特許第6138943号(P6138943)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6138943感光性樹脂組成物、そのレリーフパターン膜、レリーフパターン膜の製造方法、レリーフパターン膜を含む電子部品又は光学製品、及び感光性樹脂組成物を含む接着剤
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  • 特許6138943-感光性樹脂組成物、そのレリーフパターン膜、レリーフパターン膜の製造方法、レリーフパターン膜を含む電子部品又は光学製品、及び感光性樹脂組成物を含む接着剤 図000033
  • 特許6138943-感光性樹脂組成物、そのレリーフパターン膜、レリーフパターン膜の製造方法、レリーフパターン膜を含む電子部品又は光学製品、及び感光性樹脂組成物を含む接着剤 図000034
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6138943
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、そのレリーフパターン膜、レリーフパターン膜の製造方法、レリーフパターン膜を含む電子部品又は光学製品、及び感光性樹脂組成物を含む接着剤
(51)【国際特許分類】
   C08L 79/08 20060101AFI20170522BHJP
   C08K 5/34 20060101ALI20170522BHJP
   C09D 5/25 20060101ALI20170522BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20170522BHJP
   C09D 179/08 20060101ALI20170522BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20170522BHJP
   C09J 179/08 20060101ALI20170522BHJP
   G03F 7/038 20060101ALI20170522BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
   C08L79/08 A
   C08K5/34
   C09D5/25
   C09D7/12
   C09D179/08 A
   C09J11/06
   C09J179/08 A
   G03F7/038 504
   G03F7/004 503Z
【請求項の数】13
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2015-530770(P2015-530770)
(86)(22)【出願日】2014年7月15日
(86)【国際出願番号】JP2014068760
(87)【国際公開番号】WO2015019802
(87)【国際公開日】20150212
【審査請求日】2016年1月26日
(31)【優先権主張番号】特願2013-166706(P2013-166706)
(32)【優先日】2013年8月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591021305
【氏名又は名称】太陽ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】楊 大志
(72)【発明者】
【氏名】三輪 崇夫
【審査官】 中西 聡
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/104090(WO,A1)
【文献】 特開2003−140352(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/028208(WO,A1)
【文献】 特開2006−045423(JP,A)
【文献】 特開2010−186055(JP,A)
【文献】 特表2001−512421(JP,A)
【文献】 特開2009−265294(JP,A)
【文献】 特開2009−244745(JP,A)
【文献】 Katsuyuki Okeya, Tsuyoshi Takagi,The Width-w NAF Method Provides Small memory and Fast Elliptic Scalar Multiplications Secure against,Topics in Cryptology - CT-RSA 2003,米国,Springer,2003年 4月13日,RSA Conference 2003,pages.328-343
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00−13/08
C09D 1/00−201/10
C09J 1/00−201/10
G03F 7/004−7/04
REGISTRY (STN)
CAplus (STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)少なくとも一部にポリアミック酸、又は、ポリアミック酸エステルの繰り返し単位を有する高分子前駆体と、
(B)一般式(2)
【化1】
(式(2)中、
R5は、非置換であるか、または、1つ以上のアルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、NR12R13、CN、OR14、SR15、COR16、COOR17、ハロゲンまたは式(3)
【化2】
によって置換された芳香族または複素芳香族基であり;あるいは
R5は、式(4)
【化3】
によって表わされる基であり;
R6およびR7は、互いに独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニルであるか、非置換または1つ以上のアルキル、CN、OR14、SR15、ハロゲンまたはハロアルキルによって置換されたフェニルであり;
R9は、アルキルまたはNR14AR15Aであり; R14AおよびR15Aは、ともに、非置換であるか、または1つ以上のアルキルによって置換されたアルキレンブリッジを形成し;
R8、R10、R11、R12およびR13は、互いに独立して、水素またはアルキルであり;あるいは
R8およびR10は、ともに、非置換であるか、または1つ以上のアルキルによって置換されたアルキレンブリッジを形成し;あるいは
R9およびR11は、R8およびR10から独立して、ともに、非置換であるか、または1つ以上のアルキルによって置換されたアルキレンブリッジを形成し;
R14、R15およびR17は、互いに独立して、水素またはアルキルであり;
R16は水素又はアルキルであり;あるいは、非置換であるか、または1つ以上のアルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、NR12R13、CN、OR14、SR15、COR14、COOR17、またはハロゲンによって置換された芳香族または複素芳香族基であり;
R18は、非置換であるか、または1つ以上のアルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、NR12R13、CN、OR14、SR15、COR16、COOR17、またはハロゲンによって置換された芳香族または複素芳香族基であり;
R19は、水素またはアルキルであり;
R20は、水素、アルキル、あるいは非置換であるか、または1つ以上のアルキル、ビニル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、フェニル、NR12R13、CN、OR14、SR15、COR16、COOR17またはハロゲンによって置換されたフェニルである。)
で表され、活性光線の照射によって強塩基性第3級アミンを発生する非イオン性光反応型潜在性塩基性物質と、
を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。
【請求項2】
(A)少なくとも一部にポリアミック酸、又は、ポリアミック酸エステルの繰り返し単位を有する高分子前駆体と、
(B)活性光線の照射によって、共役酸のpKaが、9以上である強塩基性第3級アミンを発生する非イオン性光反応型潜在性塩基性物質と、
を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記高分子前駆体(A)が、一般式(1)で表わされる化合物である請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【化4】
(式(1)中、
R1は4価の有機基であり
R2は2価の有機基であり、
Xは2価の有機基であり
R3及びR4は、相互に同一でも異なってもよく、水素原子、又は、1価の有機基またはケイ素を有する官能基であり、
mは1以上の整数であり、
nは0または1以上の整数である。)
【請求項4】
