(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について、さらに詳細に説明する。
【0012】
本発明のポリアミド系ゴム弾性体の球状粉体は、細孔電気抵抗法による測定で、
(a)最大体積粒子径が60μm以下、
(b)個数分布における体積中位粒子径D
50が0.3〜30μm、
(c)下記の式(I)で定義される個数分布における相対標準偏差CVが80%以下、
である。
式(I):
相対標準偏差 CV(%)= Sn(μm)/ D
50(μm)
×100
[ここで、Snは個数分布における標準偏差を示す]
【0013】
細孔電気抵抗法とは、粒子が細孔を通過する際に生じる、2電極間の電気抵抗の変化を測定し、この電気抵抗値が、通過する粒子の体積に正確に比例することから粒度分布を測定する方法である。また、この方法によれば、粒子を1個ずつ高速で測定し、かつ粒子の形状や、屈折率、色、密度などの影響を受けないことから、精密な粒度分布測定が可能となる。
【0014】
このような細孔電気抵抗法による測定を行える具体的な装置としては、例えば電気検知式粒度分布測定装置(ベックマンコールター社製の商品名“コールターマルチサイザー”)が挙げられる。
【0015】
細孔電気抵抗法による測定をより具体的に次に説明する。細孔電気抵抗法では、ポリアミド系ゴム弾性体球状粉体を分散させた電解液をアパチャーと呼ばれる細孔内に導き、そのときの細孔内の溶液体積が粒子体積分だけ少なくなることによる細孔の入口と出口との間の電気抵抗の上昇を検知する。粒子が細孔内を連続的に通過する際にこの抵抗値を連続的に検出することにより、体積中位粒子径および粒度分布を求めることができる。
【0016】
ここで、ポリアミド系ゴム弾性体球状粉体を分散させるための電解液は、試薬特級塩化ナトリウムを用いて調整した1質量%塩化ナトリウム水溶液を用いる。例えば、ISOTON R−II(コールターサイエンティフィックジャパン社製)が使用できる。測定法としては、100mlビーカー中に、測定試料であるポリアミド系ゴム弾性体球状粉体を2〜20mg程度入れ、前記電解液10mlを加えて、超音波洗浄機にて5分間分散させ、試料分散液とする。電解液を加える前に、ポリアミド系ゴム弾性体球状粉体に市販の洗剤(例えば、ライオン株式会社製の“ママレモン”)を数適加えて、薬さじで粒子の凝集を軽くほぐしてから、電解液を加えてもよい。この試料分散液を前記電解液100ml中に入れて攪拌した後、吸引ポンプを用いてアパチャー内を通し、3万個の粒子の体積粒度分布を測定する。
【0017】
ここでは、粒子径の大きさによって、適当なアパチャーを選択することができる。前記、ベックマンコールター社製の商品名“コールターマルチサイザー”の場合、測定が可能な粒径範囲は0.3〜1200μmであるが、例えば、100μmアパチャーを用いれば、2〜60μm程度の粒子を測定することができ、50μmアパチャーを用いれば、1〜30μm程度の粒子を測定することができ、30μmアパチャーを用いれば、0.6〜18μm程度の粒子を測定することができるなど、適宜、測定が可能なアパチャーに変更して測定することができる。
【0018】
本発明のポリアミド系ゴム弾性体球状粉体の最大体積粒子径は60μm以下であり、55μm以下が好ましく、50.8μm以下がより好ましく、50μm以下がさらに好ましく、45μm以下がよりさらに好ましく、40.3μm以下が特に好ましい。40.3μm以下においては、35μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましく、25μm以下がさらに好ましく、20μm以下がよりさらに好ましい。ここで、最大体積粒子径とは、個数分布において、得られた粒度分布図の粒径の大きいほうから累積個数で、0.1%以上の粒子が検出された最大の粒子径のことをいう。つまり、最大体積粒子径は、粒度分布の粒径の大きい方から累積個数で、積算値0.1%のときの粒径である、ということもできる。
【0019】
最大体積粒子径が60μm以下であれば、ポリアミド系ゴム弾性体球状粉体の流動性が良好であり取り扱いやすく、また、化粧料として用いた場合、塗布時の感触性、特にソフト感が良好であり好ましい。
【0020】
本発明のポリアミド系ゴム弾性体球状粉体の体積中位粒子径は0.3〜30μmであり、1〜25μmが好ましく、1.5〜20μmがより好ましく、2〜15μmがさらに好ましく、3〜12μmが特に好ましい。
【0021】
ここで体積中位粒子径が0.3μm以上であれば、ポリアミド系ゴム弾性体球状粉体の流動性が適当であり、取り扱いやすいほか、得られたポリアミド系ゴム弾性体球状粉体を化粧料に用いた際、塗布時の伸びが良好であり好ましい。また、体積中位粒子径が30μm以下であれば、粒子の表面積が適当であり取り扱いやすい他、無機物や異種ポリマーと粉体混合した際に均一に混合がしやすく、また、化粧料として用いた場合、塗布時の感触性が良好であり好ましい。尚、本発明における体積中位粒子径とは、個数分布における体積中位粒子径をいう。
【0022】
また、本発明のポリアミド系ゴム弾性体球状粉体は、下記の式(I)に従って算出される個数分布における相対標準偏差CVが80%以下であり、好ましくは70%以下、より好ましくは60%以下、さらに好ましくは50%以下、よりさらに好ましくは40%以下である。80%以下であれば、流動性が適当であり取り扱いやすく、化粧料に用いた際、良好な感触性が得られる。
式(I):
相対標準偏差 CV = Sn(μm)/ D
50(μm)
×100
[ここで、Snは個数分布における標準偏差を示し、D
50は、個数分布における体積中位粒子径を示す。]
【0023】
本発明のポリアミド系ゴム弾性体球状粉体は、ポリアミド系ゴム弾性体を、エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体の存在下に、水性媒体中に乳化分散させた水性分散液から、水性媒体を除去する工程を含む製造方法により製造することができる。また、当該水性媒体を除去する工程は、前記水性分散液から水性媒体を除去して湿ケーキを調製する工程と、当該湿ケーキを乾燥する工程とを含むことが好ましい。本発明は、このようなポリアミド系ゴム弾性体球状粉体の製造方法も包含する。
【0024】
本発明に用いられるポリアミド系ゴム弾性体は、特に限定されるものではないが、軟質高分子構造を有するもの、若しくは、硬質高分子部位と軟質高分子部位とを組み合わせた構造を有するものが好ましく、常温でゴム弾性を示し、高温では熱可塑性プラスチックと同様に可塑化する性質をもつものが好ましい。
