(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電極を有するデバイスが形成された基板を載置してモータによって移動可能な載置台と、該載置台に対向するように配置されるプローブカードとを備え、前記デバイスの電極に対応して測定用電極が配置され、前記プローブカードは前記測定用電極と係合可能なプローブを有し、前記デバイスの電気的特性を測定する際に前記モータは前記載置台を移動させないようにトルクを発生する基板検査装置におけるデバイス検査方法であって、
前記プローブを前記測定用電極に係合させる電極係合ステップと、
前記電極係合ステップの後であって、前記デバイスの電気的特性を測定する際に、前記プローブ及び前記測定用電極の係合時の位置ずれに起因して生じ、且つ前記測定用電極に作用する移動力を打ち消すように前記モータがトルクを発生する移動力調整ステップと、
前記移動力調整ステップの後であって、前記デバイスの電気的特性を測定する際に前記モータが発生するトルクの最大値を所定値以下に制限するトルク制限ステップとを有し、
前記移動力調整ステップでは、前記移動力を打ち消すようにトルクを発生する前記モータに生じる負荷と基準値とを比較し、前記負荷が前記基準値よりも大きければ、前記移動力を減少させるように前記載置台を移動させ、
前記トルク制限ステップでは、前記モータが発生するトルクの最大値を前記基準値よりも大きく且つ当該基準値よりも大きい前記所定値以下に制限することを特徴とするデバイス検査方法。
前記電極係合ステップの後であって、前記デバイスの電気的特性を測定する前において、前記プローブを前記測定用電極に係合させる際に生じた前記測定用電極へ作用する移動力を一定値以下に制限するように前記載置台を移動させることを特徴とする請求項1又は2記載のデバイス検査方法。
前記測定用電極は電極パッド又は半田バンプであり、前記プローブは前記測定用電極に係合可能な突起状部材からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のデバイス検査方法。
前記載置台は水平面内において互いに直交する2方向のそれぞれに関して移動可能に構成され、前記基板検査装置は前記2方向のそれぞれに対応する前記モータを有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のデバイス検査方法。
【背景技術】
【0002】
基板としての半導体ウエハ(以下、単に「ウエハ」という。)Wに形成された半導体デバイス、例えば、パワーデバイスやメモリの電気的特性を測定する装置としてプローバが知られている。
【0003】
プローバは、
図12に示すような多数のカンチレバータイプのプローブ針110を有する円板状のプローブカード111を備え、
図13に示すように、プローブカード111の各プローブ針110を半導体デバイスの各電極に対応して配置された測定用電極である電極パッド120に接触させ、各プローブ針110から電極パッド120へ検査電流を流すことによって半導体デバイスの電気的特性を測定する(例えば、特許文献1参照。)。このとき、ウエハWは、例えば、リニアモータによって移動可能なステージに載置され、ステージが移動することにより、プローブカード111の各プローブ針110が各電極パッド120へ正対する。
【0004】
ところで、従前のウエハでは半導体デバイスの集積度がさほど高くなかったため、半導体デバイスの各電極に対応して比較的大きな平板状の電極パッド120を配置することが可能であったが、近年、半導体デバイスの集積度が高くなったため、半導体デバイスの電極の数も増え、各電極に対応して電極パッド120を配置するのが困難となっている。
【0005】
これに対応して、ウエハWにおいて、平板状の電極パッド120の代わりに、
図14(A)に示すような比較的小さな半球状の半田バンプ130を半導体デバイスの各電極に対応して高密度に、例えば、1つのデバイスあたりに1万個以上ほど配置すること(
図14(B))が行われているが、カンチレバータイプのプローブ針110は小型化に限界があり、配置の高密度化には困難が伴うため、多数のプローブ針110を高密度にプローブカード111へ配置するのは困難である。
【0006】
そこで、プローブカード111においてカンチレバータイプのプローブ針110の代わりに先端に突起状の係合部140が設けられて下方に突出する筒状のプローブ電極141を配置し、ウエハWをプローブカード111に接近させ(
図15(A))、プローブ電極141を半田バンプ130へ当接させた(
図15(B))後、係合部140を半田バンプ130へ押入してプローブ電極141を半田バンプ130へ係合させる(