前記式(2)で表される潜在性塩基性物質(B)が、一般式(5)で表される化合物である請求項1または3に記載の感光性樹脂組成物。
【化5】
(式(5)中、
xは1〜5の整数であり;
y及びzは、互いに独立して、0〜6の整数であり;
R21及びR22は、互いに独立して、炭素数1〜4のアルキル基であり;
Aは炭素又は窒素原子である。)
【請求項5】
前記式(2)で表される潜在性塩基性物質(B)が、式(6−1)又は式(6−2)で表される化合物である請求項1または3に記載の感光性樹脂組成物。
【化6】
【請求項6】
前記潜在性塩基性物質(B)は、240nm〜450nmの範囲のいずれかの波長に吸収を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
前記高分子前駆体(A)が、アルカリ溶液に可溶であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
前記高分子前駆体(A)が、ポリアミック酸である請求項1〜7のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項9】
200℃以下でパターンを形成することが可能である請求項1〜8のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物から得られるレリーフパターン膜。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項に記載した感光性樹脂組成物を乾燥してなる塗膜を基材上に形成し、
前記塗膜に活性光線をパターン状に照射し、
前記活性光線を照射した塗膜を200℃以下で加熱し、
前記加熱された塗膜を現像することを特徴とするレリーフパターン膜の製造方法。
【請求項12】
請求項10に記載のレリーフパターン膜を表面保護膜層及び/又は層間絶縁膜として有する電子部品又は光学製品。
【請求項13】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を含む接着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一部にポリアミック酸、又は、ポリアミック酸エステルの繰り返し単位を有する高分子前駆体と、活性光線の照射によって強塩基性第3級アミンを発生する非イオン性光反応型潜在性塩基性物質を含有する感光性樹脂組成物、これを用いたレリーフパターン膜(高分子膜)、レリーフパターン膜の製造方法、及びレリーフパターン膜を表面保護膜層及び/又は層間絶縁膜として有する電子部品又は光学製品、及び感光性樹脂組成物を含む接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
1955年米国デュポン社によって開発されたポリイミドは、高い絶縁性、耐熱性、高機械強度などの優れた特性にもとづいて様々な分野に広く応用されている。最初に応用された航空宇宙分野にとどまらず、半導体素子のコーティング膜や、フレキシブルプリント配線板、耐熱絶縁性層間材への適用が進められている。さらに近年では、半導体実装技術の高度化や高密度化に伴って、配線パターンの更なる微細化が求められており、ポリイミドに対しても高度な加工性が要求されている。
【0003】
しかしながら、ポリイミドは、熱可塑性、及び有機溶剤に対する溶解性が乏しく、加工が困難であるという側面を有する。このため、ポリイミドは、ポリイミド前駆体に感光性を付与して、活性光線の照射で所望のパターン形成の後、高温で閉環させるという手法により広く用いられている。
【0004】
このように、ポリイミド前駆体に感光性を付与することで加工性を向上させた、いわゆる感光性ポリイミドは、煩雑なプロセスを短縮するという特徴を持つため、生産性や工程の簡略化の視点で、非感光性ポリイミドと比較して利用性が高い。
【0005】
そして、従来の感光性ポリイミドは、現像後300℃以上の加熱工程を行うことによりポリイミド前駆体をイミド化させている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0006】
また、低温でポリイミド前駆体をイミド化させてポリイミド膜を形成することが可能な感光性樹脂組成物が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許4830435号公報
【特許文献2】特許4756350号公報
【特許文献3】特開2006−189591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載された感光性ポリイミドは、低温でもイミド化は可能であるものの、良好なパターンを形成するために改良の余地がある。露光前後での塩基性物質の骨格構造に変化がないためである。また、イミド化に用いられる光塩基発生剤は、イオン性であるため、有機溶剤に対する溶解性が十分ではない。
【0009】
さらに、特許文献2,3に記載されたポリイミド前駆体のイミド化には非イオン性の光塩基発生剤(カルバメート、アシルオキシムなど)が用いられるため、有機溶媒における溶解性には優れるが、1級、2級のアミンを放出し、硬化後の高分子膜の引張強度に改良の余地がある。
【0010】
本発明の目的は、上記背景に鑑みて成されたものであり、従来技術による不具合を有さず、低温のプロセスで、容易に精度の高いパターンを形成可能な感光性樹脂組成物、これを用いたレリーフパターン膜(高分子膜)、レリーフパターン膜の製造方法、及びレリーフパターン膜を表面保護膜層及び/又は層間絶縁膜として有する電子部品又は光学製品、及び感光性樹脂組成物を含む接着剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記目的を達成すべく、光塩基発生剤を用いた感光性ポリイミド組成物に着目し、鋭意研究を重ねた結果、活性光線の照射によって強塩基性第3級アミンを発生する非イオン性光反応型潜在性塩基性物質と特定の高分子前駆体との組合せによって、本件発明の目的を達成し得ることを見出した。
【0012】
すなわち、本発明に係る感光性樹脂組成物は(A)少なくとも一部にポリアミック酸、又は、ポリアミック酸エステルの繰り返し単位を有する高分子前駆体と、(B)活性光線の照射によって強塩基性第3級アミンを発生する非イオン性光反応型潜在性塩基性物質と、を含有することを特徴とする。
【0013】
本発明では、潜在性塩基性物質(B)として、活性光線の照射によって化学構造が変化して強い塩基を発生する非イオン性の物質を用いる。具体的には、潜在性塩基性物質(B)は、活性光線の照射によって励起され、化学構造が変化して強塩基性第3級アミンを発生する。そして、発生した強塩基性第3級アミンが、高分子前駆体(A)の低温イミド化を促進することで、露光部(イミド化した部分)と、未露光部(高分子前駆体(A)のままの部分)とが生じ、露光部と未露光部の溶解性に差を生じさせる。すなわち、前記潜在性塩基性物質(B)は高分子前駆体(A)に対して、非常に有効な感光性成分として作用し、現像液による現像を容易にする。具体的には、露光部のイミド化を促進して溶解性をほとんど有さない状態とする。一方、未露光部が溶液に溶解可能な状態を保つため、現像液による現像を容易とする。
【0014】
高分子前駆体としてポリアミド酸成分が増加するほどアルカリ溶解性に優れ、ポリアミド酸エステル成分が増えるほど有機溶剤溶解性に優れる。アミド酸とアミド酸エステルの比率を変更することにより各種の現像液に適した溶解性を得ることができる。
【0015】
本発明では、前記高分子前駆体(A)が、下記一般式(1)で表わされる化合物であることが好ましい。
【0016】
【化1】
(式(1)中、
R1は4価の有機基であり
R2は2価の有機基であり、
Xは2価の有機基であり
R3及びR4は、相互に同一でも異なってもよく、水素原子又は1価の有機基またはケイ素を有する官能基であり、
mは1以上の整数であり、
nは0または1以上の整数である。)
【0017】
また、本発明は、前記潜在性塩基性物質(B)が、一般式(2)で表される化合物であることが好ましい。
【0018】
【化2】
(式(2)中、 R5は、非置換であるか、または、1つ以上のアルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、NR12R13、CN、OR14、SR15、COR16、COOR17、ハロゲンまたは式(3)
【0019】
【化3】
によって置換された芳香族または複素芳香族基であり;あるいは
R5は、式(4)
【0020】
【化4】
によって表わされる基であり;
R6およびR7は、互いに独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニルであるか、非置換または1つ以上のアルキル、CN、OR14、SR15、ハロゲンまたはハロアルキルによって置換されたフェニルであり;
R9は、アルキルまたはNR14AR15Aであり; R14AおよびR15Aは、ともに、非置換であるか、または1つ以上のアルキルによって置換されたアルキレンブリッジを形成し;
