特許第6137948号(P6137948)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6137948
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】光コネクタ
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/38 20060101AFI20170522BHJP
【FI】
   G02B6/38
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-121049(P2013-121049)
(22)【出願日】2013年6月7日
(65)【公開番号】特開2014-238503(P2014-238503A)
(43)【公開日】2014年12月18日
【審査請求日】2016年3月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100146776
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 昭則
(72)【発明者】
【氏名】青木 剛
(72)【発明者】
【氏名】青木 重憲
(72)【発明者】
【氏名】村中 秀史
(72)【発明者】
【氏名】末松 克輝
(72)【発明者】
【氏名】岩屋 光洋
【審査官】 奥村 政人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−194481(JP,A)
【文献】 特開昭64−081919(JP,A)
【文献】 米国特許第04784455(US,A)
【文献】 特開2000−098186(JP,A)
【文献】 特開2005−091764(JP,A)
【文献】 特開2004−109243(JP,A)
【文献】 特開2013−064878(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/00− 6/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバと、
前記光ファイバを実装するフェルールと、
を有し、
前記フェルールは、フェルール前部、フェルール後部、前記フェルール前部と前記フェルール後部を接続する可動機構、および前記可動機構の動きにともなう前記光ファイバの座屈を許す開口を有し、
前記可動機構は、前記可動機構と前記フェルール前部の間、および前記可動機構と前記フェルール後部の間の少なくとも一方に、前記可動機構の移動変形を規制する規制手段を有し、
前記規制手段は、前記可動機構と前記フェルール前部の間、および前記可動機構と前記フェルール後部の間に、所定幅の間隙を有し、
前記所定幅によって、前記開口内での前記光ファイバの座屈量が規定され、
前記可動機構は、
前記フェルール前部から前記フェルール後部に向かって延びる第1規制部材と、
前記フェルール後部から前記フェルール前部に向かって延びる第2規制部材と、
前記第1規制部材と前記第2規制部材を接続する梁と、
を有し、
前記第1規制部材と前記フェルール後部の間、および前記第2規制部材と前記フェルール前部の間に、前記規制手段の前記間隙が設けられる
ことを特徴とする光コネクタ。
【請求項2】
前記規制手段は、
前記第1規制部材の端部に形成される第1突起と、前記フェルール後部に形成される第1凹部、および前記第2規制部材の端部に形成される第2突起と、前記フェルール前部に形成される第2凹部、とを有し、
前記第1突起と前記第1凹部、および前記第2突起と前記第2凹部が嵌合することで、前記可動機構の移動変形が規制されることを特徴とする請求項に記載の光コネクタ。
【請求項3】
前記梁は、応力がかかっていない状態で前記第1規制部材と前記第2規制部材の間に斜めに延びることを特徴とする請求項に記載の光コネクタ。
【請求項4】
前記梁にガイドピン穴が形成されていることを特徴とする、請求項に記載の光コネクタ。
【請求項5】
前記梁に形成された前記ガイドピン穴の径は、前記フェルール後部に形成された第1ガイドピン穴の径と同じまたはそれより小さく、前記フェルール前部に形成された第2ガイドピン穴の径よりも大きいことを特徴とする請求項に記載の光コネクタ。
【請求項6】
