(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施形態)
第1の実施形態について
図1ないし
図8を参照して説明する。
【0015】
図1に示すように、第1の実施形態に係る荷電粒子ビーム描画装置1は、荷電粒子ビームによる描画を行う描画部2と、その描画部2を制御する制御部3とを備えている。この荷電粒子ビーム描画装置1は、荷電粒子ビームとして例えば電子ビームを用いた可変成形型の描画装置の一例である。なお、荷電粒子ビームは電子ビームに限られるものではなく、イオンビームなどの他の荷電粒子ビームであっても良い。
【0016】
描画部2は、描画対象となる試料Wを収容する描画室2aと、その描画室2aに連通する光学鏡筒2bとを有している。描画室2a内には、試料Wを支持するステージ11が設けられている。このステージ11は水平面内で互いに直交するX方向とY方向に移動可能に形成されており、そのステージ11の載置面上には、例えばマスクやブランクなどの試料Wが載置される。また、光学鏡筒2b内には、電子ビームBを出射する電子銃21と、その電子ビームBを集光する照明レンズ22と、ビーム成形用の第1のアパーチャ23と、投影用の投影レンズ24と、ビーム成形用の第1の偏向器25と、ビーム成形用の第2のアパーチャ26と、試料W上にビーム焦点を結ぶ対物レンズ27と、試料Wに対するビームショット位置を制御するための第2の偏向器28とが配置されている。
【0017】
この描画部2では、電子ビームBが電子銃21から出射され、照明レンズ22により第1のアパーチャ23に照射される。この第1のアパーチャ23は例えば矩形状の開口を有している。これにより、電子ビームBが第1のアパーチャ23を通過すると、その電子ビームの断面形状は矩形状に成形され、投影レンズ24により第2のアパーチャ26に投影される。なお、この投影位置は第1の偏向器25により偏向可能であり、投影位置の変更により電子ビームBの形状と寸法を制御することが可能である。その後、第2のアパーチャ26を通過した電子ビームBは、その焦点が対物レンズ27によりステージ11上の試料Wに合わされて照射される。このとき、ステージ11上の試料Wに対する電子ビームBのショット位置は第2の偏向器28により制御される。
【0018】
制御部3は、入力される描画データを描画装置用フォーマットに変換する描画データ変換部3aと、変換済みの描画データを記憶する描画データ記憶部3bと、その変換済みの描画データのフォーマットを検査するフォーマット検査装置3cと、検査済の描画データに基づいて描画部2を制御する描画制御部3dとを備えている。
【0019】
描画データ変換部3aは、例えば半導体集積回路などのレイアウトデータ(設計データやCADデータなど)を変換することで得られたデータである描画データを描画装置用フォーマットに変換する。なお、描画データは、その描画データを保管するデータベースなどの記憶装置(図示せず)から例えば有線又は無線のネットワークを介して描画データ変換部3aに入力される。
【0020】
描画データ記憶部3bは、描画データ変換部3aにより変換された描画装置用フォーマットの描画データを記憶する記憶部である。この描画データ記憶部3bとしては、例えば、磁気ディスク装置や半導体ディスク装置(フラッシュメモリ)などを用いることが可能である。
【0021】
フォーマット検査装置3cは、データ転送時などに描画データ記憶部3bから描画装置用フォーマットの描画データを読み出し、その描画データのフォーマットを検査する(詳しくは、後述する)。なお、フォーマット検査装置3cは、描画データが検査に合格すると、その合格した描画データを次段の描画制御部3dに送信するが、描画データが不合格になった場合にはエラーを立てる(エラーの通知)。
【0022】
描画制御部3dは、フォーマット検査装置3cから送られた描画装置用フォーマットの描画データに基づいて描画部2を制御する。詳述すると、描画制御部3dは、検査に合格した描画データに基づき、試料Wが載置されたステージ11を例えばX方向に移動させつつ、電子ビームBを偏向によりステージ11上の試料Wの各所定位置にショットする図形描画を行い、その後、ステージ11をY方向にステップ移動させてから前述と同様に図形描画を行い、これを繰り返して試料Wの描画領域に電子ビームBによる描画を行う(描画動作の一例)。
【0023】
ここで、前述の描画データは、
