特許第6139071号(P6139071)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6139071
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】発光装置とその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/50 20100101AFI20170522BHJP
【FI】
   H01L33/50
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-168300(P2012-168300)
(22)【出願日】2012年7月30日
(65)【公開番号】特開2014-27208(P2014-27208A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2015年4月3日
【審判番号】不服2016-17335(P2016-17335/J1)
【審判請求日】2016年11月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100138863
【弁理士】
【氏名又は名称】言上 惠一
(72)【発明者】
【氏名】米田 章法
(72)【発明者】
【氏名】中村 伸治
(72)【発明者】
【氏名】粟飯原 善之
(72)【発明者】
【氏名】佐々 博凡
【合議体】
【審判長】 恩田 春香
【審判官】 星野 浩一
【審判官】 河原 英雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−12544(JP,A)
【文献】 特開2013−12545(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L33/00-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性基板の上に蛍光体層を形成する蛍光体層形成工程と、
前記蛍光体層の上に、それぞれ発光面と反対側の電極形成面に正負の電極を有する複数の発光素子を前記正負の電極を上にして所定の間隔を隔てて配列する発光素子配列工程と、
前記電極形成面を含む平面より突出しないように蛍光体粒子を含む樹脂を埋め込む樹脂埋込工程と、
前記樹脂を硬化させた後、硬化された樹脂、前記蛍光体層及び前記透光性基板を切断して、それぞれ前記発光素子を1又は2以上含む複数の発光装置に分割する分割工程と、
を含む発光装置の製造方法。
【請求項2】
蛍光体含有基板上に、それぞれ発光面と反対側の電極形成面に正負の電極を有する複数の発光素子を前記正負の電極を上にして所定の間隔を隔てて配列する発光素子配列工程と、
前記配列された発光素子の間に、前記電極形成面を含む平面より突出しないようにかつ前記発光素子から遠ざかるにつれて厚さが薄くなって中央部の表面が窪むように発光素子の間を全て満たす樹脂を埋め込む樹脂埋込工程と、
前記樹脂を硬化させた後、硬化された樹脂、前記蛍光体含有基板を切断して、それぞれ前記発光素子を1又は2以上含む複数の発光装置に分割する分割工程と、
を含む発光装置の製造方法。
【請求項3】
前記樹脂が、蛍光体粒子を含むことを特徴とする請求項に記載の発光装置の製造方法。
【請求項4】
前記樹脂が、光反射性物質を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の発光装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子(ダイオードチップ)から照射される光を波長変換して外部に放出する発光装置とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発光素子から照射される光を波長変換して外部に放出する発光装置として、特許文献1には、発光ダイオードチップと蛍光体チップとが透明な接着剤により固着された構成が開示されている。特許文献1において、蛍光体チップは、例えば、基体と基体中に混入された蛍光体を含むものであり、単結晶、多結晶若しくは蛍光体粉末の焼結体等の蛍光体インゴットから切り出した蛍光体チップ、樹脂又はメタロキサンゾル等のバインダに蛍光体粉末を混合し型に注入して乾燥・加熱硬化して形成した蛍光体チップ、蛍光体粉末をバインダに混合して平板状に成形し、乾燥・加熱硬化した後、切り出して形成した蛍光体チップなどが例示されている。
蛍光体チップは、例えば、発光素子が収納される凹部を有し、その凹部に発光ダイオードチップが嵌込まれて接着剤により固定される。接着剤としては、例えば、光透過性のエポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂が使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−141559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された従来の発光装置は、蛍光体チップを別に作製して発光ダイオードチップを嵌込んで製造しており、また1つ1つ組み立てることになり、工数が多くなり安価に製造することができないという問題があった。
また、例えば、発光素子の発光面と側面が蛍光体層で覆われている発光装置では、放熱性が悪くなるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、発光素子から照射される光を波長変換して外部に放出する発光装置を安価に製造できる製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、発光素子の発光面と側面が蛍光体層で覆われかつ放熱性が良好な発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の目的を達成するために、本発明に係る発光装置の第1の製造方法は、
透光性基板の上に蛍光体層を形成する蛍光体層形成工程と、
前記蛍光体層の上に、それぞれ同一面側に正負の電極を有する複数の発光素子を所定の間隔を隔てて配列する発光素子配列工程と、
前記発光素子の少なくとも上面の一部が露出するように樹脂を埋め込む樹脂埋込工程と、
前記樹脂を硬化させた後、硬化された樹脂、前記蛍光体層及び前記透光性基板を切断して、それぞれ前記発光素子を1又は2以上含む複数の発光装置に分割する分割工程と、
