【実施例】
【0034】
以下に、実施例などにより本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の例に何ら限定されるものではない。
以下の例において、膠着処理後の布帛における膠着の有無および収縮の有無の判定は、以下の方法で行なった。
【0035】
[膠着の有無の判定]
布帛(A)を形成している複合繊維(a)同士が境なく融着しているかまたは複合繊維(a)同士の間に境があっても離そうとしても離れず、無理に離すと複合繊維(a)の破壊が生ずる場合を「膠着有」と判定し、複合繊維(a)同士が膠着していない場合または一見したところ膠着しているように見えるが複合繊維(a)の破損を生ずることなく分離できる場合を「膠着無」と判定した。
【0036】
[収縮シワの有無の判定]
膠着処理後の布帛(A)において、膠着処理を行った箇所および当該箇所の周囲に膠着に伴う収縮によってシワや歪が生じておらず、平らな膠着部が形成されている場合を「収縮シワなし」(○)と判定し、膠着処理を行った箇所および/または当該箇所の周囲に膠着に伴う収縮によりシワや歪みが少し生じている場合を「やや収縮シワあり」(△)と判定し、膠着処理を行った箇所および/または当該箇所の周囲に膠着に伴う収縮によりシワや歪みが強く生じている場合を「収縮シワあり」(×)と判定した。
【0037】
《実施例1》
(1) 釜間距離5mmの22ゲージダブルラッセル機を使用して、表面層用および裏面層用の糸として株式会社クラレ製「ソフィスタ」[エチレン単位の含有量44モル%、ケン化度99.6%のエチレン−ビニルアルコール共重合体(示差走査熱分析の吸熱ピーク点より求めた融点167℃)を鞘成分およびポリエチレンテレフタレートを芯成分とする芯鞘型複合繊維(鞘成分:芯成分=55:45の質量比)よりなるマルチフィラメント糸(167dtex/48f)][以下これを「複合繊維(a
1)」という]を用い、中間層用の糸として株式会社クラレ製「ソフィスタ」[エチレン単位の含有量44モル%、ケン化度99.6%のエチレン−ビニルアルコール共重合体を鞘成分およびポリエチレンテレフタレートを芯成分とする芯鞘型複合繊維(鞘成分:芯成分=55:45の質量比)よりなるマルチフィラメント糸(84dtex/24f)][以下これを「複合繊維(a
2)」という]を用いて、ダブルラッセル編地を作製した後、この編地を140℃で仕上げセットした。
(2) 上記(1)で得られた仕上げセット後のダブルラッセル編地から、縦×横=12cm×12cmの試験片を切り出し、試験片の上方から1回で約5mLの水を噴霧できるスプレーにて水を5回噴霧して試験片全体に水を含ませた。
(3) 上記(2)で水を含ませた試験片の中央上下に、縦×横×厚み=10cm×10cm×0.5cmのステンレス板を1枚ずつ配置して試験片を2枚のステンレス板で挟み、それをプレス装置に配置して上部のステンレス板の温度を130℃、下部のステンレス板の温度を130℃にして、0.5MPaの加圧下で20秒間加熱加圧して膠着処理を行った。
(4) 上記(3)で得られた膠着処理後の編地について、上記した方法で膠着の有無および収縮の有無を評価したところ、上下のステンレス板の当接箇所では布帛を構成する複合繊維(a
1)同士が膠着して平らな正方形の膠着部が形成されていて、膠着部分および膠着部の周囲にシワや歪みが発生していなかった。この実施例1の結果を下記の表1に示す。
【0038】
《比較例1》
(1) 実施例1の(1)で得られた仕上げセット後のダブルラッセル編地から、縦×横=12cm×12cmの試験片を切り出し、試験片に水を付与することなく試験片の中央上下に、縦×横×厚み=10cm×10cm×0.5cmのステンレス板を1枚ずつ配置して試験片を2枚のステンレス板で挟み、それをプレス装置に配置して上部のステンレス板の温度を150℃、下部のステンレス板の温度を150℃にして、0.5MPaの加圧下で20秒間加熱加圧して膠着処理を行った。