図2に示すように、チップ階層CP、そのチップ階層CPよりも下位のフレーム階層FR、そのフレーム階層FRよりも下位のブロック階層BL、そのブロック階層BLよりも下位のセル階層CL、そのセル階層CLよりも下位の図形階層FGに階層化されている(階層構造)。なお、変換前後の描画データの両方が階層化されている。このような描画データにおいて、ある階層が第1階層であるとすると、その第1階層の下階層が第2階層となり、その第2階層の下階層が第3階層となる。
【0024】
図2の例では、チップ階層CPの要素群(チップ群)の一部であるチップCP1が、フレーム階層FRの要素群(フレーム群)の一部である三個のフレームFR1〜FR3に対応している。また、フレーム階層FRの要素群の一部であるフレームFR2が、ブロック階層BLの要素群(ブロック群)の一部である十八個のブロックBL1〜BL18に対応している。ブロック階層BLの要素群の一部であるブロックBL9が、セル階層CLの要素群(セル群)の一部である四個のセルCL1〜CL4に対応している。セル階層CLの要素群の一部であるCL1が図形階層FGの要素群(図形群)の一部である複数の図形FG1、FG2に対応している。
【0025】
次に、前述のフォーマット検査装置3cについて詳しく説明する。
【0026】
図1に示すように、フォーマット検査装置3cは、1回目の検査で描画データに対してフォーマット検査を行うフォーマット検査部31と、フォーマット検査に合格した描画データに関する符号化情報及びフォーマット検査に関する検査情報を生成する情報生成部32と、その生成した符号化情報及び検査情報を記憶する情報記憶部33と、2回目以降の検査で符号化情報を用いて前述の描画データを検査する符号検査部34と、検査情報を検査する情報検査部35と、その検査結果に応じてフォーマット検査の処理内容を変えて検査を実行する検査実行部36と、情報記憶部33内の検査情報を更新する情報更新部37とを備えている。
【0027】
フォーマット検査部31は、1回目のフォーマット検査を行う場合、
図3に示すように、描画データ記憶部3bから描画データであるデータ1を読み出し、そのデータ1に対して検査内容に基づいたフォーマット検査を行う。このときの検査内容としては、例えば、「cell_max≦128」、「cell_level なし」及び「0≦date_type≦7」が設定されている。
【0028】
情報生成部32は、
図3に示すように、フォーマット検査部31から検査に合格したデータ1の符号(コード)やフォーマット検査(検査内容)に関する情報を取得し、データ1の符号化情報ファイル及び検査情報ファイルを生成する。
【0029】
ここで、データ1の初回のフォーマット検査合格時には、例えば、符号化情報ファイルにデータ1の符号が「“file name”=“符号1”」というように記述される。さらに、検査情報ファイルには、[検査項目]として「cell_max=“ON”」、「cell_level=“OFF”」及び「date_type=“ON”」が記述され、[検査パラメータ]として「cell_max=128」、「cell_level=non(なし)」及び「date_type=0−7(0以上から7以下の範囲)」が記述される。そして最後に、符号化情報ファイルに検査情報ファイルの符号が「inf_file=“符号2”」というように書き込まれる。なお、「cell_max」とはセルの最大サイズであり、「cell_level」とはセルのレベル(数値が大きい方がレベルが高い)であり、「date_type」とはデータのタイプ(種類)である。
【0030】
図1に戻り、情報記憶部33は、情報生成部32から送られたデータ1の符号化情報ファイル及び検査情報ファイルを記憶する。この情報記憶部33としては、例えば、磁気ディスク装置や半導体ディスク装置(フラッシュメモリ)などを用いることが可能である。
【0031】
符号検査部34は、2回目以降のフォーマット検査を行う場合、前述の描画データ記憶部3bから描画データであるデータ1を読み込むと共に、情報記憶部33からデータ1の符号化情報ファイルを読み込み、その符号化情報ファイルを用いてデータ1の誤り検査(符号検査)、すなわちデータ1の値と符号化情報ファイルの「file name」の符号1の値が一致するか否かを検査する。さらに、符号検査部34は、符号化情報ファイルを用いて検査情報ファイルの誤り検査(符号検査)、すなわち検査情報ファイルの値と符号化情報ファイルの「inf_file」の符号2の値が一致するか否かも検査する。
【0032】