【0025】
本発明に用いられるポリアミド系ゴム弾性体は、具体的には、ポリアミドブロック及びポリエーテルブロックを含んでなるブロック共重合体が好ましい。特に、ポリアミド及びポリエーテルが共重合した構造を有するブロック共重合体が好ましい。
【0026】
例えば、次の式(1)で表されるポリマーが、好ましい一態様として例示される。
式(1):
−[(ポリアミドブロック)−<結合部>−(ポリエーテルブロック)]
n−
当該式(1)では、nは自然数を表す。
【0027】
ポリアミドブロックの構成成分としては、例えば、ラクタム化合物、アミノカルボン酸化合物、ジアミン化合物とジカルボン酸化合物の塩、等を挙げることができる。
【0028】
より具体的には、ラクタム化合物としては、カプロラクタム、カプリルラクタム、エナントラクタム、ラウリルラクタム等が例示される。環状ラクタムも好ましく用いることができ、例えばε−カプロラクタム、ω−エナントラクタムおよびω−ラウリルラクタム等が挙げられる。
【0029】
また、アミノカルボン酸化合物としては、ω―アミノカプロン酸、ω―アミノエナント酸、ω―アミノカプリル酸、ω―アミノペルコン酸、ω―アミノカプリン酸、6−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、9−アミノノナン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等が例示される。
【0030】
また、ジアミン化合物とジカルボン酸化合物の塩における、ジアミン化合物としては、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、テトラエチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、フェニレンジアミン、メタキシリレンジアミン等が例示され、また、ジカルボン酸化合物としては、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、スベリン酸、アゼライン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、テトラデカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸、フマル酸、フタル酸、キシリレンジカルボン酸、ダイマー酸(リノール酸やオレイン酸を主成分とする不飽和脂肪酸より合成される炭素数36の不飽和ジカルボン酸)等が例示される。ジアミン化合物とジカルボン酸化合物の塩は、好ましくは前記例示のジアミン化合物とジカルボン酸化合物の塩であり、より好ましくは、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、テトラエチレンジアミン、及びヘキサメチレンジアミンからなる群より選択される1種と、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、セバシン酸、テレフタル酸、及びイソフタル酸からなる群より選択される1種の、塩である。
【0031】
なお、ポリアミドブロックの構成成分が1個単独で又は複数個重合してポリアミドブロックを構成する。複数個重合する場合においては、1種の構成成分が重合していてもよく、2種以上の構成成分が重合していてもよい。
【0032】
ポリエーテルブロックの構成成分としては、例えば、グリコール化合物、ジアミン化合物等が例示される。より具体的には、グリコール化合物としては、ポリエチレンオキシドグリコール、ポリプロピレンオキシドグリコール、ポリテトラメチレンオキシドグリコール、ポリヘキサメチレンオキシドグリコール等が例示される。また、ジアミン化合物としては、ポリエーテルジアミン等が例示される。
【0033】
なお、ポリエーテルブロックの構成成分が1個単独で又は複数個重合してポリエーテルブロックを構成する。複数個重合する場合においては、1種の構成成分が重合していてもよく、2種以上の構成成分が重合していてもよい。
【0034】
ポリアミドブロックとポリエーテルブロックとの結合部の分子構造としては、例えば、−CO−NH−、又は−CO−O−が例示される。好ましくは−CO−NH−である。結合部の分子構造が−CO−NH−の共重合体をポリエーテルブロックアミド共重合体、結合部の分子構造が−CO−O−の共重合体をポリエーテルエステルブロックアミド共重合体、と呼ぶ。つまり、上記式(1)を用いて表現すれば、ポリアミド及びポリエーテルが共重合した構造からなるブロック共重合体として、
−[(ポリアミドブロック)−CO−NH−(ポリエーテルブロック)]
n−
の結合形態を有するポリエーテルブロックアミド共重合体、
−[(ポリアミドブロック)−CO−O−(ポリエーテルブロック)]
n−
の結合形態を有するポリエーテルエステルブロックアミド共重合体、等を例示できる。
【0035】
限定的な解釈を望むものではないが、本発明に用いられるポリアミド系ゴム弾性体が、ポリアミドブロック及びポリエーテルブロックを含んでなるブロック共重合体である場合、ポリアミドブロックを有する硬質高分子部位(ハードセグメントともいう)と、ポリエーテルブロックを有する軟質高分子部位(ソフトセグメントともいう)とが組み合わされた構造を有すると考えられる。当該硬質高分子部位は、結晶性で融点が高く、また、当該軟質高分子部位は、非晶性でガラス転移温度が低いと考えられる。
【0036】
本発明においては、耐加水分解性、耐熱性に優れ、有機溶剤を用いなくても、粒度分布が優れたポリアミド系ゴム弾性体水性分散液が得られやすいという観点から、ポリアミド系ゴム弾性体として、特にポリエーテルブロックアミド共重合体を好適に用いることができる。
【0037】
ポリアミド系ゴム弾性体としては、公知の物質を用いることができ、また、公知の方法により製造されたものを用いることができる。また、市販されているものを用いることもできる。
【0038】
ポリアミド系ゴム弾性体を製造する方法としては、例えば、ラクタム化合物、アミノカルボン酸化合物、並びにジアミン化合物とジカルボン酸化合物の塩、からなる群より選択される少なくとも1種と、ジカルボン酸とを反応させて、実質的に両末端がカルボキシル基であるポリアミドブロックを調製した後、このポリアミドブロックにグリコール化合物及びジアミン化合物からなる群より選択される少なくとも1種を添加して、加熱することで反応させる方法等を挙げることができる。
【0039】