図15(C))。これにより、プローブ電極141と半田バンプ130の接触を維持する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、プローブ電極141を半田バンプ130へ当接させる際、半田バンプ130とプローブ電極141の微少位置ずれに起因する反力がプローブカード111へ作用し、若しくは、半導体デバイスの電気的特性を測定する際に流した電流に起因する発熱によってプローブカード111が熱膨張してプローブカード111がウエハWの表面に沿うように移動することがある(
図15(C)中の黒矢印参照。)。
【0009】
このとき、各半田バンプ130にはプローブカード111の移動に追従するように移動力(
図15(C)中の白矢印参照。)が作用する一方で、リニアモータがステージを移動させないように作動する。すなわち、リニアモータは移動力を打ち消すようにトルクを発生するため、リニアモータには負荷が生じる。例えば、1つのデバイスにつき30kgf以上の移動力が生じることがあり、リニアモータが移動力を打ち消すようにトルクを発生する際に結果としてリニアモータが過負荷に陥り、場合によっては破損するおそれがある。
【0010】
本発明の目的は、ステージ移動用のモータの負荷を一定値以下に制限することができるデバイス検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、請求項1記載のデバイス検査方法は、電極を有するデバイスが形成された基板を載置してモータによって移動可能な載置台と、該載置台に対向するように配置されるプローブカードとを備え、前記デバイスの電極に対応して測定用電極が配置され、前記プローブカードは前記測定用電極と係合可能なプローブを有し、前記デバイスの電気的特性を測定する際に前記モータは前記載置台を移動させないようにトルクを発生する基板検査装置におけるデバイス検査方法であって、前記プローブを前記測定用電極に係合させる電極係合ステップと、前記電極係合ステップの後であって、前記デバイスの電気的特性を測定する際に
、前記プローブ及び前記測定用電極の係合時の位置ずれに起因して生じ、且つ前記測定用電極に作用する移動力を打ち消すように前記モータがトルクを発生する移動力調整ステップと、前記移動力調整ステップの後であって、前記デバイスの電気的特性を測定する際に前記モータが発生するトルクの最大値を所定値以下に制限するトルク制限ステップとを有
し、前記移動力調整ステップでは、前記移動力を打ち消すようにトルクを発生する前記モータに生じる負荷と基準値とを比較し、前記負荷が前記基準値よりも大きければ、前記移動力を減少させるように前記載置台を移動させ、前記トルク制限ステップでは、前記モータが発生するトルクの最大値を前記基準値よりも大きく且つ当該基準値よりも大きい前記所定値以下に制限することを特徴とする。
【0012】
請求項2記載のデバイス検査方法は、請求項1記載のデバイス検査方法において、前記デバイスの電気的特性を測定した後、前記トルクの最大値の制限を解除することを特徴とする。
【0013】
請求項3記載のデバイス検査方法は、請求項1又は2記載のデバイス検査方法において、前記電極係合ステップの後であって、前記デバイスの電気的特性を測定する前において、前記プローブを前記測定用電極に係合させる際に生じた前記測定用電極へ作用する移動力を一定値以下に制限するように前記載置台を移動させることを特徴とする。
【0014】
請求項4記載のデバイス検査方法は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のデバイス検査方法において、前記測定用電極は電極パッド又は半田バンプであり、前記プローブは前記測定用電極に係合可能な突起状部材からなることを特徴とする。
【0015】
請求項5記載のデバイス検査方法は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のデバイス検査方法において、前記載置台は水平面内において互いに直交する2方向のそれぞれに関して移動可能に構成され、前記基板検査装置は前記2方向のそれぞれに対応する前記モータを有することを特徴とする。
【0016】
請求項6記載のデバイス検査方法は、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のデバイス検査方法において、前記所定値は前記モータの定格出力の100%以下であることを特徴とする。
【0017】
請求項7記載のデバイス検査方法は、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のデバイス検査方法において、前記モータはレールに対して相対的に移動するリニアモータであることを特徴とする。
【0018】