前記梁に形成された前記ガイドピン穴は、前記第1規制部材と前記2規制部材のうち、前記開口に近い側にあるほうの側にオフセットしていることを特徴とする請求項に記載の光コネクタ。
【請求項7】
前記梁は、前記第1規制部材と前記第2規制部材を接続する一対の梁であり、前記一対の梁の間にガイドピンを通す空間が設けられていることを特徴とする請求項に記載の光コネクタ。
【請求項8】
前記フェルール前部は、相手側コネクタと接続される接続面にリセスを有し、
前記光ファイバは前記リセス内で、前記相手側コネクタの光ファイバと光結合することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の光コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スーパーコンピュータやサーバ等では、広帯域かつ低消費電力でLSI間の通信を行う光インタコネクションが注目されている。
【0003】
スーパーコンピュータやサーバ等では、演算を行うLSIが個々のボード上に配置され、複数のボードがバックプレーンに接続されている。光インタコネクションでは、ボード上のLSIで生成された電気信号は光電気変換素子で光信号に変換され、光信号が他のボードへと伝送される。他のボード上で光信号は電気信号に再変換され、電気信号がLSIで受信される。この場合、バックプレーン上またはバックプレーン内部に光伝送路が設置され、個々のボード上にも光電気変換素子からボードエッジまで光伝送路が配置される。ボードとバックプレーンは、光コネクタを介して結合される。
【0004】
ボードエッジには、バックプレーンと光接続するための光コネクタが配置される。一般に、多心の光コネクタが用いられ、システム構成上、あるいはメンテナンスのために、ボード着脱が可能なコネクタ構成が採用されている。伝送路はフェルールによって高精度に保持され、コネクタハウジング内に収容される。コネクタハウジング内でフェルール同士が嵌合する。
【0005】
光コネクタには、性能はもちろん低コスト化が強く要望される。コスト低減のために、ファイバ先端を研磨しない無研磨ファイバが有望である。無研磨の光ファイバ同士を精度よく光結合させる光コネクタ構成が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。この構成では、フェルールの変形と光ファイバの座屈により、長さばらつきを含む多心の光ファイバ同士を低損失で接続させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−194481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、フェルールの変形と光ファイバの座屈を利用した構成では、ハウジング内のフェルール同士を嵌合する際、あるいは嵌合状態にあるときに、フェルール内で座屈している光ファイバに、振動、衝撃などの外力がかかる場合がある。フェルールの嵌合方向に外力がかかると、光ファイバに規定値を超える変形が発生する。または、光ファイバの配列方向(光ファイバの光伝搬軸と直交する方向)に外力がかかると、座屈しているファイバに過剰の応力が発生し、ファイバが破損してしまう。
【0008】
そこで、本発明は、光ファイバの規定値を超える変形を抑制し、光ファイバの破損を防止することのできる光コネクタ構成を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ひとつの観点では、光コネクタは、光ファイバと、前記光ファイバを実装するフェルールと、を有し、
前記フェルールは、フェルール前部、フェルール後部、前記フェルール前部と前記フェルール後部を接続する可動機構、および前記可動機構の動きにともなう前記光ファイバの座屈を許す開口を有し、
前記可動機構は、前記可動機構と前記フェルール前部の間、および前記可動機構と前記フェルール後部の間の少なくとも一方に、前記可動機構の移動変形を規制する規制手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
光コネクタの接続時に、規定量を超える光ファイバの変形を抑制し、光ファイバの破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態の光コネクタで用いられるフェルールの構成図である。
図2図1のフェルールの可動機構の構成図である。