なお、ここで用いるジカルボン酸としては、例えば上記“ジアミン化合物とジカルボン酸化合物の塩”の説明において例示したジカルボン酸化合物と同様のものを用い得る。
【0040】
また、本発明に用いるポリアミド系ゴム弾性体として市販品を用いる場合、例えば、宇部興産株式会社製ポリエーテルブロックアミド共重合体(商品名“UBESTAXPA9040X1”)、アルケマ社製ポリエーテルエステルブロックアミド共重合体(商品名“ペバックス2533SA01”)等を用いることができる。
【0041】
本発明において用いられる水性媒体は、水が好ましい。水は、水道水、工業用水、イオン交換水、脱イオン水および純水などの各種の水であってよく、脱イオン水および純水が好ましい。また、水には、本発明の目的を阻害しない範囲において、必要に応じ、pH調整剤、消泡剤、粘度調整剤、防かび剤等が適宜添加されていてもよい。
【0042】
水性媒体の使用量は、特に限定されるものではないが、ポリアミド系ゴム弾性体100質量部に対して40〜1,000質量部に設定するのが好ましく、50〜150質量部に設定するのがより好ましい。水性媒体の使用量が40質量部以上の場合は、分散安定性等が良好な水性分散液が得られ好ましい。また、使用量が1,000質量部未満であれば、生産性が良く実用的な面で望ましい。
【0043】
エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体は、エチレンオキシド(EO)とプロピレンオキシド(PO)との共重合体である。エチレンオキシド(EO)とプロピレンオキシド(PO)のトリブロック共重合体が好ましい。本発明に用いられるエチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体は、好ましくは下記一般式(2)で表される化合物である。
【0044】
式(2):
HO(CH
2CH
2O)
p(CH
2CH(CH
3)O)
q(CH
2CH
2O)
rH
【0045】
一般式(2)において、p、qおよびrは、それぞれ付加モル数を示す。pは好ましくは2〜300の整数を示す。qは好ましくは10〜150の整数を示す。rは好ましくは2〜300の整数を示す。これらp、q、rは、互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0046】
エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体としては、市販品を購入して用いてもよく、例えばプルロニック(株式会社ADEKA)やエパン(第一工業製薬株式会社)、ポロキサマー等が例示できる。
【0047】
エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体の重量平均分子量は、特に限定されないが、好ましくは3,000〜30,000程度、より好ましくは6,000〜25,000程度、特に好ましくは8,000〜20,000程度である。また、エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体中のエチレンオキシドの含有割合は、特に限定されないが、好ましくは40〜95質量%程度、より好ましくは45〜90質量%程度、特に好ましくは50〜85質量%程度である。
【0048】
エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体の使用量は、ポリアミド系ゴム弾性体100質量部に対して、3〜30質量部程度とすることが好ましく、5〜25質量部程度とすることがより好ましく、8〜20質量部程度とすることが更に好ましい。エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体の使用量が3質量部以上であれば、より安定な水性分散液が得られるので望ましい。また、使用量が30質量部以下であれば、経済的な観点からより望ましい。
【0049】
ポリアミド系ゴム弾性体をエチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体の存在下に、水性媒体中に乳化分散させて水性分散液を調製する。ここでは、エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体は界面活性剤(乳化剤)としてはたらく。当該調製において、ポリアミド系ゴム弾性体を乳化分散させる方法としては、特に限定されず、(i)ポリアミド系ゴム弾性体を、例えば機械粉砕法、冷凍粉砕法、又は湿式粉砕法で粉砕して得られるポリアミド系ゴム弾性体粉砕物をエチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体の存在下に水性媒体中に分散させる方法、(ii)ポリアミド系ゴム弾性体とエチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体と水性媒体をポリアミド系ゴム弾性体の軟化温度以上の温度で攪拌混合を行って乳化させる方法、(iii)ポリアミド系ゴム弾性体を有機溶剤に溶解させた後、水性媒体とエチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体を添加し、高せん断力下で攪拌を行ってポリアミド系ゴム弾性体の乳化液を製造した後、有機溶媒を減圧留去等により除去する方法、(iv)ポリアミド系ゴム弾性体を有機溶剤に溶解させた後、必要に応じ、溶解性の低い溶媒を加えて、冷却し、析出したポリアミド系ゴム弾性体をエチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体の存在下に水性媒体中に分散させる方法、(v)ポリアミド系ゴム弾性体を溶解させた有機溶剤をスプレードライヤー等で噴霧乾燥することで得られたポリアミド系ゴム弾性体の粉体をエチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体の存在下に水性媒体中に分散させる方法等が例示される。
【0050】
本発明においては、得られるポリアミド系ゴム弾性体の粒子の形状が真球状のものが得られやすく、有機溶媒を使用しなくても製造が可能であって環境面においても取り扱いやすく、経済的であるとの観点から、(ii)ポリアミド系ゴム弾性体とエチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体と水性媒体をポリアミド系ゴム弾性体の軟化温度以上の温度で攪拌混合を行って乳化させる方法が特に好適に用いられる。
