【文献】
          De-Yin Wang et al,BaZrSi3O9:Eu2+ a cyan-emitting phosphor with high quantum efficiency for white light-emitting diodes,Journal of Materials Chemistry,2011年,21,10818-10822
        
        【文献】
          De-Yin Wang et al,"Synthesis, crystal structure, and photoluminescence of a novel blue-green emitting phosphor:BaHfSi3O9:Eu2+,Journal of Materials Chemistry,2011年,21,18261-18265
        
      
    (58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
  100年よりも長期にわたって、無機蛍光物質は、それらが、可能な限り適正な手法でそれぞれの適用分野の要件を満たし、それと同時に可能な限りエネルギーを消費しないよう、発光型の光スクリーン、X線増幅器および放射線源または光源のスペクトルを適合させるために、進展した。励起のタイプ、すなわち、一次放射線源の性質および必要な発光スペクトルは、ホスト格子の選択および活性化剤にとって、ここでは極めて重要である。
【0003】
  特に、一般的な照明、すなわち低圧放電ランプおよび発光ダイオードのための蛍光光源にとって、新規な蛍光物質は、絶えず、エネルギー効率、色の再現性および安定性をさらに増大させるために進展されている。
【0004】
  加法混色によって白色発光無機LED(光発光ダイオード)を得るためには、原則的に、3つの異なるアプローチがある:
【0005】
  (1)白色光が、赤色、緑色および青色のスペクトル領域で発光する3つの異なる光発光ダイオードからの光を混合することにより生成されるケースにおける、RGB  LED(赤色+緑色+青色のLED)。
【0006】
  (2)UV領域で発光する半導体(一次光源)が、赤色、緑色および青色のスペクトル領域で発光する3つの異なる蛍光物質(変換蛍光物質)が励起される環境へ光を発光するケースにおける、UV  LED+RGB蛍光物質系。
【0007】
  (3)発光半導体(一次光源)が、例えば青色光を発光し、それが1種または2種以上の蛍光物質(変換蛍光物質)を励起し、それが例えば黄色領域において光を発光するケースにおける、補完的な系。青色光と黄色光とを混合することにより、その結果、白色光が生成される。代替的に、緑色光および赤色光を発光する蛍光物質混合物を使用することも可能である。
【0008】
  2成分の補完的な系は、それらが、ただ1つの一次光源により、−最も単純なケースでは−、ただ1つの変換蛍光物質により、白色光を生成することができるという利点を有する。これらの系のうち最もよく知られているものは、青色スペクトル領域において光を発光する一次光源としてのインジウムアルミニウム窒化物チップ、および、青色領域で励起され、黄色スペクトル領域で光を発光する、変換蛍光物質としての、セリウムがドープされたイットリウムアルミニウムガーネット(YAG:Ce)からなる。しかしながら、演色評価数の改良および色温度の安定性が所望される。
【0009】
  青色発光半導体を一次光源として使用するケースにおいて、2成分の補完的な系は、白色光を再現するために、それ故、黄色変換蛍光物質または緑色発光および赤色発光の変換蛍光物質を必要とする。代替として、使用される一次光源が、紫色スペクトル領域または近UVスペクトルで発光する半導体である場合、RGB蛍光物質混合物、または、2種の補完的な、光を発光する変換蛍光物質の2色性混合物のいずれかが、白色光を得るために使用されなければならない。紫色またはUVの領域における一次光源と2種の補完的な変換蛍光物質とを有する系を使用するケースにおいて、特別に高いルーメン相当を有する、光を発光するダイオードが、提供され得る。2色性蛍光物質混合物のさらなる利点は、より低いスペクトル相互作用および関連したより高いパッケージゲイン(package gain)である。
【0010】
  したがって、スペクトルの青色および/またはUVの領域において励起され得る、特に無機蛍光粉体は、光源のための、特にpc−LEDのための変換蛍光物質として、今日ますます大きな重要性を増している。
【0011】
  一方、多くの変換蛍光物質は、例えば、アルカリ土類金属オルトケイ酸塩、チオガリウム酸塩、ガーネットおよび窒化物であって、それぞれがCe
3+またはEu
2+でドープされたものが開示されている。
【0012】
  しかしながら、青色またはUVの領域において励起され、励起スペクトルの可視領域において光を発光することができる新規な変換蛍光物質に対し、常に需要がある。
 
