26上に異なる方向から入射する光束52a、52bによって異なる入射方向を略示している。
【0062】
以上により、各マイクロミラーM上の放射照度とその傾斜角とを慎重に決定することにより、マスク14上の各点上にほぼ任意の光エネルギ及び角度光分布を走査積分後に生成することができる。当然ながら、群80内のマイクロミラーMの個数が多い程、マスク14上の点を望ましいターゲット光エネルギと望ましいターゲット角度光分布とで照明する柔軟性は高くなる。この決定が如何に実施されるかに対しては、下記の第V節でより詳細に説明する。
【0063】
アレイ34上の全てのマイクロミラーMが同じ放射照度I
0で照明されるとすれば、マスク14上でターゲット光エネルギ及びターゲット角度光分布を得るのは困難になるであろう。この場合に、光エネルギ及び角度光分布は、各マイクロミラーM上の放射照度I
0によって与えられる同一の段階においてしか調節することができない。従って、各群80内の放射照度分布は、少なくとも50%、好ましくは、少なくとも75%だけ変化しなければならない。50%の変化は、最小放射照度が最大放射照度の50%であることを意味する。そのような放射照度変化は、マスクレベルの光エネルギ及び角度光分布を微調節することを可能にする。
【0064】
その一方、マスク14上の点は、その走査直交位置Xには関係なく同じ光エネルギで照明しなければならない。従って、各群80において、全てのマイクロミラーM上の放射照度にわたる積分は等しくなければならない。
【0065】
これは、放射照度がy方向だけに沿って変化し、x方向に沿っては変化しないようにアレイ34を照明することによって非常に簡単に達成することができる。この関連において、アレイ34に関する方向x,yは、マスクレベルの方向X及びYにそれぞれ対応することを述べておかねばならない。第2の光学系41は、その物体平面40内と像平面50内で座標系を回転させる可能性があるので、一方で方向xとX、及び他方で方向yとYは平行である必要はない。
【0066】
IV.マイクロミラーアレイの照明
図3におけるグラフI(x)及びI(y)は、アレイ34上に光源及び第1の光学系32によって生成される可能な放射照度分布を示している。グラフI(x)において異なる破線は、アレイ34の左手側に示す付加的な破線に示すように異なるy座標に対応する。従って、x方向と平行に延びる行内の全てのマイクロミラーMは、同じ放射照度で照明される。しかし、異なる行は異なる放射照度で照明される。例えば、アレイ34の中心の行は、アレイ34の横方向縁部にある行よりも強く照明される。
【0067】
図示の実施形態において、マスクレベルの走査方向Yに対応するy座標へのこの依存性がガウス関数によって近似されると仮定している。従って、各群80において、マイクロミラーMは、
図3でアレイ34の右に示すグラフ内に82で表記しているように、ガウス放射照度分布I(y)で照明される。
【0068】
厳密には、重要なのはアレイ34上の放射照度分布ではなく、各マイクロミラーMによって反射される放射照度である。従って、
図3に示す放射照度分布I(x)及びI(y)を得るための簡単な手法は、反射光が望ましい強度を有するように、各マイクロミラーM上の反射コーティング62を個々に離調させることである。しかし、この離調は比較的高い光損失を有するので、第1の光学系32をアレイ34上で望ましい放射照度分布が得られるように設計することが好ましい。
【0069】
以下では、
図6及び
図7を参照して、光ビームの回転対称ガウス放射照度分布をある一定の方向に沿った矩形放射照度分布に如何にして変形することができるかを説明する。
【0070】
図6は、焦点30から射出する投影光ビーム84を通る断面図を左手側に例示している。点線は、回転対称ガウス放射照度分布を表すものとする。従って、光ビーム84の中心における放射照度は、その外周におけるものよりも高い。
【0071】
光ビーム84は、焦点30の後に発散するので、光ビーム84の主伝播軸を基準として定められる角度光分布を考慮する方が適切である。この場合に、ガウス放射照度分布において、小さい角度での放射照度は、大きい角度での放射照度よりも高い。従って、角度空間内で小さい角度に対応する領域を位置空間内で拡大しなければならず、それに対して大きい角度を有する領域を位置空間内で圧縮しなければならない。