【0051】
以下、本発明におけるポリアミド系ゴム弾性体水性分散液の代表的な製造方法を示す。
【0052】
先ず、容器内にポリアミド系ゴム弾性体、エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体および水性媒体を投入し、これらの混合液を調製する。
【0053】
ここで、より粒度分布が優れたポリアミド系ゴム弾性体球状粉体を生産性良く得るため、必要に応じ、エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体に加え、エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体以外の界面活性剤も用いることが好ましい。
【0054】
エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体以外の界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤やノニオン系界面活性剤を用いることができる。アニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルジフェニルスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、ジアルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ロジン酸塩および脂肪酸塩等が挙げられる。
【0055】
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルチオエーテル、アセチレングリコール、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミド、アルキル脂肪酸ジエタノールアミドおよびグリセリン脂肪酸エステル等を挙げることができる。
【0056】
本発明において、粒度分布が優れたポリアミド系ゴム弾性体球状粉体が得られやすいとの観点からノニオン系界面活性剤が好適に用いられ、特にエーテル結合を有するノニオン系界面活性剤が好適に用いられる。
【0057】
前述の界面活性剤の中では、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルチオエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミドがエーテル結合を有するノニオン系界面活性剤に該当する。これらの中でも、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、及びソルビタン脂肪酸エステルが特に好ましい。
【0058】
なお、上記ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルチオエーテル、又はポリオキシエチレンアルキルアミドの「アルキル」は、炭素数10〜18のアルキルが好ましく、より具体的にはカプリル、ラウリル、ミリスチル、パルミチル、ステアリルが好ましく例示できる。また、上記ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルの「脂肪酸」は、炭素数10〜18の脂肪酸が好ましく、より具体的には、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸が好ましく例示できる。なお、ソルビタン脂肪酸エステルの中でも、特にソルビタンモノラウレートが好ましい。
【0059】
エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体以外の界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合、アニオン系界面活性剤とノニオン系界面活性剤とが併用されてもよいが、ノニオン系界面活性剤のうち2種以上を併用することが好ましく、エーテル結合を有するノニオン系界面活性剤のうち2種以上を併用することがより好ましい。
【0060】
エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体を含めた界面活性剤(すなわち、エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体以外の界面活性剤を用いない場合は、エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体を意味し、エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体以外の界面活性剤を用いる場合は、当該界面活性剤及びエチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体を意味する。以下同様。)の使用量は、ポリアミド系ゴム弾性体100質量部に対して20質量部未満が好ましく、1〜12質量部がより好ましい。エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体を含めた界面活性剤の使用量が20質量部未満であれば、後述する水性媒体を除去する工程において、エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体を含めた界面活性剤を除去しやすく望ましい。尚、本発明のポリアミド系ゴム弾性体球状粉体の製造方法では、特に限定されるものではないが、エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体を含めた界面活性剤は、水性媒体を除去する工程において、水性媒体に溶解されて可能な限り除去されるのが望ましい。例えば、化粧品等、皮膚に直接塗って使用する場合、皮膚刺激性への懸念から、界面活性剤が残存するとポリアミド系ゴム弾性体球状粉体の使用用途が制限される場合がある。また、界面活性剤が除去されていない球状粉体は、場合によっては、保管状態により、ポリアミド系ゴム弾性体球状粉体が水分を吸湿した際に、粉体表面の界面活性剤が水分によって溶出し、表面がべたつき、感触性が悪くなるほか、粉体の流動性が低下して取り扱いにくくなる等の懸念がある。
【0061】
また、本発明のポリアミド系ゴム弾性体球状粉体の製造において、必要に応じ、酸化防止剤を用いることができる。酸化防止剤を用いることで、得られるポリアミド系ゴム弾性体球状粉体の熱劣化や変色を防止し、耐久性を向上させることも可能である。酸化防止剤は、前記混合液に配合して用いることができる。