を含むことを特徴とする。
これにより、発光素子の周囲が蛍光体層及び樹脂で覆われた発光装置を効率よく製造することができる。また、この発光装置は蛍光体層を有しているため、従来のように発光素子を、凹部を備えるパッケージに実装して蛍光体含有樹脂で封止する必要がなく、発光装置を小型化することができる。
【0007】
本発明に係る発光装置の第2の製造方法は、
蛍光体含有基板上に、複数の発光素子を所定の間隔を隔てて配列する発光素子配列工程と、
前記配列された発光素子の間に樹脂を埋め込む樹脂埋込工程と、
前記樹脂を硬化させた後、硬化された樹脂、前記蛍光体含有基板を切断して、それぞれ前記発光素子を1又は2以上含む複数の発光装置に分割する分割工程と、
を含むことを特徴とする。
これにより、蛍光体含有基板上に発光素子を配列するので、個々に分割した発光装置の色調バラツキを抑制することができる。また、蛍光体含有基板の厚みを調整して、任意の色調かつ均一な発光波長を有する発光装置を効率よく製造することができる。
【0008】
本発明に係る発光装置の第1と第2の製造方法では、前記樹脂が、蛍光体粒子を含むようにしてもよい。
これにより、発光素子の光取り出し面が蛍光体粒子を含む部材で覆われるので、発光素子からの光を効率よく波長変換させる発光装置を製造することができる。
【0009】
本発明に係る発光装置の第1と第2の製造方法では、前記樹脂が、光反射性物質を含むようにしてもよい。
これにより、発光素子の側面が光反射性物質を含む樹脂で覆われるので、発光素子からの光は主に発光装置の上面方向へ放出されることになる。したがって、点光源に近い発光装置を製造することができる。
【0010】
本発明に係る発光装置の第1と第2の製造方法において、前記発光素子が、
第1半導体層と、前記第1半導体層上に設けられた第2半導体層と、を有し、
前記第1半導体層上に第1電極、前記第2半導体層上に第2電極が同一面側に設けられ、
前記第1電極から前記第2半導体層上に絶縁膜を介して延びる金属膜を備えることにより、放熱性に優れた発光装置を製造することができる。
【0011】
本発明に係る発光装置は、基板上に第1半導体層と、前記第1半導体層上に設けられた第2半導体層と、を有し、
前記第1半導体層上に第1電極、前記第2半導体層上に第2電極が同一面側に設けられ、
前記第1電極から前記第2半導体層上に絶縁膜を介して延びる金属膜を備える発光素子と、
前記発光素子の前記基板を覆う蛍光体層と、前記発光素子の側面を覆う樹脂層と、を有し、
前記樹脂層が前記発光素子側面に設けられていることを特徴とする。
また、本発明に係る発光装置は、基板上に第1半導体層と、前記第1半導体層上に設けられた第2半導体層と、を有し、
前記第1半導体層上に第1電極、前記第2半導体層上に第2電極が同一面側に設けられ、
前記第1電極から前記第2半導体層上に絶縁膜を介して延びる金属膜を備える発光素子と、
前記発光素子の前記基板を覆う蛍光体含有基板と、前記発光素子の側面を覆う樹脂層と、を有し、
前記樹脂層が前記発光素子側面に設けられていることを特徴とする。
発光素子の基板上と側面とが蛍光体層、蛍光体含有基板及び樹脂層で覆われている構造であれば放熱性が必要となる。本発明の構成により、第1電極を第2半導体層上へ延長して形成することで第1電極の面積を広く設けることができ、発光装置の電極と実装側の部材との接触面積が拡大する。したがって、放熱性が向上する。また、発光素子が樹脂層と直接接していることにより、発光素子と樹脂層との間に光を吸収する部材がないため光取り出し効率が向上する。
【0012】
本発明に係る発光装置のある形態では、前記蛍光体層を介して前記発光素子の前記基板に対向するように設けられた透光性基板をさらに有し、前記蛍光体層と前記透光性基板の間及び/又は前記蛍光体層とは反対側の前記透光性基板の表面に反射防止膜を有する。
これにより、発光装置の光取り出し効率の低下を防ぐことができる。
【0013】
本発明に係る発光装置のある形態では、前記第1電極は、前記第2半導体層に囲まれている。
電流は第1半導体層と第2半導体層のギャップ間で密度が大きいため、第1電極を発光素子の端部に配置すると発光素子の端部で電流が集中しやすい。本発明の構成により、第1電極の周囲で電流が拡散させ、電流密度を均一にすることができる。
【0014】
本発明に係る発光装置のある形態では、前記樹脂層は、蛍光体粒子を含む。
これにより、発光素子の光取り出し面が蛍光体粒子を含む部材で覆われるので、発光素子からの光を効率よく波長変換させる発光装置とすることができる。
【0015】
本発明に係る発光装置のある形態では、前記樹脂層は、光反射性物質を含む。
これにより、発光素子の側面が光反射性物質を含む樹脂で覆われるので、発光素子からの光は主に発光装置の上面方向へ放出されることになる。したがって、点光源に近い発光装置とすることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように構成された本発明にかかる製造方法によれば、発光面における蛍光体2の形成及び側面を覆う樹脂の形成を、所定の配置に配列された複数(多数)の発光素子に対して一括して行うことができるので、電極形成面を除く発光面と側面が蛍光体層2及び樹脂5に覆われた発光装置を効率よく安価に製造することができる。
【0017】
また、以上のように構成された本発明にかかる発光装置によれば、第1電極から第2半導体層上に絶縁膜を介して延びる金属膜を備えているので、発光素子の基板を覆う蛍光体層と発光素子の側面とを覆う樹脂層を備えていても、放熱性を良好にできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1A】本発明に係る実施形態1の製造方法の製造工程の流れを示す断面図である。
図1B】本発明に係る実施形態1の製造方法において、発光素子の配列を示す平面図である。
図2】本発明に係る実施形態2の製造方法の製造工程の流れを示す断面図である。
図3】本発明に係る実施形態3の発光装置に使用する窒化物半導体発光素子の構成を示す断面図である。
図4】実施形態3の窒化物半導体発光素子の平面図である。
図5】本発明に係る変形例の製造工程の一部を示す断面図である。
図6】本発明に係る実施形態1の発光装置の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら本発明に係る実施の形態について説明する。
実施形態1.