R8、R10、R11、R12およびR13は、互いに独立して、水素またはアルキルであり;あるいは
R8およびR10は、ともに、非置換であるか、または1つ以上のアルキルによって置換されたアルキレンブリッジを形成し;あるいは
R9およびR11は、R8およびR10から独立して、ともに、非置換であるか、または1つ以上のアルキルによって置換されたアルキレンブリッジを形成し;
R14、R15およびR17は、互いに独立して、水素またはアルキルであり;
R16は水素又はアルキルであり;あるいは、非置換であるか、または1つ以上のアルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、NR12R13、CN、OR14、SR15、COR14、COOR17、またはハロゲンによって置換された芳香族または複素芳香族基であり;
R18は、非置換であるか、または1つ以上のアルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、NR12R13、CN、OR14、SR15、COR16、COOR17、またはハロゲンによって置換された芳香族または複素芳香族基であり;
R19は、水素またはアルキルであり;
R20は、水素、アルキル、あるいは非置換であるか、または1つ以上のアルキル、ビニル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、フェニル、NR12R13、CN、OR14、SR15、COR16、COOR17またはハロゲンによって置換されたフェニルである。)
【0021】
ここで、本発明では、式(2)で表される潜在性塩基性物質(B)が、式(5)で表される化合物であることが好ましい。
【0022】
【化5】
(式(5)中、
xは1〜5の整数であり;
y及びzは、互いに独立して、0〜6の整数であり;
R21及びR22は、互いに独立して、炭素数1〜4のアルキル基であり;
Aは炭素又は窒素原子である。)
【0023】
さらに、本発明では、前記式(2)で表される潜在性塩基性物質(B)が、式(6−1)又は式(6−2)で表される化合物であることがより好ましい。
【0024】
【化6】
【0025】
さらに、本発明では、前記潜在性塩基性物質(B)から発生する強塩基性第3級アミンの沸点が100℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましい。
【0026】
また、本発明では、前記潜在性塩基性物質(B)から発生する強塩基性第3級アミンの共役酸のpKaが9以上であることが好ましく、12以上であることがより好ましい。
【0027】
一般的な露光光源である高圧水銀灯の波長は、436nm、405nm、365nmであり、KrFレーザーの波長は248 nmであることから、前記潜在性塩基性物質(B)は、240nm〜450nmの範囲のいずれかの波長に吸収を有することが好ましい。
【0028】
本発明の高分子前駆体(A)は、特に構造上の制限はないが、現像液で現像する際には、現像液に可溶であること、例えば、例えば、アルカリ現像液で現像する場合には、ポリアミック酸であることが好ましい。
【0029】
また、本発明の感光性樹脂組成物は200℃以下で良好にパターン形成可能であることが好ましい。
【0030】
本発明のレリーフパターン膜は、上述の感光性樹脂組成物を乾燥してなる塗膜を基材上に形成し、塗膜に活性光線をパターン状に照射し、活性光線を照射した塗膜を200℃以下で加熱し、加熱された塗膜を現像することにより製造される。
【0031】
本発明の感光性樹脂組成物は接着剤成分として使用することが可能である他、感光性樹脂組成物をイミド化することにより得られたレリーフパターン膜は、電子部品又は光学製品の表面保護膜層及び/又は層間絶縁膜として好適に使用される。
【発明の効果】
【0032】
本発明に係る感光性樹脂組成物では、非イオン性光反応型潜在性塩基性物質(B)に対し活性光線を照射することによって強塩基性第3級アミンが発生し、その触媒作用により、低温(200℃以下)にて、高分子前駆体(A)のイミド化が達成された。これにより得られたレリーフパターン膜は、引張強度とパターン形成性の両立した材料である。
【0033】
本発明に係る感光性樹脂組成物は、200℃以下でもイミド化可能であるため、ポリイミドを用いる技術分野でより幅広い用途に適用可能であり、種々の部材の材料としての使用の可能性も拡大した。
【0034】
本発明によれば、露光部と未露光部の間で溶解性のコントラストを取りにくかった従来のポリイミド前駆体に関する技術的課題を克服し、良好なパターン形状を得ることができる。
【0035】
また、上記本発明に係る感光性樹脂組成物は、広範な構造の高分子前駆体(A)を選択できる為、それによって得られる高分子は、耐熱性、寸法安定性、絶縁性等の機能を付与することが可能である。
【0036】
特に、本発明に係る感光性樹脂組成物は、主にパターン形成材料として用いられ、それによって形成されたパターンは、永久膜として耐熱性や絶縁性を付与する成分として機能し、例えば、カラーフィルタ、フレキシブル基板用部材、液晶配向膜、半導体装置、電子部品、層間絶縁膜、ソルダーレジストやカバーレイなどの配線被覆膜、ソルダーダム、光回路、光回路部品、反射防止膜、その他の光学部材、又は建築材料を形成するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明の感光性樹脂組成物と従来の感光性樹脂組成物の、各温度におけるイミド化率を示したグラフである。
図2】本発明の感光性樹脂組成物より得られた高分子膜の引張試験結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明について詳しく説明する。
【0039】
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)少なくとも一部にポリアミック酸、又は、ポリアミック酸エステルの繰り返し単位を有する高分子前駆体と、(B)活性光線の照射によって強塩基性第3級アミンを発生する非イオン性光反応型潜在性塩基性物質を含有する。
【0040】
本発明で使用される高分子前駆体(A)は、下記一般式(1)で表わされることが好ましい。
【0041】
【化7】
式(1)中、R1は4価の有機基であり、R2は2価の有機基であり、Xが2価の有機基である。Xとしては、例えば、フェノール基、アルキルフェノール基、(メタ)アクリレート基、環状アルキル基、環状アルケニル基、ヒドロキシアミド酸基、芳香族又は脂肪族エステル基、アミド基、アミドイミド基、炭酸エステル基、シロキサン基、アルキレンオキサイド、ウレタン基、エポキシ基、オキセタニル基などを構成成分として含む基を挙げることができる。
【0042】
mは、1以上の整数であり、nは、0または1以上の整数である。ここで、高分子前駆体(A)の好ましい数平均分子量は、1000以上100万以下であり、より好ましくは5000〜50万であり、さらにより好ましくは1万〜20万である。
【0043】
式(1)中、R1およびR2は用途に応じて、芳香族基、好ましくは炭素原子数6〜32の芳香族基、又は脂肪族基、好ましくは炭素原子数4〜20の脂肪族基、から選ばれる。R及びRは、高分子前駆体(A)の製造において用いられる後述の酸二無水物、及びジアミンに含まれる置換基R及びRであると好ましい。
【0044】
また、短波長光により感光性樹脂組成物をパターン形成する場合には、ポリマーの吸収特性の観点から、R1及びR2として脂肪族基を用いることが好ましい。また、例えば、R1およびR2としてフッ素を含有する基を用いる場合は、光吸収の低波長化又は誘電特性を向上することができる。
【0045】
本発明では、用途に応じて高分子前駆体(A)の構造を選べるのが重要である。
【0046】
なお、R1の4価は酸と結合するための価数のみを示しているが、R1は置換基を有していても良い。同様に、R2の2価はアミンと結合するための価数のみを示しているが、他に更なる置換基を有していても良い。R3及びR4は、水素原子又は1価の有機基またはケイ素を有する官能基である。
【0047】
R3及びR4が1価の有機基である場合は、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、等を挙げることができる。R3及びR4が1価のケイ素を有する官能基である場合は、例えば、シロキサン基、シラン基、シラノール基などを挙げることができる。またR3およびR4の一部のみを水素又は一価の有機基とすることも可能であり、これにより、溶解性を制御することができる。
【0048】
本発明に係る高分子前駆体(A)としては、R3及びR4が水素原子であるようなポリアミック酸が好適に用いられる。これにより、アルカリ現像性が良好となり、良好なパターンが得られる。
【0049】
(ポリアミック酸)
ポリアミック酸は、従来公知の手法を適用することにより調製可能である。例えば、酸二無水物とジアミンを溶液中で混合するのみで調製できる。1段階の反応で合成することができ、容易かつ低コストで得られ、更なる修飾が不要であるため、好ましく使われている。高分子前駆体(A)の合成方法は特に限定されないが、公知の手法が適用可能である。