【発明を実施するための形態】
【0017】
  このタイプのイオン交換はまた「ドープ」とも呼ばれる。この点で、本出願におけるEuイオン、PrイオンまたはSmイオンはまた、ドープイオンとも呼ばれる。
  本発明の変型において、xが0または1に等しいこと、すなわち、化合物が(Ba
ySr
1−y)ZrSi
3O
9または(Ba
ySr
1−y)HfSi
3O
9のいずれかであることが好ましい。本発明のこの変型は、種々の出発材料の数が小さく維持され得るので、材料の簡易化された製造という利点を有する。
 
【0018】
  Euイオン、PrイオンまたはSmイオンにより置換されている本発明による式Iで表される化合物において、それぞれ、ZrイオンまたはHfイオンの0.1〜20mol%がさらに好ましく、より好ましくは0.2〜10mol%、最も好ましくは0.3〜5mol%である。
 
【0019】
  本発明の態様において、Euイオンは二価の形態で存在し、このことは、4価のZrイオンまたはHfイオンが、2つのEuイオンによって置換されていることを意味する。このケースにおいて、90%までの非常に高い量子収率を有する青緑色発光蛍光物質が提供される。
図3および
図5は、異なるドープ含量を有する本発明による化合物BaZrSi
3O
9:Eu
2+およびBaHfSi
3O
9:Eu
2+の発光スペクトルを示す。吸収は、ドープの増加とともに、わずかに赤色にシフトする。このように、吸収極大は、ドープ含量に応じて相応に調節され得る。本発明に従う好ましいこれらの化合物は、近UV領域または青色領域における励起に特に好適である。
 
【0020】
  さらなる態様において、式Iで表される化合物の4価のZrイオンまたはHfイオンは、Pr
3+、Sm
3+、Eu
3+およびこれらの組み合わせからなる群から選択される3価の金属イオンによって置換されていてもよい。置換されたZrイオンまたはHfイオンが4価イオンであるため、1価のアルカリ金属イオンもまた、電荷補償のため、3価のドープイオンと等モル数で存在する。アルカリ金属イオンに関し、本明細書において、いわゆる共ドープ(co-doping)と呼ばれる。採用される可能性があるアルカリ金属イオンは、Li
+、Na
+、K
+、Rb
+またはCs
+であり、中でも、Na
+が好ましい。図の6〜8は、本発明による化合物BaZrSi
3O
9:Sm
3+/Na
+、BaHfSi
3O
9:Sm
3+/Na
+、BaZrSi
3O
9:Eu
3+/Na
+、BaHfSi
3O
9:Eu
3+/Na
+、BaZrSi
3O
9:Pr
3+/Na
+およびBaHfSi
3O
9:Pr
3+/Na
+に対する反射スペクトル、励起スペクトルおよび発光スペクトルを示す。本発明に従い同様に好ましいこれらの化合物は、150〜270nmでのUV領域における励起にとって特に好適である。
 
【0021】
  加えて、式Iで表される化合物の発光色はまた、バリウムまたはストロンチウム含量を介しても影響が与えられ得る。それ故、発光が青緑色または緑色の波長領域にある場合、高バリウム含量(0.7<y≦1)またはストロンチウムを全く含まない化合物(y=1)でさえも、好ましい可能性がある。反対に、橙色−赤色領域における発光が所望される場合、高ストロンチウム含量(0≦y<0.3)を有する化合物またはバリウムフリーの化合物(y=0)でさえも、好ましい可能性がある。
 
【0022】
  本発明は、式Iで表される化合物の製造のための方法にさらに関するものであり、以下の方法ステップを含む:
  a)バリウムおよび/またはストロンチウム源、ジルコニウムおよび/またはハフニウム源、ケイ素源、ならびに、サマリウム、プラセオジムまたはユウロピウムの1種の金属の源の提供;
  b)ステップa)において提供された前記源の混合;ならびに
  c)ステップb)において混合された前記源の、1000℃から1700℃までの範囲の温度での焼結。
 