【0062】
酸化防止剤の種類は、特に限定されるものではないが、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、燐系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤等を用いることができる。
【0063】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、公知のヒンダードフェノール系酸化防止剤が使用できるが、代表的には、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチ−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオ−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン及びテトラキス[メチレン−3−(3,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニルプロピオネート)]メタン等を挙げることができ、これらは1種又は2種以上を使用することができる。なかでも、1,6−ヘキサンジオール−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチ−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンが特に好ましい。
【0064】
硫黄系酸化防止剤としてはジラウリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス(β−ラウリルチオプロピオネート)などがあげられる。これらのなかでも、ペンタエリスリトール−テトラキス(β−ラウリルチオプロピオネート)が特に好ましい。
【0065】
燐系酸化防止剤としては、例えば、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)フォスファイト、ビス[2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−メチルフェニル]エチルエステル亜燐酸、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4−ジイルビスフォスフォナイト、ビス(2,4−ジ−t −ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、ビス(2,6−ジ−t −ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイトなどを使用することができる。
【0066】
アミン系酸化防止剤としては、オクチル化ジフェニルアミン、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、フェニル−1−ナフチルアミン、ポリ(2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、N,N´−ジフェニル−p−フェニレンジアミンなどを使用することができる。
【0067】
これらの酸化防止剤は、2種以上のものが併用されてもよい。これらの酸化防止剤を併用することで、さらに耐熱性を向上させることができる。
【0068】
これらの酸化防止剤の使用量は、前記ポリアミド系ゴム弾性体100質量部に対して好ましくは0.01〜10質量部であり、より好ましくは0.05〜8質量部であり、特に好ましくは0.1〜5質量部である。酸化防止剤が10質量部未満であれば、酸化防止剤がブリードしやすく製品の表面が白濁する等、外観が損なわれる懸念が少なく、経済的にも好ましい。また、酸化防止剤が0.01質量部超であれば、製造されるポリアミド系ゴム弾性体球状粉体や、さらに当該球状粉体から製造される成形品の耐熱性が良好であり好ましい。
【0069】
上述の混合液の調製において用いる容器は、ポリアミド系ゴム弾性体が水性媒体中で軟化する温度以上の温度に加熱するための加熱手段と、内容物にせん断力を与えることのできる攪拌手段とを備えた耐圧容器が好ましい。例えば、攪拌機付きの耐圧オートクレーブ等を用いるのが好ましい。
【0070】
次に、前記混合液をポリアミド系ゴム弾性体の軟化温度以上に加熱して攪拌する。そして、これにより得られた乳濁液を室温まで冷却すると、ポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液が得られる。
【0071】
本発明のポリアミド系ゴム弾性体球状粉体は、上記のようにして得られたポリアミド系ゴム弾性体水性分散液から水性媒体を除去することで製造することができる。
【0072】
本発明において、ポリアミド系ゴム弾性体水性分散液から水性媒体を除去する方法としては、特に限定されないが、ポリアミド系ゴム弾性体水性分散液から水性媒体を蒸発させてポリアミド系ゴム弾性体球状粉体を得る方法、ポリアミド系ゴム弾性体水性分散液をろ材(例えば多孔質性を持つろ材が好ましい)を用いてろ過して、水性分散液から水性媒体をろ別して除去する方法、遠心分離機を用いて、もしくは水性分散液をデカンテーションして、ポリアミド系ゴム弾性体を沈降させた後、水性媒体を除去する方法等が例示できる。
【0073】
これらの水性媒体を除去する方法のなかでも、界面活性剤の除去が効率よく行えるとの観点から、水性分散液からろ過により水性媒体を除去してポリアミド系ゴム弾性体球状粉体を得る方法が好ましい。なお、当該方法においては、例えば、ろ過時に、水性媒体を除去すると同時に、さらに水性媒体を添加しながら、ポリアミド系ゴム弾性体水性分散液に含有されている界面活性剤を水性媒体に溶解させながら除去することができるため、界面活性剤の除去を効率よく行うことができる。
【0074】
本発明のポリアミド系ゴム弾性体水性分散液からろ過により水性媒体を除去する方法としては、特に限定されない。ろ材を用い、圧力差を利用した方法として、MF膜(精密ろ過膜)を用いる精密ろ過法やUF膜(限外ろ過膜)を用いる限外ろ過法を用いることができる。また、工業的には、ろ布をろ材としたベルトフィルター法を用いることで、効率よく大量にろ過を行うことができる。これら以外にも、電位差を利用する電気透析法、濃度差を利用する透析法等を用いることができる。
【0075】