【0050】
本実施形態で用いることのできるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記式(8)で示されるものを挙げることができる。ただし、下記に示す具体例は一例であり、本発明の趣旨に反しない限り、公知のものを用いることができることは言うまでもない。
【0051】
【化8】
(式中のR1は、上述したとおりである。)
【0052】
なお、本実施形態に係るポリアミック酸における繰り返し単位中のR1基は、ポリアミック酸製造の原料として用いられるテトラカルボン酸二無水物のR1に由来することが好ましい。
【0053】
上記高分子前駆体(A)の製造に適用可能な酸二無水物としては、例えば、エチレンテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、メチルシクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物などの脂肪族テトラカルボン酸二無水物;ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3’,3,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3’,3,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,6,6’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,3−ビス〔(3,4−ジカルボキシ)ベンゾイル〕ベンゼン二無水物、1,4−ビス〔(3,4−ジカルボキシ)ベンゾイル〕ベンゼン二無水物、2,2−ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}プロパン二無水物、2,2−ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}プロパン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、4,4’−ビス〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕ビフェニル二無水物、4,4’−ビス〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕ビフェニル二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルホン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルホン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルフィド二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルフィド二無水物、2,2−ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(2,3−又は3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ぺリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、ピリジンテトラカルボン酸二無水物、スルホニルジフタル酸無水物、m−ターフェニル−3,3′,4,4′−テトラカルボン酸二無水物、p−ターフェニル−3,3′,4,4′−テトラカルボン酸二無水物などの芳香族テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0054】
これらは単独あるいは2種以上混合して用いられる。そして、特に好ましく用いられるテトラカルボン酸二無水物としてピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,6,6’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物が挙げられる。
【0055】
併用する酸二無水物としてフッ素が導入された酸二無水物や、脂環骨格を有する酸二無水物を用いると、透明性をそれほど損なわずに溶解性や熱膨張率等の物性を調整することが可能である。また、ピロメリット酸無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物などの剛直な酸二無水物を用いると、最終的に得られるポリイミドの線熱膨張係数が小さくなるが、透明性の向上を阻害する傾向があるので、共重合割合に注意しながら併用してもよい。
【0056】
酸二無水物の複数のカルボキシル基は、単一の芳香環上に存在しても、複数の芳香環上に存在してもよく、例えば、式(9)
【0057】
【化9】
で表される酸二無水物を使用することができる。透明性と機械特性の観点で、上記の酸二無水物の使用が好ましい。
【0058】
本発明で用いることができるアミンは、下記式(10)で示されるジアミンが挙げられる。ただし、下記のものは一例であり、本発明の趣旨に反しない限り、公知のものを用いることができることは言うまでもない。
【0059】
【化10】
(式中R2は、上述したとおりである。)
【0060】
R2基が2価の芳香族基である場合のジアミンの例としては、パラフェニレンジアミン、3,3'−ジメチル−4,4'−ジアミノビフェニル、2,2'−ジメチル−4,4'−ジアミノビフェニル、3,3'−ジメトキシ−4,4'−ジアミノビフェニル、3,3'−ジクロロ−4,4'−ジアミノビフェニル、9,10−ビス(4−アミノフェニル)アントラセン、4,4'−ジアミノベンゾフェノン、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、3,3'−ジアミノジフェニルスルホン、4,4'−ジアミノジフェニルスルフォキシド、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、4,4'−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4'−ビス(3−アミノフェノキシビフェニル、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(3−アミノ−4−メチルフェニル)プロパン、メタフェニレンジアミン、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4'−ジアミノジフェニルエーテル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼンを挙げることができる。
【0061】
R2基が2価の脂肪族基である場合のジアミンの例としては、1,1−メタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、4,4−ジアミノヘプタメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、テトラヒドロジシクロペンタジエニレンジアミン、ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダニレンジメチレンジアミン、トリシクロ[6.2.1.02,7]−ウンデシレンジメチルジアミン、4,4'−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、イソホロンジアミンを挙げることができる。
【0062】
また、別の例としては、下記式(11)で示されるジアミノポリシロキサン等が挙げられる。
【0063】
【化11】
【0064】
ただし、式中、R28及びR29はそれぞれ独立して二価の炭化水素基を表し、R30及びR31は、それぞれ独立して一価の炭化水素基を表す。pは1以上、好ましくは1〜10の整数である。
【0065】
具体的には、上記式(11)におけるR28及びR29としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等の炭素数1〜7のアルキレン基、フェニレン基等の炭素数6〜18のアリーレン基などが挙げられ、R30及びR31としては、メチル基、エチル基等の炭素数1〜7のアルキル基、フェニル基等の炭素数6〜12のアリール基などが挙げられる。
【0066】
ポリアミック酸のエステルは、公知の方法により得ることができる。
【0067】
例えば、3,3'−ベンソフェノンテトラカルボン酸二無水物などの酸無水物とエタノールなどのアルコールを反応させハーフエステルとする。そのハーフエステルを塩化チオニルを用いてジエステルジ酸クロライドとする。そのジエステルジ酸クロライドを3,5−ジアミノ安息香酸などのジアミンと反応させることにより、ポリアミック酸のエステルを得ることができる。
【0068】