(2) 上記(1)で得られた膠着処理後の編地について、上記した方法で膠着の有無および収縮の有無を評価したところ、上下のステンレス板の当接箇所では、いずれも複合繊維(a
1)同士の膠着が何ら起こっておらず、膠着処理を行なう前と殆ど同じ状態であった。この比較例1の結果を下記の表1に示す。
【0039】
《比較例2》
(1) 比較例1の(1)において、加熱加圧する際の上部および下部のステンレス板の温度を180℃にした以外は、比較例1の(1)と同様にして膠着処理を行った。
(2) 上記(1)で得られた膠着処理後の編地について、上記した方法で膠着の有無および収縮の有無を評価したところ、上下のステンレス板の当接箇所では布帛を構成する複合繊維(a
1)同士が膠着してほぼ正方形の膠着部が形成されていたが、膠着部分および膠着部の周囲に少しシワや歪みが発生していた。この比較例2の結果を下記の表1に示す。
【0040】
《比較例3》
(1) 実施例1の(1)で得られた仕上げセット後のダブルラッセル編地から、縦×横=12cm×12cmの試験片を切り出し、実施例1の(2)と同様にして試験片に水を5回スプレーして試験片全体に水を含ませた後、その試験片を金属ネット上に載せ、130℃に加熱した熱風乾燥機にて、何ら加圧せずに20秒間膠着処理を行った。
(2) 上記(2)で得られた膠着処理後の編地について、上記した方法で膠着の有無および収縮の有無を評価したところ、表裏面層いずれも複合繊維(a
1)同士の膠着が何ら起こっておらず、膠着処理を行なう前と殆ど同じ状態であった。この比較例3の結果を下記の表1に示す。
【0041】
《実施例2》
(1) 釜間距離5mmの22ゲージダブルラッセル機を使用して、表面層用の糸として実施例1で使用したのと同じ株式会社クラレ製「ソフィスタ」[複合繊維(a
1)]を用い、中間層用の糸としてレギュラーポリエステルモノフィラメント糸(33dtex/1f)[以下これを「ポリエステル糸(b
1)」という]を用い、裏面層用の糸としてレギュラーポリエステルマルチフィラメント糸(167dtex/48f)(以下これを「ポリエステル糸(b
2)」という]を用いて、ダブルラッセル編地を作製した後、この編地を140℃で仕上げセットした。
(2) 上記(1)で得られた仕上げセット後のダブルラッセル編地から、縦×横=12cm×12cmの試験片を切り出し、試験片の上方から1回で約5mLの水を噴霧できるスプレーにて水を5回噴霧して試験片全体に水を含ませた。
(3) 上記(2)で水を含ませた試験片の中央上下に、縦×横×厚み=10cm×10cm×0.5cmのステンレス板を1枚ずつ配置して試験片を2枚のステンレス板で挟み、それをプレス装置に配置して上部のステンレス板の温度を130℃、下部のステンレス板の温度を130℃にして、0.5MPaの加圧下で20秒間加熱加圧して膠着処理を行った。
(4) 上記(3)で得られた膠着処理後の編地について、上記した方法で膠着の有無および収縮の有無を評価したところ、上部のステンレス板の当接箇所では布帛を構成する複合繊維(a
1)同士が膠着して平らな正方形の膠着部が形成されていて、膠着部分および膠着部の周囲にシワや歪みが発生しておらず、一方下部のステンレス板の当接箇所ではポリエステル繊維(ポリエステルフィラメント)同士の膠着は行なっていなかった。この実施例2の結果を下記の表1に示す。
【0042】
《実施例3》
(1) 実施例2の(1)で得られた仕上げセット後のダブルラッセル編地から、縦×横=12cm×12cmの試験片を切り出し、実施例1の(2)と同様にして試験片に水を5回スプレーして試験片全体に水を含ませた後、その試験片の中央上下に、縦×横×厚み=10cm×10cm×0.5cmのステンレス板を1枚ずつ配置して試験片を2枚のステンレス板で挟み、上部のステンレス板の温度を130℃、下部のステンレス板の温度を25℃にして、0.5MPaの加圧下で20秒間加熱加圧して膠着処理を行った。
