特許第6138063号(P6138063)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6138063
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】ウェハ研磨装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/00 20120101AFI20170522BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20170522BHJP
   B24B 41/06 20120101ALI20170522BHJP
   B24B 55/00 20060101ALI20170522BHJP
   B23Q 11/08 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
   B24B37/00 Z
   H01L21/304 621D
   B24B41/06 L
   B24B55/00
   B23Q11/08 Z
【請求項の数】7
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-9617(P2014-9617)
(22)【出願日】2014年1月22日
(65)【公開番号】特開2015-136759(P2015-136759A)
(43)【公開日】2015年7月30日
【審査請求日】2016年8月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(72)【発明者】
【氏名】丸岡 哲
(72)【発明者】
【氏名】足立 禎
【審査官】 亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平9−123050(JP,A)
【文献】 特開昭60−20854(JP,A)
【文献】 特開平4−101757(JP,A)
【文献】 特開平10−303152(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/00
B23Q 11/08
B24B 41/06
B24B 55/00
H01L 21/304
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェハを化学的機械研磨法により研磨加工するウェハ研磨装置であって、
ウェハを保持する一対のチャックと、
前記一対のチャックのうち、ウェハの表面を下方に向けて該ウェハを保持する一方のチャックの下方に配設されて、このウェハに第1の処理を施す第1のウェハ処理手段と、
前記一対のチャックのうち、ウェハの表面を上方に向けて該ウェハを保持する他方のチャックの上方に配設されて、このウェハに第2の処理を施す第2のウェハ処理手段と、
前記一対のチャックを水平軸回りに回転可能に支持するとともに、これらチャック同士の位置を入れ替え可能な回転支持部と、を備えることを特徴とするウェハ研磨装置。
【請求項2】
請求項1に記載のウェハ研磨装置であって、
前記他方のチャックに対して、ウェハの供給及び排出が行われることを特徴とするウェハ研磨装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のウェハ研磨装置であって、
前記第1のウェハ処理手段が、前記一方のチャックが保持するウェハに行う第1の処理は、研磨加工であり、
前記第2のウェハ処理手段が、前記他方のチャックが保持するウェハに行う第2の処理は、研磨加工、液剤塗布処理、及び表面テクスチャリング処理のうち少なくとも1つ以上であることを特徴とするウェハ研磨装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のウェハ研磨装置であって、
前記第1のウェハ処理手段は、前記一方のチャックに対して進退可能であり、
前記第2のウェハ処理手段は、前記他方のチャックに対して進退可能であることを特徴とするウェハ研磨装置。
【請求項5】
請求項4に記載のウェハ研磨装置であって、
前記第1のウェハ処理手段が前記一方のチャックに対して後退され、前記第2のウェハ処理手段が前記他方のチャックに対して後退された状態で、前記第1のウェハ処理手段及び前記第2のウェハ処理手段の少なくともいずれかに対してメンテナンス処理を行うメンテナンス手段が設けられることを特徴とするウェハ研磨装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のウェハ研磨装置であって、
前記チャックの少なくとも駆動部を覆うカバー部材が設けられることを特徴とするウェハ研磨装置。
【請求項7】
請求項2〜6のいずれか一項に記載のウェハ研磨装置であって、
前記他方のチャックからウェハが排出されたときに、該他方のチャックに対して洗浄処理を行う洗浄手段が設けられることを特徴とするウェハ研磨装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェハに化学的機械研磨法(CMP:Chemical Mechanical Polishing)による研磨(研削)加工を含む複数の処理を行うウェハ研磨装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ウェハを化学的機械研磨法により研磨加工するウェハ研磨装置が知られている。
図4(a)〜(c)に示される従来のウェハ研磨装置101では、ウェハWを研磨加工する際、ウェハWの表面を下方に向けて該ウェハWを保持するチャック102が、チャック102の下方に配設されて回転する研磨定盤103上の研磨パッド(研磨布)104に対して、ウェハWを回転させつつ押し当てて、研磨加工する。
【0003】
また、図4(c)に示されるように、ウェハWに対して複数の研磨加工を行う場合には、種類の異なる研磨液(スラリー)S、Sを研磨加工に応じて適宜選択し、研磨パッド104上に供給することで、複数回の処理が順次行われる。
尚、この種のウェハ研磨装置では、ウェハに対する処理として、研磨加工(例えば粗目の1次研磨の後、細目の2次研磨を行う複数回の研磨加工等)を行う以外に、親水化処理、表面テクスチャリング処理等の種々の処理を行う場合がある。
【0004】
ウェハWに対して複数の処理を行う場合において、例えば研磨パッド104の種類(目の粗さなど)を変える必要があるときには、図5に示されるように、ウェハ研磨装置101に、互いに種類が異なる研磨パッド104を備えた研磨定盤103を複数設けるとともに、移動可能なチャック102でウェハWを搬送しつつ、各研磨パッド104に対してウェハWを順次押し当てて処理を行う。
【0005】
このように、ウェハ研磨装置101が複数の研磨定盤103を備える場合には、生産性を鑑みて、これら研磨定盤103を待機させることなく処理が行えることが好ましい。そこで、例えば図6(a)〜(c)に示されるように、研磨定盤103の数に対応する数のチャック102を設けるとともに、これらチャック102同士の間でウェハWを持ち替えるための持ち替え機構105を設けることで、研磨定盤103を待機させずに、ウェハWに対して複数の処理を行うことが可能になる。