請求項8記載のデバイス検査方法は、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のデバイス検査方法において、前記モータはボールネジを介して前記載置台を移動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、プローブを測定用電極に係合させた後であって、デバイスの電気的特性を測定する際に、載置台を移動させないようにトルクを発生するモータが発生するトルクの最大値を所定値以下に制限するので、プローブカードが熱膨張し、当該熱膨張に起因して測定用電極に作用する移動力が所定値を上回った場合、モータは載置台の移動を許容する。これにより、プローブと対応する測定用電極の微少位置ずれに起因する反力を打ち消すことができるとともに、モータには所定値に相当する負荷以上の負荷は生じず、その結果、載置台移動用のモータの負荷を一定値以下に制限することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1は、本実施の形態に係るデバイス検査方法が実行される基板検査装置としてのプローバの構成を概略的に説明する斜視図である。
【0023】
図1において、プローバ10(基板検査装置)は、ウエハWを載置するステージ11(載置台)を内蔵する本体12と、該本体12に隣接して配置されるローダ13と、本体12を覆うように配置されるテストヘッド14とを備え、大口径、例えば、直径が300mmや450mmのウエハWに形成された複数の半導体デバイスの電気的特性の測定を行う。
【0024】
本体12は内部が空洞の筐体形状を呈し、天井部12aにはステージ11に載置されたウエハWの上方において開口する開口部12bが設けられ、該開口部12bには、略円板状のプローブカードホルダ16が係合し、プローブカードホルダ16は円板状のプローブカード17を保持する(いずれも後述の
図2(A)参照)。これにより、プローブカード17はウエハWと対向する。ウエハWはステージ11に対する相対位置がずれないように該ステージ11へ真空吸着される。また、ウエハWに形成された複数の半導体デバイスの各々では、当該半導体デバイスの各電極に対応して半田バンプ27(後述の
図5(A)参照。)が配置される。
【0025】
テストヘッド14は方体形状を呈し、本体12上に設けられたヒンジ機構15によって上方向へ回動可能に構成される。テストヘッド14が本体12を覆う際、該テストヘッド14はコンタクトリング(図示しない)を介してプローブカード17と電気的に接続される。また、テストヘッド14はプローブカード17から伝送される半導体デバイスの電気的特性を示す電気信号を測定データとして記憶するデータ記憶部や該測定データに基づいて検査対象のウエハWの半導体デバイスの電気的な欠陥の有無を判定する判定部(いずれも図示しない)を有する。
【0026】
ローダ13は、搬送容器であるFOUP(図示しない)に収容される、半導体デバイスが形成されたウエハWを取り出して本体12のステージ11へ載置し、また、半導体デバイスの電気的特性の測定が終了したウエハWをステージ11から除去してFOUPへ収容する。
【0027】
プローブカード17におけるウエハWと対向する対向面にはウエハWの半導体デバイスの半田バンプ27に対応して複数のプローブ電極28(後述の
図5(A)参照。)が配置される。ステージ11はプローブカード17及びウエハWの相対位置を調整して半導体デバイスの半田バンプ27を各プローブ電極28へ当接させる。
【0028】
半導体デバイスの半田バンプ27を各プローブ電極28へ当接する際、テストヘッド14はプローブカード17の各プローブ電極28を介して半導体デバイスへ検査電流を流し、その後、プローブカード17は半導体デバイスの電気的特性を示す電気信号をテストヘッド14のデータ記憶部に伝送し、該データ記憶部は伝送された電気信号を測定データとして記憶し、判定部は記憶された測定データに基づいて検査対象の半導体デバイスの電気的な欠陥の有無を判定する。
【0029】
図2は、
図1におけるステージの移動機構の構成を概略的に示す図であり、
図2(A)は移動機構の斜視図であり、
図2(B)は
図2(A)の移動機構におけるY方向モータやX方向モータの構成を概略的に示す側面図であり、
図2(C)は
図2(A)の移動機構におけるY方向モータやX方向モータの変形例の構成を概略的に示す側面図である。
【0030】
図2(A)において、ステージ11の移動機構18は、図中に示すY方向に沿って移動するY方向ステージ19と、同図中に示すX方向に沿って移動するX方向ステージ20と、同図中に示すZ方向に沿って移動するZ方向移動部21とを有する。なお、図中においてX方向、Y方向及びZ方向は互いに直交する。
【0031】
Y方向ステージ19はY方向に配置されたレール22に沿ってY方向モータによって高精度に駆動され、X方向ステージ20はX方向に配置されたレール23に沿ってX方向モータによって高精度に駆動される。また、ステージ11は、Z方向移動部21の上において、図中に示すθ方向に移動自在に配置され、該ステージ11上にウエハWが載置される。