図3図1のフェルールに光ファイバを実装した光コネクタの構成図である。
図4】光コネクタの非嵌合時の状態を示す図である。
図5】光コネクタの嵌合時の状態を示す図である。
図6】光コネクタ同士の接続状態を示す図である。
図7図1のフェルールの変形例を示す図である。
図8】変形例の効果を説明する図である。
図9】第2実施形態の光コネクタで用いられるフェルールの構成図である。
図10図9のフェルールの可動機構のA−A'断面図である。
図11】第3実施形態の光コネクタで用いられるフェルールの構成図である。
図12図11のフェルールの可動機構のA−A'断面図である。
図13】実施形態の光コネクタが適用されるボード間光インターコネクトの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下で、図面を参照して発明の実施形態を説明する。
<第1実施形態>
【0013】
図1は、実施形態の光コネクタで用いられるフェルール10の概略構成図である。図1(A)は上面図、図1(B)は側面図、図1(C)は図1(A)のB−B'断面図、図1(D)は前面図である。
【0014】
フェルール10は、接続面19を有するフェルール前部10aと、フェルール後部10bと、開口10cと、フェルール前部10aとフェルール後部10bを接続する可動機構11とを有する。図1の例では、可動機構11は、フェルール10の挿入軸(Y軸)に対して対称な位置に1つずつ設けられている。
【0015】
フェルール前部10aとフェルール後部10bにファイバガイド穴18が形成され、開口10c内に通される光ファイバ31(図3参照)を支える支持ステップ10dがフェルール前部10aに設けられている。開口10cは、相手側コネクタとの接続時に光ファイバ31の座屈を許容する空間である。フェルール前部10aにガイドピン穴17が形成され、フェルール後部10bにガイドピン穴16と、接着剤注入口28が形成されている。
【0016】
可動機構11は、可動機構11の移動および変形を規制する規制部25a、25bを有する。規制部25aは、可動機構11とフェルール後部10bの間に設けられ、規制部25bは、可動機構11とフェルール前部10aの間に設けられる。規制部25a、25bは、フェルール10が相手側コネクタのフェルールと嵌合するとき、あるいは嵌合状態にあるときに、規定量を超える変形を抑止し、開口10c内で座屈する光ファイバ31に過剰な応力がかかることを防止する。
【0017】
可動機構11は、フェルール前部10aからフェルール後部10bに向かって延びる第1規制部材12と、フェルール後部10bからフェルール前部10aに向かって延びる第2規制部材14と、第1規制部材12と第2規制部材14の間に斜めに延びる梁13と、を有する。可動機構11は上面図でN型若しくはZ型の形状を有し、規制部25a、25bは、フェルール10のY軸方向に対して互い違いに位置する。
【0018】
図2は、図1の可動機構11の拡大図である。図2(A)は上面図、図2(B)はA−A'断面図、図2(C)は、第1規制部材12の斜視図である。規制部25aは、第1規制部材12の端部に形成された突起12aと、フェルール後部10bに形成された凹部21を含み、第1規制部材12とフェルール後部10bの間にクリアランス(空隙)Hが規定されている。規制部25bは、第2規制部材14の端部に形成された突起14aと、フェルール前部10aに形成された凹部22を含み、第2規制部材14とフェルール前部10aの間にクリアランス(空隙)Hが規定されている。
【0019】
図2(C)に示すように、第1規制部材12はフェルール10と同じ高さhを有し、厚さがtである。第1規制部材12の先端に形成される突起12aは、第1規制部材12の高さh方向に沿って延びる。突起12aは、幅w、長さl、突出量pを有する。フェルール後部10bに形成される凹部21は、突起12aに対応する溝形状を有する。同様の構成が、第2規制部材14の先端に形成された突起14aと、フェルール前部10aに形成される凹部22にも当てはまる。
【0020】
第1規制部12と第2規制部14の間に斜めに延びる梁13は、上面図で、フェルール10の挿入方向(Y軸方向)に沿った長さaと、ファイバガイド穴18の配列方向(X軸方向)に沿った長さbを有する。
【0021】
光コネクタの非接続時には、規制部25a、25bの各々で、クリアランスHが間隔dで存在する。
【0022】