【0006】
また、下記特許文献1に示されるウェハ研磨装置では、鉛直軸回りに回転するカルーセルが複数のチャックを支持している。そして、カルーセルにより複数のチャックを各処理位置へと順次回転移動させつつ、これらチャックが保持するウェハに複数の異なるポリシングプロセス(ラフなポリシング、細密なポリシング、バフ仕上げ)を行えるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−174420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来のウェハ研磨装置では、下記の課題を有していた。
ウェハに対して複数の処理を行う際において、図6(a)〜(c)に示されるウェハ研磨装置101では、複数のチャック102同士の間でウェハWを持ち替えるための機構(持ち替え機構105)が必要なため装置の構造が複雑になり、また持ち替え動作による時間のロスが生産性に影響する。
また、特許文献1のウェハ研磨装置では、鉛直軸回りに回転するカルーセルにより複数のチャックを回転させるため、大きなスペース(少なくともカルーセルの回転直径に相当するスペース)が必要となり、設置面積が大きくなる。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、構造を複雑にすることなくウェハに複数の処理を行えるとともに、生産性を高めることができ、かつ、装置を小型化して設置面積を低減できるウェハ研磨装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような課題を解決して、前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提案している。
すなわち、本発明は、ウェハを化学的機械研磨法により研磨加工するウェハ研磨装置であって、ウェハを保持する一対のチャックと、前記一対のチャックのうち、ウェハの表面を下方に向けて該ウェハを保持する一方のチャックの下方に配設されて、このウェハに第1の処理を施す第1のウェハ処理手段と、前記一対のチャックのうち、ウェハの表面を上方に向けて該ウェハを保持する他方のチャックの上方に配設されて、このウェハに第2の処理を施す第2のウェハ処理手段と、前記一対のチャックを水平軸回りに回転可能に支持するとともに、これらチャック同士の位置を入れ替え可能な回転支持部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明のウェハ研磨装置では、一対のチャックのうち、一方のチャックが保持するウェハに対して、その下方から第1のウェハ処理手段により第1の処理を施しつつ、他方のチャックが保持するウェハに対しては、その上方から第2のウェハ処理手段により第2の処理を施すことができる。そして、第1、第2の処理が終わったときに、回転支持部によりこれらチャックを水平軸回りに回転(反転)させて、互いの位置を入れ替えることで、各ウェハに対して次の処理を施すことができる。
つまりこのウェハ研磨装置によれば、ウェハに対して複数の処理を行う構成とされつつも、該ウェハを保持するチャックの持ち替え動作が不要であるので、構造が簡単であり、かつ生産性が高められる。
【0012】
また、一対のチャック同士は水平軸回りに回転させられて位置が入れ替えられるので、例えば本発明とは異なり、チャックを鉛直軸回りに回転させるために回転直径に応じた設置面積が必要となるような従来の構成に比べて、本発明では設置面積を小さく抑えることができる。
さらに、一方のチャックが保持するウェハに対して第1の処理を行う第1のウェハ処理手段が、該一方のチャックの下方に配設されており、他方のチャックが保持するウェハに対して第2の処理を行う第2のウェハ処理手段が、該他方のチャックの上方に配設されているので、これら第1、第2のウェハ処理手段同士を鉛直方向の異なる位置に配置して、水平方向には互いに接近配置することが可能になる。
従って本発明によれば、装置を小型化して設置面積を低減できる。
【0013】
また、チャックとともに該チャックが保持するウェハも水平軸回りに回転させられるので、この回転途中でウェハに付着した研磨液等の液剤が流れ落ちやすくなり、次の処理にスムーズに移行することができる。
また、第2のウェハ処理手段による第2の処理は、ウェハに対して上方から行われるので、このウェハの表面に液剤等を滴下して処理することが可能であり、よって第2の処理として液剤塗布処理(親水化処理やスピンコーティング処理等)を行いやすく、また表面テクスチャリング処理にも適している。
【0014】
以上より本発明によれば、構造を複雑にすることなくウェハに複数の処理を行えるとともに、生産性を高めることができ、かつ、装置を小型化して設置面積を低減できるのである。
【0015】
また、本発明のウェハ研磨装置において、前記他方のチャックに対して、ウェハの供給及び排出が行われることとしてもよい。
【0016】
この場合、一対のチャックのうち、ウェハの表面を上方に向けて該ウェハを保持する他方のチャックに対して、処理するウェハの供給(ウェハロード)及び排出(ウェハアンロード)が行われることから、ウェハをチャック上に載置することが可能となる。これにより、ウェハ供給時にはチャックに保持させやすくなり、またウェハ排出時にはチャックから受け取りやすくなる。従って、ウェハの供給及び排出が、安定的にかつ高精度に行える。
【0017】
またこの場合、他方のチャックからウェハが排出されたときに、該チャックのウェハ保持面(多孔質体等)を洗浄しやすくなり、かつウェハ保持面の汚れ具合を視認しやすい。
【0018】
また、本発明のウェハ研磨装置において、前記第1のウェハ処理手段が、前記一方のチャックが保持するウェハに行う第1の処理は、研磨加工であり、前記第2のウェハ処理手段が、前記他方のチャックが保持するウェハに行う第2の処理は、研磨加工、液剤塗布処理、及び表面テクスチャリング処理のうち少なくとも1つ以上であることとしてもよい。
【0019】
一般に、研磨定盤の外径はウェハ外径よりも大きく形成されていて重量が大きいことから、上記構成のように第1のウェハ処理手段がウェハに対して行う第1の処理が、研磨加工とされていることで、研磨定盤をウェハの下方に配置して装置を安定した構造とすることができるとともに、研磨加工の精度を確保しやすくなる。
また、第2のウェハ処理手段が第2の処理を行うウェハの表面は、上方を向いているため、該ウェハに対して、上述した処理のうち特に液剤塗布処理(例えば親水化処理やスピンコーティング処理等)及び表面テクスチャリング処理を行いやすくなる。
【0020】
また、本発明のウェハ研磨装置において、前記第1のウェハ処理手段は、前記一方のチャックに対して進退可能であり、前記第2のウェハ処理手段は、前記他方のチャックに対して進退可能であることとしてもよい。
【0021】