本発明に係る実施形態1の製造方法は、以下の手順により発光装置が作製される。
(蛍光体層形成工程)
まず、図1A(a)(b)に示すように、透光性基板1上に蛍光体層2を形成する。
透光性基板1としては、例えば、石英やホウケイ酸硝子等からなるガラス基板が用いられる。厚みは30μm〜1mmが好ましい。透光性基板1は、薄いほど光吸収が抑制されるが、薄すぎると製造過程で割れ、厚すぎると後述する分割工程で切断しにくくなるため、50〜500μmであることがさらに好ましい。
蛍光体層2としては、バインダー樹脂に後述の蛍光体を含有させたものを使用することができる。バインダー樹脂は、例えば、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂等を使用することが好ましい。また、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、アクリル樹脂等の透光性を有する絶縁樹脂を用いることができる。また、これらの樹脂を少なくとも一種以上含むハイブリッド樹脂等、耐候性に優れた樹脂も利用できる。
蛍光体層2を形成する方法は、例えば、印刷法、圧縮成形、スピンコート、ディスペンス等公知の方法が挙げられる。
蛍光体層2は、均一な膜厚でかつ蛍光体粒子が偏在することなく形成することが好ましく、上記列挙した蛍光体層形成方法のなかでは特に印刷法又は圧縮成形を用いることが好ましい。
【0020】
(発光素子配列工程)
次に、図1A(c)及び図1Bに示すように、蛍光体層2の上に、複数の発光素子3を所定の間隔を隔てて配列する。配列する発光素子3の間隔は、10μm以上とすることができ、量産性を考慮して、50〜100μmであることが好ましい。
具体的には、所定の位置に接着部材4を塗布し、その接着部材4の上にそれぞれ発光素子3を配置する。発光素子3は発光面3eと反対側の面(電極形成面3c)に正負の電極3a,3bを有し、発光面3eが蛍光体層2に対向するように配置される。
発光素子3間の間隔は、発光素子3間の中央部で蛍光体層2及び透光性基板1を切断したときに作製される発光装置100の外形と一致するように設定される。
尚、図1Bには、発光素子3の上面の平面形状が正方形である場合の例を示しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、上面の平面形状が長方形や多角形の発光素子を用いて構成してもよい。
また、図1Bの平面図では、発光素子3電極は省略して描いている。
【0021】
(樹脂埋込工程)
次に、図1A(d)に示すように、配列された発光素子3の間に樹脂5を埋め込んで、埋め込んだ樹脂(埋込樹脂5)を硬化させる。埋込樹脂5は、発光素子3の少なくとも上面の一部が露出するように、すなわち、埋込樹脂5の上面が発光素子3の電極形成面3cを含む平面より突出しないように埋め込まれ、好ましくは上面が電極形成面3cを含む平面に一致するように埋め込まれる。このようにすると、発光素子3の側面に形成された樹脂5の厚み(発光素子の側面に直交する方向における厚さ)が比較的厚い場合でも発光素子を実装する際の傾きを抑制できる。また、埋め込む樹脂量及び当該樹脂が発光素子を覆う範囲については、正負の電極3a、3bが外部電源と接続できればよいので、少なくとも、正負の電極3a、3bの表面の一部が露出されるように適宜設定される。この場合、正負の電極3a、3b全体が樹脂5から露出するようにすると実装しやすい。
【0022】
尚、埋め込み樹脂5としては、上述の蛍光体層2のバインダー樹脂と同様のものを使用することができる。
【0023】
(分割工程)
最後に、図1A(e)に示すように、樹脂5を硬化させた後、硬化した樹脂5、蛍光体層2及び透光性基板1を切断線c7にそってダイシング、ブレイク等により切断して個々の発光装置100に分割する。切断線c7は、例えば、隣接する発光素子3の間の中心線に一致するよう設定される。切断線c7と発光素子3の側面との間隔は、任意に調整可能であるが、量産性を考慮すると100μm以下であることが好ましい。さらに、発光装置100の小型化を考慮すると25〜50μmであることが好ましい。
このとき、図1A(e)に示すように、分割後の発光装置100がシート6上に配列された状態で保持されるように、透光性基板1の裏面に保持シート6を張り付けてシート6を切断しないように分割することが好ましい。
【0024】
以上のように構成された実施形態1の製造方法により、電極形成面3cを除く発光面と側面が蛍光体層2及び樹脂5に覆われ、発光素子から照射される光を波長変換して外部に放出する発光装置が作製される。
以上の実施形態1の製造方法によれば、発光面における蛍光体層2の形成及び側面を覆う樹脂5の形成を、所定の配置に配列された複数(多数)の発光素子3に対して一括して行うことができるので、電極形成面3cを除く発光面と側面が蛍光体層2及び樹脂5に覆われた発光装置を効率よく安価に製造することができる。
【0025】
本発明に係る実施形態1の製造方法では、蛍光体層2と透光性基板1の間及び/又は蛍光体層2とは反対側の透光性基板1の表面に反射防止膜を形成するようにすることが好ましく、これにより、光の取り出し効率を向上させることができる。
【0026】
実施形態2.
