(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
中空糸膜を有する膜モジュールと、前記膜モジュールの一端部に繋がる第1流路と、前記膜モジュールの他端部に繋がる第2流路と、使用済みシリコンクーラントからなる原液を送出するポンプと、前記膜モジュール内への原液の流れ方向を切り換え可能な方向切換手段と、逆洗用流体によって直接的に又は間接的に前記中空糸膜に外圧をかけて前記中空糸膜の逆洗を行うための逆洗手段と、前記膜モジュールで濾過された濾液を前記膜モジュールから流出させる濾液流出路と、前記第1流路から前記中空糸膜の内部に流入した原液から濃縮された濃縮液を排出する第1排出路と、前記第2流路から前記中空糸膜の内部に流入した原液から濃縮された濃縮液を排出する第2排出路と、を備えた使用済みシリコンクーラント処理装置によって使用済みシリコンクーラントを処理する方法であって、
前記ポンプが駆動されて濾過が行われるときと、前記逆洗手段によって前記中空糸膜の逆洗が行われるときとの間で、前記方向切換手段により、前記ポンプから送出された原液が前記第1流路から前記膜モジュールの前記中空糸膜の内部に流入する第1状態と、前記原液が前記第2流路から前記膜モジュールの前記中空糸膜の内部に流入する第2状態との間で、前記膜モジュール内への原液の流れ方向の切り換えを行い、且つ、逆洗が行われているときには、前記第1状態と前記第2状態との間で切り換えを行わない、使用済みシリコンクーラント処理方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
分離膜としては中空糸膜を用いることができる。また、中空糸膜が用いられる場合においては、ポンプで加圧された原液が中空糸膜内に導入され、膜の内側から外側に濾液が流れ出る構成とすることが可能である。この場合には、逆洗用流体によって中空糸膜に外側から圧力をかけることによって、逆洗が行われる。
【0006】
分離膜として中空糸膜が用いられる場合、原液の入口側から出口側に至るまでの圧力損失が大きくなる。このため、中空糸膜において、原液の入り口付近での濾過量が多く、出口付近での濾過量が少なくなる。このため、膜面に付着する堆積物も入り口付近で多く、出口付近で少なくなる。
【0007】
逆洗に際しては、原液が流れた状態のまま、逆洗用流体による外圧がかけられるが、入り口付近においては、原液の圧力が高いため、逆洗用流体による外圧が作用し難い。このため、より多くの堆積物が付着する入り口付近で逆洗の効果が得られ難い。
【0008】
特にシリコンインゴットの切断に使用されるシリコンクーラントは、粘度が高いため、原液(使用済みシリコンクーラント)の入口側での圧力と出口側での圧力との間の圧力損失が大きい。このため、入り口付近で逆洗の効果が得られない事態が顕著となる。
【0009】
そこで、本発明は、前記従来技術を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、逆洗の効果を向上できる使用済みシリコンクーラント処理装置及び使用済みシリコンクーラント処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するため、本発明は、中空糸膜を有する膜モジュールと、前記膜モジュールの一端部に繋がる第1流路と、前記膜モジュールの他端部に繋がる第2流路と、使用済みシリコンクーラントからなる原液を送出するポンプと、前記ポンプから送出された原液が前記第1流路から前記膜モジュールの前記中空糸膜の内部に流入する第1状態と、前記原液が前記第2流路から前記膜モジュールの前記中空糸膜の内部に流入する第2状態との間で、前記膜モジュール内への原液の流れ方向を切り換え可能な方向切換手段と、逆洗用流体によって直接的に又は間接的に前記中空糸膜に外圧をかけて前記中空糸膜の逆洗を行うための逆洗手段と、前記膜モジュールで濾過された濾液を前記膜モジュールから流出させる濾液流出路と、前記第1流路から前記中空糸膜の内部に流入した原液から濃縮された濃縮液を排出する第1排出路と、前記第2流路から前記中空糸膜の内部に流入した原液から濃縮された濃縮液を排出する第2排出路と、を備える使用済みシリコンクーラント処理装置である。前記方向切換手段は、前記ポンプが駆動されて濾過が行われるときと、前記逆洗手段によって前記中空糸膜の逆洗が行われるときとの間で、前記膜モジュール内への原液の流れ方向を前記第1状態と前記第2状態との間で切り換え可能