この場合、第1のウェハ処理手段を一方のチャックから離間する向きに移動させ(後退させ)、第2のウェハ処理手段を他方のチャックから離間する向きに移動させることで、これら第1、第2のウェハ処理手段に干渉させることなく一対のチャックを水平軸回りに回転させることができ、装置の部材同士の衝突が防止される。また、一対のチャックを水平軸回りに回転させた後は、第1のウェハ処理手段を一方のチャックに接近する向きに移動させ(前進させ)、第2のウェハ処理手段を他方のチャックに接近する向きに移動させることで、これらチャックが保持するウェハに対して、第1、第2の処理をそれぞれ精度よく行うことができる。
【0022】
ここで上記構成とは異なり、やはり水平軸回りの回転時における部材同士の干渉を防止する目的で、例えばチャックを支持する回転支持部を水平軸に直交する径方向に伸縮させて、該チャックが保持するウェハを、進退移動不可とされた第1、第2のウェハ処理手段に対向配置する(処理可能な位置に配置する)構成とすることも可能ではあるが、この場合、回転支持部及びチャックの構造が複雑になるとともに重量も増大して、研磨加工等の処理の加工精度を確保することが難しくなる可能性がある。
従って、第1、第2のウェハ処理手段がチャックに対して進退移動する上記構成とすることにより、回転支持部及びチャックを複雑な構造にすることなく軽量化でき、研磨加工等の処理の加工品位をより安定して高めることができる。
【0023】
また、本発明のウェハ研磨装置において、前記第1のウェハ処理手段が前記一方のチャックに対して後退され、前記第2のウェハ処理手段が前記他方のチャックに対して後退された状態で、前記第1のウェハ処理手段及び前記第2のウェハ処理手段の少なくともいずれかに対してメンテナンス処理を行うメンテナンス手段が設けられることとしてもよい。
【0024】
第1、第2のウェハ処理手段が各チャックから後退した状態とされて、これらチャックが水平軸回りに回転させられるときに、後退した第1、第2のウェハ処理手段に対しては、メンテナンス手段によって例えば研磨パッドのパッドコンディショニング(目立てや平坦化、洗浄等)や洗浄(ブラシやシャワーノズルによる洗浄)等の種々のメンテナンス処理(ウェハ処理手段の性能を良好に維持するための処理)が行われるようになっている。つまり、一対のチャックを水平軸回りに回転させながら、この回転移動の時間等を利用して、第1、第2のウェハ処理手段に対して次の処理を精度よく行うためのメンテナンス処理が施されるようになっている。
これにより、良好な処理状態を安定して維持することが可能になり、かつ、時間ロスをさらに削減して生産性を高めることができる。
【0025】
また、本発明のウェハ研磨装置において、前記チャックの少なくとも駆動部を覆うカバー部材が設けられることとしてもよい。
【0026】
本発明においては、ウェハを保持するチャックが水平軸回りに回転させられることで、この回転時にウェハに付着する研磨液等の液剤が流れ落ちるようになっているため、流れ落ちた液剤がチャックを駆動するモータ等の駆動部に浸入する可能性がある。また、洗浄による洗浄水の浸入も考えられる。
そこで、チャックのうち少なくとも駆動部を覆うカバー部材を設けることにより、ウェハから流れ落ちた液剤や洗浄に使用した洗浄水が、該ウェハを保持するチャックの駆動部に浸入することや、水平軸を挟んで反対側に位置する別のウェハを保持するチャックの駆動部に浸入することを防止でき、装置を安定して稼働できる。
【0027】
また、本発明のウェハ研磨装置において、前記他方のチャックからウェハが排出されたときに、該他方のチャックに対して洗浄処理を行う洗浄手段が設けられることとしてもよい。
【0028】
チャックにおいてウェハを保持する部分(ウェハ保持面)には、例えば通気性を有する多孔質体等が用いられるが、このような多孔質体等は研磨屑や液剤等により目詰まりする可能性があることから、ウェハWを所定量処理する毎に、定期的に洗浄を行うことが好ましい。
本発明の上記構成によれば、他方のチャックによるウェハの保持状態が解除され、このウェハが排出(アンロード)されたときに、該チャックに対して洗浄手段により洗浄を行うことができるので、チャックの性能を安定して良好に維持できる。また、他方のチャックにおいてウェハを保持する部分(ウェハ保持面)は、上方を向いていることから、目視により洗浄中や洗浄後の状態(汚れ具合など)を確認しやすい。
【発明の効果】
【0029】
本発明のウェハ研磨装置によれば、構造を複雑にすることなくウェハに複数の処理を行えるとともに、生産性を高めることができ、かつ、装置を小型化して設置面積を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の一実施形態に係るウェハ研磨装置の構造を簡略化して表す縦断面図である。
図2図1のウェハ研磨装置の(a)A部を拡大して示す図、(b)B部を拡大して示す図である。
図3図1のウェハ研磨装置のC矢視を示す図である。
図4】従来のウェハ研磨装置を説明する図である。
図5】従来のウェハ研磨装置を説明する図である。
図6】従来のウェハ研磨装置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の一実施形態に係るウェハ研磨装置1について、図面を参照して説明する。
本実施形態のウェハ研磨装置1は、ウェハWに対して、少なくとも化学的機械研磨法(CMP:Chemical Mechanical Polishing)による研磨(研削)加工を含む複数の処理を行うものであり、該処理としては、1回又は複数回の研磨加工(バフ仕上げを含むポリシング加工全般)、液剤塗布処理(例えば親水化処理やスピンコーティング処理等)、及び表面テクスチャリング処理等の種々の処理が挙げられる。尚、研磨加工を複数回行う場合とは、例えば、互いに種類が異なる複数の研磨液を順次用いて研磨加工する場合や、1次研磨として粗目の研磨加工を行った後、2次研磨として細目の研磨加工をする場合などである。
【0032】
図1に示されるように、このウェハ研磨装置1は、ウェハWをそれぞれ保持する一対のチャック2と、一対のチャック2のうち、ウェハWの表面を下方に向けて該ウェハWを保持する一方のチャック2Aの下方に配設されて、このウェハWに第1の処理を施す第1のウェハ処理手段11と、一対のチャック2のうち、ウェハWの表面を上方に向けて該ウェハWを保持する他方のチャック2Bの上方に配設されて、このウェハWに第2の処理を施す第2のウェハ処理手段12と、一対のチャック2を水平軸(インデックス回転軸)HA回りに回転可能に支持するとともに、これらチャック2同士の位置を入れ替え可能とされた回転支持部(インデックスフレーム)3と、を備えている。
【0033】
ここで、回転支持部3の水平軸HAは、略水平方向に沿って延びている。本明細書では、この水平軸HAが延びる方向を水平軸HA方向といい、水平軸HAに直交する方向をインデックス径方向といい、水平軸HA回りに周回する方向をインデックス周方向という。尚、前記インデックス径方向のうち、鉛直方向に沿う向きを上下方向(上方及び下方)といい、水平方向に沿う向きを左右方向(左方及び右方)という。