光コネクタの接続時には、突起12aが凹部21と嵌合し、突起14aが凹部22と嵌合して、クリアランスHがなくなる。クリアランスHがなくなると、可動機構11はそれ以上、移動変形ができなくなる。このとき、梁13は応力により変形している。
【0023】
梁13にはガイドピン穴15が形成されている。ガイドピン穴15の径は、フェルール後部10bに形成されたガイドピン穴16の径と同じかそれより小さく、フェルール前部10aに形成されたガイドピン穴17の径よりも大きい。光コネクタの接続時に、可動機構11の梁13が撓んでもガイドピンが適正位置にあるように、ガイドピン穴15の径はフェルール前部10aに形成されたガイドピン穴17の径よりも大きく設定されている。
【0024】
図3は、図1のフェルール10に光ファイバ31を実装した光コネクタ1の概略図である。図3(A)は光コネクタ1の上面図、図3(B)は側面図、図3(C)は図3(A)のC−C'断面図、図3(D)は前面図である。
【0025】
光コネクタ1は複数の光ファイバ31を実装する多心コネクタである。並列に並べられた光ファイバ31は、先端部を除いてテープ被覆32により一体的に保持され、光伝送路33を形成する。光伝送路33は接着剤35で固定されている。各光ファイバ31は、対応するファイバガイド穴18(図1参照)に挿入され、先端部はフェルール前部10aのファイバ支持ステップ10dで支持される。光ファイバ31は無研磨ファイバであり、先端部は長さばらつきを含んでいる。この長さばらつきは、光コネクタ1の接続時にフェルール10の開口10c内で吸収される。
【0026】
図4は、光コネクタ1の非接続時の概略図、図5は光コネクタ1の接続時の概略図である。図4(A)、図5(A)は上面図、図4(b)、図5(b)は側面図、図4(c)、図5(c)は、D−D'断面図である。
【0027】
図4の非接続時には、規制部25a、25bにおいて、間隔dのクリアランスHが存在する。この状態で、光ファイバ31は、フェルール10の内部でまっすぐに伸びている。
【0028】
図5の接続時には、規制部25a、25bにおいて、突起12aと凹部21、突起14aと凹部22がそれぞれ嵌合するため(図3参照)、クリアランスHがなくなる。光ファイバ31の先端は相手側コネクタの光ファイバに突き当たってPC(Physical Contact)接続される。光ファイバ31に長さばらつきがあっても、光ファイバ31はフェルール10の開口10c内で撓む(座屈する)ため、すべての光ファイバ31がPC接続する。
【0029】
図6は、光コネクタ1Aと光コネクタ1Bの接続状態を示す。光コネクタ1Aは、ガイドピン41を有する。ガイドピン41はピンキーパー42によって保持されている。光コネクタ1Aの接続時に、ガイドピン41の先端は、相手側光コネクタ1Bのガイドピン穴17に挿入される。
【0030】
光コネクタ1Aと光コネクタ1Bが互いに相手に対して押圧されるため、可動機構11の梁13が撓む。光コネクタ1Aのフェルール後部10bのガイドピン穴16と梁13のガイドピン穴15の径は、ガイドピン41の径よりも大きく形成されているため、ガイドピン41によって光コネクタ1Aと光コネクタ1Bは正確に位置決めされる。
【0031】
光コネクタ1Aと光コネクタ1Bの光ファイバ31はPC接続し、フェルール10の高さ方向に撓む。この状態で外部から不測の応力がかかっても、可動機構11の動きは規制部25a、25bによって規制されているので、光ファイバ31が規制値を超えて座屈することを防止できる。
【0032】
図6の接続状態で、梁13、規制部材12、14のいずれの部分でも、内部に応力が分散しており、材料の特性との関係で、降伏や破損が発生しない設計となっている。さらに突起12aと凹部21、突起14aと凹部22が嵌合しているため、ファイバ配列方向に外力が加わった場合でも、フェルール10が安定する。
【0033】
したがって、光コネクタ1を接続する際、および接続された状態で、フェルール10の内部で座屈している光ファイバ31に過剰な力が印加されて光ファイバ31が破損することを抑制できる。
【実施例1】
【0034】
上記構成の具体的な作製例を説明する。光コネクタ1の外形は、標準の多心光コネクタであるMTコネクタと同寸法とする。
【0035】
図2を参照すると、可動機構11の規制部25aと25bの各々において、第1規制部材12と第2規制部材の高さhは2.5mm、厚さtは400μmである。
【0036】