これら方法は、いずれも慣用の装置を用いて行うことができる。比較的、装置が安価であること、また、本発明のポリアミド系ゴム弾性体水性分散液は良好な湿ケーキが得られやすいため、水性媒体とポリアミド系ゴム弾性体の分離にいわゆるケーキろ過がしやすく、生産性が良いことから、精密ろ過法や限外ろ過法およびフィルタープレス法が好適に用いられる。なお、良好な湿ケーキとは、ろ過の際、水分を含んだ粒子が凝集し、固まった状態になって、液が抜けやすく、ろ過しやすい湿ケーキのことである。(逆に、粒子が凝集せず、分散したままで、ケーキが出来ないと、粒径の小さな粒子がろ材に詰まりやすく、ろ過時間が長くなるため、良好とは呼べない。)
【0076】
精密ろ過法や限外ろ過法およびフィルタープレス法に用いられるろ材としては、MF膜やUF膜およびろ布が挙げられる。ろ材の孔径は0.001〜10μm程度のものが好ましく、通気度としては、0.1〜10cm
3/cm
2・sec程度のものが好ましいが、基本的に圧力の大小にかかわらず、水性媒体を透過させる膜であれば特に限定されない。ろ材の材質は、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ4−フッ化エチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリルニトリル、セルロース系の有機高分子材料およびアルミナ、炭化珪素などの無機材料が挙げられる。
【0077】
これらのろ過は、常圧ろ過、減圧ろ過、加圧ろ過、熱時ろ過等いずれの方法も用いることができるが、本発明のポリアミド系ゴム弾性体水性分散液は良好な湿ケーキが得られやすく水性媒体をろ過して除去する方法は生産性が優れるとの観点から、減圧ろ過もしくは加圧ろ過によるろ過が好適に用いることができる。
【0078】
本発明において、ポリアミド系ゴム弾性体水性分散液からろ過により水性媒体を除去する方法において、ろ過する際のポリアミド系ゴム弾性体水性分散液の液温は、特に制限はされないが、例えば10〜70℃が好ましく、15〜65℃がより好ましく、20℃〜60℃がさらに好ましい。
【0079】
すなわち、水性分散液の温度が10℃以上であれば、湿ケーキの厚みが均一なケーキが得られやすく、ろ過が効率的に行え、工業的にフィルタープレス法を用いて短時間に大量のろ過を行うのに良好である。ろ過する際の水性分散液の温度が70℃以下であれば、ポリアミド系ゴム弾性体の粒子の凝集がより抑制されるとともに、湿ケーキ表面から一部の粒子が液状化することがなくろ材の目詰まりが少ないために好適である。
【0080】
また、当該温度範囲であると、ろ材から湿ケーキの剥離性が良いため、ろ材が劣化しにくく長寿命化できる等の利点がある。
【0081】
ただし、当該温度範囲外の液温であっても、製造されるポリアミド系ゴム弾性体球状粉体そのものには特に問題はない。
【0082】
これらの、湿ケーキの厚みは、特に制限はされないが、2mm以上が好ましく、より好ましいのは4mm以上、特に好ましいのは6mm以上である。湿ケーキの厚みが2mm以上あれば、湿ケーキから一部の粒子が液状化することがなく、ろ材からの剥離性がより優れる。
【0083】
本発明において、ろ過を終了する際の湿ケーキの含水量は、特に制限されないが、湿ケーキを100質量部とした場合に対して、3〜70質量部であることが好ましく、5〜50質量部であることがより好ましく、10〜40質量部であることがさらに好ましい。湿ケーキの含水量が3質量部未満の場合、次に湿ケーキを乾燥させる工程時間を短縮できるが、ろ過に時間がかかる。70質量部超の場合、乾燥させる工程時間が長くなるほか、湿ケーキが液状化しやすく、ろ材からの剥離性が悪く、移動させるのが困難な場合がある。
【0084】
なお、湿ケーキの含水量は、湿ケーキを130℃で1時間乾燥させて水分を乾燥除去した際の、乾燥前の質量と乾燥後の質量を求めることにより算出した値である。
【0085】
このようにして得られた湿ケーキを乾燥する工程を経て本発明のポリアミド系ゴム弾性体球状粉体が得られる。ただ、本発明においては、前述の理由のとおり界面活性剤をポリアミドゴム弾性体に残存させないことが好ましいという観点から、得られた湿ケーキに改めて水性媒体を添加して、エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体を含めた界面活性剤を水性媒体に溶解させてろ過を行い、ポリアミド系ゴム弾性体からエチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体を含めた界面活性剤を除去することが好ましい。
【0086】
この場合、湿ケーキに対して、添加される水性媒体の量は、特に限定されないが、湿ケーキ100質量部に対して100〜1000質量部が好ましく、200〜800質量部がより好ましく、300〜600質量部がさらに好ましい。水性媒体の量が100質量部以上であれば、エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体を含めた界面活性剤をより高効率に除去でき、より高純度なポリアミド系ゴム弾性体球状粉体が得られる。また、1000質量部以下であれば、生産性よくポリアミド系ゴム弾性体球状粉体を得ることができる。
【0087】
湿ケーキの乾燥方法は特に制限されず、公知の乾燥方法を用い得る。例えば、乾燥装置を用いて乾燥させることができる。湿ケーキを乾燥するための装置としては、特に限定されず、熱風乾燥機、減圧乾燥機などの慣用の装置を用いることができる。湿ケーキを乾燥するための乾燥温度や常圧下、減圧下などの圧力条件は、特に限定されないが、乾燥温度は50〜150℃程度が好ましく、70〜100℃程度がより好ましい。乾燥温度が50℃以上であれば、より短時間で水性媒体を乾燥除去できるために生産効率の面で好ましい。また、乾燥温度が150℃以下であれば、ポリアミド系ゴム弾性体の熱劣化をより抑制しながら乾燥ができる点で好ましい。
【0088】
さらには、減圧下でポリアミド系ゴム弾性体の乾燥を行うことが好ましい。減圧下で行うことでより短時間で乾燥を終えることが可能になる。
【0089】
当該乾燥は、ポリアミド系ゴム弾性体球状粉体の含水量が当該球状粉体100質量部に対して2質量部以下になるまで行うことが好ましく、1質量部以下になるまで行うことがより好ましく、さらには、0.5質量部以下になるまで行うことがさらに好ましい。2質量部以下であれば、球状粉体の流動性が良好であり、取り扱いやすく、化粧料として用いた際に、本来の感触性を損なわない点で好ましいといえる。なお、ここでの含水量は、ポリアミド系ゴム弾性体球状粉体を130℃で1時間乾燥させて水分を乾燥除去した際の、乾燥前の質量と乾燥後の質量を求めることにより算出した値である。