【0023】
  バリウムまたはストロンチウム源は、本発明によると、焼成されるとすぐに酸化バリウムまたは酸化ストロンチウムへの変換ができる無機もしくは有機のバリウム化合物またはストロンチウム化合物を意味すると解される。可能性のあるバリウムまたはストロンチウム源は、炭酸バリウムまたは炭酸ストロンチウム、硫酸バリウムまたは硫酸ストロンチウム、硝酸バリウムまたは硝酸ストロンチウム、シュウ酸バリウムまたはシュウ酸ストロンチウム、バリウム酸化物またはストロンチウム酸化物およびハロゲン化バリウムまたはハロゲン化ストロンチウム、バリウム過酸化物またはストロンチウム過酸化物であり、中でも、炭酸バリウムまたは炭酸ストロンチウムが特に好ましい。本明細書では、バリウムおよびストロンチウムが、互いに対する比率において「源」に既に存在し、その中で、これらのアルカリ土類金属イオンはまた、本発明による式Iで表される化合物にも存在することが好ましい場合もある。
 
【0024】
  ジルコニウムまたはハフニウム源は、本発明によると、酸化物を与えるために、焼成されるとすぐに分解され得る有機もしくは無機のジルコニウム化合物またはハフニウム化合物を意味するものと解される。特に、ジルコニウムもしくはハフニウムの酸化物、オキシ硫酸塩またはシュウ酸塩、より好ましくは、ZrO
2またはHfO
2の酸化物が本明細書に採用される。本明細書にいて、ジルコニウムおよびハフニウムが、互いに対する比率において「源」に既に存在し、その中で、これらの金属イオンはまた、本発明による式Iで表される化合物にも存在することが好ましい場合もある。
 
【0025】
  ケイ素源は、本発明によると、無機または有機のケイ素源を意味するものと解され、ここで、本明細書では、無機シリコン源が、また一方で好ましい。二酸化ケイ素が、本明細書では、ケイ素源として特に好ましく採用される。
 
【0026】
  採用されるサマリウム、プラセオジムまたはユウロピウムの1つの金属の源は、2価または3価の形態でこれらの金属を含む、これらの金属の無機化合物または有機化合物のいずれかであり得、焼成されるとすぐに酸化物へ変換され得る。本明細書において、例えば、酸化物、シュウ酸塩、酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩または炭酸塩が使用され得る。金属が3価の形態で存在する、これらの金属の源が特に好ましい。とりわけ好ましくは、本明細書において、サマリウム、プラセオジムまたはユウロピウムの酸化物、さらに一層好ましくは、Sm
2O
3、Pr
2O
3およびEu
2O
3の使用である。
 
【0027】
  提供される、バリウムまたはストロンチウム、ジルコニウムまたはハフニウム、ケイ素の源、およびサマリウム、プラセオジムまたはユウロピウムの金属を、ステップb)において、互いに激しく混合する。混合は、好ましくは乳鉢中で行われ、その中に、好ましくは、例えばアセトンなどの粉砕剤(grinding agent)が追加的に加えられる。ホウ酸塩(例えば、Na
2B
4O
7などのアルカリ金属のホウ酸塩)またはホウ酸が、上述の源を混合するステップの間、焼結助剤として加えられることが、さらに好ましい。
 
【0028】
  ステップb)における構成成分の混合後、粉体は、好ましくは100℃から300℃までの範囲の温度で乾燥させられ、次に1000〜1700℃、より好ましくは1200〜1600℃の範囲における温度処理に供される。
 