なお、データ1及び検査情報ファイルの誤りが無かった場合、すなわちデータ1及び検査情報ファイルが検査に合格した場合には、データ1に対するフォーマット検査(検査内容の全検査項目に対する検査)が省略される。一方、データ1又は検査情報ファイルが検査に不合格になった場合には、エラーが通知され、その後、データ1に対するフォーマット検査(検査内容の全検査項目に対する検査)が実行されることになる。
【0033】
情報検査部35は、データ1及び検査情報ファイルが検査に合格した場合、その検査情報ファイルを検査して検査情報ファイルの変更、すなわちその検査情報ファイル内の検査内容と今回の検査内容とを比較して検査内容の変更を検出する(検査情報ファイル検査)。この情報検査部35は、検査情報ファイル内の検査内容の変更を検出すると、その変更の検出通知及び変更内容に関する変更情報を検査実行部36に送る。
【0034】
検査実行部36は、情報検査部35からの検出通知を受け、さらに、情報検査部35から送られた変更情報に基づき、検査情報ファイルの変更内容、すなわち変更された検査内容(検査項目)に対応するフォーマット検査を追加して実行する。
【0035】
情報更新部37は、前述の変更情報に基づいて変更内容を検査情報ファイルに適用し、検査情報ファイルを更新する(検査情報ファイル更新)。さらに、情報更新部37は符号化情報ファイルの「inf_file」の符号を書きかえ、符号化情報ファイルを更新する(符号化情報ファイル更新)。
【0036】
ここで、2回目以降の検査時には、例えば、
図4に示すように、検査内容の変更が無い場合、処理内容は「1.符号検査」及び「2.検査情報ファイル検査」のみとなる。一方、検査項目の変更(追加)がある場合、すなわち「cell_level」が「なし」から「3」に変更された場合、処理内容は「1.符号検査」及び「2.検査情報ファイル検査」に加え、「3.cell_level検査」、「4.検査情報ファイル更新」及び「5.符号化情報ファイル更新」となる。また、検査パラメータの変更がある場合、すなわち「cell_max」が「128」から「64」に変更された場合、処理内容は「1.符号検査」及び「2.検査情報ファイル検査」に加え、「3.cell_max検査」、「4.検査情報ファイル更新」及び「5.符号化情報ファイル更新」となる。このように検査内容に応じて処理内容が変わることになる。
【0037】
前述の符号検査では、データ1と「file name」の符号1との値が一致するか否かが検査される。それらの値が一致した場合、検査情報ファイルと「inf_file」の符号2との値が一致するか否かが検査される。それらの値が一致すると、前述の検査情報ファイル検査では、検査情報ファイルの内容から検査項目の変更の有無が判定され、今回の検査で変更(追加も含む)されている検査項目があれば、その検査項目に対する検査が実行される。最後に、検査対象となった検査項目や検査パラメータなどが検査情報ファイルに記述されて検査情報ファイルが更新され、その更新に応じて符号化情報ファイルの「inf_file」の符号も更新される。
【0038】
なお、前述のフォーマット検査部31や情報生成部32、情報記憶部33、符号検査部34、情報検査部35、検査実行部36、情報更新部37などは、電気回路などのハードウエア、あるいは、各機能を実行するプログラムなどのソフトウエアにより構成されても良く、さらに、それらの両方の組合せにより構成されても良い。また、前述の検査処理は、逐次処理(順次処理)であっても並列処理であっても構わない。さらに、前述のように、1つの描画データに対して一組の符号化情報ファイル及び検査情報ファイルを生成しているが、これに限るものではなく、例えば、描画データ内のチップ毎に符号化情報ファイル及び検査情報ファイルを生成するようにしても良い。
【0039】
次に、前述のフォーマット検査装置3cが行う検査処理の流れについて
図5を参照して説明する。
【0040】
図5に示すように、検査が1回目であるか否かが判断され(ステップS1)、検査が1回目であると判断されると(ステップS1のYES)、描画データ記憶部3bからデータが読み込まれ、そのデータに対するフォーマット検査がフォーマット検査部31により実行される(ステップS2)。その後、データがフォーマット検査に合格したか否かが判断され(ステップS3)、データがフォーマット検査に合格しなかった、すなわち不合格であったと判断されると(ステップS3のNO)、その旨を示すエラーが通知され(ステップS4)、処理がステップS1に戻される。一方、データがフォーマット検査に合格したと判断された場合には(ステップS3のYES)、データの符号化情報ファイル及び検査情報ファイルが情報生成部32により生成され、それらのファイルが情報記憶部33に保存される(ステップS5)。