第1規制部材12とフェルール後部10bとの間のクリアランス間隔d、および第2規制部材14とフェルール前部10aとの間のクリアランス間隔dは、それぞれ100μmである。
【0037】
クリアランスH内に突き出る第1規制部材12の突起12aと、第2規制部材14の突起14aの突出量pは50μmである。突起12a、14aの縦方向の長さlは1mm、幅wは200μmである。凹部21、22の深さは50μm、長さは1.01mm、幅は201μmである。
【0038】
梁13の上面のフェルール挿入方向(Y軸方向)の長さaは1mm、ファイバガイド穴18の配列方向(X軸方向)の長さbは700μmである。梁13の、フェルール10の高さ方向hに沿った高さは1.5mmである。第1規制部材12と第2規制部材14に対する梁13の傾斜角は、45°とする。
【0039】
フェルール前部10aに形成されるガイドピン穴17の直径は、接続面19から内部へ2〜4mmまでは、MTコネクタのガイドピン穴とほぼ同じ直径の701μmである。それより後ろの部分の直径、フェルール後部10bに形成されるガイドピン穴16の直径、および梁13に形成されるガイドピン穴15の直径は、それぞれ800μmとする。
【0040】
梁13に形成されるガイドピン穴15は、図2(B)に示すように、フェルール10の内側(開口10c)側にややオフセットしている。図1のように、N型(もしくはZ型)の可動機構11の場合、梁13に形成されたガイドピン穴15は、可動機構11の移動に伴って第1規制部材12と第2規制部材14が変形する間、ガイドピン側(フェルールの外側)に変形する。ガイドピン41とフェルール10とが接触すると摩擦抵抗が生じ、フェルール10の本体は所望のバネ定数を示さなくなってしまう。これを回避するために、フェルール後部10bに形成するガイドピン穴16と、梁13に形成するガイドピン穴15の径を、ガイドピン41の径よりも100μm程度大きくする。これに対し、フェルール前部10aに形成されるガイドピン穴17は、相手側コネクタの光ファイバとの位置決めの要請から、ガイドピン41の径よりも1μmだけ大きくしてある。
【0041】
フェルール10は、射出成形で作製することができる。材料は、エンジニアリングの一例として、オレフィン系樹脂を用いる。材料はこれに限らず、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリアセタール(POM)、変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)非晶ポリアリレート(PAR)、 ポリエーテルサルフォン(PES)、 ポリフェニレンスルファイド(PPS)、 ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、 ポリイミド(PI)(Polyimide)、 ポリエーテルイミド(PEI)等、材料の機械特性に合わせて設計を行えばよい。
【0042】
フェルール10に、12本の光ファイバ31を実装する。12心テープファイバ33を用いて、テープファイバ33の先端の被覆32を除去し、個別の光ファイバ31を露出する。各光ファイバ31を独立した状態でフェルール10のファイバガイド穴18へ挿入した後、根本で接着剤35により固定する。
【0043】
光ファイバ31は、一般的な125μm径のシングルモードファイバやマルチモードファイバであるが、これに限定されず、細径ファイバや太径ファイバ、HPCF(Hard Plastic Clad Fiber)、POF(Plastic Optical Fiber)等も使用可能である。
【0044】
通常のMTフェルールと同様に、光ファイバ31はフェルール10のどの部分とも干渉しない。光ファイバ31の先端はファイバカッター、レーザ加工およびアーク等により処理される。光ファイバ31の先端は無研磨であるが、本願記載のコネクタ以外の他のMTコネクタに実装された光ファイバや、PMTコネクタに収納されたフィルム導波路とも接続可能である。
【0045】
光コネクタ1の非接続時には、各光ファイバ31は、フェルール前部10aの接続面19から、ファイバガイド穴18の内部にわずかに引っ込んだ位置に収容される。光ファイバ31のばらつき、および接続面19からの後退位置は、可動機構11の移動変形範囲である100μm(クリアランス間隔d)以内であればよい。
【0046】