感光性樹脂組成物中、少なくとも一部にポリアミック酸、又は、ポリアミック酸エステルの繰り返し単位を有する高分子前駆体(A)としては、単一種類の材料を用いてもよいし、複数種類を混合物として用いてもよい。また、R1又は/及びR2がそれぞれ複数の構造からなる、共重合体であってもよい。
【0069】
本実施形態に係る非イオン性光反応型潜在性塩基性物質(B)は、活性光線の照射により強塩基性第3級アミンを発生するものである。潜在性塩基性物質(B)は、光照射により化学構造が変化して強塩基性第3級アミンを発生する。塩基性を高め、効率的に部分的イミド化を促進する観点から、発生する強塩基性第3級アミンは、例えばアミジンまたはグアニジン類であることが好ましい。
【0070】
本発明の潜在性塩基性物質(B)のうち、例えば、8−ベンジル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカン(pKa=7.46)は、活性光線の照射により、下式のように強塩基性(pKa=13.28)の第3級アミンに変化する。
【化12】
【0071】
このような大きな塩基性の変化は従来のイオン性の塩基発生剤には見られなかった顕著な作用であり、これにより高分子前駆体(A)のイミド化が非常に良好に促進され、露光部(ポリイミド化した部分)と、未露光部(高分子前駆体(A)のままの部分)が生ずるため、現像によるパターニングの精度が向上する。
【0072】
また、塩基性を強める観点から、活性光線の照射により発生する第3級アミンは、環状構造であることがより好ましい。
【0073】
本発明において、潜在性塩基性物質(B)に対する活性光線として、可視光線、紫外線、電子線、X線等を照射することが可能であり、紫外線、特に、248nm、365nm、405nm、436nmの紫外線を用いることが好ましい。
【0074】
使用する潜在性塩基性物質(B)の量は、膜厚、潜在性塩基性物質(B)の種類、高分子前駆体(A)の種類等に応じて適宜選択する。例えば、高分子前駆体(A)100質量部に対し、潜在性塩基性物質(B)の添加量を1〜40質量部とする。より好ましくは5〜35質量部であり、さらに好ましくは10〜30質量部である。上記添加量の潜在性塩基性物質(B)により、高分子前駆体(A)を良好にイミド化することが可能となる。
【0075】
さらに、本発明の潜在性塩基性物質(B)は、従来のイオン性の光塩基発生剤とは異なり、非イオン性であることから、感光性樹脂組成物に触媒として添加される場合にも、有機溶媒における溶解性が優れ、取扱いが容易である他、組成物及びこれから得られる高分子膜が均一に得られる。
【0076】
上記の活性光線の照射によって強塩基性第3級アミンを発生する潜在性塩基性物質(B)が一般式(2)で表される化合物であることが好ましい。
【0077】
【化13】
(式(2)中、R5は、200〜650nmの波長範囲で光を吸収することが可能であり、非置換であるか、または1つ以上のアルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、NR12R13、CN、OR14、SR15、COR16、COOR17、ハロゲンまたは
【0078】
【化14】
によって置換された芳香族または複素芳香族基であり;あるいはR5は、
【0079】
【化15】
であり;
R6およびR7は、互いに独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニルであるか、非置換または1つ以上のアルキル、CN、OR14、SR15、ハロゲンまたはハロアルキルによって置換されたフェニルであり;
R9は、アルキルまたはNR14AR15Aであり; R14AおよびR15Aは、ともに、非置換であるか、または1つ以上のアルキルによって置換されたアルキレンブリッジを形成し;
R8、R10、R11、R12およびR13は、互いに独立して、水素またはアルキルであり;あるいは
R8およびR10は、ともに、非置換であるか、または1つ以上のアルキルによって置換されたアルキレンブリッジを形成し;あるいは
R9およびR11は、R8およびR10から独立して、ともに、非置換であるか、または1つ以上のアルキルによって置換されたアルキレンブリッジを形成し;
R14、R15およびR17は、互いに独立して、水素またはアルキルであり;
R16は水素又はアルキルであり;あるいは200〜650nmの波長範囲で光を吸収することが可能であり、非置換であるか、または1つ以上のアルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、NR12R13、CN、OR14、SR15、COR14、COOR17、またはハロゲンによって置換された芳香族または複素芳香族基であり;
R18は、200〜650nmの波長範囲で光を吸収することが可能であり、非置換であるか、または1つ以上のアルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、NR12R13、CN、OR14、SR15、COR16、COOR17、またはハロゲンによって置換された芳香族または複素芳香族基であり;
R19は、水素またはアルキルであり;
R20は、水素、アルキル、あるいは非置換であるか、または1つ以上のアルキル、ビニル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、フェニル、NR12R13、CN、OR14、SR15、COR16、COOR17またはハロゲンによって置換されたフェニルである。)
【0080】
式(2)で表される潜在性塩基性物質(B)が、式(5)で表される化合物であることが好ましい。
【0081】
【化16】
(式(5)中、
xは1〜5の整数であり;
y及びzは、互いに独立して、0〜6の整数であり;
R21及びR22は、互いに独立して、炭素数1〜4のアルキル基であり;
Aは炭素又は窒素原子であり;
R5、R6及びR7は、以上に定義されている通りである)
【0082】
さらに、式(2)で表される潜在性塩基性物質(B)が、式(6−1)又は式(6−2)で表されることが好ましい。
【0083】
【化17】
(式(6−1)、(6−2)中、R5、R6及びR7は、以上に定義されている通りである。)
【0084】
上記化合物の具体例としては、式(7−a1)、式(7−a2)、式(7−b1)および式(7−b2)で表される化合物を列挙することができる。
【0085】
【化18】
(式中、R23〜R27は、それぞれ独立に水素原子または一価の有機基であり、炭素以外に酸素または硫黄を含んでいてもよい。R23〜R27の2つ以上が同一であっても全てが異なってもよい。また、R23〜R27の2つ以上が結合して環状構造を形成していても良い。)
【0086】
前記潜在性塩基性物質(B)が発生する強塩基性第3級アミンの沸点が100℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましい。
【0087】
また、潜在性塩基性物質(B)が発生する強塩基性第3級アミンは、共役酸のpKaが9以上であることが好ましく、12以上であることがより好ましい。具体的には、活性光線の照射によってPKaが11〜14、特に12.3〜13.7の範囲の強塩基性第3級アミンを用いると、取扱いとイミド化の両面で好ましい。
【0088】
また、沸点が100℃以上の強塩基性第3級アミンを発生させることにより、イミド化反応時における強塩基性第3級アミンの蒸発を抑制可能となり、強塩基性第3級アミンの沸点が150℃以上であると、イミド化の後のポストキュアでの蒸発の抑制が可能となる。
【0089】
さらに、強塩基性第3級アミンの共役酸のpKaが9以上であることにより、イミド化を容易に行うことができる。さらに、強塩基性第3級アミンの共役酸のpKaを12以上とすることにより、イミド化を更に容易かつ迅速に行うことができる。
【0090】
一般的な露光光源である高圧水銀灯の波長は、436nm、405nm、365nmであり、KrFレーザーの波長は248nmであることも考慮し、前記潜在性塩基性物質(B)は、240nm〜450nmの範囲、特に436nm、405nm、365nm、248nmの波長の電磁波のうち少なくとも1つの波長に吸収を有することが好ましい。
【0091】
感光性樹脂組成物の塗膜に活性光線を照射した際、厚み方向に均一に潜在性塩基性物質(B)の分解が進行するように、高分子前駆体(A)や潜在性塩基性物質(B)の組み合わせや添加量を、塗布膜厚等に応じて適宜選択する。低露光量化を達成し、厚膜化にも対応可能なように、高分子前駆体(A)は、活性光線の波長に対して吸収が小さいものを用いることが好ましい。高分子前駆体(A)の分子設計により、吸収特性を適宜変更することができる。例えば、吸収領域を短波長にシフトさせるためには、芳香族基を有する高分子前駆体(A)を用い、上記R又は/及びR2等の共役系を短くすること、又は電荷移動錯体の形成を妨げることが有用である。
【0092】
以下に、本発明の感光性樹脂組成物に配合可能な他の成分を説明する。
【0093】