【0041】
ここで、例えば、
図3に示すように、検査内容が「cell_max≦128」、「cell_level なし」及び「0≦date_type≦7」である場合、データ1が初回のフォーマット検査に合格すると、符号化情報ファイルにデータ1の符号1が書き込まれる。さらに、検査情報ファイルには、[検査項目]として、「cell_max=“ON”」、「cell_level=“OFF”」及び「date_type=“ON2”」が書き込まれ、さらに、[検査パラメータ]として、「cell_max=128」、「cell_level=non」及び「date_type=0−7」が書き込まれる。その後、符号化情報ファイルには、検査情報ファイルの符号2が書き込まれる。
【0042】
前述のステップS1において、検査が一回目ではない、すなわち二回目以降であると判断されると(ステップS1のNO)、描画データ記憶部3bからデータが読み込まれると共に、情報記憶部33から検査情報ファイルが読み込まれ、それらのデータ及び検査情報ファイルに対する符号検査が符号検査部34により実行される(ステップS6)。その後、データ及び検査情報ファイルが符号検査に合格したか否かが判断され(ステップS7)、データ及び検査情報ファイルが符号検査に合格しなかった、すなわち不合格であったと判断されると(ステップS7のNO)、その旨を示すエラーが通知され(ステップS8)、処理がステップS1に戻される。なお、ステップS4又はステップS8において、エラーが通知されると、データに対する全検査項目のフォーマット検査が実行されることになる。
【0043】
一方、前述のステップS7において、データ及び検査情報ファイルが符号検査に合格したと判断された場合には(ステップS7のYES)、検査情報ファイルの検査が情報検査部35により実行され(ステップS9)、検査内容が変更されているか否かが判断される(ステップS10)。その後、検査内容が変更されていないと判断されると(ステップS10のNO)、処理がステップS1に戻され、一方、検査内容が変更されていると判断されると(ステップS10のYES)、変更された検査項目のフォーマット検査のみが検査実行部36により追加実行される(ステップS11)。次いで、検査情報ファイル及び符号化情報ファイルの更新が情報更新部37により行われ(ステップS12)、処理がステップS1に戻される。
【0044】
ここで、例えば、
図4に示すように、検査項目の変更(「cell_level」の追加)がある場合には、「cell_level検査」が追加実行される。また、検査パラメータの変更(「cell_max」の変更)がある場合には、「cell_max検査」が追加実行される。なお、検査内容の変更の有無に関わらず、符号検査及び検査情報ファイル検査は実行される。このように、検査内容の変更がない場合には、符合検査の実行によって、全検査項目を検査するフォーマット検査を省略することが可能となるため、検査時間を短縮することができる。また、検査内容の変更があった場合には、全検査項目を検査するフォーマット検査を省略しつつも、変更された検査項目に対するフォーマット検査を行う。このため、検査時間の短縮を達成しつつ、正確な検査を行うことが可能となる。このようにして、検査の厳密化及び処理の効率化を両立することができる。
【0045】
以上説明したように、第1の実施形態によれば、描画データに対して再度フォーマット検査を行う場合、記憶した符号化情報を用いて描画データを検査し、その描画データが検査に合格すると、記憶した検査情報を検査してその検査結果に応じてフォーマット検査の処理内容を変えてフォーマット検査を行う。このように符号化情報を用いた検査の実行によって、全検査項目を検査するフォーマット検査を省略することが可能となるので、検査時間の短縮を実現することができる。さらに、検査情報に対する検査結果に応じてフォーマット検査の処理内容が変更されて検査が実行されるため、検査結果に対応する処理内容の検査を実行することが可能となり、正確な検査を実現することができる。例えば、検査情報に対する検査により検査情報の変更が検出された場合には、その変更内容に対応する検査を行うことが可能であり、正確な検査を達成することができる。