(2) 上記(1)で得られた膠着処理後の編地について、上記した方法で膠着の有無および収縮の有無を評価したところ、上部のステンレス板の当接箇所では布帛を構成する複合繊維(a
1)同士が膠着して平らな正方形の膠着部が形成されていて、膠着部分および膠着部の周囲にシワや歪みが発生しておらず、一方下部のステンレス板の当接箇所ではポリエステル繊維(ポリエステルフィラメント)同士の膠着は行なっていなかった。この実施例3の結果を下記の表1に示す。
【0043】
《比較例4》
(1) 実施例2の(1)で得られた仕上げセット後のダブルラッセル編地から、縦×横=12cm×12cmの試験片を切り出し、試験片に水を付与することなく試験片の中央上下に、縦×横×厚み=10cm×10cm×0.5cmのステンレス板を1枚ずつ配置して試験片を2枚のステンレス板で挟み、それをプレス装置に配置して上部のステンレス板の温度を150℃、下部のステンレス板の温度を150℃にして、0.5MPaの加圧下で20秒間加熱加圧して膠着処理を行った。
(2) 上記(1)で得られた膠着処理後の編地について、上記した方法で膠着の有無および収縮の有無を評価したところ、上下のステンレス板の当接箇所では、いずれも繊維(フィラメント)同士の膠着が何ら起こっておらず、膠着処理を行なう前と殆ど同じ状態であった。この比較例4の結果を下記の表1に示す。
【0044】
《比較例5》
(1) 比較例4の(1)において、加熱加圧する際の上部および下部のステンレス板の温度を180℃にした以外は、比較例4の(1)と同様にして膠着処理を行った。
(2) 上記(1)で得られた膠着処理後の編地について、上記した方法で膠着の有無および収縮の有無を評価したところ、上下のステンレス板の当接箇所では布帛を構成する複合繊維(a
1)同士が膠着してほぼ正方形の膠着部が形成されていたが、膠着部分および膠着部の周囲に少しシワや歪みが発生していた。この比較例5の結果を下記の表1に示す。
【0045】
《比較例6》
(1) 実施例2の(1)で得られた仕上げセット後のダブルラッセル編地から、縦×横=12cm×12cmの試験片を切り出し、実施例1の(2)と同様にして試験片に水を5回スプレーして試験片全体に水を含ませた後、その試験片を金属ネット上に載せ、130℃に加熱した熱風乾燥機にて、何ら加圧せずに20秒間膠着処理を行った。
(2) 上記(2)で得られた膠着処理後の編地について、上記した方法で膠着の有無および収縮の有無を評価したところ、表裏面層いずれも複合繊維(a
1)同士の膠着が何ら起こっておらず、膠着処理を行なう前と殆ど同じ状態であった。この比較例6の結果を下記の表1に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
上記の表1の結果にみるように、実施例1〜3では、複合繊維(a)(エチレン−ビニルアルコール共重合体を鞘成分としポリエステルを芯成分とする芯鞘型複合繊維)を用いて製造した布帛(A)(ダブルラッセル編地)に水を付与して水を含ませた状態で膠着処理を行なったことにより、複合繊維(a)から形成されている表面層と裏面層が、または表面層が、130℃という低い温度での加熱加圧したにも拘らず、編地のシワや歪みを生ずることなる良好な状態で複合繊維(a)同士が膠着した。
それに対して、比較例1および4では、布帛(A)に水を付与せずにそのまま膠着処理を行なったことによって、実施例1〜3に比べて20℃高い、150℃で加熱加圧したが複合繊維(a)同士を膠着させることができなかった。
また、比較例2および5では、水を付与していない布帛(A)を180℃という高い温度で加熱加圧して膠着処理を行なったことにより、複合繊維(a)同士を膠着させることができたが、膠着処理によって布帛に収縮が生じた。
また、比較例3および6では、布帛(A)に水を付与してから膠着処理を行なったが、膠着処理時に加圧しなかったことにより、複合繊維(a)同士を膠着させることができなかった。
【0048】
《実施例4》