【0029】
  式Iの化合物中2価ドープイオンで、好ましくはEu
2+でドープすることが所望される場合、温度処理は、好ましくは2〜4h行われる。ユウロピウム、サマリウムまたはプラセオジムの金属の源であって、その中で前記金属がそれらの3価の形態で存在する前記源が、本発明による方法のステップa)において、この目的のために採用される場合、温度処理は、好ましくは還元性雰囲気中で行われる。還元性条件は、本明細書において、例えば、一酸化炭素、フォーミングガス、水素、または少なくとも真空、または酸素欠乏雰囲気を使用し、好ましくは窒素の流れの中で、好ましくはN
2/H
2の流れの中で、特に好ましくは、N
2/H
2/NH
3の流れの中で確立される。温度処理の間、まず一酸化炭素を含む雰囲気、次にフォーミングガスを含む雰囲気を製造することが、特に好ましい。ユウロピウム、サマリウムまたはプラセオジムの金属の源であって、その中で前記金属がそれらの2価の形態で存在する前記源が採用される場合、温度処理は、還元性雰囲気中で行われる必要はない;しかしながら、保護ガス雰囲気(例えばAr、He、NeまたはN
2)下で動作することが好ましい。
 
【0030】
  式Iの化合物中3価のドープイオンでドープすることが所望される場合、温度処理は、還元性雰囲気中で行われる必要はない。本明細書では、温度処理は、好ましくは2〜4h、空気中で行うことができる。
 
【0031】
  既に上述したように、3価のドープイオンでドープされた本発明による式Iで表される化合物は、電荷補償のためにアルカリ金属イオンを含む。したがって、無機アルカリ金属化合物、好ましくはアルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属硫酸塩または塩化アルカリ金属などのアルカリ金属塩、より好ましくはアルカリ金属炭酸塩、最も好ましくは炭酸ナトリウムが、3価のドープイオンを含む式Iで表される化合物の製造のために、本発明による方法における混合のステップa)において、付加的に採用されることが好ましい。
 
【0032】
  本発明による方法のステップa)において採用される源は、モル比が最終産物(式Iで表される化合物)における所望の比率に対応するように、金属のモル含量に関して、互いに対する比率で計量する。
 
【0033】
  焼結助剤は、好ましくは、本発明による方法のステップa)において採用される全ての源の合計量に基づいて、0mol%から8mol%までの範囲の量で加えられる。
 
【0034】
  式Iで表される化合物は、粉砕ビーズで挽かれ、篩にかけられ、次に分級されたシンターケーキに通す本発明による方法によって、粒子の形態で得られる。本発明による式Iで表される化合物は、好ましくは、粒子の形態である。粒子は、好ましくは、50nmから30μmまで、より好ましくは1μmから20μmまでの範囲にある粒子サイズを有する。式Iで表される化合物の粒子はまた、例えば、エポキシ樹脂もしくはシリコーン樹脂および/またはガラス、アクリレート、ポリカーボネートなどのプラスチックを含む、周囲の結合剤へ化学結合を促進する官能基を担持する表面をも有し得る。これらの官能基は、例えば、オキソ基を介し結合したエステル、または結合剤の構成成分との連結を形成することができる他の誘導体であり得る。かかる表面は、結合剤中への蛍光物質の均質な混合が促進される利点を有する。さらに、蛍光物質/結合剤系のレオロジー特性およびポットライフもまた、それによって、ある程度調節され得る。混合物の加工は、それ故に、簡易化され得る。
 
【0035】
  本発明は、蛍光物質としての、特に変換蛍光物質としての式Iで表される化合物の使用にさらに関する。
 
【0036】
  本出願において、用語「変換蛍光物質」は、電磁スペクトルのある波長領域における、好ましくは青色またはUVの領域、特に近UV領域における放射線を吸収し、電磁スペクトルの別の波長領域における可視光を発光する材料を意味するものと解される。
 
【0037】
  本発明は、本発明による式Iで表される化合物を含む発光変換材料にさらに関する。発光変換材料は、式Iで表される化合物からなっていてもよく、このケースにおいては、上で定義された用語「変換蛍光物質」に同等のものと見なされる。
 