で、且つ、逆洗が行われているときには、前記第1状態と前記第2状態との間で切り換えを行わないように構成されている。
【0011】
本発明では、濾過が行われるときと、逆洗手段による膜モジュール内の中空糸膜の逆洗が行われるときとの間に、方向切換手段は、膜モジュール内への原液の流れ方向の切り換えを行う。このため、例えば、ポンプから送出された原液が第1流路から膜モジュールの中空糸膜の内部に流入する第1状態にあるときには、膜モジュールで濾過された濾液は濾液流出路から流出する一方、濃縮液は第1排出路から排出される。このときには、原液が膜モジュールの一端部側から中空糸膜の内部に流入するため、一端部側で濾過量が多く、膜面に付着する堆積物も多い。また、一端部側ほど原液の圧力が高く、他端部側での原液の圧力は低い。この状態で、逆洗が行われる前に、方向切換手段は、膜モジュール内への原液の流れ方向を第1状態から第2状態に切り換える。これにより、逆洗時には、膜モジュールで濾過された濾液が濾液流出路から流出する一方、濃縮液は第2排出路から排出される。この状態では、原液が膜モジュールの他端部側から中空糸膜の内部に流入するため、一端部側での原液の圧力が低く、他端部側での原液の圧力が高い。このため、逆洗用流体による中空糸膜の逆洗が行われたときには、一端部側において、より大きな外圧が中空糸膜の外面に作用する。したがって、堆積物の付着の多い一端部側での逆洗を効率的に行うことができる。一方、第2状態での濾過が行われた後、逆洗が行われる前に、膜モジュール内への原液の流れ方向を第1状態に切り換えることにより、膜モジュールの他端側での逆洗を効率的に行うことができる。
しかも、逆洗が行われているときに、膜モジュール内への原液の流れ方向の切り換えを行わないため、逆洗を安定して行うことができる。
【0012】
ここで、前記方向切換手段は、濾過を行う毎に、前記膜モジュール内への原液の流れ方向を前記第1状態と前記第2状態との間で切り換え可能に構成されていてもよい。
【0013】
この態様では、濾過を行う毎に、膜モジュール内への原液の流れ方向が切り換えられて、原液の濾過が行われる。このため、膜モジュールの一端側及び他端側の双方において逆洗を効率的に行うことができる。しかも、濾過工程を行う毎に方向を切り換えるので、膜モジュールの寿命を延ばすことができる。
【0014】
また、前記切り換え手段は、前記第1流路に設けられた第1入り側開閉弁と、前記第2流路に設けられた第2入り側開閉弁と、前記第1排出路に設けられた第1出側開閉弁と、前記第2排出路に設けられた第2出側開閉弁と、を有していてもよい。
【0015】
この態様では、第1入り側開閉弁及び第1出側開閉弁を開放するとともに第2入り側開閉弁及び第2出側開閉弁を閉鎖することにより、膜モジュール内への原液の流れ方向が第1状態となる。一方、第2入り側開閉弁及び第2出側開閉弁を開放するとともに第1入り側開閉弁及び第1出側開閉弁を閉鎖することにより、膜モジュール内への原液の流れ方向が第2状態となる。
【0016】
この態様において、前記逆洗手段は、前記膜モジュールに向かって逆洗用流体が流れる流体供給路と、前記流体供給路に設けられた逆洗用開閉弁と、を有していてもよい。
【0017】
この態様では、逆洗用開閉弁を開放することにより、逆洗用流体によって中空糸膜に外圧が
作用した逆洗状態となり、逆洗用開閉弁を閉鎖することにより、中空糸膜への加圧が停止された停止状態となる。したがって、逆洗用開閉弁の開閉を切り換えることにより、逆洗状態と停止状態との間での切り換えを行うことができる。
【0018】
この態様において、前記流体供給路は、前記濾液流出路に接続されていてもよく、この場合、前記濾液流出路には、前記流体供給路の接続部よりも下流側の部位に開閉弁が設けられていてもよい。
【0019】
この態様では、逆洗を行うときに濾液流出路の開閉弁を閉じることにより、濾液流出路を経由させて逆洗用流体を膜モジュール内に流入させることができる。したがって、膜モジュールの構成が複雑になることを抑制できる。
【0020】
また、前記逆洗用流体は空気であってもよく、この場合、前記流体供給路には、フィルターが設けられていてもよい。
【0021】
この態様では、逆洗に係るコストを抑えることができ、しかも、流体供給路内に侵入した異物を除去することができる。
【0022】
前記第1排出路は、前記第2流路に接続され、前記第2排出路は、前記第1流路に接続されていてもよい。
【0023】
この態様では、第1状態において、膜モジュールから排出された濃縮液は、第2流路を経由して第1排出路に流れる。一方、第2状態では、膜モジュールから排出された濃縮液は、第1流路を経由して第2排出路に流れる。