(1) 釜間距離5mmの22ゲージダブルラッセル機を使用して、表面層用および裏面層用の糸として、株式会社クラレ製「カチオン染料可染ソフィスタ」[鞘成分としてエチレン単位の含有量44モル%、ケン化度99.6%のエチレン−ビニルアルコール共重合体(ピーク融点167℃)を用い、芯成分として共重合ポリエステル(テレフタル酸88.3モル%、5−ナトリウムスルホイソフタル酸1.7モル%、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸5.0モル%およびアジピン5.0モル%からなるジカルボン酸単位とエチレングリコール単位からなる共重合ポリエステル)を用いて製造した芯鞘型複合繊維(鞘成分:芯成分=55:45の質量比)よりなるマルチフィラメント糸(167dtex/48f)][以下これを「複合繊維(a
3)」という]を用い、中間層用の糸として前記した複合繊維(a
3)と総繊度およびフィラメント数だけが異なる株式会社クラレ製「カチオン染料可染ソフィスタ」(87dtex/24f)][以下これを「複合繊維(a
4)」という]を用いて、ダブルラッセル編地を作製した後、この編地を140℃で仕上げセットし、次いで90℃の染色温度でカチオン染料(日本化薬株式会社製「Kayacry」)にて灰色に染色して、更に140℃で仕上げセットした。
(2) 上記(1)で得られた染色−仕上げセット後のダブルラッセル編地から、縦×横=12cm×12cmの試験片を切り出し、試験片の上方から1回で約5mLの水を噴霧できるスプレーにて水を5回噴霧して試験片全体に水を含ませた。
(3) 上記(2)で水を含ませた試験片の中央上下に、縦×横×厚み=10cm×10cm×0.5cmのステンレス板を1枚ずつ配置して試験片を2枚のステンレス板で挟み、それをプレス装置に配置して上部のステンレス板の温度を130℃、下部のステンレス板の温度を130℃にして、0.5MPaの加圧下で20秒間加熱加圧して膠着処理を行った。
(4) 上記(3)で得られた膠着処理後の編地について、上記した方法で膠着の有無および収縮の有無を評価したところ、上下のステンレス板の当接箇所では布帛を構成する複合繊維(a
3)同士が膠着して平らな正方形の膠着部が形成されていて、膠着部分および膠着部の周囲にシワや歪みが発生していなかった。この実施例4の結果を下記の表2に示す。
【0049】
《比較例7》
(1) 実施例4の(1)で得られた染色−仕上げセット後のダブルラッセル編地から、縦×横=12cm×12cmの試験片を切り出し、試験片に水を付与することなく試験片の中央上下に、縦×横×厚み=10cm×10cm×0.5cmのステンレス板を1枚ずつ配置して試験片を2枚のステンレス板で挟み、それをプレス装置に配置して上部のステンレス板の温度を150℃、下部のステンレス板の温度を150℃にして、0.5MPaの加圧下で20秒間加熱加圧して膠着処理を行った。
(2) 上記(2)で得られた膠着処理後の編地について、上記した方法で膠着の有無および収縮の有無を評価したところ、上下のステンレス板の当接箇所では、いずれも複合繊維(a
3)同士の膠着が何ら起こっておらず、膠着処理を行なう前と殆ど同じ状態であった。この比較例7の結果を下記の表2に示す。
【0050】
《比較例8》
(1) 比較例7の(1)において、加熱加圧する際の上部および下部のステンレス板の温度を180℃にした以外は、比較例9の(1)と同様にして膠着処理を行った。
(2) 上記(2)で得られた膠着処理後の編地について、上記した方法で膠着の有無および収縮の有無を評価したところ、上下のステンレス板の当接箇所では布帛を構成する複合繊維(a
3)同士が膠着してほぼ正方形の膠着部が形成されていたが、膠着部分および膠着部の周囲に少しシワや歪みが発生していた。この比較例8の結果を下記の表2に示す。
【0051】
《実施例5》
(1) 釜間距離5mmの22ゲージダブルラッセル機を使用して、表面層用の糸として実施例4で使用したのと同じ「カチオン染料可染ソフィスタ」[複合繊維(a