感光性樹脂組成物中の溶媒(C)としては、高分子前駆体(A)、潜在性塩基性物質(B)、及び他の添加剤を溶解させるものであれば特に制限はない。一例としては、N,N'−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N,N'−ジメチルアセトアミド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、シクロペンタノン、γ−ブチロラクトン、α−アセチル−γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、1,3−ジメチル−2−イミダゾリノン、N−シクロヘキシル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、ピリジン、γ−ブチロラクトン、ジエチレングリコールモノメチルエーテルを挙げることができる。これらは単独で用いても、二種以上を混合して用いてもかまわない。使用する溶媒の量は、塗布膜厚や粘度に応じて、高分子前駆体(A)100質量部に対し、50〜9000質量部の範囲で用いることができる。
【0094】
本実施形態に係る感光性樹脂組成物には、更に光感度を向上させるために増感剤(D)を添加することもできる。増感剤(D)としては、例えばミヒラーズケトン、4,4'−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,5−ビス(4'−ジエチルアミノベンザル)シクロペンタン、2,6−ビス(4'−ジエチルアミノベンザル)シクロヘキサノン、2,6−ビス(4'−ジメチルアミノベンザル)−4−メチルシクロヘキサノン、2,6−ビス(4'−ジエチルアミノベンザル)−4−メチルシクロヘキサノン、4,4'−ビス(ジメチルアミノ)カルコン、4,4'−ビス(ジエチルアミノ)カルコン、p−ジメチルアミノシンナミリデンインダノン、p−ジメチルアミノベンジリデンインダノン、2−(p−ジメチルアミノフェニルビフェニレン)−ベンゾチアゾール、2−(p−ジメチルアミノフェニルビニレン)ベンゾチアゾール、2−(p−ジメチルアミノフェニルビニレン)イソナフトチアゾール、1,3−ビス(4'−ジメチルアミノベンザル)アセトン、1,3−ビス(4'−ジエチルアミノベンザル)アセトン、3,3'−カルボニル−ビス(7−ジエチルアミノクマリン)、3−アセチル−7−ジメチルアミノクマリン、3−エトキシカルボニル−7−ジメチルアミノクマリン、3−ベンジロキシカルボニル−7−ジメチルアミノクマリン、3−メトキシカルボニル−7−ジエチルアミノクマリン、3−エトキシカルボニル−7−ジエチルアミノクマリン、N−フェニル−N′−エチルエタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン、N−p−トリルジエタノールアミン、N−フェニルエタノールアミン、4−モルホリノベンゾフェノン、ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、ジエチルアミノ安息香酸イソアミル、2−メルカプトベンズイミダゾール、1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ベンズオキサゾール、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ベンズチアゾール、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ナフト(1,2−d)チアゾール、2−(p−ジメチルアミノベンゾイル)スチレン等が挙げられ、感度の点で、4−(1−メチルエチル)−9H−チオキサンテン−9−オンなどのチオキサントン類を用いることが好ましい。これらは単独でまたは2〜5種類の組み合わせで用いることができる。増感剤(D)、高分子前駆体(A)100質量部に対し、0.1〜10質量部を用いるのが好ましい。
【0095】
また、本実施形態1に係る感光性樹脂組成物には、基材との接着性向上のため接着助剤を添加することもできる。接着助剤としては、本発明の趣旨に反しない限り公知のものを用いることができる。例えば、γ−アミノプロピルジメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、N−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]フタルアミド酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物と(トリエトキシシリル)プロピルアミンの反応生成物等を挙げることができる。接着助剤の添加量は、高分子前駆体(A)100質量部に対し、0.5〜10質量部の範囲が好ましい。
【0096】
また、本発明の感光性樹脂組成物には、塩基増殖剤を添加してもよい。厚膜のパターンを形成する時、表面から下まで同じ程度の潜在性塩基性物質(B)の分解率が求められる。この場合、感度を向上するため、塩基増殖剤の添加が好ましい。例えば、特開2012−237776、特開2006−282657などに開示した塩基増殖剤の使用が可能である。
【0097】
なお、本発明の感光性樹脂組成物には、硬化後の膜特性を大きく損なわない範囲で、光によって酸又は塩基を発生させる他の感光性成分を加えても良い。本発明の感光性樹脂組成物にエチレン性不飽和結合を1つ又は2つ以上有する化合物を加える場合、光ラジカル発生剤を添加してもよい。
【0098】
本発明に係る樹脂組成物に加工特性や各種機能性を付与するために、その他に様々な有機又は無機の低分子又は高分子化合物を配合してもよい。例えば、染料、界面活性剤、レベリング剤、可塑剤、微粒子等を用いることができる。微粒子には、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン等の有機微粒子、コロイダルシリカ、カーボン、層状珪酸塩等の無機微粒子等が含まれ、それらは多孔質や中空構造であってもよい。多孔質形状や中空構造を得るための具体的材料としては各種顔料、フィラー、及び繊維等がある。
【0099】
次に、上記感光性樹脂組成物を用いたレリーフパターンの製造方法について説明する。
【0100】
まず、ステップ1として感光性樹脂組成物を基材上に塗布し、乾燥することにより塗膜を得る。感光性樹脂組成物を基材上に塗布する方法としては、従来から感光性樹脂組成物の塗布に用いられていた方法、例えば、スピンコーター、バーコーター、ブレードコーター、カーテンコーター、スクリーン印刷機等で塗布する方法、スプレーコーターで噴霧塗布する方法、さらにはインクジェット法等を用いることができる。塗膜の乾燥方法としては、風乾、オーブンまたはホットプレートによる加熱乾燥、真空乾燥等の方法が用いられる。また、塗膜の乾燥は、感光性樹脂組成物中の高分子前駆体(A)のイミド化が起こらないような条件で行うことが望ましい。具体的には、自然乾燥、送風乾燥、あるいは加熱乾燥を、20℃〜140℃で1分〜1時間の条件で行うことができる。好ましくは、ホットプレート上で1〜5分乾燥を行う。また、真空乾燥も可能であり、この場合は、室温で1分〜1時間の条件で行うことができる。
【0101】
基材に特に制限はなく、シリコンウェハー、配線基板、各種樹脂、金属、半導体装置のパッシベーション保護膜などに広く適用できる。
【0102】
また、低温でのイミド化が可能であるため、プリント配線板の基板等の高温処理に適さない部材、材料に広く適用可能であるのが特徴である。
【0103】
次に、ステップ2として上記塗膜を、パターンを有するフォトマスクを介して、あるいは、直接露光する。露光光線は、潜在性塩基性物質(B)を活性化させ強塩基性第3級アミンに変化させることができる波長のものを用いる。上述したように、適宜増感剤を用いると、光感度を調製することができる。露光装置としては、コンタクトアライナー、ミラープロジェクション、ステッパー、レーザーダイレクト露光装置等を用いることができる。
【0104】
続いて、ステップ3として塗膜中に発生した塩基により塗膜のイミド化を促進させるように加熱する。これにより、上記ステップ2において露光部に発生した塩基が触媒となって、高分子前駆体(A)が部分的にイミド化する。加熱時間及び加熱温度は、用いる高分子前駆体(A)、塗布膜厚、潜在性塩基性物質(B)の種類によって適宜変更する。典型的には、10μm程度の塗布膜厚の場合、110〜200℃で2分〜10分程度である。加熱温度が低すぎると、部分的イミド化を効率的に達成することができない。一方、加熱温度が高すぎると、未露光部のイミド化が進行して、露光部と未露光部との溶解性の差を小さくしてしまい、パターン形成に支障が生ずる懸念がある。
【0105】
次いで、ステップ4として塗膜を現像液で処理する。これにより、塗膜中の未露光部分を除去して、基材上に高分子前駆体(A)及び部分的にイミド化したポリイミドからなるパターンを形成することができる。
【0106】