【0090】
尚、本発明において得られるポリアミド系ゴム弾性体球状粉体は、吸湿性を持っており、空気中に放置しておくと、次第に含水量が増えていく性質があるため、乾燥後は、速やかにデシケーター等の密閉容器に移動し、空気を遮断させることが好ましい。
【0091】
こうして得られた本発明のポリアミド系ゴム弾性体の粉体の形状は、球状であり、電子顕微鏡等で確認することができる。尚、ここでは真球に対して10%程度の歪みを許容した球体を含んでいても良い。
【0092】
本発明のポリアミド系ゴム弾性体球状粉体は、特に限定されないが、より粉体特性を向上させるため、シリカ、アルミナ等の無機系微粒子粉末を滑剤として添加し流動性を向上させたものを使用することもできる。
【0093】
このようにして得られた本発明のポリアミド系ゴム弾性体球状粉体は、柔軟性に優れ、塗布時の伸び、感触性に優れるため、化粧料に含ませて好適に用いることができる。
【0094】
このような化粧料としては、ファンデーション、口紅、ほほ紅、アイライナー、アイシャドー、まゆずみ、マスカラ、紅おしろい、ダスティングパウダー、クリーム、ローション等が例示できる。
【0095】
また、本発明のポリアミド系ゴム弾性体球状粉体は、耐摩耗性、耐油性、透明性、耐薬品性および耐熱性等に優れている他、粒度分布が優れているため、流動性に富み、各種の成形品を製造するのに好適に用いることができる。さらに、上で詳述した本発明のポリアミド系ゴム弾性体球状粉体の製造工程においては、有機溶剤を全く使用していないため、ほんのわずかな有機溶剤が含まれるだけで嫌気が持たれる用途、例えば電子部品や住宅の内装に用いられる塗料、意匠用の粉体塗料等にも好適に用いることができる。
【0096】
また、本発明のポリアミド系ゴム弾性体球状粉体は、一般のポリアミド樹脂球状粉体に比べて変形時の応力が大きいため、成形品の薄肉化を達成できるという利点がある。これらの成形品を製造するにあたっては、本発明のポリアミド系ゴム弾性体球状粉体を単独で用いることもできるし、無機微粒子や他種の有機微粒子と粉体混合して用いることもできる。本発明の球状粉体は、粒度分布が優れ、適切な表面積を持っているため、無機微粒子や他種の有機微粒子と粉体混合する際に、均一混合を行いやすく都合が良い。
【0097】
本発明のポリアミド系ゴム弾性体球状粉体のその他の具体的な用途としては、特に限定されないが、特にポリアミド系ゴム弾性体の持つ柔軟性やクッション性、可塑性に優れる特性を活用した用途に使用されるのが好ましく、例えば、シート、包装フイルム、電気製品のグリップ、電子写真用部品、トナーやタイヤ部材、各種振動吸収部材、ドアロック部材、エンジンマウント、ラジエターマウント等の自動車部品、スポーツシューズの靴底やスキーブーツ、テニスラケット等のスポーツ関連製品、プラスチックマグネット用バインダー等の生活用品および医療器具等を製造するための素材、衣料材料に用いられる接着芯地原料、紙おむつや生理用ナプキンに用いられるホットメルト接着剤、人工皮革の表面処理剤、グリース等の潤滑剤への添加剤、カーペットおよびエアーバックなどに用いられるナイロン繊維やポリエステル繊維等のコーティング剤、紙およびフイルム等のコーティング剤やガスバリア剤、フォームラバー用原料、合成繊維、天然繊維、ガラス繊維および炭素繊維等の繊維材料の収束剤、繊維複合化材料あるいはホース、チューブ、ベルト、ガスケットおよびパッキング等の製造用原料およびこれらの原料を構成するための充填剤などとして、広い用途において活用することができる。
【実施例】
【0098】
以下、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。
<ポリアミド系ゴム弾性体球状粉体の製造>
実施例1
直径50mmのタービン型撹拌羽根を備えた内容積1リットルの耐圧オートクレーブ中に、ポリアミド系ゴム弾性体としてポリエーテルブロックアミド共重合体(宇部興産株式会社製の商品名“UBESTAXPA9040X1”:融点135℃)160g、脱イオン水224g、エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体(株式会社ADEKAの商品名“プルロニックF108”:重量平均分子量15,500、エチレンオキシド含有量80重量%)16gを仕込み、密閉した。次に、撹拌機を始動し、400rpmの回転数で撹拌しながらオートクレーブ内部を180℃まで昇温した。内温を180℃に保ちながらさらに20分間撹拌した後、内容物を室温まで冷却し、ポリアミド系ゴム弾性体の水性分散液を得た。
【0099】
次に、得られた水性分散液からろ過により水性媒体を除去した。ここでは、ろ過時における湿ケーキの状態を確認する目的を含めて、以下の方法でろ過を行った。
【0100】
予め25℃に設定した恒温機に1時間入れて液温を調整した前記水性分散液43.3gをMF膜(ADVANTEC社製の商品名“A010A090C”:セルロース混合エステルタイプ、孔径0.1μm、寸法90mmφ)を備えたろ過機(ADVANTEC社製の商品名“KGS-90”:有効ろ過面積43cm
2)に投入し、アスピレーターを用いて減圧度を0.06MPaに調整した後、水性媒体を減圧ろ過により除去した。水性媒体がろ過機から抜け落ちるのを確認した後、ただちに新たに86.6gの脱イオン水を加えた後、減圧度0.06MPaで減圧ろ過を行った。脱イオン水が抜け落ちた後、減圧下のまま6秒間静置し、厚み4mm、ほぼ均一で、良好な湿ケーキ26.6gを取得した。この湿ケーキの含水率を測定したところ35%であった。なお、湿ケーキの含水率は、湿ケーキを130℃で1時間乾燥させて水分を乾燥除去した際の、乾燥前の質量と乾燥後の質量を求めることにより算出した。
【0101】
次に、湿ケーキを減圧乾燥機に入れ、80℃で48時間減圧乾燥(減圧度0.1MPa)した後、取り出し、本発明のポリアミド系ゴム弾性体球状粉体を得た(乾燥後、必要に応じて粉砕処理を行ってもよい)。ここで得られた粉体の一部を採取し、走査型電子顕微鏡(JEOL製JSM−6390LA)を用いて観察し、形状が球状であることを確認した。
【0102】
実施例2
実施例1において、エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体の使用量を11.2gに変更し、さらにポリオキシエチレンオレイン酸エステル(第一工業製薬株式会社製の商品名“ノイゲンES−149D”)4.8gを用いた以外は、実施例1と同様に操作し、本発明のポリアミド系ゴム弾性体球状粉体を得た。尚、ろ過工程において得られた湿ケーキについては、厚み4mm、ほぼ均一で、良好な湿ケーキ26.5gを取得した。この湿ケーキの含水率を測定したところ35%であった。