3)]を用い、中間層用の糸としてレギュラーポリエステルモノフィラメント糸(33dtex/1f)[ポリエステル糸(b
1)]を用い、裏面層用の糸としてカチオン染料可染ポリエステルマルチフィラメント糸(167dtex/48f)(以下これを「ポリエステル糸(b
3)」という]を用いて、ダブルラッセル編地を作製した後、この編地を実施例4におけるのと同様にして、140℃で仕上げセットし、カチオン染料により染色し、更に140℃で仕上げセットした。
(2) 上記(1)で得られた染色−仕上げセット後のダブルラッセル編地から、縦×横=12cm×12cmの試験片を切り出し、試験片の上方から1回で約5mLの水を噴霧できるスプレーにて水を5回噴霧して試験片全体に水を含ませた。
(3) 上記(2)で水を含ませた試験片の中央上下に、縦×横×厚み=10cm×10cm×0.5cmのステンレス板を1枚ずつ配置して試験片を2枚のステンレス板で挟み、それをプレス装置に配置して上部のステンレス板の温度を130℃、下部のステンレス板の温度を130℃にして、0.5MPaの加圧下で20秒間加熱加圧して膠着処理を行った。
(4) 上記(3)で得られた膠着処理後の編地について、上記した方法で膠着の有無および収縮の有無を評価したところ、上部のステンレス板の当接箇所では布帛を構成する複合繊維(a
3)同士が膠着して平らな正方形の膠着部が形成されていて、膠着部分および膠着部の周囲にシワや歪みが発生しておらず、一方下部のステンレス板の当接箇所ではカチオン染料可染ポリエステル繊維(ポリエステルフィラメント)同士の膠着は行なっていなかった。この実施例5の結果を下記の表2に示す。
【0052】
《実施例6》
(1) 実施例5の(1)で得られた染色−仕上げセット後のダブルラッセル編地から、縦×横=12cm×12cmの試験片を切り出し、実施例1の(2)と同様にして試験片に水を5回スプレーして試験片全体に水を含ませた後、その試験片の中央上下に、縦×横×厚み=10cm×10cm×0.5cmのステンレス板を1枚ずつ配置して試験片を2枚のステンレス板で挟み、上部のステンレス板の温度を130℃、下部のステンレス板の温度を25℃にして、0.5MPaの加圧下で20秒間加熱加圧して膠着処理を行った。
(2) 上記(1)で得られた膠着処理後の編地について、上記した方法で膠着の有無および収縮の有無を評価したところ、上部のステンレス板の当接箇所では布帛を構成する複合繊維(a
3)同士が膠着して平らな正方形の膠着部が形成されていて、膠着部分および膠着部の周囲にシワや歪みが発生しておらず、一方下部のステンレス板の当接箇所ではカチオン染料可染ポリエステル繊維(ポリエステルフィラメント)同士の膠着は生じていなかった。この実施例6の結果を下記の表2に示す。
【0053】
《比較例9》
(1) 実施例5の(1)で得られた染色−仕上げセット後のダブルラッセル編地から、縦×横=12cm×12cmの試験片を切り出し、試験片に水を付与することなく試験片の中央上下に、縦×横×厚み=10cm×10cm×0.5cmのステンレス板を1枚ずつ配置して試験片を2枚のステンレス板で挟み、それをプレス装置に配置して上部のステンレス板の温度を150℃、下部のステンレス板の温度を150℃にして、0.5MPaの加圧下で20秒間加熱加圧して膠着処理を行った。
(2) 上記(1)で得られた膠着処理後の編地について、上記した方法で膠着の有無および収縮の有無を評価したところ、上下のステンレス板の当接箇所では、いずれも繊維(フィラメント)同士の膠着が何ら起こっておらず、膠着処理を行なう前と殆ど同じ状態であった。この比較例9の結果を下記の表2に示す。
【0054】
《比較例10》
(1) 比較例9の(1)において、加熱加圧する際の上部および下部のステンレス板の温度を180℃にした以外は、比較例9の(1)と同様にして膠着処理を行った。