図6では、これを放射照度が高い光ビーム84の軸の近くの領域86によって例示している。この角度領域86は、位置空間においてアレイ34上に示す領域86’に拡大される。それとは対照的に、光ビーム84の外周の近くにある角度領域88は圧縮され、領域86’と同じ放射照度を有する位置空間内に領域88’が形成される。
【0072】
図7は、同じ考察を異なる手法で例示している。ガウス放射照度分布I
g(x)を表す上段のグラフと矩形放射照度分布I
r(x’)を表す下段のグラフとの間の矢印は、光を第1の光学系32によって異なるx位置の間で如何にシフトさせなければならないかを示している。上段のグラフ内の位置xによって下段のグラフ内のどのx’位置を照明しなければならないかを次式の関数x’(x)が表すことを示すことができる。
【0073】
x
0項は、ガウス放射照度分布が無限大まで延びる(
図7の上段のグラフを参照されたい)ことを考慮に入れて、放射照度分布I
g(x)のうちに使用することができる部分を表している。σ項は、通例通り、ガウス放射照度分布の標準偏差を表している。
【0074】
式(1)に基づいて、第1の光学系32に適する設計は、標準のアルゴリズムを用いて容易に導出することができる。
【0075】
一般的に、光源LSが高い輝度を有し、すなわち、放出光ビームが所与の平面内で小さい直径と小さい発散の両方を有する場合に、第1の光学系32の設計を簡素なものにすることができる。5nmと30nmの間のスペクトル範囲に向けて構成されてこの特性を有する光源は、例えば、シンクロトロン又は自由電子レーザ(FEL)のような電子系の光源である。高い輝度は、結像関係を確立する必要がないので、単一反射面のみを用いて第1の光学系32を設計することさえも可能にする。EUV装置では、可能な限り少数の反射面しか用いないことは、各反射面によって不可避に引き起こされる光損失を低減するという観点から一般的に有利である。
【0076】
V.傾斜角の決定
以下では、走査積分の後にマスク上の各点がターゲット光エネルギとターゲット角度光分布とで照明されるように、マイクロミラーMに対する傾斜角を如何に計算することができるかを説明する。
【0077】
最初に、アレイ34上の放射照度分布を決定しなければならない。好ましくは、アレイ34上の放射照度分布は、最初に、下記で説明する最適化を簡素化するように慎重に設計される。次いで、設計値からの実際の放射照度分布の偏差が測定され、アルゴリズム内に考慮される。
【0078】
以下の説明は、単一群80だけに関するものである。アレイ34上の放射照度分布がx方向に沿って変化しない場合に、以下のアルゴリズムを一度だけ実施するだけで十分である。x方向に沿っても変化が存在する場合に、このアルゴリズムを1つよりも多い群80に対して実施しなければならない。
【0079】
同じことは、マスク上の角度光分布及び/又は光エネルギが走査直交方向Xに沿って変化することになる場合にも適用される。この場合にも、上述のアルゴリズムを各群80に対して個々に実施しなければならない。
【0080】
更に、マスクレベルの望ましいターゲット角度光分布は、照明系20の瞳平面49内のM個の極P
1からP
Mの組合せである放射照度分布に変形することができると仮定する。
図8には、Y二重極照明設定(M=2)における瞳平面49内の例示的放射照度分布を示している。
【0081】
極P
kのターゲット放射照度をa
kとする。この場合に、マスク14上で群80によって照明される点のターゲット合計放射照度は、
によって与えられる。このターゲット合計放射照度は、この点が照明視野26を通して移動され終わった後に受け取られるターゲット光エネルギに正比例する。このターゲット合計放射照度は、群80内のマイクロミラーの放射照度の和よりも小さくすることができ、マスク上の放射照度の微調節を可能にする。
【0082】
しかし、以下において
で表記する各極P
kにおける実放射輝度は、一般的にターゲット放射照度a
kからずれる。ターゲット合計放射照度からの合計放射照度の最大偏差Δが許される場合に、この最大偏差Δを次式で表すことができる。
【0083】
同様に、各極P
kの放射照度の最大許容偏差を次式によって定めることができる。
【0084】
パラメータf≧1は、瞳平面49内の個々の極内の放射照度の偏差が、通常は合計放射照度からの偏差よりも重要ではないことを表している。
【0085】
各マイクロミラーMの傾斜角は、変量c
ijで表すことができる。この場合に、i番目のマイクロミラーMから反射される投影光が瞳平面49内の極P