本発明に係る実施形態2の製造方法は、蛍光体を含有する蛍光体含有基板21を用いている点が、実施形態1の製造方法とは異なっている。すなわち、実施形態2の製造方法では、図2に示す工程フロー図から明らかなように、透光性基板1の上に蛍光体層2を形成する工程がない他は、実施形態1の製造方法と同様に構成されている。
【0027】
蛍光体含有基板21は、無機材料からなる基体と無機材料中に分散された蛍光体との複合材料からなる。基体を構成する無機材料としては、サファイア等の無機結晶、ガラス等のアモルファス材料、セラミック等の種々の無機材料が挙げられる。
この蛍光体含有基板21を用いた発光装置は、以下のような特徴がある。
一般に、ガラスやサファイア等の無機材料は、無機材料から成る蛍光体との屈折率差が小さい。例えば、アルミニウムを含むガーネット構造の蛍光体の屈折率は約1.7〜1.8であるが、一般的な透光性樹脂の屈折率が約1.5であるのに対し、ガラスの屈折率は約1.6、サファイアの屈折率は約1.7である。このため、蛍光体含有基板21内における蛍光体による光の散乱が少なく、発光素子3への戻り光を抑えることができる。
また、無機材料は樹脂などの有機材料に比べて硬度が高く、高温での加工も可能であるため、蛍光体含有基板21上への配線形成も可能であり、それらを利用した応用も考えられる。
【0028】
さらに、蛍光体含有基板21は、熱伝導率を樹脂に比べると高くでき、放熱特性を良好にできる。その放熱特性をより効果的に発揮させるために、蛍光体含有基板21の熱伝導率は、0.8[W/mK]以上、より好ましくは1.2[W/mK]以上、さらに好ましくは3.5[W/mK]以上となる材料であることが望ましい。このような材料で蛍光体含有基板21を構成することにより、放熱特性を良好にでき、信頼性の高い発光装置200を実現することができる。
【0029】
実施形態1及び2の製造方法で使用される蛍光体は、発光素子3の発光により励起される蛍光体が選択されるが、例えば、発光素子3が青色発光素子であり、白色の発光装置を構成したい場合には、青色で励起されて黄色のブロードな発光を示す蛍光体を用いることが好ましい。このような蛍光体として、例えば、セリウムで付活されたガーネット構造を持つ蛍光体(特に、セリウムで付活され、アルミニウムを含みガーネット構造を持つ蛍光体)が挙げられる。セリウムで付活された蛍光体は、黄色にブロードは発光を示すため、青色発光との組合せによって演色性の良い白色を実現できる。また、ガーネット構造、特にアルミニウムを含むガーネット構造の蛍光体は、熱、光、水分に強く、高輝度な黄色発光を長時間維持することができる。例えば、蛍光体として、(Re1-xSmx(Al1-yGay512:Ce(0≦x<1、0≦y≦1、但し、Reは、Y、Gd、La、Lu、Tbからなる群より選択される少なくとも一種の元素である。)で表されるYAG系蛍光体(一般にYAGと略記される)を用いることが好ましい。また、黄色蛍光体の他に、LuAl12:Ce、BaMgAl1017:Eu、BaMgAl1017:Eu,Mn、(Zn,Cd)Zn:Cu、(Sr,Ca)10(POl2:Eu,Mn、(Sr,Ca)Si:Eu、CaAlSiB3+x:Eu及びCaAlSiN3:Euなどの蛍光体を用いて演色性を調整することもできる。
【0030】
また、特に発光素子3の発光波長が短波長である場合などは、蛍光体層2又は蛍光体含有基板21が2種類以上の蛍光体を含んでいても良い。発光素子3からの1次光によって1種類目の蛍光体を励起、発光させ、その蛍光体の発する2次光によって別の種類の蛍光体を励起、発光させることもできる。また、色度の異なる2種類の蛍光体を用いれば、2種類の蛍光体の量を調整することにより、色度図上において2種類の蛍光体と発光素子の色度点を結んでできる領域内の任意の色度点に対応する発光を得ることができる。
【0031】
実施形態1及び2の製造方法で使用される発光素子3は、半導体から成る発光層を備えたものであれば良い。特に窒化物半導体から成る発光層、中でも窒化ガリウム系化合物半導体(特にInGaN)から成る発光層を備えた発光素子であれば、可視光域の短波長域や近紫外域で強い発光が可能であるため、蛍光体と好適に組み合わせることができる。発光素子3は、発光層38から出力される出射光の発光ピーク波長が近紫外線から可視光の短波長領域である240nm〜500nm付近、好ましくは380nm〜420nm、さらに好ましくは450nm〜470nmにある発光スペクトルを有することが望ましい。この波長域で発光をする発光素子であれば、種々の蛍光体との組合せにより、所望の色、特に白色光の発光が可能となる。尚、発光素子20は、ZnSe系、InGaAs系、AlInGaP系などの半導体から成る発光層を有するものでも良い。
【0032】