(2) 上記(1)で得られた膠着処理後の編地について、上記した方法で膠着の有無および収縮の有無を評価したところ、上下のステンレス板の当接箇所では布帛を構成する複合繊維(a
3)同士が膠着してほぼ正方形の膠着部が形成されていたが、膠着部分および膠着部の周囲に少しシワや歪みが発生していた。この比較例10の結果を下記の表2に示す。
【0055】
《実施例7》
(1) 実施例5の(1)において、裏面層用の糸として、カチオン染料可染ポリエステルマルチフィラメント糸[ポリエステル糸(b
4)]の代わりに、黒原着ポリエステルマルチフィラメント糸(167dtex/49f)(以下これを「ポリエステル糸(b
4)」という]を用いた以外は、実施例5の(1)と同様にして、仕上げセット−染色−仕上げセットを行なったダブルラッセル編地を作製した。
(2) 上記(1)で得られた染色−仕上げセット後のダブルラッセル編地から、縦×横=12cm×12cmの試験片を切り出し、実施例1の(2)と同様にして試験片に水を5回スプレーして試験片全体に水を含ませた後、その試験片の中央上下に、縦×横×厚み=10cm×10cm×0.5cmのステンレス板を1枚ずつ配置して試験片を2枚のステンレス板で挟み、上部のステンレス板の温度を130℃、下部のステンレス板の温度を130℃にして、0.5MPaの加圧下で20秒間加熱加圧して膠着処理を行った。
(3) 上記(2)で得られた膠着処理後の編地について、上記した方法で膠着の有無および収縮の有無を評価したところ、上部のステンレス板の当接箇所では布帛を構成する複合繊維(a
3)同士が膠着して平らな正方形の膠着部が形成されていて、膠着部分および膠着部の周囲にシワや歪みが発生しておらず、一方下部のステンレス板の当接箇所では黒原着ポリエステル繊維(ポリエステルフィラメント)同士の膠着はなかった。この実施例7の結果を下記の表2に示す。
【0056】
《実施例8》
(1) 実施例7の(1)で得られた染色−仕上げセット後のダブルラッセル編地から、縦×横=12cm×12cmの試験片を切り出し、実施例1の(2)と同様にして試験片に水を5回スプレーして試験片全体に水を含ませた後、その試験片の中央上下に、縦×横×厚み=10cm×10cm×0.5cmのステンレス板を1枚ずつ配置して試験片を2枚のステンレス板で挟み、上部のステンレス板の温度を130℃、下部のステンレス板の温度を25℃にして、0.5MPaの加圧下で20秒間加熱加圧して膠着処理を行った。
(2) 上記(1)で得られた膠着処理後の編地について、上記した方法で膠着の有無および収縮の有無を評価したところ、上部のステンレス板の当接箇所では布帛を構成する複合繊維(a
3)同士が膠着して平らな正方形の膠着部が形成されていて、膠着部分および膠着部の周囲にシワや歪みが発生しておらず、一方下部のステンレス板の当接箇所では黒原着ポリエステル繊維(ポリエステルフィラメント)同士の膠着はなかった。この実施例8の結果を下記の表2に示す。
【0057】
【表2】
【0058】
上記の表2の結果にみるように、実施例4〜8では、複合繊維(a)(エチレン−ビニルアルコール共重合体を鞘成分としポリエステルを芯成分とする芯鞘型複合繊維)を用いて製造した布帛(A)(ダブルラッセル編地)に水を付与して水を含ませた状態で膠着処理を行なったことにより、複合繊維(a)から形成されている表面層と裏面層が、または表面層が、130℃という低い温度での加熱加圧したにも拘わらず、編地のシワや歪みを生ずることなく良好な状態で複合繊維(a)同士が膠着した。
それに対して、比較例7および9では、布帛(A)に水を付与せずにそのまま膠着処理を行なったことによって、実施例4〜8に比べて20℃高い、150℃で加熱加圧したが複合繊維(a)同士を膠着させることができなかった。
また、比較例8および10では、水を付与していない布帛(A)を180℃という高い温度で加熱加圧して膠着処理を行なったことにより、複合繊維(a)同士を膠着させることができたが、膠着処理によって布帛にシワや歪みが生じた。