【0103】
実施例3
実施例1において、エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体の使用量を11.2gに変更し、さらにソルビタンモノラウレート(日油株式会社製の商品名“ノニオンLP−20R”)4.8gを用いた以外は、実施例1と同様に操作し、本発明のポリアミド系ゴム弾性体球状粉体を得た。尚、ろ過工程において得られた湿ケーキについては、厚み4mm、ほぼ均一で、良好な湿ケーキ26.5gを取得した。この湿ケーキの含水率を測定したところ33%であった。
【0104】
実施例4
実施例1において、エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体の使用量を11.2gに変更し、さらにポリエチレングリコール(日油株式会社製の商品名“PEG♯20000”)4.8gを用いた以外は、実施例1と同様に操作し、本発明のポリアミド系ゴム弾性体球状粉体を得た。尚、ろ過工程において得られた湿ケーキについては、厚み4mm、ほぼ均一で、良好な湿ケーキ26.6gを取得した。この湿ケーキの含水率を測定したところ34%であった。
【0105】
実施例5
実施例1において、ポリエーテルブロックアミド共重合体として宇部興産株式会社製の商品名“UBESTAXPA9048X1”:融点153℃、を用い、さらに酸化防止剤として1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](BASFジャパン株式会社製の商品名“イルガノックス259”)0.8gを仕込んだ以外は、実施例1と同様に操作し、本発明のポリアミド系ゴム弾性体球状粉体を得た。尚、ろ過工程において得られた湿ケーキについては、厚み4mm、ほぼ均一で、良好な湿ケーキ26.6gを取得した。この湿ケーキの含水率を測定したところ34%であった。
【0106】
実施例6
実施例1において、予め5℃に設定した恒温機に1時間入れて液温を調整した水性分散液を用いて、実施例1と同様に操作し、本発明のポリアミド系ゴム弾性体球状粉体を得た。尚、ろ過工程において得られた湿ケーキについては、良好なケーキが得られたが、厚みは2〜6mmであり、少しばらつきがみられた。湿ケーキは26.5gを取得した。この湿ケーキの含水率を測定したところ35%であった。
【0107】
実施例7
実施例1において、予め75℃に設定した恒温機に1時間入れて液温を調整した水性分散液を用いて、実施例1と同様に操作し、本発明のポリアミド系ゴム弾性体球状粉体を得た。尚、ろ過工程において得られた湿ケーキについては、厚みは2〜6mmであり、少しばらつきがみられた。また、厚みが2mmと薄くなっている箇所では、液状化が少し起こっていた。湿ケーキは26.0gを取得した。この湿ケーキの含水率を測定したところ37%であった。
【0108】
実施例1〜7で得られたポリアミド系ゴム弾性体球状粉体の粒度分布および個数分布における最大体積粒子径、体積中位粒子径は、電気検知式粒度分布測定装置(ベックマンコールター社製のコールターマルチサイザー)で測定した。ここでは、実施例1〜3および6、7で得られた粉体は50μmアパチャーを、実施例4〜5で得られた粉体は、100μmアパチャーを用いて測定した。各ポリアミド系ゴム弾性体球状粉体の最大体積粒子径および体積中位粒子径、標準偏差、相対標準偏差を表1に示す。なお、相対標準偏差(%)は、次の式により求めた値である。
【0109】
相対標準偏差 CV(%)= Sn(μm)/ D
50(μm)
×100
[ここで、Snは個数分布における標準偏差を示し、D
50は個数分布における体積中位粒子径を示す。]
【0110】
【表1】
【0111】
<化粧料の製造>
実施例8
実施例1で得られたポリアミド系ゴム弾性体球状粉体15質量部、酸化チタン8質量部、セリサイト45.2質量部、タルク10質量部、雲母チタン2質量部、ベンガラ2質量部、黄酸化鉄3.5質量部、群青1質量部、ステアリン酸アルミニウム1質量部、ジメチルポリシロキサン5質量部、スクワラン7質量部、パラベン0.2質量部、香料0.1部からなる混合粉体20gを乳鉢を用いて粉砕した後、これにミネラルオイルを数滴加えて、さらに混合し、化粧料を得た。
【0112】
実施例9〜14
実施例8において、実施例1で得られたポリアミド系ゴム弾性体球状粉体に代えて実施例2〜7で得られた粉体を用いた以外は実施例8と同様に操作を行い化粧料を得た。すなわち、実施例9、10、11、12、13、14は、それぞれ、実施例2、3、4、5、6、7で得られた粉体から製造された化粧料である。
【0113】
比較例
実施例8において、実施例1で得られたポリアミド系ゴム弾性体球状粉体に代えて、ナイロン12球状粉体(体積平均粒子径4.6μm)を用いた以外は、実施例8と同様に操作を行い化粧料を得た。
【0114】
化粧料の使用感の評価
得られた実施例8〜14および比較例の化粧料を6名(成人男性4名、成人女性2人)の評価パネラーが、肌(手の甲)に塗布し、その使用感を各項目に分類して、点数を付けて評価した。評価項目と評価基準は以下のとおりである。
【0115】
<評価項目>
伸び・・・・・・塗布する際の皮膚上での粉の伸び
のり・・・・・・塗布する際の毛穴への埋まり具合
さらさら感・・・塗布する際、塗布後の肌ざわり
軽さ・・・・・・塗布する際、塗布後の重量感
もち・・・・・・塗布後に指で擦った際の化粧もち
つや・・・・・・塗布後のつや感
キメ・・・・・・塗布後のキメ感
隠蔽性・・・・・塗布後のしみ、くすみのぼかし具合
ソフト感・・・・塗布する際の塗布後の粉の柔らかさ
透明感・・・・・塗布後、見た目の状態
<判断基準>
非常に良い・・・2点
良い ・・・1点
あまり良くない・0点
各評価項目における平均点、評価項目全体の合計点を表2に示した。
【0116】
【表2】
【0117】
表2から、実施例8〜14で得られた化粧料は、比較例のようなゴム弾性体でない汎用のナイロン系球状粉体を用いた化粧料よりも塗布する際の伸びや塗布後のソフト感が特に優れていることが分った。
【0118】
また、表1からも、本発明のポリアミド系ゴム弾性体球状粉体は粒度分布に優れた球状粉体であることが分った。こうして得られたポリアミド系ゴム弾性体球状粉体は粒度分布が優れ、流動性に富むため、化粧料以外にも各種の成形品を製造するのに好適に用いることができる。