【0038】
  しかしながら、本発明による発光変換材料は、本発明による変換蛍光物質に加え、さらなる変換蛍光物質を含むことが好ましい。このケースにおいて、本発明による発光変換材料は、少なくとも2種の変換蛍光物質の混合物を含み、ここで、それらのうちの1つは、式Iで表される化合物である。少なくとも2種の変換蛍光物質は、互いに補完的な波長の光を発光する蛍光物質であることが特に好ましい。本発明による変換蛍光物質が、例えば、青緑色の発光蛍光物質(2価のEu)である場合、これは、好ましくは、橙色の発光変換蛍光物質と組み合わせて採用される。代替的に、本発明による青緑色の発光変換蛍光物質はまた、緑色および赤色の発光変換蛍光物質(単数または複数)と組み合わせても採用され得る。本発明による変換蛍光物質は、赤色の発光蛍光物質(3価のドーパント)である場合、これは、好ましくは、青緑色および緑色の発光蛍光物質(単数または複数)とともに採用される。それ故、本発明による変換蛍光物質にとって、本発明による発光変換材料は、1種または2種以上の、さらなる変換蛍光物質と組み合わせて採用されることが、特に好ましく、次いでそれらは、好ましくは、一緒に白色光を発光する。
 
【0039】
  それ故、例えば、本発明による青緑色の発光変換蛍光物質は、さらなる変換蛍光物質としての(Sr,Ca)
2SiO
4:Euと組み合わせて採用され得る。
図1は、BaZrSi
3O
9:Eu
2+およびBaHfSi
3O
9:Eu
2+と、橙色エミッターとしての(Sr,Ca)
2SiO
4:Euとの明度による色図を示す。
 
【0040】
  さらなる変換蛍光物質は、好ましくは、Eu
2+、Ce
3+またはMn
2+でドープされた、硫化物、ケイ酸塩、アルミン酸塩、ホウ酸塩、窒化物、酸窒化物、ケイ窒化物(siliconitride)およびアルモケイ窒化物(alumosiliconitride)からなる群から選択される。以下の表1は、かかる蛍光物質の多様な例を挙げるものである。
 
【0042】
  この出願の文脈において、青緑色光という用語は、極大強度が460nmと505nmとの間の波長における光に適用され、緑色光という用語は、極大強度が505nmと545nmとの間の波長における光に適用され、黄色光という用語は、極大強度が545nmと565nmとの間の波長における光に適用され、橙色光という用語は、極大強度が565nmと600nmとの間の波長における光に適用され、赤色光という用語は、極大が600nmと670nmとの間の波長における光に適用される。
 
【0043】
  本発明による変換蛍光物質が、少なくとも1種のさらなる変換蛍光物質と混合される場合、さらなる蛍光物質に対する、本発明による変換蛍光物質の比率は、蛍光物質の総重量に基づいて、好ましくは20:1〜1:20、特に好ましくは10:1〜1:10、とりわけ好ましくは5:1〜1:5である。
 
【0044】
  本発明は、本発明による発光変換材料の、光源における使用に、さらに関する。
  本発明は、一次光源および本発明による発光変換材料を含む光源にさらに関する。
 
【0045】
  本明細書においても、発光変換物質は、光源が白色光またはある色値(colour point)を有する光を好ましくは発光するように(カラーオンデマンドの原則)、本発明による変換蛍光物質に加え、少なくとも1種のさらなる変換蛍光物質を含むことが、とりわけ好ましい。
 
【0046】
  好ましい態様において、本発明による光源は、pc−LEDである。pc−LEDは、一般的に、一次光源および発光変換材料を含む。本発明による発光変換材料は、この目的のために、樹脂(例えばエポキシ樹脂またはシリコーン樹脂)中に分散させるか、または、好適なサイズ比率であるとき、適用に応じて、一次光源上に直接的にもしくはそこから遠く離して配置されるかのいずれかであり得る(後者の配置はまた「遠隔蛍光物質技術」をも含む)。遠隔蛍光物質技術の利点は、当業者に知られており、例えば以下の刊行物において明らかにされている: Japanese Journ. of Appl. Phys., Vol. 44, No. 21 (2005), L649-L651。
 
【0047】
  一次光源は、半導体チップ、ZnO、TCO(透明導電酸化物)、ZnSeもしくはSiCに基づく発光性の配置、有機発光層(OLED)もしくはプラズマもしくはガス放電源に基づく配置、最も好ましくは、半導体チップであり得る。このタイプの光源の可能性のある形態は、当業者に知られている。
 