【0024】
この態様において、前記使用済みシリコンクーラント処理装置は、前記第1流路を流れる原液の圧力を検出する第1圧力計と、前記第2流路を流れる原液の圧力を検出する第2圧力計と、を備えていてもよい。
【0025】
この態様では、第1圧力計によって第1流路内の原液の圧力を検出でき、第2圧力計によって第2流路内の原液の圧力を検出することができる。
【0026】
この態様において、前記使用済みシリコンクーラント処理装置は、前記ポンプと前記第1流路及び前記第2流路とを接続する送出路を備えており、前記送出路には、前記膜モジュールを迂回するバイパス路が接続されており、前記バイパス路には開閉弁が設けられていてもよい。
【0027】
この態様では、第1圧力計又は第2圧力計による検出圧力が高くなった場合に、バイパス路の開閉弁を開放することにより、ポンプから送出された原液をバイパス路に流すことができる。これにより、第1流路又は第2流路の原液の圧力を下げることができる。したがって、ポンプの負荷を低減することができる。
【0028】
前記膜モジュールには、液抜き手段が設けられていてもよい。
【0029】
この態様では、中空糸膜の交換時等に、液抜き手段により膜モジュール内の液を抜くことができる。
【0030】
前記逆洗用流体は空気であってもよい。この態様では、逆洗にかかるコストを抑えることができる。
【0031】
前記使用済みシリコンクーラント処理装置は、前記逆洗手段及び前記方向切換手段を制御する制御部を備えており、前記制御部は、濾過を行う毎に、前記方向切換手段が前記第1状態と前記第2状態との間で前記膜モジュール内への原液の流れ方向の切り換えを行うように構成されていてもよい。
【0032】
この態様では、逆洗手段及び方向切換手段が制御部によって制御されるため、膜モジュール内への原液の流れ方向を自動的に切り換えることができる。
【0033】
前記使用済みシリコンクーラント処理装置は、前記逆洗手段及び前記方向切換手段を制御する制御部を備えており、前記制御部は、濾過を行う毎に、前記第1入り側開閉弁及び前記第1出側開閉弁が開放されるとともに前記第2入り側開閉弁及び前記第2出側開閉弁が閉鎖された前記第1状態と、前記第2入り側開閉弁及び前記第2出側開閉弁が開放されるとともに前記第1入り側開閉弁及び前記第1出側開閉弁が閉鎖された前記第2状態との間で切り換えを行うように構成されていてもよい。
【0034】
この態様では、逆洗手段及び方向切換手段が制御部によって制御されるため、モジュール内への原液の流れ方向を自動的に切り換えることができる。
【0037】
本発明は、中空糸膜を有する膜モジュールと、前記膜モジュールの一端部に繋がる第1流路と、前記膜モジュールの他端部に繋がる第2流路と、使用済みシリコンクーラントからなる原液を送出するポンプと、前記膜モジュール内への原液の流れ方向を切り換え可能な方向切換手段と、逆洗用流体によって直接的に又は間接的に前記中空糸膜に外圧をかけて前記中空糸膜の逆洗を行うための逆洗手段と、前記膜モジュールで濾過された濾液を前記膜モジュールから流出させる濾液流出路と、前記第1流路から前記中空糸膜の内部に流入した原液から濃縮された濃縮液を排出する第1排出路と、前記第2流路から前記中空糸膜の内部に流入した原液から濃縮された濃縮液を排出する第2排出路と、を備えた使用済みシリコンクーラント処理装置によって使用済みシリコンクーラントを処理する方法であって、前記ポンプが駆動されて濾過が行われるときと、前記逆洗手段によって前記中空糸膜の逆洗が行われるときとの間で、前記方向切換手段により、前記ポンプから送出された原液が前記第1流路から前記膜モジュールの前記中空糸膜の内部に流入する第1状態と、前記原液が前記第2流路から前記膜モジュールの前記中空糸膜の内部に流入する第2状態との間で、前記膜モジュール内への原液の流れ方向の切り換えを行
い、且つ、逆洗が行われているときには、前記第1状態と前記第2状態との間で切り換えを行わない、使用済みシリコンクーラント処理方法である。
【0038】
前記使用済みシリコンクーラント処理方法において、濾過工程を行う毎に、前記膜モジュール内への原液の流れ方向の切り換えを行ってもよい。
【発明の効果】
【0039】
以上説明したように、本発明によれば、逆洗の効果を向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0042】
図1は、本発明に係る使用済みシリコンクーラント処理装置の一実施形態を概略的に示している。