jの照明に寄与するようにこのマイクロミラーが傾斜される場合、c
ijは1になる。他の場合に、c
ijは0に等しい。
【0086】
各マイクロミラーMは、所与の時点で単一極P
jしか照明することができないので、次式の条件がもたらされる。
ここでNは、各群80内のマイクロミラーMの合計個数である。不等号は、i番目のマイクロミラーMをマスク14の照明に全く寄与しない位置に向けることができることで得られる。
【0087】
図9に示すように、群80内のj番目のマイクロミラーM上の実放射照度をb
jで表記している。この場合に、傾斜角b
iの所与の組合せによって得られる極P
k内の実放射照度
は次式で与えられる。
【0088】
上述の条件(2)及び(3)を必要な境界条件を用いて保証する傾斜角の組合せcijを求めるために、次式の最適化問題がもたらされる。
【0089】
この式は、既存の数値アルゴリズムを用いて解くことができる混合整数線形問題に簡約化される。これらのアルゴリズムは、十分な品質の解が求まるまで品質を高める一連の現状最適解を生成する。更に、これらのアルゴリズムは、現状最適解の品質と広域最適解の品質の間の差に対する界を計算することができる。これは、アルゴリズムがもう少しの間その作動を続けることが許される場合に、最大でどの程度解の品質を高めることができるのかに関する情報を保留することを可能にする。特に、アルゴリズムは、その現状最適解が、更に別の改善が不可能であるような広域最適解であることを証明することができる。
【0090】
VI.マイクロミラーアレイ上の放射照度分布のシフト
上述の第V節では、群80のi番目のマイクロミラー上の実放射照度b
iが変化しないと仮定した。しかし、少なくともある一定の種類の光源LSでは、アレイ34上で放射照度分布の変化が発生する可能性がある。特に、光源LSがアレイ34から非常に離れた距離の場所に配置された場合に、光源LSによって放出された光ビームの方向の微小変化は、アレイ34上で放射照度分布の有意なシフトをもたらす。
【0091】
図3を参照して上述したように、放射照度分布がx方向に沿って変化しないと仮定すると、アレイ34上に生成される放射照度分布が、x方向に沿ってアレイ34にわたってある程度の広がりまで延びる限り、x方向に沿った放射照度分布のシフトは、マスク14の照明に対していかなる影響も持たないことになる。
【0092】
しかし、走査積分後の望ましい角度光分布及び光エネルギを微調節することができるように、投影露光装置10の走査方向Yに対応するy方向には、アレイ34上の放射照度は変化する。y方向に沿った放射照度分布のシフトを
図3に示すI(y)グラフ内に点線82’に示している。
【0093】
放射照度分布のそのようなシフトは、各群80内のマイクロミラーMが、異なる照射で照明されることになるという効果を有する。これは、一般的に、走査積分後のマスク上に修正された光エネルギ及び角度光分布をもたらす。
【0094】
本発明者は、マイクロミラーMの傾斜角を適切に決定することにより、これらの修正を許容可能限度まで低減することができることを見出した。実際に、第V節に上述した手法を用いた場合にのみ、アレイ34上での放射照度分布のy方向に沿ったシフトによって引き起こされるマスクレベルの角度光分布及び光エネルギの偏差が許容可能限度内に保たれることを確実にする傾斜角セット
を求めることができることが証明されている。これは、各群80内のある程度の個数NのマイクロミラーMに対しても成り立つ。数十億個ものマイクロミラーMを含むアレイ34を設けることは一般的に実現可能な手法ではないので、これは重要である。
【0095】
アレイ34上の放射照度分布がシフトすると考えられる場合に、式(5)を次式で置換しなければならない。
ここで添字lは、異なる横方向シフトの分だけ異なるi番目のマイクロミラーM上の様々な放射照度を表している。係数b
ilは、シフトした放射照度分布lにおけるi番目のマイクロミラーM上の実放射照度を示している。この場合に、式(6)の最適化問題は、ここでもまた、混合整数線形問題である式(8)になる。最適化を改善するためには、RINS又は丸め法、特にVND(変数近傍下降)のような発見的手法が非常に適切であり、この問題を非常に効率良く解くのに役立つ。
【0096】
放射照度分布の異なるシフトに対するマイクロミラーM上の実放射照度を表す係数b