また本明細書では、ウェハ研磨装置1が備える一対のチャック2のうち、ウェハWの表面を下方に向けて該ウェハWを保持するとともに、第1のウェハ処理手段11に対向配置された状態のチャック2(図1において水平軸HAの左方に位置するチャック2)を一方のチャック2Aと呼び、ウェハWの表面を上方に向けて該ウェハWを保持するとともに、第2のウェハ処理手段12に対向配置された状態のチャック2(図1において水平軸HAの右方に位置するチャック2)を他方のチャック2Bと呼ぶ。つまり、一対のチャック2A、2Bが水平軸HA回りに回転して、互いの位置が入れ替わることで、一方のチャック2Aは他方のチャック2Bとなり、他方のチャック2Bは一方のチャック2Aとなる。
【0034】
これらチャック2A、2Bは、互いに同形同大であり、かつ同一の構成とされている。また、チャック2A、2Bは、回転支持部3において水平軸HAを間に挟んだ両側に配置されているとともに、インデックス径方向に沿う各チャック2A、2Bと水平軸HAとの間の距離が、互いに等しくされている。これにより、一方のチャック2Aと他方のチャック2Bとは、回転支持部3の水平軸HAを中心(支点)につり合った状態となっている。これらチャック2A、2B同士は、回転支持部3の水平軸HAを中心として180°回転対称に配設されている。また、これらチャック2A、2Bのチャック回転軸(ウェハWを回転させる回転中心となる軸)CA同士は、互いに平行とされている。
【0035】
本実施形態では図1に示されるように、一方のチャック2Aと他方のチャック2Bとが、水平軸HAを間に挟んで、左右方向に離間して配設されている。また、これらチャック2A、2Bを支持する回転支持部3は、該チャック2A、2B同士が左右方向に並んで配置(インデックス径方向のうち左右方向に離間した状態で隣り合って配置)されているのにともなって、左右方向に沿うように延びている。図示の例では、これらチャック2A、2Bは、回転支持部3の両端部に配設されている。
【0036】
尚、本発明におけるチャック2A、2B同士の相対的な位置関係(並ぶ向き)は、本実施形態で説明している左右方向に限定されるものではない。
具体的に、例えばこれらチャック2A、2B同士が、水平軸HAを間に挟んで上下方向に並んで配置(インデックス径方向のうち上下方向に離間した状態で隣り合って配置)されている構成も、本発明に含まれる。この場合、ウェハWの表面を下方に向けて保持する一方のチャック2Aが水平軸HAの下方に配置され、ウェハWの表面を上方に向けて保持する他方のチャック2Bが水平軸HAの上方に配置されることになる。
或いは、これらチャック2A、2B同士が、水平軸HAを間に挟んで、左右方向と上下方向との間の傾斜方向に並んで配置(インデックス径方向のうち傾斜方向に離間した状態で隣り合って配置)されていてもよい。
【0037】
チャック2は、ウェハWを保持する部分(ワークチャック部4)が最も大径とされた多段円柱状をなしており、回転支持部3に取り付けられた駆動部8により、チャック回転軸CA回りに回転させられるようになっている。
ここで本明細書では、チャック2のチャック回転軸CAが延びる方向をチャック回転軸CA方向といい、チャック回転軸CAに直交する方向をチャック径方向といい、チャック回転軸CA回りに周回する方向をチャック周方向という。
【0038】
図1及び図2(a)(b)において、チャック2は、ウェハWを保持するワークチャック部4と、ワークチャック部4をチャック回転軸CA方向に沿うウェハWとは反対側から支持するチャック支持部5と、チャック支持部5に対してワークチャック部4を接近させる向き(引き寄せる向き)に付勢する付勢部6と、ワークチャック部4とチャック支持部5との間に配設されるとともに膨張可能とされ、付勢部6の付勢力に抗して、チャック支持部5に対してワークチャック部4を離間させる向き(ウェハ処理手段11(12)へ押し出す向き)に移動させるエアバッグ7と、回転支持部3に対して、チャック2をチャック周方向に回転駆動させる駆動部8と、を備えている。尚、駆動部8は、チャック2の駆動部8以外の部材を、回転支持部3に対して回転させる。また上記以外にチャック2は、エアバッグ7に圧縮エアを供給し、ワークチャック部4に対して水及びチラー水を供給し、バキューム(エア吸引)可能とするロータリージョイントを備えている。
【0039】
特に図示していないが、ワークチャック部4のウェハW側を向く面(ウェハ保持面)には、通気性を有する多孔質体が設けられている。この多孔質体を通してエア吸引が行われることにより、チャック2はウェハWを保持可能とされており、エア吸引を停止することで、チャック2からウェハWが解放可能とされる。
【0040】
図1において、ワークチャック部4とチャック支持部5とは、ボールスプライン9及びオルダムカップリング10等を介して連結されており、互いにチャック周方向への相対移動(回転)が規制されつつ、チャック回転軸CA方向及びチャック径方向には所定範囲内で相対移動可能とされている。
【0041】
チャック支持部5は、軸受13を介して回転支持部3に軸支(チャック周方向に回転可能に支持)されている。チャック支持部5には、回転ギヤ14が設けられており、該回転ギヤ14が駆動部8により回転駆動されることで、チャック2のうち駆動部8以外の部位が、チャック周方向に回転する構成とされている。
【0042】
付勢部6には、圧縮コイルばねが用いられている。付勢部6は、チャック支持部5内に配設されており、ワークチャック部4を該チャック支持部5へ接近させる向きに付勢している。尚、付勢部6として、圧縮コイルばね以外の弾性材料等により、ワークチャック部4をチャック回転軸CA方向に沿うチャック支持部5側(つまりチャック支持部5へ接近する向き)へ付勢してもよい。或いは、エア駆動等により、ワークチャック部4をチャック支持部5に向けて駆動させてもよい。
エアバッグ7は、その内部にエア(圧縮エア)が供給されることで膨張可能なゴムシート等の弾性材料からなり、エアの供給が停止された状態では、付勢部6の付勢力等(他方のチャック2B位置ではワークチャック部4の自重による作用も含む)により収縮させられる。具体的には、図2(a)に示されるエアバッグ7の状態が膨張状態であり、図2(b)に示されるエアバッグ7の状態が収縮状態である。そして、エアバッグ7が膨張したときに、チャック支持部5とワークチャック部4とがチャック回転軸CA方向に互いに離間させられ、エアバッグ7が収縮したときに、チャック支持部5とワークチャック部4とがチャック回転軸CA方向に互いに接近させられるようになっている。
【0043】
本実施形態では、エアバッグ7が収縮した図2(b)の状態において、チャック支持部5とワークチャック部4とが互いに当接させられ、この状態からエアバッグ7が膨張したときに、図2(a)に示されるように、チャック支持部5に対してワークチャック部4がチャック回転軸CA方向に沿うウェハW側(ウェハ処理手段11(12)側)へ向けて、距離Lの範囲内で移動可能となっている。
【0044】
そして、一方のチャック2Aが保持するウェハWに対して第1の処理を行う場合には、該チャック2Aのエアバッグ7は膨張状態とされ、他方のチャック2Bが保持するウェハWに対して第2の処理を行う場合には、該チャック2Bのエアバッグ7は収縮状態とされる。