【0032】
Y方向モータやX方向モータは、
図2(B)に示すように、Y方向ステージ19やX方向ステージ20に取り付けられたコイル33と、該コイル33に対向し、且つレール22,23に沿って交互に配列されたN極の永久磁石及びS極の永久磁石からなる磁石列34とを有するリニアモータによって構成されるが、
図2(C)に示すように、Y方向ステージ19やX方向ステージ20に取り付けられたナット37と、該ナット37と螺合し、レール22,23と平行に配置され、且つ回転モータ35によって軸回りに回転するボールネジ36とを有するボールネジ式のモータから構成されていてもよい。
【0033】
移動機構18では、Y方向ステージ19、X方向ステージ20及びZ方向移動部21が協働してウエハWをプローブカード17と対向する位置に移動させ、さらに、ウエハWに形成された半導体デバイスの半田バンプ27をプローブカード17の各プローブ電極28へ当接させる。
【0034】
プローバ10の各構成要素の動作は、該プローバ10が内蔵するコントローラ29(
図1参照。)が所定のプログラム等に従って制御する。
【0035】
次に、本実施の形態に係るデバイス検査方法について説明する。
【0036】
図3は、本実施の形態に係るデバイス検査方法を示すフローチャートである。本デバイス検査方法はコントローラ29が実行する。
【0037】
まず、Y方向ステージ19及びX方向ステージ20によってプローブカード17及びウエハWの相対位置を調整してプローブカード17の各プローブ電極28をウエハWにおける検査対象の半導体デバイスの各半田バンプ27に正対させ、その後、Z方向移動部21によって各半田バンプ27を各プローブ電極28へ当接させる(ステップS301)。
【0038】
次いで、Y方向ステージ19及びX方向ステージ20によって移動力調整処理を行う(ステップS302)。
【0039】
図4は、
図3におけるステップS302で実行される移動力調整処理を示すフローチャートである。
図4の移動力調整処理はプローバ10のコントローラ29が実行する。
【0040】
図4において、まず、半導体デバイスの半田バンプ27を各プローブ電極28へ当接させたときにX方向モータに生じる負荷を測定する(ステップS401)。
【0041】
ここでは、
図5(A)に示すように、Z方向移動部21により、複数の半球状の半田バンプ27が配置されたウエハWを、先端に突起状の係合部30が設けられて下方に突出する複数の円柱状のプローブ電極28が配置されたプローブカード17へ接近させ、これにより、各プローブ電極28を各半田バンプ27へ当接させて各係合部30を半田バンプ27へ押入させ、結果として、各プローブ電極28を各半田バンプ27へ係合させる(電極係合ステップ)。このとき、プローブ電極28と対応する半田バンプ27の微少位置ずれに起因する反力がプローブカード17へ作用してプローブカード17がウエハWの表面に沿うように移動し、その結果、各半田バンプ27にはプローブカード17の移動に追従するように移動力(
図5(A)中の白矢印参照。)が作用する。
【0042】
これに対応して、X方向モータは移動力のX方向成分を打ち消すようにトルクを発生し、Y方向モータは移動力のY方向成分を打ち消すようにトルクを発生するが、ステップS401では、移動力のX方向成分を打ち消すようにトルクを発生するX方向モータに生じる負荷を測定する。
【0043】
次いで、X方向モータに生じる負荷が当該X方向モータの定格出力の数%、例えば、5%以下か否かを判定し(ステップS402)、X方向モータに生じる負荷が定格出力の5%より大きければ(ステップS402でNO)、X方向ステージ20が移動力の作用方向に微少量、例えば、1μmだけ移動し(ステップS403)、ステップS401へ戻る。これにより、プローブカード17に作用する反力によって生じる移動力のX方向成分を減少させる(
図5(B)参照。)一方、X方向モータに生じる負荷が定格出力の5%以下であれば(ステップS402でYES)、ステップS404に進む。
【0044】
次いで、Y方向成分を打ち消すようにトルクを発生するY方向モータに生じる負荷が当該Y方向モータの定格出力の数%、例えば、5%以下か否かを判定し(ステップS405)、Y方向モータに生じる負荷が定格出力の5%より大きければ(ステップS405でNO)、Y方向ステージ19が移動力の作用方向に微少量、例えば、1μmだけ移動し(ステップS406)、ステップS404へ戻る。これにより、プローブカード17に作用する反力によって生じる移動力のY方向成分を減少させる(
図5(B)参照。)一方、Y方向モータに生じる負荷が定格出力の5%以下であれば(ステップS405でYES)、本処理を終了し、
図3のステップS303に進む。
【0045】