【0046】
なお、前述のように、検査条件(検査内容)の変更の度にその変更内容を検査情報ファイルに反映させて検査情報ファイルを更新しているが、これに限るものではなく、例えば、同じデータに対して異なる検査条件で複数回検査を行った場合には、複数回検査した値のうち、最も制約が厳しい値を検査情報ファイルの値として採用し、検査情報ファイルを更新するようにしても良い。これにより、検査条件が厳しい検査情報ファイルを用いることになるため、より正確な検査を実現することができる。
【0047】
ここで、例えば、
図6に示すように、検査内容が1回目から2回目のように変更され、すなわち「cell_max」が「128」から「64」に変更され、さらに、「cell_level」が「なし」から「3」に変更されると、検査情報ファイルの検査項目の「cell_level」が「OFF」から「ON」となり、検査パラメータの「cell_max」が「128」から「64」となり、さらに、「cell_level」が「non」から「3」となる。
【0048】
その後、検査内容が2回目から3回目のように変更され、すなわち「cell_max」が「64」から「128」に変更され、さらに、「cell_level」が「3」から「なし」に変更されると、検査情報ファイルの検査項目の「cell_level」が「ON」から「OFF」となり、検査パラメータの「cell_max」が「64」から「128」にとなり、さらに、「cell_level」が「3」から「non」となるはずである。ところが、最も制約の厳しい値を採用するため、検査情報ファイルの検査項目の「cell_level」は「ON」のままであり、検査パラメータの「cell_max」も「64」、さらに、「cell_level」も「3」のままである。
【0049】
次に、前述の検査処理の他の一例について説明する。前述の説明では、フォーマット検査装置3cから1台の描画部2に対してデータ転送を行っているが、これに限るものではなく、複数台、例えば2台の描画部2に対してデータ転送を行う場合の検査処理について説明する。ここで、2台の描画部2のうち第1の描画部を「Tool A」とし、もう1台の描画部を「Tool B」とする。
【0050】
1回目の検査時には、
図7に示すように、描画データ記憶部3bからデータ1がフォーマット検査部31により読み出され、そのデータ1に対して検査内容に基づくフォーマット検査が行われる。このときの検査内容としては、例えば、[検査項目]として「basic_check=“ON”」、「Tool A check=“ON”」及び「Tool B check=“OFF”」が設定されており、[検査パラメータ]として「cell_max=128」や「cell_level=512などが設定されている。この検査内容に基づいて、「Tool A」のための検査として、「basic_check」及び「Tool A check」が実行される。
【0051】
次に、データ1が前述のチェックに合格した場合、データ1の符号化情報ファイル及び検査情報ファイルが情報生成部32により生成される。例えば、符号化情報ファイルにデータ1の符号が「“file name”=“checksum1”」というように記述される。さらに、検査情報ファイルには、[検査項目]として「basic_check=“ON”」、「Tool A check=“ON”」及び「Tool B check=“OFF”」が記述され、[検査パラメータ]として「cell_max=128」や「cell_level=512などが記述される。そして最後に、符号化情報ファイルには、検査情報ファイルの符号が「“inf_file”=“checksum2”」というように書き込まれる。
【0052】
その後、2回目以降の検査時には、例えば、
図8に示すように、検査内容の変更が無い場合(第1の描画部に対するデータ転送時)、処理内容は「1.符号検査」及び「2.検査情報ファイル検査」のみとなる。一方、検査項目の変更がある場合(第2の描画部に対するデータ転送時)、すなわち「Tool A check」が「ON」から「OFF」に変わり、「Tool B check」が「OFF」から「ON」に変わる場合には、処理内容は、「1.符号検査」及び「2.検査情報ファイル検査」に加え、「3.Tool B 検査」、「4.検査情報ファイル更新」及び「5.符号化情報ファイル更新」となる。
【0053】