尚、エアバッグ7が収縮した状態の他方のチャック2Bにおいては、上述したようにワークチャック部4とチャック支持部5とが互いに当接し、かつ付勢部6による付勢力等が付与された状態となることで、ワークチャック部4とチャック支持部5とが互いに固定状態(リジッド状態)とされる。
このウェハ研磨装置1は、他方のチャック2Bに対して、処理前のウェハWの供給(ウェハロード)、及び処理後のウェハWの排出(ウェハアンロード)がそれぞれ行われるように構成されている。
【0045】
図1に示されるように、回転支持部3には、チャック2全体のうち少なくとも駆動部8を覆うカバー部材15が設けられている。カバー部材15は、チャック2内(少なくとも駆動部8)への液剤等の浸入を防止可能な構成とされている。
また、回転支持部3の延在方向(左右方向)に沿う両端部には、後述する回転支持部固定手段25の係止部26が係止される被係止部16がそれぞれ設けられている。図示の例では、係止部26が凸状に形成されているのに対応して、被係止部16は凹状に形成されているが、これに代えて、係止部26が凹状とされ、被係止部16が凸状とされていてもよい。
【0046】
また、ウェハ研磨装置1は、一方のチャック2Aが保持するウェハWが第1のウェハ処理手段11に対向配置され、他方のチャック2Bが保持するウェハWが第2のウェハ処理手段12に対向配置された状態(つまりウェハ処理手段11、12がウェハWに処理を施すことが可能な状態)で、第1、第2のウェハ処理手段11、12に対してこれらチャック2A、2Bを支持する回転支持部3が移動することを規制する回転支持部固定手段25を備えている。
【0047】
回転支持部固定手段25は、回転支持部3の被係止部16に離脱可能に係止される係止部26と、係止部26を被係止部16に対して進退移動させる移動機構27と、を備えている。図示の例では、移動機構27により凸状の係止部26が水平軸HA方向に移動可能とされて、凹状の被係止部16内に係止されており、これらが互いに係止した状態で、回転支持部3のインデックス周方向への回転が規制されるようになっている。尚、本実施形態では、係止部26が被係止部16に係止されることで、回転支持部3の振動(極小さい移動)についても規制可能な構成とされている。
【0048】
またウェハ研磨装置1は、回転支持部3をインデックス周方向に回転駆動させる不図示の回転駆動部を備えている。回転駆動部は、回転支持部3をインデックス周方向に間欠的に回転させることで、一対のチャック2A、2B同士を互いに180°回転対称位置に入れ替える。尚、回転駆動部による回転支持部3の回転移動は、インデックス周方向に沿う両側(時計回り及び反時計回り)のうち、いずれか一方に(同方向に)のみ続けて行われてもよいし、一方と他方とに交互に行われてもよい。
【0049】
また図1において、本実施形態では、第1のウェハ処理手段11が、一方のチャック2Aが保持するウェハWに行う第1の処理は、研磨加工(1次研磨)とされている。また、第2のウェハ処理手段12が、他方のチャック2Bが保持するウェハWに行う第2の処理は、研磨加工(2次研磨)、液剤塗布処理(親水化処理、スピンコーティング処理等)、及び表面テクスチャリング処理のうち少なくとも1つ以上とされている。
【0050】
ウェハWに研磨加工(1次研磨)を施す本実施形態の第1のウェハ処理手段11は、円板状をなしプラテン回転軸PA回りに回転させられる研磨定盤17と、研磨定盤17のプラテン回転軸PA方向に沿う一方のチャック2A側を向く面に設けられるとともに、該チャック2Aが保持するウェハWの表面に当接させられて該ウェハWを研磨(研削)加工する研磨パッド18と、研磨定盤17をプラテン回転軸PA回りに回転させるスピンドル19を含む駆動部と、スピンドル19を回転可能に支持するベース部材20と、研磨パッド18上に液剤(スラリー)を供給可能な不図示の液剤供給ノズルと、を備えている。
図示の例では、研磨定盤17及び研磨パッド18の外径が、ウェハW及びワークチャック部4の外径よりも大きくされている。また、プラテン回転軸PAと、一方のチャック2Aのチャック回転軸CAとは、互いに平行とされ、かつ非同軸(軸が一致していない状態)に配置されている。
【0051】
そして、第1のウェハ処理手段11は、一方のチャック2Aに対して進退可能とされている。具体的に、このウェハ研磨装置1は、第1のウェハ処理手段11を一方のチャック2Aに対してチャック径方向に前進移動(接近)及び後退移動(離間)させることが可能な第1の進退手段21を備えている。
【0052】
第1の進退手段21は、第1のウェハ処理手段11のベース部材20に連結された走行軸23と、走行軸23を駆動することで第1のウェハ処理手段11を該走行軸23に沿って移動させる走行機構24と、を備えている。
走行軸23は、例えばボールねじ等からなり、走行機構24は、例えばモータ及びカップリング等を備えている。走行機構24は、走行軸23をその軸回りに回転駆動することで、第1のウェハ処理手段11を移動させるとともに、一方のチャック2Aが保持するウェハWに対して第1の処理を行うことが可能な位置(前進位置)と、該位置とは異なる位置(後退位置)とに配置する。図示の例では、第1の進退手段21は、第1のウェハ処理手段11を左右方向に進退(往復)移動させるようになっている。尚、走行機構24は、エア駆動等により走行軸23を駆動させてもよい。また走行機構24は、上記前進位置に配置された第1のウェハ処理手段11を、走行軸23方向に沿って微小範囲(上記進退移動の範囲に比べて小さい範囲)で往復移動可能(揺動可能)に構成されている。
【0053】
また、ウェハ研磨装置1は、第1のウェハ処理手段11が一方のチャック2Aに対して後退された状態(後退位置とされた状態)で、該第1のウェハ処理手段11に対してメンテナンス処理を行う第1のメンテナンス手段31を備えている。本実施形態では、一方のチャック2Aから後退された第1のウェハ処理手段11の研磨パッド18に対して、第1のメンテナンス手段31が進退移動するとともに当接可能とされており、パッドコンディショニング処理(メンテナンス処理)を施すようになっている。
【0054】
ウェハWに研磨加工(2次研磨)、液剤塗布処理(親水化処理、スピンコーティング処理等)、及び表面テクスチャリング処理のうち少なくとも1つ以上の処理を施す第2のウェハ処理手段12は、本実施形態においては、円板状をなし加工ヘッド回転軸SA回りに回転させられるとともに、他方のチャック2Bが保持するウェハWの表面に当接させられて該ウェハWに処理を行う加工ヘッド28と、加工ヘッド28を加工ヘッド回転軸SA方向に移動させる駆動軸29と、他方のチャック2Bが保持するウェハWの表面に向けて液剤を供給可能な液剤供給ノズル30と、を有している。
加工ヘッド28は、例えばシリンダやアクチュエータ等の駆動軸29により加工ヘッド回転軸SA方向に進退移動するように構成されており、これにより、ウェハWの表面に対して当接可能となっている。
【0055】
具体的に本実施形態では、第2のウェハ処理手段12がウェハWに施す第2の処理が、例えば2次研磨及び液剤塗布処理となっており、これら複数の処理に応じて、加工ヘッド28、駆動軸29及び液剤供給ノズル30の組が、複数(2組)設けられている(図3を参照)。