【0048】
  一次光源が半導体チップである場合、発光性のインジウムアルミニウムガリウム窒化物(InAlGaN)、特に式In
iGa
jAl
kN、ここで、0≦i、0≦j、0≦k、およびi+j+k=1が好ましい。
 
【0049】
  既に述べたように、本発明による発光変換材料はまた、特に光源、特にpc−LEDにおける使用において、球状粒子、薄片および構造化された材料およびセラミックスなどの所望される外形形状のいずれにも変換されることもできる。これらの形状は、用語「成形品(moulding)」の下、集約される。成形品は、結果的に発光変換成形品である。
 
【0050】
  発光変換材料を含む、例えばセラミック発光変換成形品の生産は、好ましくは、DE 10349038に記載される方法に類似して行われる。このケースにおいて、本発明による式Iで表される化合物は、好ましくは、任意にマトリックスとして機能するさらなる材料とともに、静水圧プレス成形に供され、薄くかつ非多孔性の均質な薄片の形態で、チップの形態における一次光源の表面に直接適用される。これは、変換蛍光物質の励起および発光の位置依存性の変動が起きないという利点を有しており、その結果、そこに取り付けられたLEDが、一定の色の均質な光円錐を発光し、高い光出力を有する。セラミック発光変換成形品は、必要に応じて、水ガラス溶液を使用してチップ基質に固定されてもよい。
 
【0051】
  好ましい態様において、セラミック発光変換成形品は、半導体チップの反対側に構造化された(例えば錐体の)表面を有する。それ故、可能な限りの多くの光が、セラミック発光変換成形品から外へカップリングされ得る。セラミック発光変換成形品の構造化された表面は、好ましくは、構造化された定盤を用いて静水圧プレスを行うことによって、表面へ構造をエンボス加工するケースにおいて、圧縮成形により生産される。構造化された表面は、最も薄い可能性があるセラミック発光変換成形品または薄片が生産される場合に、所望される。プレス条件は、当業者に知られている(J. Kriegsmann, Technische keramische Werkstoffe [Industrial Ceramic Materials], Chap. 4, Deutscher Wirtschaftsdienst, 1998を参照)。使用されるプレス温度は、プレスされる物質の融点の2/3〜5/6であることが重要である。
 
【0052】
  しかしながら、本発明による発光変換材料を、発光変換材料が層としてのシリコーンに適用される一次光源としてチップへ適用するための態様もまた可能である。本明細書において、シリコーンは表面張力を有するものであり、発光変換材料の層が顕微鏡レベルで均一ではないか、または、層の厚さが全体的に一定ではないことを意味する。しかしながら、これは、変換蛍光物質を含む層の有効性が制限されていないか、または少なくとも有意に制限されていないことを意味する。
 
【0053】
  本発明は、照明ユニット、特にディスプレイデバイスのバックライト用のものにさらに関し、それは、本発明による少なくとも1種の光源を含む。このタイプの照明ユニットは、主にバックライトを有するディスプレイデバイス、特に液晶ディスプレイデバイス(LCディスプレ)に採用される。したがって、本発明はまた、このタイプのディスプレイデバイスにも関するものである。
 
【0054】
  本発明の変型において、発光変換材料と一次光源(特に半導体チップ)との間の光結合は、好ましくは、導光配置によってもたらされる。これは、一次光源が、中央の位置に設置され、例えば光ファイバーなどの導光デバイスによって発光変換材料と光結合されることを可能にする。このように、光スクリーンを形成するために配置されてよい1種または2種以上の種々の変換蛍光物質、および、一次光源とカップリングされてもよい光導波路のみからなる、照明願望に適合した照明器具を獲得することが可能である。このように、電気設備に好都合である位置に強力な一次光源を置くこと、および、発光変換材料を含む照明器具を設置することは可能であり、これらは、単に光導波路を据えることにより、さらなる電気ケーブルなしに所望する位置のいずれにも、光導波路とカップリングされる。
 