ilが測定されない場合に、以下の方式でこれらの係数b
ilを計算することができる。
【0097】
アレイ34上のy方向に沿った放射照度分布I(j)は、次式のスーパーガウス関数によって与えられる。
ここでpは、スーパーガウスパラメータである。係数ln(10)は、放射照度が、x方向に沿って延びるアレイ34の縁部において1/10だけ低下してしまうことを表している。更に、アレイ34は、y方向に沿ってy=−1からy=+1まで延びると仮定する。
【0098】
最適化では、dが、正号及び負号の両方に発生する可能性がある最大シフトであり、この距離は、2d/(L−1)だけ互いから分離されたL個の小さいシフトl=1,...,Lに均一に分割されると更に仮定する。L=25は、明示的に考慮するシフトlに加えてdまでの任意のシフトの場合の結果の計算時間と達成可能な精度との間の適度な妥協点をもたらすことが見出されている。この場合に、シフトlに対してシフトした放射照度分布Il(y)は次式に比例する。
【0099】
この場合に、シフトlにおけるi番目のマイクロミラーM上の強度b
ilは、次式によって与えられる。
【0100】
式(11)は、式(8)の最適化問題に対する傾斜角c
ijを決定するために使用することができる。
【0101】
以下では、y方向に沿った放射照度分布のシフトに対する角度光分布及び光エネルギの不変性に対して、
図8から
図10を参照して定性的に説明する。
【0102】
図8に示す照明系20の瞳平面49内の例示的放射照度分布は、等しい放射照度を有し、Y方向に沿って分離された2つの極P1、P2からなる。そのようなY二重極設定は、
図8に示すように、マスク14上でX方向に沿って配置された構造12を結像するのに特に適している。
【0103】
上述したように、アレイ34の各群80は、瞳平面49内の極P1、P2を完全に照明する。この照明を如何にもたらすことができるかを示す
図9の左手側には、8つのマイクロミラーMの群80のうちの1つを示している。アレイ34上のy方向に沿ったガウス放射照度分布I(y)は、群80の各マイクロミラーMが異なる放射照度で照明されるという効果を有する。より具体的には、群80の中央にあるマイクロミラーは、群80の縁部にあるマイクロミラーMよりも強く照明される。
図9では、より高い放射照度をマイクロミラーMのより濃い塗り潰し表示で表している。
【0104】
各マイクロミラーMは、投影光を瞳平面49内の任意の位置に向けるように傾斜させることができる。簡略化の目的で、各マイクロミラーMに関連付けられた光点は、極P1、P2と同じ形状及びサイズを有すると更に仮定する。
図9の上部には、マイクロミラーMのうちの1つとそれに関連付けられたスポット90とを示している。
【0105】
従って、複数のスポット90を上下に重ねることにより、反射光をそれぞれの極P1又はP2に向けて誘導するマイクロミラーMの選択に依存する放射照度を有する極P1、P2を生成することができる。
【0106】
図9では、少数のマイクロミラーMの場合に、スポット90を重ねることによって両方の極P1、P2内で完全に等しい放射照度を得ることは一般的にできないので、極P1が極P2よりも若干明るいこと(より濃い塗り潰しで表す)を見ることができる。しかし、極P1、P2内の放射照度の間の差は非常に小さく、満足できるものである。
【0107】
図10は、アレイ34上の放射照度分布が+y方向に沿ってシフトされた後の場合を示している。従って、群80の中央にあるマイクロミラーは、もはや最も高い放射照度で照明されない。極めて重要な点は、マイクロミラーM上で変化した放射照度が、瞳平面49内の放射照度分布に実質的な影響を及ぼすことのないように極P1、P2へのマイクロミラーMの割り当てが選択されている点である。言い換えれば、
図10では、極P1、P2は、実質的に、ここでもまた、すなわち、
図9に示す元の放射照度分布で照射される。極P1、P2内の放射照度は、アレイ34上の放射照度分布がシフトする際に一般的に若干変化することになるが、これらの変化は満足できるものである。
【0108】
極P1、P2の放射照度がアレイ34上の放射照度分布のシフトに対して実質的に不変である場合に、この不変性は、必然的にマスクレベルの走査積分光エネルギにも適用される。これは、光エネルギが、瞳平面49全域にわたって積分される放射照度に比例するからである。しかし、式(2)及び(3)によって表されるように、許される公差は、この点に関してより強い制限を受ける可能性がある。