以上の実施形態1及び2の製造方法では、樹脂5に蛍光体粒子を含有させてもよい。例えば、蛍光体層2と同様の蛍光体粒子を含有させると、発光素子3の側面から出射される光を波長変換して利用することも可能である。
【0033】
また、以上の実施形態1及び2の製造方法では、樹脂5に光反射性物質を含有させるようにしてもよい。このようにすると発光素子3の側面から出射された光を樹脂5に含まれる光反射性物質により蛍光体層2の方向に反射させてその光が波長変換された光を出射させることが可能になり、発光効率を向上させることができる。光反射性物質としては、Ti、Zr、Nb、Al、Si、Mgからなる群から選択される1種の酸化物、もしくはAlN、MgFの少なくとも1種を用いることができる。具体的にはTiO、ZrO、Nb、Al、MgF、AlN、SiO、MgOよりなる群から選択される少なくとも1種である。
【0034】
蛍光体層2と蛍光体含有基板21は、発光素子3の発光波長領域に応じて、厚みや含有させる蛍光体の量を調整することで、個々の発光装置の色調バラツキを制御することができ、また任意の色調を有する発光装置を得ることができる。その厚みは10〜100μmとすることができる。蛍光体層2と蛍光体含有基板21による光吸収を考慮すると薄い方が好ましい。さらに、蛍光体層2又は蛍光体含有基板21上に発光素子3を等間隔になるように配列し、個々の発光装置100、200に分割するので、均一な色調を有する複数の発光装置を効率よく製造することができる。蛍光体層2又は蛍光体含有基板21上に配置する発光素子3は、発光特性が類似したものを選択し準備しておけば、より均一な色調を有する複数の発光装置を製造することも可能である。
また、発光素子3の発光波長領域や発光特性に応じて、蛍光体層2又は蛍光体含有基板21上に配列する発光素子3の間隔を設定することもできる。すなわち、隣り合う発光素子3の間隔を広くすれば発光素子3の側面の埋め込み樹脂5の量を多く、間隔を狭くすれば埋め込み樹脂5の量を少なくすることができ、発光装置100、200の色調を調整することができる。
【0035】
実施形態3.
本発明に係る実施形態3の発光装置は、実施形態1又は2の製造方法により作製される発光装置であって、発光素子3を以下のような構成とすることにより、発光素子の発光面と側面が蛍光体層で覆われた際の放熱性の悪化を防止している。
以下、図面を参照して実施形態3に用いる窒化物半導体発光素子について詳細に説明する。
【0036】
図3の窒化物半導体発光素子は、例えばサファイア等からなる基板11上に、例えば、SiがドープされたAlInGaNからなるn型窒化物半導体層12、例えば、InGaNからなる発光層10及び例えば、MgがドープされたAlInGaNからなるp型窒化物半導体層13が順に積層された半導体層構造を有し、以下のように構成される。
1)実施形態1の窒化物半導体発光素子において、p型窒化物半導体層は、その中央部において円形に除去され、開口部31が形成される。これによって、開口部31を介してn型窒化物半導体層12の表面が露出される。
2)正電極19は、図4に示すように、p型窒化物半導体層13上に、開口部31の近傍及び外周の近傍を除いて広い面積で形成される。正電極19は、例えば、Ni、Pt、Pd、Rh、Ru、Os、Ir、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Co、Fe、Mn、Mo、Cr、W、La、Cu、Ag、Y、Al、Si、Au、これらの酸化物又は窒化物、ITO、ZnO、In等の透明導電性酸化物からなる群から選択された少なくとも一種を含む金属、合金の単層膜又は積層膜により形成することができる。膜厚は特に限定されることなく、得ようとする特性を考慮して適宜調整することができる。正電極19は、発光層10からの光を効率よく反射させることが好ましく、Al、Rh、Agから選択された少なくとも一種の金属又は合金の単層膜又は積層膜により形成することが好ましい。
3)p側の取り出し電極16は、正電極19上の開口部31と一側面との間に略矩形形状に形成される。取り出し電極16は、発光装置100、200を実装基板に実装するための電極とすることができ、正電極19と同様の材料を用いることができる。
4)絶縁層17aは、正電極19、p型窒化物半導体層13及びn型窒化物半導体層12の側面を覆うように形成される。基板11に達するように形成されていてもよい。
尚、絶縁層17aにおいて、開口部31の内側に開口部31と同心円の開口部32が形成され、取り出し電極16上に開口部33が形成される。絶縁膜17aは、例えば、Si、Ti、V、Zr、Nb、Hf、Taよりなる群から選択された少なくとも一種の元素を含む酸化膜、窒化膜、酸化窒化膜等が挙げられる。特に、SiO、ZrO、SiN、BN、SiC、SiOC、AlN、AlGaNが挙げられる。絶縁膜は、単一の材料の単層膜又は積層膜でもよいし、異なる材料の積層膜でもよい。DBR(Distributed Bragg Reflector)膜としてもよい。