前述の符号検査では、データ1と「checksum1」との値が一致するか否かが検査され、それらの値が一致した場合には、検査情報ファイルと「checksum2」との値が一致するか否かが検査される。それらの値が一致すると、検査情報ファイル検査では、検査情報ファイルの内容から「basic_check」が行われているか否かが判定され、そのチェックが行われていると判定されると、「Tool B」のための検査として、「Tool B check」が追加実行される。その後、検査情報ファイルに「Tool B check=“ON”」が記述されて検査情報ファイルが更新され、その更新に応じて符号化情報ファイルの「inf_file」の符号も更新される。このように、検査内容の変更があった場合には、全検査項目を検査するフォーマット検査を省略しつつも、変更された検査項目に対するフォーマット検査を行うので、検査時間の短縮を達成しつつ、正確な検査を行うことが可能となる。
【0054】
(第2の実施形態)
第2の実施形態について
図9ないし
図12を参照して説明する。
【0055】
第2の実施形態は基本的に第1の実施形態と同様である。第2の実施形態では、第1の実施形態との相違点について説明し、第1の実施形態で説明した部分と同一部分は同一符号で示し、その説明も省略する。
【0056】
第2の実施形態では、情報生成部32は、フォーマット検査に合格したデータの検査情報として、検査項目や検査パラメータなどの検査内容の情報ではなく、フォーマット検査による検査対象情報、すなわちデータ1の実際の検査対象情報を生成する。情報記憶部33は、そのフォーマット検査による検査対象情報を記憶する。情報検査部35は、その情報記憶部33内の検査対象情報の有無を検出する。検査実行部36は、情報検査部35により検査対象情報の存在が検出されると、情報記憶部33内の検査対象情報を用いて、その検査対象情報に対応する検査、すなわち検査対象情報が存在する検査項目に対する検査を行う。一方、情報検査部35により検査対象情報の存在が検出されなかった場合、すなわち検査対象情報が存在しない検査項目に関しては、データ1のフォーマット検査を通常通り行う。
【0057】
ここで、例えば、1回目の検査時には、
図9に示すように、描画データ記憶部3bからデータ1がフォーマット検査部31により読み出され、そのデータ1に対して検査内容に基づくフォーマット検査が行われる。このときの検査内容としては、例えば、「cell_max≦128」、「cell_level なし」及び「0≦date_type≦7」が設定されている。
【0058】
次に、データ1が前述のチェックに合格すると、データ1の符号化情報ファイル及び検査情報ファイルが情報生成部32により生成される。例えば、データ1の初回のフォーマット検査合格時には、符号化情報ファイルに、データ1の符号が「“file name”=“符号1”」というように記述される。さらに、検査情報ファイルには、[検査対象情報]として「cell_max=100」、「cell_level=non」及び「date_type=1,2」が記述される。これらの情報は初回のフォーマット検査での検査対象情報であり、データ1に含まれるセルマックスの値100やデータ1に含まれる実際の値1、2などの情報を含んでいる。最後に、符号化情報ファイルには、検査情報ファイルの符号が「“inf_file”=“符号2”」というように書き込まれる。
【0059】
その後、2回目以降の検査時には、例えば、
図10に示すように、検査内容の変更が無い場合、処理内容は「1.符号検査」及び「2.検査情報ファイル検査」のみとなる。一方、検査項目の変更(追加)がある場合、すなわち「cell_level」が「なし」から「3」に変更された場合には、処理内容は「1.符号検査」及び「2.検査情報ファイル検査」に加え、「3.cell_level検査」、「4.検査情報ファイル更新」及び「5.符号化情報ファイル更新」となる。また、検査パラメータの変更がある場合、すなわち、「cell_max」が「128」から「64」に変更された場合には、処理内容は「1.符号検査」及び「2.検査情報ファイル検査」に加え、「3.cell_max検査」となる。このように検査内容に応じて処理内容が変わることになる。
【0060】