光コネクタの接続時に、光ファイバ31は、ファイバガイド穴18からわずかに突き出して、相手方コネクタの光ファイバとPC接続する。このとき、可動機構11の規制部25a、25bにより光ファイバ31の軸方向への過剰な応力印加が抑制されるのは、上述したとおりである。光ファイバ31の配列方向に外力が印加された場合でも、光ファイバ31をフェルール10内に安定保持できることも上述のとおりである。
【変形例1】
【0047】
図7は、図1のフェルール10の変形例1であるフェルール40を示す。フェルール40の基本構成は、可動機構11の構成を含めて図1のフェルール10と同じであり、重複する説明を省略する。また、図示はしないが、図7(A)のA−A'断面構成は、図2と同様である。
【0048】
フェルール40は、フェルール前部40aの光ファイバ穴18の配列位置に、リセス40eを有する。図8(A)に示すように、光コネクタ1Aと光コネクタ1Bが接続される場合に、ガイドピン穴およびファイバガイド穴18のわずかなオフセット(製造誤差)があると、光ファイバ31Aと光ファイバ31Bのいずれもが、接続面49から突き出ることができない場合がある。その結果、光ファイバ31A、31Bの端面角度が座屈荷重でPC接続が可能な許容角度であるにもかかわらず、光ファイバ31Aと光ファイバ31Bの間に隙間Gが生じてPC接続できないケースがあり得る。
【0049】
そこで、図8(B)に示すように、フェルール40の接続面49のファイバガイド穴18の位置にリセス40eを形成する。リセス40eを設けることで、ファイバガイド穴18同士にわずかなオフセットがあっても、光ファイバ31A、31BがPC接続することができる。
<第2実施形態>
【0050】
図9は、第2実施形態の光コネクタで用いられるフェルール50の構成図である。図9(A)は上面図、図9(B)は側面図、図9(C)は図9(A)のE−E'断面図、図9(D)は前面図である。
【0051】
フェルール50は、可動機構51を有する。可動機構51は、第1規制部材12と、第2規制部材14の間に斜めに延びる一対の梁53a、53bを有する。
【0052】
梁53a、53bは、図2の構成と異なり、ガイドピンの挿入位置に妨げないように、フェルール50の高さh方向の上下に分けて配置されている。図9の例では、梁53aはフェルール50の高さ方向の下側に配置され、梁53bはフェルール50の高さ方向の上側に配置される。ガイドピンは梁53aと梁53bの間を通過するので、図2の構成と異なり、梁53a、53bにガイドピン穴を形成する必要はない。
【0053】
図10は、図9の梁53aで切ったA−A'断面図である。梁53aは、ガイドピン位置Pの下方で、第1規制部材52と第2規制部材54に接続されている。梁53bは、図9(B)および図9(C)に示すように、ガイドピン位置の上方で、第1規制部材52と第2規制部材54に接続されている。梁53aと53bの間にガイドピンを通す構成とすることで、可動機構51が変形しやすくなる。
【0054】
可動機構51の規制部25a、25bの構成は、図2と同様である。可動機構51が変形しやすくても、規制部25a、25bが可動機構51の移動、変形を規制して、規定値を超える応力が光ファイバにかからないように制御する。したがって、第1実施形態と同様の光ファイバの破損抑制効果が得られる。
<第3実施形態>
【0055】
図11は、第3実施形態の光コネクタで用いられるフェルール60の構成図である。図11(A)は上面図、図11(B)は側面図、図11(C)は図11(A)のF−F'断面図、図11(D)は前面図である。
【0056】
フェルール60は、フェルール前部60aと、フェルール後部60bと、開口60cを有する。フェルール前部60aにファイバガイド穴18とガイドピン穴67が形成され、フェルール後部60bにファイバガイド穴18とガイドピン穴66が形成されている。
【0057】
フェルール前部60aとフェルール後部60bの間に、可動機構61が設けられる。可動機構61は、フェルール60の挿入軸(Y軸)に対して対称な位置に1つずつ設けられている。可動機構61は、第1規制部材62と、第2規制部材64と、第1規制部材62と第2規制部材64の間に斜めに延びる梁63とを有する。この例では、第1規制部材62は、フェルール60の高さh方向の下側で、フェルール前部60aからフェルール後部60bに向かって延びる。第2規制部材64は、フェルール60の高さh方向の上側で、フェルール後部60bからフェルール前部60aに向かって延びる。