図1に示すように、本実施形態に係る使用済みシリコンクーラント処理装置(以下、単に処理装置と称する)10は、ポンプP−1と、膜モジュール12と、ポンプP−1から送出された原液(使用済みシリコンクーラント)を膜モジュール12に導く導入路14と、膜モジュール12で濾過された濾液が流れる濾液流出路16と、膜モジュール12で原液から濃縮された濃縮液を排出する排出路18と、を備えている。
【0043】
ポンプP−1は、原液タンク20に貯留された原液を吸引して、吐出口から吐出する。
【0044】
膜モジュール12は、細長い形状の筐体24内に中空糸膜28が設けられた構造である。中空糸膜28の内部は、筐体24の長手方向の端部にそれぞれ設けられた原液側開口24a,24bを通して筐体24の外部と連通している。すなわち、膜モジュール12は、原液が中空糸膜28内に導入される内圧式の膜モジュール12として構成されている。一方、筐体24の側面には、筐体24の内部空間(中空糸膜28の外側空間)と筐体24外部とを連通させる濾液側開口24cが形成されている。中空糸膜28を通して濾過された濾過液は、この濾液側開口24cを通して筐体24の外部に導出される。また、この濾液側開口24cを利用して、後述するように逆洗用流体を膜モジュール12内に導入することもできる。
【0045】
膜モジュール12には、液抜き手段30が設けられている。液抜き手段30は、開閉弁30aを備えており、この開閉弁30aを開放することにより、膜モジュール12内の液を排出できるように構成されている。
【0046】
導入路14には、送出路14aと第1流路14bと第2流路14cとが含まれている。送出路14aは、その一端部(上流端部)がポンプP−1の吐出口に接続されている。ポンプP−1から吐出された原液は、送出路14aに流入する。送出路14aには、流量計FLが設けられている。
【0047】
第1流路14bは、送出路14aの他端部(下流端部)に接続された一端部と、膜モジュール12の一端部(下端部)に設けられた一方の原液側開口24aに接続された他端部とを有する。第2流路14cは、送出路14aの他端部(下流端部)に接続された一端部と、膜モジュール12の他端部(上端部)に設けられたもう一方の原液側開口24bに接続された他端部とを有する。すなわち、導入路14では、送出路14aから第1流路14b及び第2流路14cに分岐している。そして、送出路14aを流れた原液は、第1流路14b又は第2流路14cに導入される。
【0048】
濾液流出路16は、一端部が膜モジュール12の濾液側開口24cに接続されている。濾液流出路16には、膜モジュール12内で濾過された濾液が流れる。濾液流出路16の他端部は、濾液の出口となる。濾液流出路16には、流体供給路38aの接続部よりも下流側に開閉弁AV−5が設けられている。
【0049】
排出路18には、第1排出路18aと第2排出路18bとが含まれている。第1排出路18aは、一端部が第2流路14cに接続されており、第1排出路18aには、第1流路14bから中空糸膜28の内部に流入した原液から濃縮された濃縮液が流れる。すなわち、後述するように、方向切換手段34が第1状態に切り換えられた場合に、第1流路14bから膜モジュール12内に導入された原液が、膜モジュール12(中空糸膜28)内で濃縮されて濃縮液となった後、第2流路14cを経由して第1排出路18aに導入される。したがって、第1排出路18aは、原液が第1流路14bから膜モジュール12内に導入される場合に、濃縮液を排出する。第1排出路18aを流れた濃縮液は、原液タンク20に戻される。
【0050】
第2排出路18bは、一端部が第1流路14bに接続されており、第2排出路18bには、第2流路14cから中空糸膜28の内部に流入した原液から濃縮された濃縮液が流れる。すなわち、後述するように、方向切換手段34が第2状態に切り換えられた場合に、第2流路14cから膜モジュール12内に導入された原液が、膜モジュール12(中空糸膜28)内で濃縮されて濃縮液となった後、第1流路14bを経由して第2排出路18bに導入される。したがって、第2排出路18bは、原液が第2流路14cから膜モジュール12内に導入される場合に、濃縮液を排出する。第2排出路18bを流れた濃縮液は、原液タンク20に戻される。
【0051】
なお、本実施形態では、第1排出路18aの他端部(下流端)と第2排出路18bの他端部(下流端)とが互いに接続された構成となっているが、これに限られない。第1排出路18a及び第2排出路18bがそれぞれ独立して、原液タンク20に濃縮液を戻す構成であってもよい。