次いで、コントローラ29は、X方向モータが発生するトルクの最大値を所定値以下、例えば、X方向モータの定格出力の15%以下に制限し(ステップS303)(トルク制限ステップ)、さらに、Y方向モータが発生するトルクの最大値を所定値以下、例えば、Y方向モータの定格出力の15%以下に制限する(ステップS304)(トルク制限ステップ)。
【0046】
次いで、コントローラ29は、テストヘッド14からプローブカード17の各プローブ電極28及び各半田バンプ27を介して半導体デバイスへ検査電流を流して電気的特性の測定を開始する(ステップS305)。
【0047】
このとき、流した検査電流に起因する発熱によってプローブカード17が熱膨張してプローブカード17がウエハWの表面に沿うように移動し(
図6(A)中の黒矢印参照。)、その結果、各半田バンプ27にはプローブカード17の移動に追従するように移動力(
図6(A)中の白矢印参照。)が作用するが、これに対応して、ステージ11を移動させないために、X方向モータは移動力のX方向成分を打ち消すようにトルクを発生し、且つY方向モータは移動力のY方向成分を打ち消すようにトルクを発生する。
【0048】
ここで、X方向モータやY方向モータは発生するトルクの最大値が定格出力の15%以下に制限されているので、プローブカード17の熱膨張量がさほど大きくなく、各半田バンプ27に作用する移動力のX方向成分やY方向成分がX方向モータやY方向モータの定格出力の15%以下である場合(
図6(A)参照。)、X方向モータやY方向モータは発生するトルクによって移動力を打ち消すことができ、ステージ11は移動しない。一方、プローブカード17の熱膨張量が大きく、各半田バンプ27に作用する移動力のX方向成分やY方向成分がX方向モータやY方向モータの定格出力の15%よりも大きい場合(
図6(B)参照。)、X方向モータやY方向モータは発生するトルクによって移動力を打ち消すことができず、ステージ11の移動を許容する。これにより、ステージ11に載置されたウエハWはプローブカード17の移動に追従するように移動し、各半田バンプ27に作用していた移動力を一定値以下に制限するとともに、各プローブ電極28と各半田バンプ27とが正対して係合する状態が維持される(
図6(C)参照。)。
【0049】
次いで、コントローラ29は半導体デバイスの電気的特性の測定が終了したか否かを判定し(ステップS306)、測定が終了していない場合(ステップS306でNO)、ステップS306に戻り、測定が終了している場合(ステップS306でYES)、Z方向移動部21により、ウエハWをプローブカード17から遠ざけて各プローブ電極28を各半田バンプ27から離間させる(ステップS307)。
【0050】
次いで、コントローラ29は、X方向モータが発生するトルクの最大値の制限を解除するとともに(ステップS308)、Y方向モータが発生するトルクの最大値の制限を解除し(ステップS309)、さらに、ウエハWにおける全ての半導体デバイスの電気的特性の測定が終了したか否かを判定する(ステップS310)。
【0051】
ステップS310の判定の結果、全ての半導体デバイスの電気的特性の測定が終了していない場合(ステップS310でNO)、Y方向ステージ19及びX方向ステージ20によってステージ11を移動させ、プローブカード17の各プローブ電極28をウエハWにおける次の検査対象の半導体デバイスの各半田バンプ27に正対させる一方、全ての半導体デバイスの電気的特性の測定が終了している場合(ステップS310でYES)、半導体デバイスの検査を終了する。
【0052】
図3のデバイス検査方法によれば、プローブ電極28を半田バンプ27に係合させた後であって、半導体デバイスの電気的特性を測定する際に、ステージ11を移動させないようにトルクを発生するX方向モータやY方向モータが発生するトルクの最大値を各モータの定格出力の15%以下に制限するので、プローブカード17が熱膨張し、当該熱膨張に起因して半田バンプ27に作用する移動力が各モータの定格出力の15%を上回った場合、X方向モータやY方向モータはステージ11の移動を許容する。これにより、X方向モータやY方向モータには定格出力の15%に相当する負荷以上の負荷は生じず、その結果、ステージ11移動用のX方向モータやY方向モータの過負荷を防止することができる。
【0053】
上述したデバイス検査方法では、プローブ電極28を半田バンプ27に係合させた後であって、半導体デバイスの電気的特性を測定する前において、プローブ電極28を半田バンプ27に係合させる際に生じた半田バンプ27に作用する移動力を一定値以下に制限するようにステージ11を移動させるので、半導体デバイスの電気的特性の測定中において半田バンプ27に作用する移動力を一定値以下に制限することができる。
【0054】
上述したデバイス検査方法では、半導体デバイスの電気的特性を測定する場合しかX方向モータやY方向モータが発生するトルクの最大値の制限を行わないので、例えば、次の検査対象の半導体デバイスの電気的特性を測定するためにステージ11を移動させる場合、X方向モータやY方向モータに大きなトルクを発生させることができ、もって、ステージ11を素早く移動させてスループットを向上することができる。
