(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6138630
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】津波用避難施設
(51)【国際特許分類】
B63C 9/06 20060101AFI20170522BHJP
E04H 9/14 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
B63C9/06
E04H9/14 Z
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-176318(P2013-176318)
(22)【出願日】2013年8月28日
(65)【公開番号】特開2015-44468(P2015-44468A)
(43)【公開日】2015年3月12日
【審査請求日】2016年3月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005902
【氏名又は名称】三井造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091591
【弁理士】
【氏名又は名称】望月 秀人
(72)【発明者】
【氏名】塚原 靖男
(72)【発明者】
【氏名】笠間 慈弘
(72)【発明者】
【氏名】茅野 良太
(72)【発明者】
【氏名】門乢 宏文
(72)【発明者】
【氏名】山田 満
【審査官】
中村 泰二郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−226099(JP,A)
【文献】
特開2013−096064(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/073060(WO,A1)
【文献】
特開2013−056651(JP,A)
【文献】
特開2010−150814(JP,A)
【文献】
実開昭55−040057(JP,U)
【文献】
特開平11−210826(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63C 9/06, 9/02
B63B 35/44
E04H 9/14, 9/02,12/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
津波が襲来した際に海岸近辺の人々が避難するための津波用避難施設において、
地上に設置した適宜高さの複数本の支柱と、
前記支柱の上部に着脱自在のフロートとからなり、
前記支柱はフロートの周縁部に適宜な本数で配してあり、該支柱の先端をフロートの周縁部に形成した受け透孔を貫通させるとともに、フロートの下面に当接する支持フランジ部を該支柱に形成し、
前記フロートに海面が到達した場合には、該フロートが浮力を受けて前記支柱から離脱して海面に浮遊することを特徴とする津波用避難施設。
【請求項2】
前記受け透孔に摩擦係数の小さい材料によりスペーサ環を挿入し、該スペーサ環に前記支柱の先端を嵌合させてあることを特徴とする請求項1に記載の津波用避難施設。
【請求項3】
津波が襲来した際に海岸近辺の人々が避難するための津波用避難施設において、
地上に設置した適宜高さの支柱と、
前記支柱の上部に着脱自在のフロートとからなり、
前記支柱を円筒形であって上端部を該円筒に連続する円錐台形に形成し、前記フロートの下面中央部に前記円錐台形を収容する円錐台形の受け部を形成し、これら円錐台形の外周面と受け部の内周面との間にローラーを介在させて、前記フロートが支柱と着脱自在とし、前記フロートに海面が到達した場合には、該フロートが浮力を受けて前記支柱から離脱して海面に浮遊することを特徴とする津波用避難施設。
【請求項4】
前記フロートの中心部には、地上から該フロートにまで登るための螺旋階段が配設されていることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかに記載の津波用避難施設。
【請求項5】
前記フロートと支柱とを連結索で連結してあることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかに記載の津波用避難施設。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、大津波等が発生した際に、海岸付近で遭遇した人々が避難して大津波等により被災することを回避するための津波用避難施設に関する。
【背景技術】
【0002】
海底で巨大地震が発生した場合に沿岸部には大津波が発生するおそれがあり、大津波の襲来に対しては、一刻も早く高台等に避難することを要する。しかし、海岸付近に居る人々が安全な高台等に避難するのには時間を要する。また、津波の大きさによっては海岸付近の数階建ての建築物でさえも破壊してしまうおそれがあるため、該建築物に避難することは危険を伴うことにもなる。
【0003】