前述の符号検査では、データ1と「file name」の符号1との値が一致するか否かが検査される。それらの値が一致した場合、検査情報ファイルと「inf_file」の符号2との値が一致するか否かが検査される。それらの値が一致すると、検査情報ファイル検査では、検査情報ファイルの内容から今回の検査の検査対象情報の存在が判定され、その存在が検出された場合、存在する検査対象情報が用いられて検査が実行される。この検査対象情報の有無により検査内容の変更を把握することが可能である。なお、検査対象情報が存在しない検査項目に関しては、データ1の検査が通常通り実行される。最後に、データ1を読み込んで行った検査項目が検査対象情報として検査情報ファイルに追記され、さらに、符号化情報ファイルの「inf_file」の符号も更新される。
【0061】
なお、前述の「cell_level検査」では、検査情報ファイル(
図9参照)が「cell_level=non」となっており、検査対象情報が存在していないため、「cell_level≦3」に基づくデータ1の検査が実行される。また、前述の「cell_max検査」では、検査情報ファイル(
図9参照)が「cell_max=100」となっており、検査対象情報が存在しているため、データ1の元情報ではなく、実際の検査対象情報が用いられて検査が行われる。ここでは、検査内容が「cell_max≦64」であり、検査情報ファイル内の検査対象情報が「cell_max=100」となっているため、「cell_max」は64以下とならず、検査は不合格となり、エラーが立てられる(エラー通知)。このとき、データ1の元情報(例えば、バイナリデータ)ではなく、検査情報ファイル内の実際の検査対象情報(例えば、テキストデータ)を用いて検査を行うので、描画データの元情報を用いる場合(バイナリデータを読みにいって処理を行う場合など)に比べ、処理時間を短縮することができる。
【0062】
以上説明したように、第2の実施形態によれば、前述の第1の実施形態と同様の効果を得ることが可能であり、検査時間の短縮及び正確な検査を実現することができる。さらに、実際の検査対象情報を用いて、その検査対象情報に対応する検査を行うことによって、描画データの元情報を用いる場合、例えばバイナリデータを読みにいって処理を行う場合などに比べ、処理時間を短縮することができる。
【0063】
ここで、前述の検査処理の他の一例について説明する。前述の説明では、検査内容のデータタイプを「0≦date_type≦7」というように設定しているが、これに限るものではなく、データタイプの範囲を規定するファイル(テキストファイル)を用いる場合の検査処理について説明する。
【0064】
1回目の検査時には、
図11に示すように、描画データ記憶部3bからデータ1がフォーマット検査部31により読み出され、そのデータ1に対して検査内容に基づくフォーマット検査が行われる。このときの検査内容としては、例えば、「cell_max≦128」、「cell_level なし」及び「aux_check あり」が設定されており、さらに、aux.xmlファイルが入力される。このファイルは、データ1のデータタイプの範囲を決めている。この検査内容に基づいて、データ1及びaux.xmlファイルのための検査として、「aux_check」が実行される。
【0065】
次に、データ1及びaux.xmlファイルが前述のチェックに合格した場合、符号化情報ファイル及び検査情報ファイルが情報生成部32により生成される。例えば、データ1の初回のフォーマット検査合格時には、符号化情報ファイルに、データ1の符号が「“file name”=“checksum1”」というように、加えて、aux.xmlファイルの符号が「aux=“checksum2”」というように記述される。さらに、検査情報ファイルには、[検査対象情報]として「cell_max=100」、「cell_level=non」及び「date_type=1,2」が記述される。これらの情報は初回のフォーマット検査での検査対象情報であり、データ1に含まれるセルマックスの値100やデータ1に含まれる実際の値1、2などの情報を含んでいる。最後に、符号化情報ファイルには、検査情報ファイルの符号が「“inf_file”=“checksum3”」というように書き込まれる。
【0066】
その後、2回目以降の検査時には、例えば、
図12に示すように、検査内容の変更が無い場合、処理内容は「1.符号検査」及び「2.検査情報ファイル検査」のみとなる。一方、検査パラメータの変更がある場合、すなわちaux.xmlファイルが変更された場合には、処理内容は「1.符号検査」及び「2.検査情報ファイル検査」に加え、「3.aux_check 検査」、「4.検査情報ファイル更新」及び「5.符号化情報ファイル更新」となる。