【0055】
以上、本発明について、上記実施の形態を用いて説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。
【0056】
例えば、
図3のデバイス検査方法では、半導体デバイスの電気的特性を測定する前に、
図4の移動力調整処理を実行してプローブ電極28を半田バンプ27に係合させる際に生じた半田バンプ27に作用する移動力を一定値以下に制限するようにステージ11を移動させるが、
図7に示すように、
図3のデバイス検査方法からステップS302の移動力調整処理を除去してX方向モータやY方向モータのトルクの最大値の制限を行い、その後、半導体デバイスの電気的特性を測定してもよい。この場合であっても、例えば、プローブ電極28を半田バンプ27に係合させる際に生じた各半田バンプ27に作用する移動力のX方向成分やY方向成分がX方向モータやY方向モータの定格出力の15%よりも大きいとき、X方向モータやY方向モータは発生するトルクによって移動力を打ち消すことができず、ステージ11の移動を許容して各半田バンプ27に作用していた移動力を一定値以下に制限することができる。
【0057】
また、
図4の移動力調整処理では、各プローブ電極28を各半田バンプ27へ係合させる際、X方向モータやY方向モータに生じる負荷が各モータの定格出力の5%以下であれば、各半田バンプ27へ作用する移動力を一定値以下に制限することはないが、X方向モータやY方向モータに生じる負荷が各モータの定格出力の5%以下であっても各半田バンプ27へ作用する移動力をさらに小さい値へ制限してもよく、さらに、X方向モータやY方向モータに生じる負荷にかかわらず各半田バンプ27へ作用する移動力を消滅させてもよい。
【0058】
図8は、
図4の移動力調整処理の第1の変形例を示すフローチャートである。なお、以下において、
図4の移動力調整処理におけるステップと同じステップについてはその説明を省略する。
【0059】
図8において、X方向モータに生じる負荷が定格出力の5%以下の場合(ステップS402でYES)、さらに、X方向モータに生じる負荷が定格出力の3%以下か否かを判定し(ステップS801)、X方向モータに生じる負荷が定格出力の5%以下であって3%よりも大きい場合(ステップS801でNO)、X方向モータを停止し(ステップS802)、ステップS401へ戻る。このとき、X方向モータはトルクを発生しないため、ウエハWは各半田バンプ27へ作用する移動力のX方向成分によってX方向に移動し、移動力のX方向成分を消滅させる。
【0060】
一方、X方向モータに生じる負荷が定格出力の3%以下の場合(ステップS801でYES)、ステップS404、S405に進み、Y方向モータに生じる負荷が定格出力の5%以下の場合(ステップS405でYES)、さらに、Y方向モータに生じる負荷が定格出力の3%以下か否かを判定する(ステップS803)。
【0061】
ステップS803の判定の結果、Y方向モータに生じる負荷が定格出力の5%以下であって3%よりも大きい場合(ステップS803でNO)、Y方向モータを停止し(ステップS804)、ステップS404へ戻る。このとき、Y方向モータはトルクを発生しないため、ウエハWは各半田バンプ27へ作用する移動力のY方向成分によってY方向に移動し、移動力のY方向成分を消滅させる。
【0062】
一方、Y方向モータに生じる負荷が定格出力の3%以下の場合(ステップS803でYES)、本処理を終了する。
【0063】
図9は、
図4の移動力調整処理の第2の変形例を示すフローチャートである。
【0064】
図9の処理では、X方向モータやY方向モータに生じる負荷にかかわらず、X方向モータを停止し(ステップS901)、さらに、Y方向モータを停止した(ステップS902)後、本処理を終了する。
図9の処理では、X方向モータやY方向モータはトルクを発生しないため、ウエハWは各半田バンプ27へ作用する移動力のX方向成分やY方向成分によってX方向、Y方向に移動し、移動力のX方向成分及びY方向成分を消滅させる。
【0065】
さらに、上述したプローブカード17における各プローブ電極28は、当該プローブカード17から下方へ突出し、先端に突起状の係合部30が設けられた円柱状の電極からなるが、プローブ電極の形態はこれに限れない。例えば、各プローブ電極31は先端に半田バンプ27と係合可能な半球状の凹部32が設けられる円柱状の電極であってもよい(
図10(A))。
【0066】
この場合も、各プローブ電極31を各半田バンプ27へ係合させる際(
図10(B))、プローブ電極31と対応する半田バンプ27の微少位置ずれに起因する反力がプローブカード17へ作用し、その結果、