【0052】
また、第1排出路18aが第2流路14cに接続され、第2排出路18bが第1流路14bに接続される構成に限られない。代替的に、第1排出路18a及び第2排出路18bが膜モジュール12に直接接続される構成であってもよい。
【0053】
本実施形態に係る処理装置10は、膜モジュール12内への原液の流れ方向を切り換えるための方向切換手段34と、中空糸膜28の逆洗を行うための逆洗手段38と、制御盤42と、を備えている。制御盤42の機能には、逆洗手段38及び前記方向切換手段34を制御する制御部44が含まれている。
【0054】
方向切換手段34は、第1流路14bに設けられた第1入り側開閉弁AV−1と、第2流路14cに設けられた第2入り側開閉弁AV−3と、第1排出路18aに設けられた第1出側開閉弁AV−2と、第2排出路18bに設けられた第2出側開閉弁AV−4と、を有する。本実施形態では、入り側開閉弁AV−1,AV−3及び出側開閉弁AV−2,AV−4は何れも、空気圧によって開閉するボールバルブによって構成されている。
【0055】
なお、入り側開閉弁AV−1,AV−3及び出側開閉弁AV−2,AV−4の構成はこれに限られない。例えば、入り側開閉弁AV−1,AV−3及び出側開閉弁AV−2,AV−4は、電気的信号によって開閉する電磁弁によって構成されていてもよい。
【0056】
方向切換手段34は、第1入り側開閉弁AV−1及び第2入り側開閉弁AV−3を備える構成に限られない。代替的に、方向切換手段34は、送出路14a、第1流路14b及び第2流路14cの接続部に配置された三方弁を備えていても良い。この三方弁は、送出路14aから第1流路14bに原液が流れる第1状態と、送出路14aから第2流路14cに原液が流れる第2状態とに切り換え可能な構成を有するものである。
【0057】
逆洗手段38は、逆洗用流体を流すための流体供給路38aと、流体供給路38aに設けられた逆洗用開閉弁SV−1と、を有する。逆洗用開閉弁SV−1は、電磁弁によって構成されているが、これに限られるものではなく、ボールバルブによって構成されていてもよい。
【0058】
流体供給路38aの一端部(流入端)は、逆洗用流体を流入させるための端部として構成されており、この端部に例えば図外のコンプレッサーを接続することができるように構成されている。流体供給路38aの他端部(流出端)は、濾液流出路16における開閉弁AV−5よりも上流側(膜モジュール12側)の部位に接続されている。なお、流体供給路38aの他端部(流出端)は、膜モジュール12の筐体24に直接接続されていてもよい。
【0059】
本実施形態では、逆洗用流体として空気が用いられる。膜モジュール12は、逆洗用流体が中空糸膜28に直接外圧をかけるように構成されていてもよく、あるいは、この逆洗用流体で他の流体を介して中空糸膜28に外圧をかけるように構成されていてもよい。
【0060】
濾液流出路16の開閉弁AV−5を閉じるとともに逆洗用開閉弁SV−1を開けた状態で、流体供給路38aに逆洗用流体を導入すると、逆洗用流体は膜モジュール12の内部に向かって流れる。逆洗用流体の圧力が中空糸膜28の外面に作用し、中空糸膜28を逆洗することができる。
【0061】
流体供給路38aには、フィルター38cとボールバルブ38dとが設けられている。フィルター38cは、流体供給路38a内を流れる空気中の異物を除去する。ボールバルブ38dは、処理装置10の停止時等に閉鎖され、また起動時にも一時的に閉鎖される。ボールバルブ38dは省略されていても良い。
【0062】
流体供給路38aには、ボールバルブ38dよりも上流側において、制御用流路46の一端部が接続されている。この制御用流路46の他端部は、制御盤42内に設けられた図略の制御弁に接続されている。制御用流路46内の空気圧は、制御弁のパイロット圧として用いられている。制御弁は、開閉弁AV−1〜AV−5等の開閉用の空気圧の供給切り換えに用いられる。
【0063】
制御用流路46には、フィルター46aとボールバルブ46bとが設けられている。フィルター46aは、流体供給路38a内を流れる空気中の異物を除去する。ボールバルブ46bは、処理装置10の停止時等に閉鎖され、また起動時にも一時的に閉鎖される。
【0064】