【0109】
ある一定の光源LSが、ある一定の第1の光学系32と共に、アレイ34の照明のシフトとは別に他の変動及び/又は追加の変動を有することが公知であり、及び/又は予想される場合に、上述の最適化処理手順をそれにも関わらず適用することができる。この場合に、式(10)におけるL個の異なる放射照度分布Il(y)をこれらの他の変動及び/又は追加の変動を表す分布によって単純に置換するだけでよい。
【0110】
VII.代替実施形態
a)湾曲照明視野
図2から
図10に図示の実施形態において、アレイ34のマイクロミラーMが規則的な矩形格子で配置されると仮定した。第2の光学系41によって確立される結像関係の結果として、この配置は、矩形形状の照明視野26を導く。
【0111】
ある一定の投影対物系26では、照明視野は、リングセグメントの形状を有することが好ましい。
図11は、そのような湾曲照明視野126’をもたらすマイクロミラーMのアレイ134の構成を示している。この場合に、群180は、ここでもまた、y方向に沿って互いに前後に配置された8つのマイクロミラーMによって形成される。群180は、y方向に沿って若干シフトされるので、アレイ134、従って、照明視野126は、ほぼリングセグメントの形状を有する。
【0112】
b)間隙の向き
通常、マイクロミラーMが1つ又は2つの傾斜軸の周りに傾斜する機能を有すべき場合に、隣接するマイクロミラーMの間に小さい間隙が残されることは不可避になる。上述のアレイ34及び134の場合がそうであるように、間隙がy方向と平行に延びる場合に、これらの間隙はマスク14上に結像され、従って、照明視野126も、投影光によって照明されない幅狭の筋を含むことになる。通常、これは許容外である。
【0113】
1つの手法は、第2の光学系41の物体平面40を若干外してアレイ34、134を配置するか、又は像平面50を若干外してマスクを配置することである。それによって92で表記している間隙は、マスク14上に鮮明に結像されない。この手法に関する更に別の情報は、上述したUS 2010/0157269 A1から得ることができる。
【0114】
別の手法を
図12に示している。この場合に、マイクロミラーMは傾斜パターンで配置され、それによって間隙92もy方向に対して斜めの方向に延びている。走査積分の結果として、マスク上の各任意の点は、その走査移動中に間隙92を通過する間に一度だけ照明されないことになる。これは、
図12の左手側に示す2つの線94、96を辿ることで検証することができる。これは、照明視野226内の点のX位置に関係なく成り立つ。従って、マスク14上の各点は同じ光エネルギを受け入れる。
【0115】
この実施形態において、y方向と平行に延びるマイクロミラーMの斜め方向の行は、もはや必ずしも群80に対応しないことも分る。より具体的には、マスク上の点は、ほぼ異なる行に属するマイクロミラーの像を通して移動することになる。この場合に、いくつかの群に対して同時に式(6)又は(8)を解かなければならない。
【0116】
照明視野226の短い横方向縁部がY方向と平行に延びることを確実にするために、マスク14の直下又はアレイ234の直上に視野絞りを配置することができる。
【0117】
VIII.重要な方法段階
図13は、本発明によるマイクロリソグラフィ装置を作動させる重要な段階を示す流れ図である。
【0118】
段階S1において、光放射照度分布が第1の線76に沿って少なくとも50%だけその上で変化する反射光学要素Mのアレイ34を有する照明系が与えられる。
【0119】
段階S2において、第1の線76の像76’に沿って移動する点に対してターゲット角度光分布及びターゲット光エネルギが指定される。
【0120】
段階S43において、第1の線76が通って延びる反射光学要素Mの群80が決定される。
【0121】
段階S4において、群80の反射光学要素Mの傾斜角c
ijが決定される。
【0122】
段階S5において、制御ユニット36によって傾斜角c
ijが設定される。
【0123】
段階S76において、光源LS及び第1の光学系32を用いてアレイ34上に光放射照度分布が生成される。
【0124】
段階S7において、マスク14上にアレイ34の実像が生成される。
【0125】
段階S8において、マスク14が走査方向Yに沿って移動する間に、マスク14の一部分が、面、例えば、感光面16上に結像される。