【0058】
可動機構61は、規制部75a、75bを有する。規制部75aは、第1規制部材62の先端に形成された突起62aと、フェルール後部60bに形成された凹部81を含む。規制部75bは、第2規制部64の先端に形成された突起64aと、フェルール前部60aに形成された凹部82を含む。第3実施形態では、突起62a、64aと、凹部81、82は、光ファイバ(もしくはファイバガイド穴18)の配列方向に沿って延びる。
【0059】
梁63は、図11(C)の垂直断面図に示すように、下側の第1規制部材62と上側の第2規制部材の間を斜めに接続する。梁63にガイドピン穴65が形成されている。
【0060】
図12(A)は、図11(A)のA−A'断面図である。第1規制部材62と第2規制部材64の間に延びる1枚の梁63にガイドピン穴65が形成されている。ガイドピン穴65の径は、フェルール後部60bに形成されたガイドピン穴66の径と同等またはそれより小さく、フェルール前部60aに形成されたガイドピン穴67の径よりも大きい。
【0061】
図12(B)は、梁63の変形例である。変形例では、第1規制部材62と第2規制部材64の間に、一対の梁73aと梁73bが平行に延びる。梁73a、73bは、図11(C)に示すように第1規制部材62と第1規制部材64の間に斜めに延び、間にガイドピンを通す空間を形成する。
【0062】
ガイドピンは、点線のサークルPで示す位置で、梁73aと梁73bの間を通過する。したがって梁73a、73bにガイドピン穴を形成する必要はない。また薄い梁73a、73bを用いるので、可動機構61の移動、変形が容易である。他方、規制部75a、75bによって過剰な移動、変形を抑制する。
【0063】
図13は、実施例および変形例の光コネクタを適用した光インターコネクト100の概略図である。バックプレーンボード101に光伝送路103が形成され、所定の箇所に光コネクタ102が配置されている。
【0064】
バックプレーンボード101には、複数のボード110が並列接続されている。ボード110上には、LSI120、メモリ115、光電気変換モジュール117等の電子部品が配置されている。ボード110のエッジに光コネクタ112が配置される。光コネクタ112と光電気変換モジュール117の間に光伝送路113が形成され、光電気変換モジュール117とLSI120やメモリ115の間に電気配線116が形成されている。
【0065】
各ボード110は、光コネクタ112と光コネクタ102によって、バックプレーンボード101に対して着脱可能に接続されている。システム拡張時やボード110の保全時に、バックプレーンボード101からボード110をはずすときは、光コネクタ102と112を切り離す。
【0066】
光コネクタ102、112において、実施例および変形例のフェルール10、40、50、60のいずれの構成を採用してもよい。いずれの構成でも、ボード110の着脱時にフェルールの挿入方向および光ファイバの配列方向に過剰の荷重が加わった場合でも、光ファイバ31に対する規定変形量(たとえば100μm)を超える外力の印加を防止することができる。また、本発明のコネクタと既存のMTコネクタ、PMTコネクタとの接続構成としてもよい。
【0067】
上記の第1実施形態〜第3実施形態の構成は任意で組み合わせることが可能である。また、変形例1のリセス構造(図7参照)を第2実施形態、第3実施形態のフェルールに適応してもよい。実施形態では、規制部25a,25bを、可動機構11とフェルール後部10bの間、および可動機構11とフェルール前部10aの間のそれぞれに配置したが、いずれか一方に設けてもよい。もっとも、ファイバ配列方向への応力の抑制を確実にする観点からは、規制部25a、25bの両方を設けるのが望ましい。また、フェルール10、40、50、60を図示しないハウジング内に収納し、フェルール同士をハウジング内で嵌合させてもよい。
【0068】
以上の説明に対し、以下の付記を提示する。
(付記1)
光ファイバと、
前記光ファイバを実装するフェルールと、
を有し、
前記フェルールは、フェルール前部、フェルール後部、前記フェルール前部と前記フェルール後部を接続する可動機構、および前記可動機構の動きにともなう前記光ファイバの座屈を許す開口を有し、