【0055】
  以下の例および図は、本発明を解説することを意図している。しかしながら、それらは限定するものとして決して見なされるべきものではない。製造において使用され得る全ての化合物または構成成分は、知られており、かつ商業的に入手可能であるか、または知られている方法で合成され得るかのいずれかである。さらに言うまでもなく、説明および例の両方において、組成物中に添加される構成成分の量は、常に合計100%まで加える。与えられるパーセントデータは、与えられた文脈において常に考慮されるべきである。しかしながら、それらは、通常、示される部分量または合計量の重量に常に関する。
 
【0056】
  さらなるコメントがない場合であっても、当業者は、最も広い範囲で、上の説明を利用することができるものと推測される。したがって、好ましい態様は、絶対に決して限定されない単なる記述的な開示として見なされるべきである。以上以下で述べられた全ての出願および刊行物の完全な開示内容は、参照によって本出願に組み込まれる。
例
 
【0057】
例1:BaZrSi
3O
9の製造:0.5mol%のEu
2+
  1.7191g(8.71mmol)のBaCO
3、1.0788g(8.75mmol)のZrO
2、1.5781g(26.26mmol)のSiO
2、0.0077g(0.022mmol)のEu
2O
3および0.1200g(1.94mmol)のH
3BO
3を、少量のアセトンを粉砕剤として加えた瑪瑙乳鉢で十分に混合する。粉体を100℃で1h乾燥させ、酸化アルミニウムのるつぼ中に移し、1300℃から1500℃までの範囲の温度で、2〜4h、一酸化炭素雰囲気下で焼結する。2回目の焼結ステップにおいて、水平管状炉で、粉体を1200℃の温度で、2h、フォーミングガス(10%のH
2)の流れの下に供する。
図2は、このように製造した化合物のX線粉体回折パターンを示す。
 
【0058】
例2:BaZrSi
3O
9の製造:2mol%のEu
2+
  この化合物を、以下の化合物を初めに計量し、次いで混合することを除けば、例1の化合物と同じ方法で製造する:1.6924g(8.58mmol)のBaCO
3、1.0783g(8.75mmol)のZrO
2、1.5774g(26.25mmol)のSiO
2、0.0308g(0.088 mmol)のEu
2O
3および0.1200g(1.94mmol)のH
3BO
3。この化合物のX線粉体回折パターンを同様に
図2に示す。
  
図3は、例1および例2で製造された化合物の発光スペクトルを示す。
 
【0059】
例3:BaHfSi
3O
9の製造:0.5mol%のEu
2+
  この化合物を、以下の構成成分を混合することを除けば、例1と同じ手法で製造する:1.4434g(7.31mmol)のBaCO
3、1.5473g(7.35mmol)のHfO
2、1.3250g(22.1mmol)のSiO
2、0.0065g(0.018mmol)のEu
2O
3および1.1200g(1.94mmol)のH
3BO
3。この化合物のX線粉体回折パターンを
図4に示す。
 
【0060】
例4:BaHfSi
3O
9の製造:2mol%のEu
2+
  この化合物を、以下の構成成分を互いに混合することを除けば、例1における化合物のように、同様に製造する:1.4211g(7.20mmol)のBaCO
3、1.5467g(7.35mmol)のHfO
2、1.3245g(22.0mmol)のSiO
2、0.0259g(0.074mmol)のEu
2O
3および0.1200g(1.94mmol)のH
3BO
3。この化合物のX線粉体回折パターンを、同様に
図4に示す。
  
図5は、例3および4で製造された化合物の発光スペクトルを示す。
 
【0061】
例5:BaZrSi
3O
9の製造:1mol%のSm
3+、1mol%のNa
+
  1.6972g(8.60mmol)のBaCO
3、1.0814g(8.78mmol)のZrO
2、1.5819g(26.33mmol)のSiO
2、0.0153g(0.044mmol)のSm
2O
3、0.0047g(0.044mmol)のNa
2CO
3および0.1200g(1.94mmol)のH
3BO
3を、少量のアセトンを粉砕剤として加えた瑪瑙乳鉢中で互いに慎重に混合する。粉体を100℃で1h乾燥させ、酸化アルミニウムのるつぼ中に移し、1300〜1500℃で、2〜4h、空気中で焼結する。
 