現像に用いる方法としては、従来知られているフォトレジストの現像方法、例えば回転スプレー法、パドル法、超音波処理を伴う浸せき法等の中から任意の方法を選択することができる。現像液としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等の四級アンモニウム塩類等の水溶液を挙げることができる。また、必要に応じて、これらにメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の水溶性有機溶媒や界面活性剤を適当量添加水溶液として使用することができる。その後、必要に応じて塗膜をリンス液により洗浄してパターン塗膜を得る。リンス液としては、蒸留水、メタノール、エタノール、イソプロパノール等を単独または組み合わせて用いることができる。また、現像液として上記溶媒(C)を使用してもよい。
【0107】
その後、ステップ5としてパターン化された塗膜を加熱する。加熱温度は、ポリイミドのパターンを硬化可能なように適宜設定する。例えば、不活性ガス中で、150〜300℃で5〜120分程度の加熱を行う。加熱温度のより好ましい範囲は、150〜250℃であり、さらに好ましい範囲は180〜220℃である。加熱は、例えば、ホットプレート、オーブン、温度プログラムを設定できる昇温式オーブンを用いることにより行う。このときの雰囲気(気体)としては空気を用いてもよく、窒素、アルゴン等の不活性ガスを用いてもよい。
【0108】
本発明に係る感光性樹脂組成物は、印刷インキ、接着剤、充填剤、電子材料、光回路部品、成形材料、レジスト材料、建築材料、3次元造形、光学部材等、樹脂材料が用いられる公知の種々の分野・製品、特にポリイミド膜の耐熱性、寸法安定性、絶縁性等の特性が有効とされる広範な分野・製品、例えば、塗料又は印刷インキ、或いは、カラーフィルター、フレキシブルディスプレー用フィルム、半導体装置、電子部品、層間絶縁膜、配線被覆膜、光回路、光回路部品、反射防止膜、ホログラム、光学部材又は建築材料の形成材料として好適に用いられ、本発明に係る感光性樹脂組成物又はその高分子膜を少なくとも一部に含む印刷物、カラーフィルター、フレキシブルディスプレー用フィルム、半導体装置、電子部品、層間絶縁膜、配線被覆膜、光回路、光回路部品、反射防止膜、ホログラム、光学部材又は建築材料等が提供される。
【0109】
特に、高分子前駆体(A)を含有する感光性樹脂組成物は、主にパターン形成材料(レジスト)として用いられ、それによって形成されたパターンは、ポリイミドからなる永久膜として耐熱性や絶縁性を付与する成分として機能し、例えば、カラーフィルター、フレキシブルディスプレー用フィルム、電子部品、半導体装置、層間絶縁膜、ソルダーレジストやカバーレイ膜などの配線被覆膜、ソルダーダム、光回路、光回路部品、反射防止膜、その他の光学部材又は電子部材を形成するのに適している。
[合成例1]
【0110】
非イオン性光反応型潜在性塩基性物質1:8−ベンジル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカンの調製
以下の手順により、下式により示される1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカンを製造した。
【0111】
【化19】
(i)1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカンの調製
2.5Lのフラスコに、tert−ブチルメチルエーテル1470mLと1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン152 g(1mol)を装填した。その後、水素化リチウムアルミニウム18.97g(0.5 mol)を数回に分けてフラスコの中に導入し、生じたエマルジョンを室温で1時間攪拌した。続いて反応混合物を2時間にわたり55〜57℃に加温し、その後室温にて一晩攪拌した。薄層クロマトグラフィーにより、反応完了を確認した。反応混合物を0℃に冷却し、注意して水19mLおよび次に濃度10%の水酸化ナトリウム溶液19mLを添加した。さらに水57mLを添加した。得られた混合物を1時間攪拌した後、ろ過し、吸引フィルタ上の生成物をtert−ブチルメチルエーテル200mL、および塩化メチレン200mL×2回によって洗浄した。洗浄液を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、回転蒸発器で溶媒を留去した。1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカンが黄色を帯びた油状物として得られた
【0112】
さらなる精製では、粗生成物を、ビグリューカラムを使用して47〜53mbarで蒸留した。82〜85℃の画分が純生成物を含んでいた。構造の確認は1H-NMRを用いて行った。
【0113】
(ii)8−ベンジル−1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカンの調製
750mLフラスコの中で、水酸化ナトリウム21.0g(0.525mol)およびヨウ化カリウム5.81g(0.035 mol)をジクロロメタン350 mLに懸濁した。次に塩化ベンジル44.31g(0.35 mol)および上記により得られた1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカン54.00g(0.35 mol)を添加し、懸濁液を室温にて24時間攪拌した。1H-NMRスペクトルには塩化ベンジル中のベンジル性プロトンのピークはもはや確認できなかった。
【0114】
反応混合物を水200mLに注入し、分離漏斗で分離した有機相の溶媒を回転蒸発器で除去した。残った黄色を帯びた液体にヘキサン500 mLを添加した。沈殿した塩をろ過によって除去し、溶媒を回転蒸発器で留去した。静置後、溶液がゆっくりと固化し、8−ベンジル−1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカンが淡い黄色を帯びた油状物として得られた。
【0115】
さらなる精製のため、粗生成物を、ビグリューカラムで減圧下(p=10-1mbar)にて蒸留し、所望の生成物を含む129〜136℃における画分を合わせた。無色の8−ベンジル−1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカン(pKa=7.46)が、冷却により、晶出した。構造の確認は1H-NMRを用いて行った。8−ベンジル−1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカンのpKa値は、K. Dietliker et al., Progress in Organic Coatings (2007), 146-157に記載の方法に基づいている。
【0116】
また、8−ベンジル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカンは、活性光線の照射によって強塩基性第3級アミンのDBU(pKa=13.28)となる(上記文献参照)。
[合成例2]
【0117】
非イオン性光反応型潜在性塩基性物質2:5−ベンジル−1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナンの調製
1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エンの代わりに1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノン-5-エンを用いた以外は合成例1と同様の手順によって下記式により示される5−ベンジル−1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナン(pKa=7.46)を調製した。生成物は、淡い黄色を帯びた油状物として得られた。構造の確認は1H-NMRを用いて行った。5−ベンジル−1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナンのpKa値は、上記文献に記載の方法に基づいている。
【0118】
【化20】
【0119】
また、5−ベンジル−1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナンは、活性光線を照射することによって強塩基性第3級アミンのDBN(1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン)(pKa=13.42)となる(上記文献参照)。
[合成例3]
【0120】
非イオン性光反応型潜在性塩基性物質3:5-メチルスチレン−1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナンの調製
以下の手順により、下式により示される5−メチルスチレン−1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナンを製造した。
【0121】
【化21】