5)負電極14は、正電極19、p側の取り出し電極16と同様の材料、積層構造とすることができ、開口部32を形成することによって露出されたn型窒化物半導体層12の表面18に接続されるように形成される。ここで、負電極14は、図4に示すように、p側の取り出し電極16の側において、いずれの位置においても絶縁膜17aを介して正電極19と重なるように取り出し電極16に近接する位置まで延在し、かつ反対側においては、絶縁膜17aを介して正電極19を実質的に覆うように形成される。これにより、負電極14と正電極19とが絶縁されているので、電極の立体的な構造が可能になっている。負電極14は、n型窒化物半導体層12の表面18からp型窒化物半導体層13上に延在されてもよいが、n型窒化物半導体層12とコンタクト性の良好な材料も設け、その上にAl、Rh、Ag等反射率の高い材料を設けてn型窒化物半導体層、p型窒化物半導体層、正電極19を覆うように延在させることもできる。これにより、反射率の高い材料で発光素子3の電極形成面を覆うことができるので、光取り出し効率が向上する。
6)さらに絶縁膜17bは、取り出し電極16上に開口部33と重なる開口部35を有しかつ開口部35の反対側の負電極14上に開口部34を有し、各電極及び半導体層を覆うように形成される。絶縁膜17bは、上述の絶縁膜17aと同様の材料、積層構造とすることができる。
開口部34の位置の負電極14は、発光装置100、200を実装基板に実装するための電極として機能することもできるが、負電極14上に、実装用の電極をさらに形成してもよい。
【0037】
以上のように構成された実施形態3の窒化物半導体発光素子において、n型窒化物半導体層12及びp型窒化物半導体層13の上方は、正電極19及び負電極14のいずれかの電極で覆われており、かつ負電極14が絶縁膜17aを介して正電極19と重なるように取り出し電極16に近接する位置まで延在している。
このように、負電極14が絶縁膜17aを介して正電極19を実質的に覆うように形成されているので、放熱性を良好にできるとともに、発光層10において発生した光りが上方から漏れるのを防止できる。
【0038】
実施形態3において、n型窒化物半導体層12の表面18(露出部)は発光素子3の中央部に1つ円形形状で形成し、この上に負電極14を設けているが、これに限らない。すなわち、複数の表面18を均等に分散配置し、ここに負電極14を形成することができる。特に、n型窒化物半導体層12の表面18と接する負電極14は、p型窒化物半導体層13に周囲を囲まれていることが好ましい。電流はn型窒化物半導体層12の表面18(露出部)のp型窒化物半導体層13付近で密度が大きくなる。そのため、負電極14の周囲をp型窒化物半導体層13に囲まれるようにし、かつ複数設けることにより、電流密度を均一化することができる。
そしてn型窒化物半導体層12の表面18の形状は円形、楕円形、多角形、丸みを帯びた多角形、線状、曲線状等任意の形状とすることができる。n型窒化物半導体層12の表面18を形成すると発光層10の面積が小さくなるので、表面18はできるだけ小さい面積の方が好ましい。
【0039】
したがって、本発明に係る実施形態3の発光装置によれば、発光素子の発光面と側面が蛍光体層で覆われかつ放熱性が良好な発光装置を提供することができる。
なお、発光素子3はこれに限らない。言い換えると電極が立体的な構造でなく、例えば、p型窒化物半導体層13上に正電極19、n型窒化物半導体層12上に負電極14がそれぞれ設けられていてもよい。
【0040】
実施形態3の発光装置において、窒化物半導体発光素子の周りを覆う樹脂層には、蛍光体粒子を含んでいてもよいし、光反射性物質を含んでいてもよい。
【0041】
また、実施形態3の発光装置において、蛍光体層を介して窒化物半導体発光素子の基板11に対向するように設けられた透光性基板をさらに有していてもよく、また、蛍光体層と透光性基板の間及び/又は蛍光体層とは反対側の透光性基板の表面に反射防止膜を有していてもよい。
【0042】
変形例