そのため、津波に対して避難できる避難施設を海岸付近に設置することが提案されている。例えば、特許文献1には、津波の発生時に海岸近くの住民が迅速に避難することが可能であるとともに、高い津波が発生した時にも充分な安全性を確保することができ、高齢者や子供等であっても容易に迅速な避難が可能であり、しかも設備コストやメンテナンス費用を低く抑えることができて経済的とされたフロート式津波避難所が提案されている。
【0004】
また、特許文献2には、津波や洪水等の水害発生時に避難するためのフロート式の緊急避難所と、その建造方法が提案されている。さらに、特許文献3には、平時に於いては集会所及び備蓄倉庫等に供しながら、津波到来の緊急時には当該施設に逃げ込んで難を逃れ、雨露を凌ぎながら数日間の籠城をも可能となる津波避難施設が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−112089号公報
【特許文献2】特開2012−251370号公報
【特許文献3】特開2012−188924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されたフロート式津波避難所は、地中に打ち込まれた支柱と、該支柱の地上部分に設けられた避難台とからなる津波避難所であって、前記避難台は、該避難台を海面上に浮遊させることが可能なフロートを備えてなるとともに、該フロートの浮力により前記支柱に沿って上昇可能とされてなるフロート式津波避難所とされている。
【0007】
また、引用文献2に記載された緊急避難所は、地面に打ち込まれて地上に起立する一本の支柱と、中央部の開口に支柱が挿入されて、支柱に沿って浮力により昇降自在なフロートと、フロート上に配置され、内部に居住空間を有し、中央部の開口に支柱が挿入されて、フロートの浮力により支柱に沿って昇降自在な構造物とからなる構成とされている。
【0008】
また、引用文献3に記載された発明は、地面を掘削して形成したピット内に椀型のフロートを収容させ、該フロートの中央部に地面に起立させた支柱を貫通させた構成を備えている。そして、津波襲来時に、前記フロート内に避難すると、津波による海水の襲来によりフロートが前記支柱にそって上昇するようにされている。
【0009】
前述した特許文献1〜3に開示された避難施設は、支柱によって拘束されている構造物であり、例えば、支柱を越えた高さまでの大津波が襲来した場合には、いずれの避難所も水面下に没してしまうことになる。このため、避難した人々は避難所内で海水に襲われてしまい、被災してしまうおそれがある。
【0010】
このため、支柱の高さを予想可能な津波の高さ以上のものとすることが考えられるが、その場合には支柱の建設費が増大してしまうことになる。また、これら特許文献1〜3に開示された避難施設は、通常時は地上や海面に設置されており、特に特許文献2、3に開示された避難施設では、通常時には設置場所を確保することを要するのみで機能的に活用されないおそれがある。
【0011】
そこで、この発明は、大津波の発生により海面が異常に上昇おそれがある場合に、海岸近辺の人々の避難場所を確保すると共に、海面の上昇によっても確実に避難を行うことができる津波用避難施設を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するための技術的手段として、この発明に係る津波用避難施設は、津波が襲来した際に海岸近辺の人々が避難するための津波用避難施設において、地上に設置した適宜高さの
複数本の支柱と、前記支柱の上部に着脱自在のフロートとからなり、
前記支柱はフロートの周縁部に適宜な本数で配してあり、該支柱の先端をフロートの周縁部に形成した受け透孔を貫通させるとともに、フロートの下面に当接する支持フランジ部を該支柱に形成し、前記フロートに海面が到達した場合には、該フロートが浮力を受けて前記支柱から離脱して海面に浮遊することを特徴としている。
【0013】
海岸付近等にフロートを頂部に配設した支柱による避難用タワーを設置するものであり、フロートを支柱に対して着脱自在とし、大津波が襲来して海面が支柱の頂部より上昇した場合には、フロート
も上昇して、支柱から離脱するようにしたものである。離脱したフロートは海面に浮遊する。このフロートに人々が避難できるようにすると共に、避難の際に必要となる食料や飲料水、救命胴衣、医薬品、信号灯、ラジオ等の保管庫を備えさせてある。また、通常時には展望デッキ等として利用して、海岸からの景観を望めるようにする。
また、フロートを支柱に支持する構造には、支柱をフロートに形成した前記受け透孔に貫通させて着脱自在としたものである。大津波等の襲来によって海面が上昇した場合には、フロートが浮力を受けて上昇することにより支柱から離脱する。このとき、フロートは支柱に案内されて鉛直方向に上昇するので、上昇時の安定性が確保される。
また、前記フロートは少なくとも3本の支柱で支持することが可能であるが、フロートの大きさや構造に応じて必要な本数とすればよい。
【0014】
なお、前記支柱の高さは、予想される津波の高さよりも高いものとしてあり、支柱の高さよりも低い位置まで海面が上昇した場合には、フロートが離脱せずに津波が消滅するまでフロート内で待機する。