2.5 Lフラスコの中で500mLトルエンに1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナン77.14g((0.5 mol)を溶解させ、撹拌しながらα-ブロモアセトフェノン99.52g(0.5mol)と500mLトルエン中の溶液を加えて、さらに一晩室温で撹拌した。反応混合物をろ過し、脱イオン水で洗浄して、硫酸マグネシウム上で乾燥した。続いて、さらに真空中で乾燥して、α−アミノケトンを約85%の収率で得た。
【0122】
これにより得られたα−アミノケトンのジクロロメタン溶液を、メチルトリフェニルホスホニウムブロミドおよびナトリウムアミドを、ジクロロメタン中で15分間撹拌することにより得られた溶液中に添加し、得られた混合物を、室温で18時間撹拌した。得られた溶液をろ過し、ろ液を真空中で濃縮した。5−メチルスチレン−1,5-ジアザビシクロ「4.3.0]ノナン(pKa=7.49)が得られた。構造の確認は1H-NMRを用いて行った。5−メチルスチレン−1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナンのpKa値は、上記文献に記載の方法に基づいている。
【0123】
また、5−メチルスチレン−1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナンは、活性光線を照射することによって強塩基性第3級アミンのDBN(1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン)(pKa=13.42)となる(上記文献参照)。
[合成例4]
【0124】
高分子前駆体
500mLの3つ口フラスコ中で、141.3gの脱水N−メチル−2−ピロリドン(NMP)に4,4’−ジアミノジフェニルエーテル 12.01g (60mmol)を添加し、窒素気流下、室温で撹拌し、溶解させた。この溶液に、ピロメリット酸二無水物13.09 g(60mmol)を徐々に添加し、添加終了後、窒素気流下、室温で12時間撹拌し、高分子前駆体であるポリアミック酸溶液を得た。
【実施例1】
【0125】
上記高分子前駆体溶液3gに、71.6 mg上記非イオン性光反応型潜在性塩基性物質1を溶解させ、本発明の感光性樹脂組成物(感光性樹脂組成物1)を得た。
【実施例2】
【0126】
上記高分子前駆体溶液3gに、71.6mg上記非イオン性光反応型潜在性塩基性物質2を溶解させ、本発明の感光性樹脂組成物(感光性樹脂組成物2)を得た。
【実施例3】
【0127】
上記高分子前駆体溶液3 gに、71.6 mg上記非イオン性光反応型潜在性塩基性物質3を溶解させ、本発明の感光性樹脂組成物(感光性樹脂組成物3)を得た。
[比較例1]
【0128】
上記高分子前駆体溶液3gに、71.6mgの下式の感光性物質4を溶解させ、比較例の感光性樹脂組成物(感光性樹脂組成物4)を得た。
【0129】
【化22】
[比較例2]
【0130】
上記高分子前駆体溶液3gに、71.6 mgの下式の感光性物質5を溶解させ、比較例の感光性樹脂組成物(感光性樹脂組成物5)を得た。
【0131】
【化23】
[比較例3]
【0132】
上記高分子前駆体溶液3gに、71.6mgの下式の感光性物質6溶解させ、比較例の感光性樹脂組成物(感光性樹脂組成物6)を得た。
【0133】
【化24】
[比較例4]
【0134】
上記高分子前駆体溶液3gのみからなる比較例の感光性樹脂組成物(感光性樹脂組成物7)を得た。
【0135】
<試験>
(1)紫外線照射・低温加熱試験
(1−1)実施例1、2、及び比較例4による硬化サンプルの作製(紫外線照射及び低温加熱)
感光性樹脂組成物1と2(実施例1及び2)及び感光性樹脂組成物7(比較例4)を、それぞれ銅板の上に最終膜厚1μmになるように塗布した。これらに対し、100℃でホットプレートの上で15分間乾燥させた後、さらにメタルハライドランプを搭載した露光装置(株式会社オーク製作所製)でh線換算、10J紫外線照射を行った。
(1−2)標準硬化サンプルの作製(高温加熱)
感光性樹脂組成物7(比較例4)を、ウェハーの上に最終膜厚1μmになるように塗布し、これをホットプレートで100℃30分、200℃30分、250℃30分、300℃1時間加熱した。これにより、イミド化させ標準イミド膜を得た。
(1−3)乾燥サンプルの作製
感光性樹脂組成物7(比較例4)を、ウェハーの上に最終膜厚1μmになるように塗布し、これを100℃にて15分加熱して乾燥サンプルとした。
【0136】
上記のように作成した実施例1、2、及び比較例4による硬化サンプル、及び標準硬化サンプルについて、サーモサイエンティフィック製Nicolet 4700 FT-IR、加熱装置と反射鏡を備えた観察台、およびシマデン製DSM Temperature Control Unitを用いて、100℃から5℃/minで200℃まで昇温させながら赤外分光スペクトルを測定した。
【0137】
加熱にしたがって前駆体由来のスペクトルが消失し、加熱によって生成したポリイミド由来のピークが現れた。イミド化の進行状況を確認する為に、生成したポリイミドC-N由来の1368cm-1のピークのエーテルC-O-C由来の1234cm-1ピークに対する高さの比(C-N/C-O-C)とを計算した(イミド化率の計算)。
【0138】
各サンプルのイミド化率の計算式を式1に示す。
【0139】
【数1】
(式1)
但し、式1中、各符号は以下の意味を有する:
a: (C-N)1374 cm-1の吸光度
b: (C-O-C)1237 cm-1の吸光度
(a/b)PI: 標準硬化サンプルのC-N由来のピークのC-O-C由来のピークに対する高さの比
(a/b)PAA,init : 乾燥サンプルのC-N由来のピークのC-O-C由来のピークに対する高さの比
(a/b)sample : 実施例1、2、及び比較例4による硬化サンプルのC-N由来のピークのC-O-C由来のピークの高さの比
【0140】
式1に従って、各温度で感光性樹脂組成物のイミド化率を算出した。その結果は図1に示した通りである。感光性樹脂組成物1及び2(実施例1及び2)は、感光性樹脂組成物7(比較例4)に比べてイミド化が低温で起こっており、感光性樹脂組成物1と7(実施例1と比較例4)のイミド化率の差が170℃付近で最大となることがわかった。さらに、感光性樹脂組成物1のイミド化率が180℃付近で100%に到達している。これに対し、感光性樹脂組成物7のイミド化率は200℃までで75%であった。
【0141】
(2)高分子膜の物性
感光性樹脂組成物1、2、及び4、5(実施例1、2、及び比較例1、2)を、電解銅箔(古河電工製、GTS処理品)上に最終膜厚50μmになるように塗布し、80℃の熱風循環乾燥機で30分間乾燥させた。そこへ、メタルハライドランプを搭載した露光装置(株式会社オーク製作所製)でh線換算、10J紫外線照射を行い、その後、各サンプルを180℃で1時間加熱しイミド化を行った。
(2−1)自立膜形成
感光性樹脂組成物1と2(実施例1と2)より平坦かつ均一な自立した硬化膜が得られた。それに対して、感光性樹脂組成物4と5では、脆くて自立膜ができなかった。硬化膜の性質が違った理由は、活性光線の照射によって発生した2級塩基が、イミド化促進効果が弱く、かつ2級アミンの活性水素がポリアミック酸と何らかの反応を生じたためと考えられる。
(2−2)引張試験結果
感光性樹脂組成物1(実施例1)、並びに感光性樹脂組成物4及び5(比較例1及び2)の硬化膜を10×40×0.05(mm)の試験片として、SHIMADZU AG-X(引張試験機)を使用し、引張速度1mm/minにて引張試験を行った。この結果を図2に示した。感光性樹脂組成物1(実施例1)は、引張弾性率が2.2GPa、引張伸度が26%であり、良好な物性を示した。一方、感光性樹脂組成物4及び5(比較例1及び2)では、容易に亀裂が生じたため、試験ができなかった。
【0142】
(3)パターン形成
感光性樹脂組成物1〜3及び6(実施例1〜3、比較例3)を、ウェハー上に最終膜厚1μmになるようにスピンコートし、80℃のホットプレート上で30分間乾燥させた。これに対し、メタルハライドランプを搭載した露光装置(株式会社オーク製作所製)でh線換算、10J紫外線照射を行い、その後、170℃のホットプレート上で5分加熱した後、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド2.38%溶液に浸漬した。その結果、感光性樹脂組成物1から3(実施例1〜3)は、露光部が現像液に溶解せず良好なパターンを得ることができた。これに対して、感光性樹脂組成物6(比較例3)は、未露光部が溶けにくく、溶解速度のコントラストが不十分であることがわかった。さらに、感光性樹脂組成物1〜3から得られたパターンを180℃で1時間加熱しイミド化を行った。
【0143】
この結果、本発明の感光性樹脂組成物は、良好なパターンを形成することできることが明らかとなった。
【0144】
本発明は上記の実施の形態の構成及び実施例に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々変形が可能である。
図1
図2