図示の例では、加工ヘッド28の外径が、ウェハW及びワークチャック部4の外径よりも小さくされている。また、加工ヘッド回転軸SAと、他方のチャック2Bのチャック回転軸CAとは、互いに平行とされ、かつ非同軸(軸が一致していない状態)に配置されている。
【0056】
図3において、第2のウェハ処理手段12は、他方のチャック2Bに対して進退可能とされている。具体的に、このウェハ研磨装置1は、第2のウェハ処理手段12を他方のチャック2Bに対してチャック径方向に前進移動(接近)及び後退移動(離間)させることが可能な第2の進退手段22を備えている。
【0057】
第2の進退手段22は、第2のウェハ処理手段12の駆動軸29に連結された走行軸33と、走行軸33を駆動することで第2のウェハ処理手段12を該走行軸33に沿って移動させる走行機構34と、を備えている。
走行軸33は、例えばボールねじ等からなり、走行機構34は、例えばモータ及びカップリング等を備えている。走行機構34は、走行軸33をその軸回りに回転駆動することで、第2のウェハ処理手段12を移動させるとともに、他方のチャック2Bが保持するウェハWに対して第2の処理を行うことが可能な位置(前進位置)と、該位置とは異なる位置(後退位置)とに配置する。図示の例では、第2の進退手段22は、第2のウェハ処理手段12を水平軸HA方向に進退(往復)移動させるようになっている。尚、走行機構34は、エア駆動等により走行軸33を駆動させてもよい。また走行機構34は、上記前進位置に配置された第2のウェハ処理手段12を、走行軸33方向に沿って微小範囲(上記進退移動の範囲に比べて小さい範囲)で往復移動可能(揺動可能)に構成されていてもよい。
複数の加工ヘッド28は、ウェハW上に交互に配置されて、互いに異なる処理を順次行うようになっている。
【0058】
また、ウェハ研磨装置1は、第2のウェハ処理手段12が他方のチャック2Bに対して後退された状態(後退位置とされた状態)で、該第2のウェハ処理手段12に対してメンテナンス処理を行う第2のメンテナンス手段32を備えている。本実施形態では、他方のチャック2Bから後退された第2のウェハ処理手段12の加工ヘッド28に対して、第2のメンテナンス手段32が当接可能とされており、パッドコンディショニング処理や、ブラシ及びシャワーノズル等を用いた洗浄処理等(メンテナンス処理)が施されるようになっている。具体的には、加工ヘッド28が駆動軸29により上下方向に移動されることで、該加工ヘッド28が第2のメンテナンス手段32に対して当接可能とされている。
また、本実施形態では第2のウェハ処理手段12の加工ヘッド28が複数設けられているのに対応して、第2のメンテナンス手段32も複数設けられている。
【0059】
また、ウェハ研磨装置1は、他方のチャック2BからウェハWが排出されたときに、該他方のチャック2Bに対して洗浄処理を行う不図示の洗浄手段を備えている。洗浄手段としては、例えばブラシ及びシャワーノズル等が用いられる。またこの洗浄手段は、洗浄処理後において、チャック2Bに付着した水分をエア等により吹き飛ばして除去する不図示の水分除去機構を備えている。尚、複数設けられた第2のウェハ処理手段12の少なくとも1つが、上記洗浄手段を備えていることとしてもよい。この場合、上記洗浄手段を備えた第2のウェハ処理手段12の加工ヘッド28に、水噴射しながらワークチャック部4(のウェハ保持面の多孔質体)を洗浄するためのブラシ等が設けられる。
【0060】
次に、本実施形態のウェハ研磨装置1によりウェハWに複数の処理を施す手順(ウェハ研磨方法)について説明する。
【0061】
まず、図1において、第1のウェハ処理手段11が一方のチャック2Aに対して後退され、第2のウェハ処理手段12が他方のチャック2Bに対して後退された状態で、他方のチャック2Bに対して、処理前のウェハWが供給される。尚、この際、後退した第1、第2のウェハ処理手段11、12に対しては、後述する各メンテナンス処理が施されている。
他方のチャック2Bのウェハ保持面に供給されたウェハWは、該チャック2Bに吸着等により保持される。尚、他方のチャック2B位置では、該チャック2Bのエアバッグ7は収縮状態とされており、よってワークチャック部4とチャック支持部5とは互いに固定状態(リジッド状態)となっている。
【0062】
次に、回転駆動部により、回転支持部3がインデックス周方向に回転駆動されて、一対のチャック2A、2B同士の位置が入れ替えられる。
これらチャック2A、2Bが入れ替えられ所定位置に配置された状態で、回転支持部固定手段25の移動機構27が作動し、係止部26が被係止部16に係止されるとともに、回転支持部3が固定状態となる。
また、第1のウェハ処理手段11が一方のチャック2Aに対して前進され、第2のウェハ処理手段12が他方のチャック2Bに対して前進される。
この状態で、一方のチャック2Aが保持するウェハWは、第1のウェハ処理手段11の研磨パッド18に対して数mm程度の間隔をあけて配置されている。
【0063】
次に、一方のチャック2Aのエアバッグ7が膨張状態とされて、該チャック2Aが保持するウェハWが、研磨パッド18に対して当接又は近接させられる。そして、一方のチャック2Aがチャック周方向(チャック回転軸CA回り)に回転され、研磨定盤17がプラテン回転軸PA回りに回転され、ウェハWが研磨パッド18に押し当てられることで、第1の処理である研磨加工(1次研磨)が行われる。尚、第1の処理が行われる際(又はその前)に、液剤供給ノズルから研磨パッド18上に向けて、液剤(スラリー)が供給される。
また、ウェハWを研磨パッド18に押し当てる押圧力は、エアバッグ7のエア圧力制御により調整可能である。また本実施形態においては、走行機構24を動作させて、研磨中に第1のウェハ処理手段11を走行軸23方向に揺動させることができ、これにより、ウェハWに対して第1のウェハ処理手段11の周速度を変化させることが可能である。さらに走行機構24によって、チャック2Aのワークチャック部4と第1のウェハ処理手段11との相対位置を、調整(微調整)することが可能である。
【0064】
また、このように一方のチャック2Aが保持するウェハWに対して第1の処理が行われている間に、他方のチャック2Bが保持するウェハWに対しては、第2のウェハ処理手段12による第2の処理が行われる。
本実施形態では、第2の処理として、研磨加工(2次研磨)及び親水化処理等の液剤塗布処理が、複数の加工ヘッド28により順次行われる。また各処理に応じて、ウェハWの表面に各液剤供給ノズル30から液剤が供給される。
【0065】
第1のウェハ処理手段11において第1の処理が終わると、エアバッグ7が収縮状態とされるとともに、ウェハWが研磨パッド18から離間され、チャック2A及び研磨定盤17の回転は停止される。そして、第1のウェハ処理手段11が、一方のチャック2Aから後退される。
第2のウェハ処理手段12において第2の処理が終わると、他方のチャック2B及び加工ヘッド28の回転は停止され、駆動軸29により加工ヘッド28がウェハWから離間される。そして、第2のウェハ処理手段12が、他方のチャック2Bから後退される。