【0015】
また、請求項2の発明に係る津波用避難施設は、
前記受け透孔に摩擦係数の小さい材料によりスペーサ環を挿入し、該スペーサ環に前記支柱の先端を嵌合させてあることを特徴としている。
【0016】
大津波等の襲来によって海面が上昇した場合に、該フロートが支柱に対して円滑に上昇し、離脱するように、前記受け透孔内に摩擦係数の小さい材料、例えば、フッ素樹脂等により形成したスペーサ環を挿入し、これに支柱を貫通させる構造としたものである。
【0018】
また、請求項3の発明に係る津波用避難施設は、
津波が襲来した際に海岸近辺の人々が避難するための津波用避難施設において、地上に設置した適宜高さの支柱と、前記支柱の上部に着脱自在のフロートとからなり、前記支柱を円筒形であって上端部を該円筒に連続する円錐台形に形成し、前記フロートの下面中央部に前記円錐台形を収容する円錐台形の受け部を形成し、これら円錐台形の外周面と受け部の内周面との間にローラーを介在させて、前記フロートが支柱と着脱自在とし、前記フロートに海面が到達した場合には、該フロートが浮力を受けて前記支柱から離脱して海面に浮遊することを特徴としている。
【0019】
すなわち、支柱を円筒形として、この円筒形の支柱の上端にフロートを載置させて支持させたものである。
これら支柱とフロートの間に前記ローラーを介在させて、フロートが支柱から円滑に離脱できるようにした構造である。支柱が円筒形であるため、適宜封止されていれば、津波が襲来した場合に、該支柱の内部に浸水するまでの時間を要するから、避難するまでに要する時間を引き延ばすことができ、また、該内部に必要な物資を貯留させておくことができる。
【0027】
また、請求項
4の発明に係る津波用避難施設は、前記フロートの中心部には、地上から該フロートにまで登るための螺旋階段が配設されていることを特徴としている。
【0028】
津波の発生時には、人々は前記フロートに避難することになるが、フロートは支柱の上端にあるため、フロートに避難するための手段を必要とする。このための避難手段としてフロートに通じる螺旋階段をフロートの中心部に配して、該螺旋階段を使って地上からフロートへ登れるようにしたものである。
【0029】
また、請求項
5の発明に係る津波用避難施設は、前記フロートと支柱とを連結索で連結してあることを特徴としている。
【0030】
大津波が襲来した際に海面を浮遊した場合に不用意に漂流しないように、フロートを拘束するようにしたものである。連結索としては、ワイヤーロープやリンクチェーン等を利用することができる。また、津波が消滅する際には海面が下降するが、海水が引いたときには、フロートは地上まで下降することになるため、この下降を許容する長さの連結索とする。
【発明の効果】
【0031】
この発明に係る津波用避難施設によれば、大津波発生時には前記フロートへ避難する。津波による海面の上昇がフロートまで達しない場合には、フロート内で津波が消滅するまで待機する。海面がフロートの高さ以上に上昇した場合には、該フロートが前記支柱から離脱して、海面を浮遊する。このため、フロートに避難した人々は海面が下降するのにフロート内で待機する。
【0032】
フロートと支柱とを前記連結索で連結してあることにより、フロートが不用意に浮遊してしまうことがない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】この発明の第1の実施形態に係る津波用避難施設を示す概略平面図である。
【
図2】
図1に示す津波用避難施設の概略正面図である。
【
図3】この発明の第2の実施形態に係る津波用避難施設を示す図で、(a)は上部の正面図、(b)は(a)におけるA−A線断面図である。
【
図4】この発明の第3の実施形態に係る津波用避難施設を示す概略正面図でる。
【
図5】
図4に示す第3の実施形態に係る津波用避難施設を示す概略の分解斜視図である。
【
図6】この発明の第4の実施形態に係る津波用避難施設を示す概略正面図である。
【
図7】この発明の第5の実施形態に係る津波用避難施設の要部を示す断面図である。
【
図8】この発明の第6の実施形態に係る津波用避難施設を示す概略の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図示した好ましい実施の形態に基づいて、この発明に係る津波用避難施設を具体的に説明する。
【0035】
図1および
図2にはこの発明に係る津波用避難施設1の第1の実施形態を示してあり、
図1は概略平面図、
図2は正面図である。この津波用避難施設1は、
図2に示すように、地上Gに設置された複数本の支柱2の頂部に内部が中空となったフロート3が該支柱2に着脱自在に載置されている。支柱2は安定してフロート3を支持できる本数があればよく、少なくとも3本の支柱2を備えている。フロート3の下面であって、前記支柱2の先端が臨んだ位置には、受け部としての逆凹状に形成された受け部材4が取り付けられており、この受け部材4に支柱2の先端部が挿入されて、フロート3が支柱2に対して着脱自在とされている。なお、受け部材4と支柱2の連結状態は、通常時にはフロート3が安定して支持されるようにしてある。