【0067】
前述の符号検査では、データ1と「checksum1」との値が一致するか否か、さらに、aux.xmlファイルと「checksum2」との値が一致するか否かが検査される。データ1と「checksum1」との値が一致し、aux.xmlファイルと「checksum2」との値が一致しない場合、検査情報ファイルと「checksum3」との値が一致するか否かが検査される。それらの値が一致すると、検査情報ファイル検査では、検査情報ファイルの内容から「date_type」が書き込まれているか否かが判定され、それが書き込まれていると判定されると、その「date_type」を元とする「aux_check」が実行される。このチェックにデータ1が合格すると、符号化情報ファイルの「aux」の符号が更新される。
【0068】
なお、前述の「aux_check」では、検査情報ファイル(
図11参照)が「date_type=1,2」となっており、検査対象情報が存在しているため、データ1の元情報ではなく、実際の検査対象情報が用いられて検査が行われる。ここでは、「date_type」の1、2という数値とaux.xmlファイルで規定されているデータタイプの範囲とを比較する検査が実行される。これにより、描画データの元情報を用いる場合、例えばバイナリデータを読みにいって処理を行う必要がある場合などに比べ、処理時間を短縮することができる。
【0069】
(第3の実施形態)
第3の実施形態について
図13を参照して説明する。
【0070】
第3の実施形態に係るパターン検査装置は、第1の実施形態に係るフォーマット検査装置を備えている。第3の実施形態では、第1の実施形態との相違点について説明し、第1の実施形態で説明した部分と同一部分は同一符号で示し、その説明も省略する。なお、第1の実施形態に係るフォーマット検査装置にかえて第2の実施形態に係るフォーマット検査装置を用いるようにしても良い。
【0071】
図13に示すように、第3の実施形態に係るパターン検査装置51は、第1の実施形態に係るフォーマット検査装置3cと、パターンを検査するパターン検査部52とを備えている。フォーマット検査装置3cには、例えば半導体集積回路などのレイアウトデータ(設計データやCADデータなど)を変換することで得られた第1データ(描画データ)が入力される。また、パターン検査部52には、フォーマット検査装置3cによるフォーマット検査に合格した第1データ、さらに、荷電粒子ビーム描画装置1により試料W上に実際に描画されたパターンに基づいて作成された第2データ(描画データ)が入力される。
【0072】
第1データは、そのデータを保管するデータベースなどの記憶装置(図示せず)から有線又は無線のネットワークを介してフォーマット検査装置3cに入力され、フォーマット検査合格後、パターン検査部52に入力される。また、第2データも同様にそのデータを保管するデータベースなどの記憶装置(図示せず)から有線又は無線のネットワークを介してパターン検査部52に入力される。なお、これらのデータは第1の実施形態に係る描画データと同様に、例えば、チップ階層CP、フレーム階層FR、ブロック階層BL、セル階層CL及び図形階層FGというように階層化されている(
図2参照)。
【0073】
フォーマット検査装置3cは、入力された第1データのフォーマットを第1の実施形態と同じように検査する。なお、フォーマット検査装置3cは、第1データが検査に合格すると、その合格した第1データを次段のパターン検査部52に送信するが、描画データが不合格になった場合にはエラーを立てる(エラーの通知)。
【0074】
パターン検査部52は、入力された各データに基づいて、荷電粒子ビーム描画装置1により試料W上に実際に描画されたパターンなどを検査する。この検査では、例えば、実際に描画されたパターンと描画データとを比較するような検査が行われる。
【0075】
以上説明したように、第3の実施形態によれば、前述の第1の実施形態と同様の効果を得ることが可能であり、検査時間の短縮及び正確な検査を実現することができる。また、第1の実施形態に係るフォーマット検査装置3cにかえて第2の実施形態に係るフォーマット検査装置3cを用いた場合には、前述の第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0076】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。