【0066】
第1、第2のウェハ処理手段11、12がチャック2A、2Bから後退されると、これら第1、第2のウェハ処理手段11、12に対して、第1、第2のメンテナンス手段31、32により上述した各メンテナンス処理が行われる。
また、このように第1、第2のウェハ処理手段11、12に対して各メンテナンス処理が行われている間に、他方のチャック2BからはウェハWが排出され、ウェハWが排出された後のチャック2Bのウェハ保持面に対して、洗浄手段による洗浄処理が行われ、水分除去機構による水分の除去が行われる。また、処理前の別のウェハWが他方のチャック2Bのウェハ保持面に供給されて、吸着保持される。また、回転支持部固定手段25の移動機構27が作動して、被係止部16に対する係止部26の係止状態が解除され、回転支持部3がインデックス周方向に回転可能な状態とされる。
このような手順が繰り返されることにより、ウェハWに対する複数の処理が、効率よく行えるようになっている。
【0067】
以上説明した本実施形態のウェハ研磨装置1では、一対のチャック2A、2Bのうち、一方のチャック2Aが保持するウェハWに対して、その下方から第1のウェハ処理手段11により第1の処理を施しつつ、他方のチャック2Bが保持するウェハWに対しては、その上方から第2のウェハ処理手段12により第2の処理を施すことができる。そして、第1、第2の処理が終わったときに、回転支持部3によりこれらチャック2A、2Bを水平軸HA回りに回転(反転)させて、互いの位置を入れ替えることで、各ウェハWに対して次の処理を施すことができる。
つまりこのウェハ研磨装置1によれば、ウェハWに対して複数の処理を行う構成とされつつも、該ウェハWを保持するチャック2A、2Bの持ち替え動作が不要であるので、構造が簡単であり、かつ生産性が高められる。
【0068】
また、一対のチャック2A、2B同士は水平軸HA回りに回転させられて位置が入れ替えられるので、例えば本実施形態とは異なり、チャックを鉛直軸回りに回転させるために回転直径に応じた設置面積が必要となるような従来の構成に比べて、本実施形態では設置面積を小さく抑えることができる。
さらに、一方のチャック2Aが保持するウェハWに対して第1の処理を行う第1のウェハ処理手段11が、該一方のチャック2Aの下方に配設されており、他方のチャック2Bが保持するウェハWに対して第2の処理を行う第2のウェハ処理手段12が、該他方のチャック2Bの上方に配設されているので、これら第1、第2のウェハ処理手段11、12同士を上下方向(鉛直方向)の異なる位置に配置して、左右方向(水平方向)には互いに接近配置することが可能になる。
従って本実施形態によれば、装置を小型化して設置面積を低減できる。
【0069】
また、チャック2とともに該チャック2が保持するウェハWも水平軸HA回りに回転させられるので、この回転途中でウェハWに付着した研磨液等の液剤が流れ落ちやすくなり、次の処理にスムーズに移行することができる。
また、第2のウェハ処理手段12による第2の処理は、ウェハWに対して上方から行われるので、このウェハWの表面に液剤等を滴下して処理することが可能であり、よって第2の処理として特に液剤塗布処理(親水化処理やスピンコーティング処理等)を行いやすく、また表面テクスチャリング処理にも適している。
【0070】
以上より本実施形態によれば、構造を複雑にすることなくウェハWに複数の処理を行えるとともに、生産性を高めることができ、かつ、装置を小型化して設置面積を低減できるのである。
【0071】
また本実施形態では、一対のチャック2A、2Bのうち、ウェハWの表面を上方に向けて該ウェハWを保持する他方のチャック2Bに対して、処理するウェハWの供給(ウェハロード)及び排出(ウェハアンロード)が行われることから、ウェハWをチャック2B上に載置することが可能となる。これにより、ウェハWの供給時にはチャック2Bに保持させやすくなり、またウェハWの排出時にはチャック2Bから受け取りやすくなる。従って、ウェハWの供給及び排出が、安定的にかつ高精度に行える。
しかも本実施形態では、他方のチャック2B位置ではエアバッグ7が収縮状態とされており、ワークチャック部4とチャック支持部5とが固定状態(リジッド状態)となっているので、上述したウェハWの受け渡しがより精度よく、安定的に行われるようになっている。
【0072】
また、他方のチャック2BからウェハWが排出されたときに、該チャック2Bのウェハ保持面(多孔質体を設けた面)を洗浄する構成としたので、該ウェハ保持面を洗浄しやすく、かつウェハ保持面の汚れ具合を視認しやすい。
【0073】
また本実施形態では、第1のウェハ処理手段11が、一方のチャック2Aが保持するウェハWに行う第1の処理は研磨加工であり、第2のウェハ処理手段12が、他方のチャック2Bが保持するウェハWに行う第2の処理は研磨加工、液剤塗布処理、及び表面テクスチャリング処理のうち少なくとも1つ以上であるので、下記の効果を奏する。
すなわち、研磨定盤17の外径はウェハW外径よりも大きく形成されていて重量が大きいことから、上記構成のように第1のウェハ処理手段11がウェハWに対して行う第1の処理が、研磨加工とされていることで、研磨定盤17をウェハWの下方に配置して装置を安定した構造とすることができるとともに、研磨加工の精度を確保しやすくなる。
また、第2のウェハ処理手段12が第2の処理を行うウェハWの表面は、上方を向いているため、該ウェハWに対して、上述した処理のうち特に液剤塗布処理(例えば親水化処理やスピンコーティング処理等)及び表面テクスチャリング処理を行いやすくなる。
【0074】
また、第1のウェハ処理手段11は、一方のチャック2Aに対して進退可能であり、第2のウェハ処理手段12は、他方のチャック2Bに対して進退可能であるので、下記の効果を奏する。
すなわちこの場合、第1のウェハ処理手段11を一方のチャック2Aから離間する向きに移動させ(後退させ)、第2のウェハ処理手段12を他方のチャック2Bから離間する向きに移動させることで、これら第1、第2のウェハ処理手段11、12に干渉させることなく一対のチャック2A、2Bを水平軸HA回りに回転させることができ、装置の部材同士の衝突が防止される。また、一対のチャック2A、2Bを水平軸HA回りに回転させた後は、第1のウェハ処理手段11を一方のチャック2Aに接近する向きに移動させ(前進させ)、第2のウェハ処理手段12を他方のチャック2Bに接近する向きに移動させることで、これらチャック2A、2Bが保持するウェハWに対して、第1、第2の処理をそれぞれ精度よく行うことができる。
【0075】
ここで、本実施形態で説明した上記構成とは異なり、やはり水平軸HA回りの回転時における部材同士の干渉を防止する目的で、例えばチャック2を支持する回転支持部3をインデックス径方向に伸縮させて、該チャック2が保持するウェハWを、進退移動不可とされた第1、第2のウェハ処理手段11、12に対向配置する(処理可能な位置に配置する)構成とする(例えば図1における左側のチャック2Aを左右方向に進退させる)ことや、回転支持部3が保持するチャック2を水平軸HA方向に進退させて、該チャック2が保持するウェハWを、進退移動不可とされた第1、第2のウェハ処理手段11、12に対向配置する構成とする(例えば図1における右側のチャック2Bを紙面に垂直な方向に進退させる)ことも可能ではあるが、この場合、回転支持部3及びチャック2の構造が複雑になるとともに重量も増大して、研磨加工等の処理の加工精度を確保することが難しくなる可能性がある。