以上の実施形態では、一つの好ましい形態として、樹脂5を上面が電極形成面3cを含む平面に一致するように埋め込んだ例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、埋め込む樹脂の量を少なくして発光素子3の間に埋め込まれた樹脂5の中央部の表面が窪むように形成しても良い。図5(a)には、量を少なくして樹脂5を埋め込んだ後の状態を示し、図5(b)には切断する際の様子を示している。また、図6(a)には、切断後の発光装置300を示している。このように、樹脂5は、少なくとも発光素子3の側面を被覆していればよく、発光素子3間の間を全て満たさなくてもよい。すなわち、少なくとも配列された個々の発光素子3の周囲に樹脂5を設けていればよい。言い換えると、硬化した樹脂5の上面は、発光素子3の電極形成面3cを含む平面に平行であっても、傾斜していてもよい。ここで、傾斜とは、発光素子3から遠ざかるにつれて樹脂5の厚み(電極形成面に直交する方向に見た厚み)が薄くなることをいい、図6(b)に示すように発光素子3から遠ざかるにつれて直線的に厚み(電極形成面に直交する方向に見た厚み)が薄くなっていることも含む。尚、発光装置において発光素子3の側面に形成された樹脂の厚さ(側面に直交する方向に見た厚み)が小さい場合には、図6(b)に示すように、発光素子3から遠ざかるにつれて直線的に厚み(電極形成面に直交する方向に見た厚み)が薄くなる。
さらに本発明では、例えば、ワイヤボンディング等により接続する際には、図6(c)に示すように、発光素子3から遠ざかるにつれて厚み(電極形成面に直交する方向に見た厚み)が厚くなるように構成してもよい。
【実施例】
【0043】
実施例1.
次に、実施例1について説明する。実施例1は、実施形態1に係る発光装置の製造方法に基づいて発光装置100を作製する。
図1は、本発明に係る実施例1の製造方法の製造工程の流れを示す断面図である。図3は、本発明に係る実施例1の発光装置に使用する窒化物半導体発光素子の構成を示す断面図である。図4は、図3の窒化物半導体発光素子の平面図である。
【0044】
実施例1の発光装置100は、平面視で1.5mm四方であり、発光素子3、透光性基板1、蛍光体層2、接着部材4、樹脂5を備える。
【0045】
発光装置100は、厚み200μmのガラスからなる透光性基板1上にYAG系の蛍光体を含む厚み50μmの蛍光体層2が設けられる。透光性基板1は蛍光体層2と透光性基板1の間及び蛍光体層2とは反対側の透光性基板1の表面に反射防止膜(不図示)を備えている。蛍光体層2の上面に、シリコーン樹脂からなる接着部材4によって、後述する平面視で1.4mm四方の大きさの発光素子3が接着されている。発光素子3の側面、接着部材4の表面(露出面)及び蛍光体層2の上面は、光反射性物質としてTiOを含むシリコーン樹脂からなる樹脂5で覆われている。樹脂5は、発光素子3の電極形成面を覆わないように設けられ、樹脂5の上面は、図5に示すように発光素子3から遠ざかるにつれて厚みが薄くなるように傾斜している。発光装置100の側面、言い換えると透光性基板1の側面、蛍光体層2の側面、樹脂5の側面は、面一となっている。
【0046】
発光素子3について説明する。
発光素子3は、表面に凹凸を有するサファイア基板11上に、半導体層を有する。サファイア基板11上に、バッファ層を形成する。さらに負電極14と接続されるn型窒化物半導体層12を積層する。n型窒化物半導体層12上には、多重量子井戸構造である発光層10を形成する。発光層10上には、正電極19と接続されるp型窒化物半導体層13を積層する。これにより、半導体層を得る。
【0047】
半導体層は、その中央部においてp型窒化物半導体層12、発光層10、n型窒化物半導体層13の一部が円形に除去され、n型窒化物半導体層12が露出して表面18と開口部31が形成される。表面18及びp型窒化物半導体層13の上面には、それぞれITO/Rh/Au/Rh/Tiをこの順に積層して負電極14、正電極19が設けられる。正電極19は、p型窒化物半導体層13上に、開口部31の近傍及び外周の近傍を除いて広い面積で形成されている。
【0048】
次に、Al合金/Ti/Pt/Au/Niをこの順に積層したp側の取り出し電極16が、正電極19上の開口部31と一側面との間に略矩形形状に形成される。取り出し電極16は、発光装置100、200を実装基板に実装するための電極とする。
【0049】
絶縁層17aとして、SiO/Nbを3ペア積層したDBR膜が、上述の負電極14の上面の一部及びp側の取り出し電極16の上面の一部を除いて、正電極19、p型窒化物半導体層13及びn型窒化物半導体層12の側面を覆うように形成される。絶縁層17aにおいて、開口部31の内側に開口部31と同心円の開口部32が形成され、p側の取り出し電極16上に開口部33が形成される。
なお、本実施例ではp側の取り出し電極16の一部を覆うように絶縁膜17aを形成しているが、絶縁膜17a上にp側の取り出し電極16を形成してもよい。
【0050】
表面18上面に形成した負電極14の上にさらに、p側の取り出し電極16と同様にAl合金/Ti/Pt/Au/Niをこの順に積層して負電極14が延長されている。負電極14は、絶縁膜17aを介して正電極19を実質的に覆っている。
【0051】
さらにSiOからなる絶縁膜17bが、取り出し電極16上に開口部33と重なる開口部35を有しかつ開口部35の反対側の負電極14上に開口部34を有し、各電極及び半導体層を覆っている。
【0052】
これにより、平面視で1.5mm四方の発光装置100となる。