【0036】
前記フロート3の中央部には地上Gからこのフロート3に登ることができる螺旋階段5が設けられており、フロート3の床面にはこの螺旋階段5に臨んで開口3aが形成されており、螺旋階段5からこの開口3aを介してフロート3の内部に進入することができるようにしてある。また、前記開口3aに対してフロート3の床面にはハッチ6が設けられており、該ハッチ6を閉成することにより開口3aが閉塞されるようにしてある。また、フロート3の上部は該フロート3の天井を利用して展望デッキ3bとされている。この展望デッキ3bには入口バックス3cを介して出入りでき、フロート3の内部にこの入口ボックス3cへ続く階段3dが設けられている。また、展望デッキ3bには避難の際に必要となる食料や飲料水、救命胴衣、医薬品、信号灯、ラジオ、避難梯子等の保管庫3eが備えられている。なお、この保管庫3eは、フロート3の内部に設けても構わないが、展望デッキ3bに具備させれば、フロート3内に避難する人数を多くすることができる。また、展望デッキ3bの周縁部は安全柵3fで囲まれている。
【0037】
また、フロート3と支柱2とは、図示しない連結索で連結され
ている。この連結柵は植物等の繊維で編まれたロープやワイヤーロープ、リンクチェーン等によって形成され、少なくとも支柱2の高さよりも長いものとされている。
【0038】
地震が発生して津波が襲来するおそれがある場合には、この津波用避難施設1に避難することを要する人々は、前記螺旋階段5を使ってフロート3の内部に避難する。人々の避難が完了したならば、前記ハッチ6を閉成してフロート3の前記開口3aを閉塞する。これにより、津波により海面がフロート3に達した場合でも、海水がフロート3の内部に浸入することが防止される。
【0039】
津波の規模が大きく、海面が支柱2の高さ以上に上昇すると、フロート3が浮力を受けて上昇する。これにより、前記受け部材4が支柱2から離脱して、フロート3が海面を浮遊することになる。このため、フロート3の内部に避難した人々は、津波が消滅するまでフロート3の内部で待機できる。あるいは、展望デッキ3bに登って周囲の状況を確認できる。また、フロート3は地上Gに固定された図示しない連結索で支柱2に連結されているから、津波による海水の流れによっても漂流することがない。
【0040】
津波が消滅して海水が引き戻されると、海面が降下に伴われてフロート3も降下する。このとき、図示しない前記連結索によって支柱2と連結されているから、フロート3は支柱の近辺に降下することになる。地上Gまで降下したならば、前記階段3dを使って入口ボックス3cから展望デッキ3bに出て、前記保管庫3eに保管されている避難梯子を使って展望デッキ3bから地上Gに降りる。これにより、大津波の襲来による被害を極力抑制することができる。
【0041】
図3にはこの発明の第2の実施形態に係る津波用避難施設10を示してある。なお、第1実施形態に係る津波用避難施設1と同一の部位には同一の符号を付してある。
【0042】
この第2実施形態に係る津波用避難施設10の支柱11は、円筒形に形成されている。他方、フロート13の下面には、この支柱11の円筒形の端部が臨む位置に環状で凹部が形成されている受け部としての環状受け部材12が取り付けられており、支柱11の上端部はこの環状受け部材12に挿入されて、フロート13が支柱11と着脱自在とされている。この支柱11の円筒形の内部に螺旋階段5が設けられている。
【0043】
この第2実施形態に係る津波用避難施設10では、螺旋階段5を使ってフロート13の内部に避難する。避難の際、円筒形の支柱11内の螺旋階段5を使用するため、津波がこの津波用避難施設10に到達しても、支柱11内部への海水の浸入に時間を要するため、避難のための時間を長くすることができる。
【0044】
海面がフロート13に到達すると、前記環状受け部材12が支柱11の先端から離脱してフロート13が海面に浮遊することになる。浮遊したフロート13は支柱11と図示しない連結索で連結されいるため、漂流してしまうことがない。
【0045】
図4と
図5にはこの発明の第3の実施形態に係る津波用避難施設20を示してある。なお、第1実施形態に係る津波用避難施設1と同一部の部位には同一の符号を付してある。この実施形態に係る支柱21は円筒形に形成されており、上面を逆円錐台形に形成して受け部として受け面21aとしてある。フロート22の下面であってこの受け面21aと対向する部分を、該受け面21aに合致する逆円錐台形の被支持面22aで形成してある。すなわち、支柱21にフロート22を載置させて支持させてある。
【0046】
また、
図5に示すように、前記受け面21aには、前記フロート22が地震等でずれてしまわないように、表面処理が施されて該受け面21aと被支持面22aとの間の摩擦係数が大きくなるようにしてある。このため、地震等のよってフロート22aが支柱21aから脱落しないようにしてある。
【0047】
津波の襲来によって海面がフロート22の高さまで上昇すると、フロート22は浮力を受けて上昇し、支柱21から離脱する。その後、海面に浮遊してフロート22内に避難した人々は津波が消滅するまで待機する。