制御部44は、濾過工程を行う毎に、膜モジュール12内への原液の流れ方向を第1状態と第2状態との間で切り換えを行うように構成されている。第1状態では、第1入り側開閉弁AV−1及び第1出側開閉弁AV−2が開放されるとともに第2入り側開閉弁AV−3及び第2出側開閉弁AV−4が閉鎖された状態となる。第2状態では、第2入り側開閉弁AV−3及び第2出側開閉弁AV−4が開放されるとともに第1入り側開閉弁AV−1及び第1出側開閉弁AV−2が閉鎖された状態となる。すなわち、制御部44は、濾過工程を行う毎に、方向切換手段34が第1状態と第2状態との間で膜モジュール12内への原液の流れ方向の切り換えを行うように制御を行う。制御部44による各種開閉弁AV−1〜AV−5の開閉切り換えは、制御盤42内に設けられた図略の制御弁によって行われる。制御弁は、空気圧による制御信号を送出する。なお、制御弁による制御信号は、空気圧によるものに限られるものではない。例えば、各種開閉弁AV−1〜AV−5が電磁弁によって構成される場合には、電気的な信号によって各種開閉弁AV−1〜AV−5の開閉切り換えを行っても良い。
【0065】
制御部44は、逆洗を行う逆洗工程では、濾液流出路16の開閉弁AV−5を閉じるとともに逆洗用開閉弁SV−1を開けるように制御を行う。なお、逆洗が行われているときには、第1状態と第2状態との間で切換は行われない。一方、制御部44は、原液の濾過を行う濾過工程では、濾液流出路16の開閉弁AV−5を開放するとともに逆洗用開閉弁SV−1を閉じるように制御を行う。
【0066】
本実施形態に係る処理装置10は、第1圧力計51と、第2圧力計52と、バイパス路54とを備えている。第1圧力計51は、第1流路14bに設けられており、第1流路14bを流れる原液の圧力を検出するように構成されている。第2圧力計52は、第2流路14cに設けられており、第2流路14cを流れる原液の圧力を検出するように構成されている。第1圧力計51及び第2圧力計52は、同じ高さ位置に設置されている。
【0067】
バイパス路54は、送出路14aと排出路18とを連通している。本実施形態では、バイパス路54の一端は、第2排出路18bに接続されている。
【0068】
バイパス路54には、開閉弁54aが設けられている。本実施形態では、開閉弁54aは、開度調整可能な弁(バタフライバルブ)によって構成されている。第1圧力計51又は第2圧力計52による検出値が予め設定された圧力値よりも大きくなったときに、開閉弁54aを開放する又は開度を大きくすることにより、送出路14aの原液が膜モジュール12を迂回するように原液を排出路18に流すことができる。なお、この開閉弁54aは開度調整可能な弁に限られるものではない。
【0069】
ここで、本実施形態に係る処理装置10の運転動作、すなわち使用済みシリコンクーラント処理方法について説明する。
【0070】
表1に示すように、使用済みシリコンクーラント処理方法には、濾過工程と、切り換え工程と、安定化工程と、逆洗工程とが含まれており、これら工程が順に行われる。これら一連の工程は、繰り返し行うことができる。
【0073】
表1中に工程No.1として示す濾過工程(第1の濾過工程)では、方向切換手段34が第1状態に切り換えられる。すなわち、第1入り側開閉弁AV−1及び第1出側開閉弁AV−2が開放されるとともに第2入り側開閉弁AV−3及び第2出側開閉弁AV−4が閉鎖された状態となる。そして、濾過工程では、濾液流出路16の開閉弁AV−5が開放されるとともに、逆洗用開閉弁SV−1が閉じた状態となる。この状態でポンプP−1が駆動されると、原液タンク20から吸引されてポンプP−1から送出された原液は、図中の破線の矢印で示すように、送出路14a及び第1流路14bを流れて、図の下側の原液側開口24aを通して中空糸膜28の内部に流入する。中空糸膜28で濾過された濾液は、濾液側開口24cを通して濾液流出路16に流出し、濾液は濾液流出路16の出口から回収される。一方、中空糸膜28の内部で濃縮された濃縮液は、第2流路14cを経由して第1排出路18aに流入し、その後、原液タンク20に戻される。この濾過工程は、表2に示すように、好ましくは、5〜60分、より好ましくは、10〜30分行われる。
【0074】
濾過工程が所定の時間行われると、切り換え工程(第1の切り換え工程)となる(表1中の工程No.2)。切り換え工程では、方向切換手段34が第1状態から第2状態に切り換えられる。すなわち、第1入り側開閉弁AV−1、第1出側開閉弁AV−2及び濾液流出路16の開閉弁AV−5が閉鎖されるとともに第2入り側開閉弁AV−3及び第2出側開閉弁AV−4が開放された状態となる。なお、切り換え工程においては、ポンプP−1は停止される。
【0075】