【0053】
この実施例1の発光装置100は、以下の製造方法により製造される。
【0054】
<発光素子3の作製>
まず、凹凸形状を有したサファイア基板11をMOCVD装置内に設置し、サファイア基板11の凹凸上に、バッファ層としてアンドープの窒化物半導体であるGaN層(図は省略)を形成する。次に、n型コンタクト層として、Siドープのn型GaN層、さらにアンドープの窒化物半導体であるGaN層を積層し、n型窒化物半導体層12を形成する。n型窒化物半導体層12上には、発光層10として、バリア層となるGaN層、井戸層となるInGaN層を1セットとして9セット積層して最後にバリア層となるGaN層を積層させた多重量子井戸構造を形成する。発光層10上には、p型窒化物半導体層13として、Mgがドープされたp型クラッド層としてAlGaN層、Mgがドープされたp型コンタクト層であるp型GaN層を順次積層する。以上の工程により、半導体層を形成したウエハを得る。
p型窒化物半導体層13、発光層10、n型窒化物半導体層12の一部をエッチングにより除去してn型窒化物半導体層12を露出させ、表面18を形成する。表面18とp型窒化物半導体層13上面に、それぞれスパッタリングによりITO/Rh/Au/Rh/Tiをこの順に積層して負電極14、正電極19を形成する。
絶縁層17aとして、SiO/Nbを3ペア積層したDBR膜を、表面18上に形成された上述の負電極14の上面の一部を除き、またp側の取り出し電極16が正電極19と接続されるための形成予定領域を除いて、正電極19、p型窒化物半導体層13及びn型窒化物半導体層12の上面と側面とを覆うように形成する。
正電極19に電気的に接続されるようにp側の取り出し電極16を形成する。また、表面18上の負電極14に電気的に接続され、絶縁膜17aを介して正電極19に重なるようにさらに負電極14を延長させる。
p側の取り出し電極16の上面の一部及び正電極19上に延長された負電極14の上面の一部を除いて、n型窒化物半導体層12、発光層13、p型窒化物半導体層13、正電極19、負電極14の表面、すなわちウエハの全体を覆うように、絶縁膜17bとしてSiOをスパッタリングにより形成する。
以上の方法により得られるウエハをダイシングやブレイク等により所定の箇所で個々に切断し、分割することにより、1.4mm四方の青色発光の発光素子3が製造される。作製した発光素子3は、後述の発光装置100の作製のため、発光波長領域や発光特性が類似したものを選択し分類しておく。
【0055】
<発光装置100の作製>
次に、上面と裏面に反射防止膜を有する厚み200μmのガラスからなる透光性基板1を準備する。透光性基板1上面の反射防止膜上に成形により厚み50μmのYAG系蛍光体を含む蛍光体層2を形成する。蛍光体層2上に、発光特性によって分類した発光素子3をサファイア基板11が蛍光体層2に面するようにシリコーン樹脂からなる接着部材4で接着する。このとき、発光素子3は約100μm間隔で行列配置する。配置した発光素子3の側面を覆うようにTiOを含むシリコーン樹脂からなる樹脂5を塗布し、150℃で2時間加熱して樹脂5を硬化させる。その後、透光性基板1の裏面、すなわち透光性基板1の蛍光体層2と反対側の面にシート6を貼り合わせ、隣り合う発光素子3の間を、発光素子3側から透光性基板1側に向かってダイシングすることにより切断して分割する。これにより、1.5mm平方の発光装置100が製造される。
【0056】
本実施例によれば、発光素子3の負電極14が立体的に正電極19の上に延長されて電極面積が拡大されていることにより放熱性がよい。さらに、発光素子3は発光特性の類似したものが選択されており、蛍光体層2の厚みが均一であるため、色調バラツキが抑制された白色発光の発光装置100を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の半導体発光素子は、照明用光源、各種インジケーター用光源、車載用光源、ディスプレイ用光源、液晶バックライト用光源、センサー用光源、および信号機等に利用することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 透光性基板
2 蛍光体層
21 蛍光体含有基板
3 発光素子
3a、19 正電極(p側となる正電極)
3b、14 負電極(n側となる負電極)
3c 電極形成面
3e 発光面
4 接着部材
5 樹脂(埋込樹脂)
6 シート
c7 切断線
10 発光層
11 サファイア基板
12 n型窒化物半導体層
13 p型窒化物半導体層
16 p側取り出し電極
17a 絶縁層
31、32、33、34、35 開口部
100、200、300、300a、300b 発光装置
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6