従って、第1、第2のウェハ処理手段11、12がチャック2に対して進退移動する本実施形態の上記構成とすることにより、回転支持部3及びチャック2を複雑な構造にすることなく軽量化でき、研磨加工等の処理の加工品位をより安定して高めることができる。
【0076】
また、第1、第2のウェハ処理手段11、12が各チャック2A、2Bから後退した状態(或いは、第1、第2のウェハ処理手段11、12に対して、各チャック2A、2Bが後退した状態)とされて、これらチャック2A、2Bが水平軸HA回りに回転させられるときに、チャック2A、2Bから離間された第1、第2のウェハ処理手段11、12に対しては、第1、第2のメンテナンス手段31、32によってパッドコンディショニング(目立てや平坦化、洗浄等)や洗浄(ブラシやシャワーノズルによる洗浄)等の種々のメンテナンス処理(ウェハ処理手段11、12の性能を良好に維持するための処理)が行われるようになっている。つまり、一対のチャック2A、2Bを水平軸HA回りに回転させながら、この回転移動の時間等を利用して、第1、第2のウェハ処理手段11、12に対して次の処理を精度よく行うためのメンテナンス処理が施されるようになっている。
これにより、良好な処理状態を安定して維持することが可能になり、かつ、時間ロスをさらに削減して生産性を高めることができる。
【0077】
また、本実施形態のように、ウェハWを保持するチャック2を水平軸HA回りに回転させる構成においては、この回転時にウェハWに付着する研磨液等の液剤が流れ落ちるため、流れ落ちた液剤がチャック2を駆動するモータ等の駆動部8に浸入する可能性がある。また、洗浄による洗浄水の浸入も考えられる。
そこで、本実施形態で説明したように、チャック2のうち少なくとも駆動部8を覆うカバー部材15を設けることにより、ウェハWから流れ落ちた液剤や洗浄に使用した洗浄水が、該ウェハWを保持するチャック2の駆動部8に浸入することや、水平軸HAを挟んで反対側に位置する別のウェハWを保持するチャック2の駆動部8に浸入することを防止でき、装置を安定して稼働できる。
【0078】
また、チャック2においてウェハWを保持する部分(ウェハ保持面)には、本実施形態のように通気性を有する多孔質体等が用いられるが、このような多孔質体等は研磨屑や液剤等により目詰まりする可能性があることから、ウェハWを所定量処理する毎に、定期的に洗浄を行うことが好ましい。
そこで本実施形態のように、他方のチャック2BからウェハWが排出されたときに、該他方のチャック2Bに対して洗浄処理を行う洗浄手段が設けられることにより、下記の効果を奏する。
すなわち、他方のチャック2BによるウェハWの保持状態が解除され、このウェハWが排出(アンロード)されたときに、該チャック2Bに対して洗浄手段により洗浄を行うことができるので、チャック2の性能を安定して良好に維持できる。また、他方のチャック2BにおいてウェハWを保持する部分(ウェハ保持面)は、上方を向いていることから、目視により洗浄中や洗浄後の状態(汚れ具合など)を確認しやすい。
さらに本実施形態では、洗浄後に他方のチャック2Bに付着した水分を除去する水分除去機構が設けられているので、該チャック2BによるウェハWの保持状態をより安定したものとすることができる。
【0079】
尚、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0080】
例えば、前述の実施形態では、第1のウェハ処理手段11が、一方のチャック2Aに対して進退可能であり、第2のウェハ処理手段12が、他方のチャック2Bに対して進退可能であると説明したが、これに限定されるものではない。
すなわち、これら第1、第2のウェハ処理手段11、12のいずれか又は両方が、チャック2に対して進退可能とされていなくても構わない。この場合、ウェハ処理手段11、12に対して、チャック2のいずれか又は両方が、第1、第2のウェハ処理手段11、12に対して進退可能とされる。
【0081】
また、前述の実施形態では、第1のウェハ処理手段11が一方のチャック2Aから後退され、第2のウェハ処理手段12が他方のチャック2Bから後退された状態で、これら第1、第2のウェハ処理手段11、12に対して、第1、第2のメンテナンス手段31、32が各メンテナンス処理を行うとしたが、これに限定されるものではない。
すなわち、第1のウェハ処理手段11及び第2のウェハ処理手段12の少なくともいずれかに対して、メンテナンス処理を行うメンテナンス手段が設けられていればよい。或いは、メンテナンス手段は設けられていなくてもよい。
【0082】
また、前述の実施形態では、第1のウェハ処理手段11を一方のチャック2Aに対してチャック径方向に進退移動させることが可能な第1の進退手段21を備え、第2のウェハ処理手段12を他方のチャック2Bに対してチャック径方向に進退移動させることが可能な第2の進退手段22を備えているとしたが、これに限定されるものではない。
すなわち、第1、第2の進退手段21、22は、第1、第2のウェハ処理手段11、12をチャック径方向以外の方向(例えばチャック回転軸CA方向やチャック周方向)に進退移動させることとしてもよい。
【0083】
また、前述の実施形態では、一方のチャック2Aが保持するウェハWに対して第1の処理を行う場合には、該チャック2Aのエアバッグ7は膨張状態とされ、他方のチャック2Bが保持するウェハWに対して第2の処理を行う場合には、該チャック2Bのエアバッグ7は収縮状態とされるとしたが、これに限定されるものではない。
すなわち、例えば、他方のチャック2Bが保持するウェハWに対して第2の処理を行う場合においても、該チャック2Bのエアバッグ7が膨張状態とされていてもよい。
【0084】
その他、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施形態、変形例及び尚書き等で説明した各構成(構成要素)を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。また本発明は、前述した実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0085】
1 ウェハ研磨装置
2 チャック
2A 一方のチャック
2B 他方のチャック
3 回転支持部(インデックスフレーム)
8 駆動部
11 第1のウェハ処理手段
12 第2のウェハ処理手段
15 カバー部材
31 第1のメンテナンス手段(メンテナンス手段)
32 第2のメンテナンス手段(メンテナンス手段)
HA 水平軸(インデックス回転軸)
W ウェハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6