続いて、安定化工程(第1の安定化工程)が実行される(工程No.3)。方向切換手段34が切り換えられた直後には、液の流れが安定しないため、液が安定して流れるようになるまでの工程として、安定化工程が行われる。安定化工程では、各開閉弁AV−1〜AV−5,SV−1が切り換え工程と同様の状態のままでポンプP−1が駆動される。安定化工程は、好ましくは1〜15分、より好ましくは1〜5分行われる。
【0076】
この安定化工程においては、方向切換手段34が第1状態から第2状態に切り換えられているため、原液タンク20から吸引されてポンプP−1から送出された原液は、図中の実線の矢印で示すように、送出路14a及び第2流路14cを流れて、図の上側の原液側開口24bを通して中空糸膜28の内部に流入する
。中空糸膜28の内部で濃縮された濃縮液は、第1流路14bを経由して第2排出路18bに流入し、その後、原液タンク20に戻される。
【0077】
安定化工程が所定時間行われると、逆洗工程(第1の逆洗工程)に移る(工程No.4)。逆洗工程では、逆洗用開閉弁SV−1が開放される。このとき濾液流出路16の開閉弁AV−5は閉じられたままである。このため、流体供給路38aを通して逆洗用流体としての空気が膜モジュール12の筐体24内に導入される。これにより、中空糸膜28の外面に圧力がかかる。このとき、中空糸膜28の内部には原液が流入しているため、中空糸膜28の微細孔に詰まった異物が中空糸膜28から離脱して、原液と共に膜モジュール12の外部に排出される。逆洗工程は、表2に示すように、好ましくは1〜180秒、より好ましくは1〜60秒行われる。
【0078】
逆洗工程が終了すると、濾過工程(第2の濾過工程)に移る(工程No.5)。濾過工程では、逆洗用開閉弁SV−1が閉鎖されるとともに濾液流出路16の開閉弁AV−5が開放される。この第2の濾過工程では、膜モジュール12内への原液を流入方向が第1の濾過工程と異なるが、それ以外は第1の濾過工程と同様である。
【0079】
濾過工程が終了すると、切り換え工程(第2の切り換え工程)に移る(工程No.6)。この切り換え工程では、方向切換手段34が第2状態から第1状態に切り換えられる。すなわち、第1入り側開閉弁AV−1及び第1出側開閉弁AV−2が開放されるとともに第2入り側開閉弁AV−3及び第2出側開閉弁AV−4が閉鎖された状態となる。以降、安定化工程(第2の安定化工程)、逆洗工程(第2の逆洗工程)が順次行われる(工程No.7〜8)。これらの工程でも、前回行われた各工程とは、膜モジュール12内への原液を流入方向が異なるが、それ以外は同様である。そして、再度、工程No.1に戻り、以降、各工程が繰り返される。
【0080】
前記各工程では、第1圧力計51及び第2圧力計52により、第1流路14b内の圧力及び第2流路14c内の圧力が検出されている。そして、検出された圧力が予め定められた値を超えると、制御盤42は、バイパス路54の開閉弁54aを開放する(又は開度を大きくする)。なお、開閉弁54aの操作は、制御盤42によって自動的に行うものに限られず、人為的になされてもよい。
【0081】
ここで、濾過工程が行われる毎に、膜モジュール12内への原液の流入方向が切り換えられる理由について、
図2及び
図3を参照しつつ説明する。
【0082】
図2に示すように、濾過工程において、原液が中空糸膜28の内部を下から上に向かって流れているとする。このとき、使用済みシリコンクーラントのように粘性の大きな流体では、中空糸膜28内を流れるときの圧力損失が大きいため、中空糸膜28を内側から押圧する流体圧力PLは、下部ほど大きく、上部ほど小さくなっている(
図2(a)参照)。このため、中空糸膜28の下側でより多くの濾過がなされ、微細孔に詰まる異物も中空糸膜28の下側ほど多くなる。
【0083】
原液が流れる方向を維持したまま、逆洗工程に移行すると、原液による流体圧力PLの大きな中空糸膜28の下部では、逆洗用流体による外圧POが作用し難く、原液による流体圧力の小さな中空糸膜28の上部では、逆洗用流体による外圧POがより大きく作用する(
図2(b)参照)。このため、異物の詰まりの多い下側ほど逆洗用流体の圧力(外圧PO)を作用させることができないため、逆洗を効果的に行うことができない(
図2(c)参照)。
【0084】
これに対し、
図3に示すように、濾過工程(
図3(a))から逆洗工程(
図3(b))に移行するまでに、原液の流れる方向を逆転させる場合には、異物の詰まりの多い下側ほど大きな逆洗用流体の圧力
POを作用させることができる。すなわち、原液が上から下に向かって流れるため、下側ほど原液による流体圧力PLが小さくなり、逆洗用流体の圧力