【0062】
例6:BaHfSi
3O
9の製造:1mol%のSm
3+、1mol%のNa
+
  この化合物を、以下の出発材料を互いに混合することを除けば、例5と同じ方法で製造する:1.4245g(7.22mmol)のBaCO
3、1.5504g(7.37mmol)のHfO
2、1.3277g(22.10mmol)のSiO
2、0.0128g(0.037mmol)のSm
2O
3、0.0039g(0.037mmol)のNa
2CO
3および0.1200g(1.94mmol)のH
3BO
3。
  
図6は、例5および6で製造された化合物の発光スペクトルを示す。
 
【0063】
例7:BaZrSi
3O
9の製造:1mol%のEu
3+、1mol%のNa
+
  この化合物を、以下の出発化合物を互いに混合することを除けば、例5における化合物のように、同様に製造する:1.6971g(8.60mmol)のBaCO
3、1.0814g(8.78mmol)のZrO
2、1.5818g(26.33mmol)のSiO
2、0.0154g(0.044mmol)のEu
2O
3、0.0047g(0.044mmol)のNa
2CO
3および0.1200g(1.94mmol)のH
3BO
3。
 
【0064】
例8:BaHfSi
3O
9の製造:1mol%のEu
3+、1mol%のNa
+
  この化合物を、以下の出発化合物を互いに混合することを除けば、例5の化合物と同じ方法で製造する:1.4244g(7.22mmol)のBaCO
3、1.5504g(7.37mmol)のHfO
2、1.3277g(22.10mmol)のSiO
2、0.0130g(0.037mmol)のEu
2O
3、0.0039g(0.037mmol)のNa
2CO
3および0.1200g(1.94mmol)のH
3BO
3。
  
図7は、例7および8で製造された化合物の発光スペクトルを示す。
 
【0065】
例9:BaZrSi
3O
9の製造:0.5mol%のPr
3+、0.5mol%のNa
+
  この化合物を、以下の出発化合物を互いに混合することを除けば、例5における化合物のように、同様に製造する:1.7128g(8.68mmol)のBaCO
3、1.0803g(8.78mmol)のZrO
2、1.5803g(26.30mmol)のSiO
2、0.0159g(0.022mmol)のPr
2(C
2O
4)
310H
2O、0.0023g(0.022mmol)のNa
2CO
3および0.1200g(1.94mmol)のH
3BO
3。
 
【0066】
例10:BaHfSi
3O
9の製造:0.5mol%のPr
3+、0.5mol%のNa
+
  この化合物を、以下の出発化合物を互いに混合することを除けば、例5における化合物と同じ方法で製造する:1.4378g(7.29mmol)のBaCO
3、1.5491g(7.36mmol)のHfO
2、1.3266g(22.08mmol)のSiO
2、0.0134g(0.018mmol)のPr
2(C
2O
4)
3・10H
2O、0.0020g(0.018mmol)のNa
2CO
3および1.1200g(1.94mmol)のH
3BO
3。
  
図8は、例9および10で製造された化合物の発光スペクトルを示す。
 
【0067】
例11:本発明による化合物を使用するpc−LEDの生産
  例1〜10の本発明による1gの蛍光物質を、光学的に透明な10gのシリコーン(Dow CorningからのOE6550)によりSpeedmixer中で分散させる。このようにして得られたシリコーン/蛍光物質の混合物を、自動ディスペンサー(EssemtechからのCDS6200)を活用して青色半導体LED(450nmで発光するInGaNチップに取り付けられた、Mimaki ElectronicsからのUnicorn package)のチップに適用し、150℃の温蔵庫中で熱の供給により、1hに渡り硬化させる。
 
【0068】
例12:例11において生産されたpc−LEDの試験結果
  例11からのLEDを、Keithley K2400 Sourcemeterを使用して電流(350mA)と接触させ、光学特性を、Instrument Systems CAS 140分光計を使用し、積分球に取り付けて決定する。分光計のソフトウェアは、ここで得られた発光スペクトルからLEDのCIE1931のxおよびyの色値を計算する。対応値を、
図1におけるCIE図にプロットする。