図10(C)に示すように、各半田バンプ27にプローブカード17の移動に追従するように移動力(図中の白矢印参照。)が作用するが、このとき、
図4の移動力調整処理を実行することにより、過度の移動力を一定値以下に制限することができる。
【0067】
また、半導体デバイスへ検査電流を流して電気的特性の測定を行う場合も、プローブカード17の熱膨張による移動(
図11(A)中の黒矢印参照。)に伴って各半田バンプ27に発生する移動力(
図11(A)中の白矢印参照。)を打ち消すようにX方向モータやY方向モータはトルクを発生し、これらのモータに負荷が生じるが、このとき、
図3のデバイス検査方法を実行してX方向モータやY方向モータが発生するトルクの最大値を所定値以下に制限することにより、大きな移動力が発生するとステージ11の移動を許容させ(
図11(B)参照。)、X方向モータやY方向モータの負荷を一定値以下に制限することができる。
【0068】
さらに、上述した
図3のデバイス検査方法では、X方向モータやY方向モータが発生するトルクの最大値を各モータの定格出力の15%以下に制限したが、制限されるトルクの最大値はこれに限られず、例えば、各モータの定格出力の100%以下に制限してもよい。X方向モータやY方向モータが連続して定格出力の100%以下でトルクを発生する場合、X方向モータやY方向モータが破損する可能性は殆ど無いため、これにより、各モータが破損するおそれを無くすことができる。
【0069】
また、プローバ10ではX方向モータやY方向モータはリニアモータによって構成されたが、X方向モータやY方向モータをボールネジを回動させる回動モータによって構成してもよく、この場合、X方向モータやY方向モータはX方向及びY方向のそれぞれに沿って配置されたボールネジを回動させることにより、X方向ステージ20やY方向ステージ19をX方向やY方向に移動させる。このような回動モータを用いる場合であっても、
図3のデバイス検査方法や
図4の移動力調整処理を適用することができる。
【0070】
本発明の目的は、上述した実施の形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体を、コンピュータ、例えば、コントローラ29に供給し、コントローラ29のCPUが記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出して実行することによっても達成される。
【0071】
この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が上述した実施の形態の機能を実現することになり、プログラムコード及びそのプログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
【0072】
また、プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、RAM、NV−RAM、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD(DVD−ROM、DVD−RAM、DVD−RW、DVD+RW)等の光ディスク、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、他のROM等の上記プログラムコードを記憶できるものであればよい。或いは、上記プログラムコードは、インターネット、商用ネットワーク、若しくはローカルエリアネットワーク等に接続される不図示の他のコンピュータやデータベース等からダウンロードすることによりコントローラ29に供給されてもよい。
【0073】
また、コントローラ29が読み出したプログラムコードを実行することにより、上記実施の形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードの指示に基づき、CPU上で稼動しているOS(オペレーティングシステム)等が実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって上述した実施の形態の機能が実現される場合も含まれる。
【0074】
更に、記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、コントローラ29に挿入された機能拡張ボードやコントローラ29に接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPU等が実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって上述した実施の形態の機能が実現される場合も含まれる。
【0075】
上記プログラムコードの形態は、オブジェクトコード、インタプリタにより実行されるプログラムコード、OSに供給されるスクリプトデータ等の形態から成ってもよい。