【0048】
図6はこの発明の第4の実施形態に係る津波用避難施設30を示してある。なお、第1実施形態に係る津波用避難施設1と同一部の部位には同一の符号を付してある。この実施形態に係る津波用避難施設30では、支柱31は円筒形の主体部31aの上部に、受け部として円錐台形による載置部31bが形成されており、フロート32の下面にはこの載置部31bと合致する円錐台形の凹部による被支持部32aが形成されている。そして、これら載置部31bと被支持部32aとの間の適宜位置には、適宜数のローラー33を介在させてある。
【0049】
津波が襲来して海面がフロート32まで上昇すると、フロート32も上昇し、支柱31から離脱することになる。このとき、前記ローラー33に案内されて、フロート32の被支持部32aが前記載置部31aから確実に離脱すると共に、フロート32の姿勢が保たれて離脱する。
【0050】
図7にはこの発明の第5の実施形態に係る津波用避難施設40を示してある。この第5実施形態に係る津波用避難施設40は、第1実施形態に係る津波用避難施設1の支柱2とフロート3との連係の構造を変更したものである。この津波用避難施設40の支柱41は、フロート42に形成された受け部としての受け透孔42aを貫通させてある。支柱41の前記フロート42の下方に位置する部分には、受け部として支持フランジ部41aが形成されており、この支持フランジ部41aにゴム座43を介してフロート42が支持されている。また、前記受け透孔42aの内部には、例えばフッ素樹脂等のような摩擦係数の小さい材料からなるスペーサ環44が嵌合させてあり、このスペーサ環44に前記支柱41の上端部が挿入されている。
【0051】
津波による海面の上昇に伴われてフロート42が上昇すると、前記受け透孔42aから支柱41が抜去されることにより、該フロート42が支柱41から離脱して、フロート42は海面に浮遊することになる。また、フロート42が支柱41から抜去される際には、前記スペーサ環44に摩擦係数の小さい材料が用いられているから、支柱41から円滑に抜去されることになる。
【0052】
図8には、この発明の第6の実施形態に係る津波用避難施設50を示してある。この第6実施形態の支柱51は上面が逆円錐台形の受け面51aが受け部として形成されており、この受け面51aに衝撃吸収シート51bと摩擦低減シート51cとが順に貼着されている。これらのシート51b、51cにフロート52が載置されている。そして、同図に示すように、前記受け面51aの逆円錐台形の上底の径よりも小さい径を上底とした円錐台形からなる被載置面52aが前記フロート52の下面に形成されている。このため、同図に示すように、支柱51の上面とフロート52の下面との間には遊びの空間Sが形成されている。
【0053】
この第6実施形態に係る津波用避難施設50によれば、地震発生時に生じる水平方向の振動に対しては、前記摩擦低減シート51cによりフロート52が該摩擦低減シート51c上を滑動して、前記空間S内で該フロート52が移動することにより地震により生じる横揺れの振動エネルギが打ち消されて振動が緩和される。また、上下方向の振動エネルギは前記衝撃吸収シート51bによって吸収されて、振動が緩和されて、フロート52へ伝達される衝撃が緩和される。
【0054】
津波が襲来した場合には、海面の上昇に伴われてフロート52も上昇することになり、支柱51の受け面51aから離脱して海面に浮遊することになる。
【0055】
以上説明したいずれの実施形態でも、フロート内を避難空間として説明したが、フロートと避難空間を形成する筐体とを別体にして、これらを連係させて構成することもできる。
【0056】
また、以上説明した実施形態に係るフロートでは、いずれも上面を展望デッキとして利用することができるので、平時には展望デッキとして観光客に開放したり、あるいは海洋の観察用に利用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
この発明に係る津波用避難施設によれば、津波発生時に海岸付近の人々が迅速に避難できる津波用避難施設を提供することができると共に、平時には展望デッキとして利用することにより有効に利用することができる津波用避難施設を提供する。
【符号の説明】
【0058】
1 津波用避難施設
2 支柱
3 フロート
3a 開口
3b 展望デッキ
3c 入口ボックス
3d 階段
3e 保管庫
3f 安全柵
4 受け部材(受け部)
5 螺旋階段
6 ハッチ
10 津波用避難施設
11 支柱
12 環状受け部材(受け部)
13 フロート
20 津波用避難施設
21 支柱
21a 受け面(受け部)
22 フロート
22a 被支持面
30 津波用避難施設
31 支柱
31a 主体部
31b 載置部(受け部)
32 フロート
32a 被支持部
40 津波用避難施設
41 支柱
41a 支持フランジ部(受け部)
42 フロート
42a 受け透孔
42 ゴム座
44 スペーサ環
50 津波用避難施設
51 支柱
51a 受け面(受け部)
51b 衝撃吸収シート
51c 摩擦低減シート
G 地上
S 空間