POが作用し易くなる。これにより、逆洗を効果的に行うことができる。このことは、濾過工程では、上から下に向かって原液が流れ(
図3(c))、逆洗工程では、下から上に向かって原液が流れる場合(
図3(d))も同様である。
【0085】
以上説明したように、本実施形態では、濾過が行われるときと、逆洗手段38による膜モジュール12内の中空糸膜28の逆洗が行われるときとの間に、方向切換手段34は、膜モジュール12内への原液の流れ方向の切り換えを行う。このため、例えば、ポンプP−1から送出された原液が第1流路14bから膜モジュール12の中空糸膜28の内部に流入する第1状態にあるときには、膜モジュール12で濾過された濾液は濾液流出路16から流出する一方、濃縮液は第1排出路18aから排出される。このときには、原液が膜モジュール12の一端部側から中空糸膜28の内部に流入するため、一端部側で濾過量が多く、膜面に付着する堆積物も多い。また、一端部側ほど原液の圧力PLが高く、他端部側での原液の圧力PLは低い。この状態で、逆洗が行われる前に、方向切換手段34は、膜モジュール12内への原液の流れ方向を第1状態から第2状態に切り換える。これにより、膜モジュール12で濾過された濾液が濾液流出路16から流出する一方、濃縮液は第2排出路18bから排出される。この状態では、原液が膜モジュール12の他端部側から中空糸膜28の内部に流入するため、一端部側での原液の圧力PLが低く、他端部側での原液の圧力PLが高い。このため、逆洗用流体による中空糸膜28の逆洗が行われたときには、一端部側において、より大きな外圧POが中空糸膜28の外面に作用する。したがって、堆積物の付着の多い一端部側での逆洗を効率的に行うことができる。一方、第2状態での濾過が行われた後、逆洗が行われる前に、膜モジュール12内への原液の流れ方向を第1状態に切り換えることにより、膜モジュール12の他端側での逆洗を効率的に行うことができる。
【0086】
しかも本実施形態では、濾過工程を行う毎に、膜モジュール12内への原液の流れ方向が切り換えられて、原液の濾過が行われる。このため、膜モジュール12の一端側及び他端側の双方において逆洗を効率的に行うことができる。しかも、濾過工程を行う毎に方向を切り換えるので、膜モジュール12の寿命を延ばすことができる。
【0087】
また本実施形態では、逆洗用流体として空気が用いられているので、逆洗に係るコストを抑えることができ、しかも、流体供給路38aにフィルター38cが設けられているので、流体供給路38a内に侵入した異物を除去することができる。
【0088】
また本実施形態では、第1圧力計51及び第2圧力計52が設けられているので、第1流路14b内及び第2流路14c内の原液の圧力を検出できる。そして、第1圧力計51又は第2圧力計52による検出圧力が高くなった場合に、バイパス路54の開閉弁54aを開放することにより、ポンプP−1から送出された原液をバイパス路54に流すことができる。これにより、第1流路14b又は第2流路14cの原液の圧力を下げることができる。したがって、ポンプP−1の負荷を低減することができる。
【0089】
また本実施形態では、膜モジュール12に液抜き手段30が設けられているので、中空糸膜28の交換時等に、液抜き手段30により膜モジュール12内の液を抜くことができる。
【0090】
また本実施形態では、逆洗手段38及び方向切換手段34が制御部44によって制御されるため、膜モジュール12内への原液の流れ方向を自動的に切り換えることができる。
【0091】
また本実施形態では、逆洗が行われているときに、方向切換手段34は第1状態と第2状態との間で切り換えを行わないため、逆洗を安定して行うことができる。
【0092】
なお、本発明は、前記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。例えば、前記実施形態では、ポンプP−1に繋がる送出路14aに第1流路14b及び第2流路14cが接続されているが、これに限られない。これに代え、2つのポンプP−1を備えていて、第1流路14b及び第2流路14cにそれぞれポンプP−1が接続されていてもよい。
【0093】
また前記実施形態では、制御盤42によって方向切換手段34及び逆洗手段38を制御することにより、制御盤42が開閉弁を自動的に開閉するように構成されている。代替的には、各工程の終了した後、各開閉弁が手動で開閉される構成としてもよい。すなわち、制御盤42にタイマー、表示器等が設けられていて、各工程で行われる時間が経過すると、表示器でそれを知らせる構成としてもよい。