前記可動機構は、前記可動機構と前記フェルール前部の間、および前記可動機構と前記フェルール後部の間の少なくとも一方に、前記可動機構の移動変形を規制する規制手段を有することを特徴とする光コネクタ。
(付記2)
前記規制手段は、前記可動機構と前記フェルール前部の間、および前記可動機構と前記フェルール後部の間に、所定幅の間隙を有し、
前記所定幅によって、前記開口内での前記光ファイバの座屈量が規定されることを特徴とする付記1に記載の光コネクタ。
(付記3)
前記可動機構は、
前記フェルール前部から前記フェルール後部に向かって延びる第1規制部材と、
前記フェルール後部から前記フェルール前部に向かって延びる第2規制部材と、
前記第1規制部材と前記第2規制部材を接続する梁を有し、
前記第1規制部材と前記フェルール後部の間、および前記第2規制部材と前記フェルール前部の間に、前記規制手段の前記間隙が設けられることを特徴とする付記2に記載の光コネクタ。
(付記4)
前記規制手段は、
前記第1規制部材の端部に形成される第1突起と、前記フェルール後部に形成される第1凹部、および前記第2規制部材の端部に形成される第2突起と、前記フェルール前部に形成される第2凹部、とを有し、
前記第1突起と前記第1凹部、および前記第2突起と前記第2凹部が嵌合することで、前記可動機構の前記変形が規制されることを特徴とする付記3に記載の光コネクタ。
(付記5)
前記第1突起と前記第1凹部、および前記第2突起と前記第2凹部は、前記フェルールの高さ方向に沿って形成されていることを特徴とする付記4に記載の光コネクタ。
(付記6)
前記第1突起と前記第1凹部、および前記第2突起と前記第2凹部は、前記フェルールに実装される前記光ファイバの配列方向に沿って形成されていることを特徴とする付記4に記載の光コネクタ。
(付記7)
前記梁は、前記第1規制部材と前記第2規制部材の間に斜めに延びることを特徴とする付記3に記載の光コネクタ。
(付記8)
前記梁にガイドピン穴が形成されていることを特徴とする付記3に記載の光コネクタ。
(付記9)
前記梁に形成された前記ガイドピン穴の径は、前記フェルール後部に形成された第1ガイドピン穴の径と同じまたはそれより小さく、前記フェルール前部に形成された第2ガイドピン穴の径よりも大きいことを特徴とする付記8に記載の光コネクタ。
(付記10)
前記梁に形成された前記ガイドピン穴は、前記第1規制部材と前記2規制部材のうち、前記開口に近い側にあるほうの側にオフセットしていることを特徴とする付記8に記載の光コネクタ。
(付記11)
前記梁は、前記第1規制部材と前記第2規制部材を接続する一対の梁であり、前記一対の梁の間にガイドピンを通す空間が設けられていることを特徴とする付記3に記載の光コネクタ。
(付記12)
前記フェルール前部は、相手側コネクタと接続される接続面にリセスを有し、
前記光ファイバは前記リセス内で、前記相手側コネクタの光ファイバと光結合することを特徴とする付記1〜11のいずれかに記載の光コネクタ。
(付記14)
前記可動機構は、上面または垂直断面の形状がN型もしくはZ型であることを特徴とする付記1〜12のいずれかに記載の光コネクタ。
(付記14)
前記フェルール前部は、前記光ファイバを通すファイバガイド穴を有し、
前記光ファイバは、前記光コネクタの非接続時には、前記光コネクタの接続面から前記ファイバガイド穴の内側に後退していることを特徴とする付記1〜13のいずれかに記載の光コネクタ。
【符号の説明】
【0069】
1、1A,1B 光コネクタ
10、40、50、60 フェルール
10a、40a、50a、60a フェルール前部
10b、40b、50b、60b フェルール後部
10c、40c、50c、60c フェルール開口
11、41、51、61 可動機構
12、52、62 第1規制部材
12a、52a、62a 突起
13、53a、53b、63、73a、73b 梁(変形部)
14、54、64 第2規制部材
14a、54a、64a 突起
15、65 ガイドピン穴(梁)
16、66 ガイドピン穴(フェルール後部の)
17、67 ガイドピン穴(フェルール前部の)
18 ファイバガイド穴
19 接続面
21、22、81、82 凹部
25a、25b、75a、75b 規制部
28 接着剤注入口
31 光ファイバ
32 テープ被膜
33 テープファイバ
35 接着剤
40e リセス
41 ガイドピン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13